説明

電気光学装置の検査方法及び製造方法

【課題】例えば、作業者の目視によって容易に、且つ確実に、液晶装置の表示不良を検出可能にする。
【解決手段】検査画像(PB)は、画素列(g1−2)、(g2−3)及び(g3−4)の夫々に同時に表示される検査パターン(Pb1)、(Pb2)及び(Pb3)から構成されている。画素列(g1−2)、(g2−3)及び(g3−4)の夫々に対応するデータ線の夫々は、相互に異なる画像信号線に電気的に接続されている。したがって、検査パターン(Pb1)、(Pb2)及び(Pb3)は、画像信号がシリアル−パラレル変換されてなる複数の画像信号のうち相互に異なる画像信号を供給する画像信号線に各々電気的に接続されている。即ち、同時に表示される検査パターンのピッチは、液晶装置の駆動時に同一の画像信号が供給されるデータ線のピッチと異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶プロジェクタのライトバルブ等の電気光学装置を検査するための電気光学装置の検査方法、及びそのような検査方法を含んで構成される電気光学装置の製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶パネルは、ライトバルブとして液晶プロジェクタに搭載されることがある。このような液晶プロジェクタの検査を行う場合、液晶パネル自体は極めて小さいため、画像の異常を液晶パネルの検査によって検出することは難しい。よって、実際にスクリーンに画像を投影して、投影された画像から異常を検出するという方法が通常用いられている。例えば、特許文献1では、投影手段によって投影された画像を取り込み、取り込んだ画像から投影装置の異常を検出する監視方法が開示されている。
【0003】
また、このような液晶パネルでは、シリアル−パラレル変換された画像信号に基づいて駆動される相展開駆動方式がその駆動方式として採用されている場合がある。相展開駆動方式で駆動される液晶パネルでは、例えば、基板上の画像表示領域に配線された複数のデータ線は所定の本数毎にブロック化されており、シリアル−パラレル変換された画像信号が、ブロック単位で、該ブロックに含まれるデータ線にサンプリングスイッチを介して供給される。これにより、所定の本数のデータ線が同時に、且つ複数のデータ線は所定の本数毎に順次駆動される。各ブロック単位に対する画像信号の供給は、例えば、イネーブル信号によってタイミング或いは波形が規定される信号によって制御されるサンプリングスイッチの動作に応じて制御される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−173232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、相展開駆動方式を採用する液晶パネル等の電気光学装置では、その検査時において、一のブロックの任意のデータ線に対応する画素部に表示された検査パターンと同じ形状のパターンが、他のブロックのデータ線のうち当該任意のデータ線に対応するデータ線にゴーストとして表示される場合がある。より具体的には、一のブロックの任意のデータ線に対応する画素部に表示された検査パターンの影が、他のブロックのデータ線のうち当該任意のデータ線に対応するデータ線、即ち、相展開数分離れたデータ線に電気的に接続された画素部にゴーストとして表示される。このようなゴーストは、例えば、データ線の各ブロックに対する画像信号の供給を制御する信号の波形或いは供給タイミングを規定するイネーブル信号の波形のずれ、或いはなまりに起因して発生する。
【0006】
ここで、一のブロックにおける任意のデータ線と、他のブロックにおいて当該任意のデータ線に対応するデータ線との夫々に電気的に接続された画素部を同時に動作させる検査パターンで液晶パネルを検査した場合、画素部が表示する検査パターンとゴーストとが重なって表示されてしまい、ゴーストの発生を検出することが困難となる。特に、液晶パネル等の電気光学装置の検査工程では、作業者は画像表示領域に表示された検査パターンを目視で検査するため、ゴーストの検出はより一層困難になり、液晶パネルの不良を確実に検出することが困難となる問題点があった。