説明

電気掲示器

【課題】透明な太陽電池と透明な発光素子とをコンパクトに一体に組み合わせた電気掲示器を提供する。
【解決手段】内底に反射材4と蓄電回路3を設けてなるパッケージ2の開口内部に、透明回路及び透明発光素子からなる発光モジュール7と、透明回路及び透明太陽電池からなる光電変換モジュール8とを重合配置して形成するとともに、光電変換モジュール8の上面に表示フィルム6と表示保護材5を設けて電気掲示器1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池と発光素子を同一のパッケージ(筐体)に搭載して構成される電気掲示器に関する。詳しくは、蓄電手段を備え、災害発生などにより電力供給が停止している状況下で、或いは電力供給設備がない場所や同設備が近くにない箇所にも設置して利用することのできる、屋内外に設置される非常用や誘導用、案内用の表示器として好適な電気掲示器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示されるような、アモルファスシリコン太陽電池をから取り出される電力でLED素子を発光させる発光デバイスが知られている。
同図において、アモルファスシリコン太陽電池100は、インジウム−スズ酸化物(ITO)を透明なガラス基板101上に蒸着して透明電極(ITO電極)102を形成し、この透明電極102上にプラズマ成膜法を用いてp型(p層)、i型(i層)、n型(n層)の3層のアモルファスシリコン層103を形成し、前記n層の下面に金属電極104を設けて形成されている。そして、太陽光が入射すると、p層側に正電荷、n層側に負電荷が集まり、電荷の移動に伴い配線105を介して透明電極102と金属電極104に接続したLED素子106が通電し発光するようになっている。
【0003】
図5に示した発光デバイスは、アモルファスシリコン太陽電池を薄く形成できるものの、ガラス基板からの電極の取り出しが難しく、また、LED素子との接続配線も手作業で行わなければならず、生産性が低いという問題があった。
これを解消するべく、図6に示されるように、下面に電極110を配した透明な上基板111をアモルファスシリコン層112のp層に接するように設け、この上基板111の上面に形成されたパターン113にLED素子114を半田パンプ接続するとともに、上面に電極115を配したガラスエポキシ樹脂からなる下基板116をアモルファスシリコン112のn層に接するように設け、前記LED素子114に接続したパターン113と下基板116の電極115とを導電部材117で接続することにより、アモルファスシリコン太陽電池の表面にLED素子114を容易に実装し、一体に加工することができるように構成した発光デバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近時、透明な材料をエレクトロニクス機器に利用する技術開発が進み、太陽電池用の透明導電膜も実用化されつつある。
例えばアモルファスシリコン太陽電池については、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)基板のフッ素の膜中の量とSn原料に含まれる塩素の膜中残存量とを適正に制御することで、実用に耐え得る高透過率の透明導電膜が得られることが報告されている。また、シリコン系の太陽電池よりも安価な太陽電池として技術開発がされている色素増感太陽電池についても透明導電膜の最適化の研究がなされ、FTO膜と界面を形成する酸化チタンの状態に合わせてFTO膜を製膜するとともに、所定の粒径の酸化チタンをFTO膜上に製膜する必要があることが報告されている(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−140122号公報
【非特許文献1】白土、「太陽電池用透明導電膜の技術変遷」、電気学会誌、社団法人電気学会、平成19年11月、第127巻、第11号、p.735−738
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示した発光デバイスは、太陽電池とLED素子を簡易な作業で一体に接続することができるものの、太陽電池の受光面にLED素子を重ねて取り付けると受光面積が狭まって受光機能が低下することから、LED素子に比して受光面積が大きな太陽電池を用いなければならず、構成をコンパクトにすることができないという問題があった。
また、先述の通り、透明な材料をエレクトロニクス機器に利用する技術開発は行われているものの、透明な太陽電池と有機EL素子などの透明な発光素子とを組み合わせた複合発光デバイスの提案はされていないのが実状である。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、透明な太陽電池と透明な発光素子とをコンパクトに一体に組み合わせた電気掲示器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明の電気掲示器は、内底に反射材と蓄電回路を設けてなるパッケージの開口内部に、透明回路及び透明発光素子からなる発光モジュールと、透明回路及び透明太陽電池からなる光電変換モジュールとが重合配置して形成された構成を有することを特徴とする。
【0009】
