説明

電子音楽システム

【課題】システムを構成する各電子音楽装置に対して簡単かつ任意にIDを付与する。
【解決手段】この電子音楽システムでは、ユーザにより、ネットワークCNで接続された複数の電子音楽装置EM1〜EM5の夫々に、順次、IDカウンタCTを備えた可搬メディアMMを装着/接続(接触)/接近させ、各電子音楽装置EMに可搬メディアMMを認識させると、可搬メディアMMから取得したIDカウンタ値が当該電子音楽装置の機器IDとして登録され、機器IDとして登録される可搬メディアMMのCT値は、各電子音楽装置EMに機器IDが登録される毎にカウントアップ更新される(第1実施形態)。或いは、IDカード(物体)や生体等の認証体AUを各電子音楽装置EMに順次接近させ、ユーザについて物体/生体認証が行われる毎に、付与済み機器IDからカウントアップ更新された機器IDが各電子音楽装置EMに登録される(第2実施形態)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークで接続された複数の電子音楽装置で構成される電子音楽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子楽器やシーケンサ、音源装置等の複数の電子音楽装置をネットワークで接続し、各電子音楽装置間で情報のやり取りをする電子音楽システムがある。例えば、IEEE1394規格に沿った電子音楽装置では、各装置(ノード)の電源が投入されたり、各装置がバスに接続されたりすると、バスリセットが発生し、その後、自動的に各装置が「枝(Branch)」、「葉(Leaf)」「孤立」の何れであるかが判断され、何れかが「ルート(Root)」として決定され、各装置のself−IDが決定される。このように、IEEE1394機器では、自動的にIDなどが決まる。なお、このようなIEEE1394規格に関する技術については、例えば、非特許文献1を参考にされたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】平成12年5月25日(第2版)発行「最新技術解説 改訂新版入門IEEE1394規格」(稲田元彦著 技術評論社)[第100〜105頁:「2.6.1 コンフィグレーション」]
【0004】
複数の電子音楽装置のうちの何れかをマスター装置、残りをスレーブ装置として設定し、マスター装置の制御の下にスレーブ装置が動作するようにシステムを構築したり、各スレーブ装置に固有の識別情報(ID)を設定し、マスター装置から各スレーブ装置をこの識別情報(ID)で識別できるようにシステムを構築したいことがある。そして、マスター装置をどの電子音楽装置にするか、各スレーブ装置に対してどの識別情報(ID)を付与するか、等をユーザが自由に決めたいことがある。
【0005】
しかしながら、上述したIEEE1394規格に沿った電子音楽装置では、これらが自動的に決定されてしまい、ユーザの自由にならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような事情に鑑み、ネットワークで接続されシステムを構成する各電子音楽装置に対して、ユーザにより簡単かつ任意にIDを付与することができる電子音楽システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の特徴に従うと、ネットワーク(CN)で接続された複数の電子音楽装置(EM:EM1〜EM5)から成る電子音楽システムであって、各電子音楽装置(EM)は、IDカウンタ(CT)を有する可搬メディア(MM)を認識する可搬メディア認識手段(P1,Q1)と、可搬メディア認識手段により可搬メディアが認識されたこと(P1=YES,Q1=YES)に応じて該可搬メディア(MM)からIDカウンタ(CT)の値を取得するID取得手段(P2,Q2〜Q3)と、ID取得手段により取得されたIDカウンタ(CT)の値を、この電子音楽システムにおいて当該電子音楽装置のIDを示す機器IDとして登録するID登録手段(P3,Q3)と、ID登録手段により登録された機器IDに基づいて、機器IDが登録された他の電子音楽装置との間で、音楽情報に関する制御を行う制御手段とを具備し、可搬メディア(MM)のIDカウンタ(CT)は、各電子音楽装置(EM)に機器IDが登録される毎に値が更新される(P4,M2)電子音楽システム〔請求項1〕が提供される。なお、括弧書きは、実施例の参照記号や箇所等を表わし、以下においても同様である。
【0008】
この発明の第2の特徴に従うと、ネットワーク(CN)で接続された複数の電子音楽装置(EM:EM1〜EM5;EMa,EMe)から成る電子音楽システムであって、各電子音楽装置(EMa)は、予め登録された認証用基準情報に基づいて、ユーザに関する物体認証乃至生体認証を行う認証手段(A1〜A4)と、認証手段によりユーザに関する認証がなされたこと(A4=YES)に応じて、この電子音楽システムにおいて夫々の電子音楽装置(EM)のIDを示す機器IDの付与状況を他の電子音楽装置(EMe)に問い合わせ、当該他の電子音楽装置(EMe)における機器IDの付与状況を取得する付与状況取得手段(A5〜A6)と、付与状況取得手段により取得された他の電子音楽装置(EMe)の機器ID付与状況に基づいて、当該電子音楽装置(EMa)の機器IDを登録するID登録手段(A6)と、ID登録手段により登録された機器IDに基づいて、機器IDが登録された他の電子音楽装置(EMe)との間で、音楽情報に関する制御を行う制御手段とを具備する電子音楽システム〔請求項2〕が提供される。
【0009】
