説明

電気による温度制御が可能な加熱調理装置を用いた調理の支援装置

【課題】調理現場における時々刻々の変化に対応して、コンベクションスチーマーなどの温度を電気制御できる機器を用いた複数の調理作業を並行して行い、コンベクションスチーマーを効率的に運用することができるようにする。
【解決手段】モニターなどの表示部に表示する調理手順を構成する作業要素とそれぞれの所要時間と、加熱の温度、湿度、及び加熱時間の設定を含む料理毎のレシピ情報に、どの作業要素と作業要素の間で予熱を開始すればよいかの情報を含ませ、
作業要素の進行を入力装置から入力されることにより、表示部に表示する調理手順をそれぞれのレシピ情報ごとに更新していき、
それぞれのレシピ情報における作業要素の進行にあたって、予熱を開始する作業要素が現れたレシピ情報でのCSの利用を優先して行い、その利用が終了するまでの間は他の料理を作成するレシピ情報による手順はCSの利用を待機するように制御部が指示するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジやIH調理器、コンベクションスチーマーなどの電気による温度制御が可能な加熱調理装置を用いた調理を複数の料理について並行して効率よく進めるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス加熱や電気加熱、蒸気加熱を電気制御して加熱を行う調理装置が増加している。水の沸騰に用いる電気ケトルや、電磁誘導に対応した調理器を誘導加熱により加熱する電磁調理器(IH調理器)などは業務用途だけでなく家庭用途でも普及しつつある。また、一般にコンビ・スチーマー、コンベクションスチーマー、スチームコンベクションオーブンなどと呼ばれる、内部に加熱水蒸気を対流させて調理を行う蒸気発生機能付き加熱装置(以下、「CS」と略記する。)は、温度、湿度、及び加熱時間を設定した通りに調理することが可能な機器であり、大規模な調理を行う業務用途で一般に使用されており、一部は家庭用でも用いられている。このようなCSとしては、具体的には、ラショナル社製スチーマーなどが用いられている。ただし、IH調理器やCSはガス台や通常のオーブンに比べて高価であることが多く、導入コストの点から、十分な数の導入は難しい。このため、特にCSについては限られた台数のCSを複数の料理に割り当てて運用することが多い。
【0003】
ところで、業務用途で調理を行う場合には、料理を完成させるまでの所要時間が決められていることが多く、限られた数の調理装置で複数の料理を作成するため、調理装置を効率的に運用しなければならない。そのためには実際の調理の開始前から適温に調整しておき、下拵えの終了とともに速やかに加熱調理をすることが好ましい。しかし、調理装置の中でもIH調理器やCSは設定した温度に瞬時にして昇温できるものではなく、必要な温度にまで予熱で昇温させるためには一定の時間がかかるので、複数の料理を並行して作成している最中に、どの料理のための予熱を優先して行うか否かの判断を適切に行うことは困難である。このため、メニュー作成時点において、上記調理装置を使うタイミングを予めずらすように下拵えをしたり、上記調理装置を使うタイミングがずれるようなメニュー構成を選択するといった形で、調理工程全体が調理装置の運用に拘束されることがあった。
【0004】
また、CSは定量的な熱と湿気を与えることができるが、それぞれの調理ごとにその最適値は異なっており、レシピごとに最適な設定値を入力する必要がある。具体的には、温度、湿度、及び加熱時間の一の組み合わせからなる調理のための環境設定を入力して加熱を行うことになるが、調理作業の途中でこのような環境設定の入力を行うことは、作業を停滞させることとなる。これに対し、調理機器の外部に設けた調理支援システムにより、調理メニューの手順指示を出力して調理者に指示するとともに、調理機器(CSに相当する。)を制御するための制御信号として設定値を調理機器に出力して、設定値の入力を省くことができる調理支援システムが特許文献1に記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の調理支援システムは、1つの料理を作成する場合にしか対応できない。実際の調理現場では上記のように、限られた台数のCSを複数の料理に割り当てなければならないため、特許文献1の調理支援システムをそのまま用いることは難しかった。
【0006】
これに対して、複数の料理の作成を前提とし、予め作業装置が調理器であって作業種類が同じ調理作業の作業単位(作業モジュール)を並行して調理可能に割り付ける作業スケジュールを作成する調理支援装置が特許文献2に記載されている。ここで、調理器にはCSが含まれる。
【0007】
また、飲食店のような環境で、随時追加される調理について作業スケジュールの割り当てを行う調理支援装置が特許文献3に記載されている。この特許文献3でも、調理器にはCSが含まれる。
【0008】
なお、我が国の国内においては、安全性を確保する法上の制限から、CSを外部制御で自動的に加熱開始させることはできず、必ずCS本体への直接操作により予熱又は加熱を開始するものとなっている。
【0009】
一方、家電のネットワーク化が進んでおり、業務用のCSだけでなく、家庭用の電子レンジ、電磁調理器やガスコンロなどの加熱機器に外部接続端子を設けることが検討されているが、同様に、遠隔操作での加熱開始はできず、これらの機器でも直接操作が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−187824号公報
【特許文献2】特開2003−141234号公報
【特許文献3】特開2003−141235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、実際の工程では計画通りに調理が進むとは限らず、調理者の熟練度や材料の状態、また、作成量によって、スケジュールに狂いが生じることが頻発する。このため、予め立てたスケジュール通りにしようとすると、既に下拵えができてIH調理器やCSに入れるだけの状態の料理があるにも拘わらず、それより先に予定されている調理の予熱準備中であったり、調理中であったりするために利用できず、調理中である料理以外の作業が停滞するといったことが起こってしまう。
【0012】
特に一般家庭に設けられている調理器では、ガスコンロや電磁調理器でも最大同時調理数が3を超えるものはまず無く、電子レンジでは2つ以上の料理を並行して行うことはできない。そして、家庭用用途では機器をそれ以上増設することはまず無い。このため、ひと揃いの料理を調理する際に、調理機器のバッキングが起こる可能性があり、効率が悪くなる可能性が高かった。また、電子レンジとガスコンロ又は電磁調理器との両方を用いて調理する料理もあり、これらの間で調理機器の占有時間の配分を試みると、最適解を導き出すのは困難であった。さらに、これら家庭用調理器を業務用に用いる場合もあり、上記CSのような業務用機器と並行して用いると、状況はさらに複雑になった。
