説明

電気活性材料が内部に配置された重合性非晶質母材のパターン化方法および材料

【課題】重合性非晶質母材を前記母材に配置された発光材料など、電気活性材料でパターン化するための材料および方法、並びに前記材料および方法を用いて形成された素子を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法において、転写層がドナー基材上に溶液塗布される。前記転写層が、発光材料が内部に配置された重合性非晶質母材を含む。次に、前記転写層が、受容体上に選択的にパターン化される。次に、重合性非晶質母材が重合される。パターン化方法の例には、レーザ熱転写またはサーマルヘッド転写などがある。方法および関連材料を用いて、例えば、有機エレクトロルミネセンス素子を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
材料をドナーシートから受像基板にパターンの通り熱転写することが、多種多様な用途のために提案されている。例えば、材料を選択的に熱転写して、電子表示および他の素子に有用な要素を形成することができる。具体的には、カラーフィルター、黒色母材、スペーサ、偏光子、導電層、トランジスタ、燐光材料、および有機エレクトロルミネセンス材料の選択的な熱転写が、すべて提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、重合性非晶質母材を前記母材に配置された発光材料など、電気活性材料でパターン化するための材料および方法、並びに前記材料および方法を用いて形成された素子に関する。本発明の1つの実施態様は、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法を含める。転写層が、ドナー基材上に配置される(例えば、溶液塗布される)。転写層は、発光材料が内部に配置された重合性非晶質母材を含む。転写層の一部分が、受容体に選択的に熱転写される。次に、受容体に転写された転写層の一部分の重合性非晶質母材が重合される。任意に、発光材料または発光材料の成分もまた重合性であり、重合性非晶質母材と重合する。
【0003】
別の実施態様は、基材および転写層を備えるドナーシートである。転写層は、重合性非晶質母材および前記母材に配置された発光材料を含む。転写層を、ドナーシートから、隣接して配置された受容体に選択的に熱転写することができる。ドナーシートはまた、光−熱変換層、中間層、下層、または1つ以上の付加的な転写層などの他の層を含むことができる。
【0004】
更に別の実施態様は、第1の電極、第2の電極、および前記第1および第2の電極の間に配置された発光層を有するエレクトロルミネセンス素子である。発光層は、発光材料が内部に配置された、重合有機母材を含む。
【0005】
本発明は、添付した図面と併せて本発明の様々な実施態様の以下の詳細な説明によって、より完全に理解することができる。
【0006】
本発明は様々な変更および代替形態が可能であるが、それらの特定のものが図面の例によって示され、詳細に記載される。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施態様に限定されないことは、理解されるはずである。反対に、本発明は、本発明の精神および範囲内にあるすべての改良、同等物および代替物に及ぶものとする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】有機エレクトロルミネセンス表示構造体の略側面図である。
【図2】本発明による、材料を転写するためのドナーシートの略側面図である。
【図3】本発明による有機エレクトロルミネセンス表示の略側面図である。
【図4A】有機エレクトロルミネセンス素子の第1の実施態様の略側面図である。
【図4B】有機エレクトロルミネセンス素子の第2の実施態様の略側面図である。
【図4C】有機エレクトロルミネセンス素子の第3の実施態様の略側面図である。
【図4D】有機エレクトロルミネセンス素子の第4の実施態様の略側面図である。
【図4E】有機エレクトロルミネセンス素子の第5の実施態様の略側面図である。
【図4F】有機エレクトロルミネセンス素子の第6の実施態様の略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、重合性非晶質母材を前記母材に配置された電気活性材料で熱パターン化するための材料および方法を考察する。かかる方法および材料を用いて、電気活性有機材料、特に、発光ポリマーまたは他の発光分子を含む有機電子素子および表示などの素子を形成することができる。製造できる有機電子素子の例には、有機トランジスタ、太陽電池、有機発光ダイオード(OLED)などの有機エレクトロルミネセンス(OEL)素子などがある。更に、これらの材料および方法はまた、非感熱印刷、パターン化の他、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、およびフォトリソグラフィパターン化などの転写方法に有用な場合がある。