また、この発明による電子音楽システムにおいて、各電子音楽装置(EM:EM1〜EM5)に登録された機器IDのうち、特定の機器IDはマスター装置を規定するものであり、その他の機器IDはスレーブ装置を規定するものである〔請求項3〕ように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の第1の特徴による電子音楽システム(請求項1)では、ネットワーク(CN)で接続されシステムを構成する複数の電子音楽装置(EM:EM1〜EM5)に夫々の機器IDを付与する際は、ユーザにより、これら電子音楽装置(EM)の夫々に、順次、IDカウンタ(CT)を有する可搬メディア(MM)が装着/接続(接触)/接近される。各電子音楽装置(EM)は、装着/接続(接触)/接近された可搬メディア(MM)を認識すると(P1=YES,Q1=YES)、可搬メディア(MM)から取得したIDカウンタ(CT)の値を、この電子音楽システムにおいてユニークな当該電子音楽装置のIDを示す機器IDとして登録し(P2〜P3,Q2〜Q3)、可搬メディア(MM)のIDカウンタ(CT)については、各電子音楽装置(EM)に機器IDが登録される毎にカウントアップされ、カウント値が更新される(P4,M2)。つまり、或る電子音楽装置で可搬メディア(MM)が認識されて機器IDが登録されるとIDカウンタ(CT)の値が更新され、次の電子音楽装置(EM)で可搬メディア(MM)が認識されると、更新されたIDカウンタ(CT)の値が、次の電子音楽装置(EM)に機器IDとして登録されると共にさらに更新される。これを繰り返すことで各電子音楽装置(EM)に夫々の機器IDを登録することができ、システム内の各電子音楽装置(EM)間では、登録された機器IDに基づいて音楽情報に関する制御を相互に行うことができる。従って、この発明によれば、ネットワークで接続され電子音楽システムを構成する複数の電子音楽装置の夫々に対して、ユーザが物理的にアプローチするだけで、簡単かつ任意に、システム内においてユニークな夫々の機器IDを付与することができる。
【0011】
この発明の第2の特徴による電子音楽システム(請求項2)では、ネットワーク(CN)で接続されシステムを構成する複数の電子音楽装置(EM:EM1〜EM5;EMa,EMe)に夫々の機器IDを付与する際に、順次、これら電子音楽装置(EM)の夫々においてユーザに関する物体認証乃至生体認証が行われる。各電子音楽装置(EMa)は、例えば、ユーザが所有するIDカードやユーザの指を近接する等の方法で、ユーザに関する物体情報乃至生体情報(IDや指紋など)が入力されると、予め登録された認証用基準情報に基づいて物体認証乃至生体認証処理を行う(A1〜A4)。認証が成功すると(A4=YES)、この電子音楽システムにおいて夫々の電子音楽装置(EM)のIDを示す機器IDの付与状況を他の電子音楽装置(EMe)に問い合わせ、当該他の電子音楽装置(EMe)における機器IDの付与状況を取得する(A5〜A6)。そして、取得した他の電子音楽装置(EMe)の機器ID付与状況に基づいて、既に付与されている機器IDの値に対してカウントアップした値を当該電子音楽装置(EMa)の機器IDとして登録する(A6)。このようなID付与手順を或る電子音楽装置(EMA)から次の電子音楽装置(EMB)へと順次繰り返すことで各電子音楽装置(EM)に夫々の機器IDを登録することができ、システム内の各電子音楽装置(EM)間では、登録された機器IDに基づいて音楽情報に関する制御を相互に行うことができる。従って、この発明によれば、ネットワークで接続されシステムを構成する複数の電子音楽装置の夫々に対して、ユーザが物理的にアプローチするだけで、簡単かつ任意に、システム内でユニークな夫々の機器IDを付与することができる。
【0012】
また、この発明による電子音楽システムにおいて、各電子音楽装置(EM:EM1〜EM5)に登録された機器IDのうち、特定の値を持つ機器IDが付与された電子音楽装置は、マスター装置として機能し、その他の値を持つ機器IDが付与された電子音楽装置は、スレーブ装置として機能するように設定される(請求項3)。従って、この発明によれば、さらに、各電子音楽装置に対して、ユーザにより簡単かつ任意に、所定の値を持つ機器IDを付与し、マスター及びスレーブ機能を割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施例による電子音楽システム構成例の説明図である。
【図2】この発明の第1実施形態による機器ID付与態様の説明図の一部である。
【図3】この発明の第1実施形態による機器ID付与態様の説明図の他部である。
【図4】この発明の第2実施形態による機器IDの付与例を示す図である。
【図5】この発明の第2実施形態による機器ID付与の手順例を示す図である。
【図6】この発明の第2実施形態による機器ID付与処理の動作例を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔システム構成の概要〕
図1は、この発明の一実施例による電子音楽システムのシステム構成を説明するための図であり、図1(1)は、この電子音楽システムを構成する電子音楽装置EMaのハードウエア構成例を示すブロック図である。この発明の一実施例による電子音楽システムを構成する電子音楽装置は、電子的な音楽情報処理機能を有する一種のコンピュータであり、電子楽器やシーケンサのような音楽専用機器が用いられるが、音楽情報処理アプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)のように、音楽専用機器と同じ音楽情報処理機能が付与された汎用の情報処理装置を用いることもできる。
【0015】
この電子音楽装置EMaは、図1(1)に示すように、中央処理装置(CPU)1、ランダムアクセスメモリ(RAM)2、読出専用メモリ(ROM)3、記憶装置4、演奏操作検出回路5、設定操作検出回路6、表示回路7、音源・効果回路8、通信インターフェース(I/F)9、USBインターフェース(I/F)10、物体/生体情報入力回路11などを備え、これらの要素1〜11はバス12を介して互いに接続される。
【0016】
