説明

電気オーブン

【課題】カーボンナノチューブを利用した電気オーブンを提供することである。
【解決手段】電気オーブン100は、チャンバーを有する本体110と、該本体に組み付けられたドア120と、前記本体110のチャンバー内に設置されたヒーターと、を含む。前記ヒーター150はカーボンナノチューブ構造体152と、基体と、少なくとも二つの電極151と、を含み。前記カーボンナノチューブ構造体152及び基体が複合され、前記カーボンナノチューブ構造体152は複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有し、前記少なくとも二つの電極151は前記カーボンナノチューブ構造体152に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気オーブンに関し、特にカーボンナノチューブを利用した電気オーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気オーブンは、電気で電気オーブンチャンバーの内部を加熱するにより、食品を調理する調理装置である。前記電気オーブンのヒーターは、良好な熱伝導性を有する金属材料、例えば金属タングステンからなる。前記金属材料からなるヒーターには低電圧を印加しても、高エネルギーの熱を放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7045108号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/015710号
【特許文献3】米国特許出願公開第20080299031号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属材料からなるヒーターは、酸化しやすいので、前記電気オーブンの使用寿命が短いという課題がある。且つ、金属材料が重いので、前記電気オーブンの軽量化が実現できないという課題もある。
【0005】
従って、前記課題を解決するために、使用寿命が長く、重量が軽い電気オーブンを提供することは必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気オーブンは、チャンバーを有する本体と、該本体に組み付けられたドアと、前記本体のチャンバー内に設置されたヒーターと、を含む。前記ヒーターはカーボンナノチューブ構造体と、基体材料と、少なくとも二つの電極と、を含み、前記カーボンナノチューブ構造体及び基体材料が複合され、前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有し、前記少なくとも二つの電極は前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続される。
【0007】
前記基体材料が、ポリマー又は無機非金属材料である。
【0008】
前記ヒーターにおいて、前記カーボンナノチューブ構造体が複数の微孔を含み、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透される。
【0009】
前記基体材料が、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に設置されている。
【発明の効果】
【0010】
従来の電気オーブンと比べると、本発明の電気オーブンは、前記カーボンナノチューブ構造体を含むヒーターが設置されているので、重量が軽くなり、優れた加熱性能及び良好な熱伝導性を有する。また、前記ヒーターは力学性能、靭性、及び機械強度も良く、前記電気オーブンの使用寿命を長くする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例のドアが閉じた電気オーブンの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例のドアが開いた電気オーブンの構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例のドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】図3中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
図1及び図2を参照すると、本実施例の電気オーブン100は、本体110と、ドア120と、制御素子130と、支持板140と、ヒーター150と、保護層160と、を含む。前記電気オーブン100を使用して、食品を加工することができる。前記ドア120は前記本体110に組み付けられている。前記制御素子130は調理温度と調理時間を制御する。前記支持板140には、食品を載置することができる。前記ヒーター150と前記保護層160とは、前記本体110の中に設置される。
【0014】
前記本体110は中空部(図示せず)を有する。前記ドア120で前記本体110を密封させて、前記電気オーブン100にチャンバー(図示せず)を形成する。前記チャンバーの形状は限定されない。前記本体110は、間隔を有して設置された二つの対向する第一側面111と、間隔を有して設置された二つの対向する第二側面112と、一つの前記ドア120と対向する第三側面113を有する。前記二つの第二側面112は、前記二つの第一側面111と接続されているが、前記第三側面113は、前記第二側面112及び前記第一側面111と接続されている。前記二つの第二側面112の内壁に、複数の案内レール1121が平行して設置されている。前記案内レール1121は、前記支持板140を前記第一側面111と平行して支持させるために設けられている。前記案内レール1121により、前記支持板140を滑動させることができる。さらに、前記本体110のチャンバーの中に生じた熱を、効率的に放出させるために、前記本体110の一つ側面にファン1111を設置することができる。本実施例において、前記電気オーブン100の一つの前記第一側面111に、前記ファン1111が設置されている。