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、相展開駆動される液晶パネル等の電気光学装置に発生するゴースト等の表示不良を確実に検出可能な電気光学装置の検査方法、及びそのような検査方法を含む電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気光学装置の検査方法は上記課題を解決するために、基板上の表示領域で相互に交差する複数の走査線及び複数のデータ線と、前記表示領域において前記複数の走査線及び前記複数のデータ線の交差に対応して設けられた複数の画素部とを備えており、前記複数のデータ線のうちN本のデータ線を1群として構成される複数のデータ線群毎に供給され、且つN(但し、Nは2以上の自然数)系統にシリアル−パラレル変換された画像信号がN本の画像信号線を介して前記N本のデータ線に供給されることによって画像を表示可能な電気光学装置を検査するための電気光学装置の検査方法であって、前記複数のデータ線群の第1データ線群に含まれるN本の第1データ線の一の第1データ線と、前記複数のデータ線群の第2データ線群に含まれるN本の第2データ線のうち前記一の第1データ線に対応する一の第2データ線と異なる他の第2データ線との夫々に供給される検査信号を含むパターン信号を前記電気光学装置に供給する第1ステップと、前記パターン信号に基づいて前記表示領域に表示された検査画像を検査する第2ステップと備える。
【0009】
本発明に係る電気光学装置の検査方法によって検査される電気光学装置では、その駆動時において、シリアル−パラレル変換されたN個の画像信号が、N本の画像信号線に供給される。N個の画像信号は、例えば駆動周波数の上昇を抑えつつ高精細な画像表示を実現すべく、外部回路によって、シリアルな画像信号が、3相、6相、12相、24相、・・・など、複数のパラレルな画像信号に変換されることによって生成される。このような画像信号の供給と並行して、例えばデータ線駆動回路によって、データ線群に対応するサンプリングスイッチ毎に、サンプリング信号が順次供給される。すると、サンプリング回路によって、複数のデータ線には、サンプリング信号に応じてデータ線群毎にN個の画像信号が順次供給される。よって、同一データ線群に属するデータ線は同時に駆動されることとなる。
【0010】
前記複数のデータ線群の第1データ線群に含まれるN本の第1データ線の一の第1データ線と、前記複数のデータ線群の第2データ線群に含まれるN本の第2データ線のうち前記一の第1データ線に対応する一の第2データ線と異なる他の第2データ線との夫々は、N本の画像信号線のうち相互に異なる画像信号線の夫々に電気的に接続されている。
【0011】
したがって、当該電気光学装置の検査時には、第1ステップにおいて、一の第1データ線及び他の第2データ線の夫々に電気的に接続された画素部を駆動する検査信号を含むパターン信号、即ち表示領域の検査パターンを表示させる信号が前記電気光学装置に供給される。
【0012】
第2ステップでは、前記パターン信号に基づいて前記表示領域に表示された検査画像を検査する。ここで、第1ステップにおいて、一の第1データ線及び他の第2データ線の夫々に電気的に接続された画素部に検査信号が供給されているため、イネーブル信号の波形のずれ、或いはなまりに起因して、一の第1データ線に対応する一の第2データ線にゴーストが表示された場合に、検査画像において、他の第2データ線に電気的に接続された画素部が表示する検査パターンと、一の第2データ線に電気的に接続された画素部が表示するゴーストとが相互に重なって表示されることがない。
【0013】
したがって、本発明に係る電気電気光学装置の検査方法によれば、当該電気光学装置の検査工程において、作業者は検査画像に含まれるゴーストを目視で容易に検出できる。より具体的には、例えば、データ線の各ブロックに対する画像信号の供給を制御する信号の波形或いは供給タイミングを規定するイネーブル信号の波形のずれ、或いはなまりに起因して発生し、且つデータ線が延びる方向に沿ってライン状に発生するゴーストを作業者の目視によって確実に検出することが可能になる。よって、本発明に係る電気電気光学装置の検査方法によれば、検査作業に関して熟練度が低い作業者が電気光学装置を検査した場合でも、相展開駆動される電気光学装置の不良を確実に検出できる。
【0014】
本発明に係る電気光学装置の検査方法の一の態様では、前記第1ステップにおいて、前記パターン信号が予め記憶されたパターン信号供給手段から前記電気光学装置に前記パターン信号を供給してもよい。
【0015】
この態様によれば、各相展開数の夫々に応じた適切な検査パターンを予め作成し、電気光学装置の検査時に、その検査パターンを記憶した外部の信号供給回路等のパターン信号供給手段からパターン信号を前記電気光学装置に供給できる。したがって、この態様によれば、相互に相展開数の異なる複数の電気光学装置に対して臨機応変に検査を実施することが可能である。
【0016】
本発明に係る電気光学装置の検査方法の他の態様では、前記第2ステップにおいて、前記検査画像が表示された際に、前記複数の画素部のうち前記一の第2データ線に電気的に接続された画素部の輝度と、前記複数の画素部のうち前記他の第2データ線に電気的に接続された画素部の輝度との差に基づいて、前記検査画像を検査してもよい。
【0017】
この態様によれば、一の第2データ線に電気的に接続された画素部に表示されたゴーストと、他の第2データ線に電気的に接続された画素部が表示する検査パターンとの夫々の輝度に差が生じるため、ゴースト及び検査パターンの夫々の輝度の差を定量化して電気光学装置の良否を判定することも可能である。
