説明

電気接続装置

【課題】簡単な構造で、コンタクトの姿勢を安定して保持できるとともに、接触圧や摺動量を容易に調整可能であり、交換も容易にできる電気接続装置を提供する。
【解決手段】2つの被接触物を電気的に接続する電気接続装置であって、押圧部材、該押圧部材を介して一方の被接触物を所定の装着位置に保持するロック部材、2つの被接触物が装着されるベース部材、該ベース部材に保持される弾性部材、および該弾性部材に保持される複数のコンタクトを備え、ベース部材は、弾性部材を収容する収容凹部をそれぞれ有する上ベース部材と下ベース部材を含み、弾性部材は、複数のコンタクトそれぞれを保持するスリットを含み、複数のコンタクトそれぞれは、上部接触部を有する上部接触アーム、下部接触部を有する下部接触アームを少なくとも含み、複数のコンタクトそれぞれの上部および下部接触アームは、弾性部材に当接し得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波対応の電気接続装置に関し、より詳細には、例えば、高周波信号が交信される半導体装置と配線基板とを電気的に接続するための、例えば、半導体検査用ソケットのような電気接続装置であって、コンタクトの接触力および摺動量を容易に調整できるように、弾性部材とコンタクトをユニット化した電気接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波で信号が交信される電子機器間を電気的に接続する電気接続装置(以下、「半導体検査用ソケット)ともいう。)は、特許文献1に示されるように、従来周知である。当該電気接続装置は、高周波信号が交信されるため、電気接続装置を構成するコンタクトのインダクタンスを小さくするとともに、被接触物としての半導体装置および配線基板などの電子機器に対する電気的接続性を向上させる必要がある。特許文献1には、ソケット本体を構成するホルダに支持される弾性部材とホルダとは別部材のソケット本体自体に支持される、信号線路長を短くした概略Y字形のコンタクトを有する電気接続装置としての半導体検査用ソケットが開示されている。該半導体検査用ソケットの概略Y字形のコンタクトは、斜め上方前方に向って延在する上部接触片、斜め上方後方に向って延在する押圧片、および上方接触片と押圧片が交差する部分から下方垂直に延在する下部接触片で構成されている。また、コンタクトの変位量および摺動量を支配する弾性部材は、上部接触片および押圧片との間に配置される。コンタクトの上部接触片の先端接触部は、該先端接触部が半導体装置に接触し、上部接触片が回動することにより変位し、下部接触片の先端接触部は、該先端接触部が配線基板に接触し、上方に押し上げられることにより変位する。上部および下部接触片それぞれの先端接触部の変位により、弾性部材が変形し、その反力が接触圧として作用する。また、上部および下部接触片それぞれの先端接触部は、上部接触片の回動に伴い、対応する半導体装置および配線基板の外部接点に対してそれぞれ水平方向に摺動し、対応する外部接点をそれぞれワイピングする。
【0003】
【特許文献1】特開平10−50440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される電気接続装置は、コンタクトが下部接触片を介してのみソケット本体に支持され、弾性部材がコンタクトの上部接触片と押圧片に上方からのみ接触するように構成されている。したがって、被接触物との接触前の複数のコンタクトの姿勢を一定に支持することは難しく、特に、上部接触片の先端接触部の位置を一定に保持することが難しく、それにより、上部接触片の先端接触部と被接触物としての半導体装置との接触が安定しない。
【0005】
また、このような電気接続装置においては、被接触物としての半導体装置や配線基板が変更される場合が生ずる。そして、このような変更に応じて、上部接触片と被接触物としての半導体装置との接触圧、下部接触片と被接触物としての配線基板との接触圧、上部接触片および下部接触片の摺動量(ワイピング量)などをそれぞれ変更、すなわち調整する必要が生じる。しかしながら、上記従来の電気接続装置においては、その構成から見て、コンタクトの接触片と被接触物との接触圧や接触片の摺動量を、それぞれ独立して調整することは困難である。すなわち、上述したように、従来の電気接続装置においては、弾性部材がコンタクトの上部接触片と押圧片に上方からのみ接触するように構成されているので、弾性部材は上部接触片および下部接触片の変位に対して同時に作用する。したがって、例えば、上部接触片の先端接触部と被接触物との接触圧を調整すると、下部接触片の先端接触部と被接触部との接触圧が変化し、所望の接触圧が得られなくなる恐れがある。
【0006】
さらに、これらのコンタクトや弾性部材を取り替える場合、コンタクトと弾性部材は、別部材に支持されているため、別々に取り外し、別々に取り付ける作業が必要であり、交換作業が繁雑となる。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、簡単な構造で、コンタクトの姿勢を安定して保持できるとともに、接触圧や摺動量を容易に調整可能であり、交換も容易にできる電気接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る電気接続装置は、第1の被接触物および第2の被接触物の2つの被接触物を電気的に接続する電気接続装置であって、前記第1の被接触物および前記第2の被接触物が装着されるベース部材、該ベース部材に保持される弾性部材、および該弾性部材に保持される複数のコンタクトを備え、前記ベース部材は、前記弾性部材を収容する収容凹部をそれぞれ有する上ベース部材と下ベース部材を含み、前記弾性部材は、該弾性部材を上下に貫通し、前記複数のコンタクトをそれぞれ保持するスリットを含み、前記複数のコンタクトそれぞれは、前記第1の被接触物に接触し得る上部接触部を有する上部接触アーム、前記第2の被接触物に接触し得る下部接触部を有する下部接触アームを少なくとも含み、前記複数のコンタクトそれぞれの前記上部接触アームおよび下部接触アームは、前記弾性部材に当接しうるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電気接続装置は、前記下部接触アームが、前記下部接触部を有し、該下部接触アームから下方に突出する接触用突起を含んでいてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係る電気接続装置は、前記弾性部材は、上方部分と下方部分を含み、該上方部分と下方部分は、前後にずれて形成されるとともに、該上方部分と下方部分の重なり合う部分に前記スリットが形成されており、前記弾性部材の上方部分は、前記上ベース部材の前記第1の凹部に収容され、前記弾性部材の下方部分は、前記下ベース部材の前記第2の凹部に収容され、前記弾性部材の前記上方部分の前方部分および前記下方部分の後方部分がそれぞれ前記上ベース部材と前記下ベース部材との間に上下に挟持されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る電気接続装置は、前記コンタクトの前記上部接触アームおよび前記下部接触アームそれぞれの先端に、前記弾性部材に当接し、これを押圧する第1の突起および第2の突起が設けられ、該第1および第2の突起それぞれの有無および第1および第2の突起それぞれの突出量の変更により、前記弾性部材の押圧量をそれぞれ調整し得る。
