説明

電気信号入力形容量制御装置および液圧設備

【課題】 液圧設備に配設すべき配管を低減することができる電気信号入力形容量制御装置およびそれを備える液圧設備を提供する。
【解決手段】 ポンプ設備20は、2つのポンプユニット22,23を備え、各ポンプユニット22,23には、電気レギュレータ81.82が設けられる。各電気レギュレータ81,82は、電磁比例弁86が入力ポートに供給された駆動油のパイロットピストン85への供給状態を切換える。パイロットピストン85は、供給された駆動油の供給状態に応じて、サーボ切換弁を作動させ、サーボ機構に供給する機構駆動油の供給状態を制御する。サーボ機構25,26は、供給される機構駆動油の供給状態に応じて、各ポンプユニット22,23の容量を変更する。電気レギュレータ81,82には、入力ポートを、各ポンプユニット22,23間にわたって延びるポンプ間通路に接続する駆動油用通路110が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量形の液圧装置、たとえばアキシャル形ポンプの容量を、入力される電気信号に応じて変更する電気信号入力形容量制御装置およびそれを備える液圧設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の斜板式ピストンポンプを含む液圧設備が実用に供され、この液圧設備に含まれる各斜板式ピストンポンプの容量を変更するレギュレータとして、電気レギュレータと油圧レギュレータとが用いられる。
【0003】
図5は、従来の第1の技術の電気レギュレータ1を備えるポンプ設備2の油圧回路を示す油圧回路図である。ポンプ設備2には、2つの斜板式ピストンポンプ3を含むポンプ装置4と2つの電気レギュレータ1とが含まれる。ポンプ装置4は、2つの可変容量形の斜板式ピストンポンプ3が軸線方向に並設されるタンデム型ポンプである。各斜板式ピストンポンプ3は、斜板5の傾斜角によって容量を変更可能な可変容量形のピストンポンプである。電気レギュレータ1は、各斜板式ピストンポンプ3に設けられ、入力される電気信号に応じて、斜板式ピストンポンプ3の容量を変更するレギュレータである。
【0004】
各斜板式ピストンポンプ3には、その容量を変更するためのサーボ機構6が設けられる。各サーボ機構6は、サーボピストン7をそれぞれ有し、サーボ機構6に供給される機構駆動油の圧力に応じて、サーボピストン7を作動し、斜板5を傾動駆動させ、斜板5の傾斜角を変更し、斜板式ピストンポンプ3の容量を変更する。
【0005】
電気レギュレータ1には、基本的に、サーボ切換弁8と、電気制御形パイロットピストン9と、電磁弁10とが含まれる。サーボ切換弁8は、スプール11とスリーブ12とを含む。電気レギュレータ1は、電気制御形パイロットピストン9を作動させるためのパイロット油が入力可能に形成される。電気制御形パイロットピストン9は、パイロット油の圧力を受圧可能に設けられる。電気制御形パイロットピストン9は、パイロット油の圧力に応じて、スプールを変位させ、サーボ機構6への機構駆動油の供給状態を切換え、斜板式ピストンポンプ3の容量を変更する。スリーブ12は、連結ロッド13によってサーボピストン6に連結され、斜板5の傾斜角に基づいて、機構駆動油の供給状態を制御し、斜板式ピストンポンプ3の容量を変更する。電磁弁10は、入力される電気信号に応じて、その出力ポート14と入力ポート15との接続状態を切換え可能に構成される。電磁弁10は、入力ポート15に供給されたパイロット油の電気制御形パイロットピストン9への供給状態を切換える。油圧供給源からパイロット油を電磁弁10の入力ポート15に導くための管路が、電気レギュレータ1毎に形成されている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
従来の第2の技術の液圧設備には、2つの斜板式ピストンポンプを含むポンプ装置と2つの油圧レギュレータが含まれる。ポンプ装置は、第1の従来の技術と同様に、2つの斜板式ピストンポンプが軸線方向に並設されるタンデム型ポンプであり、各斜板式ピストンポンプには、サーボ機構が設けられる。油圧レギュレータは、各斜板式ピストンポンプに設けられ、入力される液圧信号、具体的には、入力されるパイロット油の圧力に応じて、斜板式ピストンポンプの容量を変更するレギュレータである。油圧レギュレータには、基本的に、電気レギュレータと同様に、サーボ切換弁が含まれ、さらに油圧制御形パイロットピストンと、馬力制御ピストンとが含まれる。
【0007】