【0013】
そこでこの発明は、調理現場における時々刻々の変化に対応して、IH調理器やCSなどの電気により温度制御可能な調理装置を用いた複数の調理作業を並行して行い、調理装置を効率的に運用することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、モニターなどの表示部に表示する調理手順を構成する作業要素とそれぞれの所要時間と、加熱の温度の設定を含む料理毎のレシピ情報に、どの作業要素と作業要素の間で予熱又は加熱を開始すればよいかの情報を含ませ、
作業要素の進行を入力装置から入力されることにより、表示部に表示する調理手順をそれぞれのレシピ情報ごとに更新していき、
それぞれのレシピ情報における作業要素の進行にあたって、予熱又は加熱を開始する作業要素が現れたレシピ情報での調理装置の利用を優先して行い、その利用が終了するまでの間は他の料理を作成するレシピ情報による手順は調理装置の利用を待機するように制御部が指示するようにすることで、上記の課題を解決したのである。
【0015】
また、調理機器が電子レンジやコンベクションスチーマー(CS)のように、加熱時間を入力、指定できるものである場合には、上記レシピ情報が加熱の温度の設定だけでなく、加熱する時間も指定するようにすると、より正確なレシピ通りの調理が可能となる。
【0016】
さらに、レシピ情報の作業要素のうち、調理機器を用いる作業要素は、加熱時間と加熱温度を一組だけ有する場合だけでなく、複数組有するものでもよい。すなわち、予熱又は加熱の開始後、予熱又は加熱を終了することなく、上記調理機器が設定する加熱の温度を変更するものでもよい。変更回数は一回でも複数回でもよい。これは、単一の温度で調理するよりも、高温での加熱と低温での加熱とを使い分けた方が好適なメニューにおいて有用である。例えば、米の炊飯において、最初は低温で、中盤は高温で加熱し、その後は、段階的に設定温度を下げて蒸らしていくといった場合や、いくつかの焼き料理で最初に高温で加熱して表面を焼き上げた後、低温に移行させて長時間かけてじっくりと中まで加熱させ、肉汁が逃げないようにするといった場合が考えられる。このような一の作業要素の中での昇温降温は、装置が自動的に進行させるものでよい。
【0017】
逆に、温度指定のみが可能で加熱時間が指定できない機器であっても、この発明を利用することはできる。その場合、表示部に加熱開始の直接操作を促す表示をした後、加熱を開始した旨を入力装置から受け付けてから、制御部が経過時間をカウントし、加熱時間経過後に表示部に所要時間が経過した旨を表示することで、直接操作により加熱を停止可能とすることができる。
【0018】
このように、加熱時間の指定が可能であるか否かに拘わらず、加熱する温度の制御が可能であれば本発明にかかる支援装置を用いて複数のレシピ情報を基に複数の調理を並行して、効率よく行うようにすることができる。具体的な調理装置としては、ガスコンロ、電磁調理器(いわゆるIH調理器)、電子レンジ、コンベクションスチーマーなどが挙げられるが、それに限らず、本願にかかる調理の支援装置の通信部と通信可能なインターフェースを有する加熱調理機器であれば適用できる。また、それらの機器のそれぞれを複数基使うだけでなく、ガスコンロと電子レンジ、あるいは電磁調理器とコンベクションスチーマーとの組み合わせなど、複数種類の加熱調理器具を用いることもできる。ただしその場合、上記レシピ情報による料理の種類によって、使用可能な調理機器が限られる場合がある。このように限定がある場合には、その上記レシピ情報の実行が可能な調理機器のみを割り当てるように制御部が判断し、実行が不可能な調理機器が空いていても待機の通知を表示部に示すようにする。
【0019】
特に、CSのように、調理の前に調理温度にまで昇温させる予熱を行う必要があるものでは、料理の手順を指示するレシピ情報の時系列の中で、その予熱をどの加熱前のどの作業要素と作業要素の間のタイミングで始めるかを規定しておく。このタイミングは、実際の調理の加熱の前に行う作業要素の推定所要時間と、その加熱の温度にまで昇温するために必要な時間から、作業要素を遡った推定所要時間の合計が、昇温するために必要な時間を上回るまで作業要素を遡った、作業要素の切り替えのタイミングである。調理装置の予熱及び加熱開始にあたっては必ず調理装置を直接操作しなければならないため、作業要素の途中で開始させようとすると、その間その作業要素を必ず中断しなければならなくなるので、作業要素の切り替えのタイミングで行うことで作業の停止を最小限に抑える。
【0020】
予熱を必要とする調理装置と連携する場合は、それぞれの上記レシピ情報の作業要素を更新する際に、予熱の始まるタイミングにまで調理手順が進行した上記レシピ情報の料理に調理装置の利用を割り当てる。実際に加熱している間だけでなく、予熱をしている間も、他の料理のための加熱はできないため、予熱を始めるタイミングから排他処理する必要があるためである。この発明にかかる装置は、そのタイミングを計るために、作業要素を表示部に表示するとともに、作業要素の進行を入力手段から受け付けるようにして、タイミングを計る。またそれとともに、表示部に表示する情報を更新して、調理のための手順を示すことができ、CSの利用のみならず、調理手順全体を支援する装置として働く。
【0021】
なお、予熱開始から実際の料理の加熱までの時間が推定からずれることはあるが、ほとんどの料理において、予熱開始までの所要時間の方が、予熱開始から加熱開始までの時間よりも遙かに長いため、従来のシステムよりも、調理現場における状況変化の影響を受けにくくなる。
【0022】
また、調理装置がCSのように、中に複数の料理を並べて同時に加熱できるものである場合には、加熱の温度及び湿度が同一である複数の上記レシピ情報にかかる料理を同時に調理することで、所要時間を短縮して、効率よく上記CSを運用することができる。このとき、それぞれの料理の加熱時間が異なる場合には、まず、そのうちの加熱時間が最も短い料理について、必要な加熱時間を経過した後で一旦加熱を停止してCSを開放しその料理のみを取りだし、さらに加熱を必要とする料理については、CSを閉じて、残りの加熱時間にさらに付加時間を加えた時間だけ加熱するようにする。一時的開放によってCS内の温度が下がり、その分長く加熱する必要が生じるからである。この付加時間は、温度と取り出し時間にもよるが、1分〜3分間程度の加算が現実的な値となることが多い。
【0023】