【0015】
前記二つの対向する第一側面111と、前記二つの対向する第二側面112及び第三側面113は、全て断熱材料からなり、良好な断熱性を有する断熱構造体である。前記断熱材料は、耐熱ガラス、耐熱プラスチック及び石英又はそれらの混合物のいずれか一種である。前記断熱構造体は内壁と外壁を有する。前記第一側面111、第二側面112及び第三側面113の断熱性能を高めるために、前記断熱構造体の内壁及び外壁の間に断熱材料を設置することができる。前記断熱材料は真珠岩、フォームガラス及び多孔質コンクリート又はそれらの混合物のいずれか一種である。
【0016】
前記本体110の熱量を減少させるために、前記本体110の内壁の表面に30%以上の反射率を有する赤外線反射層(図示せず)を設けることができる。前記赤外線反射層は、金属、金属化合物及び複合材料又はその混合物のいずれか一種からなることができる。前記金属材料は、例えば、クロム、亜鉛、アルミニウム、金及び銀又はその合金のいずれか一種である。前記複合材料は酸化亜鉛を含む塗料であることができる。前記赤外線反射層としては、例えば、反射率が38%以上の亜鉛、反射率が75%以上のアルミニウム−亜鉛合金である。
【0017】
前記本体110に組み付けられたドア120は、開閉することができる。前記電気オーブン100の断熱性能を高めるために、前記ドア120の構造及び材料は、前記本体110と類似している。さらに、前記ドア120に透明な窓121を設置することができる。前記透明な窓121により、前記電気オーブン100の中の状況を監視できる。前記透明な窓121は、透明な耐熱ガラス、透明な耐熱プラスチック及び前記両種材料の混合物からなる。
【0018】
前記制御素子130は前記本体110の任意の領域、例えば、前記ドア120、前記第一側面111又は前記第二側面112に設置できる。本実施例において、前記制御素子130は前記第一側面111に設置されて、前記ヒーター150と接続されている。前記制御素子130は、電源スイッチ131と、温度ボタン132と、計時ボタン133と、を含む。前記電源スイッチ131により、前記ヒーター150と電源(図示せず)との連接を制御することができる。前記温度ボタン132は前記チャンバーの温度を制御し、前記計時ボタン133は加熱時間を設定することができる。
【0019】
前記支持板140は前記電気オーブン100のチャンバーの中に設置されている。前記支持板140はプレート、トレー、又は複数の孔を有する網状構造体である。本実施例において、前記支持板140はプレートである。前記支持板140は対向する二つの表面を有し、一つの表面に物を置くことができる。前記支持板140は前記案内レール1121により、滑動できる。
【0020】
前記ヒーター150は、前記二つの電極151及びカーボンナノチューブ構造体152を含む。前記二つの電極151は、それぞれ前記カーボンナノチューブ構造体152に電気的に接続される。
【0021】
前記二つの電極151は前記カーボンナノチューブ構造体152の同じ表面、又はそれぞれ前記カーボンナノチューブ構造体152の対向する二つの表面に設置される。導電接着剤(例えば、導電性銀接着剤、図示せず)を利用して、前記二つの電極151を、直接前記カーボンナノチューブ構造体152に電気的に接続させる。勿論、カーボンナノチューブ構造体152は大きな比表面積と接着性を有するので、前記二つの電極151は、導電接着剤を利用せず、直接前記カーボンナノチューブ構造体152に接着されることができる。前記二つの電極151は金属又は導電樹脂のような導電材料からなる。前記二つの電極151は薄膜状、棒状、線状、ブロック状を有することができる。前記ヒーター150は少なくとも二つの前記電極151を含む。本実施例において、前記ヒーター150は二つの前記電極151を含む。前記二つの電極151は薄膜状を有して、それぞれ前記カーボンナノチューブ構造体152の対向する端部に設置されている。前記電極151と前記本体110とを絶縁状態に保持させることが必要である。
【0022】
前記カーボンナノチューブ構造体152は大きな比表面積(例えば、100m/g以上)を有する。該カーボンナノチューブ構造体152の単位面積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであるが、好ましくは、0(0は含まず)〜1.7×10−6J/cm・Kであり、本実施例では、1.7×10−6J/cm・Kである。前記カーボンナノチューブ構造体には、複数のカーボンナノチューブが均一に分散されている。該複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブ構造体152は、複数のカーボンナノチューブを含む自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体152を独立して利用することができるという形態のことである。即ち、前記カーボンナノチューブ構造体152を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体152の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体152を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体に、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体152の単位面積当たりの熱容量が非常に低いので、前記ヒーター150の温度は速やかに変化でき、即ち、前記ヒーター150は、速い熱応答速度がある。前記カーボンナノチューブ構造体152の純度が非常に高い場合、前記カーボンナノチューブは酸化しにくいので、前記ヒーター150及び前記ヒーター150を含む電気オーブン100の使用寿命を延ばせることができる。さらに、前記カーボンナノチューブ構造体152の密度は低く、例えば1.35g/cm程度に達する場合、前記ヒーター150の熱応答速度は速くなる。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有するので、前記カーボンナノチューブ構造体152も大きな比表面積を有し、前記カーボンナノチューブ構造体152の比表面積が非常に大きい。従って、該カーボンナノチューブ構造体152は接着性があって、直接前記本体110の表面に設置される。
