説明

電気光学装置

【課題】長時間使用可能な自発光型の見開き型の電気光学装置を得る。
【解決手段】第1の放熱部材34を有する保持ユニット32と、少なくとも一部が第1の放熱部材34と接触するように、保持ユニット32の両側に配置された第2の放熱部材40と、光を射出する側の反対側の面の少なくとも一部が第2の放熱部材40に面接触するように保持ユニット32の両側に配置された、自発光素子29を備える電気光学パネル53と、電気光学パネル53の光を射出する側の面を覆うように配置された透明なフィルムシート42と、を備えることを特徴とする電気光学装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス等からなる基板上に電気光学素子を2次元的に配置して画像を表示する電気光学パネルを用いた電気光学装置は、携帯電話機やパーソナルコンピューター、車載用モニター等への採用が進んでいる。特に近年は、ガラス基板を20μm〜100μm程度まで薄型化し、同時にフィルムシートで挟持することで、機械的な衝撃等に対する耐性を維持しつつ可撓性を発揮させた電気光学装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−337322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の電気光学パネルが自発光型の電気光学素子を用いている場合、フィルムシートで挟持すると発光時の熱がこもり易く、長時間使用すると熱の影響により発光特性が変化してしまうという問題があった。また、かかる問題に対処するために、該電気光学パネルの裏面にAl等からなる放熱板を配置すると可撓性が損なわれるため、電子ブックのような見開き型の電気光学装置には適用が困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる電気光学装置は、第1の放熱部材を有する保持ユニットと、少なくとも一部が上記第1の放熱部材と接触するように、上記保持ユニットの両側に配置された第2の放熱部材と、光を射出する側の反対側の面の少なくとも一部が上記第2の放熱部材に面接触するように上記保持ユニットの両側に配置された、自発光素子を備える電気光学パネルと、上記電気光学パネルの光を射出する側の面を覆うように配置された透明なフィルムシートと、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、自発光素子の発光により生じた熱を第2の放熱部材を介して第1の放熱部材から放散できる。そして、第1の放熱部材を軸として、該第1の放熱部材の両側に配置された電気光学パネルを開閉できる。したがって、連続的に使用可能な見開き型の電気光学装置を実現できる。
【0008】
[適用例2]上述の電気光学装置であって、上記保持ユニットは、上記電気光学パネルを制御するための回路部と上記自発光素子を駆動するための電池とをさらに有しており、上記電気光学パネルはFPCを介して上記回路部と接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【0009】
このような構成であれば、移動可能な見開き型の電気光学装置を実現できる。
【0010】
[適用例3]上述の電気光学装置であって、上記第2の放熱部材はグラファイトシートであることを特徴とする電気光学装置。
【0011】
グラファイトシートは層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有するため、このような構成であれば上記電気光学パネルで生じた熱を効率的に第1の放熱部材に伝導できる。したがって、連続使用時の信頼性がより一層向上した見開き型の電気光学装置を実現できる。
【0012】
[適用例4]上述の電気光学装置であって、上記第2の放熱部材の、上記電気光学パネルと接触する面の反対側の面が上記フィルムシートで被われていることを特徴とする電気光学装置。
【0013】
このような構成であれば、第1の放熱部材からの放熱を妨げずに、第2の放熱部材を保護できる。したがって、連続的に使用可能であり、かつ耐久性等が向上した見開き型の電気光学装置を実現できる。
【0014】
[適用例5]上述の電気光学装置であって、上記第2の放熱部材の少なくとも一方には、上記電気光学パネルが表裏両面に配置されていることを特徴とする電気光学装置。
【0015】
このような構成であれば、3面以上の表示面を有する見開き型の電気光学装置を実現できる。
【0016】
[適用例6]上述の電気光学装置であって、上記自発光素子が有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置。
【0017】
