説明

電気機器の取り扱い制限方法と装置

【課題】所定の取り扱いないしは操作が特定の者しかできないようにする。
【解決手段】電気機器側で外部信号源201からの特定の信号を非接触に受信している間、この受信信号に対応した電気機器の所定の取り扱いないしは操作を電気的に可能または不能にすることにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を取り扱う電気ポットや電気炊飯器などの電気調理器を始めとする電気機器一般の取り扱い制限方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、内容液を湯沸して保温し、あるいは飲料類の保温のみを行い、その時々の販売や分配、使用に供する電気ポット類は、家庭や職場はもとより、職場や学校の給食室、飲食店、パーティー会場、コンビニエンスストア、列車での車内販売など業務用にも使用されている。このような多様な使用状況にかかわらず、電気ポットでは使用の安全や機器の安全が一律に図られているだけである。
【0003】
電気ポット類を例にとれば、蓋体が不用意に開かないように閉じ状態にロックしておき、このロックを手動解除を伴なってしか開かないようにする。前傾時や転倒時に熱湯が吐出路や蒸気通路を通じて流出するのを阻止したり遅らせたりする。給湯キーを不能ないしは無効にしておくロック機能を設け、このロックを解除するキー操作をして初めて給湯キーの操作が有効となって吐出路を通じ内容液を吐出し給湯できるようにし、幼児などのいたずらや不用意な操作による給湯を防止する。異常過熱状態に至った時点で温度ヒューズが溶断し、電源を断つ。吐出口からの吸い飲みを防止する吐出口近傍での通路開放構造の採用といった配慮がなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開平8−215046号公報
【特許文献2】特開2001−112622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイン、酒、清涼飲料、果汁飲料のボトルなどではピルファープルーフキャップやシールなどにより、開封を伴なわない内容物の不正抜き取りと、異物混入に対する安全が図られている。しかし、電気ポット類や電気炊飯器などは長時間使用状態に置かれ、また、そのままで繰り返し使用されるもので、ボトル類のような安全策は講じられず、時として異物混入の事態が生じる。このようなことは、取り扱い者が特定し難い環境や、特定できない環境において発生しやすく、防止し切れない。
【0005】
また、電気ポットでの給湯ロックを解除しての給湯操作は必要条件が少なく、幼児のいたずらや不用意な操作によっても偶然給湯できてしまうことが考えられるし、沸騰キーが操作されて即時に高温蒸気が吹き出したり、蓋体のロックを解除した開き操作が行われてしまい高温蒸気が多量に出たり、万一にも転倒して熱湯が流出してしまうといった危険もあり得る。
【0006】
特に、電気ポット、電気炊飯器やホットプレートなどと称される電気調理盤などの電気調理器では蓋体の開閉に関して全く管理されていないのが現状であり、不正抜き取りや異物混入の機会を無くすことはできない。
【0007】
さらに、幼児のいたずらや不用意な操作は防止しきれず、知らない間に設定条件や設定モードが変わっていたりするし、携帯電話機では幼児のいたずらによって偶然相手先に掛かってしまうことも経験している。
【0008】
このような点に鑑み、本発明の目的は、所定の取り扱いないしは操作が特定の者しかできないようにする電気機器の取り扱い制限方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明の電気機器の取り扱い制限方法は、電気機器側で外部信号源からの特定の信号を非接触に受信している間、この受信信号に対応した電気機器の所定の取り扱いないしは操作を電気的に可能または不能にすることを特徴としている。
【0010】
このような構成では、特定の信号を持った外部信号源を所持している者が電気機器に近づきそれが受信されると、電気機器はその特定の信号に対応した取り扱いを可能または不能にするように制御し、特別な人為操作なしに、従って、意図的な操作の影響なしに、電気機器に近づいた特定の者に対しこの者が所持している外部信号源が持つ特定の信号に見合った取り扱いないしは操作を可能にしたり不能にしたりすることができる。
【0011】