【0024】
前記カーボンナノチューブ構造体152が平板型である場合、その厚さは0.5nm〜1mmに設けられている。前記カーボンナノチューブ構造体152が線形である場合、その直径は0.5nm〜1mmに設けられている。
【0025】
本発明のカーボンナノチューブ構造体としては、以下の(一)〜(四)のものが挙げられる。
【0026】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、図3に示すように、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(特許文献1と特許文献2を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長軸方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図3及び図4を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長軸方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0027】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体152に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0028】
(二)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体152は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体152においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、0.5nm〜1mmである。
【0029】
(三)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0030】
単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0031】
単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0032】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの厚さは、0.5nm〜1mm(特許文献3を参照)である。
【0033】
(四)カーボンナノチューブワイヤ又はカーボンナノチューブケーブル
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであり、5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5nm〜1cmである。前記カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブからなる。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、0.5nm〜50nmである。前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、0.5nm〜100μmである。前記カーボンナノチューブ構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0034】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0035】
前記カーボンナノチューブケーブルは少なくとも二本カーボンナノチューブワイヤを含む。前記カーボンナノチューブケーブルにおける複数のカーボンナノチューブワイヤは前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤからなる。前記カーボンナノチューブケーブルは非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤからなる場合、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは相互に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブケーブルはねじれ状カーボンナノチューブワイヤからなる場合、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは相互に絡み合っている。
【0036】
さらに、前記ヒーター150は基体(図示せず)を含む。前記基体は前記カーボンナノチューブ構造体152に被覆されている。前記基体は、前記カーボンナノチューブ構造体152における前記カーボンナノチューブと相互に結合して、カーボンナノチューブ複合構造体に形成される。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体152が複数の微孔を含むので、前記基体の材料は、前記カーボンナノチューブ構造体152の微孔に浸漬し、前記カーボンナノチューブ複合構造体が形成される。前記基体の材料は、ポリマーおよび無機非金属材料又はそれらの混合物のいずれか一種である。前記カーボンナノチューブ複合構造体を形成する過程において、前記基体の材料は液体又は気体で、前記カーボンナノチューブ構造体152の微孔の中に浸透できる。前記基体の熱安定性は高い。即ち、前記ヒーター150が作動する場合、前記基体は、変形、融解又は分解しない。
【0037】