【0009】
用語「活性」または「電気活性」は、有機電子素子中の層または材料を指すために用いられるとき、素子の動作中に機能する、例えば、電荷キャリア(例えば、電子または正孔)を伝導するかまたは半伝導し、光を生じ、素子構造体の電子的性質を増強するかまたは調整する層または材料を示す。用語「非活性」は、上に記載したような機能に直接に寄与しないが、有機電子素子の組立または製造または機能性にいくらか間接的に寄与することがある材料または層を指す。
【0010】
有機エレクトロルミネセンス(OEL)表示または素子は、有機発光材料を備えるエレクトロルミネセンス表示または素子を指し、その発光材料には、小分子(SM)発光体(例えば、非ポリマー発光体)、SMドープトポリマー、発光ポリマー(LEP)、ドープトLEP、混合LEP、または別の有機発光材料などがあり、単独で提供されるか、またはOEL表示または素子内で機能性または非機能性である何れかの他の有機または無機材料と共に適用される。
【0011】
R.H.フレンドら著(「共役ポリマーのエレクトロルミネセンス(“Electroluminescence in Conjugated Polymers”)」Nature、397、1999年、121)には、一方の電極から電子を、他方の電極から正孔を注入すること、反対電荷をもつキャリアの捕捉(いわゆる再結合)、およびこの再結合プロセスによって生み出された励起電子−正孔状態(励起子)の放射減衰を含めて、エレクトロルミネセンスの機構の1つが記載されている。
【0012】
OEL素子の材料は小分子(SM)、または事実上、ポリマーであってもよい。SM材料には、電荷輸送性、電荷ブロッキング性、半導電性、およびエレクトロルミネセンス有機および有機金属化合物などがある。概して、SM材料は、真空蒸着または蒸発させられて素子中に薄い層を形成することができる。実施において、所与の材料が一般に所望の電荷輸送およびエレクトロルミネセンスの性質の両方を有するわけではないので、典型的には、SMの多層が効率的なOELを製造するために用いられる。
【0013】
LEP材料は典型的には、溶液処理のために好ましくは十分なフィルム形成性質を有する共役ポリマーまたはオリゴマー分子である。通常、LEP材料を利用するには、LEP材料の溶剤溶液を基板上に流延し、溶剤を蒸発させ、それによってポリマーフィルムを残す。LEPフィルムを形成する他の方法には、インクジェット噴射および押出塗布などがある。あるいは、LEPを、前駆種の反応によって基板上にin situ形成することができる。効率的なLEPランプは、1、2以上の有機層で構成されている。
【0014】
OELはまた、1つ以上の分子ガラスで製造することができる。分子ガラスは、有機系、低モル質量の非晶質フィルム形成化合物を説明するために用いられる用語である。J.V.グラズレビシウス(J.V.Grazulevicius)、P.ストローリーグル(P.Strohriegl)著、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(“Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses”)」、Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices、H.S.ナルワ(H.S.Nalwa)編、10、2001年、233に記載されているような正孔輸送、電子輸送、二極分子ガラスが周知である。分子ガラスの溶解度は、多層電子構造を通常に製造する方法を制限することがある。例えば、分子ガラスの正孔輸送層の上に発光ポリマー層を溶液塗布することは、2層の材料が同じ溶剤に可溶性である場合、可能でないことがある。例えば、溶液塗布した正孔輸送層および蒸着した発光層および電子輸送層を有する素子が、以前、形成されている。
【0015】
素子構造体の例として、図1は、素子層110および基材120を備えるOEL表示または素子100を示す。他の何れかの適した表示成分もまた、表示100と共に備えてもよい。任意に、電子表示、素子、またはランプと共に使用するのに適した付加的な光学要素または他の素子を、任意の要素130によって示すように表示100と視認者位置140との間に設けることができる。
【0016】