【0018】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置の検査方法を備えている。
【0019】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、本発明の電気光学装置の検査方法を備えているので、例えば、不具合を有する電気光学装置の流出を低減できる。加えて、製造プロセスの途中に検査工程を組み込むことによって、電気光学装置の歩留まりを向上させることも可能である。
【0020】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置の検査方法及び製造方法の各実施形態を説明する。
【0022】
<1:液晶装置>
<1−1:液晶装置の全体構成>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によって検査可能な液晶装置1の具体的な構成を説明する。図1は、素子基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た液晶装置1の概略的な平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。
【0023】
図1及び図2において、液晶装置1は、本発明の「基板」の一例である素子基板10と、素子基板10に対向配置された対向基板20とを備えている。素子基板10及び対向基板20間には液晶層50が封入されており、素子基板10及び対向基板20は、本発明の「表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52を介して相互に接着されている。
【0024】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいて素子基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、素子基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0025】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、素子基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0026】
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺のいずれかに沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。尚、走査線駆動回路104を、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられた素子基板10の一辺に隣接する2辺に沿って設けるようにしてもよい。この場合、素子基板10の残る一辺に沿って設けられた複数の配線によって、二つの走査線駆動回路104は互いに電気的に接続される。
【0027】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、素子基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これら上下導通端子及び上下導通材106により、素子基板10及び対向基板20間で電気的な導通をとることができる。
【0028】
図2において、素子基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、液晶装置1の駆動時に、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。これにより、液晶装置1の駆動時において、画像表示領域10aに画像を表示可能になる。
【0029】
<1−2:液晶装置の電気的な構成>
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の電気的な構成を説明する。図3は、液晶装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0030】
図3において、液晶装置1は、画像表示領域10aで相互に交差する複数の走査線11及びデータ線6、走査線11及びデータ線6の交差に応じてマトリクス状に配列された画素部70、素子基板10の周辺領域に設けられた走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路101、複数の画像信号線171、並びに、容量配線400を備えている。尚、本実施形態では、画像信号VIDが12相(N=12)にシリアルーパラレル変換された場合を例に挙げるが、画像信号VIDは2相以上にシリアル−パラレル変換されていればよい。
