電極製造方法および電極製造装置
【課題】加工速度を上昇させて電極を量産するに好適な電極製造方法および電極製造装置を提供する。
【解決手段】帯状の金属箔12の少なくとも一方の面上に電極活物質4b,6bを間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材11にレーザを照射して切断して、電極を製作する電極製造方法である。そして、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光を記憶・設定する。そして、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッド26から照射するようにした。
【解決手段】帯状の金属箔12の少なくとも一方の面上に電極活物質4b,6bを間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材11にレーザを照射して切断して、電極を製作する電極製造方法である。そして、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光を記憶・設定する。そして、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッド26から照射するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造方法および電極製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザを照射することにより、表面に形成した電極活物質層と共に集電体となる金属箔を切断して、平板状の電極を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、レーザの照射により、金属箔のみからなる部分を切断して電極端子を形成するとともに、電極活物質層が形成された部分に対しては切断面に沿った電極活物質層をレーザの熱作用によって除去し、電極活物質の溶融凝固部を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例のように、金属箔のみからなる加工領域と電極活物質層が形成された加工領域とで、領域毎にバリのない良好な切断品質を得るためには、照射するレーザの強度、スポット径、相対的移動速度等の加工条件を、加工領域毎に変更する必要がある。
【0006】
このため、加工ヘッドの位置信号に基づき、加工している領域が確認され、領域に対応する加工条件が選択される。また、加工ヘッドの位置信号に基づき、電極活物質層が形成された部分の切り出しを実行する領域と端子の切り出しを実行する領域との境界位置に加工ヘッドが到達したと確認された時点で加工ヘッドを停止させて加工条件の変更が実行される。この加工条件の変更は、新たに加工する領域を判定し、その領域に適する加工条件を選択し、選択した加工条件により新たな領域の加工が再開されることになる。
【0007】
以上のように、通常のシーケンス制御による加工条件の変更においては、常に加工ヘッドの位置が確認され、領域の境界において領域の確認、加工条件の確認等の信号のやり取り時間を必要とし、結果して加工ヘッドが停止される等、加工速度の高速化に限界があった。そのため、加工速度を上昇させて電極を量産することに限界があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、加工速度を上昇させて電極を量産するに好適な電極製造方法および電極製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法である。
【0010】
そして、本発明においては、レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定するようにした。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明では、レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させる。同時に、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射する。これにより、加工速度を低下させずに、ワークに与えるエネルギを切断部位毎に制御して、バリのない良好な切断品質を保ちながら、同じ速度で切断加工でき、電極を効率的に量産できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電極を適用する電池の平面図。
【図2】同じく電極を適用する電池の断面図。
【図3】正極電極の正面図(A)及び側面図(B)。
【図4】負極電極の正面図(A)及び側面図(B)。
【図5】ロール状に巻取られた状態からの展開状態を示す帯状電極材の側面図。
【図6】帯状電極材の断面図。
【図7】負極用帯状電極材の要部を示す断面図(A)および平面図(B)。
【図8】正極用帯状電極材の要部を示す断面図(A)および平面図(B)。
【図9】レーザ切断装置の概略を示す説明図。
【図10】レーザヘッドの構造を示す側面図。
【図11】負極用帯状電極材の切断面(A)、レーザ照射タイミング(B)、レーザ出力(C)、レーザエネルギ(D)の時間的な変化を示すタイムチャート。
【図12】正極用帯状電極材の切断面(A)、レーザ照射タイミング(B)、レーザ出力(C)、レーザエネルギ(D)の時間的な変化を示すタイムチャート。
【図13】本発明の第2実施形態の電極製造装置に使用するレーザヘッドの構造を示す概略構成図。
【図14】図13に示したレーザヘッドのA部分の断面図(A)、及びB部分の断面図(B)。
【図15】図13に示すレーザヘッドの動作状態を示す説明図。
【図16】図15に続くレーザヘッドの動作状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電極製造方法および電極製造装置を、リチウムイオン電池における電極製造方法および電極製造装置に適用したものについて説明する。
【0014】
まず、リチウムイオン電池の構成を、例えば、図1、2に示すリチウムイオン二次電池を一例として、その概要を説明する。図1は本発明の適用例としてのリチウムイオン二次電池の平面図であり、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。図2に示すように、リチウムイオン二次電池1は、電池要素2と、電池要素2を収容する外装ケース3と、を備える。
【0015】
電池要素2は、正極電極4、電解質層としてのセパレータ5、及び負極電極6を順次積層した積層体として構成される。
【0016】
正極電極4は、図3に示すように、板状の正極集電体4aの両面に正極層4bを有している。正極集電体4aには、正極層4bが配置されている部分から突出して、後述する正極タブ8と電気的に接続するための端子10aが設けられている。正極集電体4aの端子10aを構成する突出部分には、両面に配置する正極層4bが配置されていない。正極集電体4aには、例えば、アルミニウム箔が使用される。また、正極層4bには、正極活物質として、例えば、LiMn2O4、導電助剤には、アセチレンブラック、バインダーとして、PVDFを使用する。そして、これらを、例えば、それぞれ80質量%、10質量%、10質量%に配合し、NMP(N−メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを調製し、正極集電体4aの両面に順次塗布し、乾燥させて、正極電極4を形成する。
【0017】
また、正極電極4の端子10aの根元領域及び正極層4bの端子10aに臨む端部領域の表面には、セパレータを介して隣接して積層される負極電極との電気的な短絡を防止するために、図示しないが、例えば、ポリプロピレン等の樹脂からなる絶縁樹脂テープが貼付けられている。
【0018】
負極電極6は、図4に示すように、板状の負極集電体6aの両面に負極層6bを有している。負極集電体6aには、負極層6bが配置されている部分から突出して、後述する負極タブ9と電気的に接続するための端子10bが設けられている。負極集電体6aの端子10bを構成する突出部分には、両面に配置する負極層6bが配置されていない。負極集電体6aには、例えば、銅箔が使用される。また、負極層6bは、負極活物質として、例えば、グラファイト、導電助剤には、アセチレンブラック、バインダーとして、PVDFを使用する。そして、負極活物質、導電助剤、バインダーをそれぞれ、例えば、90質量%、2質量%、8質量%に配合し、NMP(N−メチルピロリドン)に分散させて負極スラリーを調製し、負極集電体6aの両面に順次塗布し、乾燥させて、負極電極6を形成する。
【0019】
なお、図示するリチウムイオン二次電池1においては、電池要素2の最外層に配置される正極電極4においては、正極集電体4aの片面のみに正極層4bが形成される。また、電池要素2の最外層に配置される負極電極6においても、負極集電体6aの片面のみに負極層6bが形成される。
【0020】
隣接する正極電極4、セパレータ5、及び負極電極6が一つの単電池7を構成しており、リチウムイオン電池1は積層された複数の単電池7をそれぞれ電気的に並列接続して構成される。
【0021】
外装ケース3は、アルミニウム等の金属をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムのシート材からなる。外装ケース3は、電池要素2を収納した状態で、ケース外周部が熱融着によって接合される。この外装ケース3には、電池要素2からの電力を外部に取り出すため、外部端子としての正極タブ8及び負極タブ9が設けられる。
【0022】
正極タブ8の一端は外装ケース3の外側にあり、正極タブ8の他端は外装ケース3の内部で各正極集電体4aの端子10aの集合部に接続する。負極タブ9の一端は外装ケース3の外側にあり、負極タブ9の他端は外装ケース3の内部で各負極集電体6aの端子10bの集合部に接続する。
【0023】
外装ケース3は、二次電池の組立時に、1枚のラミネートフィルムを折り返して、内部に電池要素2を収容し、正極タブ8及び負極タブ9を取出す2辺を熱融着により封止し、残る一辺は封止せずに上方へ開いた開口を備える袋状に形成する。上方に開いた開口は、外装ケース3内に収容された電池要素2への電解液の注液口に使用され、注液完了後に封止する。電解液は、例えば、1mol/リットルのLiPF6,LiBF4等を支持塩とし、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(質量比50:50)を溶媒とするものが用いられる。