【0012】
本発明に係る電気接続装置は、前記弾性部材の上方部分を収容する前記上ベース部材の前記第1の凹部後方には第1の空間部分が設けられ、前記弾性部材の下方部分を収容する前記下ベース部材の前記第2の凹部前方には第2の空間部分が設けられ、該第1および第2の空間部分それぞれの有無及び該第1および第2の空間部分それぞれの大きさの変更によっても、前記コンタクトの前記第1および第2の突起それぞれの前記弾性部材の押圧量をそれぞれ調整し得る。
【0013】
さらに、本発明に係る電気接続装置は、前記弾性部材のスリットの形状を変更することにより、前記コンタクトの前記上部接触アームの前記上部接触部および前記下部接触アームの前記下部接触部の前後方向の移動量を調整し得る。
【0014】
また、本発明に係る電気接続装置は、前記弾性部材のスリットは、上方開口部、下方開口部、上方開口部と下方開口部との間を上下に垂直に貫通する垂直部で形成され、前記垂直部の前側面が前方上方に向って傾斜する第1の傾斜面および前記垂直部の後側面が後方下方に向って傾斜する第2の傾斜面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成を備えることで、簡単な構造で、コンタクトの姿勢を安定して保持できる。また、コンタクトと2つの被接触物との間の接触圧をそれぞれ独立して容易に調整可能となっている。さらにまた、摺動量も容易に調整可能である。これらのことにより、コンタクトの接触部と被接触物との間のワイピングが確実に行われる。したがって、それらの間の接触が確実に保持されるとともに、接触圧を安定させることができる。そのため、2つの被接触物の間の安定した電気的接続を維持することが可能となる。
【0016】
また、弾性部材にコンタクトを保持させることで、これらの組立体をユニット化でき、それにより、コンタクトなどの交換も容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を用いて、本発明の実施態様に付き説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例に係る電気接続装置の全体分解斜視図であり、図2は、図1の電気接続装置の断面図を含む部分拡大斜視図である。図3は、図1の電気接続装置を構成するベース部材の部分拡大斜視図であり、(a)は、ベース部材を構成する上ベース部材の断面図を含む部分拡大斜視図であり、(b)は、ベース部材を構成する下ベース部材の断面図を含む部分拡大斜視図である。図4は、図1の電気接続装置を構成する弾性部材の断面図を含む部分拡大斜視図であり、図5は、図1の電気接続装置を構成するコンタクトの斜視図である。図6は、被接触物がコンタクトに接触していない状態にある図1の電気接続装置の要部断面図である。図7は、本発明の第2の実施例に係る電気接続装置の図6と同様の要部断面図であり、図8は、本発明の第3の実施例に係る電気接続装置の図6と同様の要部断面図である。図9ないし図14は、被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、図15ないし17は、被接触物に対するコンタクトの摺動量を調整する態様を説明するための図である。
【0019】
なお、本明細書において、用語「前」および「後」は、それぞれ、電気接続装置の中心部分に近い側および電気接続装置の中心部分から遠い側を言い、「左」および「右」は、それぞれ、電気接続装置の中心部分に向って左側および右側を言い、「上」および「下」は、それぞれ、電気接続装置に対して上側および下側をいう。
【0020】
本発明の第1の実施例に係る電気接続装置1について図1ないし6を用いて説明する。
【0021】
本実施例に係る電気接続装置1は、概略、ベース部材10、弾性部材40、複数のコンタクト50、ロック部材60および押圧部材70を備えている。なお、80は、第1の被接触物としての、検査対象とされる半導体装置である。90は、第2の被接触物としての、テストボードのような配線基板である。本実施例では、半導体装置80および配線基板90は、それぞれ、下面および上面に外部接点が形成されており、両者は、電気接続装置1を介して電気的に接続される。
【0022】
最初に、ロック部材60および押圧部材70について説明する。
【0023】
ロック部材60は、押圧部材70を介して、ベース部材10上に設置されている半導体装置80を下方に押し下げ、所定の位置に保持する部材である。該ロック部材60は、半導体装置80の装着に先立って、後述するベース部材10とともに、配線基板90上に一体的に固定される。該ロック部材は、電気的に絶縁性の合成樹脂から形成され、図1に示されるように、概略、本体61および一対のラッチ部材66a、66bを備えている。本体61は、概略水平断面正方形の直方体として形成されており、その中央部分には、水平断面正方形の誘導孔62が形成されている。したがって、本体61は、誘導孔62の周囲(4周)を囲む外壁部分で構成されている。誘導孔62は、半導体装置80が通過することができる大きさを有し、また、電気接続装置1に半導体装置80を装着する時には、該誘導孔62内に押圧部材70が収容される。
【0024】
本体61を構成する外壁部分のうちの対をなす外壁部分の上面61aには、一対のラッチ部材66a、66bが本体に対して回転自在に設けられている。ラッチ部材66a、66bには、それぞれ、押圧部材の係合凹部72a、72bそれぞれに係止する係止爪部68a、68bを有するアーム67a、67bが設けられている。アーム67a、67bは、それぞれ、ラッチ部材66a、66bに対してほぼ直角をなすように、図1においてほぼ水平に開いているラッチ部材66a、66bの所定位置から上方に向って突出形成されている。さらに、係止爪部68a、68bは、それぞれ、アーム67a、67bに対して直角をなすように、図1において上方に延在しているアーム67a、67bの先端位置から前方に向って突出形成されている。
【0025】
ラッチ部材66a、66bは、半導体装置80が電気接続装置1に搭載されたとき、それぞれ、図1の開いた状態から前方に向って90度回転し、係止爪部68a、68bが押圧部材70の係合凹部72a、72bに係止されることで、閉じた状態を保持する。この時、電気接続装置1に装着された半導体装置80は、所定の接触圧で、コンタクト50に接触し、電気的に接続される。
【0026】
押圧部材70は、ロック部材60の誘導孔62内に収容され、半導体装置80を押し下げ、該半導体装置80を所定の位置に保持する部材である。押圧部材70は、電気的に絶縁性の合成樹脂からなり、水平断面正方形の直方体として形成され、その水平上面71にロック部材60のラッチ部材66a、66bに形成されている係止爪部68a、68bが係止し得る一対の係合凹部72a、72bを含んでいる。
【0027】