なお、調理手順を表示する表示部を構成する電子計算機用モニターの数が、同時に調理を進行させる上記レシピ情報の数よりも少ない場合には、上記のモニターのうちの少なくとも一つについて、画面を分割し、複数の上記レシピ情報の構成要素を、分割した領域のそれぞれに表示することで、モニター数を節約したまま運用することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる調理支援装置と、それと連携可能な調理機器とを用いた調理システムを運用することにより、厨房の現場で時々刻々変化する調理の進行状況が変化しても、電気を用いて加熱を制御できる調理装置を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明にかかる支援装置の概念図
【図2】(a)検討中のレシピ情報、(b)予熱開始作業要素を含めたレシピ情報
【図3】(a)表示部の初期状態の表示の例を示す図、(b)表示部の進行中の表示の例を示す図
【図4】レシピ情報を読み込む際のフロー図
【図5】調理中の制御部の働きを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。
図1はこの発明にかかる調理の支援装置101の構成を示す。
各構成を制御する制御部111があり、この制御部111に、記憶部113、通信部116、表示部121、入力装置122、外部記憶装置123、スピーカー124が接続されている。この制御部111の具体的なハードウェア構成としては、一般的な電子計算機のCPU及びその周辺素子を割り当てることができる。
【0027】
記憶部113は、情報を記憶する媒体であり、情報を保存しておく内部データベース(以下、「内部DB」と略記する。)115と、通電時のみ記憶を保持でき制御部111がその時点で読み込んでいる情報を一時保存する一時記憶部114とからなる。内部DB115は、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリドライブなどの記憶装置に記録される。一時記憶部114は、一般的な電子計算機用揮発性メモリからなる。
【0028】
通信部116は外部の装置と情報を送受信するインターフェースであり、RS232CやUSBなどのシリアルインターフェース、パラレルインターフェース、10BASE−T、100BASE−Tなどの有線ネットワークインターフェースや、IEEE802.11a,b,g,nなどの無線インターフェース、その他の有線無線インターフェースが挙げられる。これらのインターフェースのいずれかで、コンベクションスチーマー(以下、「CS」と略記する。)などの調理装置141と接続して、情報の送受信を行う。また、ネットワークインターフェースから、LAN又はWANであるネットワーク151を通じて、外部の電子計算機152が有する外部DB153と通信することができる。なお、接続される調理装置141は一つに限られず、複数でもよい。
【0029】
上記調理装置141は、電気ケトル、IH電気調理器、ガスコンロ、電子レンジ、CSなどの、電気制御によって加熱温度を制御可能な加熱調理装置であって、上記通信部116と通信して、温度及び加熱時間を含む環境設定を受信し、その環境設定に従った加熱調理が実行可能な装置である。なお、電気により温度制御できれば、熱源としては、ガス、電気、蒸気、マイクロ波など、特に限定されない。これらの中でも特に、温度だけでなく湿度も調整可能であり、大規模な加熱調理が可能なCSが、本発明で用いる調理装置141として好適に使用されるので、以下の文章はCSを用いた場合を中心に記述する。ただし、CS以外の加熱調理機器では、予熱を必要としないものもあり、そのような機器では予熱を行わずに速やかに加熱を開始するようにすることとなる。
【0030】
表示部121は、調理装置141を使用して調理する者に映像面を介して指示を出す出力媒体である。複数の料理の調理手順を、それぞれの料理ごとに割り振った表示領域に表示することができ、それぞれの表示領域ごとに独立して、表示される調理手順を時系列順に更新していくことができる。媒体としては、一般的な電子計算機用モニタや、外部入力可能なテレビモニタなどを用いることができる。また、調理装置141と一体になっているものであってもよい。
【0031】
入力装置122は、それぞれの料理の調理手順が終わり、次の調理手順に取りかかることができる状態になったことを、調理者が支援装置101に対して指示、通知することができるものである。また、上記記憶部113等から調理する料理のレシピ情報を読み出す際に、料理を選択し、又は検索する際にも用いる。具体的には、キーボード、マウスの他、上記の表示部121を構成するモニターと一体化したタッチパネル、調理装置141の操作パネルなどが挙げられる。
【0032】
外部記憶装置123は、支援装置101が内蔵する記憶部113とは別にある記憶媒体から情報を読み込むことができるものである。必須の構成要素ではないが、あると好ましい。具体的には、光ディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、いわゆるUSBフラッシュメモリドライブなどが挙げられる。
【0033】
スピーカー124は、調理装置141を使用して調理する者に、音声による指示や注意を喚起する信号音を発することができる媒体である。必須の構成要素ではないが、あると好ましい。
【0034】
この発明にかかる支援装置101は、調理する料理のレシピ情報をメニューの品数分だけ読み込んで、そのレシピ情報が含む調理手順を上記表示部121に表示し、そのレシピ情報が含む加熱の設定により上記調理装置141での調理を行うようにするものである。このレシピ情報は、上記の内部DB115や、ネットワーク151を介した外部DB153、外部記憶装置123から、入力装置122からの指示に従って選択して、一時記憶部114に読み込む。このうち、外部DB153に記録するレシピ情報を使用するようにすると、支援装置101の使用者が意識することなく、支援装置101及び調理装置141からなるシステムをサービスとして提供する者がレシピ情報を順次追加することができ、支援装置101の使用者であるユーザが苦労することなく、利用可能なレシピ情報を増やすことができるので好ましい。
【0035】
上記レシピ情報は、上記の調理装置141を用いて一の料理を作成するための情報を一纏めにしたものであり、調理手順を表示部121に示すための手順情報と、上記調理装置141を使用するにあたって上記調理装置141に送信する温度、湿度、及び加熱時間の設定を含む一組以上の加熱設定情報とを含む。また、それぞれの手順情報を構成する調理手順に要すると推定される時間情報を含んでいてもよい。ただし、調理装置141としてCSなどの湿度管理できる装置を使用しない場合には、湿度の情報は入らない。また、加熱途中で温度を変更する場合には、上記加熱設定情報は二組以上の情報群となる。