CPU1は、RAM2及ROM3と共にデータ処理部を構成し、機器ID付与プログラムを含む所定の制御プログラムに従い、タイマによるクロックを利用して機器ID付与処理を含む種々の情報処理を実行する。RAM2は、これらの処理に際して必要なデータを利用可能に保持するための記憶管理領域や各種データを一時記憶するためのワーク領域として用いられ、また、ROM3には、これらの処理を実行するために、機器ID付与プログラムを含む各種制御プログラムやプリセットされたデータ等が予め記憶される。
【0017】
記憶装置4は、HD(ハードディスク)、FD(フレキシブルディスク)、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多目的ディスク)、フラッシュメモリなどの半導体メモリなどの記憶媒体と、その駆動装置を含み、任意の制御プログラムや自動演奏データ等を任意の記憶媒体に記憶することができる。また、記憶媒体は、着脱可能であってもよいし、電子音楽装置に内蔵されていてもよい。例えば、内蔵のHD又はフラッシュメモリに基準情報記憶領域や機器ID記憶領域を設け、基準情報記憶領域には、予め、この電子音楽システムを利用するユーザ毎に、他の電子音楽装置(EMe)と共通に、当該ユーザの認証に必要な認証用基準情報(認証用照合情報ともいう)を登録しておいたり、機器ID記憶領域には、新たに付与された機器IDを記憶しておくことができる。また、FD等の着脱可能な記憶媒体は、後述するように、この電子音楽装置EMaにシステム構成上の機器IDを付与するための可搬メディア(MM)として用いることができる。
【0018】
演奏操作検出回路5は、鍵盤などの演奏操作子13と共に演奏操作部を構成し、演奏操作子13の演奏操作を検出して検出内容に対応する演奏操作情報をデータ処理部(1〜3)に導入し、データ処理部は、この演奏操作情報に基づき実演奏情報を生成して音源・効果回路8に送る。設定操作検出回路6は、スイッチやマウス等の設定操作子(パネル操作子)14と共に設定操作部(パネル操作部)を構成し、設定操作子14の操作内容を検出して検出内容に対応する設定操作情報をデータ処理部に導入し、データ処理部は、この設定操作情報に基づき種々の設定を行う。表示回路7は、演奏や設定に必要な各種画面を表示するLCD等のディスプレイ15や、インジケータ/ランプ(図示せず)を備え、これらの表示・点灯内容をデータ処理部からの指令に従って制御し、演奏操作や設定操作などに関する表示援助を行う。例えば、ディスプレイ15の画面には、電子音楽システムを構成するこの電子音楽装置EMaや他の電子音楽装置(EMe)について、機器IDを含むシステムの機器構成に関する情報を表示することができる。
【0019】
音源・効果回路8は、音源やDSPを有し、演奏操作検出回路5からの演奏操作情報から得られる実演奏情報に基づく楽音信号を生成したり、ROM3又は記憶装置4或いは通信I/F9から得られる自動演奏データに基づく楽音信号を生成すると共に、生成される楽音信号に所定の効果を付与する。サウンドシステム16は、D/A変換部やアンプ、スピーカ等を備え、音源・効果回路8から出力される楽音信号に基づく楽音を発生する。
【0020】
通信I/F9は、MIDI等の音楽専用有線I/F、IEEE1394等の汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)等の汎用ネットワークI/F、無線LanやBluetooth(登録商標)等の汎用近距離無線I/Fなどの1又は複数を含み、他の音楽機器との間でMIDI演奏データを授受したり、サーバコンピュータ等の外部機器から制御プログラムやデータ等を受信し記憶装置4に保存することができる。また、図示のように、ネットワークCNを介して、この電子音楽システムを構成し得る1乃至複数の他の電子音楽装置EMeが接続される。
【0021】
USBI/F10は、汎用近距離有線I/FのうちUSBI/Fを通信I/F9とは別個に図示したものであり、USBI/F10に接続された外部機器との間で、通信I/F9と同様に、外部USB機器と種々の情報授受を行うことができる。また、USBI/F10の接続スロットにはUSBメモリの装着(接続)が可能であり、このUSBメモリは、「可搬メディアMM」で示されるように、前述した着脱可能な記憶媒体と同様に、この電子音楽装置EMaにシステム構成上の機器IDを付与するのに利用することができる。
【0022】
物体/生体情報入力回路11は、このシステムを利用するユーザに関する認証を行うために設けられた情報入力回路であり、ユーザに帰属する物体/生体情報を回路11から入力し、これが認証されると、この電子音楽装置EMaにシステム上の機器IDが付与される。情報入力回路11は、具体的には、ユーザの所有するIDカード(物体)から、接触及び/又は非接触状態で、カード(物体)に記録されているID情報を読み取る物体情報読取り回路や、ユーザ自身の生体部から、指紋/静脈/虹彩などのユーザ個人に特有の特徴的な生体情報を読み取る生体情報読取り回路で構成することができ、実際には、これらID情報や特徴的生体情報の何れか1乃至複数を読み取る回路を備える。図示される「認証体AU」は、このような物体情報や生体情報の検出対象となるIDカードやユーザ生体部を表わす。IDカードについては、ユニークなIDを記録した「ICタグ」と呼ばれるICチップが埋め込まれた非接触型のユニークID付きカードを用いると、物体情報読取り部に近付けるだけでユニークなIDを入力することができるメリットがある。なお、後述する第1実施形態では、かかる物体/生体情報入力回路11は不要である。
【0023】
