説明

電極芯線の接合方法及び電極芯線が接合されて成る電子ユニット

【課題】作業時間の短縮化と接合強度の向上を図ることができる電極芯線の接合方法及び電極芯線が接合されて成る電子ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】基板2上に半田粒子7a入りの熱硬化性樹脂8aを複数の電極3を覆うように供給した後、基板2の上方に各芯線6を各電極3と上下に対向させて配置し、芯線6の上方にシート状部材11を配置する。そして、シート状部材11の上方から熱圧着ツール12によりシート状部材11を介して各芯線6及び熱硬化性樹脂8aを押圧加熱し、熱硬化性樹脂8aを熱硬化させるとともに熱硬化性樹脂8aに含まれる半田粒子7aを溶融させる。その後熱硬化性樹脂8aの熱硬化物8から熱圧着ツール12を離間させ、半田粒子7aの溶融物(半田溶融物7b)が固化して生じた半田固化物7によって電極3と芯線6を接合させ、最後に熱硬化物8からシート状部材11を剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に並設された複数の電極に電子部品が備える複数の被覆付き導線の芯線を接合させる電極芯線の接合方法及び電極芯線が接合されて成る電子ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に設けられた電極と電子部品が備える被覆付き導線の芯線を接合させる方法として半田ごてを用いた方法が知られている。この半田ごてを用いた電極と芯線の接合方法は、電極と芯線の重ね合わせ部分に半田ごてで加熱溶融させた半田を供給し、その後半田を冷却固化させることによって電極と芯線を機械的及び電気的に接合させるものである(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−57436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような半田ごてを用いた方法では、電極と芯線の接合箇所が複数あるような場合には、複数の電極に芯線を一本ずつ接合していく必要があるため、作業時間が長くなるという問題点があった。また、電極と芯線は半田の固化物によって電気的な接合のみならず機械的な接合もなされるが、その接合強度はあまり高いものではなく破損が起き易いという問題点があった。
【0004】
そこで本発明は、作業時間の短縮化と接合強度の向上を図ることができる電極芯線の接合方法及び電極芯線が接合されて成る電子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の電極芯線の接合方法は、基板上に並設された複数の電極に電子部品が備える複数の被覆付き導線の芯線を接合させる電極芯線の接合方法であって、電極を上に向けた基板に半田粒子入りの熱硬化性樹脂を複数の電極を覆うように供給する樹脂供給工程と、熱硬化性樹脂が供給された基板の上方に各芯線を各電極と上下に対向させて配置する芯線配置工程と、各電極と対向させて配置された複数の芯線の上方にシート状部材を配置するシート状部材配置工程と、前記シート状部材の上方から熱圧着ツールにより前記シート状部材を介して各芯線及び熱硬化性樹脂を押圧加熱し、熱硬化性樹脂を熱硬化させるとともに熱硬化性樹脂に含まれる半田粒子を溶融させる熱圧着工程と、熱硬化性樹脂の熱硬化物から熱圧着ツールを離間させて前記熱硬化物を冷却し、半田粒子の溶融物が固化して生じた半田固化物によって電極と芯線を接合させる冷却工程と、前記熱硬化物から前記シート状部材を剥離するシート状部材剥離工程とを含む。
【0006】
請求項2に記載の電極芯線の接合方法は、請求項1に記載の電極芯線の接合方法であって、各芯線が複数の導体細線を撚り合わせた撚線から成り、半田粒子の溶融物が導体細線同士の間の溝状部に沿って濡れ広がった状態で固化するようにした。
【0007】
請求項3に記載の電極芯線が接合されて成る電子ユニットは、複数の電極が並設された基板と、基板の複数の電極と接合される複数の被覆付き導線の芯線を備えた電子部品と、各芯線を基板に固定する半田粒子入りの熱硬化性樹脂の熱硬化物と、各電極と各芯線を接合する半田固化物とから成り、前記半田固化物は、熱硬化性樹脂に含まれる半田粒子が溶融して固化したものである。
【0008】
請求項4に記載の電極芯線が接合されて成る電子ユニットは、請求項3に記載の電極芯線が接合されて成る電子ユニットであって、基板に固定された各芯線の上面と前記熱硬化物の上面が同一高さのフラット面となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、基板に半田粒子入りの熱硬化性樹脂を供給し、各電極と各芯線とを上下に対向させたうえでシート状部材を介して熱圧着ツールにより熱硬化性樹脂を押圧加熱することで、熱硬化性樹脂を熱硬化させて各芯線を基板に固定させ、また熱硬化性樹脂に含まれる半田粒子の溶融物が固化して生じた半田固化物によって電極と芯線を接合させるようにしているので、電極と芯線の接合箇所が複数ある場合でもこれを一括して接合することができ、作業時間を短縮化することができる。また、各芯線は半田固化物によって電極に接合されて固定されるだけでなく、熱硬化性樹脂の熱硬化物によって基板に強固に固定されるので、接合部の接合強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電子ユニットの斜視図、図2(a),(b)は本発明の実施の形態1における電子ユニットの電極芯線の接合部分の断面図、図3は本発明の実施の形態1における被覆付き導線の斜視図、図4(a),(b),(c),(d),(e)は本発明の実施の形態1における電極芯線の接合工程の説明図である。