このような方法は、外部信号源からの特定の信号を非接触に受信する受信手段と、この受信手段が外部信号源からの特定の信号を非接触に受信したとき、その受信信号に対応した電気機器の所定の操作を可能または不能にする制御手段と、を備えたことを特徴とする電気機器の取り扱い制限装置によって実現することができ、それには、外部信号源、受信手段の少なくとも1つをICタグとして簡易に実現でき、外部信号源としてのICタグは身分証明カードへの埋め込み、担当者標識や名札、担当者制服、装身具や集金かばん、名刺類、首掛けカードなどの必携物への埋め込みや添付、幼児の衣類や装身具への添付といった手法にて、特に負担を掛けるようなことなく簡易に、また確実に特定の者に所持させられる。
【0012】
この場合、制御手段が操作を可能または不能にする特定の信号の対象を設定、変更する手段を備えたものとすることができる。
【0013】
電気機器は開閉を伴い飲料や食品を出し入れする、湯沸し、調理、保温、保冷の少なくとも1つを行なう容器であり、可能にする所定の取り扱いないしは操作は容器の開閉である、さらなる構成では、
飲料や食品を収容して湯沸し、調理、保温、保冷の少なくとも1つを行なう容器において、特定の信号を持った外部信号源を所持している者だけに限って容器を開閉できるようにすることができる。
【0014】
錠にて容器を閉じ状態にロックできるようにし、電源投入中に外部信号源からの特定の信号を非接触に受信しているとき錠を電気的に解錠しロックを解除する、さらなる構成では、
特定の信号を受信したときの制御手段の制御によってのみ解錠される錠にて容器を閉じ状態にロックすることにより、特定の信号を持った外部信号源の所持者だけに限って容器を開き操作できるようにすることができる。
【0015】
錠にて容器を閉じ状態にロックできるようにし、電源投入時に非接触に受信した外部信号源からの特定の信号を、以降の開き操作を可能にする特定の信号に設定する、さらなる構成では、
特定の信号を受信したときの制御手段の制御によってのみ解錠される錠にて容器を閉じ状態にロックして、特定の信号を持った外部信号源の所持者だけに限って容器を開き操作できるようにするのに、電気機器に電源が投入されていない間、前記錠による容器の閉じ状態へのロックを行っておくことで、電源が投入されない未使用状態での特定の信号を持った外部信号源を所持していない者が容器を開くことを阻止しながら、特定の信号を持った外部信号源を所持した者が電気機器の電源を投入することによって、その者が所持している外部信号源からの信号を特定の信号に設定されるので、以降その外部信号源を所持して電源を投入した者、およびこの者と同一の信号を持った外部信号源を所持している者に限って容器を開けられるようにすることができる。
【0016】
特定の信号を持った外部信号源の所持者だけが開き操作できる旨を表示部に表示する、さらなる構成では、
特定の信号を持った外部信号源を所持しない者は開き操作できないことを外部に告げ、また、開き操作できないことが故障でないことを外部に告知することができる。
【0017】
不能にする特定の操作は、キーまたはおよびスイッチの操作、開き操作、閉じ操作の少なくとも1つである、さらなる構成では、
幼児などの理解力のない者に特定の信号を持った外部信号源を所持させておけば、いたずら操作や不用意な操作があっても電気機器側が応動しないようにすることができる。
【0018】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の特徴はそれ単独で、あるいは種々な組み合わせで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電気機器の取り扱い制限方法と装置によれば、特定の信号を持ったICタグなどの外部信号源を所持している者に限って、特別な人為操作なしに、従って、意図的な操作の影響なしに、受信した特定の信号に見合った取り扱いないしは操作を可能にしたり不能にしたりし、不特定な者による不適正な取り扱いや操作、幼児など特定な者による不具合な取り扱いや操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る電気機器の取り扱い制限方法と装置の実施の形態について、図1〜図3を参照しながら詳細に説明し本発明の理解に供する。
【0021】