【0024】
なお、外装ケース3として、上記形態では1枚のラミネートフィルムを2つ折りにしたものを例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2枚のラミネートフィルムを用いてもよい。この場合、3辺をまず熱融着してラミネートフィルムを袋状に形成する。また、外装ケース3として、ラミネートフィルムにより袋状としたものに代えて、缶等による外装ケース3であってもよい。
【0025】
次に、正極電極4及び負極電極6の製造方法について説明する。
【0026】
電極素材は、集電体4a,6aとなる帯状の金属箔12に活物質層4b,6bを間欠的に塗布し、乾燥され、プレスローラ等により加圧された後に、図5に示すように、ロール状に巻取られた状態で供給される。以下では、複数の活物質層4b,6bが配列された帯状の電極材を「帯状電極材11」という。また、正極用帯状電極材11aにあっては、上記に加えて、図5及び図6に示すように、塗布されている活物質層4bの一方の端部表面と金属箔12表面の一部とに跨って、絶縁樹脂テープ13が貼られて、ロール状に巻取られた状態で供給される。
【0027】
このロール状の帯状電極材11を展開すると、金属箔12の領域と活物質層4b,6bが塗布されている領域とが交互に配列されている。また、正極用帯状電極材11aにあっては、活物質層4bの一方の端部表面と金属箔12表面の一部とに跨って、絶縁樹脂テープ13が貼られている。しかも、塗布された活物質層4b,6bは、プレスローラ等による加圧により帯状の方向に伸されるため、その長手方向の寸法や長手方向の端部形状にバラツキを生ずる。
【0028】
このため、このような帯状電極材11を、後述するレーザ切断装置により切断して実際に使用する電極4,6とするには、図7及び図8に示すように、端子10を形成する側の活物質層4b,6bが塗布されている領域(活物質層領域)の端部を一部切断して、基準切断面(図中の地点a−b間)を形成する。そして、その基準切断面を基準として、所定寸法の金属箔12領域と金属箔12領域から離れた活物質層4b,6b領域の他端近傍とを夫々切断する必要がある。具体的には、上記基準切断面を基準として、金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10を形成する。また、上記基準切断面を基準として、活物質層4b,6b領域の他方の端部近傍を予め設定した所定寸法となる活物質切断面により切出して電極領域を形成する。
【0029】
負極用帯状電極材11bにあっては、図7に示すように、基準切断面(図中の地点a−b間)には、金属箔12の両面に活物質層6bを備える3層構造である。また、上記基準切断面を基準として金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10bとする切断面(遷移切断面、図中の地点b−c間)にも、切断初期には金属箔12の両面に活物質層6bを備える3層構造である。そして、遷移切断面が金属箔12に達した後は金属箔12のみが存在する1層構造(箔切断面、図中の地点c−e−f間)となる。
【0030】
また、正極用帯状電極材11aにあっては、図8に示すように、基準切断面(図中の地点a−b間)には、金属箔12の両面に活物質層4bと絶縁樹脂テープ13を備える5層構造である。また、上記基準切断面を基準として金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10aとする切断面(遷移切断面、図中の地点b−c間)にも、切断初期には金属箔12の両面に活物質層4bと絶縁樹脂テープ13を備える5層構造である。そして、遷移切断面が金属箔12に達した後の初期段階(図中の地点c−d間)においては、金属箔12の両面に絶縁樹脂テープ13が存在する3層構造があり、絶縁樹脂テープ13がない領域に達した段階で金属箔12のみが存在する1層構造(箔切断面、図中の地点d−e−f間))となる。
【0031】
また、正負極用帯状電極材11a,11bにおいて、上記基準切断面を基準として、図7及び図8に示すように、活物質層4b,6b領域の他方の端部を予め設定した所定寸法に切り出して電極領域とする活物質切断面(図中の地点g−h間)には、金属箔12の両面に活物質層4b,6bを備える3層構造となる。
【0032】
図9はレーザ切断装置20を示す。レーザ切断装置20は、帯状電極材11を搬送する搬送コンベア21と、帯状電極材11に向かってレーザヘッド26よりレーザビームを照射するレーザ照射装置25と、レーザヘッド26にアシストガスを供給するアシストガス供給装置22と、レーザヘッド26をX−Y軸方向に移動制御するX−Y軸ロボット23と、を備える。ここでは、X方向は帯状電極材11を横切る方向とし、Y方向は帯状電極材11に沿う方向とする。
【0033】
搬送コンベア21は、展開した帯状電極材11をレーザ照射装置25により電極とする切断中には停止され、1個毎の切断が終了する毎に活物質層4b,6bの配置ピッチ分だけ送る間欠搬送作動を実行する。切断後の電極4,6は順次搬送コンベア21によって次工程へ送られる。
【0034】
X−Y軸ロボット23は、搬送された帯状電極材11に対して、ロボットコントローラ23Aによりレーザヘッド26を、図7,8の地点a−b−c−d−e−f−g−hに沿って移動制御する。図11(A)及び図12(A)は、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面における層構造の時間的な変化を示す。先ず、上記した帯状電極材11の基準切断面(X方向)に沿い移動させる(図7,8中の地点a−b間、図11,12の時点t2−t3、以下同様に示す)。次いで、それに続く遷移切断面(X−Y方向)に沿い移動させ(地点b−c(−d)間、時点t3−t4)、金属箔12の箔切断面(X−Y方向→X方向)に沿って移動させる(地点d−e−f間、時点t4−t5)よう制御する。次いで、レーザヘッド26を、帯状電極材11の搬送方向とは逆方向のY方向に所定距離の空走させた(地点f−g間、時点t5−t6)後に、電極領域を形成するための活物質切断面に沿ってX方向に移動させる(地点g−h間、時点t6−t7)よう制御する。
【0035】
各切断面に対する移動速度は、ロボットスタート信号によりレーザヘッド26を移動開始させ、概ね等速状態で高速移動させる。例えば、一辺が200mm前後の電極を帯状電極材から切出す場合には、1個あたりの切出し時間を1secとする場合には、切出し長さは約400mm以上となるため、例えば、500mm/sと設定する。なお、空走時は、設定した速度に制約されることなく、更に高速移動させる。
【0036】
なお、搬送コンベア21を間欠搬送作動させることに代えて、停止させることなく連続搬送させるようにしてもよい。この場合には、X−Y軸ロボット23は、ロボットコントローラ23Aによりレーザヘッド26を搬送コンベア21の搬送方向であるY方向に同期して移動させると共に、それに上乗せして上記した移動制御を実行させる。
【0037】
レーザ照射装置25は、レーザヘッド26と、レーザヘッド26にファイバケーブルを介して発振したレーザビームを供給するレーザ発振機27と、レーザ発振機27で発振させるレーザビームの発振状態を制御するファンクションジェネレータ28と、を備える。レーザ光としては、波長が10μmのCO2レーザ光に比較して、切断速度を速くでき、しかも細く切断できて、切屑の発生が少ない、波長1mmのシングルモードのYAGレーザ光を使用する。
【0038】
レーザヘッド26は、図10に示すように、上端のファイバーコネクタを介して供給されたレーザビームを集光させて照射すると共に後述するアシストガスの放出口を備えるノズルチップ26Aを備える。また、レーザヘッド26には、ノズルチップ位置確認用のカメラ26Bと、アシストガスをノズルチップ26Aに供給するアシストガス供給口26Cと、を備え、ロボット23のX軸に取付られる。
【0039】
ファンクションジェネレータ28は、レーザ発振機27で発振させるレーザのパルス条件(周波数、DUTY比(連続発振はDUTY比100%)、ピーク出力)を設定する。本実施形態においては、ロボットスタート信号をロボットコントローラ23Aから受信した後の経過時間に応じて、基準切断面に対するパルス条件→遷移切断面に対するパルス条件→箔切断面に対するパルス条件→空走中の発進停止→活物質切断面に対するパルス条件を、順次設定して、レーザ発振機27によるレーザ発振を制御する。
【0040】
例えば、負極用帯状電極材11bに対しては、図11の(C)及び(D)に示すように、レーザヘッド26が基準切断面を通過する所定時間(t2−t3間)及び遷移切断面を通過する所定時間(t3−t4間)には、ピーク出力は小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。そして、レーザヘッド26が箔切断面に移行して箔切断面を通過する所定時間(t4−t5間)には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させるか周波数の小さい発振パルスとし、レーザヘッド26が空走中は発進停止させる。空走後の活物質切断面を通過する所定時間(t6−t7間)には、ピーク出力が小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。
【0041】
また、正極用帯状電極材11aに対しては、図12に示すように、レーザヘッド26が基準切断面を通過する所定時間(t2−t3間)には、ピーク出力が高く且つ周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。遷移切断面を通過する所定時間には、レーザヘッド26が活物質領域にある初期(t3−t4間)にはピーク出力が高く且つ周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。また、レーザヘッド26が活物質領域を離れて絶縁樹脂テープ13が切断面に存在する後期(t4−t8間)にはピーク出力を一時的に最大化させる。
【0042】
そして、レーザヘッド26が箔切断面に移行して箔切断面を通過する所定時間(t8−t5間)には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させるか周波数の小さい発振パルスとし、レーザヘッドが空走中は発進停止させる。空走後の活物質切断面を通過する所定時間(t6−t7間)には、ピーク出力が小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。
【0043】
