説明

電気化学デバイス

【課題】蓄電素子の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なることを原因として生じる抵抗値増加等の不具合を回避して充放電特性の悪化を防ぐことができる電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】電気化学デバイス10は、集電膜19の上面に蓄電素子13の第1電極シート13aの下面に向かって隆起する凸部19aが計3個形成されていて、該各凸部19aの先端部分が蓄電素子13の第1電極シート13aの下面に食い込んでおり、該食い込みによって閉塞凹部11a内における蓄電素子13の配置位置が定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な蓄電素子を封入した電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンやビデオカメラやデジタルカメラ等の電子機器には、メモリバックアップ等の用途に適した電源として、表面実装可能な電気化学デバイス、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池等が用いられている。
【0003】
この電気化学デバイスは、一般に、上面開口の凹部を有する絶縁性ケースと、該ケースの凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、該閉塞凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液と、ケースの実装面に設けられた正極端子及び負極端子と、該正極端子と蓄電素子の正極側とを電気的に接続するための正極配線と、該負極端子と蓄電素子の負極側とを電気的に接続するための負極配線とを備えている(特許文献1及び2を参照)。
【0004】
また、蓄電素子の一方極側が凹部の底面に向き合い、且つ、他方極側がリッドの内面に向き合う場合には、通常、凹部の底面には集電膜が設けられていて、該集電膜の上面に導電性接着層を介して蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、リッドの下面に別の導電性接着層を介して蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続されている(特許文献2を参照)。
【0005】
因みに、集電膜の上面に導電性接着層を介して蓄電素子の一方極側の面を電気的に接続するとき、並びに、リッドの下面に別の導電性接着層を介して蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続するとき、即ち、蓄電素子を配置する工程では、集電膜の上面に塗布された未硬化の導電性接着剤に一方極側の面を押し当てて該導電性接着剤を硬化させ、これに前後して、リッドの下面に塗布された未硬化の導電性接着剤に他方極側の面を押し当てて該導電性接着剤を硬化させる手法が採用されている。
【0006】
しかしながら、未硬化の導電性接着剤は流動性を有するため、該導電性接着剤に一方極側の面や他方極側の面を押し当てる過程で、該一方極側が集電膜の上面と略平行な方向にずれたり、該他方極側がリッドの下面と略平行な方向にずれたりすることがある。加えて、面相互が導電性接着層を介して結合されていることから、実装前後の電気化学デバイスに衝撃が加わって該衝撃に基づくずれ応力が導電性接着層の界面に作用すると、閉塞凹部内に配置されている蓄電素子にずれを生じる恐れもある。
【0007】
このような位置ずれを生じると閉塞凹部内における蓄電素子の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なってしまうため、該異なりを原因として抵抗値増加等の不具合を生じて充放電特性の悪化を将来する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−278068号公報
【特許文献2】特開2006−222221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、蓄電素子の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なることを原因として生じる抵抗値増加等の不具合を回避して充放電特性の悪化を防ぐことができる電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、上面開口の凹部を有する絶縁性ケースと、該ケースの凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、該閉塞凹部の底面に設けられた集電膜と、前記閉塞凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