【0036】
このうち、上記手順情報は、文字、画像、動画又はそれらの複数からなり表示部121に表示可能な形式であり、合わせてスピーカー124から発することが可能な音声を含んでいてもよい。これらの文字、画像、動画等を表示部121に表示することにより、料理を作成するための調理手順を調理者に指示する。具体的には、対象となる材料や調味料の種類及び量を指示し、切る、剥く、混ぜる、加える、冷やす等の手順を示す。また、手順情報の中には、上記調理装置141の予熱を開始するため上記調理装置141への直接ボタン操作や着火等を促す旨の指示を表示部121に表示する予熱開始作業要素と、上記調理装置141に下拵えした材料を入れて実際に加熱調理を開始するため上記調理装置141への直接ボタン操作や着火等を促す旨の指示を表示部121に表示する加熱開始作業要素が含まれる。
【0037】
ただし、調理装置141としてCSを使用しない場合には、上記の予熱が必要でなくなる。この場合は、上記予熱開始作業要素と上記加熱開始作業要素とが分かれずに、一つの熱開始作業要素となる。この熱開始作業要素は、実際に加熱を行うタイミングで挿入される。また、加熱時間を指定できない調理装置141を用いる場合には、上記手順情報に、停止ボタンを押したり消火したりすることで、予熱又は加熱を終了する直接操作を行うよう表示部121に表示する熱終了作業要素が含まれる。
【0038】
上記予熱開始作業要素は、上記調理装置141を用いる作業要素を行う前に常温から上記加熱設定情報の温度まで予め昇温させておく予熱に要する時間より、上記CSを使用する調理手順の構成要素より前にある1つ又は複数の作業要素の合計に要すると推定される時間が長くなるだけ手順を遡った、最も後にある作業要素を更新するタイミングで挿入される。例えば、予熱に要する時間が150秒であって、加熱の前に行う作業が時系列逆順に、混合、調味料Aの添加、調味料Bの添加、材料Cのカット、材料Dのカット……であり、それぞれの推定される所要時間が、60秒、30秒、30秒、120秒、240秒……である図2(a)に示す場合を想定する。混合から調味料Bの添加の前まで遡ると推定所要時間の合計は120秒であり、予熱に要する時間150秒より短い。材料Cのカットの前まで遡ると推定所要時間の合計は240秒であり、予熱に要する時間150秒より長くなる。従って、遡った作業要素の推定所要時間の合計が予熱に要する時間を超えることとなる、材料Cのカットと材料Dのカットとの間に、予熱開始作業要素が挿入される。このため、実際の上記手順情報は図2(b)のような順序と構成になる。実行の際には図2(b)右のように、加熱開始までに予熱が完了する。
【0039】
上記制御部111は、上記のような情報を含む上記レシピ情報を一時記憶部114に読み込んだ上で、読み込んだ上記レシピ情報のうちの少なくとも2つ以上の上記レシピ情報の上記手順情報を、上記表示部121の少なくとも一つの領域に順に表示する画面表示手段を有する。具体的には、上記媒体の数が調理する料理の品数、すなわち読み込んだ上記レシピ情報の数と同じ数である場合には、それぞれの媒体にそれぞれの料理の調理手順を表示する。上記媒体の数が調理する料理の品数(=読み込んだ上記レシピ情報の数)よりも少ない場合には、媒体の画面を分割して、分割されたそれぞれの領域にそれぞれの料理の上記レシピ情報の調理手順を表示する。後者の場合の画面の概念図例を図3(a)に示す。表示する情報としては、調理道具の一覧、原材料の一覧、調味料の一部、全行程の推定される所要時間などが挙げられる。ただし、冷蔵庫や冷凍庫での冷蔵、冷凍工程が含まれる上記レシピ情報が含まれる場合には、その上記レシピ情報を先に実行して冷蔵、冷凍工程まで到達した後で、最初の段階で読み込んでおきながら表示しなかった上記レシピ情報の表示を始めるようにしてもよい。
【0040】
上記制御部111は、上記画面表示手段によって表示した表示部121の表示を、上記入力装置122からの各々の作業要素の終了の指示に従って、表示する作業要素を、時系列順に更新する画面更新手段を有する。更新は上記レシピ情報ごとの情報を表示する領域ごとに行い、一つの上記レシピ情報が一の作業要素の表示から次の作業要素の表示に更新されても、他の上記レシピ情報を表示している部分は変更が無い。更新されている作業途中の画面の概念図例を図3(b)に示す。ここで入力装置122からの指示とは、例えば、マウスなどのポインティングデバイスで表示部121のうち上記レシピ情報が表示されている分割された領域内をクリックしたり、分割された画面の領域に番号を割り振っておいた上で当該番号のキーを入力したりするといったことが挙げられる。
【0041】
上記画面更新手段による画面の更新に伴い、上記制御部111は、一時記憶部114に読み込んだ上記レシピ情報の調理手順について、何番目の調理手順まで進行したのかを番号立てして管理する。この進行番号は、入力装置122からの指示に伴って、時系列順に進行させていく。
【0042】
上記制御部111は、上記画面更新手段による更新の際に、そのレシピ情報の時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、上記調理装置141が予熱中又は使用中でなければ、上記加熱設定情報における温度への予熱を行う環境設定を上記調理装置141へ送信して、上記調理装置141への直接操作により予熱を開始できるようにする指示を表示する予熱開始準備手段を有する。この手段により、上記調理装置141をその上記レシピ情報の料理のために使用する準備が開始される。ただし、安全性確保のために、情報の送信によって自動的に上記調理装置の予熱を開始するのではなく、上記調理装置141への直接操作でのみ昇温を開始できるようにする。また、温度だけでなく湿度と加熱時間についての環境設定を同時に上記調理装置に送信してもよい。予熱が終われば次は必然的にその上記レシピ情報の加熱を行うためである。
【0043】
なお、上記制御部111は、上記調理装置141の温度情報を取得する温度取得手段を有していてもよい。すなわち、上記調理装置はその内部の温度情報を検知する、温度センサなどの検知手段を有しているとよい。予熱は、開始時点における温度が、料理の加熱の際の温度より低い場合には、そこから昇温することとなるが、その予熱の前に別の料理のために使用した場合には、次に作成する料理の加熱の際の温度よりも、現時点の温度の方が高くなっている場合がある。この場合には、行うべきは昇温ではなく空冷又は水冷による冷却である。一般的には、上記調理装置141がCSである場合は200℃以上では装置に負担を掛けないように空冷するとよく、200℃未満で、かつ次の調理の温度までの温度差が大きい場合には、内部に水を供給して冷却する水冷を行うとよい。このため、上記CSの温度情報を取得して、適切な予熱を行うように判断するとよい。また、予熱の開始とは無関係に、最初から調理する際に必要な予熱温度に予熱しておくことで、予熱に要する時間を短縮することもできる。なお、調理装置の種類によらず、CS以外の調理装置であっても、上記温度取得手段を有していると、過熱を防ぎ効率的な加熱が出来るので好ましい。