アシストガス供給装置22は、供給装置22Aよりエアーホースを介してアシストガスをアシストガス供給口26Cに供給し、レーザヘッド26のレーザ光線の照射口と同軸に設けられたノズル26Aより噴出させる。噴出されたアシストガスは、レーザ光線による溶融部位を拡げると共に速やかに冷却する。また、アシストガスのON/OFFが自由に切替できるようエアーホースの途中に電磁弁26Dが接続されている。
【0044】
以上の構成の電極製造装置の動作について以下に説明する。
【0045】
X−Y軸ロボット23は、レーザヘッド26を、搬送コンベア21側方の加工開始位置に近接した待機位置に位置させている。
【0046】
先ず、搬送コンベア21によりロール状の帯状電極材11が展開されて搬送される。帯状電極材11の地点aがレーザヘッド26の待機位置とY軸方向で一致するまで搬送されると、搬送コンベア21が停止され、帯状電極材11が加工状態にセットされ、ロボットスタート信号が出力される。
【0047】
ロボットスタート信号によりX−Y軸ロボット23は、レーザヘッド26をX軸方向に移動させて、帯状電極材11を横断する方向に移動させる。また、ロボットスタート信号により、ファンクションジェネレータ28が起動されると共にアシストガス供給装置22の電磁弁26Dが開放され、レーザヘッド26のノズル26Aからレーザ光線とアシストガスを同軸で照射される。
【0048】
レーザヘッド26は、ロボットコントローラにより制御されるX−Y軸ロボット23により、ロボットスタートからの経過時間に応じて、地点aからb−c−d−e−f−g−hと移動され待機位置に復帰される。また、レーザヘッド26から照射されるレーザ光は、ファンクションジェネレータ28によりロボットスタートからの経過時間に応じて制御される。
【0049】
即ち、ロボットスタートからの経過時間が時点t2−t3間は基準切断面である図7,8中の地点a−b間を移動され、時点t3−t4間は遷移切断面である地点b−c(−d)間を移動され、時点t4−t5間は金属箔の箔切断面である地点d−e−f間を移動される。
【0050】
切断対象が負極用帯状電極材11bである場合には、時点t2−t3間は基準切断面を切断するために、また、時点t3−t4間は遷移切断面を切断するために、ピーク出力が小さく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射される。
【0051】
照射されたレーザ光は、帯状電極材11bの基準切断面を構成している活物質層6bを溶融させ、次いで金属箔12を溶融させ、次いで照射方向前方側にある活物質層6bを溶融させ、溶融物質は、ビームと同軸に噴射されたアシストガスで吹飛ばして切断する。
【0052】
また、切断対象が正極用帯状電極材11aである場合には、時点t2−t3間は図7,8中の地点a−bの絶縁樹脂テープ13が貼付けられた基準切断面を切断するために、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射する。
【0053】
即ち、通常のレーザ切断加工では、ワークを溶融し、溶融したものをアシストガスで吹飛ばすことで切断するため、レーザを吸収する活物質層4b上に貼られた樹脂製の絶縁テープ13を切断することはできない。
【0054】
しかしながら、本実施形態では、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射するため、下記のように、切断することができる。
【0055】
絶縁樹脂テープ13にレーザ光を照射すると、レーザ光は絶縁樹脂テープ13を透過し、活物質層4bにレーザ光が吸収される。このとき、高いパワー密度のレーザ光が照射されていることにより、活物質層4bが蒸発し、その蒸発する際の熱と圧力により絶縁樹脂テープ13の溶融が開始する。絶縁樹脂テープ13の溶融が進み、完全に切断されると切断部位から活物質層4bの蒸気が逃げるため、それ以上に絶縁樹脂テープ13に入熱しなくなり、溶融が収まる。そして、アシストガスが吹付けられていることにより、周辺の絶縁樹脂テープ13は冷却され、過度の範囲に絶縁樹脂テープ13が溶融することを防止できる。次いで照射方向前方側にある活物質層4bを溶融させ、照射方向前方側の絶縁樹脂テープ13についても照射方向手前側の絶縁樹脂テープ13と同様に切断され、レーザエネルギのみで絶縁樹脂テープ13を切断することができる。
【0056】
絶縁樹脂テープ13が切断可能な条件としては、例えば、切断速度670mm/s、アシストガス:ドライエアー、アシストガス流量:10L/minとした場合に、レーザエネルギを、例えば、240kW/mm2という非常に高いパワー密度とすることが必要である。
【0057】
また、正極用帯状電極材11aの時点t3−t4間の遷移切断面である地点b−c間の移動中においても、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射する。このため、上記したように、絶縁樹脂テープ13を合わせて、上記と同様に切断することができる。
【0058】
また、正極用帯状電極材11aの時点t4−t5間の絶縁テープ13が金属箔12上に存在する遷移切断面である地点c−d間の移動中においては、レーザヘッド26からピーク出力を一時的に最大化させた高い連続発振パルスのレーザ光が照射される。
【0059】
このため、レーザ光は絶縁樹脂テープ13を透過するが、照射先にある金属箔12がピーク出力を一時的に最大化させた高い連続発振パルスのレーザ光により溶融され、その溶融熱が絶縁樹脂テープ13を溶融させる。溶融された絶縁テープ13は、レーザ光と同軸に噴射されているアシストガスにより吹き分けられて切断されると共に、アシストガスにより、周辺の絶縁樹脂テープ13が冷却され、過度の範囲に絶縁樹脂テープ13が溶融することを防止できる。
【0060】
以降(負極用帯状電極材11bの地点c以降、正極用帯状電極材11aの地点d以降)の作動は、負極用帯状電極材11b及び正極用帯状電極材11aのいずれであっても、同じである。即ち、負極用帯状電極材11bの時点t4−t5(正極用帯状電極材11aの時点t8−t5)の箔切断面である負極用帯状電極材11bの地点c−e−f(正極用帯状電極材11aの地点d−e−f)間の金属箔12を切断する際には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させた発振パルスとして照射される。照射されたレーザ光は、ダイレクトに金属箔12に照射されるため、レーザ光が照射された部位のみの金属箔12を溶融させて、切断することができる。
【0061】
次いで、レーザヘッド26は、時点t5−t6間は、帯状電極材11の搬送方向とは逆方向のY方向に所定距離の空走させる地点f−g間を移動され、この空走中は、レーザ照射が停止される。
【0062】
そして、時点t6−t7の間は、電極領域を形成するための活物質切断面に沿ってX方向の地点g−h間を移動され、活物質切断面を切断するために、ピーク出力が小さく周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスが照射される。
【0063】
照射されたレーザ光は、帯状電極材11の活物質切断面を構成している活物質層4b,6bを溶融させ、次いで金属箔12を溶融させ、次いで照射方向前方側にある活物質層4b,6bを溶融させ、溶融物質は、ビームと同軸に噴射されたアシストガスで吹飛ばして切断する。
【0064】
その後に、レーザ照射およびアシストガスの噴射が停止されて、レーザヘッド26は待機位置に復帰される。
【0065】
以上の説明において、レーザヘッド26はX−Yロボット23により地点a−f間において等速度で移動されるものについて説明した。しかしながら、地点bにおいては、その移動方向がX軸方向からX−Y方向に、地点eにおいては、X−Y方向からX方向に、夫々移動方向が変化する。この移動方向の変化時には、レーザヘッド26の移動速度が一時的に低下することがあり、この移動速度の低下により、ワークに照射しているレーザエネルギが変化しない場合には、ワークへの入熱量が増加することが懸念される。
【0066】
このため、地点b及び地点eにおいては、ファンクションジェネレータ28で設定するパルス条件によるエネルギ量を一時的に低下させて、ワークへの過度の入熱量によるバリの発生や切屑の飛散を防止して、ワークの切断部位全域での良好な切断品質を維持することが望ましい。エネルギ量の低減は、周波数、DUTY比(連続発振はDUTY比100%)、ピーク出力のいずれであってもよい。ファンクションジェネレータ28は、このようなμsec単位での条件設定が可能であり、ワークの地点毎のパルス条件変更に非常に短い時間で対応させることができる。
【0067】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0068】
(ア)帯状の金属箔12の少なくとも一方の面上に電極活物質4b,6bを間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材11にレーザを照射して、金属箔12が露出した端子10と金属箔12の少なくとも一面に電極活物質4b,6bを備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法である。
【0069】
そして、本発明においては、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光を記憶・設定する。このため、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッド26から照射することにより、加工速度を落さずに、ワークに与えるエネルギを切断部位毎に制御して、バリのない良好な切断品質を保ちながら、同じ速度で切断加工でき、電極を効率的に量産できる。
【0070】
(イ)レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光の記憶・設定は、レーザヘッド26にファイバケーブルを介してレーザビームを供給するレーザ発振機27の発振状態を制御するファンクションジェネレータ28により実行される。このため、レーザ発振条件の変更を極めて短時間(μsec単位)に実行でき、切断加工速度を上昇でき、電極を効率的に量産できる。
【0071】
(ウ)予め設定した切断面は、前記絶縁樹脂テープ13を貼付けて備える部位を最初の切断面とする。このため、レーザヘッド26を切断面に沿って移動させるロボット23の位置バラツキの影響が最少となる時間帯(ロボットスタート位置に近い程時間の位置ズレが少ない)で、最も切断が困難で条件余裕度が狭い絶縁樹脂テープ13を貼付けて備える部位を切断するので、切断部全域での切断品質を保ちやすい。また、切断面が絶縁樹脂テープ13から金属箔12へ変化する部位は、エネルギ条件の変更の時間的猶予がない部位でもあるが、エネルギ条件の変更時間のズレが少なくできる。