電子音楽装置EM(記号“EM”は電子音楽装置を代表的に表わす)の形態としては、図1(1)のように演奏操作部13−5及び音源・効果回路8の双方を備えた電子楽器の外に、演奏操作部(13−5)が搭載されていない音源装置、音源・効果回路(8)が搭載されていない鍵盤装置、「DAW (Digital Audio Workstation)」と呼ばれる音楽アプリケーション(主としてシーケンサ機能)をPCに搭載したDAW装置、任意の機器から入力されるオーディオデータを混合して任意の機器に出力するミキサー装置、任意の機器で生成された音楽データを記録するレコーダ装置、等々、種々の種類の形態があり得る。そして、これらの電子音楽装置が、上述した有線又は無線のネットワークCNを介して互いに接続され、例えば、図1(2)に示すように、全体で1つの電子音楽装置として機能する電子音楽システム(電子音楽装置システムとも言う)を構築している。
【0024】
図1(2)は、複数の電子音楽装置から成る電子音楽システムの構成例を示す。この構成例では、5台の電子音楽装置EM1〜EM5が電子音楽システムの構成要素となり、第1電子音楽装置EM1にはDAW装置(PC+音楽アプリケーション)が用いられ、第2電子音楽装置EM2には電子楽器が用いられ、第3電子音楽装置EM3には音源装置が用いられ、第4電子音楽装置EM4にはミキサー装置が用いられ、第5電子音楽装置EM5にはレコーダ装置が用いられている。
【0025】
各電子音楽装置EM1〜EM5には、機器ID付与処理によってこの電子音楽システムにおいてユニークな夫々の機器IDが付与され、付与された機器IDは、夫々の機器ID記憶領域に記録され、以後の音楽情報処理の際に夫々の電子音楽装置を指示するのに用いられる。この場合、電子音楽装置EM1〜EM5は、付与された機器IDの値に従い、1つの電子音楽装置がマスター装置となり、残りの電子音楽装置がスレーブ装置となる。
【0026】
マスター装置及びスレーブ装置としての制御機能には、次のようなものがある:
(1)マスター装置は、スレーブ装置に対して各種命令をする。
(2)マスター装置は、各スレーブ装置へとクロックを提供する等により、動作の基準となる。
(3)複数の電子音楽装置の間で情報のやり取りをする際に、必ず、マスター装置からスレーブ装置へと問い合わせを出し、スレーブ装置はそれに応答する形を取る。
【0027】
また、スレーブ装置に付与された機器IDは次のような制御に利用することができる:
(1)例えば,複数のスレーブ装置がネットワーク上に同時に情報を流そうとしたとき、機器IDの値が小さい装置が優先されるなど、動作の優先順位を定義する。
(2)マスター装置から特定のスレーブ装置に命令をする際に、機器IDにより命令すべき装置を特定する。
(3)マスター装置が各スレーブ装置の名称を表示する際に、機器ID付き名称とする。
【0028】
なお、この電子音楽システムは、機器IDが付与された電子音楽装置で構成され、ユーザにより任意に付与された機器IDの値に従って、任意の電子音楽装置がマスター装置となり得るので、各電子音楽装置EM:EMa,EMe;EM1〜EM5は、予め、上述のようなマスター装置及びスレーブ装置として振る舞い得る機能を有している。
【0029】
この発明の一実施例による電子音楽システムでは、ネットワークCNで接続された各電子音楽装置EM1〜EM5に対して第1実施形態又は第2実施形態で機器IDを付与することができる。第1実施形態では、IDカウンタCTが含まれるID付与用可搬メディアMMを各電子音楽装置EM1〜EM5のメディア検出部に装着したり近付ける等により、各電子音楽装置EM1〜EM5に認識させ、認識させた順に機器IDを付与する。この場合、各電子音楽装置EM1〜EM5には、認識された順番に対応する値の機器IDが付与され、最初に可搬メディアMMを認識して特定の機器IDが付与された電子音楽装置は、マスター装置として設定され、その後の認識により他の機器IDが付与された電子音楽装置は、スレーブ装置に設定され、その機器IDに従って順位付けされる。
【0030】
ID付与用可搬メディアMMには、前述したFDのような着脱可能記憶媒体(4)やUSBメモリの外に、接触型又は非接触型のICカード等、カウンタCT及び記憶機能を有し得る任意の可搬メディアを用いることができ、ICカード等を用いる場合は、各電子音楽装置EMには、ICカード等と情報授受を行うためのインターフェース(I/F)が設けられる。ID付与用可搬メディアMMは、何れのタイプのメディアでも、認識の度にカウントアップされるIDの値を保持する記憶回路を有しており、この記憶回路は「IDカウンタ」と呼ばれる。また、ID付与用可搬メディアMMには、メディア自体でカウントアップ等の演算制御を行う演算制御回路を内蔵した能動的な可搬メディア(演算制御機能付き記憶メディアという)を用いることもできるが、このような演算制御回路を持たず、装置側でカウントアップ等の演算制御がなされた結果をIDカウンタでID値として保持するだけの受動的な可搬メディア(単なる記憶メディアという)を用いてもよい。
【0031】
一方、第2実施形態では、ネットワークCNで接続された各電子音楽装置EM1〜EM5の認証体検出部に認証体(IDカード等の物体或いはユーザの指等の生体部)AUを近接することにより、各電子音楽装置EM1〜EM5で物体認証(IDカード等のID入力による)或いは生体認証〔ユーザの特徴的生体情報(指紋情報など)の入力による〕を行わせ、認証させた順に機器IDを付与する。新たに認証した電子音楽装置には、各電子音楽装置EM1〜EM5間で機器IDの情報交換を行い、既に付与されている機器IDに対してカウントアップした機器IDが付与される。この場合も、各電子音楽装置EM1〜EM5には、認証された順番に対応する値の機器IDが付与され、最初に認証体AUから物体乃至生体認証を行って特定の機器IDが付与された電子音楽装置は、マスター装置として設定され、その後の物体乃至生体認証により他の機器IDが付与された電子音楽装置は、スレーブ装置に設定され、その機器IDに従って順位付けされる。
【0032】