このような構成であれば、熱による特性変化が大きい有機EL素子を連続的に使用できる。したがって、見開き型の電気光学装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態にかかる有機EL装置の概略を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかる有機EL装置が備えるグラファイトシートと有機ELパネルとを示す概略平面図。
【図3】有機ELパネルの構造を示す概略断面図。
【図4】第1の実施形態にかかるグラファイトシートと有機ELパネルとの積層構造を示す概略断面図。
【図5】第1の実施形態にかかる有機EL装置の概略断面図。
【図6】第2の実施形態にかかるグラファイトシートと有機ELパネルとの積層構造を示す概略断面図。
【図7】第2の実施形態にかかる有機EL装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態にかかる電気光学装置の製造方法について、図面を参照しつつ述べる。本実施形態では、電気光学装置として、電気光学パネルとしての有機ELパネルを備える有機EL装置を例に記載している。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位を適宜拡大または縮小して表示している。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態にかかる有機EL装置1について、図1〜図5を参照して説明する。図1は有機EL装置1の概略を示す斜視図、図2は有機EL装置1が備える第2の放熱部材としてのグラファイトシート40と該グラファイトシートに積層される有機ELパネル53とを示す概略平面図、図3は有機ELパネル53の構造を示す概略断面図である。そして、図4はグラファイトシート40と有機ELパネル53との積層構造を示す概略断面図であり、図5は有機EL装置1の概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、保持ユニット32と該保持ユニットと一体化した第2の放熱部材としてのグラファイトシート40と該グラファイトシートの一方の面上に重ねて配置された有機ELパネル53等を備えている。有機ELパネル53は、保持ユニット32の両側に、1つずつ配置されている。
【0022】
有機ELパネル53は、表示領域100内に複数の自発光素子である有機EL素子29(図3参照)を規則的に備えている。そして、保持ユニット32は、後述するように上述の有機EL素子29を駆動する回路部(36(図5参照))を内蔵している。該回路部により個々の有機EL素子29の発光強度等が制御されることで、表示領域100内に文字あるいは画像等が表示される。
【0023】
ここで、保持ユニット32は剛性を有する部材であるが、該保持ユニットの両側には有機ELパネル53とグラファイトシート40との積層体と該積層体を被う(後述する)保護シート等しか配置されていない。そして、有機ELパネル53は上述の有機EL素子29等を挟持する一対の基板が薄板化されているため可撓性を有している。したがって、有機EL装置1は、保持ユニット32を軸として、両側の有機ELパネル53をページのように利用できる。すなわち、有機EL装置1は見開き型の表示装置として用いることができる。
【0024】
そして、有機EL装置1は、有機EL素子29が駆動される際に発生する熱をグラファイトシート40により効率的に放熱できる。グラファイトシートは極薄いシート状の黒鉛であり、縦方向(シート面に垂直の方向)の熱伝導性は低く、横方向の熱伝導性はAl(アルミニウム)等の金属に比べて高いという特性を有している。そして、上述したようにグラファイトシートは極薄い黒鉛シートであるため、Al等からなる放熱板とは異なり可撓性を有している。したがって、有機EL装置1は、有機ELパネル53の可撓性を損なうことなく、該有機ELパネルが画像等を表示する際に生じる熱を保持ユニット32に伝えさせ、該保持ユニットから放熱させることができる。
【0025】
図2は、有機EL装置1が備える、第2の放熱部材としてのグラファイトシート40と有機ELパネル53との積層体の概略平面図である。グラファイトシート40の、中央部をY方向に延在する一点鎖線で区画された領域は、保持ユニット32(図1参照)と組み合わされる部分である。そして、該領域の両側に有機ELパネル53が配置されており、該領域と有機ELパネル53との間には、Y方向に延在するスリット44が形成されている。
【0026】
有機ELパネル53の表側、すなわちグラファイトシート40と対向する面の反対側の面には表示領域100が区画されている。そして、該表示領域のスリット44側には端子部57が形成されており、該端子部にはFPC58が接続されている。そして、該FPCはスリット44を介して、グラファイトシート40の裏面(有機ELパネル53と対向する面の反対側の面)側と導通を図ることができる。
【0027】