液とを備え、前記集電膜の上面に導電性接着層を介して前記蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、前記リッドの下面に別の導電性接着層を介して前記蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続された電気化学デバイスにおいて、前記集電膜の上面と前記リッドの下面の少なくとも一方には前記蓄電素子に向かって隆起する凸部が少なくとも1個形成されていて、該凸部の少なくとも先端部分は前記蓄電素子に食い込んでいる、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記集電膜の上面と前記リッドの下面の少なくとも一方に形成された少なくとも1個の凸部の少なくとも先端部分が前記蓄電素子に食い込んでいて、該食い込みによって閉塞凹部内における蓄電素子の配置位置を定めることができるため、該蓄電素子の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なることを原因として生じる抵抗値増加等の不具合を回避して充放電特性の悪化を防ぐことができる。
【0012】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した電気化学デバイスのS11−S11線に沿う拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示したケースの拡大上面図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、図2に示した蓄電素子の配置方法を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)の図2対応の断面図である。
【図6】図6は、本発明を適用した電気化学デバイス(第3実施形態)の図2対応の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1〜図4は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)を示す。図1及び図2に示した電気化学デバイス10は、絶縁性ケース11と、導電性リッド12と、蓄電素子13と、正極端子14と、負極端子15と、正極配線16と、負極配線17と、を具備しており、ケース11には正極端子14と負極端子15と正極配線16と負極配線17が設けられている他、結合リング18と集電膜19が設けられている。
【0015】
<ケースの構成>
ケース11は、アルミナ等の絶縁体材料から成り、所定の長さ、幅及び高さを有する直方体形状を成すように形成されている。また、ケース11の上面には、上面視輪郭が矩形で所定の深さを有する上面開口の凹部11aが形成されている。つまり、ケース11はその下面が実装面として利用される。さらに、ケース11を上から見たときの4つの角部には、上面視輪郭が略1/4円を成す切り欠き11bが上下方向に形成されている。このケース11には、正極端子14と負極端子15と正極配線16と負極配線17が設けられている他、結合リング18と集電膜19が設けられている。
【0016】
正極端子14は、金等の導電体材料から成り、ケース11の長さ方向の一端面の中央から下面に及ぶ断面L字形を成すように、且つ、所定の幅を有するように形成されている。負極端子15は、金等の導電体材料から成り、ケース11の長さ方向の他端面の中央から下面に及ぶ断面L字形を成すように、且つ、正極端子14と略同じ幅を有するように形成されている。
【0017】
図示を省略したが、ケース11の材料等を原因として、該ケース11の側面及び下面に正極端子14及び負極端子15を直接形成しても十分な密着力が得られない場合には、該側面及び下面に対する正極端子14及び負極端子15の密着力を高めるための密着補助層(例えば、ケース側から順にタングステン膜とニッケル膜とが並ぶもの等)を予めケース11の側面及び下面に形成しておくと良い。
【0018】
正極配線16は、タングステン等の導電体材料から成り、ケース11の長さ方向の一端面の中央から集電膜19の下面に至るように該ケース11の内部に形成されている。詳しくは、図3に示したように、正極配線16は、正極端子14と略同じ幅を有する部分(符号無し)と、該部分から内側に延びる計3本の帯状部16aと、各帯状部16aの端から集電膜19に向かって延びる計3個の柱状部16bとを有している。各柱状部16bの位置はケース11の凹部11aの底面において異なっており、該各柱状部16bの略半球形状の上端は該凹部11aの底面よりも上方に突出している。また、正極配線16のケース11の長さ方向の一端面から露出する部分は、正極端子14の側面部分に電気的に接続されている。
【0019】