【0044】
また、上記制御部111は、上記画面更新手段による上記表示部121の更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、上記調理装置141が予熱中又は使用中であれば、上記調理装置141の使用終了まで待つように待機指示を上記表示部121に表示して、上記調理装置141の使用終了後に上記加熱設定情報における温度への予熱を行う環境設定を上記調理装置141へ送信して、上記調理装置141への直接操作により予熱を開始できるようにする予熱開始待機手段も有する。一のレシピ情報のための予熱開始から加熱の終了までは、他のレシピ情報のために使用することも、予熱を開始することも出来ないため、待つしかないためである。上記レシピ情報を3つ以上読み込んでいる場合には、既に待機表示をしている上記レシピ情報がある場合、既に待ち状態の上記レシピ情報について全て使い終わるまで待機表示を示す。
【0045】
さらに、上記制御部111は、上記画面更新手段による更新の際に、時系列上の次の手順情報が上記加熱開始作業要素である場合、上記調理装置141に下拵えの済んだ材料を入れて加熱を開始するように上記表示部121に表示させ、上記調理装置141への直接操作により上記調理装置141での調理を開始可能とする、加熱開始準備手段を有する。上記と同様に、最終的な加熱の開始を外部からの操作で行うことは安全性の面からできないので、直接操作によって開始できる準備を整える。
【0046】
さらにまた、上記制御部111は、上記調理装置141が外部入力で加熱時間を指定できないものである場合に、調理装置141への直接入力により加熱を開始した旨の指示を入力装置122から受け付けた後、所要時間が経過するまでの時間をカウントする。その時間が経過した後、上記の表示部121に、調理装置141の加熱を直接入力により終了するように表示する。
【0047】
なお、上記の予熱開始準備手段とこの加熱開始準備手段との少なくともどちらかにより、上記加熱設定情報の温度、湿度、及び加熱時間の情報を上記調理装置141に送信しておくことで、定められた温度での加熱が可能となる。ただし、温度は上記予熱開始準備手段によって送信しなければ、予熱が出来ないため、予熱を行う際には予熱開始準備手段により送信する。
【0048】
一方で、上記調理装置141が予熱の機能を持たないもののみである場合には、上記加熱設定情報の送信は、上記予熱開始準備手段で行うのではなく、実際に加熱による調理を行うタイミングである熱開始準備手段の段階で行えばよい。ただしこの場合も、その上記調理装置141が使用中である場合には上記と同様に、表示部121に待機表示を出しておき待機させる。そして、その前の使用が終わった段階で上記加熱設定情報を送信して、使用する準備ができた旨を表示部121に示す。
【0049】
さらにまた、制御部111は、上記レシピ情報を内部DB115、外部DB153、外部記憶装置123のいずれかから一時記憶部114に読み込むにあたり、入力装置122を操作する者に対して、上記レシピ情報の中から、主菜、副菜、デザートなどを配分して選択可能としたり、日本料理、中国料理、フランス料理などの料理のジャンルごとに選択可能な、選択画面、検索画面を表示部121に表示する選択提供手段を有しているとよい。
【0050】
また、上記調理装置141を複数有する場合には、複数の上記調理装置141に同一の上記環境設定を送信し、同一の料理を複数の上記調理装置141で同時に調理可能にしてもよい。特に大規模な調理を必要とする場合には、一台の上記調理装置141では足りなくなることもあるためである。この場合、複数の上記調理装置141は、上記予熱開始準備手段や上記予熱開始待機手段における、予熱中か否かの判断において一体のものとして取り扱い、環境設定の送信のみ、同一のデータを同時にそれら複数の上記調理装置141に送信することとなる。
【0051】
一方、それとは逆に、個々の上記調理装置141を独立した装置として取り扱い、それぞれに異なる上記環境設定を送信し、異なるタイミングで運用してもよい。これは、作成すべき料理の量が比較的少なかったり、上記調理装置141が十分な大きさである場合に行う運用方法である。また、ガスコンロや電磁調理器では一般に1台で2つ以上の加熱部位を有しており、それらの加熱部位のそれぞれを独立した装置として取り扱うことが好ましい。
【0052】
またそれとは別に、制御部111は、上記調理装置141が複数種類の機器からなる場合には、どの機器を用いて加熱調理するのが、調理時間を短縮して効率よく調理を進行できるかを判断する機器選択手段を有しているとよい。この場合、上記レシピ情報は使用する調理機器141ごとに異なる加熱時間や温度の情報を有するようにしておく。この複数種類とは単に加熱方式の違いだけではなく、同種の機器における出力の違いも含む。例えば、ガスコンロでの加熱と電子レンジでの加熱を比較すると温度も所要時間も変わってくるし、500Wの電子レンジと600Wの電子レンジでもは所要時間が大きく異なってくる。
【0053】
さらに、上記制御部111は、一の上記レシピ情報についての上記画面更新手段による上記更新の際に、その上記レシピ情報の時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、なおかつ上記調理装置が予熱中であり、その予熱中である他の上記レシピ情報と一の上記レシピ情報との調理の温度及び湿度が同一である場合には、前記他の上記レシピ情報にかかる調理と同時に同一の上記調理装置で調理を開始できるようにする調理並行誘導手段を有するとよい。これはすなわち、上記予熱開始準備手段の例外処理として、上記調理装置が予熱中である場合に実行する手段である。上記調理装置141がCSのように複数の料理を同時に調理可能な装置であり、かつその調理装置141の容量が十分に大きい場合には、上記調理装置141の温度及び湿度が同じである複数の上記レシピ情報にかかる料理を、同時に上記調理装置141で調理することで、さらなる調理工程の時間短縮を行うことができる。
【0054】