有機ELパネル53の表示領域100内には、複数の画素領域99が規則的に形成されている。各画素領域99には、上述の有機EL素子29が1対1で対応している。有機EL素子29において生じる発光が射出される領域が画素領域99である。したがって、画素領域99は平面的な概念であり、色等が均一の光が射出される領域である。各画素領域99に記載されているアルファベットは射出される光の色を示している。すなわち、Rと付記された画素領域99からは赤色光が射出され、Gと付記された画素領域99からは緑色光が射出され、Bと付記された画素領域99からは青色光が射出される。
【0028】
個々の有機EL素子29は、平面視で表示領域100の外側の領域に形成されている外部駆動回路(不図示)により駆動される。そして、該外部駆動回路は端子部57と接続されている。FPC58はスリット44を介して端子部57に接続された該外部駆動回路と上述の保持ユニット32に内蔵される回路部36とを導通させている。
【0029】
図3は、有機ELパネル53の模式断面図である。図示するように、有機ELパネル53は、素子基板10と対向基板11、及びかかる一対の基板間に形成された各要素で構成されている。より具体的には、自発光素子としての有機EL素子29等が形成された素子基板10とカラーフィルター層76が形成された対向基板11とが、シール材30及び接着層79を介して貼り合されて(対向配置されて)形成されている。なお、以下の記載において素子基板10の接着層79側を「上」又は「上方」と表記する。
【0030】
素子基板10上には駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する。)112と端子部57が形成されている。TFT112は、半導体層21と、Ti(チタン)あるいはAlCu(アルミニウム・銅合金)等からなる導電体層をパターニングして形成されたゲート電極23、及び、半導体層21とゲート電極23との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層21のうちゲート電極23と平面視で重なる領域がチャネル領域22であり、該チャネル領域の両側にソース領域25とドレイン領域26とが形成されている。素子基板10上には、TFT112の他にスイッチング用TFT(不図示)と保持容量(不図示)とが有機EL素子29と1対1で対応するように形成されている。そして、かかるTFT等は端子部57を経てFPC58と導通している。
【0031】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコン等の無機絶縁材料とアクリル樹脂等の有機系材料とを積層した層間絶縁層71が形成されている。該TFTのドレイン領域26には、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール27を介して、画素電極24が電気的に接続されている。画素電極24の形成材料は後述する陰極19よりも仕事関数が高いことが必要であり、かつ、導電性が必要である。そのため、画素電極24は透明導電材料であるITO(酸化インジウム・錫合金)で形成されている。
【0032】
画素電極24の下層には、後述する発光機能層15から素子基板10側へ射出される光を上方に反射する反射層13と該反射層を覆う保護層28とが形成されている。反射層13の形成材料は、反射率が高く加工性(パターニング性)に優れた材料が好ましい。したがって、有機ELパネル53の反射層13は、Al等で形成されている。また、保護層28は、窒化シリコン等のITOのエッチャントに対して耐性(選択性)のある材料で形成されている。
【0033】
画素電極24は、上述のTFT112毎に1つずつ形成されている。したがって、画素電極24は島状にパターニングされており、隣り合う該電極とは電気的に互いに独立している。そして、平面視で画素電極24が形成されていない領域には、隔壁74が形成されている。隔壁74はアクリル樹脂等の絶縁性材料層をパターニングして形成されており、隣り合う画素電極24間の絶縁を担保している。
【0034】
画素電極24と隔壁74とが形成された素子基板10の上層には、発光機能層15が全面的に形成されている。後述するように有機ELパネル53はカラーフィルターで3原色光を得ているため、発光機能層15は通電により白色光を射出する白色発光機能層である。発光機能層15は総称であり、具体的には素子基板10側から順に正孔注入層と正孔輸送層と有機EL層と電子輸送層との計4層が積層されて形成されている。正孔注入層は正孔を注入し易くするための層であり、正孔輸送層は注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための層であり、電子注入層は電子を注入し易くするための層である。
【0035】
有機EL層は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する層であり、低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料が用いられる。低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。