負極配線17は、タングステン等の導電体材料から成り、ケース11の長さ方向の他端面の中央から該ケース11の上面に至るようにその一部がケース11の内部に形成され他部がケース11の側面及び上面に形成されている。詳しくは、図3に示したように、負極配線17は、負極端子15と略同じ幅を有しケース11内に位置する部分(符号無し)と、該部分から外側に延びケース11内に位置する計2本の帯状部17aと、各帯状部17aと連続してケース11の2つの切り欠き11bの内面上に位置する計2本の帯状部17bと、各帯状部17bと連続してケース11の上面上に位置する計2個の扇状部17cとを有している。また、負極配線17のケース11の長さ方向の他端面から露出する部分は、負極端子15の側面部分に電気的に接続されており、該負極配線17のケース11の上面に存する各扇状部17cは、結合リング18の下面に電気的に接続されている。
【0020】
結合リング18は、コバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)等の導電体材料から成り、ケース11の上面視輪郭よりも僅かに小さな上面視輪郭の矩形状を成すように形成されている。また、結合リング18の内孔18aの上面視輪郭は、ケース11の凹部11aの上面視輪郭と略一致している。この結合リング18は、内孔18aが凹部11aと整合するようにケース11の上面に接合材を介して結合されているため、該内孔18aは凹部11aとの協働によって実質的な凹部を構成することになる。
【0021】
図示を省略したが、ケース11の材料等を原因として、該ケース11の上面に結合リング18を接合材、例えば、金−銅合金等のロウ材を用いて直接結合しても十分な結合力が得られない場合には、該上面に対する結合リング18の結合力を高めるための結合補助層(例えば、上面側から順にタングステン膜とニッケル膜とが順に並ぶもの等)を予めケース11の上面に形成しておくと良い。また、結合リング18が電解液に対する耐食性が低い材料から成る場合には、電解液に対する耐食性を高めるための耐食性膜(例えば、表面側からニッケル膜と金膜が順に並ぶものや、この金膜を白金や銀やパラジウム等の他の金属膜に変えたもの等)を結合リング18の表面(少なくとも上下面と内孔18aの内面)に形成しておくと良い。
【0022】
集電膜19は、アルミニウム等の導電体材料から成り、ケース11の凹部11aの底面に該底面の上面視輪郭よりも僅かに小さな上面視輪郭をもって形成されている。先に述べたように、正極配線16の各柱状部16bの上端はケース11の凹部11aの底面よりも上向きに隆起しており、且つ、集電膜19は該各柱状部16bの上端を覆うように凹部11aの底面に形成されているため、該集電膜19の上面には各柱状部16bの突出部分に倣って隆起する略半球形状の凸部19aが存在する(図3及び図4(A)を参照)。また、ケース11の凹部11aの底面に形成された集電膜19は、正極配線16の各柱状部16bの突出部分に電気的に接続されている。
【0023】
図示を省略したが、正極配線16の各柱状部16bの材料等を原因として、ケース11の凹部11aの底面に集電膜19を形成しても該各柱状部16bの突出部分とに十分な電気伝導が得られない場合には、該各柱状部16bの突出部分と集電膜19の電気伝導を高めるための導電補助層(例えば、突出部分の表面側から順にニッケル膜と金膜が並ぶもの等)を予め該突出部分の表面に形成しておくと良い。
【0024】
<リッドの構成及び結合方法>
リッド12は、コバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)等の導電体材料から、好ましくは、コバール母材の上下面にニッケル膜を有するクラッド材やコバール母材の下面にニッケル膜を有するクラッド材や、これらのニッケル膜を白金や銀や金やパラジウム等の金属膜に変えたクラッド材等から成り、結合リング18の上面視輪郭と略一致した上面視輪郭を有する矩形状に形成されている。図面には、リッド12の中央部分が矩形状に盛り上がったものをリッド12として示してあるが、平板形状を成すものを該リッド12として用いても良い。
【0025】
このリッド12は、ケース11の凹部11a(結合リング18の内孔18aを含む)の内側に蓄電素子13を配置した後に、その下面の外周部分を結合リング18の上面に電気的に導通するように結合され、該結合によってケース11の各凹部11a(結合リング18の内孔18aを含む)は水密及び気密に閉塞される。因みに、結合リング18に対するリッド12の結合には、シーム溶接やレーザ溶接等の直接接合法を利用できる他、導電性接合材を介在した間接接合法を利用できる。
【0026】
<蓄電素子の構成及び配置方法>
蓄電素子13は、矩形状の第1電極シート13aと、矩形状の第2電極シート13bと、両電極シート13a及び13bの間に介装された矩形状のセパレートシート13cと、から構成されている。第1電極シート13a及び第2電極シート13bはケース11の凹部11aの上面視輪郭よりも小さな上面視輪郭を有し、セパレートシート13cは両電極シート13a及び13bの上面視輪郭よりも僅かに大きく、且つ、ケース11の凹部11aの上面視輪郭よりも僅かに小さな上面視輪郭を有している。