本実施例では、ロック部材60および押圧部材70が別部材といて形成されているが、これに限られるものではない。例えば、上記特許文献1に開示されるように、ロック部材60および押圧部材70は、一体部材として形成されていてもよいし、さらに、ベース部材10に対して回転可能に取付けられていてもよい。
【0028】
また、ロック部材60および押圧部材70の代わりに、半導体装置80を電気接続装置1の所定位置に搬送するためのハンドラ装置を用いて半導体装置80を押下げてもよい。
【0029】
次に、ベース部材10について説明する。ベース部材10は、電気的に絶縁性の合成樹脂からなり、図2、3(a)に示されるように、上ベース部材11および下ベース部材21及び位置決め部材31を含んでいる。上ベース部材11と下ベース部材21との間には、後述するように、弾性部材40に設けられた複数の第3のスリット44内に複数のコンタクト50が1つずつ配列されたユニットが配置される。
【0030】
本実施例では、上ベース部材11は、水平断面略正方形の直方体をなしており、水平上面11a、該水平上面11aと平行な水平下面11b、および水平上面11a、水平下面11bに垂直な4つの側面を含んでいる。なお、隣接する側面は、互いに直角をなしている。該上ベース部材11の上面11aの中央部分には、上方に向って開放し、水平断面略正方形の収容凹部12が形成されている。該収容凹部12には、位置決め部材31が配置されるとともに、半導体装置80が凹部12の上方から挿入され、位置決め部材31により位置決めされて所定の装着位置に収容、保持される。
【0031】
収容凹部12は、上ベース部材11の上面11aに平行な水平面として形成される略正方形の底面12a、該底面12aの周囲を囲み、該底面12aと直角をなしている4つの側面12bを含んでいる。収容凹部12の底面12aには、図2、3(a)に示されるように、4つの側面12bに沿って配列される複数の細長い第1のスリット14が設けられている。複数の第1のスリット14は、収容凹部12の底面12aの略正方形の中心平坦部分を取り囲むように、該底面12aの全周にわたって形成されている。収容凹部12の各側面12bに沿う第1のスリット14それぞれは、互いに平行であり、各側面12bに対して直角をなして延在し、かつ、上ベース部材11を貫通し、下方に開放している。細長い第1のスリット14は、4つの側面、すなわち、前後の側面14a、14bおよび左右の側面14c、14dを含んでいる。なお、隣接する側面は、互いに直角をなしている。図3(a)に示されるように、第1のスリット14の前後方向の長さ(前側面14aと後側面14bとの間の距離)は、L14である。左右方向の長さ(幅)(左側面14cと右側面14dとの間の距離)は、W14である。第1のスリット14には、コンタクト50それぞれの上部接触部51aを含む上部接触アーム51が配置される。このことから、細長い第1のスリット14の長さL14は、配置されるコンタクト50の上部接触アーム51の前後方向の長さL51より長く、第1のスリット14の幅W14は、コンタクト50の幅(厚さ)tより若干大きいことが理解される。
【0032】
上ベース部材11の下面11bには、第1のスリット14に対応して、下方に向って開放する第1の凹部16が形成されている。第1の凹部16は、底面16c、該底面と直角をなしている4つの側面、すなわち、前後の側面16a、16b、および左右の側面(不図示)を含んでいる。したがって、第1の凹部16は、複数の第1のスリット14を介して収容凹部12に連通している。なお、隣接する側面は、互いに直角をなしている。第1の凹部16の前側面16aは、これに限られるものではないが、第1のスリット14の前側面14aと面一になるように形成されることが好ましい。また、第1の凹部16の後側面16bは、これに限られるものではないが、収容凹部12の第1のスリット14が対応する側面12bを下方に延長した位置の近傍に形成されることが好ましい。
【0033】
第1の凹部16は、第1のスリット14の長さL14より長い長さ(前側面16aと後側面16bとの間の距離)L16を有し、平行に配列される複数の第1のスリット14全てを含む幅(左側面と右側面との間の長さ)W16(不図示)を少なくとも有している。第1の凹部16は、4つ形成され、該4つの第1の凹部16により上ベース部材11の下面11bの略正方形の中心平坦部分を取り囲むように、該下面11bに形成されている。
【0034】
第1の凹部16には、後述するように、コンタクト50を保持する弾性部材40の上方部分41が収容される。このことから、第1の凹部16の長さL16は、弾性部材40の上方部分41の長さL41と同じか長く、第2の凹部の幅W16は、弾性部材40の上方部分41の幅W41と同じか若干大きいことが理解される。また、第1の凹部16の高さ(上ベース部材11の下面11bと第1の凹部16の底面16cとの間の距離)H16は、上方部分の高さ(厚さ)H41にほぼ等しい。
【0035】
次に、本実施例における位置決め部材31は、電気接続装置1の上方から挿入される半導体装置80の外部接点がコンタクト50と接触するように、該半導体装置80を案内する部材である。位置決め部材31は、上記上ベース部材11の収容凹部12内に配置される。
【0036】
位置決め部材31は、図1および2に示されるように、水平断面正方形の直方体であり、4周を概略垂直の外壁部で囲まれた角筒体として形成されている。位置決め部材31は、外壁部の水平上面35および水平下面36、外壁部で囲まれた上下に貫通する水平断面正方形の案内空洞32を含んでいる。案内空洞32の4周の面(外壁部の内面)は、該案内空洞32が下方に向って細くなるように、傾斜案内面33として形成される。案内空洞32の上端開口部の正方形状の面積は、案内される半導体装置80の水平断面の面積より大きく設定される。下端開口部の正方形状の面積は、該半導体装置80の水平断面の面積にほぼ同じくなるように設定される。なお、傾斜案内面33の下部は、図2に示されるように、垂直面33aとして形成されていることが好ましい。
【0037】
また、位置決め部材31の外周壁の水平下面36には、下方および前方に向って開放する複数の第3のスリット34が形成される。該複数の第3のスリット34内には、コンタクト50の上部接触アーム51の上部接触部51aが収容される。したがって、複数の第3のスリット34は、上記収容凹部12の底面12aに形成されている複数の第1のスリット14に対応し、該第1のスリット14と同じ長さおよび幅を有して形成される。
【0038】
次に、下ベース部材21は、水平断面略正方形の直方体をなしており、水平上面21a、該水平上面21aと平行な水平下面21b、および水平上面21a、該水平下面21bに垂直な4つの側面を含んでいる。
【0039】
下ベース部材21の上面21aには、その略正方形の中央平坦部分を取り囲むように4つの第2の凹部22が、上方に向って開放するように形成されている。第2の凹部22は、底面22e、該底面22eに直角をなす4つの側面、すなわち、前後の側面22a、22b、左右の側面22c、22dを含んでいる。なお、隣接する側面は、互いに直角をなしている。
【0040】