【0036】
発光機能層15の上層には、共通電極としての陰極19が全面的に形成されている。有機ELパネル53はトップエミッション型であるため、陰極19は導電性とともに透明性(透光性)が必要とされる。そして、電子注入性を確保するために、発光機能層15との界面に画素電極24の形成材料よりも仕事関数が低い材料層を電子注入層として備えることが好ましい。そこで、有機ELパネル53においては、電子注入層としてAlを2nm、LiF(フッ化リチウム)を1nm積層した上に陰極19としてITOを積層して、透明性と電子注入性を確保している。なお、隔壁74上では、Al等からなる低抵抗の層を補助電極として形成して、陰極19の面抵抗を低下させても良い。
【0037】
陰極19と発光機能層15と画素電極24との積層体が有機EL素子29である。TFT112を介して画素電極24に電圧が印加されると該画素電極と陰極19との間に発光機能層15を介して電流が流れ、発光機能層15に含まれる有機EL層は電流量に応じて発光する。
【0038】
素子基板10上に規則的に形成された有機EL素子29及び隔壁74の上層には、封止層78が形成されている。封止層78は単層であるように図示されているが、実際には陰極19の上層から順に形成された陰極保護層と有機緩衝層とガスバリア層との計3層を少なくとも含む積層体である。
【0039】
陰極保護層は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により構成されている。有機緩衝層は、隔壁74とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成され、機械的衝撃を和らげる機能を果たしている。有機緩衝層を構成する材料としては、エポキシ化合物等の透明性が高く、透湿性の低い樹脂を用いることができる。ガスバリア層は、無機材料、特に、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えば酸化窒化シリコン等により形成されている。
【0040】
対向基板11の素子基板10側にはカラーフィルター層76が形成されている。カラーフィルター層76は、各々の有機EL素子29に対向する位置に形成されたカラーフィルター75(r,g,b)と該カラーフィルター間に形成された遮光性材料からなるブラックマトリクス75kとオーバーコート層77と該オーバーコート層を覆う無機ガスバリア層73とを備えている。
【0041】
ブラックマトリクス75kは、Cr(クロム)等をフォトリソグラフィー法でパターニングすることで形成されている。オーバーコート層77は例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料を用いて形成されており、無機ガスバリア層73は無機材料、例えば酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0042】
カラーフィルター75(r,g,b)は、色材を含む感光性樹脂材料を塗布して、露光・現像することにより形成するフォトリソグラフィー法や、隔壁によって区画された膜形成領域に色材を含む液状体を吐出して乾燥させることにより形成する液滴吐出法で形成されている。そして該カラーフィルターは、所定の波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光を吸収することで、白色光から有色光を得ることができる。小文字のアルファベット(r,g,b)は透過させる波長範囲の光が該当する色を示している。
【0043】
有機EL素子29自体は、射出する光の色による構造の差異は無く、各有機EL素子が射出する光の色はカラーフィルター75(r,g,b)によって決定されている。各々の有機EL素子29がカラーフィルター層76を介して3原色光の何れかを任意の強度で射出することで、対向基板11側の面である表示領域100(図1参照)にカラー画像が形成(表示)される。
【0044】
上述の表示領域100は略矩形であり、有機EL素子29は該表示領域内に規則的に形成されている。そして、シール材30は、かかる規則的に形成された(複数の)有機EL素子29を平面視で囲むように形成されている。そして、該シール材に囲まれた領域内には、樹脂材料が充填されて接着層79が形成されている。接着層79の材料としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂を用いることができる。
【0045】
シール材30は、素子基板10上に印刷法等によって未硬化のシール材層を形成し、対向基板11を対向配置した後、該未硬化のシール材層を硬化させることで形成される。シール材料としては、例えばエポキシ系樹脂等の水分透過率が低い材料に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加したものを用いることができる。なお、シール材30の厚さは略15μmである。すなわち上述のカラーフィルター層76、有機EL素子29等、及び接着層79等の合計の厚さは略15μmの厚さの範囲内に収まっている。