【0031】
走査線駆動回路104は、YスタートパルスDYが入力されると、Yクロック信号CLY及び反転Yクロック信号CLYinvに基づくタイミングで、走査信号Y1、・・・、Ymを順次生成して走査線11に出力する。
【0032】
データ線駆動回路101は、画像信号制御回路103、及びサンプリング回路200を備えている。
【0033】
画像信号制御回路103は、液晶装置1の駆動時に、XスタートパルスDXが入力されると、Xクロック信号CLX及び反転Xクロック信号XCLXinvに基づくタイミングで、サンプリング信号S1、S2、・・・Sn(n:2以上の自然数)を順次生成し、サンプリング回路200に供給する。
【0034】
サンプリング回路200は、データ線6毎に設けられた複数のサンプリングスイッチ202を備えている。サンプリングスイッチ202は、例えば、電気的に直列に接続された2つのTFTから構成されており、これらTFTの夫々は、Pチャネル型又はNチャネル型の片チャネル型TFTである。画像信号VID1〜12の夫々は、サンプリングスイッチ202がサンプリング信号S1、・・・、Snの供給に応じてオンオフ動作が制御されることによって、12本の画像信号線117の夫々からデータ線6に供給される。
【0035】
画素部70は、液晶素子118、画素電極9a(図2参照)、及び画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT116、並びに保持容量119を備えている。
【0036】
容量配線400は、不図示の定電位源に電気的に接続されている。容量配線400に供給される電源の電位は、画素電極9aに対向配置された対向電極に供給される対向電極電位LCCである。容量配線400は、保持容量119を構成する一方の電極に電気的に接続されている。この一方の電極の電位は、液晶装置1の駆動時に対向電極電位LCCに維持される。保持容量119は、液晶素子118と並列に付加されている。画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも、例えば3桁も長い時間だけ保持容量119により保持されるので、保持特性が改善される結果、高コントラスト比が実現される。
【0037】
画像信号線171は、12相の画像信号VID1〜12に対応して12本設けられている。画像信号線171の夫々は、サンプリング回路200を介して各々対応するデータ線6に電気的に接続されている。外部回路から供給された1系統の入力画像データVIDをシリアル−パラレル変換して得られる12系統の画像信号VID1〜12は、サンプリング信号Si(1、・・・、n)に応じてオンオフが切り換えられるサンプリングスイッチ202を介して画像信号線171の夫々からデータ線6に供給される。12系統の画像信号VID1〜12は、例えば、不図示の画像信号供給回路等の信号変換手段を用いて一系統の画像信号VIDを変換することによって生成される。
【0038】
検査回路701は、液晶装置1の検査時に、データ線6に電気的に接続され、検査信号を含むパターン信号を各画素部70に供給する。複数のデータ線6は、サンプリング信号Siに対応して、12本のデータ線を一群とする複数のデータ線群に区分けされている。
【0039】
次に、図4を参照しながら、画像信号制御回路103の構成を詳細に説明する。図4は、画像信号制御回路の電気的な構成を示したブロック図である。
【0040】
図4において、画像信号制御回路103は、シフトレジスタ51、プリチャージ回路5、及びイネーブル回路55を備えている。
【0041】
シフトレジスタ51は、データ線駆動回路101内に入力される所定周期のX側クロック信号CLX(及びその反転信号CLX´)、シフトレジスタスタート信号DXに基づいて、各段から転送信号Pi(i=1、・・・、n)を順次出力するように構成されている。
【0042】
プリチャージ回路5は、シフトレジスタ51から出力される転送信号Pi(i=1、・・・、n)の夫々に対応して設けられた、n個のプリチャージスイッチ52からなる。プリチャージスイッチ52は、画像信号制御回路103内にプリチャージタイミング信号NRG(Noise Reduction Gate)を導入するためのスイッチであり、典型的には、転送信号Pi(i=1、・・・、n)とプリチャージタイミング信号NRGとが入力され、イネーブル回路55に出力するOR回路として構成される。
【0043】
ここで、転送信号Pi(i=1、・・・、n)は画像信号VID1〜12の夫々のデータ書き込み期間を規定するためのタイミング信号であり、プリチャージタイミング信号NRGは、上記データ書き込み期間に先立つプリチャージ期間を規定するためのタイミング信号である。そこで、以降の説明において、その一方又は両方の区別をなく指す場合には、単に「タイミング信号」と呼ぶ。
【0044】