油圧レギュレータは、油圧制御形パイロットピストンを作動させるためのパイロット油が入力可能に形成される。油圧制御形パイロットピストンは、この入力されるパイロット油の圧力に応じて、スプールを変位させ、サーボ機構への機構駆動油の供給状態を変更する。馬力制御ピストンは、各斜板式ピストンポンプから吐出される作動油の圧力を受圧可能に設けられる。馬力制御ピストンは、各斜板式ピストンポンプから吐出される作動油の圧力に応じて、スプールを変位させ、2つの斜板式ピストンポンプの容量を切換える。さらに馬力制御ピストンは、入力される馬力制御ピストン駆動油を受圧可能に設けられる。馬力制御ピストンは、この馬力制御ピストン駆動油の圧力に応じて、スプールを変位させ、斜板式ピストンポンプの容量を変更し、吐出する作動油の最大馬力を変更できる。ポンプ設備には、一方の油圧レギュレータの馬力制御ピストンから他方の油圧レギュレータの馬力制御ピストンに馬力制御ピストン駆動油を導くポンプ間通路がポンプ装置に形成される。これによってポンプ設備は、1つの油圧供給源から各馬力制御ピストンに馬力制御ピストン駆動油を入力することができる。
【0008】
【特許文献1】特許第3080597号明細書(第6頁、第16図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の第1の技術のポンプ設備2では、各電気レギュレータ1を作動させるために、油圧供給源から各電磁弁10の入力ポート15にパイロット油が供給される。したがってポンプ設備2を用いる場合、各電気レギュレータ1の入力ポートを油圧供給源に接続するために、複数の管路17が設けられる。それ故、部品点数が多く、組立て作業の工数が多くなり、組立作業の作業性が悪い。また複数の配管17が必要なので、ポンプ設備2の占有空間が大きくなる。
【0010】
従来の第2の技術のポンプ設備では、ポンプ装置に、2つの斜板式ピストンポンプにわたって延びるポンプ間通路が形成される。このポンプ間通路は、油圧供給源から一方の油圧レギュレータに馬力制御ピストンに供給された馬力制御ピストン駆動油を、他方の油圧レギュレータに導くために形成される。液圧設備では、このポンプ間通路を用いて各斜板式ピストンポンプに設けられる油圧レギュレータに馬力制御ピストン駆動油を供給している。
【0011】
従来の第2の技術のポンプ設備に含まれる各斜板式ピストンポンプは、油圧レギュレータに代えて、従来の第1の技術の電気レギュレータ1を用いることができる。このポンプ設備に電気レギュレータ1を用いる場合、ポンプ装置に形成されるポンプ間通路が用いられず無駄になっている。油圧レギュレータに代えて、電気レギュレータが用いられる場合、ポンプ装置のポンプ間通路は、有効に用いられることなく、設備における費用対効果が低い。
【0012】
本発明の目的は、液圧設備に配設すべき配管を低減することができる電気信号入力形容量制御装置およびそれを備える液圧設備を提供することである。
【0013】
また本発明の他の目的は、液圧設備に形成される通路を有効利用可能な電気信号入力形容量制御装置およびそれを備える液圧設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数の可変容量形の液圧装置を備える液圧設備の各液圧装置に設けられる容量変更機構を作動させる機構駆動液体の容量変更機構への供給状態を制御する機構制御弁であって、弁駆動液体が供給されることによって、弁駆動液体の供給状態に応じて、容量変更機構への機構駆動液体の供給状態を制御する機構制御弁と、
入力される電気信号に応じて、入力ポートに供給される弁駆動液体の機構制御弁への供給状態を切換える電磁弁と、
入力ポートを、各液圧装置間にわたって延びる液圧装置間通路に接続する弁駆動液体用通路とを有することを特徴とする液圧装置の電気信号入力形容量制御装置である。
【0015】
また本発明は、液圧装置間通路は、電気信号入力形容量制御装置に代えて、液圧信号が入力されることによって、容量変更機構を作動させる液圧信号入力形容量制御装置が用いられる場合に、一の液圧信号入力形容量制御装置から他の液圧信号入力形容量制御装置に、液圧装置の容量を制御するために用いる液圧を導く通路であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、複数の液圧装置と、
各液圧装置毎に設けられ、前記液圧装置の電気信号入力形容量制御装置とを備える液圧設備である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入力された電気信号に応じて、電磁弁が前記弁駆動液体の機構制御弁への供給状態を切換える。機構制御弁は、駆動液体の機構制御弁への供給状態に応じて、容量変更機構への機構駆動液の供給状態を制御し、容量変更機構を作動させる。容量変更機構を作動させることによって、液圧設備が備える各液圧装置の容量が変更することができる。各液圧装置間にわたって延びる液圧装置間通路と弁駆動液体用通路とが接続されているので、複数の電磁弁のうち少なくともいずれか1つの電磁弁に、弁駆動液体を供給すると、各電磁弁の入力ポートに弁駆動液体が供給される。これによって各電磁弁の入力ポート毎に、弁駆動液体を供給するための配管を新たに形成する必要がない。それ故、液圧設備を配設する際、液圧設備に配設すべき配管を削減することができる。したがって配管を配設するために必要な空間を、第2の従来の技術の場合より低減できる。これによって液圧設備の占有空間の低減を図ることができる。産業機械などに液圧設備を搭載する際、配管を新たに配設する手間を省くことができるので、その分作業工数の低減を図ることができる。