【0027】
第1電極シート13a及び第2電極シート13bは活性炭やPAS(ポリアセン系半導体)等の活物質から成り、セパレートシート13cはガラス繊維やセルロース繊維やプラチック繊維等を主材料とした多孔質シートから成る。因みに、第1電極シート13aと第2電極シート13bの材料は、電気化学デバイス10の種類によって同じ場合と異なる場合とがある。
【0028】
この蓄電素子13は、リッド12によって閉塞された凹部11a(結合リング18の内孔18aを含む)の内側に、図示省略の電解液(例えば、プロピレンカーボネイト(溶媒)に硼弗化トリエチルメチルアンモニウム(溶質)を加えたもの等)と一緒に封入されている。
【0029】
蓄電素子13を構成する第1電極シート13aと第2電極シート13bに使用時の極性が定まっていない場合、即ち、第1電極シート13aを正極と負極の一方として選択的に使用でき、且つ、第2電極シート13bを正極と負極の他方として選択的に使用できる場合には、ケース11の各凹部11a(結合リング18の内孔18aを含む)の内側に蓄電素子13を配置するときにその挿入順序を気にする必要は無い。
【0030】
一方、蓄電素子13を構成する第1電極シート13aと第2電極シート13bに使用時の極性が予め定まっている場合には、ケース11の各凹部11a(結合リング18の内孔18aを含む)の内側に蓄電素子13を配置するときにその挿入順序に注意する。例えば、第1電極シート13aの極性が正極に定められ、且つ、第2電極シート13bの極性が負極に定められている場合には、正極側の第1電極シート13aが集電膜19の上面と向き合い、且つ、負極側の第2電極シート13bがリッド12の下面と向き合うようにする。
【0031】
また、図2に示したように、蓄電素子13の第1電極シート13aの下面は導電性接着層20を介して集電膜19の上面に電気的に接続され、第2電極シート13bの上面は導電性接着層21を介してリッド12の下面に電気的に接続されている。この導電性接着層20及び21は導電性接着剤の硬化物であり、該導電性接着剤には、好ましくは、導電性粒子を含有した熱硬化性接着剤、例えば、グラファイト粒子を含有したエポキシ系接着剤等が利用できる。
【0032】
ここで、蓄電素子13を配置する方法について、(1)第1電極シート13aと第2電極シート13bとセパレートシート13cが一体物として作製されていない場合と、(2)第1電極シート13aと第2電極シート13bとセパレートシート13cを一体物として作製されている場合を例に挙げて説明する。
【0033】
前記(1)の場合には、図4(A)及び図4(B)に示したように、集電膜19の表面に未硬化の導電性接着剤20’を塗布し、該導電性接着剤20’に第1電極シート13aの下面を相対的に押し当てて密着させ、該導電性接着剤を硬化させる。そして、第1電極シート13aの上面にセパレートシート13cを載置する。これに前後して、リッド12の下面に前記と同じ未硬化の導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤に第2電極シート13bの上面を相対的に押し当てて密着させ、該導電性接着剤を硬化させる。そして、リッド12の下面の外周部分を結合リング18の上面に重ねると同時に、第2電極シート13bの下面をセパレートシート13cの上面に重ね合わせる。そして、リッド12を結合リング18に結合する。
【0034】
また、前記(2)の場合には、図4(A)及び図4(B)に示したように、集電膜19の表面に未硬化の導電性接着剤20’を塗布し、該導電性接着剤20’に一体物(蓄電素子13)の第1電極シート13aの下面を押し当てて密着させる。そして、リッド12の下面に前記と同じ未硬化の導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤を一体物(蓄電素子13)の第2電極シート13bの上面に押し当てて密着させる。導電性接着剤の硬化は個別に行うか、或いは、一括(同時)に行う。そして、リッド12を結合リング18に結合する。
【0035】
何れの配置方法の場合も、未硬化の導電性接着剤20’に第1電極シート13aの下面を押し当てる過程を経るため、図2及び図4(B)に示したように、該押し当て過程で集電膜19の各凸部19aの少なくとも先端部分が第1電極シート13aの下面に食い込み、該食い込みに応じた計3個の凹部13a1が第1電極シート13aの下面に形成される。
【0036】
活性炭やPAS(ポリアセン系半導体)等の活物質から成る第1電極シート13aはさほど硬くは無いため、例えば、図4(A)に示した凸部19aの高さH19aを約50μmとした場合には、押し当て過程における押圧力を0.3MPa程度とすれば、各凸部19aを第1電極シート13aの下面に十分に食い込ませることができる。勿論、押し当て過程における押し込み量を変えることによって、図4(B)に示した凹部13a1の深さD13a1を変化させることもできる。