第2の凹部22それぞれは、上記上ベース部材11の下面11bに形成されている第1の凹部16に対応して形成されている。すなわち、上ベース部材11と下ベース部材21とがベース部材10として組み立てられたとき、4つの第2の凹部22は、それぞれ、4つの第1の凹部16と向き合うように配置される。しかしながら、第2の凹部22は、第1の凹部16に対して後方に位置するように配置される。言い換えれば、4つの第2の凹部22それぞれは、各第2の凹部22の前側面22aおよび後側面22bが、それぞれ、対応する第1の凹部16の前側面16aおよび後側面16bより後方に位置するように形成されている。なお、各第3の凹部の左側面22cおよび右側面22dは、それぞれ対応する第1の凹部16の左側面および右側面に面一になるように形成される。
【0041】
第2の凹部22には、弾性部材40の下方部分42が収容される。このことから、各第2の凹部22は、弾性部材40の下方部分42の長さL42と同じかそれより長い長さ(前側面22aと後側面22bとの間の距離)L22を有していることが理解される。同様に、第2の凹部22は、弾性部材40の下方部分42の幅W42(=W41)と同じかそれより若干大きい幅(左側面cと右側面dとの間の長さ)W22(不図示)を少なくとも有していることが理解される。また、第2の凹部22の高さ(下ベース部材21の上面21aと第2の凹部22の底面22eとの間の距離)H22は、弾性部材40の下方部分42の高さ(厚さ)H42にほぼ等しい。
【0042】
このように第1の凹部16および第2の凹部22を形成することで、弾性部材40の上方部分41の前方部分および下方部分42の後方部分が、いずれも部分的であるが、上ベース部材11と下ベース部材21に挟まれることになる。それにより、弾性部材40が確実に、かつ、安定してベース部材10内に保持される。
【0043】
各第2の凹部22の底面22eには、3(b)に示されるように、後側面22bに沿って配列される複数の細長い第2のスリット24が設けられている。第2のスリット24それぞれは、互いに平行であり、後側面22bに対して直角をなして延在し、かつ、本実施例では、下ベース部材21を貫通し、下方に開放している。
【0044】
細長い第2のスリット24は、4つの側面、すなわち、前後の側面24a、24bおよび左右の側面24c、24dを含んでいる。なお、隣接する側面は、互いに直角をなしている。図3(b)に示されるように、第2のスリット24の前後方向の長さ(前側面24aと後側面24bとの間の距離)は、L24であり、左右方向の長さ(幅)(左側面24cと右側面24dとの間の距離)は、W24である。第2のスリット24には、コンタクト50それぞれの下部接触部53aを含む下部接触アーム53が配置される。このことから、細長い第2のスリット24の長さL24は、配置されるコンタクト50の下部接触アーム53の前後方向の長さL53より長いことが理解される。同様に、第2のスリット24の幅W24は、第1のスリット14の幅W14と同じであり、コンタクト50の幅(厚さ)tより若干大きいことが理解される。
【0045】
上述したように、上ベース部材11と下ベース部材21とを形成することにより、複数(本実施例では4つ)の弾性部材40および複数のコンタクト50を含むベース部材10を組み立てることが容易にできる。具体的には、先ず、後述するように、各弾性部材40に設けられている第4のスリット44に複数のコンタクト50をそれぞれ配列し、1つのユニットとして形成する。
【0046】
続いて、弾性部材40と複数のコンタクト50からなる4つのユニットそれぞれを、下ベース部材21の第2の凹部22内に、弾性部材40の下方部分42が収容されるように、下部ベース部材21上に配置する。同時に、各コンタクト50の下部接触アーム53は、下ベース部材21の複数の第2のスリット24内に収容される。この時、複数のコンタクト50は、弾性部材40に安定して整列保持されているので、その下部接触アーム53は、対応する第2のスリット24内に容易に収容され得る。
【0047】
続いて、各コンタクト50の上部接触アーム51が上ベース部材11の複数の第1のスリット14内に収容されるように、上ベース部材11を上記ユニット上に配置する。この時、複数のコンタクト50は、弾性部材40に安定して整列保持されているので、その上部接触アーム51は、対応する第1のスリット14内に容易に収容され得る。また、上ベース部材11の第1の凹部16内に、弾性部材40の上方部分41が収容される。
【0048】
上ベース部材11の設置によりベース部材10の組立が完了し、図6に示されるように、弾性部材40が上ベース部材11と下ベース部材21に上下に挟持されることで、該弾性部材40に保持されるコンタクト50も正しい姿勢でベース部材10の所定の位置に確実に保持される。このように、複数の弾性部材40および複数のコンタクト50を含むベース部材40の組立が容易に行えることは、ベース部材40の解体も容易に行えることである。したがって、コンタクトが劣化した場合などにおける該コンタクトの交換作業も簡単に行えることとなる。
【0049】
次に、本実施例に係る弾性部材40について説明する。弾性部材40は、電気的に絶縁性で柔軟性を有する合成樹脂で形成されている。該弾性部材40は、コンタクト50を保持する部材である。また、弾性部材40は、半導体装置80および配線基板90の外部接点に対するコンタクトの上部接触部51aおよび下部接触部53aの接触圧を制御する部材でもある。
【0050】
弾性部材40は、長さL41、幅W41を有する板状の上方部分41と長さL42と幅W42を有する板状の下方部分42を有する。上方部分の長さL41は、その前側面41aと後側面41bとの間の距離として、下方部分の長さL42は、その前側面42aと後側面42bとの間の距離として表される。上方部分の幅W41と下方部分の幅W42は、等しい。弾性部材40は、上方部分41と下方部分42が、図4に示されるように、前後方向にずれた状態で上下方向に重ね合わされた階段状の形状をなして、実質は一体に形成されている。ここで、弾性部材40の長さをL40とすると、L41(またはL42)<L40<L41+L42の関係にあり、弾性部材40の幅をW40とすると、W40=W41=W42の関係にある。また、弾性部材40は、L14<L41<L16、L24<L42<L22の関係を維持するようにそれぞれの長さが設定される。
【0051】
弾性部材40は、該弾性部材40がベース部材10に組み込まれたとき、その上方部分41の前側面41aが、上ベース部材11の第1の凹部16の前側面16aに接触するように形成されることが好ましい。同様に、弾性部材40は、その下方部分42の後側面42bが、下ベース部材21の第2の凹部22の後側面22bに接触するように形成されることが好ましい。それにより、弾性部材40と上ベース部材11および下ベース部材21それぞれとの間に、弾性部材40をベース部材10に組み込んだとき、第1の空間部分18および第2の空間部分28が形成される(図6参照)。
【0052】
弾性部材40の上方部分41と下方部分42とが重ね合わさった部分には、第4のスリット44が形成されている。第4のスリット44は、基本的には、上方開口部44a、下方開口部44c、および上方開口部44aと下方開口部44cとの間を上下に垂直に貫通する垂直部44bで形成される。本実施例では、第4のスリット44は、上方部分41において垂直部44bの前側面が前方上方に向って傾斜する第1の傾斜面44dが形成され、上方開口部44aに到達している。該第4のスリット44を設けることにより、弾性部材40は、コンタクト50をその正しい姿勢に矯正しつつ、該コンタクト50を保持し得る。