【0018】
本発明によれば、液圧装置に形成される液圧装置間通路は、電気信号入力形容量制御装置に代えて、液圧信号入力形容量制御装置を用いる場合、一液圧信号入力形容量制御装置から他の液圧信号入力形容量制御装置に、液圧装置の容量を制御するために用いられる液圧を導くために用いられる。この液圧装置間通路は、従来の技術の電気信号入力形容量制御装置である電気レギュレータでは用いられておらず、電気信号入力形容量制御装置で用いることによって、液圧装置に形成される液圧装置間通路を有効に利用することができる。また液圧信号入力形容量制御装置によって容量変更機構を作動可能な液圧装置を複数備える液圧設備において、液圧装置間通路を新たに形成する必要がなく、液圧装置間通路を形成するための手間を省くことができる。電気信号入力形容量制御装置は、液圧信号入力形容量制御装置を配設可能な液圧装置であれば、液圧装置間通路を新たに形成することなく配設可能であり、汎用性が高い。
【0019】
本発明によれば、少なくともいずれか1つの液圧装置に装着される電気信号入力形容量制御装置に弁駆動液体を供給することによって、各電気信号入力形容量制御装置に入力される電気信号に応じて、各液圧装置の容量を変更することができる。これによって各電磁弁の入力ポート毎に、弁駆動液体を供給するための配管を新たに形成する必要がない。それ故、液圧設備を配設する際、液圧設備に配設すべき配管を削減することができる。したがって配管を配設するために必要な空間を、第2の従来の技術の場合より低減できる。したがって産業機械および建設機械における液圧設備の占有空間の低減を図ることができる。このように既存の液圧装置間通路を有効に利用し得るので、設備における費用対効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。また実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態であるポンプ設備20の油圧回路を示す油圧回路図である。液圧設備であるポンプ設備20は、搭載対象物であるたとえば産業機械および建設機械に搭載され、搭載対象物の各アクチュエータに圧液を供給する。ポンプ設備20には、タンデム型ポンプなどと呼ばれ2つのポンプ部が組合わせて構成される複合型ポンプ装置が含まれる。ただし複合型ポンプ装置は、2つのポンプ部が組合わされて構成されるものに限定されず、3つ以上のポンプ部が組合わされて構成されるものも含む。組合される2つのポンプ部は、可変容量形のピストンポンプであり、本実施の形態では、斜板式ピストンポンプである。ポンプ設備20には、さらに各ポンプ部毎にポンプ部の容量を変更させる電気レギュレータ80,81が設けられる。電気信号入力形容量制御装置である各電気レギュレータ80,81は、入力される電気信号に基づいて、設けられるポンプ部の容量を変更する。
【0022】
ポンプ設備20には、2つのポンプユニット22,23、バルブユニット24および2つのサーボ機構25,26を含むポンプ装置21と、2つの電気レギュレータ80,81とが含まれる。液圧装置である各ポンプユニット22,23と、バルブユニット24とは、同軸上に設けられ、これら各ポンプユニット22,23およびバルブユニット24の軸線が、ポンプ装置21の軸線L21となる。各ポンプユニット22,23とバルブユニット24とは、各ポンプユニット22,23によってバルブユニット24を挟むように、ポンプ装置21の軸線L21に沿って並べられ、互いに連結される。容量変更機構である各サーボ機構25,26は、各ポンプユニット22,23に設けられる。各電気レギュレータ80,81は、各ポンプユニット22,23の上部に設けられ、各ポンプユニット22,23に連結される。
【0023】
各ポンプユニット22,23は、ポンプケーシング27,28をそれぞれ有し、各ポンプケーシング27,28内に、シリンダブロック、ピストンおよび斜板31などの構成部がそれぞれ収容されて構成される。バルブユニット24は、バルブケーシング30を有し、バルブケーシング30内に、各ポンプユニット22,23の各シリンダブロックにそれぞれ摺動可能に2つの弁板が収容されて構成される。バルブケーシング30と弁板とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。各サーボ機構25,26は、サーボピストン91,92をそれぞれ有し、各ポンプケーシング27,28内の上部に、各斜板31を傾動させるためのサーボピストン91,92が収容されて構成される。
【0024】