【0037】
また、前記押し当て過程前の図4(A)に示した未硬化の導電性接着剤20’の厚さT20’は該押し当て過程後に図4(B)に示した厚さT20に減少するものの、前記押し込み量を変化させることによって、押し当て過程後の厚さT20を調整することができる。つまり、各凸部19aの先端部分のみを第1電極シート13aの下面に食い込ませ、且つ、集電膜19の上面と第1電極シート13aの下面との間に所定厚さの導電性接着層20が介在する隙間を確保するようにすれば、該隙間に必要十分量の導電性接着層20(導電性接着剤20’)を残存させることができる。
【0038】
因みに、図2及び図4(B)には、凸部19aの表面と凹部13a1の内面とが若干離れているものを示してあるが、これは凸部19aの表面と凹部13a1の内面との間に導電性接着剤20’中の導電性粒子が挟み込まれていることを考慮したものである。勿論、凸部19aの表面(特に頂点)と凹部13a1の内面(特に最深部)との間に導電性粒子が挟み込まれていない状態では、凸部19aの頂点と凹部13a1の最深部とが直接的に接触し得る。
【0039】
<電気化学デバイス(第1実施形態)によって得られる効果>
前記電気化学デバイスによれば、以下の(効果1)〜(効果3)を得ることができる。
【0040】
(効果1)集電膜19の上面に形成された計3個の凸部19aの先端部分が蓄電素子13の第1電極シート13aの下面に食い込んでいて、該食い込みによって閉塞凹部11a内における蓄電素子13の配置位置を定めることができるため、蓄電素子13を配置する工程で生じ得る位置ずれや実装前後の電気化学デバイス10に衝撃が加わったときに生じ得る位置ずれ等を確実に防止でき、これにより、該蓄電素子13の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なることを原因として生じる抵抗値増加等の不具合を回避して充放電特性の悪化を防ぐことができる。
【0041】
(効果2)集電膜19の上面に形成された凸部19aの数が3個であり、各凸部19aの位置は集電膜19の上面において異なっているため、3点食い込みによって蓄電素子13を配置する工程で生じ得る位置ずれ、具体的には直線変位、回転変位及び傾斜変位を的確に阻止できる。また、3点支持によって蓄電素子13の姿勢を安定化できるため、実装前後の電気化学デバイス10に衝撃が加わったときに生じ得る位置ずれをより一層確実に防止することができる。
【0042】
(効果3)各凸部19aの先端部分のみを第1電極シート13aの下面に食い込ませることによって、集電膜19の上面と第1電極シート13aの下面との間に所定厚さの導電性接着層20が介在する隙間を確保できるので、該隙間に必要十分量の導電性接着層20(導電性接着剤20’)を残存させることができ、これにより、導電性接着層20(導電性接着剤20’)の量が不足して集電膜19の上面と第1電極シート13aの下面との結合に面積不足や強度不足を生じる不具合を確実に回避することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図5は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)を示す。図5に示した電気化学デバイスが、前記[第1実施形態]で説明した電気化学デバイス10と異なるところは、
・リッド12の下面に該下面よりも下向きに隆起する計3個の凸部12aが、該リッド1 2の下面において異なる位置に形成されている点
・各凸部12aの少なくとも先端部分が蓄電素子13の第2電極シート13bの上面に食 い込んでいて、該食い込みに応じた凹部13b1が第2電極シート13bの上面に形成 されている点
にある。他の構成、並びに、蓄電素子13の配置方法は前記[第1実施形態]で説明した電気化学デバイス10と同じである。
【0044】
各凸部12aは、リッド12の中央部分に局部的なプレス加工を施すことによって形成されており、各々の下端は略半球形状を成している。
【0045】
活性炭やPAS(ポリアセン系半導体)等の活物質から成る第2電極シート13bはさほど硬くは無いため、例えば、凸部12aの高さを約50μmとした場合には、押し当て過程における押圧力を0.3MPa程度とすれば、各凸部12aを第2電極シート13bの上面に十分に食い込ませることができる。勿論、押し当て過程における押し込み量を変えることによって、凹部13b1の深さを変化させることもできる。
【0046】
