説明

電気加熱型触媒

【課題】本発明は、電気加熱型触媒に係り、セラミック担体を通電加熱するうえでセラミック担体内部の温度分布の均一化を図ることにある。
【解決手段】セラミック担体と、セラミック担体の表面上に配設される表面電極と、3個以上の歯が互いに平行に並んでそれぞれ表面電極に接続される櫛歯部を有する金属電極と、を備えた電気加熱型触媒において、櫛歯部を、中央寄りの歯の電気抵抗に比べて端部寄りの歯の電気抵抗が低くなるように形成する。具体的には、金属電極を、中央寄りの櫛部の断面積に比べて端部寄りの櫛部の断面積が大きくなるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に係り、特に、例えば自動車等から排出される排気ガスの浄化を効果的に行ううえで通電加熱される電気加熱型触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスの浄化を図るために通電加熱される電気加熱型触媒が知られている(例えば、特許文献1参照)。電気加熱型触媒は、セラミック担体と、セラミック担体の表面に配設される表面電極と、表面電極に接続される接続電極と、を備えている。かかる電気加熱型触媒においては、接続電極側から表面電極を介してセラミック担体へ通電が行われることにより、セラミック担体が加熱されて活性化する。従って、電気加熱型触媒によれば、通電によりセラミック担体を強制的に加熱することで、排気ガスを効果的に浄化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1記載の電気加熱型触媒において、接続電極は、棒状に形成されており、表面電極に対して一カ所で接続されている。かかる構造においては、セラミック担体の、接続電極と表面電極との接続部位から遠距離にある部位へ向けて電流が広がり難いので、セラミック担体を均一に加熱することが困難である。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、セラミック担体を通電加熱するうえでセラミック担体内部の温度分布の均一化を図ることが可能な加熱電気加熱型触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、セラミック担体と、前記セラミック担体の表面上に配設される表面電極と、3個以上の歯が互いに平行に並んでそれぞれ前記表面電極に接続される櫛歯部を有する金属電極と、を備え、前記櫛歯部は、中央寄りの歯の電気抵抗に比べて端部寄りの歯の電気抵抗が低くなるように形成されている電気加熱型触媒により達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セラミック担体を通電加熱するうえでセラミック担体内部の温度分布の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例である電気加熱型触媒の構成図である。
【図2】本発明の一実施例である電気加熱型触媒の要部断面図である。
【図3】本発明の一実施例である電気加熱型触媒における電気抵抗を模式的に表した図である。
【図4】本発明の一実施例である電気加熱型触媒における金属電極から表面電極への電流の流れを表した図である。
【図5】本発明の変形例である電気加熱型触媒の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明に係る電気加熱型触媒の具体的な実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例である電気加熱型触媒10の構成図を示す。図2は、本実施例の電気加熱型触媒10の要部断面図を示す。尚、図2には、電気加熱型触媒10を図1に示すA−A´で切断した際の断面図を示す。本実施例の電気加熱型触媒10は、例えば自動車等から排出される排気ガスを浄化するための触媒であって、通電により加熱されることで活性化する触媒である。
【0011】
電気加熱型触媒10は、炭化ケイ素(SiC)により構成されたセラミック触媒が担持されたSiC担体12を備えている。SiC担体12は、加熱されて昇温されることにより触媒機能を発揮することが可能である。SiC担体12は、円柱状に形成されており、その外周面全周にわたって絶縁層としてのマットを介して円筒状に形成されたケース外管に保持されている。
【0012】