一方のポンプユニット22は、回転軸51を有し、この回転軸51は、ベアリングを介してポンプケーシング27,28に、回転可能に支持されている。回転軸51には、シリンダブロックが回転軸51に対する回転が阻止された状態で設けられている。シリンダブロックには、複数のピストン室が形成され、各ピストン室には、ピストンが往復変位可能に部分的に嵌まり込んでいる。各ピストンは、シリンダブロックから突出する側の端部がシューを介して斜板31の支持面に当接され、斜板31の支持面に沿って変位する。斜板31の支持面は、回転軸線に垂直な仮想平面に対して傾斜しており、各ピストンは、シリンダブロックの回転に伴って、伸長方向および縮退方向に往復運動変位する。
【0025】
一方の弁板は、作動流体である作動油が貯留される油源である、たとえばタンクに連なる吸入ポート41と、作動油の供給先であるアクチュエータに接続される吐出ポート42とが形成されている。弁板は、伸長方向に変位する伸長工程にあるピストンが嵌まり込んでいるピストン室に吸入ポート41が接続され、縮退方向に変位する縮退工程にあるピストンが嵌まり込んでいるピストン室に吐出ポート42に接続されるように配設される。これによって回転軸51に原動機から動力が伝達されて、シリンダブロックが回転されると、各ピストンの往復変位によって、作動油がタンクから汲み上げられ、アクチュエータに供給される。
【0026】
一方のポンプユニット22に設けられる一方のサーボ機構25のサーボピストン91は、ポンプケーシング27内に往復変位可能に収納され、その軸方向一端部52とポンプケーシング27とによって第1油室53が形成され、軸方向他端部54とポンプケーシング27とによって第2油室55を形成する。第1油室53および第2油室55には、圧液である油が供給可能に構成され、サーボピストン91は、第1油室53および第2油室55内に供給される油の圧力に応じて、一方のポンプユニット22の斜板31を傾動駆動し、斜板31の支持面の傾斜角を変更する。これによってポンプの容量を変更することができる。一方のサーボ機構25は、サーボピストン91と第1油室53および第2油室55を形成するポンプケーシング27,28の内壁部とによって構成される。このように一方のポンプユニット22と、一方のサーボ機構25と、バルブユニット24の一方の弁板を含む一部の構成とによって、1つのポンプ部が形成される。
【0027】
他方のポンプユニット23は、一方のポンプユニット22と略同様の構成を有し、他方のサーボ機構26は、一方のサーボ機構25と略同様の構成を有している。このような他方のポンプユニット23と、他方のサーボ機構26と、バルブユニット24の他方の弁板を含む一部の構成とによって、もう1つのポンプ部が形成される。このもう1つのポンプ部は、一方のポンプユニット22と、これに設けられる一方のサーボ機構25と、バルブユニット24の一方の弁板を含む一部の構成とによって実現されるポンプ部と略同様の構成である。他方のポンプユニット23および他方のサーボ機構26において、一方のポンプユニット22および一方のサーボ機構25の構成と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
各ポンプ部の相違点は、各ポンプ部が有する回転軸51,56の構成の差異であり、その他の構成については、同様の構成である。一方のポンプユニット22の回転軸51は、ポンプケーシング27から突出し、原動機からの動力が伝達される。他方のポンプユニット23の回転軸56は、一方のポンプユニット22を有するポンプ部の回転軸51に、バルブユニット24内で連結されている。これによって2つのポンプ部が連動するように構成されている。
【0029】
一方の電気レギュレータ80は、レギュレータケーシングをそれぞれ有し、各レギュレータケーシング内に、サーボ機構25を作動させるためのサーボ切換弁84と、サーボ切換弁84を作動させるためのパイロットピストン85と、パイロットピストン85にパイロット圧を与える電磁比例弁86とが収容されて構成される。
【0030】
サーボ切換弁84は、スプール87とスリーブ88とを含む。スプール87は、レギュレータケーシングに往復変位可能に設けられる。スプール87は、変位させられると、第1油室53に接続可能な第1ポート101と、駆動油が供給される第2ポート102およびドレンに接続されるドレンポート103との接続状態を切換える。接続状態を切換えることによってサーボピストン91を作動させ、斜板31を傾動駆動させる。
【0031】
スリーブ88には、第1ポート101,第2ポート102およびドレンポート103が形成され、サーボピストン91に連結ロッド93によって連結され、レギュレータケーシングに往復変位可能に設けられる。スリーブ88は、連結ロッド93によってサーボピストン91,92の変位に連動する。スリーブ88の連動にともなって、第1および第2ポート101,102の開度が変化する。開度を変化させることによって、サーボ機構25,26の第1油室53に供給される油の供給状態を切換える。この油を機構駆動油と称する。機構駆動油は、機構駆動液体に相当する。スリーブ88は、サーボピストン91,92が変位して斜板31の傾斜角が過度に大きくなると、第1油室53に供給される機構駆動油の供給状態を変更し、ポンプユニット22,23の容量が小さくなるように制御する。