イネーブル回路55は、例えばAND回路として構成され、タイミング信号と共に12個のイネーブル信号ENB1〜12が供給される。イネーブル回路55は、タイミング信号のパルス波形を12系列のイネーブル信号ENB1〜12に基づいて整形し、サンプリング信号Si(i=1、・・・、n)を出力する。イネーブル信号のパルス幅は、少なくとも転送信号Piのパルス幅よりは狭い所定幅である。
【0045】
<1−3:液晶装置の動作原理>
次に、図3及び図4を参照しながら、液晶装置1が画像を表示する際の動作原理を説明する。液晶装置1は、ライン反転方式の一例である1H反転駆動方式で駆動される。
【0046】
図3及び図4において、12相にシリアル−パラレル展開された画像信号VID1〜VID12は、12本(N=12)の画像信号線171を介して各画素部70に供給される。データ線6は、以下に説明するように、画像信号線171の本数に対応する12本のデータ線6を1群とするデータ線群毎に順次駆動される。
【0047】
画像信号制御回路103から、データ線群に対応するサンプリングスイッチ202毎にサンプリング信号Si(i=1、2、・・・、n)が順次供給され、サンプリング信号Siに応じて各サンプリングスイッチ202はオン状態となる。画像信号VID1〜VID12は、オン状態に切り換えられたサンプリングスイッチ202を介して12本の画像信号線171の夫々からデータ線群に属するデータ線6に同時に、且つデータ線群毎に順次供給され、一のデータ線群に属するデータ線6は互いに同時に駆動されることとなる。したがって、本実施形態の液晶装置1によれば、データ線6をデータ線群毎に駆動するため、駆動周波数を抑制できる。
【0048】
液晶素子118には、画素電極9a及び対向電極21の各々の電位によって規定される印加電圧が印加される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1から画像信号VID1〜VID12に応じたコントラストをもつ光が出射され、画像が表示される。
【0049】
<2:液晶装置の検査方法及び製造方法>
次に、図3及び図4、並びに、図5乃至図13を参照しながら、液晶装置1を検査するために用いられる、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法と、当該検査方法を含む液晶装置1の製造方法を説明する。図5は、液晶装置1によって画像が正常に表示される際の画像信号VID1及び7と、イネーブル信号ENBとの関係を図示的に示したタイミングチャートである。図6及び図7の夫々は、液晶装置1によって表示された画像に異常が発生した際の画像信号VID1及び7と、イネーブル信号ENBとの関係を図示的に示したタイミングチャートである。図8は、液晶装置1の画像表示領域10aにおける複数のデータ線6及び複数の画素部70の区分けを図式的に示した平面図である。図9は、液晶装置1の検査時にゴーストが発生した表示パターンを図式的に示した平面図である。図10は、ゴーストを検出できない従来の検査パターンの一例を図式的に示した平面図である。図11は、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法を含む液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示したフローチャートである。図12は、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法で用いられる検査パターンを図示的に示した平面図である。図13は、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法で用いられる検査パターンと共にゴーストを示した図示的な平面図である。尚、図5乃至図7では、画像信号VIDを12相にシリアル−パラレル変換してなるVID1乃至12のうち時間的に連続してデータ線に供給される画像信号VID1及びVID7をVIDEO1として示している。
【0050】
図5において、VIDEO1における画像信号VIDを取り込むタイミングを規定するサンプリング信号Si、言い換えればサンプリング信号Siの幅及びタイミングを規定するイネーブル信号ENBに着目すると、画像が正常に表示されている際のイネーブル信号ENBは、画像信号VID7が供給されるタイミングと重なり、画像信号VID7が供給されるべきデータ線6に画像信号VID7が供給される。
【0051】
ここで、画像信号制御回路103の不具合によりイネーブル信号ENBのタイミングが早くなるように制御され、図6に示すようなタイミングにされたとすると、イネーブル信号ENBは画像信号VID1が供給されるタイミングとも重なることになる。このような場合、画像信号VID7に加えて、画像信号VID1もデータ線6に供給されることになり、画像にはゴーストが発生してしまう。
【0052】