【0053】
第4のスリット44は、また、下方部分42において垂直部44bの後側面が後方下方に向って傾斜する第2の傾斜面44eが形成され、下方開口部44cに到達している。第4のスリット44にこのような傾斜面44d、44eを設けることで、後述するように、コンタクト50の上部接触部51aおよび下部接触部53aの摺動量(ワイピング量)を調整することが可能となる。また、傾斜面44d、44eの傾斜角度によって細かい摺動量(ワイピング量)の調整が可能となる。さらに、傾斜面44d、44eを設けることで、半導体装置80へのダメージを低減させることが可能となる。これは、後述するように、半導体装置80の押下げ初期段階から、コンタクト50が回転し、半導体装置80に対する荷重を、半導体装置80の押下げ量とともに徐々に作用させるためである。傾斜面44d、44eを設けない場合、コンタクト50が回転するまでの半導体装置80の押下げ量が大きく、一定の押下げ量に達すると急激にコンタクト50による荷重が半導体装置80に作用し、半導体装置80へダメージを与える恐れがある。次に、半導体装置80を一定の押下げ量に達した後に、傾斜面44d、44eを設けた場合と傾斜面44d、44eを設けない場合において、半導体装置80を同等量押下げたとすると、半導体装置80に作用する荷重が傾斜面44d、44eを設けた場合の方が小さくなる。傾斜面44d、44eを設けることにより、半導体装置80とコンタクト50との適正な接触力が得られる半導体装置80の押下げ量の範囲が広くなる。ロック部材60および押圧部材70の押下げ量に関わる寸法設定をゆるやかにできることや、ハンドラ装置を用いて半導体装置80を押下げた場合の、ハンドラ装置の押下げ量の設定が簡易となる等の効果が期待できる。なお、後述するように傾斜面44d、44eのいずれか一方を設ける場合も、上述と同様の効果を有する。しかしながら、傾斜面44d、44e両方を設け場合の方が、得られる効果は大きいと考えられる。
【0054】
第4のスリット44は、また、弾性部材40がベース部材10内に組み込まれたとき、その前側面44fが下ベース部材21の第2のスリット24の前側面24aに一致するように形成されることが好ましい。同様に、第4のスリット44は、その後側面44gが上ベース部材11の第1のスリット14の後側面14bに一致するように形成されることが好ましい。
【0055】
第4のスリット44の垂直部44bの前後方向の長さL44は、コンタクト50の保持部52の前後方向の長さL52にほぼ等しい。また、第4のスリット44の垂直部の上下方向の長さは、弾性部材40の高さH40に等しい。
【0056】
なお、弾性部材40の高さH40は、上ベース部材11の第1の凹部16の高さH16に下ベース部材21の第2の凹部22の高さH22を加えたものにほぼ等しい(H40=H41+H42=H16+H22)。
【0057】
最後に、コンタクト50について説明する。
【0058】
コンタクト50各々は、半導体装置80と配線基板90とを電気的に接続する部材である。本実施例においては、特に、高周波信号の交信に対応可能とすべく、コンタクト50は実質的な剛体として形成され、信号線路長が短くなるように形成される。
【0059】
本実施例におけるコンタクト50各々の構造は、図5に示されている。コンタクト50は、上部接触アーム51、保持部52および下部接触アーム53を含み、横から見て概略Z字形をなしている。上部接触アーム51は、ほぼ垂直な保持部52の前方に位置し、該保持部52上端部から前方上方に向って傾斜するように延在している。下部接触アーム53は、ほぼ保持部52の後方に位置し、該保持部52下端部から後方下方に向って若干傾斜するように延在している。上部接触アーム51の上端(上部先端)部は、上部接触部51aとして、半導体装置80の外部接点(不図示)に接触し、下部接触アーム53の下端(下部先端)部は、下部接触部53aとして、配線基板90の外部接点(不図示)に接触する。上部接触アーム51および下部接触アーム53は、コンタクト50自体が回転可能に配置されることにより、それぞれの上部接触部51aおよび下部接触部53aを上下に若干変位させ得るように構成されていることが好ましい。
【0060】
また、コンタクト50のほぼ垂直の保持部52は、弾性部材40に設けられている第4のスリット44の垂直部44b内に配置され、該垂直部44bに保持される。さらに、上部接触アーム51の前端部には、弾性部材40の上方部分41の上面に当接する弾性部材当接部としての第1の突起51bが下方に向けて突出形成され得る。同様に、下部接触アーム53の後端部には、弾性部材40の下方部分42の下面に当接する弾性部材当接部としての第2の突起53bが上方に向けて突出形成され得る。第1の突起51bの有無または突出量(h1)により、後述するように、上部接触部51aと半導体装置80の外部接点との間の接触圧が調整可能である。同様に、第2の突起53bの有無または突出量(h2)により、下部接触部53aと配線基板90の外部接点との間の接触圧が調整可能である。なお、第1および第2の突起51b、53bの形成は、本実施例に限られるものではなく、例えば、第1の突起51bは、前方下方向けて斜めに突出形成されてもよいし、第2の突起53bは、後方上方に向けて斜めに突出形成されてもよい。
【0061】
コンタクト50の前後方向の長さは、L50であり、上下方向の長さ(高さ)は、H50であり、コンタクト50の幅(厚さ)はtである。また、上部接触アーム51の前後方向の長さは、L51であり、保持部52の前後方向の長さは、L52であり、下部接触アーム53の前後方向の長さは、L53である。
【0062】
本実施例においては、コンタクト50の大きさは、L50<L40、H50>H11+H21、t≒H14の関係を維持するように設定される。さらに、コンタクト50は、L51<L14、L52≒L44、L53<L24、L51−L52<(第3の凹部の前側面22から第2のスリット24の前側面までの距離)の関係も維持するように設定される。
【0063】
なお、本実施例におけるコンタクト50の信号線路長は、概略L51+H50となる。
【0064】
図7および図8に示されるコンタクト150および250は、コンタクト50の変形例である。
【0065】