また、押し当て過程前の未硬化の導電性接着剤の厚さは該押し当て過程後に減少するものの、前記押し込み量を変化させることによって、押し当て過程後の厚さを調整することができる。つまり、各凸部12aの先端部分のみを第2電極シート13bの上面に食い込ませ、且つ、リッド12の下面と第2電極シート13bの上面との間に所定厚さの導電性接着層21が介在する隙間を確保するようにすれば、該隙間に必要十分量の導電性接着層21(導電性接着剤)を残存させることができる。
【0047】
因みに、図5には、凸部12aの表面と凹部13b1の内面とが若干離れているものを示してあるが、これは凸部12aの表面と凹部13b1の内面との間に導電性接着剤中の導電性粒子が挟み込まれていることを考慮したものである。勿論、凸部12aの表面(特に頂点)と凹部13b1の内面(特に最深部)との間に導電性粒子が挟み込まれていない状態では、凸部12aの頂点と凹部13b1の最深部とが直接的に接触し得る。
【0048】
<電気化学デバイス(第2実施形態)によって得られる効果>
前記電気化学デバイスによれば、前記[第1実施形態]で説明した(効果1)〜(効果3)に加えて、以下の(効果4)〜(効果6)を相乗的に得ることができる。
【0049】
(効果4)リッド12の下面に形成された計3個の凸部12aの先端部分が蓄電素子13の第2電極シート13bの上面に食い込んでいて、該食い込みによって閉塞凹部11a内における蓄電素子13の配置位置を定めることができるため、蓄電素子13を配置する工程で生じ得る位置ずれや実装前後の電気化学デバイスに衝撃が加わったときに生じ得る位置ずれ等を確実に防止でき、これにより、該蓄電素子13の配置位置が所期位置(設計で定めた位置)と異なることを原因として生じる抵抗値増加等の不具合を回避して充放電特性の悪化を防ぐことができる。
【0050】
(効果5)リッド12の下面に形成された凸部12aの数が3個であり、各凸部12aの位置はリッド12の下面において異なっているため、3点食い込みによって蓄電素子13を配置する工程で生じ得る位置ずれ、具体的には直線変位、回転変位及び傾斜変位を的確に阻止できる。また、3点支持によって蓄電素子13の姿勢を安定化できるため、実装前後の電気化学デバイスに衝撃が加わったときに生じ得る位置ずれをより一層確実に防止することができる。
【0051】
(効果6)各凸部12aの先端部分のみを第2電極シート13bの上面に食い込ませることによって、リッド12の下面と第2電極シート13bの上面との間に所定厚さの導電性接着層21が介在する隙間を確保できるので、該隙間に必要十分量の導電性接着層21(導電性接着剤)を残存させることができ、これにより、導電性接着層21(導電性接着剤)の量が不足してリッド12の下面と第2電極シート13bの上面との結合に面積不足や強度不足を生じる不具合を確実に回避することができる。
【0052】
[第3実施形態]
図6は、本発明を適用した電気化学デバイス(第3実施形態)を示す。図6に示した電気化学デバイスが、前記[第1実施形態]で説明した電気化学デバイス10と異なるところは、
・正極配線16の各柱状部16’として、各々の先端が凹部11aの底面よりも上方に突 出していないものを用いた点
・集電膜19の上面には凸部が形成されていない点
の他、
・リッド12の下面に該下面よりも下向きに隆起する計3個の凸部12aが、該リッド1 2の下面において異なる位置に形成されている点
・各凸部12aの少なくとも先端部分が蓄電素子13の第2電極シート13bの上面に食 い込んでいて、該食い込みに応じた凹部13b1が第2電極シート13bの上面に形成 されている点
にある。他の構成、並びに、蓄電素子13の配置方法は前記[第1実施形態]で説明した電気化学デバイス10と同じである。また、後者の2つの相違点は前記[第2実施形態]で説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
【0053】
<電気化学デバイス(第3実施形態)によって得られる効果>
前記電気化学デバイスによれば、前記[第2実施形態]で説明した(効果4)〜(効果6)を得ることができる。
【0054】
[他の実施形態]
(1)前記[第1実施形態]及び[第2実施形態]では、集電膜19の上面に形成された凸部19aの数を計3個としたものを示したが、該凸部19aの数を計4個以上としても(効果1)〜(効果3)と同じ効果を得ることができるし、該凸部19aの数を2個または1個としても(効果1)及び(効果3)と同じ効果を得ることができる。また、凸部19aとして半球形状のものを示したが、該凸部19aの形状は半球形状以外の形状、例えば、円柱形状や円錐形状等としても良い。
【0055】
(2)前記[第2実施形態]及び[第3実施形態]では、リッド12の下面に形成された凸部12aの数を計3個としたものを説明したが、該凸部12aの数を計4個以上としても(効果4)〜(効果6)と同じ効果を得ることができるし、該凸部12aの数を2個または1個としても(効果4)及び(効果6)と同じ効果を得ることができる。また、凸部12aとして半球形状のものを示したが、該凸部12aの形状は半球形状以外の形状、例えば、円柱形状や円錐形状等としても良い。