【0046】
有機ELパネル53を構成する一対の基板、すなわち素子基板10と対向基板11は共にガラス材料からなる。厚さは20μm〜100μmであり、より好ましくは略30μmである。かかる厚さは、略500μmの厚さのガラス基板を用いて、上述の有機EL素子29等を形成後にシール材30を介して貼り合せた後に、エッチング法あるいはCMP(化学的機械的研磨)法で薄板化することで得られている。
【0047】
上述したように、シール材30の厚さが略15μmであるため、有機ELパネル53の厚さは略75μmである。かかる厚さとなるまで(素子基板10と対向基板11とが)薄型化されたことにより、有機ELパネル53は可撓性を有している。
【0048】
図4は、保持ユニット32(図1参照)の両側の部分、すなわち有機ELパネル53とグラファイトシート40との積層体の構造を示す模式断面図である。図示するように、そして上述したように、有機ELパネル53はシール材30を介して貼り合された素子基板10と対向基板11の一対の基板からなり、素子基板10側においてグラファイトシート40と貼り合されている。そして、かかる有機ELパネル53とグラファイトシート40との積層体は両面をフィルムシート42で被われている。Al等の金属製の放熱板が配置されていないため、本図において示す部分は完全に可撓性を有している。
【0049】
フィルムシート42は、透明性を有する基材フィルムと、同じく透明性を有する接着層とからなり、FPC58側においてグラファイトシート40が延伸している部分を除いて上述の積層体を被っている。基材フィルムは、外部からの水分やガスなどの浸入を防止する観点からガス透過性が低い透明な樹脂フィルムを用いることが好適である。樹脂フィルムとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)などの樹脂からなるフィルムが挙げられる。接着層の形成材料としては、例えば熱可塑性のエポキシ樹脂接着剤を用いることができる。また、粘着性を有する粘着剤としてもよい。
【0050】
有機ELパネル53とグラファイトシート40とは夫々端面を有するため、上記の積層体の端部では段差部を形成している。かかる段差部をフィルムシート42のみで完全に被うことは困難である。そのため、かかる段差部には封止樹脂84等が充填されている。同じく、フィルムシート42同士が貼り合されている部分にも封止樹脂84で密封されている。また、FPC58とグラファイトシート40との間には、スペーサー46が配置されている。かかるスペーサーにより、フィルムシート42で上述の積層体を被う際に、FPC58が折り曲がってクラック等が生じることが抑制されている。
【0051】
図5は、保持ユニット32の長手方向に垂直な面で切った有機EL装置1の構造を示す模式断面図である。なお、両側の有機ELパネル53は図示を一部省略している。図示するように、保持ユニット32は長手方向に延在する、第1の放熱部材としての放熱棒34と、該放熱棒の一方の面を開放しそれ以外の部分(面)と直接接触するように配置されたグラファイトシート40を備えている。そして、グラファイトシート40の、該放熱棒と接触する側の反対の側には、有機ELパネル53を制御するための回路部36と有機ELパネル53を駆動するための電池38とが配置されている。
なお、保持ユニット32は両側に有機ELパネル53を保持でき、かつ回路部36等を保持できればよく、棒状に限定されるものではない。かかる場合(保持ユニットが棒状でない場合)は、第1の放熱部材も棒状の部材(すなわち放熱棒34)に限定されない。
【0052】
放熱棒34はAl等の熱伝導性の高い金属で形成されており、グラファイトシート40から伝えられる熱を周囲、すなわち空中に効果的に放散できる。上述したように、グラファイトシート40は、横方向の熱伝導性が高く縦方向の熱伝導性は低いという特性を有している。したがって、フィルムシート42で全面的に被われているにもかかわらず、有機EL素子29を駆動する際に生じる発熱を放熱棒34に効果的に伝導して、該放熱棒から放熱できる。
【0053】
上述したように、有機EL素子29は加熱により発光特性が変化する性質が有る。したがって、何らかの機構で発光時の発熱を放熱しない限り、長時間の安定的な駆動は困難である。有機EL装置1は、かかる発熱を、表示領域100(図1参照)側の反対の側にグラファイトシート40を配置することで、該表示領域において素子基板10の基板面に垂直方向に放熱するのではなく、隣り合う有機ELパネル53の間に配置された放熱棒34を介して放熱できる。したがって、有機EL装置1は、有機ELパネル53の裏面(素子基板10側の面)を開放せずに、また、金属製の放熱板を配置することなく、長時間の安定的な画像等の表示を可能にしている。