また、上述したゴーストは、イネーブル信号ENBのタイミングだけでなく、イネーブル信号ENBの波形にも依存している。イネーブルENBは、典型的には、図5及び図6に示したように垂直な立ち上がり方はせず、図7に示すように、多少なまりのある波形となる。このように波形になまりを有するイネーブル信号ENBを用いてサンプリング信号Siが生成されると、イネーブル信号ENB及び画像信号VID1が相互に重なる部分が生じるため、ゴーストが発生してしまう。
【0053】
次に、図8乃至図10を参照しながら、ゴーストが発生する画素部の位置を詳細に説明する。尚、図9及び図10では、点線で囲まれた各四角形の部分の夫々を画素部として図式的に表示している。
【0054】
先ず、図8を参照しながら、画像表示領域10aの構成を詳細に説明する。複数のデータ線6は、図中左側から順に12本のデータ線6を一群とする複数のデータ線群Di(i=1、・・・n:nは2以上の自然数)に区分けされている。すでに説明したように、液晶装置1の駆動時には、データ線群Di毎にデータ線6が駆動され、画像表示領域10aに画像が表示される。複数の画素部70は、各データ線群Diの夫々に対応して画素群Gi(i=1、・・・n:nは2以上の自然数)に便宜上区分けすることにする。画素群Giの夫々は、データ線群Diを構成する12本のデータ線に対応して12列の画素列から構成されている。より具体的には、例えば、画素群G1は、データ線6d1−1、6d1−2、・・・、6d1−12の夫々に電気的に接続された画素列g1−1、g1−2、・・・、g1−12から構成されている。
【0055】
以下では、説明の便宜上、データ線群G1を、本発明の「第1データ線群」の一例として、データ線群G2及びG3の夫々を本発明の「第2データ線群」の一例とする。データ線6d1−2を、本発明の「一の第1データ線」の一例とし、データ線6d2−2及び6d3−2の夫々を、本発明の「一の第2データ線」とする。また、データ線6d2−3及び6d3−4の夫々を本発明の「他の第2データ線」の一例とする。
【0056】
次に、図8乃至図10を参照しながら、ゴーストが発生する画素部の位置を詳細に説明する。
【0057】
図8及び図9において、データ線6d1−2及び6d2−2の夫々は、画像信号VID2をデータ線6d1−2及び6d2−2の夫々に供給するための画像信号線171に電気的に接続されている。言い換えれば、データ線6d1−2及び6d2−2は、12本設けられた画像信号線171のうち同じ画像信号線171に電気的に接続されている。
【0058】
液晶装置1の検査時において、データ線6d1−2に検査回路701から検査信号を供給した場合、画素列g1−2に検査パターンPa1が表示される。ここで、イネーブル信号ENBの波形のずれ或いはなまりに一因として、より具体的には、このような波形のずれ或いはなまりを生じさせるように液晶装置1の各回路に不具合が発生していた場合、データ線群D2にもサンプリング信号S2が供給され、相互に共通の画像信号線171に電気的に接続されているデータ線6d2−2にも検査信号が供給されることになる。このような場合、データ線6d2−2に電気的に接続された画素列g2−2にゴーストC2−2が表示される。また、画素群G3では、データ線6d1−2及び6d2−2と共通の画像信号線171に電気的に接続されたデータ線6d3−2にも検査信号が供給され、画素列g3−2にゴーストC3−2が表示される。液晶装置1の検査時には、理想的を言えば、画素列g1−2に検査パターンPa1を表示させた状態で、ゴーストC2−2及びC3−2が検出できれば、液晶装置1に不具合が発生していることが判定可能になる。
【0059】
しかしながら、図10に示すように、相互に共通の画像信号線171に電気的に接続されるデータ線6d1−2、6d2−2及び6d3−2の夫々に同時に検査信号が供給され、画素列g1−2、g2−2及びg3−2に同時に検査パターンPa1、Pa2及びPa3からなる検査画像PAを表示させた場合、ゴーストC2−2及びC3−2と、検査パターンPa2及びPa3が重なって表示されしまうため、検査パターンPa2及びPa3と、ゴーストC2−2及びC3−2とを相互に区別して判別することが困難になる。
【0060】
つまり、液晶装置1の駆動時に、相互に共通の画像信号VIDが供給されるデータ線に対応した画素列のピッチに一致する間隔で表示される検査パターンからなる検査画像によれば、作業者の目視によってゴーストの発生を検出することが極めて困難である問題点が生じる。
【0061】
次に、図11乃至図13を参照しながら、上述の問題点を解決可能な、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法を含む液晶装置の製造方法を説明する。以下では、ステップS10及びS20が、本発明の「電気光学装置の製造方法」の一例を構成する。
【0062】
図11において、素子基板10及び対向基板20間に液晶層50を封止することによって液晶装置1を形成する(ステップS1)。