前記ポリマーは、例えば、繊維素(cellulose)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリスチレン(polystyrene)、塩化ビニル樹脂(polyvinyl chloride)、エポキシ樹脂(ethoxyline resin)、フェノール樹脂(phenol formaldehyde resin)、シリカゲル(silica gel)、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン・テレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(polymethyl methacrylate)又はそれらの混合物のいずれか一種である。前記無機非金属材料は、例えばガラス、セラミック、半導体又はそれらの混合物のいずれか一種である。
【0038】
前記基体の材料は、前記カーボンナノチューブ構造体152の微孔の中に浸漬されて、該カーボンナノチューブ構造体152と緊密に接合することができる。前記基体の材料で、前記カーボンナノチューブ構造体152を被覆させることにより、該カーボンナノチューブ構造体152を保護できる。前記基体が熱絶縁材料からなる場合、該基体によって前記カーボンナノチューブ構造体152と外部とを絶縁させ、前記ヒーター150の熱を均一的に分散させることができ、さらに前記ヒーター150の温度変化を低減させることができる。前記基体の材料が柔軟性のポリマーである場合、前記ヒーター150の柔軟性を増加させることができる。
【0039】
さらに、前記カーボンナノチューブ構造体152の汚染を防止するために、前記ヒーター150と前記支持板140の間に保護層160を設置することができる。本実施例において、前記保護層160は前記カーボンナノチューブ構造体152の一つ表面に被覆されている。前記保護層160は、電気伝導材料(金属又は合金)又は絶縁材料(樹脂、プラスチック又はラバー)からなる。前記保護層160の厚さは0.5μm〜2mmに設定される。
【0040】
前記電気オーブン100で食品を加工する場合、前記二つの電極151により、前記ヒーター150に電圧を印加した後、前記ヒーター150における前記カーボンナノチューブ構造体152は、所定の波長を有する熱を放出することができる。前記支持板140の上に放置された食品は、前記ヒーター150によって加工される。前記カーボンナノチューブ構造体152の面積と厚さと、該カーボンナノチューブ構造体152に印加された電圧と、を制御することにより、前記カーボンナノチューブ構造体152から、異なる波長を有する電磁波を放出させることができる。前記電圧が一定である場合、前記カーボンナノチューブ構造体152が厚くなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体152から放出される電磁波の波長は短くなる。前記カーボンナノチューブ構造体152の厚さが一定である場合、前記カーボンナノチューブ構造体152に印加された電圧が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体152から放出される電磁波の波長は短くなる。即ち、前記ヒーター150は可視光線を発し、熱の輻射又は赤外線の輻射を起こすことができる。
【0041】
前記カーボンナノチューブ構造体152におけるカーボンナノチューブは理想な黒体構造を有するので、前記ヒーター150は広い範囲の熱輻射及び高い熱転換率を有する。食品と前記ヒーター150の距離が一定である場合、金属線からなるヒーターを利用した伝統的なオーブンと比べて、本発明の電気オーブンは、エネルギーの消耗が低くて、食品を均一に加熱できるという優れた点がある。
【符号の説明】
【0042】
100 電気オーブン
110 本体
120 ドア
121 透明な窓
130 制御素子
131 電源スイッチ
132 温度ボタン
133 計時ボタン
140 支持板
150 ヒーター
151 電極
152 カーボンナノチューブ構造体
160 保護層
1111 ファン
1121 案内レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーを有する本体と、該本体に組み付けられたドアと、前記本体のチャンバー内に設置されたヒーターと、を含む電気オーブンにおいて、
前記ヒーターはカーボンナノチューブ構造体と、基体と、少なくとも二つの電極と、を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体及び基体が複合され、
前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有し、
前記少なくとも二つの電極は前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続されることを特徴とする電気オーブン。
【請求項2】
前記ヒーターにおいて、前記カーボンナノチューブ構造体が複数の微孔を有し、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透されていることを特徴とする請求項1に記載の電気オーブン。
【請求項3】
チャンバーを含む電気オーブンにおいて、
前記チャンバー内に支持板及びヒーターが設置され、
前記ヒーターはカーボンナノチューブ構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有していることを特徴とする電気オーブン。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−40393(P2011−40393A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181406(P2010−181406)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】