電気加熱型触媒10は、また、SiC担体12を通電加熱するための金属電極14を備えている。金属電極14は、外部配線に接続されており、外部配線を通じて通電される。金属電極14は、SiC担体12に対して固定される。金属電極14は、導電性を有する金属(例えば、Ni系、Cr系、Co系、Fe系など)により構成されている。金属電極14は、略平板状に形成された基部16と、その基部16から複数(具体的には3個以上;例えば図1及び図2に示す如く6個)の歯18が長手方向(SiC担体12の軸方向と略直交する方向)に向けて延びるように櫛歯状に形成された櫛歯部20と、を有している。櫛歯部20の各歯18は、SiC担体12の外壁上でSiC担体12の軸方向に沿って互いに並んで配置されている。櫛歯部20の、SiC担体12の軸方向に並んだ互いに隣接する歯18の間には、所定の隙間が形成されている。
【0013】
金属電極14は、SiC担体12上に導電性を有する下地層である表面電極22を介して設置されている。すなわち、SiC担体12と金属電極14との間には、導電性を有する表面電極22が介在している。表面電極22は、溶射によりSiC担体12の表面上に形成されるポーラス膜などであり、略平板状(具体的には、SiC担体12の外壁に沿うように湾曲状)に形成されている。表面電極22は、SiC担体12の熱膨張率と金属電極14の熱膨張率との間の熱膨張率を有する金属材料(例えば、Co系、Ni系、Cr系、Fe系、SUS、Mo、Wなど)により構成されており、SiC担体12と金属電極14との間に生じる熱膨張差を吸収する機能を有している。
【0014】
表面電極22は、SiC担体12の外壁の一部に設けられている。表面電極22は、SiC担体12の表面上にそのSiC担体12の軸方向に広がる領域を有するように形成されており、SiC担体12の軸方向において金属電極14の櫛歯部20全体の全長よりも長い全長を有している。金属電極14の櫛歯部20は、表面電極22の、軸方向の略中央部の表面上に配設されており、表面電極22に接続されている。表面電極22は、その周縁においてマットを介してケース外管に保持されている。
【0015】
電気加熱型触媒10は、また、金属電極14をSiC担体12に対して固定する固定層24を備えている。固定層24は、金属電極14及び表面電極22の双方と接合する。金属電極14は、表面電極22上で固定層24が櫛歯部20及び表面電極22と接合することによりSiC担体12に対して固定される。
【0016】
固定層24は、溶射により金属電極14の櫛歯部20及び表面電極22の表面上に形成される層であり、溶射により櫛歯部20及び表面電極22と接合する。固定層24は、金属電極14の熱膨張率と表面電極22の熱膨張率との間の熱膨張率を有する金属材料(例えば、Co系、Ni系、Cr系、Fe系、SUS、Mo、Wなど)により構成されており、導電性を有している。固定層24は、櫛歯部20の各歯18及び表面電極22の表面上の複数箇所に点在するように設けられており、櫛歯部20及び表面電極22と局所的に接合している。
【0017】
各固定層24はそれぞれ、櫛歯部20及び表面電極22の表面上に半球状或いは半楕円球状に形成されている。各固定層24はそれぞれ、金属電極14の櫛歯部20の各歯18の線幅よりも大きな径を有している。各固定層24はそれぞれ、その頂点が対応の歯18の中心線上に位置することで、歯18と表面電極22の歯18を挟んで櫛歯部20の長手方向に直交する方向(すなわち、SiC担体12の軸方向)の両側に位置する表面部位とを互いに繋げるように形成されている。すなわち、各固定層24はそれぞれ、櫛歯部20の歯18と接合すると共に、表面電極22の、その歯18を挟んで櫛歯部20の長手方向に直交する方向の両側に位置する表面部位の双方と接合する。
【0018】
櫛歯部20の各歯18の長手方向に直交する方向に面する側面は両側とも、固定層24により覆われている。固定層24による櫛歯部20及び表面電極22との接合は、表面電極22上に載置された金属電極14の上方から櫛歯部20の各歯18の、SiC担体12の軸方向における中心に向けて固定層24を溶射することにより実現される。
【0019】
固定層24は、金属電極14の櫛歯部20の各歯18一本当たり、複数(図2では2箇所)設けられており、互いに離間した位置に配置されている。各歯18はそれぞれ、複数の互いに離間した位置で局所的に固定層24と接合される。各歯18はそれぞれ、複数の互いに離間した位置で局所的に固定層24が歯18及び表面電極22の双方と接合することでSiC担体12に対して固定される。櫛歯部20の、SiC担体12の軸方向に並んだ互いに隣接する歯18同士において、固定層24は、表面電極22の表面上で斜の位置に配置されている。
【0020】
上記した電気加熱型触媒10において、外部から外部配線を通じて金属電極14への通電が行われると、電流が、金属電極14の基部16から櫛歯部20の各歯18を通り、その後、歯18から接合面を介して固定層24及び表面電極22へ流れ、そして、表面電極22から接合面を介してSiC担体12へ流れる。かかる経路でSiC担体12に電流が供給されると、SiC担体12が通電加熱される。SiC担体12は、加熱されると、活性化することで、排気ガスを浄化することが可能である。従って、本実施例の電気加熱型触媒10によれば、SiC担体12を通電により強制的に加熱することで、排気ガスを効果的に浄化することが可能である。