【0063】
次に、検査回路701を液晶装置1に電気的に接続して液晶装置1に検査信号を供給する(ステップS10)。次に、検査信号に応じて画像表示領域10aに表示された検査画像を作業者が目視で確認し、液晶装置1に不具合が発生しているが否かを検査する。これにより、検査済の液晶装置1が製造可能になる。ステップS10及びステップS20は、液晶装置1の製造プロセスの最終段階で実施されるだけでなく、製造プロセスの途中で液晶装置1における不具合の発生状況を検査するために用いられてもよい。
【0064】
次に、図12及び図13を参照しながら、ステップS10において液晶装置1に供給される検査信号をパターン信号、並びに、当該パターン信号に基づいて画像表示領域10aに表示される検査画像を詳細に説明する。
【0065】
図12に示すように、本発明の「検査画像」の一例である検査画像PBは、画素列g1−2、g2−3及びg3−4の夫々に同時に表示される検査パターンPb1、Pb2及びPb3から構成されている。検査回路701は、液晶装置1の検査時に、検査パターンPb1、Pb2及びPb3の夫々に対応する検査信号を含むパターン信号を液晶装置1に供給する。ここで、画素列g1−2、g2−3及びg3−4の夫々に対応するデータ線6d1−2、6d2−3及び6d3−4の夫々は、相互に異なる画像信号線171に電気的に接続されている。より具体的には、データ線6d1−2は、液晶装置1の駆動時に、画像信号VID2を供給する画像信号線171に電気的に接続されている。同様に、データ線6d2−3及び6d3−4の夫々は、画像信号VID3及びVID4の夫々を供給する画像信号線171に電気的に接続されている。したがって、検査パターンPb1、Pb2及びPb3は、画像信号VIDがシリアル−パラレル変換されてなる複数の画像信号VID1〜12のうち相互に異なる画像信号を供給する画像信号線171に各々電気的に接続されている。即ち、本実施形態では、同時に表示される検査パターンのピッチは、液晶装置1の駆動時に同一の画像信号が供給されるデータ線のピッチと異なる。
【0066】
したがって、図13に示すように、イネーブル信号ENBの波形のずれ或いはなまりを一因として、検査パターンPb1のゴーストC2−2及びC3−2の夫々が画素列g2−2及び画素列g3−3に表示された場合でも、これらゴーストC2−2及びC3−2が検査パターンPb2及びPb3の夫々と重なって表示されることがないため、液晶装置1に不具合が発生していることを作業者の目視で容易に、且つ確実に検出することが可能になる。加えて、検査パターンPb2に対応するゴーストC3−3も検査パターンPb3と重なって表示されないため、液晶装置1に不具合が発生していることを作業者の目視で容易に、且つ確実に検出することが可能になる。
【0067】
したがって、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によれば、検査作業に関して熟練度が低い作業者が液晶装置を検査した場合でも、データ線が延びる方向に沿った画素列にライン状に発生するゴーストを容易に検出できる。したがって、相展開駆動される液晶装置1の不良品が流出することを低減できる。加えて、液晶装置1の製造プロセスの途中で検査を実施することにより、早期に液晶装置1の不具合を検出できることから、製造プロセスの早い段階で不具合箇所を特定でき、当該不具合箇所をリペアすることによって、液晶装置1の歩留まりを向上させることも可能である。
【0068】
尚、本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によれば、画素群G1、G2及びG3に限定されるものではなく、他の画素群についても、画素群G1、G2及びG3と同様に、シリアル−パラレル変換された画像信号VID1〜12のうち同じ画像信号が供給されるデータ線6のピッチと異なるピッチで検査パターンを画素列に表示させることによって、画像表示領域10aに表示されるゴーストの全てを確実に検出することが可能である。
【0069】
また、検査パターンに対応する検査信号を含むパターン信号、即ち検査画像Pbを含む検査画像に対応したパターン信号は、検査回路701或いは,検査回路701とは別に設けられたパターン信号供給手段に予め当該パターン信号を記憶させておき、記憶させたパターン信号を検査回路701から液晶装置1に供給してもよい。
【0070】
これにより、相展開数に応じた適切な検査パターンを予め作成し、液晶装置1の検査時に、記憶されていたパターン信号を液晶装置1に供給できる。したがって、相互に相展開数の異なる複数の液晶装置1に対して臨機応変に検査を実施することが可能である。
【0071】