具体的には、第2の実施例におけるコンタクト150は、垂直な保持部152が存在するが、第1の実施例より短く、上部接触アーム151の傾斜角度は、第1の実施例より小さくなっている。第2の実施例においては、コンタクト150の下部接触アーム153の下方に、接触用突起154が設けられる。ここで、接触用突起154の下端部が、配線基板90の外部接点と接触するコンタクト150の下部接触部154aとなることはいうまでもない。該接触用突起154は、本実施例では、保持部152と下部接触アーム153の交差する地点の近傍であって、若干後方よりに、下部接触アーム153から下方に垂直に延在するように形成されている。この場合、コンタクト150の下部接触アーム153が配置される下ベース部材21の第2のスリット24は、その下方部分がコンタクト150の接触用突起154の大きさに合わせて小さな垂直貫通孔26として形成されることが好ましい。あるいは、第2のスリット24部分を第4の凹部として1つにまとめて形成し、複数の垂直貫通孔26のみを第4の凹部の底面から下ベース部材の下面21bに向けて貫通するように、第4の凹部の後側面に沿って所定の位置に形成してもよい。垂直孔26は、接触用突起154が該垂直貫通孔26内で前後方向に移動できるように、該接触用突起154の前後方向の長さより若干大きく形成することが好ましい。もちろん、コンタクト150に接触用突起154が形成されない場合は、下ベース部材21の第2のスリット24は、第1の実施例のままでよいことが理解されるだろう。
【0066】
第3の実施例においては、図8に示されるように、コンタクト250は、第1の実施例における垂直な保持部52が省略され、下部接触アーム153の前方から直接上部接触アーム251が前方上方に傾斜して延在する構造となっている。この第3の実施例においても、下部接触アーム253から下方に向けて接触用突起254が形成されている。本実施例では、接触用突起254は、上部接触アーム251と下部接触アーム253の交差する地点において、下部接触アーム253から下方に垂直に延在するように形成されている。接触用突起254の下端部が、配線基板90の外部接点と接触するコンタクト250の下部接触部254aとなることは、上記第2の実施例と同じである。本実施例における下ベース部材21の第2のスリット24部分の構造の変更も、上記第2の実施例で述べたと同じようにすればよい。
【0067】
以下、本発明の目的とするコンタクトと半導体装置や配線基板の外部接点との接触圧、およびコンタクトのこれら外部接点に対する摺動量の調整が本発明においてどのように実現されるかについて図9ないし17を用いて説明する。なお、ここでの説明は、第1の実施例を用いて説明し、第2、3の実施例は、第1の実施例と同じであるので、その説明を省略する。
【0068】
図9ないし11は、被接触物としての半導体装置80に対するコンタクト50の接触圧を調整する方法を示している。
【0069】
図9は、コンタクト50の形状、より具体的には、コンタクト50の上部接触アーム51の第1の突起51bの突出量h1を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。図9において、(a)から(c)に移るにつれ、第1の突起51bの突出量h1を小さくしている。
【0070】
半導体装置(不図示)が上方から押し下げられたとき、第1の突起51bが弾性部材40の上面に当接し、これを変形させる。この時、第1の突起51bの突出量h1が大きいほど、弾性部材40の変形量が大きくなり、それにより、第1の突起51bに対する弾性部材40からの反力が大きくなる。したがって、第1の突起51bの突出量h1が大きいほど、上部接触部51aの半導体装置80の外部接点(不図示)に対する接触圧が大きくなる。このことから、コンタクト50の上部接触アーム51の第1の突起51bの突出量h1の大きさを変えることで、接触圧が容易に調整できることが理解される。
【0071】
図10は、弾性部材40の形状、より具体的には、弾性部材40の下方部分42の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。図10において、(a)から(c)に移るにつれ、弾性部材40の下方部分42が、収容される下ベース部材21の第2の凹部22に充填される部分を小さくしている。すなわち、弾性部材40の下方部分42の前側面42aが下ベース部材21の第2の凹部22の前側面22aに接近し、弾性部材40とベース部材10とで形成される第2の空間部分28の大きさを小さくする。
【0072】
半導体装置(不図示)が上方から押し下げられたとき、第1の突起51bが弾性部材40の上面に当接し、これを変形させる。この時、空間部分28の大きさが大きいほど、弾性部材40の変形が空間部分28に吸収され、それにより、第1の突起51bに対する弾性部材40からの反力が小さくなる。したがって、空間部分28の大きさが大きいほど、上部接触部51aの半導体装置の外部接点に対する接触圧が小さくなる。このことから、弾性部材40とベース部材10とで形成される空間部分28の大きさを変えることで、接触圧が容易に調整できることが理解される。なお、空間部分28の大きさを調整する場合、上述のような接近方法に限られるものではなく、弾性部材40の上方部分41の下面が下ベース部材21の第2の凹部22の底面22eに接近するようにしてもよい。また、このような接近方法と上述の接近方法と合わせた方法であってもよい。
【0073】
図11は、ベース部材10の形状、より具体的には、ベース部材10の下ベース部材21の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。該方法は、上記図11に示された方法と実質的に同じ原理を使っている。すなわち、ベース部材10と弾性部材40とで形成される空間部分28の大きさを変えることで、接触圧を調整している。すなわち、下ベース部材21の第2の凹部22の前側面22aが弾性部材40の下方部分42の前側面42aに接近し、弾性部材40とベース部材10とで形成される第2の空間部分28の大きさを小さくしている。なお、接触圧の調整動作は、図10の場合と同じであるので省略する。また、空間部分28の大きさを調整する場合、上述のような接近方法に限られるものではなく、下ベース部材21の第2の凹部22の底面22eが弾性部材40の上方部分41の下面に接近するようにしてもよい。また、このような接近方法と上述の接近方法と合わせた方法(図11(b’)参照)であってもよい。
【0074】
次に、図12ないし14は、被接触物としての配線基板90に対するコンタクト50の接触圧を調整する方法を示している。
【0075】
図12は、コンタクト50の形状、より具体的には、コンタクト50の下部接触アーム53の第2の突起53bの突出量h2を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。図12において、(a)から(c)に移るにつれ、第2の突起53bの突出量h1を小さくしている。
【0076】
電気接続装置1が配線基板90に取付けられると、第2の突起53bは、弾性部材40の下面に当接し、これを変形させる。この時、第2の突起53bの突出量h2が大きいほど、弾性部材40の変形量が大きくなり、それにより、第2の突起53bに対する弾性部材40からの反力が大きくなる。したがって、第2の突起53bの突出量h2が大きいほど、下部接触部53aの配線基板90の外部接点に対する接触圧が大きくなる。このことから、コンタクト50の下部接触アーム53の第2の突起53bの突出量h2の大きさを変えることで、接触圧が容易に調整できることが理解される。
【0077】