【0011】
図1及び図2(図2(a)は図1の矢視II−II断面図、図2(b)は図2(a)の矢視B−B断面図)において、電子ユニット1は、基板2上に並設された複数の電極3と電子部品4が備える複数の被覆付き導線5の芯線6とを接合させて成るものであり、各芯線6は基板2上で熱硬化した半田粒子7a入りの熱硬化性樹脂8a(図4(a)参照)の熱硬化物8によって基板2に強固に固定されている。熱硬化物8の内部には、熱硬化性樹脂8aに含まれる半田粒子7aの溶融物(半田溶融物7b)が固化して生じた半田固化物7が分散しており、電極3と芯線6は、これら電極3と芯線6の間で半田溶融物7bが固化した半田固化物7によって接合されている。本実施の形態では、芯線6は図3に示すように複数の導体細線6aを撚り合わせた撚線から成っており、電極3と芯線6は主として導体細線6a同士の間の溝状部9内で半田溶融物7bが固化した半田固化物7によって接合されている。
【0012】
図4を用いて電極芯線(電極3と芯線6の間)の接合方法について説明する。これには先ず、電極3を上に向けた基板2を熱圧着作業用のステージ10に載置し、基板2上に半田粒子7a入りの熱硬化性樹脂8aを供給する(図4(a)。樹脂供給工程)。このとき、基板2の複数の電極3が全て熱硬化性樹脂8aによって覆われるようにする。なお、基板2上に供給される半田粒子7a入りの熱硬化性樹脂8aは液状のものであってもよいし、シート状に加工されたものであってもよい。
【0013】
基板2上に熱硬化性樹脂8aを供給したら、電子部品4の複数の被覆付き導線5の芯線(複数の芯線6)を基板2の電極3間の間隔と同じ間隔に整列したうえで各芯線6を各電極3と上下に対向させて配置する(芯線配置工程)。この際、熱硬化性樹脂8aが液状であれば各芯線6を熱硬化性樹脂8aに没入させた状態で配置することで、熱圧着工程(後述)まで芯線6を仮止めすることができる(図4(b))。次に、各電極3と対向させて配置した複数の芯線6の上方にテフロン(登録商標)等の耐熱性材料から成るシート状部材11を配置する(シート状部材配置工程。図4(b))。そして、シート状部材11の上方から降下させた熱圧着ツール12により、シート状部材11を介して各芯線6を各電極3へ押圧するとともに、熱硬化性樹脂8aを基板2上で押圧加熱する(図4(c)。熱圧着工程)。この熱硬化性樹脂8aの押圧加熱により熱硬化性樹脂8aは熱硬化して熱硬
化物8となり、その熱硬化物8によって各芯線6は基板2に強固に固定される。熱圧着工程では、熱圧着ツール12はシート状部材11を介して熱硬化性樹脂8aを押圧加熱するので、熱圧着ツール12に熱硬化性樹脂8aを付着させて汚す心配がない。
【0014】
この熱圧着工程では、熱硬化性樹脂8aに含まれる半田粒子7aは溶融して半田溶融物7bとなるが、その半田溶融物7bの一部は芯線6の溝状部9内に濡れ広がる(図2(b)参照)。
【0015】
ここで、溝状部9は全体として芯線6の延びる方向に延びているので、溝状部9内の半田溶融物7bは熱硬化性樹脂8aが押圧されて上下方向の圧縮力が作用した場合であっても、主として芯線6の延びる方向へ濡れ広がり、隣接する他の芯線6或いは電極3の方向(電極3の並設方向)へはあまり流れない。このため両電極3と芯線6の間には電極3と芯線6の接合に十分な量の半田溶融物7bが確保される。
【0016】
熱硬化性樹脂8aが熱硬化して熱硬化物8となったら、シート状部材11から熱圧着ツール12を離間させて上方に引き上げ、熱硬化物8を常温で冷却させる(図4(d)。冷却工程)。これにより熱硬化性樹脂8a内に生じていた半田溶融物7bは固化して半田固化物7となる。電極3と芯線6はこれら電極3と芯線6の間の半田溶融物7bが固化することによって接合されるが、前述のように、溝状部9内には電極3と芯線6の接合に十分な量の半田溶融物7bが確保されているので、電極3と芯線6はその十分な量の半田溶融物7bの固化物(半田固化物7)によって確実に接合される。また、半田溶融物7bは溝状部9に沿って濡れ広がって固化しているので、電極3や芯線6に対する半田の接触面積が広くなり、接合強度が高く電気抵抗の低い接続状態を実現することができる。熱硬化物8が十分に冷却されたら、熱硬化物8の上面に貼り付いた状態のシート状部材11を図4(e)の矢印Aの方向に引っ張って引き剥がす(図4(e)。シート状部材剥離工程)。これにより電極芯線の接合工程が終了する。
【0017】
このように、本実施の形態における電極芯線の接合方法では、基板2に半田粒子7a入りの熱硬化性樹脂8aを供給し、各電極3と各芯線6とを上下に対向させたうえでシート状部材11を介して熱圧着ツール12により熱硬化性樹脂8aを押圧加熱することで、熱硬化性樹脂8aを熱硬化させて各芯線6を基板2に固定させ、また熱硬化性樹脂8aに含まれる半田粒子7aの溶融物(半田溶融物7b)が固化して生じた半田固化物7によって電極3と芯線6を接合させるようにしているので、電極3と芯線6の接合箇所が複数ある場合でもこれを一括して接合することができ、作業時間を短縮化することができる。また、各芯線6は半田固化物7によって電極3に接合されて固定されるだけでなく、熱硬化性樹脂8aの熱硬化物8によって基板2に強固に固定されるので、接合部の接合強度を向上させることができる。