【0072】
(エ)レーザヘッド26の移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッド26から照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させる。このため、ロボット23の運動方向の変化等の設備的な制約によりレーザヘッド26の移動速度が低下する部位、例えば、R部などにおいても、切断速度の低下に対応してレーザヘッド26から照射するレーザ光のエネルギ強度が低下され、ワークに過度の入熱が入ることを抑制でき、切断部全域で良好な切断品質を確保できる。
【0073】
(第2実施形態)
図13〜図16は、本発明を適用した電極製造装置の第2実施形態を示し、図13はレーザヘッドのノズル部を示す概略図、図14(A),(B)は、ノズル部の断面図、図15、図16は動作説明図である。本実施形態においては、レーザヘッド26に集塵装置を備える構成を第1実施形態に追加したものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0074】
図13において、本実施形態の電極製造装置におけるレーザヘッド26には、ノズル26Aを取囲む筒状部材30と、筒状部材30の外周に嵌合して筒状部材30との間に空間部を形成する外側カバー35と、より構成される集塵ノズル29を備える。
【0075】
筒状部材30は、筒状の内周面がノズル26A先端側で小径となり、ノズル26A後端側で大径となるテーパ状に形成されて、ノズル後端側に排気側環状空間31を形成している。ノズル後端側の排気用環状空間31は、図14(A)に示すように、接線方向に配置された排気口32を介して外部の吸引排気装置33に接続され、筒状部材30内の空気は接線方向の排気口32を介して吸引排気装置33により排出されるようにしている。
【0076】
筒状部材30は、筒状の外周面のノズル26A先端側において環状の溝34を備えると共に、環状溝34を取囲んで環状カバー35が取付けられ、環状溝34と環状カバー35とにより給気用環状空間36が形成されている。給気用環状空間36には、図14(B)に示すように、接線方向に配置した給気口37を介して外部の空気供給装置38に接続され、給気用環状空間36内には空気供給装置38より給気口37を介して外気が供給されるようにしている。環状カバー35のノズル26A先端側の端部は、筒状部材30の外周先端側に対して環状の隙間39を持って内周側に伸び、この環状隙間39により給気用環状空間36から集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出す環状ノズルを形成している。
【0077】
環状カバー35は、筒状部材30の軸方向に位置調整可能に、長孔等を介して固定されており、環状カバー35の筒状部材30に対する軸方向位置を調整することにより、集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出す環状ノズルの開口面積を調整可能となっている。
【0078】
本実施形態の電極製造装置においては、レーザヘッド26のノズル26Aからレーザ光とアシストガスを噴出して帯状電極材11を切断している間において、空気供給装置38と吸引排気装置33とが作動される。空気供給装置38より供給された空気は給気口37を介して給気用環状空間36に供給され、給気用環状空間36内での回転流れを形成すると共に、環状ノズルを介して集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出する。この噴出流は、レーザノズル26A周りの回転方向に回転されながら噴出して、図15に示すように、レーザノズル26Aよりのレーザ光によるワークの切断の際に発生される切屑の外周側への飛散を阻止する。そして、噴出された空気が円周方向に流れつつ筒状部材30内に吹き上げられることにより、図16に示すように、切屑を筒状部材30内に回転させつつ案内する。そして、切屑を含んだ空気は、ノズル26A後端側の排気用環状空間31に導入され、接線方向に配置された排気口32を介して吸引排気装置33に導入されて外部に排出される。
【0079】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)〜(エ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0080】
(オ)レーザヘッド26は、レーザノズル26Aを取囲む筒状部材30と、筒状部材30の外周に嵌合して筒状部材30との間に空間部を形成する外側カバー35と、からなる集塵ノズル29を備える。そして、前記外側カバー35の先端側は、隙間を持って筒状部材30の先端側に沿って内周側に折曲げられることにより、筒状部材30と外側カバー35との間の空間部36をレーザノズル26Aの先端側に向けて開口する環状隙間39に形成して備える。このため、筒状部材30と外側カバー35との間の空間部に外部空気を供給すると共に筒状部材30の内部空間の空気を外部に排出することにより、前記空間部から環状隙間39を通して空気を外周側から切断部位に噴出させ、レーザノズル26Aの先端側から跳ね上がる塵埃を噴出させた空気により筒状部材30の内部空間に導入し、筒状部材30の内部空間から外部に排出することができる。そして、外側カバー35の筒状部材30に対する嵌合位置を調整することにより、レーザノズル26Aの先端側に向けて開口する環状隙間39の開口面積を調整することができ、噴出す空気の方向及び流速をコントロールでき、高速で飛散する粉塵の集塵が可能となる。
【0081】
(カ)筒状部材30と外側カバー35との間の空間部は、環状に連なる環状空間36に形成されてなるため、供給された空気は環状空間36に溜り、その後に環状隙間39により絞られて噴出することとなり、噴出する空気のエアブローとしての流速を増加することができ、高速で飛散する粉塵の集塵が可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 リチウムイオン二次電池
2 電池要素
3 外装ケース
4 正極
4b 正極活物質
5 セパレータ
6 負極
6b 負極活物質
7 単電池
8 正極タブ
9 負極タブ
10,10a,10b 端子
11,11a,11b 帯状電極材
12 金属箔
13 絶縁樹脂テープ
20 レーザ切断装置
21 搬送コンベア
22 アシストガス供給装置
23 X−Y軸ロボット
25 レーザ照射装置
26 レーザヘッド
26A レーザノズル
27 レーザ発振機
28 ファンクションジェネレータ
29 集塵ノズル
30 筒状部材
35 外側カバー
36 環状空間
39 環状隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造方法および電極製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザを照射することにより、表面に形成した電極活物質層と共に集電体となる金属箔を切断して、平板状の電極を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、レーザの照射により、金属箔のみからなる部分を切断して電極端子を形成するとともに、電極活物質層が形成された部分に対しては切断面に沿った電極活物質層をレーザの熱作用によって除去し、電極活物質の溶融凝固部を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例のように、金属箔のみからなる加工領域と電極活物質層が形成された加工領域とで、領域毎にバリのない良好な切断品質を得るためには、照射するレーザの強度、スポット径、相対的移動速度等の加工条件を、加工領域毎に変更する必要がある。
【0006】
このため、加工ヘッドの位置信号に基づき、加工している領域が確認され、領域に対応する加工条件が選択される。また、加工ヘッドの位置信号に基づき、電極活物質層が形成された部分の切り出しを実行する領域と端子の切り出しを実行する領域との境界位置に加工ヘッドが到達したと確認された時点で加工ヘッドを停止させて加工条件の変更が実行される。この加工条件の変更は、新たに加工する領域を判定し、その領域に適する加工条件を選択し、選択した加工条件により新たな領域の加工が再開されることになる。
【0007】
以上のように、通常のシーケンス制御による加工条件の変更においては、常に加工ヘッドの位置が確認され、領域の境界において領域の確認、加工条件の確認等の信号のやり取り時間を必要とし、結果して加工ヘッドが停止される等、加工速度の高速化に限界があった。そのため、加工速度を上昇させて電極を量産することに限界があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、加工速度を上昇させて電極を量産するに好適な電極製造方法および電極製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法である。
【0010】
そして、本発明においては、レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定するようにした。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明では、レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させる。同時に、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射する。これにより、加工速度を低下させずに、ワークに与えるエネルギを切断部位毎に制御して、バリのない良好な切断品質を保ちながら、同じ速度で切断加工でき、電極を効率的に量産できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電極を適用する電池の平面図。
【図2】同じく電極を適用する電池の断面図。
【図3】正極電極の正面図(A)及び側面図(B)。
【図4】負極電極の正面図(A)及び側面図(B)。
【図5】ロール状に巻取られた状態からの展開状態を示す帯状電極材の側面図。
【図6】帯状電極材の断面図。
【図7】負極用帯状電極材の要部を示す断面図(A)および平面図(B)。
【図8】正極用帯状電極材の要部を示す断面図(A)および平面図(B)。