【0054】
また、上述したように、有機ELパネル53は可撓性を付与するために略75μmまで薄型化されている。したがって、何らかのシート等で補強して耐久性を付与することが好ましい。有機ELパネル53の裏面に金属製の放熱板を配置した場合、補強は充分になされるが可撓性は損なわれる。また、フィルムシート42で(有機ELパネル53の)表裏両面を直接被うと、可撓性はたもたれるが放熱が不充分となり、長時間の安定的な表示が困難となり得る。
【0055】
本実施形態の有機EL装置1は、有機ELパネル53を、横方向すなわち面方向の熱伝導性が高いグラファイトシート40を介してフィルムシート42で被うことで、放熱性及び可撓性を損なうことなく耐久性を得ている。また、本実施形態の有機EL装置1は、グラファイトシート40から伝導される熱を放熱する部材を棒状の放熱棒34として、保持ユニット32の構成要素を兼ねさせている。そのため、保持ユニット32を軸として、該保持ユニットの両側に配置された可撓性を有する有機ELパネル53を、見開き可能なページのように機能させることができる。
【0056】
また、有機ELパネル53の端子部57(図3参照)に接続されたFPC58は、グラファイトシート40に設けられたスリット44を介して、回路部36と導通している。そして、有機ELパネル53は回路部36から供給される画像情報に基づき、有機EL素子29(図3参照)を個別に駆動して、表示領域100(図1参照)に画像を表示する。また、かかる駆動に要する電力は内蔵する電池38から供給を受けることができる。したがって、有機EL装置1は電源コード等を要せず、移動可能な見開き型の表示装置、すなわち電子ブックとして用いることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について述べる。本実施形態にかかる有機EL装置2は、第1の実施形態にかかる有機EL装置1と、構成等が類似している。すなわち、保持ユニット32の両側に有機ELパネル53とグラファイトシート40との積層体が配置されており見開き型の電子ブックのように使用可能である。有機ELパネル53の構成も略同一である。グラファイトシート40が、FPC58を通過させるためのスリット44を備えていることも同一である。そこで本実施形態の説明においては、上述の図1〜3に相当する図は省略し、図4及び図5に相当する図を用いて説明する。また、第1の実施形態にかかる有機EL装置1の構成要素と共通する構成要素については同一の符号を付与して説明の記載は一部省略する。
【0058】
図6は、有機EL装置2における有機ELパネル53とグラファイトシート40との積層体の構造を示す模式断面図であり、上述の図4に相当する図である。有機EL装置2は、グラファイトシート40の両面に有機ELパネル53が配置されていることが特徴である。すなわち、グラファイトシート40の両面の夫々に、有機ELパネル53が素子基板10側を対向させるように配置されている。そして、上述の有機EL装置1と同様に、グラファイトシート40と有機ELパネル53との積層体は全体をフィルムシート42で被われており、隙間には封止樹脂84が充填されている。FPC58とグラファイトシート40との間にスペーサー46が配置されている点も、有機EL装置1と同様である。図示する双方の有機ELパネル53は夫々独立して駆動されるものであり、夫々がFPC58を備えている。
【0059】
図7は、保持ユニット32の長手方向に垂直な面で切った有機EL装置2の構造を示す模式断面図であり、上述の図5に相当する図である。両側の有機ELパネル53は図示を一部省略している点も、図5と共通している。
【0060】
図示するように、有機EL装置2の保持ユニット32は、回路部36を4つ内蔵している。そして、電池38は、計4つの有機ELパネル53に駆動電力を供給できる容量を有している。グラファイトシート40の両面に配置された2つの有機ELパネル53は、夫々独立して回路部36と接続されている。すなわち、グラファイトシート40の放熱棒34側に配置された有機ELパネル53のFPC58はスリット44を介して回路部36と接続されており、グラファイトシート40の回路部36側に配置された有機ELパネル53のFPC58はそのままで回路部36と接続されている。
【0061】
有機EL装置2においては、2つの有機ELパネル53が各々の素子基板10側が対向するように配置されているため、画像を表示する際には有機EL素子29(図3参照)の発熱が対向する有機ELパネル53に伝導され得る。しかし、双方の素子基板10の間にはグラファイトシート40が挟持されているため、かかる発熱の多くは横方向に(面方向)に伝導される。上述したようにグラファイトシート40は横方向の熱伝導性が高いため、一方の有機ELパネル53の発熱の多くは、グラファイトシート40を介して放熱棒34に伝えられ、該放熱棒から放散される。したがって、対向する有機ELパネル53を加熱することが抑制されている。したがって、有機EL装置2は、対向配置された一対の有機ELパネル53を2組、すなわち計4つの有機ELパネル53を、信頼性等を損なうことなく同時に駆動して画像等を表示させることができる。したがって、有機EL装置2は、計4つの有機ELパネル53を本のページのように扱うことができ、4ページある電子ブックとして用いることができる。