本実施の形態の電気機器は図1に示すような電気ポットの場合の一例である。しかし、これに限られることはなく、マイクロコンピュータなどの制御装置によって動作制御を行う種々な電気機器一般に本発明は適用して有効である。図1に示す電気ポットは、ステンレス鋼製の内筒4と外筒5により構成される金属製の真空二重容器3を断熱内容器として採用し、内筒4内の内容液を加熱するように真空二重容器3の一重底部3cに当てがったヒータ11を備え、これらを外装ケース2に収容して器体1を構成している。しかし、真空二重容器3の胴部が外部に露出して器体1を構成するようにしたものも提供されている。真空二重容器3の一重底部3cには内容液を器体1外に吐出する吐出路25が接続され、この吐出路25は真空二重容器3と外装ケース2との間を立ち上がり、器体1の前部に吐出口25dが臨んでいる。吐出路25の途中には電動ポンプ26が設けられ、内容液を電動にて吐出できるようにしている。これに併せ、真空二重容器3の口部3aに通じる器体1の開口12を開閉できるように覆う蓋体13に手動のベローズポンプ50が設けられ、押圧板61による押圧操作で真空二重容器3内に加圧空気を吹き込み内容液を加圧して吐出路25を通じ押し出し外部に吐出させられるようにしている。
【0022】
吐出路25の立ち上がり部25aは透明管としてそこでの液量が器体1の図2に示す液量表示窓62から透視できるようにしている。これに併せ、吐出路25の立ち上がり部25aの上部に吐出流によって回転する羽根125aとこの羽根125aの回転数を検出するフォトカプラ125bとからなる流量センサ125を設け、吐出の開始、終了、吐出流量、吐出量、残量などが自動的に検出できるようにしている。また、吐出路25の吐出口25dを有した逆U字管25cには器体1が前傾や転倒したときに吐出路25を通じた内容液の流出を止水する転倒時止水弁134a、前傾時止水弁134bを内蔵し、図示しないが吸出し防止用の上部への開放部を有している。
【0023】
また、器体1に収容した操作部や初期設定にて設定された動作モードに従った動作制御を行うのに図1、図3に示すようなマイクロコンピュータ34aを搭載した制御基板34を図1に示すように縦置きするなどして設けているが、これもハード回路を含めた種々な機器を採用した制御手段とすることができるし、どのように設置してもよい。操作部は器体1の上端部前方へ例えば嘴状に突出した突出部31の上面に設けた操作パネル32で構成してあり、その内側に設けられる操作基板33上の各種スイッチ類を、操作パネル32に一体形成した樹脂ばねや別体に設けられたキー部材による操作手段によって個々に押動してオン操作できるようにしているが、これも、本発明の本質的なものではなく具体的な構成は特に問うものではない。マイクロコンピュータ34aは真空二重容器3内の内容液温度を検出する内容器センサ29からの温度信号の基に湯沸しや通常保温、通常保温よりも低い温度での省エネ保温などの制御を行うようにしている。内容器センサ29は真空二重容器3におけるヒータ11を当てがっている一重底部3cの中央に、個別に当てがってヒータ11からの熱影響なしに内容液温度を検出しやすくしてある。なお、省エネ保温としては加熱を行わないで断熱容器である真空二重容器3の保温力に頼った魔法瓶保温をも選択することができる。
【0024】
肩部材6の後部の蓋体軸受部122には蓋体13に設けたヒンジピン120を着脱できるように受け入れて軸受する開放部122aと、この開放部122aをばね123の付勢で閉じるストッパ124を設けてあり、ストッパ124を開にすると蓋体13を半開きにした状態でヒンジピン120を蓋体軸受部122から蓋体13を伴い出し入れでき、これが蓋体13の着脱となる。また、蓋体13は既述し図1、図2に示すように真空二重容器3の口部3a内への進入部13aを有し、口部3aは蓋体13が開閉されるときに進入部13aが描く包絡線に対する最近接位置にあるようにしている。このように、蓋体13の一部を進入部13aとして真空二重容器3の口部3a内への進入を図ることによって、口部3aから熱が逃げるのを邪魔して保温力を高めるのと同時に、蓋体13に設ける蒸気通路225や手動ポンプであるベローズポンプ50を収容するなどで蓋体13に必要となる大きな容量を十分に確保しながら器体1外部への膨らみを抑えられる。
【0025】
また、蓋体13の前記進入部13aの基部まわりには蓋体13と進入部13aに当てがった金属製の内蓋体126との間に挟み込んだシール部材127が設けられ、口部3aの天面内周側半部ないしは天面内周側半部と口部3aの内周のコーナ部に圧接して口部3aを閉じるようにしている。これにより、満水位101と進入部13aとの間の蒸気通路225の内側開口225aを内容液が閉じないための安全空間に位置する空気が口部3aよりも外部へ大きく広がって熱が逃げやすくなるのを防止するので、保温力が向上する。
【0026】