【図9】レーザ切断装置の概略を示す説明図。
【図10】レーザヘッドの構造を示す側面図。
【図11】負極用帯状電極材の切断面(A)、レーザ照射タイミング(B)、レーザ出力(C)、レーザエネルギ(D)の時間的な変化を示すタイムチャート。
【図12】正極用帯状電極材の切断面(A)、レーザ照射タイミング(B)、レーザ出力(C)、レーザエネルギ(D)の時間的な変化を示すタイムチャート。
【図13】本発明の第2実施形態の電極製造装置に使用するレーザヘッドの構造を示す概略構成図。
【図14】図13に示したレーザヘッドのA部分の断面図(A)、及びB部分の断面図(B)。
【図15】図13に示すレーザヘッドの動作状態を示す説明図。
【図16】図15に続くレーザヘッドの動作状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電極製造方法および電極製造装置を、リチウムイオン電池における電極製造方法および電極製造装置に適用したものについて説明する。
【0014】
まず、リチウムイオン電池の構成を、例えば、図1、2に示すリチウムイオン二次電池を一例として、その概要を説明する。図1は本発明の適用例としてのリチウムイオン二次電池の平面図であり、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。図2に示すように、リチウムイオン二次電池1は、電池要素2と、電池要素2を収容する外装ケース3と、を備える。
【0015】
電池要素2は、正極電極4、電解質層としてのセパレータ5、及び負極電極6を順次積層した積層体として構成される。
【0016】
正極電極4は、図3に示すように、板状の正極集電体4aの両面に正極層4bを有している。正極集電体4aには、正極層4bが配置されている部分から突出して、後述する正極タブ8と電気的に接続するための端子10aが設けられている。正極集電体4aの端子10aを構成する突出部分には、両面に配置する正極層4bが配置されていない。正極集電体4aには、例えば、アルミニウム箔が使用される。また、正極層4bには、正極活物質として、例えば、LiMn2O4、導電助剤には、アセチレンブラック、バインダーとして、PVDFを使用する。そして、これらを、例えば、それぞれ80質量%、10質量%、10質量%に配合し、NMP(N−メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを調製し、正極集電体4aの両面に順次塗布し、乾燥させて、正極電極4を形成する。
【0017】
また、正極電極4の端子10aの根元領域及び正極層4bの端子10aに臨む端部領域の表面には、セパレータを介して隣接して積層される負極電極との電気的な短絡を防止するために、図示しないが、例えば、ポリプロピレン等の樹脂からなる絶縁樹脂テープが貼付けられている。
【0018】
負極電極6は、図4に示すように、板状の負極集電体6aの両面に負極層6bを有している。負極集電体6aには、負極層6bが配置されている部分から突出して、後述する負極タブ9と電気的に接続するための端子10bが設けられている。負極集電体6aの端子10bを構成する突出部分には、両面に配置する負極層6bが配置されていない。負極集電体6aには、例えば、銅箔が使用される。また、負極層6bは、負極活物質として、例えば、グラファイト、導電助剤には、アセチレンブラック、バインダーとして、PVDFを使用する。そして、負極活物質、導電助剤、バインダーをそれぞれ、例えば、90質量%、2質量%、8質量%に配合し、NMP(N−メチルピロリドン)に分散させて負極スラリーを調製し、負極集電体6aの両面に順次塗布し、乾燥させて、負極電極6を形成する。
【0019】
なお、図示するリチウムイオン二次電池1においては、電池要素2の最外層に配置される正極電極4においては、正極集電体4aの片面のみに正極層4bが形成される。また、電池要素2の最外層に配置される負極電極6においても、負極集電体6aの片面のみに負極層6bが形成される。
【0020】
隣接する正極電極4、セパレータ5、及び負極電極6が一つの単電池7を構成しており、リチウムイオン電池1は積層された複数の単電池7をそれぞれ電気的に並列接続して構成される。
【0021】
外装ケース3は、アルミニウム等の金属をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムのシート材からなる。外装ケース3は、電池要素2を収納した状態で、ケース外周部が熱融着によって接合される。この外装ケース3には、電池要素2からの電力を外部に取り出すため、外部端子としての正極タブ8及び負極タブ9が設けられる。
【0022】
正極タブ8の一端は外装ケース3の外側にあり、正極タブ8の他端は外装ケース3の内部で各正極集電体4aの端子10aの集合部に接続する。負極タブ9の一端は外装ケース3の外側にあり、負極タブ9の他端は外装ケース3の内部で各負極集電体6aの端子10bの集合部に接続する。
【0023】
外装ケース3は、二次電池の組立時に、1枚のラミネートフィルムを折り返して、内部に電池要素2を収容し、正極タブ8及び負極タブ9を取出す2辺を熱融着により封止し、残る一辺は封止せずに上方へ開いた開口を備える袋状に形成する。上方に開いた開口は、外装ケース3内に収容された電池要素2への電解液の注液口に使用され、注液完了後に封止する。電解液は、例えば、1mol/リットルのLiPF6,LiBF4等を支持塩とし、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(質量比50:50)を溶媒とするものが用いられる。
【0024】
なお、外装ケース3として、上記形態では1枚のラミネートフィルムを2つ折りにしたものを例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2枚のラミネートフィルムを用いてもよい。この場合、3辺をまず熱融着してラミネートフィルムを袋状に形成する。また、外装ケース3として、ラミネートフィルムにより袋状としたものに代えて、缶等による外装ケース3であってもよい。
【0025】
次に、正極電極4及び負極電極6の製造方法について説明する。
【0026】
電極素材は、集電体4a,6aとなる帯状の金属箔12に活物質層4b,6bを間欠的に塗布し、乾燥され、プレスローラ等により加圧された後に、図5に示すように、ロール状に巻取られた状態で供給される。以下では、複数の活物質層4b,6bが配列された帯状の電極材を「帯状電極材11」という。また、正極用帯状電極材11aにあっては、上記に加えて、図5及び図6に示すように、塗布されている活物質層4bの一方の端部表面と金属箔12表面の一部とに跨って、絶縁樹脂テープ13が貼られて、ロール状に巻取られた状態で供給される。
【0027】
このロール状の帯状電極材11を展開すると、金属箔12の領域と活物質層4b,6bが塗布されている領域とが交互に配列されている。また、正極用帯状電極材11aにあっては、活物質層4bの一方の端部表面と金属箔12表面の一部とに跨って、絶縁樹脂テープ13が貼られている。しかも、塗布された活物質層4b,6bは、プレスローラ等による加圧により帯状の方向に伸されるため、その長手方向の寸法や長手方向の端部形状にバラツキを生ずる。
【0028】
このため、このような帯状電極材11を、後述するレーザ切断装置により切断して実際に使用する電極4,6とするには、図7及び図8に示すように、端子10を形成する側の活物質層4b,6bが塗布されている領域(活物質層領域)の端部を一部切断して、基準切断面(図中の地点a−b間)を形成する。そして、その基準切断面を基準として、所定寸法の金属箔12領域と金属箔12領域から離れた活物質層4b,6b領域の他端近傍とを夫々切断する必要がある。具体的には、上記基準切断面を基準として、金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10を形成する。また、上記基準切断面を基準として、活物質層4b,6b領域の他方の端部近傍を予め設定した所定寸法となる活物質切断面により切出して電極領域を形成する。
【0029】
負極用帯状電極材11bにあっては、図7に示すように、基準切断面(図中の地点a−b間)には、金属箔12の両面に活物質層6bを備える3層構造である。また、上記基準切断面を基準として金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10bとする切断面(遷移切断面、図中の地点b−c間)にも、切断初期には金属箔12の両面に活物質層6bを備える3層構造である。そして、遷移切断面が金属箔12に達した後は金属箔12のみが存在する1層構造(箔切断面、図中の地点c−e−f間)となる。
【0030】
また、正極用帯状電極材11aにあっては、図8に示すように、基準切断面(図中の地点a−b間)には、金属箔12の両面に活物質層4bと絶縁樹脂テープ13を備える5層構造である。また、上記基準切断面を基準として金属箔12を予め設定した所定寸法に切り出して端子10aとする切断面(遷移切断面、図中の地点b−c間)にも、切断初期には金属箔12の両面に活物質層4bと絶縁樹脂テープ13を備える5層構造である。そして、遷移切断面が金属箔12に達した後の初期段階(図中の地点c−d間)においては、金属箔12の両面に絶縁樹脂テープ13が存在する3層構造があり、絶縁樹脂テープ13がない領域に達した段階で金属箔12のみが存在する1層構造(箔切断面、図中の地点d−e−f間))となる。
【0031】
また、正負極用帯状電極材11a,11bにおいて、上記基準切断面を基準として、図7及び図8に示すように、活物質層4b,6b領域の他方の端部を予め設定した所定寸法に切り出して電極領域とする活物質切断面(図中の地点g−h間)には、金属箔12の両面に活物質層4b,6bを備える3層構造となる。
【0032】
図9はレーザ切断装置20を示す。レーザ切断装置20は、帯状電極材11を搬送する搬送コンベア21と、帯状電極材11に向かってレーザヘッド26よりレーザビームを照射するレーザ照射装置25と、レーザヘッド26にアシストガスを供給するアシストガス供給装置22と、レーザヘッド26をX−Y軸方向に移動制御するX−Y軸ロボット23と、を備える。ここでは、X方向は帯状電極材11を横切る方向とし、Y方向は帯状電極材11に沿う方向とする。
【0033】
搬送コンベア21は、展開した帯状電極材11をレーザ照射装置25により電極とする切断中には停止され、1個毎の切断が終了する毎に活物質層4b,6bの配置ピッチ分だけ送る間欠搬送作動を実行する。切断後の電極4,6は順次搬送コンベア21によって次工程へ送られる。