以上のように、この発明の一実施例による音楽コンテンツ利用システムの第1実施形態では、ユーザにより、ネットワークCNで接続された複数の電子音楽装置EM:EM1〜EM5の夫々に、順次、IDカウンタCTを備えた可搬メディアMMを装着/接続(接触)/接近させ、各電子音楽装置EMに可搬メディアMMを認識させると、可搬メディアMMから取得したIDカウンタ値(CT値)が、電子音楽システムにおいて当該電子音楽装置のIDを示す機器IDとして登録される。機器IDとして登録される可搬メディアMMのCT値は、各電子音楽装置EMに機器IDが登録される毎にカウントアップ更新されるので、各電子音楽装置EMには、ユーザが物理的に順次アプローチするだけで、この電子音楽システム上でユニークな夫々の機器IDを、簡単かつ任意に、所定の順位で付与することができる。また、第2実施形態では、IDカード(物体)や身体(生体)等の認証体AUを各電子音楽装置EMに順次接近させ、このシステムを利用するユーザについて物体/生体認証が行われる毎に、付与済み機器IDからカウントアップ更新された機器IDが各電子音楽装置EMに登録されるので、同様に夫々の機器IDを付与することができる。
【0033】
〔第1実施形態による機器IDの付与態様〕
図2及び図3は、この発明の第1実施形態による機器IDの付与態様を説明するための図である。図2(1)は、第1実施形態において、図1(2)と同様の機器構成でネットワークCNに接続された5台の電子音楽装置EM1〜EM5に機器IDを付与する場合の説明図である。第1実施形態では、既述のように、ユーザは、IDカウンタ(カウント値記憶部)CTを内蔵したUSBメモリ等のID付与用可搬メディアMMを使って、可搬メディアMMのIDカウンタCTに記憶されたIDデータを各電子音楽装置EM1〜EM5に運び、各電子音楽装置では、IDデータに従って機器IDが付与される。IDデータ即ちカウンタCTのカウント値(CT値)は、当初は初期値=「0」であり、各電子音楽装置EM1〜EM5で可搬メディアMMの認識がある度に順次カウントアップ更新される。図2(1)の例では、〔1〕→〔2〕→…→〔5〕の順で、各電子音楽装置EM1〜EM5に可搬メディアMMを認識させ、夫々に機器ID=「0」〜「4」を付与していく。
【0034】
ここで、「認識する」とは、各電子音楽装置EMが可搬メディアMMとデータを授受し得る状態になることをいう。例えば、可搬メディアMMがFD等の着脱可能な記憶媒体であれば、記憶媒体駆動部に記憶媒体を装着したときに、各電子音楽装置EMがこの記憶媒体とデータ送受可能になることであり、USBI/F10の端子(スロット)にUSBメモリの端子を挿入したときに、このUSBメモリとデータ送受可能になることであり、可搬メディアMMが非接触型のICカードであれば、ICカードと交信するI/Fのリーダー(読取り)部に近付けたときに、このICカードと交信可能になることである。
【0035】
この付与例では、〔1〕最初に、第1電子音楽装置即ちDAW装置(PC+アプリケーション)EM1に対して、可搬メディアMMを認識させ、IDカウンタCTのカウント初期値(CT値)=「0」を機器IDとして付与し、マスター装置として機能するように設定すると共に、可搬メディアMMのIDカウンタCTについては「+1」だけカウントアップさせカウント値(CT値)=「1」に更新する。〔2〕次に、第2電子音楽装置即ち電子楽器EM2に対して、この可搬メディアMMを認識させ、そのCT値に従って機器ID=「1」を付与し、第1順位のスレーブ装置として機能するように設定すると共に、可搬メディアMMのIDカウンタCTをカウントアップしてCT値=「2」に更新する。IDカウント値(CT値)の初期値=「0」はマスターを意味するものとし、「1」以上のカウント値(CT値)はスレーブを意味するものとする。〔3〕〜〔5〕以下、同様に、第3〜第5電子音楽装置即ち音源装置EM3、ミキサー装置EM4及びレコーダ装置EM5に対して、順次、可搬メディアMMを認識させ、認識の度にカウントアップされるCT値=「2」〜「4」に従って機器IDを付与し、第2〜第4順位のスレーブ装置として機能するように設定する。従って、カウンタ内蔵の可搬メディア(USBメモリなど)MMを各電子音楽装置EM1〜EM5に認識させる順に、各電子音楽装置EM1〜EM5にそれぞれ機器ID=「0」〜「4」を付与する。
【0036】
ユーザが、電子音楽装置EMに一旦登録された機器IDをリセットをしたくなった場合は、何れかの電子音楽装置EMにおいて、可搬メディアMMを認識させた状態で「IDリセット」を指示すると、機器IDが登録されている全ての電子音楽装置EMにリセット指示が送られて機器IDが未付与の状態になると共に、可搬メディアMMのIDカウンタCT内に保存されているIDカウント値も初期値にリセットされる。
【0037】
ID付与用可搬メディアMMとしては、既に説明したように、カウントアップ等の演算制御機能を有しない単なる記憶メディアを用いることができるが、例えば、USBメモリやICカードの場合、各電子音楽装置EMへの応答処理やカウントアップ等の演算制御機能を組み込むことができるので、このような演算制御機能が組み込まれた演算制御機能付き記憶メディアを用いることもできる。単なる記憶メディアを用いる場合と演算制御機能付き記憶メディアを用いる場合でIDカウント値の取得・更新態様が異なる。
【0038】
(1)単なる記憶メディアの場合
第1実施形態において、単なる記憶メディアをID付与用可搬メディアMMに用いた場合は、図2(2)の左側に示すように、可搬メディアMMを認識した電子音楽装置EMは、可搬メディアMMに対するカウント値の読取り処理によって、可搬メディアMMのIDカウンタCTからカウント値(CT値)を取得し、取得したCT値で機器IDを設定すると、可搬メディアMMに対してIDカウンタCTのカウント値を書き換える。つまり、単なる記憶メディアの場合、各電子音楽装置EM1〜EM5は、可搬メディアMMを認識した時点のIDカウンタCTの値を見て、このIDカウント値を自身の機器IDとして記憶装置4の機器ID記憶領域に登録すると共に、可搬メディアMM内のIDカウンタCTの値をインクリメントして書き換えておく。
【0039】