蓋体13は真空二重容器3からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路225が形成され、蓋体13の真空二重容器3内に面する位置の内側開口225aと、外部に露出する外面に形成された外側開口225bとの間で通じるように形成されている。蒸気通路225の途中には、器体1が横転して内容液が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて、外側開口225bに至るのを遅らせる安全経路225cを設けてある。これにより、器体1が横転して内容液が蒸気通路225を通じて外部に流出するまでに器体1を起こすなどの処置ができるようになる。また、蒸気通路225には器体1の横転時に、蒸気通路225に進入しようとし、あるいは進入した内容液が先に進むのを阻止するように自重などで働く転倒時止水弁225dが適所に設けられている。図示する実施例では内側開口225aの直ぐ内側の一か所に設けてある。
【0027】
蓋体13の前部には閉じ位置で肩部材6側の係止部19に係合して蓋体13を閉じ位置にロックするロック部材21が設けられ、蓋体13が閉じられたときに係止部19に自動的に係合するようにばね22の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。これに対応して蓋体13にはロック部材21を後退操作して前記ロックを解除するロック解除部材23が設けられている。ロック解除部材23は図1に示すように軸24によって蓋体13に枢支されたレバータイプのものとされ、前端23aを親指などで押し下げて反時計回りに回動させることでロック部材21をばね22に抗して後退させてロックを解除し、続いてロック解除操作で起き上がった後端23bを他の指で引き上げることによりロックを解除された蓋体13を持ち上げこれを開くことができる。
【0028】
断熱材131はその底部材に支持される位置から、肩部材6の開口12の傾斜段部12aの内側まで真空二重容器3よりも十分に高く立ち上がって設けられ、真空二重容器3の真空空間63内にはその回り込み部から口部3aまで立ち上がる銅箔132を内蔵して保温効率をさらに高めている。
【0029】
なお、操作パネル32は図示しないが、例えば、中央部に設定保温温度や現在温度、現在動作モード、あるいは危険報知や必要操作の促しなどを画面表示する液晶表示部、そのまわりに貯湯内容液を吐出して給湯を行う吐出キー、吐出キーによる吐出操作をロックまたはロック解除するロック・解除キー、省エネモードを手動設定する省エネキー、通常保温、省エネ保温中に再沸騰を行う再沸騰キー、通常保温モードでの98度保温や90度保温の別、タイマ設定時間の別などを選択する選択キー、吐出操作があったときの吐出量を設定する計量カップキー、および設定数値をアップダウンするアップキー、ダウンキーを有している。また、ランプ表示としてはロック解除ランプ、吐出ランプ、省エネランプなどがLEDなどを利用して設けてあり、内側の操作基板33と協働して機能する。
【0030】
ところで、このような電気ポットでは既述したように、不特定な者による不具合ないしは不適正な取り扱いや操作、幼児など特定な者による不具合な取り扱いや操作が行われる可能性がある。これに対応するのに本実施の形態では、特に、図3に示すような外部信号源201からの特定の信号を受信手段200にて受信している間、マイクロコンピュータ34aによってその信号に対応した電気ポットにおける所定の取り扱いないしは操作を可能または不能にする制限方法を採用している。このような方法によると、例えば、特定の信号を持った外部信号源201を所持している者が電気ポットに近づくと受信手段200はその特定の信号を非接触に受信し始め、接近度が高まるにつれ受信レベルが高くなる。そこで、マイクロコンピュータ34aの側で受信レベルが前記所持者が電気ポットを取り扱いが可能な接近度に対応した所定のレベルに達したときに、受信した特定の信号に対応した取り扱いを可能または不能にする制御をすることになり、特別な人為操作なしに、従って、不特定な者による意図的な操作の影響なしに、受信した特定の信号に見合った取り扱いないしは操作を可能にしたり不能にしたりすることができる。
【0031】
このような特定の取り扱いや操作が可能となる外部信号源201の所持は、例えば、家庭などでは通常、不具合ないしは不正な操作が行われるようなことは無いと考えられるのでどのような取り扱いや操作に対しても不要としてよい。しかし、幼児などの不理解な者による不具合な取り扱いや操作に対してはそれを不能とする信号を持った外部信号源201を所持させておくと本人の理解や本人に対する特別な管理、監視なしに対応でき好適であり、設定値や設定モードが変わったりするような不具合を特に監視することなく防止できるし、熱湯が吐出されてしまったり、蓋体13が開かれて万一にも器体1が転倒し熱湯が流出したりする危険を確実に防げる。
【0032】