【0034】
X−Y軸ロボット23は、搬送された帯状電極材11に対して、ロボットコントローラ23Aによりレーザヘッド26を、図7,8の地点a−b−c−d−e−f−g−hに沿って移動制御する。図11(A)及び図12(A)は、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面における層構造の時間的な変化を示す。先ず、上記した帯状電極材11の基準切断面(X方向)に沿い移動させる(図7,8中の地点a−b間、図11,12の時点t2−t3、以下同様に示す)。次いで、それに続く遷移切断面(X−Y方向)に沿い移動させ(地点b−c(−d)間、時点t3−t4)、金属箔12の箔切断面(X−Y方向→X方向)に沿って移動させる(地点d−e−f間、時点t4−t5)よう制御する。次いで、レーザヘッド26を、帯状電極材11の搬送方向とは逆方向のY方向に所定距離の空走させた(地点f−g間、時点t5−t6)後に、電極領域を形成するための活物質切断面に沿ってX方向に移動させる(地点g−h間、時点t6−t7)よう制御する。
【0035】
各切断面に対する移動速度は、ロボットスタート信号によりレーザヘッド26を移動開始させ、概ね等速状態で高速移動させる。例えば、一辺が200mm前後の電極を帯状電極材から切出す場合には、1個あたりの切出し時間を1secとする場合には、切出し長さは約400mm以上となるため、例えば、500mm/sと設定する。なお、空走時は、設定した速度に制約されることなく、更に高速移動させる。
【0036】
なお、搬送コンベア21を間欠搬送作動させることに代えて、停止させることなく連続搬送させるようにしてもよい。この場合には、X−Y軸ロボット23は、ロボットコントローラ23Aによりレーザヘッド26を搬送コンベア21の搬送方向であるY方向に同期して移動させると共に、それに上乗せして上記した移動制御を実行させる。
【0037】
レーザ照射装置25は、レーザヘッド26と、レーザヘッド26にファイバケーブルを介して発振したレーザビームを供給するレーザ発振機27と、レーザ発振機27で発振させるレーザビームの発振状態を制御するファンクションジェネレータ28と、を備える。レーザ光としては、波長が10μmのCO2レーザ光に比較して、切断速度を速くでき、しかも細く切断できて、切屑の発生が少ない、波長1mmのシングルモードのYAGレーザ光を使用する。
【0038】
レーザヘッド26は、図10に示すように、上端のファイバーコネクタを介して供給されたレーザビームを集光させて照射すると共に後述するアシストガスの放出口を備えるノズルチップ26Aを備える。また、レーザヘッド26には、ノズルチップ位置確認用のカメラ26Bと、アシストガスをノズルチップ26Aに供給するアシストガス供給口26Cと、を備え、ロボット23のX軸に取付られる。
【0039】
ファンクションジェネレータ28は、レーザ発振機27で発振させるレーザのパルス条件(周波数、DUTY比(連続発振はDUTY比100%)、ピーク出力)を設定する。本実施形態においては、ロボットスタート信号をロボットコントローラ23Aから受信した後の経過時間に応じて、基準切断面に対するパルス条件→遷移切断面に対するパルス条件→箔切断面に対するパルス条件→空走中の発進停止→活物質切断面に対するパルス条件を、順次設定して、レーザ発振機27によるレーザ発振を制御する。
【0040】
例えば、負極用帯状電極材11bに対しては、図11の(C)及び(D)に示すように、レーザヘッド26が基準切断面を通過する所定時間(t2−t3間)及び遷移切断面を通過する所定時間(t3−t4間)には、ピーク出力は小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。そして、レーザヘッド26が箔切断面に移行して箔切断面を通過する所定時間(t4−t5間)には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させるか周波数の小さい発振パルスとし、レーザヘッド26が空走中は発進停止させる。空走後の活物質切断面を通過する所定時間(t6−t7間)には、ピーク出力が小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。
【0041】
また、正極用帯状電極材11aに対しては、図12に示すように、レーザヘッド26が基準切断面を通過する所定時間(t2−t3間)には、ピーク出力が高く且つ周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。遷移切断面を通過する所定時間には、レーザヘッド26が活物質領域にある初期(t3−t4間)にはピーク出力が高く且つ周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。また、レーザヘッド26が活物質領域を離れて絶縁樹脂テープ13が切断面に存在する後期(t4−t8間)にはピーク出力を一時的に最大化させる。
【0042】
そして、レーザヘッド26が箔切断面に移行して箔切断面を通過する所定時間(t8−t5間)には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させるか周波数の小さい発振パルスとし、レーザヘッドが空走中は発進停止させる。空走後の活物質切断面を通過する所定時間(t6−t7間)には、ピーク出力が小さいが周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとする。
【0043】
アシストガス供給装置22は、供給装置22Aよりエアーホースを介してアシストガスをアシストガス供給口26Cに供給し、レーザヘッド26のレーザ光線の照射口と同軸に設けられたノズル26Aより噴出させる。噴出されたアシストガスは、レーザ光線による溶融部位を拡げると共に速やかに冷却する。また、アシストガスのON/OFFが自由に切替できるようエアーホースの途中に電磁弁26Dが接続されている。
【0044】
以上の構成の電極製造装置の動作について以下に説明する。
【0045】
X−Y軸ロボット23は、レーザヘッド26を、搬送コンベア21側方の加工開始位置に近接した待機位置に位置させている。
【0046】
先ず、搬送コンベア21によりロール状の帯状電極材11が展開されて搬送される。帯状電極材11の地点aがレーザヘッド26の待機位置とY軸方向で一致するまで搬送されると、搬送コンベア21が停止され、帯状電極材11が加工状態にセットされ、ロボットスタート信号が出力される。
【0047】
ロボットスタート信号によりX−Y軸ロボット23は、レーザヘッド26をX軸方向に移動させて、帯状電極材11を横断する方向に移動させる。また、ロボットスタート信号により、ファンクションジェネレータ28が起動されると共にアシストガス供給装置22の電磁弁26Dが開放され、レーザヘッド26のノズル26Aからレーザ光線とアシストガスを同軸で照射される。
【0048】
レーザヘッド26は、ロボットコントローラにより制御されるX−Y軸ロボット23により、ロボットスタートからの経過時間に応じて、地点aからb−c−d−e−f−g−hと移動され待機位置に復帰される。また、レーザヘッド26から照射されるレーザ光は、ファンクションジェネレータ28によりロボットスタートからの経過時間に応じて制御される。
【0049】
即ち、ロボットスタートからの経過時間が時点t2−t3間は基準切断面である図7,8中の地点a−b間を移動され、時点t3−t4間は遷移切断面である地点b−c(−d)間を移動され、時点t4−t5間は金属箔の箔切断面である地点d−e−f間を移動される。
【0050】
切断対象が負極用帯状電極材11bである場合には、時点t2−t3間は基準切断面を切断するために、また、時点t3−t4間は遷移切断面を切断するために、ピーク出力が小さく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射される。
【0051】
照射されたレーザ光は、帯状電極材11bの基準切断面を構成している活物質層6bを溶融させ、次いで金属箔12を溶融させ、次いで照射方向前方側にある活物質層6bを溶融させ、溶融物質は、ビームと同軸に噴射されたアシストガスで吹飛ばして切断する。
【0052】
また、切断対象が正極用帯状電極材11aである場合には、時点t2−t3間は図7,8中の地点a−bの絶縁樹脂テープ13が貼付けられた基準切断面を切断するために、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射する。
【0053】
即ち、通常のレーザ切断加工では、ワークを溶融し、溶融したものをアシストガスで吹飛ばすことで切断するため、レーザを吸収する活物質層4b上に貼られた樹脂製の絶縁テープ13を切断することはできない。
【0054】
しかしながら、本実施形態では、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射するため、下記のように、切断することができる。
【0055】
絶縁樹脂テープ13にレーザ光を照射すると、レーザ光は絶縁樹脂テープ13を透過し、活物質層4bにレーザ光が吸収される。このとき、高いパワー密度のレーザ光が照射されていることにより、活物質層4bが蒸発し、その蒸発する際の熱と圧力により絶縁樹脂テープ13の溶融が開始する。絶縁樹脂テープ13の溶融が進み、完全に切断されると切断部位から活物質層4bの蒸気が逃げるため、それ以上に絶縁樹脂テープ13に入熱しなくなり、溶融が収まる。そして、アシストガスが吹付けられていることにより、周辺の絶縁樹脂テープ13は冷却され、過度の範囲に絶縁樹脂テープ13が溶融することを防止できる。次いで照射方向前方側にある活物質層4bを溶融させ、照射方向前方側の絶縁樹脂テープ13についても照射方向手前側の絶縁樹脂テープ13と同様に切断され、レーザエネルギのみで絶縁樹脂テープ13を切断することができる。
【0056】
絶縁樹脂テープ13が切断可能な条件としては、例えば、切断速度670mm/s、アシストガス:ドライエアー、アシストガス流量:10L/minとした場合に、レーザエネルギを、例えば、240kW/mm2という非常に高いパワー密度とすることが必要である。
【0057】
また、正極用帯状電極材11aの時点t3−t4間の遷移切断面である地点b−c間の移動中においても、負極用帯状電極材11bを切断するよりもピーク出力が大きく、周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスとして照射する。このため、上記したように、絶縁樹脂テープ13を合わせて、上記と同様に切断することができる。