【0032】
パイロットピストン85は、パイロット油の圧力を受圧するように設けられ、パイロット油の圧力に応じて、スプール87を変位させて、第1ポート101と、第2およびドレンポート103との接続状態を切換える。電磁比例弁86には、入力ポート104、出力ポート105、ドレンポート106が形成される。電磁比例弁86は、変位することによって、出力ポート105に接続されるポートを、入力ポート104およびドレンポート106のいずれか1つに切換えるための弁体89を有し、さらに電気信号を入力可能であって、入力される電気信号に応じて、弁体89を変位駆動させて、出力ポート105との接続状態を切換えるソレノイド90を有する。また電磁比例弁86は、出力側の圧力に応じて、弁体89を変位させて、出力ポート105の接続状態を切換えるように構成されている。機構制御弁には、サーボ切換弁84およびパイロットピストン85が含まれる。
【0033】
一方の電気レギュレータ80は、一方のポンプユニット22の上部に設けられる。一方の電気レギュレータ80は、電磁弁である電磁比例弁86が、入力された電気信号に応じて、入力ポート104に入力されるパイロット油のパイロットピストン85への供給状態を切換える。これによってパイロットピストン85が作動し、スプール87が変位駆動する。スプール87が変位駆動すると、一方のサーボピストン91への機構駆動油の供給状態が切換わる。これによって一方のサーボ機構25のサーボピストン91が作動して、一方のポンプユニット22の斜板31を傾動駆動し、一方のポンプユニット22の容量が変更される。
【0034】
また他方の電気レギュレータ81は、一方の電気レギュレータ80と略同様の構成を有し、他方のポンプユニット23の上部に設けられる。他方の電気レギュレータ81は、一方の電気レギュレータ80と同様であるので、同一の構成部については、同一の符号を付してその説明を省略する。このように2つのポンプ部の一方のポンプユニット22の上部に一方の電気レギュレータ80を設け、他方のポンプユニット23の上部に他方の電気レギュレータ81を設けることによって、ポンプ設備20が実現される。
【0035】
図2は、ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110を概略示す正面図である。図3は、ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110を概略示す平面図である。図4は、油圧レギュレータ111,112を備えるポンプ設備20Aの油圧回路を示す油圧回路図である。図1も参照して、説明する。各ポンプユニット22,23は、その上部に電気レギュレータ80,81に代えて、油圧レギュレータ111,112を設けて連結することができる。液圧信号入力形容量制御装置である各油圧レギュレータ111,112は、入力されるパイロット油の圧力に応じて、各サーボ機構25,26に供給される機構駆動油の供給状態を切換え、各ポンプユニット22,23の容量を変更するレギュレータである。
【0036】
一方の油圧レギュレータ111は、一方の電気レギュレータ80に代えて、一方のポンプユニット22の上部に設けられる。一方の油圧レギュレータ111は、サーボ切換弁113と、パイロットピストン114と、馬力制御ピストン115とを含む。サーボ切換弁113は、往復変位駆動可能に設けられるスプール116とスリーブ117とが含まれる。スプール116には、入力されるパイロット油の圧力を受圧し、この圧力に応じて、スプール116を変位駆動させるパイロットピストン114が設けられる。さらには、一方および他方のポンプユニット22,23から吐出される作動油の圧力と、入力される馬力制御ピストン駆動油の圧力とに応じて、スプール116を変位駆動させる馬力制御ピストン115が設けられる。制御ピストン駆動油が液圧信号に相当する。
【0037】
一方の油圧レギュレータ111は、入力されるパイロット油の圧力に応じて、パイロットピストン114によってスプール116を変位駆動させ、第1油室53への機構駆動油の供給状態を切換え、一方のポンプユニット22の容量を変更する。また一方の油圧レギュレータ111は、馬力制御ピストン115によって、一方および他方のポンプユニット22,23から吐出される作動油の圧力と、入力される馬力制御ピストン駆動油の圧力とに応じて、一方のポンプユニット22の容量を変更する。
【0038】