図13は、弾性部材40の形状、より具体的には、弾性部材40の上方部分41の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。図13において、(a)から(c)に移るにつれ、弾性部材40の上方部分41が、収容される上ベース部材11の第1の凹部16に充填される部分を小さくしている。すなわち、弾性部材40の上方部分41の後側面41bが上ベース部材11の第1の凹部16の後側面16bに接近し、弾性部材40とベース部材10とで形成される第1の空間部分18の大きさを小さくする。
【0078】
電気接続装置1が配線基板90に取付けられると、第2の突起53bが弾性部材40の下面に当接し、これを変形させる。この時、空間部分18の大きさが大きいほど、弾性部材40の変形が空間部分18に吸収され、それにより、第2の突起53bに対する弾性部材40からの反力が小さくなる。したがって、空間部分18の大きさが大きいほど、下部接触部53aの配線基板90の外部接点に対する接触圧が小さくなる。このことから、弾性部材40とベース部材10とで形成される空間部分18の大きさを変えることで、接触圧が容易に調整できることが理解される。なお、空間部分18の大きさを調整する場合、上述のような接近方法に限られるものではなく、弾性部材40の下方部分42の上面が上ベース部材11の第1の凹部16の底面に接近するようにしてもよい。また、このような接近方法と上述の接近方法と合わせた方法であってもよい。
【0079】
図14は、ベース部材10の形状、より具体的には、ベース部材10の上ベース部材11の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。該方法は、上記図13に示された方法と実質的に同じ原理を使っている。すなわち、ベース部材10と弾性部材40とで形成される空間部分18の大きさを変えることで、接触圧を調整している。すなわち、上ベース部材21の第1の凹部16の後側面16bが弾性部材40の上方部分41の後側面41bに接近し、弾性部材40とベース部材10とで形成される第2の空間部分18の大きさを小さくしている。なお、接触圧の調整動作は、図13の場合と同じであるので省略する。また、空間部分18の大きさを調整する場合、上述のような接近方法に限られるものではなく、上ベース部材11の第1の凹部16の底面が弾性部材40の下方部分42の上面に接近するようにしてもよい。また、このような接近方法と上述の接近方法と合わせた方法(図14(b’)参照)であってもよい。
【0080】
次に、図15ないし17は、被接触物としての半導体装置80および配線基板90に対するコンタクト50の摺動量(ワイピング量)を調整する方法を示している。より具体的には、図15ないし17は、コンタクト50の上部接触部51aおよび下部接触部53aの半導体装置80および配線基板90に対するそれぞれの前後方向の移動量を調整する方法を示している。コンタクトの摺動量の調整は、本実施例では、弾性部材40の形状、より具体的には、弾性部材40のスリット44の形状を変えることでコンタクト50の摺動量を調整し得る。
【0081】
図15は、図1ないし6に示される第1の実施例において説明された弾性部材40のスリット44の形状を有する電気接続装置1を示している。図15は、電気接続装置1が配線基板90に取付けられ、さらに半導体装置80が電気接続装置に装着されている状態を示す。
【0082】
図15に示される場合においては、コンタクト50の上部接触アーム51は、半導体装置80の押し下げにより、反時計回りに回転し、半導体装置80の外部接点をワイピングする。他方、コンタクト50の下部接触アーム53は、配線基板90の押し上げにより、同じく反時計回りに回転し、配線基板90の外部接点をワイピングする。
【0083】
図16には、弾性部材40のスリット44に関し、上方部分41に形成された第1の傾斜面44dおよび下方部分42に形成された第2の傾斜面41eがほぼ平行に上方に移動した形状を有する弾性部材40が示されている。言い換えれば、弾性部材40のスリット44は、第1の傾斜面44dが省略され、この部分は垂直の前側面44fとされ、第2の傾斜面41eが弾性部材40の上方部分41に位置するように形成されている。
【0084】
図16に示される場合においては、半導体装置80の押し下げられたとき、コンタクト50の上部接触アーム51は、図15の場合と同様、反時計回りに回転する。しかしながら、弾性部材40の第1の傾斜面44dが上昇し、弾性部材40が存在することより、コンタクトの回転量が規制される。したがって、半導体装置80の外部接点のワイピング量は小さくなる。他方、コンタクト50の下部接触アーム53は、配線基板90の押し上げにより、同じく反時計回りに回転する。この時、弾性部材40の第2の傾斜面44eは上昇し、弾性部材40が存在しないので、コンタクト50の下部接触アーム53は回転量が大きくなり、それに伴い、配線基板90の外部接点のワイピング量が大きくなる。
【0085】
図17には、弾性部材40のスリット44に関し、図16とは逆に、上方部分41に形成された第1の傾斜面44dおよび下方部分42に形成された第2の傾斜面41eがほぼ平行に下方に移動した形状を有する弾性部材40が示されている。言い換えれば、弾性部材40のスリット44は、第1の傾斜面44dが下方部分42に位置するように形成されるとともに、第2の傾斜面41eは省略され、この部分が垂直の後側面44gとされるように形成されている。
【0086】
図17に示される場合においても、半導体装置80の押し下げられたとき、コンタクト50の上部接触アーム51は、図15の場合と同様、反時計回りに回転する。しかしながら、弾性部材40の第1の傾斜面44eが下降し、弾性部材40が存在しないので、コンタクトの回転量が大きくなる。したがって、半導体装置80の外部接点のワイピング量も大きくなる。他方、コンタクト50の下部接触アーム53は、配線基板90の押し上げにより、同じく反時計回りに回転する。この時、弾性部材40の第2の傾斜面44fが下降し、弾性部材40が存在することになり、下部接触アーム53は回転量を規制され、それにより、配線基板90の外部接点のワイピング量は小さくなる。
【0087】
以上のことから、弾性部材40のスリット44の形状を変えることで、コンタクトの摺動量が容易に調整できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電気接続装置の全体分解斜視図である。
【図2】図1の電気接続装置の断面図を含む部分拡大斜視図である。
【図3】図1の電気接続装置を構成するベース部材の部分拡大斜視図であり、(a)は、ベース部材を構成する上ベース部材の断面図を含む部分拡大斜視図であり、(b)は、ベース部材を構成する下ベース部材の断面図を含む部分拡大斜視図である。
【図4】図1の電気接続装置を構成する弾性部材の断面図を含む部分拡大斜視図である。
【図5】図1の電気接続装置を構成するコンタクトの斜視図である。
【図6】被接触物がコンタクトに接触していない状態にある図1の電気接続装置の要部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る電気接続装置の図6と同様の要部断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係る電気接続装置の図6と同様の要部断面図である。