図2(2)の右側に示すフローチャートは、第1実施形態で単なる記憶メディアをID付与用可搬メディアMMに用いた場合における各電子音楽装置EMの機器ID付与処理フローである。この電子音楽装置EMの各種処理モード待機状態において、設定操作子14中の機器ID付与処理モードスイッチが操作されると、CPU1は、この機器ID付与処理を開始し、まず、最初のステップP1で、可搬メディアMMを認識したか否か、例えば、可搬メディアMMが所定のメディア駆動部、メディア接続(接触)部或いはメディア読取り部に、装着、接続(接触)或いは近接した際にデータを授受し得る状態になったか否かを判定する。ここで、可搬メディアMMを認識しないときは(P1=NO)、直ちに、この機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0040】
一方、可搬メディアMMを認識したときには(P1=YES)、まず、ステップP2にて、認識された可搬メディアMMのIDカウンタCT内に保持されているIDカウント値を読み取る。続くステップP3では、IDカウンタCTのIDカウント値をこの電子音楽装置EMの機器IDとして記憶装置4内の機器ID記憶領域に登録し、さらに、次のステップP4で、可搬メディアMM内のIDカウント値をインクリメントして書き換える。そして、この機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0041】
(2)演算制御機能付き記憶メディアの場合
第2実施形態において、演算制御機能付き記憶メディアをID付与用可搬メディアMMに用いた場合は、図3の上部に示すように、可搬メディアMMを認識した電子音楽装置EMは、可搬メディアMMにIDカウント値(CT値)を要求して、可搬メディアMMから、IDカウンタCTのカウント値(CT値)を取得すると、取得したCT値で機器IDを設定するだけであり、可搬メディアMMのIDカウンタCTにおけるCT値の書換えは、可搬メディアMM内の演算制御部OPにより内部的に行われる。つまり、演算制御機能付き記憶メディアの場合、記憶メディアMMの演算制御部OPは、各電子音楽装置EM1〜EM5に対して、可搬メディアMMを認識した時点のIDカウンタCTの値を通知し、各電子音楽装置EM1〜EM5は、通知されたIDカウント値を機器IDとして登録し、可搬メディアMMは、演算制御部OPによりIDカウンタCTの値をインクリメントして書き換えておく。従って、電子音楽装置EM1〜EM5側からすると、IDカウント値の要求(Q2)は、ID書換えの指示も兼ねているということができる。
【0042】
図3の下部に示すフローチャートは、第1実施形態で演算制御機能付き記憶メディアをID付与用可搬メディアMMに用いた場合における各電子音楽装置EM側の機器ID付与処理フロー及び可搬メディアMM側の応答処理フローである。この電子音楽装置EMが各種処理モードを待機している状態で設定操作子14中の機器ID付与処理モードスイッチが操作されると、CPU1は、この機器ID付与処理を開始し、まず、最初のステップQ1で、図2(2)の機器ID付与処理フローにおけるステップP1と同様に、可搬メディアMMを認識したか否かを判定する。ここで、可搬メディアMMを認識しないときは(Q1=NO)、直ちに、この機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0043】
一方、可搬メディアMMを認識したときには(Q1=YES)、まず、ステップQ2にて、認識された可搬メディアMMに、IDカウンタCT内に保持されているIDカウント値を要求する。この要求に応じて、可搬メディアMMは、この要求に対する応答処理を開始し、最初のステップM1では、IDカウンタCTのIDカウント値を要求元の電子音楽装置EMに返信し、次のステップM2では、当該IDカウント値をインクリメントして書き換える。そして、当該電子音楽装置EMに対する応答処理を終了し、次の要求を待機する状態にリターンする。一方、電子音楽装置EMでは、ステップQ3で、可搬メディアMMからのIDカウント値を受信し、受信したIDカウント値を電子音楽装置EMの機器IDとして記憶装置4内の機器ID記憶領域に登録する。そして、この機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0044】
〔第2実施形態による機器IDの付与態様〕
図4〜図6は、この発明の第2実施形態による機器IDの付与態様を説明するための図である。図4は、第2実施形態において、図1(2)と同様の機器構成でネットワークCNに接続された5台の電子音楽装置EM1〜EM5に機器IDを付与する場合の説明図である。第2実施形態では、既述のように、各電子音楽装置EM1〜EM5に、ユーザが所有するユニークID付き非接触カード(物体)やユーザの身体部(生体)といったユーザに関する認証体AUを使って、ID(物体情報)や特徴的生体情報(指紋情報など)のユーザに関する特徴的データを各電子音楽装置EM1〜EM5に運び、各電子音楽装置では、この特徴的データに基づいて認証体AUが認証される度に、既に付与された機器IDよりカウントアップした機器IDが付与される。図4の例では、〔1〕→〔2〕→…→〔5〕の順で、認証体AUを各電子音楽装置EM1〜EM5に認証させ、図2(1)と同様に、夫々に機器ID=「0」〜「4」を付与する。
【0045】
ここで、「認証する」とは、ユーザに関する認証体AUから抽出(検出)された特徴的な情報と予めユーザに対応して登録されている検証用基準情報とが一致することを確認することをいう。例えば、非接触カードなどの物体認証体AUであれば、各電子音楽装置EMのリーダー部に近付けたときに、各電子音楽装置EMが、この物体認証体(非接触カード)に記録されたID情報を読み取り、このユーザに関して予め登録されている認証用基準ID情報と照合して両ID情報の一致を確認することである。また、ユーザの指などの生体認証体AUであれば、各電子音楽装置EMのリーダー部に指を当てたときに、各電子音楽装置EMが、この物体認証体(ユーザの指)から特徴的指紋情報を読み取り、このユーザに関して予め登録されている認証用基準指紋情報(指紋パターン)と照合して両指紋情報の一致を確認することである。