この上記調理並行誘導手段の具体的な内容は、まず、現在予熱中である上記レシピ情報と、新たに上記更新した上記レシピ情報とについて、それぞれの環境設定の温度及び湿度が同一であるか否かを判断する。加熱時間は相違していてもよい。温度及び湿度のいずれも同一であれば、次に、現在予熱中である上記レシピ情報と、新たに上記更新した上記レシピ情報との料理が、割り当てる上記調理装置141内に、同時に入れることが物理的に可能か否かを判断する。なお、この判断を行うために、上記レシピ情報は、上記調理装置141内の占有率についての情報を有していることが必要となる。合計占有率が100%を越えなければ、上記レシピ情報について表示する表示領域の更新後の画面表示として、他の上記レシピ情報にかかる料理と同時に加熱調理するので予熱は既に開始している旨を表示させる。調理者から、その旨の表示を確認した旨の入力装置122による入力があれば、さらに画面を更新して時系列上の次の作業要素を表示する。また、その予熱中である他の上記レシピ情報について表示する表示領域に、実際の加熱開始までの間の画面更新の際、同時に調理する料理が存在することを通知する表示をし、単独で加熱を開始しないように注意喚起する。
【0055】
そして、加熱の際には、同時に加熱を行う全ての上記レシピ情報の表示領域に、それら全ての上記レシピ情報の料理を中に入れることを確認した上で加熱を開始する旨の表示をする。実際の加熱時間は、複数の上記レシピ情報のうち、最も短い加熱時間であるものに加熱時間を合わせて最初の加熱を行う。その加熱時間が終了したら、その最も短い加熱時間である上記レシピ情報の表示領域を更新して、加熱が終わった旨とともに、取り出し後に加熱を再開させるために上記調理装置141を直接操作する旨の表示をする。ただし、同時に調理する全ての上記レシピ情報の加熱時間が同一である場合には、全ての上記レシピ情報の表示領域を更新して、加熱が終わったので取り出す旨の表示をする。
【0056】
なお、加熱の際の上記CSの合計占有率が100%を越えない範囲であれば、温度及び湿度が同一である3種以上の上記レシピ情報にかかる料理についても同様の処理が可能である。すなわち、占有率の判断にあたって、現在予熱中である上記レシピ情報にかかる料理の占有率だけでなく、その上記レシピ情報と同時に加熱する予定となっている上記レシピ情報にかかる料理の占有率も加算した上で、さらに、新たに上記更新した上記レシピ情報の料理の占有率を加算すると合計占有率が100%を越えるか否か判断する。100%を越えなければ、上記と同様に、他の上記レシピ情報にかかる料理と同時に加熱調理するので予熱は既に開始している旨を表示し、予熱中である他の上記レシピ情報について表示する表示領域には、さらに追加で同時に加熱調理する料理が存在することを通知する表示をし、同時に加熱調理する全ての料理の準備が揃った上で加熱を開始するようにする。
【0057】
上記制御部111は、上記の調理並行誘導手段を有する場合、同時に加熱する複数の上記レシピ情報にかかる料理の全てについて加熱時間が同一ではないとき、加熱時間が比較的短い上記レシピ情報にかかる料理ついての加熱が終了し、一旦CSを開放してその料理をCSから取り出した後、残りの上記レシピ情報にかかる料理についての加熱を再開するにあたり、本来の加熱時間から、そこまでに行った加熱時間を引いた残余である残余時間に、一旦CSを開放することで生じる温度低下で失われる熱量を補填するための付加時間を加算した上で、残りの加熱を行うように上記CSへ送信する環境設定を変更する、加熱時間補填手段を有する。そのまま残余時間のみ加熱したのでは、加熱が不十分となるからである。適切な付加時間は料理の種類及びCS内の残余占有率等によって変化するが、1分間〜3分間程度であるとよい。
【0058】
上記調理装置141として上記CSを用い、上記手段を実行する際の制御部111が処理するフローの具体例を図4及び5に示す。なお、CSはそれぞれを独立のものとして扱い、一つのCSで二以上の料理を同時に作成することが無い場合である。
mはメニューとして読み込む上記レシピ情報の数、nは読み込んだ上記レシピ情報の読み込んだ順番による管理上の通し番号、Fnはn番目の上記レシピ情報において何番目の手順要素が進行しているかを示す進行番号、Ynはn番目の上記レシピ情報が有する手順要素中の何番目に予熱開始作業要素があるかを示す予熱開始番号(1つとは限らない)、Znはn番目の上記レシピ情報が有する手順要素中の何番目に加熱開始作業要素があるかを示す加熱開始番号(1つとは限らない)、Sjは、通し番号j番目の上記CSが使用中であることを示す使用フラグ(1が使用中、0が非使用中)、Tkは、順番がk番目の待機表示状態であることを示す待機フラグ、iは処理のための変数である。
【0059】
まず図4により、一時記憶部への読み込みを説明する(C00)。一の料理について(C01)、一覧、又は所定の検索結果を表示部121に示すことで、入力装置122から上記レシピ情報を選択可能とする。選択された上記レシピ情報を、内部DB115、外部DB153、外部記憶装置123のいずれかから一時記憶部114に読み込み(C02)、内部処理のための通し番号n=iを振る。これを、当初予定の個数の上記レシピ情報を選択するまで繰り返す(C03)。なお、iの数値によってC02で表示される料理の種別を変えることで、献立全体の組み立てを容易にすることができる。例えば、i=1のときに主菜、i=2のときに第一副菜、i=3のときに第二副菜、i=4のときに汁物、を選択可能とする。
【0060】
読み込みが終わったら(C03)、表示部121の表示領域をn個に分割して、それぞれの領域に、1〜nの全ての上記レシピ情報の初期画面を表示する(C04)。初期画面には、上記レシピ情報の料理名を表示する。選択された料理からなる献立でよいか否かの表示を示し(C05)、問題があればi=0として最初から選択しなおす。問題がなければ、材料を表示して入力装置122からの進行指示を受け付ける待機状態へ移行し(C06)、スタート時の手段実行を終了する(C07)。調理者はこの時点で、表示部121の情報を参照して、材料の用意を始める。この時点での表示部121の表示は例えば図3(a)のようになる。また、材料の用意と前後して必要な調理道具を表示してもよいし、調味料などその他調理に必要なものについて集めるべく指示する表示をするものでもよい。
【0061】
次に図5により、調理作業開始後の処理について説明する(C11)。表示部121のうち、どの上記レシピ情報を表示している領域をクリックしたかにより、p番目の上記レシピ情報について、現在表示している作業が終わった旨の指示を受け取る(C12)。指示を受け取ると、Fpを+1し、p番目の上記レシピ情報の作業要素を一つ進め(C13)、p番目の上記レシピ情報を表示している表示領域を、次の作業要素の情報に更新する(C14)。
【0062】