【0056】
(3)前記[第1実施形態]及び[第2実施形態]では、正極配線16の各柱状部16bの上端突出部分を利用して集電膜19の上面に凸部19aを形成したものを示したが、前記[第3実施形態]と同様に正極配線16の各柱状部16’として各々の先端が凹部11aの底面よりも上方に突出していないものを用い、且つ、前記上端突出部分の代用となるものを凹部11aの底面に形成しておけば、該代用物を利用して集電膜19の上面に凸部19aを形成することができる。勿論、このような代用物を用いずに、集電膜19自体に局部的に隆起した部分を形成してこれを凸部19aとしても用いても良いし、集電膜19の上面に凸部代用物を後付けしてこれを凸部19aとしても用いても良い。
【0057】
(4)前記[第2実施形態]及び[第3実施形態]では、リッド12の中央部分に局部的なプレス加工を施すことによって凸部12aを一体に形成したものを示したが、このようなプレス加工をせずに、リッド12の下面に凸部代用物を後付けしてこれを凸部12aとしても用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、充放電可能な蓄電素子を用いた各種電気化学デバイス、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタやレドックスキャパシタやリチウムイオン電池等に広く適用でき、該適用によって前記[発明を解決しようとする課題]に記した目的を達成できる。
【符号の説明】
【0059】
10…電気化学デバイス、11…ケース、11a…凹部、12…リッド、12a…凸部、13…蓄電素子、13a…第1電極シート、13a1…凹部、13b…第2電極シート、13b1…凹部、19…集電膜、19a…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の凹部を有する絶縁性ケースと、該ケースの凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、該閉塞凹部の底面に設けられた集電膜と、前記閉塞凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液とを備え、前記集電膜の上面に導電性接着層を介して前記蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、前記リッドの下面に別の導電性接着層を介して前記蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続された電気化学デバイスにおいて、
前記集電膜の上面と前記リッドの下面の少なくとも一方には前記蓄電素子に向かって隆起する凸部が少なくとも1個形成されていて、該凸部の少なくとも先端部分は前記蓄電素子に食い込んでいる、
ことを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記凸部は前記集電膜の上面に形成されていて、該凸部の少なくとも先端部分は前記蓄電素子の一方極側の面に食い込んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記凸部の数は3個以上であり、該各凸部の位置は前記集電膜の上面において異なっている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記凸部は、前記集電膜の上面と前記蓄電素子の一方極側の面との間に所定厚さの導電性接着層が介在する隙間が確保されるように、その先端部分のみを前記蓄電素子の一方極側の面に食い込んでいる、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記凸部は前記リッドの下面に形成されていて、該凸部の少なくとも先端部分は前記蓄電素子の他方極側の面に食い込んでいる、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記凸部の数は3個以上であり、該各凸部の位置は前記リッドの下面において異なっている、
ことを特徴とする請求項5に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記凸部は、前記リッドの下面と前記蓄電素子の他方極側の面との間に所定厚さの導電性接着層が介在する隙間が確保されるように、その先端部分のみを前記蓄電素子の他方極側の面に食い込んでいる、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−134299(P2012−134299A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284691(P2010−284691)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】