【0046】
図5の機器ID付与手順例に従ってより詳しく説明する。この例では、説明を簡単にするために、電子音楽システムの構成要素になり得る電子音楽装置として、3台の電子音楽装置EMA〜EMC(「電子音楽装置A」〜「電子音楽装置C」)がネットワークで接続されているものとする。これらの電子音楽装置EMA〜EMCは、予め、この電子音楽システムを利用するユーザに対応して、所定のID情報/特徴的な生体情報を認証用基準情報として記憶装置4の基準情報記憶領域に記憶している。ユーザは、ユーザ自身に関する認証体(所定のID情報を記録したIDカード等のユーザ所有の物的認証体/ユーザの指などの生体的認証体)AUを、順次、各電子音楽装置EMA〜EMCの認証体読取り部近傍に接近させる。各電子音楽装置EMA〜EMCは、認証体AUから読み取られたユーザに関する特徴的情報(ID情報/特徴的生体情報)及び予め用意された認証用基準情報(認証用基準ID情報/認証用基準生体情報)に基づいて認証処理〔物体認証処理/生体認証処理(指紋認証処理など)〕を行う。そして、認証処理を行うによって認証体AUを認証する毎に、他の電子音楽装置に機器IDの付与状況を問い合わせ、認証した時点で他の電子音楽装置に付与されている機器IDの値より「+1」だけカウントアップした値を、認証をした電子音楽装置の機器IDとして記憶装置4の機器ID記憶領域に登録する。
【0047】
例えば、図5(1)のように、まず第1電子音楽装置(「電子音楽装置A」)EMAが認証体AUを検証すると、第1電子音楽装置EMAは、(1)第2電子音楽装置(「電子音楽装置B」)EMBにID付与状況を問い合わせて回答「未付与」を受け、同様に、(2)第3電子音楽装置(「電子音楽装置C」)EMCにID付与状況を問い合わせて回答「未付与」を受けると、IDが付与された電子音楽装置が他にないので、(3)自身の機器IDとして特定の値=「0」を新たに付与し、自身をマスター装置に設定する。次に、図5(2)のように、第2電子音楽装置EMBが認証体AUを検証すると、第2電子音楽装置EMBは、(1)第1電子音楽装置EMBにID付与状況を問い合わせて付与済み機器ID値=「0」の回答を受けると共に、(2)第3電子音楽装置EMCへのID付与状況問合せで回答「未付与」を受けると、最大の付与済み機器ID値が「0」なので、(3)自身の機器IDとして「0」+「1」=「1」を新たに付与し、自身を第1順位のスレーブ装置に設定する。さらに、第3電子音楽装置EMCが認証体AUを検証した場合は(図示せず)、第3電子音楽装置EMCは、ID付与状況の問合せに対して第1及び第2電子音楽装置EMA,EMBから夫々付与済み機器ID値=「0」,「1」の回答を受けるので、最大の付与済み機器ID値=「1」から「+1」だけカウントアップした機器ID値=「2」を自身に付与し、自身を第2順位のスレーブ装置に設定する。
【0048】
図6に示すフローチャートは、第2実施形態における各電子音楽装置EMaの機器ID付与処理フロー及びこれに対する他の電子音楽装置EMeの応答処理フローである。この電子音楽装置EMが各種処理モードを待機している状態において、設定操作子14中の機器ID付与処理モードスイッチが操作されると、CPU1は、この機器ID付与処理を開始し、まず、最初のステップA1で、物体/人体認証体AUを検出したか否かを判定する。ここで、認証体AUを検出しないときは(A1=NO)、直ちに、この機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0049】
一方、物体/人体認証体AUが認証体読取り部近傍に接近したことを検出したときは(S1=YES)、ステップA2に進み、認証体AUから物体/人体情報入力回路11を通じて入力された物体情報/生体情報からユーザに関する特徴的な情報〔非接触IDカードのような物体認証体AUではID情報、ユーザの指のような生体認証体AUでは特徴的生体情報(特徴的指紋情報)〕を抽出し、これを取得してRAM2の所定領域に保持する。
【0050】
次のステップA3では、認証体AUから取得した特徴的情報(ID情報や特徴的生体情報)と、予め登録してある認証用基準情報(認証用基準ID情報や認証用基準生体情報)とを比較し、続くステップA4で、両情報が一致しているか否かを判定する。ここで、両情報が一致しているとき即ちユーザに関する認証がなされたときは(A4=YES)、ステップA5に進んで、ネットワークCNに接続された他の電子音楽装置EMeに機器IDの登録状況を問い合わせる。他の電子音楽装置EMeは、これに応じて、電子音楽装置EMaからの問合せに対する応答処理を開始し、ステップE1にて、現在、当電子音楽装置EMeの機器IDが登録されている場合は、機器ID記憶手段に登録されている機器IDの値を返信し、機器IDが登録されていない場合には、機器IDが未付与である旨を返信する。そして、電子音楽装置EMaに対応する応答処理を終了する。
【0051】
これに対して、ユーザに関する認証を行った電子音楽装置EMaは、問い合わせに対する回答を他の全ての電子音楽装置EMeから受信すると、ステップA6で、他の電子音楽装置EMeから受信した回答を調べ、他の全ての電子音楽装置EMeにおいて未だ機器IDが付与されていない場合は、自身の機器IDとして特定の値=「0」を付与し、自身をマスター装置に設定する。また、機器IDが付与されている電子音楽装置EMeがある場合には、現在付与されている機器IDの値のうち最も大きい機器ID値に「+1」を加えた値を、この電子音楽装置EMaの機器IDとして、記憶装置4の機器ID記憶領域に認証用基準情報とセットで登録する。
【0052】