他方の油圧レギュレータ112は、一方の油圧レギュレータ111と略同様の構成を有し、他方の電気レギュレータ81に代えて、他方のポンプユニット23の上部に設けられる。他方の油圧レギュレータ112は、一方の油圧レギュレータ111と同様の構成を有するので、その構成部については、同様の符号を付して、その説明を省略する。他方の油圧レギュレータ112も、一方の油圧レギュレータ111と同様に、入力されるパイロット油の圧力に応じて、パイロットピストン114を駆動させ、一方および他方のポンプユニット22,23から吐出される作動油の圧力および馬力制御ピストン駆動油の圧力に応じて、馬力制御ピストン115を駆動させて、他方のポンプユニット23の容量を変更する。このような2つの油圧レギュレータ111,112とポンプ装置21によって、油圧によってポンプユニット22,23の容量が変更可能な液圧設備が構成される。
【0039】
ポンプ装置21には、2つのポンプケーシング27,28およびバルブケーシング30にわたって延びるポンプ間通路110が形成される。液圧装置間通路であるポンプ間通路110は、各ポンプユニット22,23に油圧レギュレータ111,112が設けられる際、入力される馬力制御ピストン駆動油を、一方の油圧レギュレータ111から他方の油圧レギュレータ112に導くために用いられる。ポンプ間通路110は、具体的には、一方のポンプユニット22の上端部47から、バルブケーシング30を介して他方のポンプユニット23の上端部48にわたって形成され、各ポンプユニット22,23の上端部47,48で、上部に設けられる油圧レギュレータ111,112に向かって開口する。ポンプ間通路110は、各ポンプケーシング27,28に形成されるポンプ通路118,119と、バルブブロックに形成されるバルブ通路120とを有する。
【0040】
ポンプ装置21には、2つのポンプ側駆動油通路171,173が形成されている。電気レギュレータ80,81を用いる場合、一方のポンプ側駆動油通路171は、一方の吐出路159aから吐出される作動油を機構駆動油として一方の電気レギュレータ80に供給するために用いられる。また油圧レギュレータ111,112を用いる場合、一方のポンプ側駆動油通路171は、一方の吐出路159aから吐出される作動油を一方の油圧レギュレータ111の馬力制御ピストン115に供給するために用いられる。電気レギュレータ80,81を用いる場合、他方のポンプ側駆動油通路173は、他方の吐出路159bから吐出される作動油を機構駆動油として他方の電気レギュレータ81に供給するために用いられる。また油圧レギュレータ111,112を用いる場合、他方のポンプ側駆動油通路173は、他方の吐出路159bから吐出される作動油を他方の油圧レギュレータ112の馬力制御ピストン115に供給するために用いられる。
【0041】
さらにポンプ装置21には、2つの馬力制御油通路172,174が形成されている。2つの馬力制御油通路172,174は、各ポンプユニット22,23に油圧レギュレータ111,112が設けられる場合に用いられる。一方の馬力制御油通路172は、他方の吐出路159bから吐出される作動油を一方の油圧レギュレータ111の馬力制御ピストン115に供給するために用いられる。他方の馬力制御油通路174は、一方の吐出路159aから吐出される作動油を他方の油圧レギュレータ112の馬力制御ピストン115に供給するために用いられる。
【0042】
各電気レギュレータ80,81には、複数の油路が形成されている。具体的には、入力ポート104とポンプ間通路110とを接続するための駆動油用通路210、入力ポート104と第2ポート102とを接続するポート間接続通路211、ドレンポート103と収容空間とを接続しドレンに圧液を導くためのドレン通路212、第1ポート101と第1油室53とを接続する第1油室供給通路213、第2ポート102とポンプ側駆動油通路171,173とを接続するレギュレータ側駆動油通路214およびこのレギュレータ側駆動油通路214と第2油室通路125とを接続する第2油室55とが形成されている。駆動油用通路210は、弁駆動油用通路210に相当する。
【0043】
ポート間接続通路211には、第2ポート102から入力ポート104への駆動油の逆流を防止する逆止弁216が介在している。第1油室供給通路213には、絞り弁217が介在している。スリーブ88が変位することによって、第1油室供給通路213に対する第1ポート101の開度が変化する。レギュレータ側駆動油通路214には、逆止弁218が介在している。
【0044】
ギヤポンプなどの油圧供給源によって、一方の電気レギュレータ80の入力ポート104に弁駆動用液体である駆動油を供給する。この供給された駆動油は、電磁比例弁86によって、入力された電気信号に応じて、供給状態たとえば圧力が変更されて、パイロット通路105を介してパイロットピストン85に供給される。パイロットピストン85に供給される駆動油がパイロット油である。このパイロット油が弁駆動液体に相当する。パイロットピストン85は、このパイロット油の供給状態に応じて作動し、スプール87を作動させる。