前記構成の電気掲示器において、発光モジュールと光電変換モジュール間に蓄電回路と接続した中間透明電極を設けることができる。また、パッケージ内に重合形成された両モジュールの上部に、表示保護材と表示フィルムを重ねて設けることができる。
【0010】
前記構成において、発光モジュールを形成する発光素子とその負荷・制御回路、及び光電変換モジュールを形成する太陽電池とその負荷・制御回路は、パッケージの開口部と相対する発光素子表示面と電池受光面の部分については透明に形成し、それ以外の部分については不透明なパッケージの中に収納して、当該不透明な部分の電気的接続を通常の配線に用いられている線材や端子を用いることが、製作コストを抑え、同時に駆動時の電圧降下を防止するなどの観点から望ましい。
【0011】
両モジュールの回路は透明電極を含んで形成される。発光モジュールの発光素子には、LEDや有機EL又は無機ELなどの自発光素子が用いられる。発光モジュールと光電変換モジュールはともに透明な材料により形成されるものであり、パッケージ内でどちらを上下に配置しても構わないが、受光量確保の観点から、太陽電池である光電変換モジュールをパッケージの開口面側とするのが好ましい。
パッケージの底部に設ける蓄電回路は、外部の電気的設備には接続せずに、太陽電池の発電電圧を開口電圧で30V未満とし、且つ24V以下の作動電圧として、電気事業法で規定する電気工作物に含まれない構成とするのが好ましい。
反射材は蓄電回路上に設けられ、例えば古河電工の「MCPET」(登録商標、超微細発泡光反射板)が好適に用いられる。
表示保護材は、パッケージ内に配された部材を保護するための部材であり、例えば硝子やアクリル、ポリカーボネートなどの透明度が高い材料により形成され、パッケージの開口面内に設置される。表面に反射防止コーティング材をつけてもよい。部材の保護に支障がなければ、表示保護材は設置しなくてもよい。表示フィルムは透明なフィルムの他に、透過型液晶を利用してもよい。
【0012】
本発明の電気掲示器によれば、太陽光或いは室内照明光を透明太陽電池で受光し、これを電気に変換せしめて蓄電回路で電力貯蔵する一方、蓄電回路から電力供給を受けて透明発光素子を発光させる。発光素子が太陽電池による蓄電電力を電力源としているので、外部電源が不要であり、掲示器の設置コスト及び駆動コストを低廉に抑えることが可能である。
また、パッケージ内に上下に重合配置した太陽電池を含む光電変換モジュールと発光素子を含む発光モジュールはともに透明材料により形成してあるので、どちらのモジュールを上下に配置しても、太陽電池への太陽光の受光が制限を受けたり阻害されたりすることはなく、受光した光を効率良く蓄電することができ、また、太陽電池の受光面積を大きく確保する必要がなく、パッケージ内に光電変換モジュールと発光モジュールを一体に設けることで、配線が簡略化され、掲示器の構成をコンパクトにすることができる。上記構成に加え、シート型キャパシタや電池を用いることによりさらなる構造のコンパクト化が可能である。
【0013】
本発明の電気掲示器は、非常用や誘導用、案内用などの様々な情報を発光表示する灯具、表示器、サイン板などとして、太陽光や照明光を受光することが可能な屋内外の適宜な場所に設置して使用することが可能である。
例えば誘導灯として用いるときは本発明の電気掲示器を一つだけ設置し、これを夜間に点灯動作させることで誘導機能を果たすが、複数個の電気掲示器をマトリックス状或いは適宜な配置態様に並べて設置してもよい。その場合、各電気掲示器を外部制御回路に接続し、当該回路で各電気掲示器の点灯及び消点を制御するようにしてもよい。太陽光や照明光の受光領域を確保した上で、文字や絵その他の情報を表示した透光板と組み合わせ、これを透過照明する構成としてもよい。
前記透光板を透過照明する場合、特定の情報を表示する固定式の電気掲示器の構成となるが、発光モジュール内にLEDなどの発光素子を複数設け、これらを点灯及び消灯する制御回路を具備することで、表示を変化させる可変式の電気掲示器を構成することができる。表示の変化は、並設した各発光素子の点灯位置を制御することで、表示情報を変え、或いは表示色を変えたりすること(カラー表示)により行われる。前記の如く、複数の電気掲示器を並設して、これらにより表示される情報を変化させてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の電気掲示器の概略構成断面図、図2は図1におけるパッケッケージ内に重ねて配置されるモジュールの模式図、図3は本発明の他の実施形態の電気掲示器の概略構成断面図、図4は図3におけるパッケージ内に重ねて配置されるモジュールの模式図である。
【0015】
図1及び図2に示した形態の電気掲示器1は、合成樹脂製のパッケージ2の内底に蓄電回路3を設け、その上に光反射面を上方に向けて反射材4を重ねて設置し、パッケージ2の開口部2aの面内には、硝子やアクリル、ポリカーボネートなど適宜な透明材からなる表示保護材5と、透過型液晶からなる表示フィルム6とを重ねて設けるとともに、前記反射材4と表示フィルム6との間で上下に重ね合わさるように透明な材料からなる発光モジュール7と光電変換モジュール8とを形成してパッケージ2の開口部内に収納してある。
【0016】