この+1されたFpがYpと同一であるかを判断し(C15)、同一で無ければさらにFpがZpと同一であるか判断する(C16)。それぞれ、予熱開始作業要素であるか、加熱開始作業要素であるかを判断している。いずれにも該当しなければ、次も通常の作業要素であるので、一旦処理を終了し、入力装置122からの次の指示を待つ(C17)。
【0063】
上記の+1されたFpがYpと同一である場合(C15)、予熱を開始するタイミングであるので、CSが使用中か否かを、Sj=0のフラグが存在するか否か判断する(C21)。Sj=0のフラグがあれば、その中で最も小さいj番目のSjをSj=1とし(C22)、そのj番目の上記CS141へ、温度、湿度、及び加熱時間の環境設定を送信する(C23)。なお、C14の段階で、調理者に対して上記CSのボタンを直接操作して、予熱を開始するように画面表示がされている。
【0064】
上記のSj=0のフラグが存在するか否かの判断で(C21)、全てのSjがSj=1であった場合、Tk=0であるもっともkの小さい待機フラグTkにpを代入する(C26)。また、p番目の上記レシピ情報を表示している表示領域を更新し、予熱待機中であることを示す表示をする(C27)。この状態で調理者に対して待機してもらい、待機フラグTk、使用フラグSjの変化を待つ(C28)。
【0065】
なお、図5に示した方式とは別に、予熱開始を待たずに次の調理手順を表示するように表示領域を更新するという方式にすることも可能である。この場合には、下拵えを全て完了させた状態まで進め、後は加熱を待つのみという状態で、上記CS141が使用可能になるのを待つことになる。
【0066】
上記の+1されたFpがZpと同一である場合(C16)、加熱を開始するタイミングである。この場合、C14の段階で、調理者に対して下拵えした材料を、pについて予熱を行ってあるj番目の上記CS141に入れ、加熱開始ボタンを直接操作して加熱を開始するように、画面表示がされている。加熱中は画面表示をそのままとするか、加熱終了までの大凡の残り時間を表示して待つこととなる(C31)。この間、制御部111は、他の上記レシピ情報についての入力指示を受け付けて進行可能とする。
【0067】
加熱が終わり、出来上がった料理を取りだし終わった旨の指示を、入力装置122から受け付けると(C32)、Fpを+1して次の調理手順を表示する(C33)。
このとき、T1=0であるか否かを判断する(C34)。すなわち、予熱の開始を待っている上記レシピ情報が存在するか否かを判断する。T1=0であれば、予熱の開始を待っている上記レシピ情報は存在しないので、Sj=0としてj番目の上記CS141が非使用中であるようにフラグ変更した上で、次の入力装置122からの指示を待つ(C35)。
【0068】
T1≠0である場合(C34)、T1に代入された番号の上記レシピ情報の環境設定をj番目の上記CS141に送信するとともに(C41)、T1に代入された番号の上記レシピ情報の表示領域を更新して、調理者に対してj番目の上記CS141のボタンを直接操作して、予熱を開始する画面表示をする(C42)。それから、k=0からk=m−1に亘って順にTkにT(k+1)の番号を代入して待ちキューを進行させ(C43)、Tmに0を代入して、最大の待機フラグを0としておき(C44)、処理を終了する(C45)。
【0069】
なお、上記の一連の処理にあたり、上記のクリックの際には、誤ったクリックを防ぐために、その上記レシピ情報を更新してよいかどうかのダイアログを表示するものであってもよい。
【0070】
また、C13において1加算したFpの値が、p番目の上記レシピ情報が有する作業要素の数と同じとなったら、その上記レシピ情報についての調理は終了することとなる。この場合、そのp番目の上記レシピ情報の表示領域には、終了した旨の表示をしてもよいし、その画面領域を他の上記レシピ情報を表示するために開放してもよい。
【0071】
なお、このフローは複数の上記CSをそれぞれ別個に運用する場合を基礎としているが、複数の上記CSをまとめて運用する場合には、そのまとめられた上記CS群を1のCSとして割り当て、環境設定の送信のみまとめたその上記CS群を構成するCSに同時に送信することで実現できる。
【符号の説明】
【0072】
101 支援装置
111 制御部
113 記憶部
114 一時記憶部
115 内部DB
116 通信部
121 表示部
122 入力装置
123 外部記憶装置
124 スピーカー
151 ネットワーク
152 電子計算機
153 外部DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理のための加熱手段及び温度の検知手段を有し電気により温度制御可能である1つ又は複数の調理装置と通信可能である通信部(116)と、
装置が内蔵する記憶部の中にある内部データベース(115)、電気通信回線を通じて通信可能な装置外に設けた外部データベース(153)、及び装置に設けた外部記憶装置(123)の少なくともいずれかから読み出したレシピ情報を複数の料理分保持できる一時記憶部(114)と、
上記レシピ情報が含む個々の作業要素を表示可能である1つ又は複数の表示部(121)と、
上記レシピ情報が含む個々の作業要素の終了の指示を受け付ける入力装置(122)と、
これらを制御する制御部(111)と、
を有し、
上記レシピ情報は、
上記調理装置を用いた料理作成のための調理手順を上記表示部に表示できる、一連の文字、画像及び音声の少なくとも一つからなる手順情報と
一連の上記調理手順の中で上記調理装置を使用する作業要素の上記調理装置の温度の設定、及び加熱時間の設定を含む加熱設定情報とを有し、かつ、
上記手順情報は、
上記調理装置を用いる作業要素の際に、その作業要素を開始する指示を上記表示部に表示する熱開始作業要素とを含んでおり、
上記制御部(111)は、
それぞれの上記レシピ情報の上記手順情報を上記表示部の少なくとも一つの領域に表示する画面表示手段と、
その表示を上記入力装置からの各々の作業要素の終了の指示に従って表示する作業要素を時系列順に更新する画面更新手段と、
上記更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記熱開始作業要素である場合で、上記調理装置が予熱中又は使用中でなければ、上記加熱設定情報における温度への予熱又は加熱を行う環境設定を上記調理装置のうちの少なくとも一つへ送信して、上記調理装置への直接操作により加熱又は予熱を開始できるようにする指示を表示する熱開始準備手段と
上記更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記熱開始作業要素である場合で、上記調理装置が予熱中又は使用中であれば、予熱の開始又は加熱の開始を上記調理装置の使用終了まで待つように待機指示を上記表示部に表示して、上記調理装置の使用終了後に上記加熱設定情報における温度への予熱又は加熱を行う環境設定を上記調理装置へ送信して、上記調理装置への直接操作により予熱を開始できるようにする熱開始待機手段と、