職場、社内や学校の食堂、学校給食、コンビニエンスストアの給湯コーナ、フリードリンクコーナ、パーティー会場など、内容物の使用や飲用は自由であるが、内容物の入れ換えや追加投入など電気ポットの取り扱いに目が届かないことがあるような環境では、万一にも異物の混入などの不具合な取り扱いが行われる可能性が否定し切れないことから、1人または複数の取り扱い担当者や取り扱い責任者、コンビニエンスストアの従業者といった特定の者だけが特定の信号を持った外部信号源201を所持して内容液の入れ換えや追加投入ができるようにするのが好適である。また、幼児や子供が行き来するときのいたずらや不用意に触れるなどにより設定値や設定モードが変更される可能性のある環境においても特定の信号を持った外部信号源201の所持者に限って操作できるようにしておくことも有効となる。これらのことは、コーヒや紅茶などを販売するのに取り扱う列車や飲食店においても同様であるが、内容物が有償の商品であることから、担当者、責任者、従業員などの特定の者以外による不正な抜き取りや吐出が行えないようするといったさらなる制限を行なうことも有益である。
【0033】
このような方法は、既述したように、外部信号源201からの特定の信号を非接触に受信する受信手段200と、この受信手段200が外部信号源201からの特定の信号を非接触に受信したとき、その受信信号に対応した電気ポットの所定の操作を可能または不能にするマイクロコンピュータ34aとを備えたものとすればよく、外部信号源201、受信手段200の少なくとも1つをICタグとして簡易に実現でき、外部信号源201としてのICタグは身分証明カードへの埋め込みによるICカード化、担当者標識や名札、担当者制服、装身具や集金かばん、名刺類、首掛けカードなどの必携物への埋め込みや添付、幼児の衣類や装身具への添付といった手法にて、特定者に特に負担を掛けるようなことなく簡易に所持させられる。なお、ICタグとするには読み書きできるものがあり、メーカ側でもユーザ側でも特定の信号を持たせることができ、電気ポットの操作パネル32での暗証コードを伴なうID操作によってマイクロコンピュータ34aを通じ設定できるようにすると、ユーザ側での設定に便利である。併せ、マイクロコンピュータ34aが操作を可能または不能にする制御の根拠とする受信信号の対象を操作パネル32にて設定、変更できるようにすることもできる。
【0034】
電気ポットのように開閉を伴い食品を出し入れする容器タイプであるとき、特定の信号の受信によって可能にする所定の取り扱いないしは操作を、容器、つまり本実施の形態では器体1の開閉とすることで、特定の信号を持ったICタグなどの外部信号源201を所持している者だけに限って器体1の蓋体13を開閉できるようにすることができる。このような制御は、蓋体13が閉じられると図1に示すようなばね202aとこのばね202aによって係合側に付勢された閂202bとにより蓋体13を閉じ状態に機械的であるが閂202bのばね202aに抗し押し退けられた後の復帰動作で自動的にロックし、このロックは閂202bをばね202aに抗して後退させるソレノイド202cなどを利用して電気的にのみ解錠できる錠202を採用することで実現する。
【0035】
このように、蓋体13が閉じられると錠202が蓋体13を閉じ状態に機械的に自動ロックするようにすると、電気ポットに電源が投入されていない状態で特定の者以外が蓋体13を開けることを阻止することができ、電源の投入か、補助電源かによって、特定の信号を持った外部信号源201を所持している者の接近によってその特定の信号を受信手段200が非接触にて受信したとき、マイクロコンピュータ34aか補助制御手段かによって錠202を電気的に解錠することで、水や飲料を投入し使用を開始させられる。これが電気ポットへの電源投入によるのでは、特定の者でも電源を投入しないと蓋体13を開けられないし、電源を投入しっ放しで水や飲料を投入するのは危険であるので、蓋体13を開いた後、電源を落す作業をすることになるのでやや不便となる。従って、上述した補助電源を用いる手法が便利となる。
【0036】
このように補助電源を用いる場合、電源投入の有無にかかわらず特定の者以外が蓋体13を開けられなくすることができるし、受信手段200と錠202を解錠する補助制御手段とを含めたICタグブロックなどとしてマイクロコンピュータ34aなどの主制御装置に並設するようにもできる。
【0037】
錠202をマイクロコンピュータ34aなどの主制御装置にて解錠させる方式で採用するには、電源投入中は当然のことながら、受信手段200が外部信号源201からの特定の信号を非接触に受信しているとき錠202を電気的に解錠しロックを解除するようにするので、受信手段200が特定の信号を受信したときのマイクロコンピュータ34aの制御によってのみ錠202を解錠して、特定の信号を持った外部信号源201の所持者だけに限って蓋体13を開き操作できるようにすることができる。