ステップA4の判定で、認証体AUから取得した特徴的情報と、予め登録してある認証用基準情報とが一致しないと判定したときは(S4=NO)、ステップS7に進んで、ディスプレイ15乃至サウンドシステム16を通じて、認証に失敗した旨をユーザに報知するる。このステップA7では、必要に応じて、ステップA2で認証体AUから取得した抽出情報を認証用基準情報として基準情報記憶領域に登録する。ステップA6でのID登録処理或いはステップA7での認証失敗後処理を終えると、RAM2上の特徴的情報記憶領域をクリアしてこの機器ID付与処理を終了し、元の待機状態にリターンする。
【0053】
ステップA6では、機器IDを認証用基準情報とセットで登録しておくと、1つのネットワークCN内に存在する複数の電子音楽装置をユーザ毎の認証用基準情報でグループ化し、各グループ内で任意に機器IDを付与することができる。つまり、電子音楽装置の制御の際に、例えば、或るユーザに対応する認証用基準情報を指定し、指定された認証用基準情報とセットで登録された機器IDに従って電子音楽システムの機器構成を特定すると、当該ユーザに対応する同一の認証用基準情報で機器IDが登録されたグループの電子音楽装置のみが制御の対象となり、簡単にユーザ毎のグループ化を行うことができる。
【0054】
なお、実施形態2で、認証体AUにIDカードを用いて物体認証毎に値を更新して機器IDを付与する方式では、前述した可搬メディアMM内のIDカウンタCTの更新態様を併用してもよい。IDカウンタCTを用いるメリットは、どの値まで機器IDが付与されたかを可搬メディアMMが覚えている点である。従って、物体認証毎に値を更新するIDカウンタCTをIDカードAUに内蔵させ、物体認証が成功したときにIDカウンタCTの値をも参照して新たな機器IDを決定し、これを登録するように構成すると、機器ID付与済みの電子音楽装置が一時的にネットワークCNから外れた後、他の電子音楽装置に機器IDを付与しようとした場合であっても、外れた電子音楽装置に付与された機器IDと同一値の機器IDを付与せず、新規な値の機器IDを付与することができる。
【0055】
〔種々の実施態様〕
以上、図面を参照しつつこの発明の好適な実施の一形態について説明したが、これは単なる一例であって、この発明は、発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、機器IDの付与に際し、実施例では、IDカウンタの値を「+1」ずつアップしたが、「−1」ずつダウンしてもよい。また、飛び飛びの値でアップ又はダウンしていってもよいし、IDカウンタの値に数字ではなく文字や記号を用いてこれらの値に予め順位付けをしておき(例えば、アルファベット順の文字、50音順の仮名など)、認識毎或いは認証毎に下の順位の値に更新するようにしてもよい。
【0056】
各電子音楽装置に付与された機器IDについては、各装置の電源をオフした後でも、夫々の装置が覚えておくようにしてもよいし、各装置の電源オフに応じて当該装置の機器IDを消去してもよい。また、何れにするかをユーザが選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
EM:EMa,EMe;EM1〜EM5;EMA〜EMC 電子音楽装置、
MM IDカウンタCTを内蔵したID付与用可搬メディア(USBメモリ等)、
AU 物体/生体認証体(ユニークID付き非接触カード等)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークで接続された複数の電子音楽装置から成る電子音楽システムであって、
各電子音楽装置は、
IDカウンタを有する可搬メディアを認識する可搬メディア認識手段と、
可搬メディア認識手段により可搬メディアが認識されたことに応じて該可搬メディアからIDカウンタの値を取得するID取得手段と、
ID取得手段により取得されたIDカウンタの値を、この電子音楽システムにおいて当該電子音楽装置のIDを示す機器IDとして登録するID登録手段と、
ID登録手段により登録された機器IDに基づいて、機器IDが登録された他の電子音楽装置との間で、音楽情報に関する制御を行う制御手段と
を具備し、
可搬メディアのIDカウンタは、各電子音楽装置に機器IDが登録される毎に値が更新される
ことを特徴とする電子音楽システム。
【請求項2】
ネットワークで接続された複数の電子音楽装置から成る電子音楽システムであって、
各電子音楽装置は、
予め登録された認証用基準情報に基づいて、ユーザに関する物体認証乃至生体認証を行う認証手段と、
認証手段によりユーザに関する認証がなされたことに応じて、この電子音楽システムにおいて夫々の電子音楽装置のIDを示す機器IDの付与状況を他の電子音楽装置に問い合わせ、当該他の電子音楽装置における機器IDの付与状況を取得する付与状況取得手段と、
付与状況取得手段により取得された他の電子音楽装置の機器ID付与状況に基づいて、当該電子音楽装置の機器IDを登録するID登録手段と、
ID登録手段により登録された機器IDに基づいて、機器IDが登録された他の電子音楽装置との間で、音楽情報に関する制御を行う制御手段と
を具備する
ことを特徴とする電子音楽システム。
【請求項3】
各電子音楽装置に登録された機器IDのうち、特定の機器IDはマスター装置を規定するものであり、その他の機器IDはスレーブ装置を規定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子音楽システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−160180(P2010−160180A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540(P2009−540)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】