【0058】
また、正極用帯状電極材11aの時点t4−t5間の絶縁テープ13が金属箔12上に存在する遷移切断面である地点c−d間の移動中においては、レーザヘッド26からピーク出力を一時的に最大化させた高い連続発振パルスのレーザ光が照射される。
【0059】
このため、レーザ光は絶縁樹脂テープ13を透過するが、照射先にある金属箔12がピーク出力を一時的に最大化させた高い連続発振パルスのレーザ光により溶融され、その溶融熱が絶縁樹脂テープ13を溶融させる。溶融された絶縁テープ13は、レーザ光と同軸に噴射されているアシストガスにより吹き分けられて切断されると共に、アシストガスにより、周辺の絶縁樹脂テープ13が冷却され、過度の範囲に絶縁樹脂テープ13が溶融することを防止できる。
【0060】
以降(負極用帯状電極材11bの地点c以降、正極用帯状電極材11aの地点d以降)の作動は、負極用帯状電極材11b及び正極用帯状電極材11aのいずれであっても、同じである。即ち、負極用帯状電極材11bの時点t4−t5(正極用帯状電極材11aの時点t8−t5)の箔切断面である負極用帯状電極材11bの地点c−e−f(正極用帯状電極材11aの地点d−e−f)間の金属箔12を切断する際には、ピーク出力を低下させ且つDUTY比を低下させた発振パルスとして照射される。照射されたレーザ光は、ダイレクトに金属箔12に照射されるため、レーザ光が照射された部位のみの金属箔12を溶融させて、切断することができる。
【0061】
次いで、レーザヘッド26は、時点t5−t6間は、帯状電極材11の搬送方向とは逆方向のY方向に所定距離の空走させる地点f−g間を移動され、この空走中は、レーザ照射が停止される。
【0062】
そして、時点t6−t7の間は、電極領域を形成するための活物質切断面に沿ってX方向の地点g−h間を移動され、活物質切断面を切断するために、ピーク出力が小さく周波数が高いか若しくはDUTY比が100%の連続発振パルスが照射される。
【0063】
照射されたレーザ光は、帯状電極材11の活物質切断面を構成している活物質層4b,6bを溶融させ、次いで金属箔12を溶融させ、次いで照射方向前方側にある活物質層4b,6bを溶融させ、溶融物質は、ビームと同軸に噴射されたアシストガスで吹飛ばして切断する。
【0064】
その後に、レーザ照射およびアシストガスの噴射が停止されて、レーザヘッド26は待機位置に復帰される。
【0065】
以上の説明において、レーザヘッド26はX−Yロボット23により地点a−f間において等速度で移動されるものについて説明した。しかしながら、地点bにおいては、その移動方向がX軸方向からX−Y方向に、地点eにおいては、X−Y方向からX方向に、夫々移動方向が変化する。この移動方向の変化時には、レーザヘッド26の移動速度が一時的に低下することがあり、この移動速度の低下により、ワークに照射しているレーザエネルギが変化しない場合には、ワークへの入熱量が増加することが懸念される。
【0066】
このため、地点b及び地点eにおいては、ファンクションジェネレータ28で設定するパルス条件によるエネルギ量を一時的に低下させて、ワークへの過度の入熱量によるバリの発生や切屑の飛散を防止して、ワークの切断部位全域での良好な切断品質を維持することが望ましい。エネルギ量の低減は、周波数、DUTY比(連続発振はDUTY比100%)、ピーク出力のいずれであってもよい。ファンクションジェネレータ28は、このようなμsec単位での条件設定が可能であり、ワークの地点毎のパルス条件変更に非常に短い時間で対応させることができる。
【0067】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0068】
(ア)帯状の金属箔12の少なくとも一方の面上に電極活物質4b,6bを間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材11にレーザを照射して、金属箔12が露出した端子10と金属箔12の少なくとも一面に電極活物質4b,6bを備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法である。
【0069】
そして、本発明においては、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光を記憶・設定する。このため、レーザを照射するレーザヘッド26を予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッド26から照射することにより、加工速度を落さずに、ワークに与えるエネルギを切断部位毎に制御して、バリのない良好な切断品質を保ちながら、同じ速度で切断加工でき、電極を効率的に量産できる。
【0070】
(イ)レーザヘッド26を移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッド26が臨む帯状電極材11の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光の記憶・設定は、レーザヘッド26にファイバケーブルを介してレーザビームを供給するレーザ発振機27の発振状態を制御するファンクションジェネレータ28により実行される。このため、レーザ発振条件の変更を極めて短時間(μsec単位)に実行でき、切断加工速度を上昇でき、電極を効率的に量産できる。
【0071】
(ウ)予め設定した切断面は、前記絶縁樹脂テープ13を貼付けて備える部位を最初の切断面とする。このため、レーザヘッド26を切断面に沿って移動させるロボット23の位置バラツキの影響が最少となる時間帯(ロボットスタート位置に近い程時間の位置ズレが少ない)で、最も切断が困難で条件余裕度が狭い絶縁樹脂テープ13を貼付けて備える部位を切断するので、切断部全域での切断品質を保ちやすい。また、切断面が絶縁樹脂テープ13から金属箔12へ変化する部位は、エネルギ条件の変更の時間的猶予がない部位でもあるが、エネルギ条件の変更時間のズレが少なくできる。
【0072】
(エ)レーザヘッド26の移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッド26から照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させる。このため、ロボット23の運動方向の変化等の設備的な制約によりレーザヘッド26の移動速度が低下する部位、例えば、R部などにおいても、切断速度の低下に対応してレーザヘッド26から照射するレーザ光のエネルギ強度が低下され、ワークに過度の入熱が入ることを抑制でき、切断部全域で良好な切断品質を確保できる。
【0073】
(第2実施形態)
図13〜図16は、本発明を適用した電極製造装置の第2実施形態を示し、図13はレーザヘッドのノズル部を示す概略図、図14(A),(B)は、ノズル部の断面図、図15、図16は動作説明図である。本実施形態においては、レーザヘッド26に集塵装置を備える構成を第1実施形態に追加したものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0074】
図13において、本実施形態の電極製造装置におけるレーザヘッド26には、ノズル26Aを取囲む筒状部材30と、筒状部材30の外周に嵌合して筒状部材30との間に空間部を形成する外側カバー35と、より構成される集塵ノズル29を備える。
【0075】
筒状部材30は、筒状の内周面がノズル26A先端側で小径となり、ノズル26A後端側で大径となるテーパ状に形成されて、ノズル後端側に排気側環状空間31を形成している。ノズル後端側の排気用環状空間31は、図14(A)に示すように、接線方向に配置された排気口32を介して外部の吸引排気装置33に接続され、筒状部材30内の空気は接線方向の排気口32を介して吸引排気装置33により排出されるようにしている。
【0076】
筒状部材30は、筒状の外周面のノズル26A先端側において環状の溝34を備えると共に、環状溝34を取囲んで環状カバー35が取付けられ、環状溝34と環状カバー35とにより給気用環状空間36が形成されている。給気用環状空間36には、図14(B)に示すように、接線方向に配置した給気口37を介して外部の空気供給装置38に接続され、給気用環状空間36内には空気供給装置38より給気口37を介して外気が供給されるようにしている。環状カバー35のノズル26A先端側の端部は、筒状部材30の外周先端側に対して環状の隙間39を持って内周側に伸び、この環状隙間39により給気用環状空間36から集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出す環状ノズルを形成している。
【0077】
環状カバー35は、筒状部材30の軸方向に位置調整可能に、長孔等を介して固定されており、環状カバー35の筒状部材30に対する軸方向位置を調整することにより、集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出す環状ノズルの開口面積を調整可能となっている。
【0078】
本実施形態の電極製造装置においては、レーザヘッド26のノズル26Aからレーザ光とアシストガスを噴出して帯状電極材11を切断している間において、空気供給装置38と吸引排気装置33とが作動される。空気供給装置38より供給された空気は給気口37を介して給気用環状空間36に供給され、給気用環状空間36内での回転流れを形成すると共に、環状ノズルを介して集塵用空気を筒状部材30先端側に噴出する。この噴出流は、レーザノズル26A周りの回転方向に回転されながら噴出して、図15に示すように、レーザノズル26Aよりのレーザ光によるワークの切断の際に発生される切屑の外周側への飛散を阻止する。そして、噴出された空気が円周方向に流れつつ筒状部材30内に吹き上げられることにより、図16に示すように、切屑を筒状部材30内に回転させつつ案内する。そして、切屑を含んだ空気は、ノズル26A後端側の排気用環状空間31に導入され、接線方向に配置された排気口32を介して吸引排気装置33に導入されて外部に排出される。
【0079】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)〜(エ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0080】