【0021】
図3は、本実施例の電気加熱型触媒10における電気抵抗を模式的に表した図を示す。また、図4は、本実施例の電気加熱型触媒10における金属電極14から表面電極22への電流の流れを表した図を示す。
【0022】
本実施例の電気加熱型触媒10において、上記の如く、金属電極14は、基部16から複数の歯18が長手方向に延びるように櫛歯状に形成された櫛歯部20を有しており、櫛歯部20は、表面電極22の軸方向の略中央部に接続されており、各歯18は、SiC担体12の軸方向に沿って互いに並んで配置されている。各歯18はそれぞれ、表面電極22に接続される。
【0023】
櫛歯部20は、すべての歯18のうち、SiC担体12の軸方向において中央寄りに位置する歯18の電気抵抗に比べてその軸方向において端部寄りに位置する歯18の電気抵抗が低くなるように、具体的には、その中央寄りの歯18の断面積に比べてその端部寄りの歯18の断面積が大きくなるように形成されている。更に具体的には、櫛歯部20は、各歯18がそれぞれ表面電極22上において互いに略同一の厚み長(すなわち、SiC担体12の径方向における高さ)を有する一方、その中央寄りの歯18が表面電極22上において比較的小さい幅長(すなわち、SiC担体12の軸方向における幅)を有し、かつ、その端部寄りの歯18が表面電極22上において比較的大きい幅長を有するように形成されている。
【0024】
尚、櫛歯部20の構造は、中央側から端部側にかけて一本ずつ段階的に電気抵抗が低くなるように各歯18を形成したものとしてもよく、また、中央側から端部側にかけて複数本ずつ段階的に電気抵抗が低くなるように各歯18を形成したものとしてもよい。
【0025】
尚、本実施例において、櫛歯部20が6個の歯18を有するものとし、各歯18をSiC担体12の軸方向において順に歯18a,18b,18c,18d,18e,18fとした場合、図2に示す如く、最も端部寄りに位置する歯18a,18fが最も大きい断面積及び最も大きい線幅を有し、その次に端部寄りに位置する歯18b,18eが中程度の断面積及び中程度の線幅を有し、かつ、最も中央寄りに位置する歯18c,18dが最も小さい断面積及び最も小さい線幅を有している。
【0026】
かかる金属電極14の櫛歯部20の構造においては、中央寄りの歯18の電気抵抗に比べて端部寄りの歯18の電気抵抗が低下するので、外部配線を通じて金属電極14の基部16に流れた電流が櫛歯部20の各歯18へ分岐する際、中央寄りの歯18に電流が流れ難くなり、端部寄りの歯18に電流が流れ易くなる。具体的には、歯18c,18dに最も電流が流れ難くなり、歯18b,18eにその次に電流が流れ難くなり、歯18a,18fに最も電流が流れ易くなる。
【0027】
本実施例の如く中央寄りの歯18に電流が流れ難くかつ端部寄りの歯18に電流が流れ易くなる構造においては、各歯18の電気抵抗が略均一であることで各歯18に流れる電流が略均一である構造(以下、第1対比構造と称す。)又は中央寄りの歯18の電気抵抗に比べて端部寄りの歯18の電気抵抗が増加することで中央寄りの歯18に電流が流れ易くかつ端部寄りの歯18に電流が流れ難くなる構造(以下、第2対比構造と称す。)に比べて、歯18から固定層24を介して表面電極22へ流れた電流が、その表面電極22を、最も端部寄りの歯18a,18fの位置に対して更にSiC担体12の軸方向端部側へ向けて広がり易くなる(図4に破線矢印で示す)。
【0028】
表面電極22において、櫛歯部20が接続された軸方向の略中央部から軸方向端部へ向けて電流が広がり易くなると、その表面電極22に接合されたSiC担体12の軸方向端部を流れる電気が増加する。従って、本実施例の電気加熱型触媒10の構造によれば、上記の第1対比構造及び第2対比構造に比べて、SiC担体12の軸方向端部の加熱を促進することができるので、SiC担体12を通電加熱するうえで、SiC担体12内部の温度分布(特に軸方向における温度分布)を改善させてその温度分布の均一化を図ることができ、電気エネルギロスの削減を図ることができる。このため、本実施例によれば、セラミック担体12が均一に通電加熱されるので、排気ガスを効果的かつ効率的に浄化することが可能となっている。
【0029】
尚、上記の実施例においては、SiC担体12が特許請求の範囲に記載した「セラミック担体」に相当している。
【0030】