【0018】
また、このような電極芯線の接合方法によって電極3と芯線6が接合されて成る電子ユニット1では、熱圧着ツール12の押圧により基板2に固定された各芯線6の上面と熱硬化物8の上面が同一高さのフラット面となっている(図2(a)参照)。このため、半田ごてで半田を盛り付けていた従来よりも電極芯線の接合部の厚さを薄厚にすることができる。しかも、芯線6は半田固化物7と熱硬化物8とによって基板2に固着されているので、厚さを薄厚にしても十分な接合強度を確保することができる。更に、その接合部の上面をフラットにすることができるので、軽薄化する電子機器へ組み込み易い電子ユニット1を実現することができる。
【0019】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における電子ユニットの電極芯線の接合部分の断面図、図6は本発明の実施の形態2における被覆付き導線の斜視図である。この実施の形態2では
、図5に示すように、被覆付き導線5の芯線16が複数の導体細線を撚り合わせた撚線ではなく1本の導線から成るものであるが、上述の実施の形態1の場合と同様の工程で基板2上の電極3に接合することができ(図6)、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることができる。しかし、実施の形態1のように、芯線6が複数の導体細線6aを撚り合わせた撚線から成っており、熱硬化性樹脂8aに含まれる半田粒子7aの溶融物(半田溶融物7b)が導体細線6a同士の間の溝状部9に沿って濡れ広がった状態で固化するようになっているのであれば、電極芯線の接合部により多くの半田固化物7を集めることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0020】
作業時間の短縮化と接合強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における電子ユニットの斜視図
【図2】(a),(b)本発明の実施の形態1における電子ユニットの電極芯線の接合部分の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における被覆付き導線の斜視図
【図4】(a),(b),(c),(d),(e)本発明の実施の形態1における電極芯線の接合工程の説明図
【図5】本発明の実施の形態2における電子ユニットの電極芯線の接合部分の断面図
【図6】本発明の実施の形態2における被覆付き導線の斜視図
【符号の説明】
【0022】
1 電子ユニット
2 基板
3 電極
4 電子部品
5 被覆付き導線
6 芯線
6a 導体細線
7 半田固化物
7a 半田粒子
7b 半田溶融物(半田粒子の溶融物)
8 熱硬化物
8a 熱硬化性樹脂
9 溝状部
11 シート状部材
12 熱圧着ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に並設された複数の電極に電子部品が備える複数の被覆付き導線の芯線を接合させる電極芯線の接合方法であって、電極を上に向けた基板に半田粒子入りの熱硬化性樹脂を複数の電極を覆うように供給する樹脂供給工程と、熱硬化性樹脂が供給された基板の上方に各芯線を各電極と上下に対向させて配置する芯線配置工程と、各電極と対向させて配置された複数の芯線の上方にシート状部材を配置するシート状部材配置工程と、前記シート状部材の上方から熱圧着ツールにより前記シート状部材を介して各芯線及び熱硬化性樹脂を押圧加熱し、熱硬化性樹脂を熱硬化させるとともに熱硬化性樹脂に含まれる半田粒子を溶融させる熱圧着工程と、熱硬化性樹脂の熱硬化物から熱圧着ツールを離間させて前記熱硬化物を冷却し、半田粒子の溶融物が固化して生じた半田固化物によって電極と芯線を接合させる冷却工程と、前記熱硬化物から前記シート状部材を剥離するシート状部材剥離工程とを含むことを特徴とする電極芯線の接合方法。
【請求項2】
各芯線が複数の導体細線を撚り合わせた撚線から成り、半田粒子の溶融物が導体細線同士の間の溝状部に沿って濡れ広がった状態で固化するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電極芯線の接合方法。
【請求項3】
複数の電極が並設された基板と、基板の複数の電極と接合される複数の被覆付き導線の芯線を備えた電子部品と、各芯線を基板に固定する半田粒子入りの熱硬化性樹脂の熱硬化物と、各電極と各芯線を接合する半田固化物とから成り、前記半田固化物は、熱硬化性樹脂に含まれる半田粒子が溶融して固化したものであることを特徴とする電極芯線が接合されて成る電子ユニット。
【請求項4】
基板に固定された各芯線の上面と前記熱硬化物の上面が同一高さのフラット面となっていることを特徴とする請求項3に記載の電極芯線が接合されて成る電子ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−4464(P2009−4464A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162072(P2007−162072)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】