(オ)レーザヘッド26は、レーザノズル26Aを取囲む筒状部材30と、筒状部材30の外周に嵌合して筒状部材30との間に空間部を形成する外側カバー35と、からなる集塵ノズル29を備える。そして、前記外側カバー35の先端側は、隙間を持って筒状部材30の先端側に沿って内周側に折曲げられることにより、筒状部材30と外側カバー35との間の空間部36をレーザノズル26Aの先端側に向けて開口する環状隙間39に形成して備える。このため、筒状部材30と外側カバー35との間の空間部に外部空気を供給すると共に筒状部材30の内部空間の空気を外部に排出することにより、前記空間部から環状隙間39を通して空気を外周側から切断部位に噴出させ、レーザノズル26Aの先端側から跳ね上がる塵埃を噴出させた空気により筒状部材30の内部空間に導入し、筒状部材30の内部空間から外部に排出することができる。そして、外側カバー35の筒状部材30に対する嵌合位置を調整することにより、レーザノズル26Aの先端側に向けて開口する環状隙間39の開口面積を調整することができ、噴出す空気の方向及び流速をコントロールでき、高速で飛散する粉塵の集塵が可能となる。
【0081】
(カ)筒状部材30と外側カバー35との間の空間部は、環状に連なる環状空間36に形成されてなるため、供給された空気は環状空間36に溜り、その後に環状隙間39により絞られて噴出することとなり、噴出する空気のエアブローとしての流速を増加することができ、高速で飛散する粉塵の集塵が可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 リチウムイオン二次電池
2 電池要素
3 外装ケース
4 正極
4b 正極活物質
5 セパレータ
6 負極
6b 負極活物質
7 単電池
8 正極タブ
9 負極タブ
10,10a,10b 端子
11,11a,11b 帯状電極材
12 金属箔
13 絶縁樹脂テープ
20 レーザ切断装置
21 搬送コンベア
22 アシストガス供給装置
23 X−Y軸ロボット
25 レーザ照射装置
26 レーザヘッド
26A レーザノズル
27 レーザ発振機
28 ファンクションジェネレータ
29 集塵ノズル
30 筒状部材
35 外側カバー
36 環状空間
39 環状隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法において、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定し、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、
レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射するようにしたことを特徴とする電極製造方法。
【請求項2】
前記レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光の記憶・設定は、レーザヘッドにファイバケーブルを介してレーザビームを供給するレーザ発振機の発振状態を制御するファンクションジェネレータにより実行されることを特徴とする請求項1に記載の電極製造方法。
【請求項3】
帯状電極材は、端子として金属箔が露出した部位と電極活物質を備える部位との境界部分に跨って絶縁樹脂テープを貼付けて備え、
前記予め設定した切断面は、前記絶縁樹脂テープを貼付けて備える部位を最初の切断面とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極製造方法。
【請求項4】
前記レーザヘッドの移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッドから照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電極製造方法。
【請求項5】
帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造装置において、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させるレーザヘッド移動手段と、
レーザヘッドにファイバケーブルを介して発振したレーザビームを供給するレーザ発振機と、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定し、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射するようレーザ発振機を制御するファンクションジェネレータと、を備えることを特徴とする電極製造装置。
【請求項6】
前記ファンクションジェネレータは、前記レーザヘッドの移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッドから照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させることを特徴とする請求項5に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記レーザヘッドは、レーザノズルを取囲む筒状部材と、筒状部材の外周に嵌合して筒状部材との間に空間部を形成する外側カバーと、からなる集塵ノズルを備え、
前記外側カバーの先端側は、隙間を持って筒状部材の先端側に沿って内周側に折曲げられることにより、筒状部材と外側カバーとの間の空間部をレーザノズルの先端側に向けて開口する環状隙間に形成し、
筒状部材と外側カバーとの間の空間部に外部空気を供給すると共に筒状部材の内部空間の空気を外部に排出することにより、前記空間部から環状隙間を通して空気を外周側から切断部位に噴出させ、レーザノズルの先端側から跳ね上がる塵埃を噴出させた空気により筒状部材の内部空間に導入し、筒状部材の内部空間から外部に排出することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記筒状部材と外側カバーとの間の空間部は、環状に連なる環状空間に形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の電極製造装置。
【請求項1】
帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造方法において、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定し、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させ、
レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射するようにしたことを特徴とする電極製造方法。
【請求項2】
前記レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するエネルギ強度のレーザ光の記憶・設定は、レーザヘッドにファイバケーブルを介してレーザビームを供給するレーザ発振機の発振状態を制御するファンクションジェネレータにより実行されることを特徴とする請求項1に記載の電極製造方法。
【請求項3】
帯状電極材は、端子として金属箔が露出した部位と電極活物質を備える部位との境界部分に跨って絶縁樹脂テープを貼付けて備え、
前記予め設定した切断面は、前記絶縁樹脂テープを貼付けて備える部位を最初の切断面とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極製造方法。
【請求項4】
前記レーザヘッドの移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッドから照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電極製造方法。
【請求項5】
帯状の金属箔の少なくとも一方の面上に電極活物質を間欠的に塗布・乾燥された帯状電極材にレーザを照射して、金属箔が露出した端子と金属箔の少なくとも一方の面に電極活物質を備える電極部分とからなる電極を切断して製作する電極製造装置において、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させるレーザヘッド移動手段と、
レーザヘッドにファイバケーブルを介して発振したレーザビームを供給するレーザ発振機と、
レーザを照射するレーザヘッドを予め設定した切断面に沿って予め設定した移動速度により移動させて、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に基づいて、レーザヘッドが臨む帯状電極材の切断面の変化に対応するレーザ光のエネルギ強度を記憶・設定し、レーザヘッドを移動開始した時点よりの経過時間に応じて設定・記憶したエネルギ強度のレーザ光をレーザヘッドから照射するようレーザ発振機を制御するファンクションジェネレータと、を備えることを特徴とする電極製造装置。
【請求項6】
前記ファンクションジェネレータは、前記レーザヘッドの移動速度が予め設定した移動速度より低下する部位においては、レーザヘッドから照射するレーザ光のエネルギ強度を、予め設定・記憶したエネルギ強度に対して移動速度の低下に応じて低下させることを特徴とする請求項5に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記レーザヘッドは、レーザノズルを取囲む筒状部材と、筒状部材の外周に嵌合して筒状部材との間に空間部を形成する外側カバーと、からなる集塵ノズルを備え、
前記外側カバーの先端側は、隙間を持って筒状部材の先端側に沿って内周側に折曲げられることにより、筒状部材と外側カバーとの間の空間部をレーザノズルの先端側に向けて開口する環状隙間に形成し、
筒状部材と外側カバーとの間の空間部に外部空気を供給すると共に筒状部材の内部空間の空気を外部に排出することにより、前記空間部から環状隙間を通して空気を外周側から切断部位に噴出させ、レーザノズルの先端側から跳ね上がる塵埃を噴出させた空気により筒状部材の内部空間に導入し、筒状部材の内部空間から外部に排出することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記筒状部材と外側カバーとの間の空間部は、環状に連なる環状空間に形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の電極製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−221912(P2012−221912A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89987(P2011−89987)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]