図2に示されるように、発光モジュール7は、LEDやELなどからなる透明な発光素子7a及び透明導電膜により形成された負荷・制御回路及び電極などの透明回路7bからなり、反射材4の上面に重ねて形成してある。また、光電変換モジュール8は、アモルファスシリコン太陽電池などからなる透明な太陽電池8a及び透明導電膜により形成された負荷・制御回路及び電極などの透明回路8bからなり、前記発光モジュール7の上面に積層形成してある。透明太陽電池8aの上面には表示フィルム6を重合させてある。
【0017】
発光モジュール7は、その透明回路7bが図示されない配線により蓄電回路3と接続し、蓄電回路3から電力供給を受けて透明発光素子7aを発光せしめ、その点灯及び消灯を適宜に制御する構造に設けてある。また、光電変換モジュール8は、その透明回路8bが図示されない配線により蓄電回路3と接続し、パッケージ2の開口部2a内に入射し、表示保護材5と表示フィルム7を透過した太陽光を太陽電池8aで受光して電気に変換せしめるとともに蓄電回路3へと供給し、蓄電回路3において電力貯蔵がなされる構造に設けてある。
【0018】
また、図3及び図4に示した形態の電気掲示器1は、前記形態と同様な透明な光電変換モジュール8を反射材4の上面、透明な発光モジュール7を表示フィルム6の下面にそれぞれ形成し、両モジュールの間に中間電位となる透明電極9を形成して両モジュールをパッケージ2の開口部内に収納したものである。
【0019】
より詳しくは、発光モジュール7の透明回路7bを表示フィルム6の下面、光電変換モジュール8の透明回路8bを反射材4の上面にそれぞれ接合させ、透明太陽電池8aの上面と透明発光素子7aの下面の間で透明電極9を挟んで両モジュールを上下一体に形成し、図示されない配線により透明電極9を蓄電回路3の中間電位の端子に接続してある。このように中間電位となる透明電極9を透明回路7、8とは別体に設けて両モジュール間に形成することにより、透明回路7、8の回路構成が簡易となり、また、蓄電回路3との配線作業を簡略化することが可能である。
【0020】
なお、図示した形態は一例であり、本発明の電気掲示器は、利用用途や使用条件、設置条件などに応じて適宜な形態に構成することが可能である。LEDなどの発光素子が具備する光電変換機能を利用することにより、前記光電変換モジュール8の変換回路部分を省略した構成としてもよい。その場合、発光素子が受光し、光電変換された電荷を蓄電回路に蓄えるように回路が構成される。
【0021】
以上の如く構成される本発明の電気掲示器によれば、電気掲示器の表示内容はその用途により多種多様であるが、全ての情報を黒色や無表示(無発光)によって掲示することはなく、適宜な色表示及び白色表示での表示下で光が透過する。そして、その色表示及び白色表示の裏側にまで透過してくる光を太陽電池で受光及び蓄電して発光素子を発光させるが、不透明な太陽電池ではその配線が表示面に裏写りしてしまうことから、発光する部分と太陽電池の受光部分の両部を透明化することにより、表示に影響や支障を与えなることがなく、明瞭な情報の表示及び掲示が達成することができる。また、底面に達した光が反射材で反射する際にLED及びその配線の裏写りが発生するため、LED、太陽電池、及びそれらの配線の何れもが透明であることが必要でありまた好ましく、これらの技術を利用することで、構成がコンパクトで外光利用効率が高い掲示器を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の電気掲示器の概略構成断面図である。
【図2】図1におけるパッケッケージ内に重ねて配置されるモジュールの模式図である。
【図3】本発明の他の実施形態の電気掲示器の概略構成断面図である。
【図4】図3におけるパッケージ内に重ねて配置されるモジュールの模式図である。
【図5】従来の太陽電池とLED素子からなる発光デバイスの構成を示した図である。
【図6】従来の発光デバイスの他の例の概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 電気掲示器、2 パッケージ、2a 開口部 3 蓄電回路、4 反射材、5 表示保護材、6 表示フィルム、7 発光モジュール、7a 透明発光素子、7b 透明回路、8 光電変換モジュール、8a 透明太陽電池、8b 透明回路、9 透明電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底に反射材と蓄電回路を設けてなるパッケージの開口内部に、透明回路及び透明発光素子からなる発光モジュールと、透明回路及び透明太陽電池からなる光電変換モジュールとが重合配置した構成を有することを特徴とする電気掲示器。
【請求項2】
発光モジュールと光電変換モジュール間に蓄電回路と接続した中間透明電極が形成されてなる請求項1に記載の電気掲示器。
【請求項3】
パッケージ内に重合配置された両モジュールの上方であってパッケージの開口面内に表示保護材と表示フィルムとを重ねて設けてなる請求項1又は2に記載の電気掲示器。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−229975(P2009−229975A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77432(P2008−77432)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(390025737)株式会社新陽社 (11)
【Fターム(参考)】