【0045】
また一方の電気レギュレータ80の入力ポート104に供給されている駆動油は、ポンプユニット22の吐出圧が入力ポート104より低い場合、ポート間接続通路211を介して、第2ポート102に導かれる。ポンプユニット22の吐出圧が入力ポート104より高い場合、駆動油が、一方のレギュレータ側駆動油通路214を介して、一方のポンプユニット22の吐出ポート42から第2ポート102に導かれる。駆動油は、パイロットピストン85によって、スプール87を作動させて第2ポート102と第1ポート101とを接続すると、第1ポート101に導かれる。またスプール87を作動させて、第1ポート101とドレンポート103とを接続し、第1ポート101と第2ポート102との接続を解除すると、駆動油の第1ポート101に対する供給が停止される。このように駆動油は、スプール87およびスリーブ88によって、第1ポート101への状態が変更される。第1ポート101に導かれる駆動油は、第1油室供給通路213を介して、第1油室53に供給される。サーボ切換弁84によってその供給状態が切換えられて第1油室53に供給される機構油駆動油が、機構駆動油である。この機構駆動油は、スプール87によって、第2ポート102と第1ポート101との接続が解消され、第1ポート101とドレンポート103とが接続されると、ドレンへと導かれる。
【0046】
レギュレータ側駆動油通路214を介して導かれた駆動油は、第2油室供給通路215および第2油室通路125を介して、第2油室55にも導かれる。この第2油室55に導かれる駆動油の圧力と第1油室53に供給される機構駆動油との圧力に応じて、サーボピストン91が作動し、一方のポンプユニット22の容量を変更する。またポンプユニット22の容量は、スプール87とスリーブ88との相対位置に基いて決定される。
【0047】
さらに一方の電気レギュレータ80の入力ポート104に供給された駆動油は、一方の電気レギュレータ80の駆動用油通路210とポンプ間通路110とを介して、他方の電気レギュレータ81の駆動油用通路210に導かれ、他方の電気レギュレータ81の入力ポート104に供給される。一方の電気レギュレータ80と同様に、他方の電気レギュレータ81の入力ポート104に供給された駆動油および他方のポンプユニット23の吐出ポート42から導かれる駆動油のうち圧力が大きい駆動油が第2ポートに導かれ、サーボピストンが作動し、他方のポンプユニット23の容量を変更する。このように一方の電気レギュレータ80に供給される駆動油を他方のポンプユニット23に導き、ポンプユニット23の容量が変更される。
【0048】
このようにして構成されるポンプ設備20が奏する効果について説明する。本実施の形態の電気レギュレータ80,81によれば、入力された電気信号に応答して、電磁比例弁86が駆動油のパイロットピストン85への供給状態を切換える。サーボ切換弁84は、駆動油のパイロットピストン85への供給状態に応じて、サーボ機構25,26への機構駆動油の供給状態を制御し、サーボピストン91,92を作動させる。サーボピストン91,92を作動させることによって、各ポンプユニット22,23の容量を変更することができる。各ポンプユニット22,23間にわたって延びるポンプ間通路110と駆動油用通路210とが接続されているので、一方の電気レギュレータ80の電磁比例弁86に、駆動油を供給すると、他方の電気レギュレータ81の電磁比例弁86の入力ポート104に駆動油が供給される。これによって一方および他方の電磁比例弁86の入力ポート104毎に、駆動油を供給するための配管を新たに形成する必要がない。それ故、ポンプ設備20を配設する際、ポンプ設備20に配設すべき配管を削減することができる。したがって配管を配設するために必要な空間を、第1の従来の技術の場合より低減できる。これによってポンプ設備20の占有空間の低減を図ることができる。産業機械などにポンプ設備20を搭載する際、配管を新たに配設する手間を省くことができるので、その分作業工数の低減を図ることができる。
【0049】
本実施の形態の電気レギュレータ80,81によれば、ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110は、電気レギュレータ80,81に代えて、油圧レギュレータ111,112を用いる場合、一方の油圧レギュレータ111から他方の油圧レギュレータ112に、ポンプユニット22,23の容量を制御するために用いられる液圧を導くために用いられる。このポンプ間通路110は、従来の技術の電気レギュレータ1では用いられておらず、本実施の電気レギュレータ80,81で用いることによって、ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110を有効に利用することができる。また油圧レギュレータ111,112によってサーボ機構25,26を作動可能なポンプ装置21であれば、ポンプ間通路110を新たに形成する必要がなく、ポンプ間通路110を形成するための手間を省くことができる。したがって電気レギュレータ80,81は、油圧レギュレータ111,112を配設可能なポンプ装置21であれば、ポンプ間通路110を新たに形成することなく配設可能であり、汎用性が高い。