本実施形に係る電気光学装置の検査方法によれば、画像を検査する工程において、例えば、複数の画素部70のうちデータ線6d2−2に電気的に接続された画素列g2−2の輝度と、データ線6d2−3に電気的に接続された画素列g2−3の輝度との差に基づいて、検査画像PBを検査してもよい。このようにして検査をすることにより、ゴースト及び検査パターンの夫々の輝度の差を定量化しておいて、液晶装置1の良否を判定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によって検査される液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によって検査される液晶装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る電気光学装置の検査方法によって検査される液晶装置における、画像信号制御回路の電気的な構成を示したブロック図である。
【図5】液晶装置によって画像が正常に表示される際の画像信号及びイネーブル信号の関係を図示的に示したタイミングチャートである。
【図6】液晶装置によって表示された画像に異常が発生した際の画像信号及びイネーブル信号の関係を図示的に示したタイミングチャート(その1)である。
【図7】液晶装置によって表示された画像に異常が発生した際の画像信号及びイネーブル信号の関係を図示的に示したタイミングチャート(その2)である。
【図8】液晶装置の画像表示領域における複数のデータ線及び複数の画素部の区分けを図式的に示した平面図である。
【図9】液晶装置の検査時にゴーストが発生した表示パターンを図式的に示した平面図である。
【図10】ゴーストを検出できない従来の検査パターンの一例を図式的に示した平面図である。
【図11】本実施形態に係る電気光学 装置の製造方法の主要な工程を示したフローチャートである。
【図12】本実施形態に係る電気光学装置の検査方法で用いられる検査パターンを図示的に示した平面図である。
【図13】本実施形態に係る電気光学装置の検査方法で用いられる検査パターンと共にゴーストを示した図示的な平面図である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・液晶装置、101・・・データ線駆動回路、103・・・画像信号制御回路、104・・・走査線駆動回路、PA,PB・・・検査画像、Pa1,Pa2,Pa3、Pb1,Pb2,Pb3・・・検査パターン、C2−2,C3−2,C3−3・・・ゴースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の表示領域で相互に交差する複数の走査線及び複数のデータ線と、前記表示領域において前記複数の走査線及び前記複数のデータ線の交差に対応して設けられた複数の画素部とを備えており、前記複数のデータ線のうちN本のデータ線を1群として構成される複数のデータ線群毎に供給され、且つN(但し、Nは2以上の自然数)系統にシリアル−パラレル変換された画像信号がN本の画像信号線を介して前記N本のデータ線に供給されることによって画像を表示可能な電気光学装置を検査するための電気光学装置の検査方法であって、
前記複数のデータ線群の第1データ線群に含まれるN本の第1データ線の一の第1データ線と、前記複数のデータ線群の第2データ線群に含まれるN本の第2データ線のうち前記一の第1データ線に対応する一の第2データ線と異なる他の第2データ線との夫々に供給される検査信号を含むパターン信号を前記電気光学装置に供給する第1ステップと、
前記パターン信号に基づいて前記表示領域に表示された検査画像を検査する第2ステップと
を備えたことを特徴とする電気光学装置の検査方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記パターン信号が予め記憶されたパターン信号供給手段から前記電気光学装置に前記パターン信号を供給すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の検査方法。
【請求項3】
前記第2ステップにおいて、前記検査画像が表示された際に、前記複数の画素部のうち前記一の第2データ線に電気的に接続された画素部の輝度と、前記複数の画素部のうち前記他の第2データ線に電気的に接続された画素部の輝度との差に基づいて、前記検査画像を検査すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の検査方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電気光学装置の検査方法を備えたこと
を特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−237025(P2009−237025A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79960(P2008−79960)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】