【0062】
本発明の実施の形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えた変形例として実施することも可能である。変形例を以下に述べる。
【0063】
(変形例1)
上述の各実施形態では、電気光学パネルとして、自発光素子である有機EL素子29を備える有機ELパネル53を用いる有機EL装置について述べた。しかし本発明は、自発光素子を有しない液晶パネル等を用いる態様でも実現可能である。液晶パネルは、光源としてバックライトを必要としている。かかるバックライトの発熱を、グラファイトシート40を介して放熱棒34から放散させることで安定的な画像等の表示が可能となり、電子ブックとして用いることができる。また、有機ELパネル53と他の電気光学パネルとを組み合せて用いることもできる。
【0064】
(変形例2)
上述の各実施形態では、グラファイトシート40が1枚のみの構成であった。しかし本発明は、グラファイトシート40を2枚以上備える構成でも実現可能である。グラファイトシート40のみを積層すると熱伝導性が低下するため好ましくないが、放熱棒34を2本以上配置して保持ユニット32内において放熱棒34とグラファイトシート40とを交互に重ねる態様とすれば放熱性を確保でき、より一層ページ数の多い電子ブックを実現できる。
【符号の説明】
【0065】
1…第1の実施形態にかかる電気光学装置としての有機EL装置、2…第2の実施形態にかかる電気光学装置としての有機EL装置、10…素子基板、11…対向基板、13…反射層、15…発光機能層、19…陰極、21…半導体層、22…チャネル領域、23…ゲート電極、24…画素電極、25…ソース領域、26…ドレイン領域、27…コンタクトホール、28…保護層、29…自発光素子としての有機EL素子、30…シール材、32…保持ユニット、34…第1の放熱部材としての放熱棒、36…回路部、38…電池、40…第2の放熱部材としてのグラファイトシート、42…フィルムシート、44…スリット、46…スペーサー、53…有機ELパネル、57…端子部、58…FPC、70…ゲート絶縁層、71…層間絶縁層、73…無機ガスバリア層、74…隔壁、75…カラーフィルター、75k…ブラックマトリクス、76…カラーフィルター層、77…オーバーコート層、78…封止層、79…接着層、84…封止樹脂、99…画素領域、100…表示領域、112…TFT。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放熱部材を有する保持ユニットと、
少なくとも一部が前記第1の放熱部材と接触するように、前記保持ユニットの両側に配置された第2の放熱部材と、
光を射出する側の反対側の面の少なくとも一部が前記第2の放熱部材に面接触するように前記保持ユニットの両側に配置された、自発光素子を備える電気光学パネルと、
前記電気光学パネルの光を射出する側の面を覆うように配置された透明なフィルムシートと、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記保持ユニットは、前記電気光学パネルを制御するための回路部と前記自発光素子を駆動するための電池とをさらに有しており、
前記電気光学パネルはFPCを介して前記回路部と接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置であって、
前記第2の放熱部材はグラファイトシートであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置であって、
前記第2の放熱部材の、前記電気光学パネルと接触する面の反対側の面が前記フィルムシートで被われていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置であって、
前記第2の放熱部材の少なくとも一方には、前記電気光学パネルが表裏両面に配置されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気光学装置であって、
前記自発光素子が有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−145320(P2011−145320A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3685(P2010−3685)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】