【0050】
本発明の実施の一形態であるポンプ設備20によれば、一方の電気レギュレータ80に駆動油を供給することによって、一方および他方の電気レギュレータ80,81に入力される電気信号に応じて、各ポンプユニット22,23の容量を変更することができる。これによって各電磁比例弁86の入力ポート104毎に、駆動油を供給するための配管を新たに形成する必要がない。それ故、ポンプ設備20を配設する際、ポンプ設備20に配設すべき配管を削減することができる。したがって配管を配設するために必要な空間を、第2の従来の技術の場合より低減できできる。したがって産業機械および建設機械におけるポンプ設備2の占有空間の低減を図ることができる。このように既存のポンプ間通路110を有効に利用し得るので、ポンプ設備20における費用対効果を高めることができる。
【0051】
また本実施の形態の電気レギュレータ80,81によれば、油圧レギュレータ111,112で用いられるポンプユニット22,23に形成される各油路を有効に利用することができる。これによって電気レギュレータ80,81を用いるために、ポンプユニット22,23に新たに油路を形成する必要がなく、製作作業の工数を低減することができる。
【0052】
本発明では、電気レギュレータ80,81の各構成部についても、このような構成に限定されず、入力ポート104が駆動油用通路210を介してポンプ間通路110と接続される構成であればよい。またポンプ間通路110は、油圧レギュレータ111,112と共用可能なものに限定されず、電気レギュレータ80,81で用いるためだけに形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の一形態であるポンプ設備20の油圧回路を示す油圧回路図である。
【図2】ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110を概略示す正面図である。
【図3】ポンプ装置21に形成されるポンプ間通路110を概略示す平面図である。
【図4】油圧レギュレータ111,112を備えるポンプ設備20Aの油圧回路を示す油圧回路図である。
【図5】従来の第1の技術の電気レギュレータ1を備えるポンプ設備2の油圧回路を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
【0054】
20 ポンプ設備
21 ポンプ装置
22,23 ポンプユニット
25,26 サーボ機構
81,82 電気レギュレータ
84 サーボ切換弁
85 パイロットピストン
86 電磁比例弁
104 入力ポート
110 ポンプ間通路
111,112 油圧レギュレータ
210 駆動油用通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可変容量形の液圧装置を備える液圧設備の各液圧装置に設けられる容量変更機構を作動させる機構駆動液体の容量変更機構への供給状態を制御する機構制御弁であって、弁駆動液体が供給されることによって、弁駆動液体の供給状態に応じて、容量変更機構への機構駆動液体の供給状態を制御する機構制御弁と、
入力される電気信号に応じて、入力ポートに供給される弁駆動液体の機構制御弁への供給状態を切換える電磁弁と、
入力ポートを、各液圧装置間にわたって延びる液圧装置間通路に接続する弁駆動液体用通路とを有することを特徴とする液圧装置の電気信号入力形容量制御装置。
【請求項2】
液圧装置間通路は、電気信号入力形容量制御装置に代えて、液圧信号が入力されることによって、容量変更機構を作動させる液圧信号入力形容量制御装置が用いられる場合に、一の液圧信号入力形容量制御装置から他の液圧信号入力形容量制御装置に、液圧装置の容量を制御するために用いる液圧を導く通路であることを特徴とする請求項1に記載の液圧装置の電気信号入力形容量制御装置。
【請求項3】
複数の液圧装置と、
各液圧装置毎に設けられ、請求項1または2に記載の液圧装置の電気信号入力形容量制御装置とを備える液圧設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−198266(P2007−198266A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18124(P2006−18124)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(592216188)株式会社カワサキプレシジョンマシナリ (67)
【Fターム(参考)】