ところで、上記の実施例においては、中央寄りの歯18の断面積に比べて端部寄りの歯18の断面積を大きくするのに、金属電極14の櫛歯部20を、図2に示す如く、各歯18がそれぞれ表面電極22上において互いに略同一の厚み長を有し、かつ、端部寄りの歯18が中央寄りの歯18に比べてSiC担体12の軸方向に大きい幅長を有するように形成することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属電極14の櫛歯部20を、図5に示す如く、各歯18がそれぞれ表面電極22上においてSiC担体12の軸方向に互いに略同一の幅長を有し、かつ、端部寄りの歯18が中央寄りの歯18に比べて大きい厚み長を有するように形成することとしてもよい。かかる変形例の構造においても、中央寄りの歯18に電流が流れ難くかつ端部寄りの歯18に電流が流れ易くなるので、上記の実施例の構造と同様の効果を得ることが可能となる。
【0031】
また、上記の実施例においては、中央寄りの歯18の電気抵抗に比べて端部寄りの歯18の電気抵抗を低くするのに、中央寄りの歯18の断面積に比べて端部寄りの歯18の断面積を大きくすることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各歯18を構成する材料を、中央寄りの歯18の電気抵抗に比べて端部寄りの歯18の電気抵抗が低くなるように互いに異ならせるものとしてもよい。かかる変形例の構造においても、中央寄りの歯18に電流が流れ難くかつ端部寄りの歯18に電流が流れ易くなるので、上記の実施例の構造と同様の効果を得ることが可能となる。
【0032】
また、上記の実施例においては、セラミック触媒が担持されるセラミック担体を炭化ケイ素によるSiC担体12としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のセラミック素材を用いたものであってもよい。
【0033】
更に、上記の実施例においては、各固定層24をそれぞれ半球状又は半楕円状に形成することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、矩形状などの形状に形成することとしてもよい。また、各固定層24をそれぞれ、対応する一つの歯18を表面電極22上で接合するのに最小限必要な大きさに形成することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、互いに隣接する2つ以上の歯18を纏めて表面電極22上で接合するのに必要な大きさに形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 電気加熱型触媒
12 SiC担体
14 金属電極
18 歯
20 櫛歯部
22 表面電極
24 固定層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック担体と、
前記セラミック担体の表面上に配設される表面電極と、
3個以上の歯が互いに平行に並んでそれぞれ前記表面電極に接続される櫛歯部を有する金属電極と、を備え、
前記櫛歯部は、中央寄りの歯の電気抵抗に比べて端部寄りの歯の電気抵抗が低くなるように形成されていることを特徴とする電気加熱型触媒。
【請求項2】
前記櫛歯部は、中央寄りの歯の断面積に比べて端部寄りの歯の断面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気加熱型触媒。
【請求項3】
前記櫛歯部は、中央寄りの歯の幅長に比べて端部寄りの歯の幅長が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の電気加熱型触媒。
【請求項4】
前記櫛歯部は、中央寄りの歯の厚み長に比べて端部寄りの歯の厚み長が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の電気加熱型触媒。
【請求項5】
前記表面電極は、前記セラミック担体の表面上に該セラミック担体の軸方向に広がる領域を有するように形成されており、
前記櫛歯部は、前記表面電極の、前記軸方向の略中央部に接続され、
前記櫛歯部の各歯はそれぞれ、前記軸方向と略直交する方向に向けて延びていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の電気加熱型触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106164(P2012−106164A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255896(P2010−255896)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】