【0038】
また、錠202にて蓋体13を閉じ状態に機械的にロックできるようにするのに、電源投入時に受信手段200が非接触に受信した外部信号源201からの特定の信号を、マイクロコンピュータ34aが以降の開き操作を可能にする特定の信号に設定するような制御もできる。このようにすると、電気ポットに電源が投入されていない間、前記錠202による蓋体13の閉じ状態へのロックを行っておくことで、電源が投入されない未使用状態での特定の信号を持った外部信号源201を所持していない者が蓋体13を開くことを阻止しながら、特定の信号を持った外部信号源201を所持した者が電気ポットの電源を投入することによって、その者が所持している外部信号源201からの信号を特定の信号に設定されるために、以降その外部信号源201を所持して電源を投入した者、およびこの者と同一の信号を持った外部信号源201を所持している者に限って蓋体13を開けられるようにすることができる。従って、特定の者以外による異物投入の機会を無くし、万一の場合の責任の所在を明確にすることができる。
【0039】
もっとも、錠202の採用は蓋体13を閉じ状態にロック、ロック解除する先に説明したロック部材21、ロック解除部材23は省略することはできる。しかし、錠202が解錠しているときに器体1が転倒して蓋体13が開いてしまうような不都合を解消するには必須となるので省略しない方が使用の安全が図れる。また、特定の信号を持った外部信号源201を所持した者の接近による特定の信号を受信手段200が受信したときに、即時に錠202を解錠するのではなく、その所持者による所定の解錠操作、解錠指令操作、ID操作を伴なう解錠指令操作があるのを待ってから錠202を解錠するようにして、錠202が不用意に解錠されることが不便や問題を来す場合に有効となる。
【0040】
以上のような開き操作の制限の制御は、電気ポットの外、蓋体を持った電気炊飯器や電気調理盤などの電気調理器やホテルパンなどで代表される電気ウオーマなどにも同様に適用して有効であるし、キーやスイッチの操作を可能にしたり不能にしたりする制御は電気機器一般に適用して有効である。
【0041】
このような取り扱いや操作の制限制御において、制限を電気調理器を取り扱える者、内容物の取り扱いだけができる者、内容物は取り扱えず電気調理器の操作だけができる者というように、それらの者が所持している外部信号源201が持っている信号の種類を変えることで、受信手段200が受信した信号の種類によって取り扱いや操作の制限の内容に違いを持たせて、複数の職責に対応しまたそれを明確にすることもできる。この場合、図3に示すIDカード201aなどの職責別の身分証に異なった信号を持ったICタグを外部信号源201として付帯させるのが好適である。
【0042】
また、図3に示すようにバックアップ電源75を持った記憶手段76を設け、外部信号源201を所持してそれが持つ信号に見合った取り扱いや操作をした信号やその信号に対応した所持者を記憶して履歴を残すと、業務管理などに利用できる。
【0043】
また、電源投入時の錠202の解錠回数や蓋体13の開閉を検出する図示しない蓋体センサなどによる蓋体13の開閉回数を記憶し、かつ読み出せるようにすれば、消費量や売上などを大まかに管理できる。しかも、消費による残量が少なくなったような場合、現場から、あるいは記憶内容を通信などで管理している場から、それに対応できる外部信号源201を所持している作業者に携帯電話などで通知し作業を促すこともできる。
【0044】
さらに、操作パネル32の表示部などで特定の信号を持った外部信号源201の所持者だけが開き操作できる旨を表示するようにすると、特定の信号を持った外部信号源201を所持しない者は開き操作できないことを外部に告げ、また、開き操作できないことが故障でないことを外部に告知することができる。
【0045】
ここで、図3に示すマイクロコンピュータ34aによる制御例について説明すると、図4に主な制御のメインルーチンを示しているように、電源オンによって初期設定が行われた後、各種センサや操作による入出力の処理が行われる。次いで、入出力およびそれに伴う動作制御に関した表示処理が行われる。続いて、外部信号源201からの外部信号の入力処理を行った後、外部信号入力処理による許可や不許可の制御に従い、初期沸騰や再沸騰を図る沸騰処理、98℃や90℃での通常保温や、それよりも低く、加熱停止をも含む手動設定および設定での省エネ保温を行う保温処理が行われる。さらに、導出操作による導出処理、その他の処理が行われる。そこで、何らかの異常による異常信号がなく、電源がオフされない限り、それ以降、入出力処理以下の処理が繰り返される。