を有する、調理装置による調理の支援装置。
【請求項2】
上記調理装置のうちの少なくとも一つが加熱する時間を指定可能な機器であり、上記レシピ情報が含む加熱時間の設定に合わせた加熱を行う請求項1に記載の調理の支援装置。
【請求項3】
上記調理装置のうちの少なくとも一つが、加熱する時間を指定不可能な機器であり、
上記加熱設定情報が加熱時間を含み、
上記制御部が、加熱の開始後における上記入力装置からの入力後の経過時間をカウントして、上記加熱時間経過後に上記表示部に所要時間が経過した旨を表示して、直接操作で加熱を停止可能とする時間経過表示機能を有する、
請求項1又は2に記載の調理の支援装置。
【請求項4】
上記調理装置が、ガスコンロ、電磁調理器、電子レンジ、及び、加熱水蒸気による加熱を行うコンベクションスチーマーからなる群のうち、少なくとも二種類からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調理の支援装置。
【請求項5】
調理のための加熱手段及び温度の検知手段を有し電気により温度制御可能である1つ又は複数の調理装置と通信可能である通信部(116)と、
装置が内蔵する記憶部の中にある内部データベース(115)、電気通信回線を通じて通信可能な装置外に設けた外部データベース(153)、及び装置に設けた外部記憶装置(123)の少なくともいずれかから読み出したレシピ情報を複数の料理分保持できる一時記憶部(114)と、
上記レシピ情報が含む個々の作業要素を順序に従い更新可能に表示する1つ又は複数の表示部(121)と、
上記レシピ情報が含む個々の作業要素の終了の指示を受け付ける入力装置(122)と、
これらを制御する制御部(111)と、
を有し、
上記レシピ情報は、
上記調理装置を用いた料理作成のための調理手順を上記表示部に表示して順にその作業要素ごとに更新可能である一連の文字、画像及び音声の少なくとも一つからなる手順情報と、
一連の上記調理手順の中で上記調理装置を使用する作業要素の上記調理装置の温度、及び加熱時間の設定を含む加熱設定情報とを有し、かつ、
上記手順情報は、
上記調理装置を用いる作業要素を行う前に上記加熱設定情報の温度に予め昇温させておく予熱に要する時間より、上記調理装置を使用する調理手順中の作業要素より前にある1つ又は複数の作業要素の合計に要すると推定される時間が長くなるだけ手順を遡った、最も後にある作業要素を更新する手順の間に挿入される予熱開始作業要素と、
上記調理装置を用いる実際の調理である作業要素の際に、その作業要素を開始する指示を上記表示部に表示する加熱開始作業要素とを含んでおり、
上記制御部(111)は、
それぞれの上記レシピ情報の上記手順情報を上記表示部の少なくとも一つの領域に表示する画面表示手段と、
その表示を上記入力装置からの各々の作業要素の終了の指示に従って表示する作業要素を時系列順に更新する画面更新手段と、
上記更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、上記調理装置が予熱中又は使用中でなければ、上記加熱設定情報における温度への予熱を行う環境設定を上記調理装置のうちの少なくとも一つへ送信して、その上記調理装置への直接操作により予熱を開始できるようにする指示を表示する予熱開始準備手段と、
上記更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、上記調理装置が予熱中又は使用中であれば、予熱の開始又は加熱の開始を上記調理装置の使用終了まで待つように待機指示を上記表示部に表示して、上記調理装置の使用終了後に上記加熱設定情報における温度への予熱を行う環境設定を上記調理装置へ送信して、上記調理装置への直接操作により予熱を開始できるようにする予熱開始待機手段と、
上記更新の際に、時系列上の次の手順情報が上記加熱開始作業要素である場合、上記調理装置に下拵えの済んだ材料を入れて加熱を開始するように上記表示部に表示して、上記調理装置への直接操作により上記調理装置での調理を開始可能とする加熱開始準備手段と
を有する、調理装置による調理の支援装置。
【請求項6】
1つの上記調理装置、又は複数の上記調理装置の全てが、加熱水蒸気による加熱を行うコンベクションスチーマーであることを特徴とする請求項5に記載の調理の支援装置。
【請求項7】
上記加熱設定情報が湿度の設定を有しており、
上記環境設定が温度情報と共に湿度情報も含んでおり、
一の上記レシピ情報についての上記更新の際に、時系列上の次の作業要素が上記予熱開始作業要素である場合で、上記調理装置が予熱中であり、その予熱中である他の上記レシピ情報と一の上記レシピ情報との調理の温度及び湿度が同一である場合には、前記他の上記レシピ情報にかかる調理と同時に同一の上記調理装置で調理を開始できるようにする調理並行誘導手段を有する請求項6に記載の調理の支援装置。
【請求項8】
加熱時間の異なる複数の上記レシピ情報にかかる調理を一の上記調理装置で同時に調理開始し、そのうち加熱時間が比較的短い上記レシピ情報にかかる調理の加熱時間が終了し、一旦上記調理装置を開放して加熱時間が終了した調理を取り出し、残りの上記レシピ情報にかかる調理の加熱を開始する際に、残りの上記レシピ情報の加熱時間を単独で調理した場合よりも加熱時間を長くして、前記開放により生じる温度低下を補填する加熱時間補填手段を有することを特徴とする請求項7に記載の調理の支援装置。
【請求項9】
上記一時記憶部が読み込んで同時に上記表示部に表示可能な上記レシピ情報の数が、上記表示部を構成する電子計算機用のモニターの数よりも多く、
上記モニターのうちの少なくとも一つに、複数の上記レシピ情報の構成要素を、モニター画面を分割した領域のそれぞれに表示する請求項1から8のいずれか1項に記載の調理の支援装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調理の支援装置により、調理のための加熱手段を有し電気により温度制御可能である1つ又は複数の調理装置を制御して調理を行う調理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−123101(P2010−123101A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99017(P2009−99017)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(508317996)株式会社グローカルフード (3)
【Fターム(参考)】