【図9】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、コンタクトの上部接触アームの形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図10】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、弾性部材の下方部分の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図11】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、ベース部材を構成する下ベース部材の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図12】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、コンタクトの下部接触アームの形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図13】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、弾性部材の上方部分の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図14】被接触物とコンタクトとの接触圧を調整する態様を説明するための図であり、ベース部材を構成する上ベース部材の形状を変えることで接触圧を調整する方法が示されている。
【図15】被接触物に対するコンタクトの摺動量を調整する態様を説明するための図であり、弾性部材のスリットの形状を変えることで摺動量を調整する方法が示されている。
【図16】被接触物に対するコンタクトの摺動量を調整する態様を説明するための図であり、弾性部材のスリットの形状を変えることで摺動量を調整する方法が示されている。
【図17】被接触物に対するコンタクトの摺動量を調整する態様を説明するための図であり、弾性部材のスリットの形状を変えることで摺動量を調整する方法が示されている。
【符号の説明】
【0089】
1 電気接続装置
10 ベース部材
11 上ベース部材
16 第1の凹部
18 第1の空間部分
21 下ベース部材
22 第2の凹部
28 第2の空間部分
40 弾性部材
41 上方部分
42 下方部分
44 スリット
50 コンタクト
51 上部接触アーム
51a 上部接触部
51b 第1の突起
53 下部接触アーム
53a 下部接触部
53b 第2の突起
60 ロック部材
70 押圧部材
80 半導体装置(第1の被接触物)
90 配線基板(第2の被接触物)
154、254 接触用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接触物および第2の被接触物の2つの被接触物を電気的に接続する電気接続装置であって、
前記第1の被接触物および前記第2の被接触物が装着されるベース部材、該ベース部材に保持される弾性部材、および該弾性部材に保持される複数のコンタクト、を備え、
前記ベース部材は、前記弾性部材を収容する収容凹部をそれぞれ有する上ベース部材と下ベース部材を含み、
前記弾性部材は、該弾性部材を上下に貫通し、前記複数のコンタクトをそれぞれ保持するスリットを含み、
前記複数のコンタクトそれぞれは、前記第1の被接触物に接触し得る上部接触部を有する上部接触アーム、前記第2の被接触物に接触し得る下部接触部を有する下部接触アームを少なくとも含み、
前記複数のコンタクトそれぞれの前記上部接触アームおよび下部接触アームは、前記弾性部材に当接しうるように構成されていることを特徴とする電気接続装置。
【請求項2】
前記下部接触アームは、前記下部接触部を有し、該下部接触アームから下方に突出する接触用突起を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の電気接続装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記上ベース部材に設けられた前記収容凹部としての第1の凹部、および該第1の凹部に対向して形成されている、前記下ベース部材に設けられた前記収容凹部としての第2の凹部、に収容されるとともに、その少なくとも一部は、前記上ベース部材と前記下ベース部材との間に上下に挟持されることを特徴とする請求項1または2に記載の電気接続装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、上方部分と下方部分を含み、該上方部分と下方部分は、前後にずれて形成されるとともに、該上方部分と下方部分の重なり合う部分に前記スリットが形成されており、
前記弾性部材の上方部分は、前記上ベース部材の前記第1の凹部に収容され、前記弾性部材の下方部分は、前記下ベース部材の前記第2の凹部に収容され、
前記弾性部材の前記上方部分の前方部分および前記下方部分の後方部分がそれぞれ前記上ベース部材と前記下ベース部材との間に上下に挟持されることを特徴とする請求項3に記載の電気接続装置。
【請求項5】
前記コンタクトの前記上部接触アームおよび前記下部接触アームそれぞれの先端に、前記弾性部材に当接し、これを押圧する第1の突起および第2の突起が設けられ、
該第1および第2の突起それぞれの有無および第1および第2の突起それぞれの突出量の変更により、前記弾性部材の押圧量をそれぞれ調整し得ることを特徴とする請求項1ないし4に記載される電気接続装置。
【請求項6】
前記弾性部材の上方部分を収容する前記上ベース部材の前記第1の凹部後方には第1の空間部分が設けられ、前記弾性部材の下方部分を収容する前記下ベース部材の前記第2の凹部前方には第2の空間部分が設けられ、
該第1および第2の空間部分それぞれの有無及び該第1および第2の空間部分それぞれの大きさの変更により、前記コンタクトの前記第1および第2の突起それぞれの前記弾性部材の押圧量をそれぞれ調整し得ることを特徴とする請求項1ないし5に記載される電気接続装置。
【請求項7】
前記弾性部材のスリットの形状を変更することにより、前記コンタクトの前記上部接触アームの前記上部接触部および前記下部接触アームの前記下部接触部の前後方向の移動量を調整し得ることを特徴とする請求項1ないし6に記載される電気接続装置。
【請求項8】
前記弾性部材のスリットは、上方開口部、下方開口部、上方開口部と下方開口部との間を上下に垂直に貫通する垂直部で形成され、
前記垂直部の前側面が前方上方に向って傾斜する第1の傾斜面および前記垂直部の後側面が後方下方に向って傾斜する第2の傾斜面を有していることを特徴とする請求項1ないし7に記載される電気接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−118220(P2010−118220A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289872(P2008−289872)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】