【0046】
図4の外部信号入力処理のサブルーチンの具体例は図5に示す通り、外部信号Xが入力され、それが電源投入時であると、それが電気ポットの基本的な取り扱いに当ることから、その外部信号Xを少なくとも蓋体13の錠202によるロックを解錠できる蓋体解錠の特定信号に設定して、記憶し、蓋体13の錠202を解錠する。以降電源投入時でない外部信号Xの入力がある都度そのまま解錠する。外部信号Xの入力にて解錠した後、および外部信号Xでない外部信号Yが入力したとき、外部信号X、Y別に予め設定されている取り扱い、操作を許可してリターンする。また、外部信号Zの入力であるとき、幼児などの不理解者対応として外部信号Zに対応した取り扱い、操作の不許可を行ってリターンする。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は各種電気機器の不特定な者による不適正な取り扱いや操作、幼児など特定な者による不具合な取り扱いや操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気ポットの1つの例を示す前後方向での断面図である。
【図2】図1の電気ポットの半部を断面して見た正面図である。
【図3】図1の電気ポットの制御回路の主なブロック図である。
【図4】図3の制御回路による主な動作制御の例を示すメインルーチンのフローチャートである。
【図5】図4のメインルーチンにおける外部信号入力処理サブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 器体
2 外装ケース
3 真空二重容器
11 ヒータ
13 蓋体
32 操作パネル
34 制御基板
34a マイクロコンピュータ
200 受信手段
201 外部信号源
201a ICカード
202 錠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器側で外部信号源からの特定の信号を非接触に受信している間、この受信信号に対応した電気機器の所定の取り扱いないしは操作を電気的に可能または不能にすることを特徴とする電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項2】
電気機器は開閉を伴い飲料や食品を出し入れする、湯沸し、調理、保温、保冷の少なくとも1つを行なう容器であり、可能にする所定の取り扱いないしは操作は容器の開閉である請求項1に記載の電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項3】
錠にて容器を閉じ状態にロックできるようにし、電源投入中に外部信号源からの特定の信号を非接触に受信しているとき錠を電気的に解錠しロックを解除する請求項2に記載の電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項4】
錠にて容器を閉じ状態にロックできるようにし、電源投入時に非接触に受信した外部信号源からの特定の信号を、以降の開き操作を可能にする特定の信号に設定する請求項2に記載の電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項5】
特定の信号を持った外部信号源の所持者だけが開き操作できる旨を表示部に表示する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項6】
不能にする特定の操作は、キーまたはおよびスイッチの操作、開き操作の少なくとも1つである請求項1に記載の電気機器の取り扱い制限方法。
【請求項7】
外部信号源からの特定の信号を非接触に受信する受信手段と、この受信手段が外部信号源からの特定の信号を非接触に受信したとき、その受信信号に対応した電気機器の所定の操作を可能または不能にする制御手段と、を備えたことを特徴とする電気機器の取り扱い制限装置。
【請求項8】
制御手段が操作を可能または不能にする特定の信号の対象を設定、変更する手段を備えた請求項7に記載の電気機器の取り扱い制限装置。
【請求項9】
外部信号源、受信手段の少なくとも1つがICタグである請求項7、8のいずれか1項に記載の電気機器の取り扱い制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61795(P2008−61795A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242406(P2006−242406)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】