図示した実施態様と同様ないくつかの実施態様において、素子層110は、視認者の位置140の方向に基材を通して発光する1つ以上のOEL素子を備える。視認者の位置140は、それが実際の人間の観察者、スクリーン、光学成分、電子素子等の何れであるかを問わず放射された光の所期の行先を示すために一般的に用いられる。他の実施態様において(図示しない)、素子層110が、基材120と視認者の位置140との間に配置される。基材120が素子層110によって放射された光を透過するとき、および透明な導電性電極が素子の発光層と基材との間に素子内に配置されるとき、図1に示した素子配置(「下面発光型」と呼ばれる)が用いられてもよい。基材120が素子層によって放射された光を透過または透過しない時および基材と素子の発光層との間に配置された電極が素子によって放射された光を透過しない時に逆配置(「上面発光型」と呼ばれる)が用いられてもよい。
【0017】
素子層110は、何れかの適した方法で配列された1つ以上のOEL素子を備えることができる。例えば、ランプの適用において(例えば、液晶表示(LCD)モジュールのバックライト)、素子層110が、所期の全バックライト領域にわたる単一のOEL素子を構成する。あるいは、他のランプの適用において、素子層110が、同時に作動され得る複数の近接して隔置された素子を構成することができる。例えば、相対的に小さく且つ近接して隔置された赤色、緑色、および青色の発光体を共通電極間にパターン化することができ、発光体が作動される時に素子層110が白色光を放射するようにみえる。バックライトの適用の他の配置もまた考えられる。
【0018】
直視型または他の表示の適用において、素子層110が、同一または異なった色を放射する複数の独立してアドレス可能なOEL素子を備えることが望ましい場合がある。各素子は、ピクセル化した表示(例えば、高解像度表示)の別個のピクセルまたは別個のサブピクセル、セグメント化表示(例えば、低情報内容表示)の別個のセグメントまたはサブセグメント、または別個のアイコン、アイコンの一部分、またはアイコン用のランプ(例えば、インジケータの適用)を示す。
【0019】
少なくともいくつかの場合、OEL素子は、カソードとアノードの間に挟まれた1つ以上の適した有機材料の薄い層を備える。作動されるとき、電子がカソードから有機層中に注入され、正孔がアノードから有機層中に注入される。注入された電荷が反対電荷をもつ電極の方向に移動するとき、それらは再結合して、一般に励起子と称される電子−正孔対を形成することができる。励起子が一般に形成される素子の領域は、再結合領域と称することができる。これらの励起子、または励起状態の種は、基底状態に減衰する時に光の形でエネルギーを放射することができる。
【0020】
正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、バッファ層などの他の層もまた、OEL素子中に存在することができる。更に、光ルミネセンス材料がOEL素子の発光層または他の層に存在し、例えば、エレクトロルミネセンス材料によって放射された光の色を別の色に変換することができる。これらおよび他のかかる層および材料を用いて、層状OEL素子の電子的性質および挙動を変化させるかまたは調整し、例えば、所望の電流/電圧レスポンス、所望の素子効率、所望の色、所望の輝度等を達成することができる。
【0021】
図4A〜4Fは、異なったOEL素子の配置の例を示す。各配置が、基材250、アノード252、およびカソード254を備える。図4C〜4Fの配置はまた、正孔輸送層258を備え、図4Bおよび4D〜4Fの配置は、電子輸送層260を備える。これらの層はそれぞれ、アノードから正孔を、またはカソードから電子を伝導する。各配置はまた、本発明による重合有機母材に配置された1つ以上の発光ポリマーまたは他の発光分子(例えば、小分子の発光化合物)などの発光材料を含む発光層256a、256b、256cを備える。発光層256aが正孔輸送材料を備え、発光層256bが電子輸送材料を備え、発光層256cが正孔輸送材料および電子輸送材料の両方を備える。いくつかの実施態様において、正孔輸送材料または電子輸送材料は、発光ポリマーまたは他の発光分子を含む重合有機母材形成材料である。他の実施態様において、別個の重合有機母材料が用いられる。更に、発光層256a、256b、256c中の正孔輸送材料または電子輸送材料が、それぞれ、正孔輸送層258または電子輸送層260に用いられた材料と同一または異なっていてもよい。
【0022】
概して、発光材料と、非晶質母材を形成することができる重合性有機材料とを配合することによって、重合有機母材を形成する。重合性非晶質母材形成材料は、例えば、重合性部分を有する1種以上の非晶質母材形成化合物を含むことができる。任意に、重合性部分と反応することができる架橋剤もまた、含むことができる。発光材料(または発光材料の、1種以上の成分、例えば、1種以上の発光ポリマーまたは小分子)は、重合性非晶質母材形成材料と任意に重合することができる。この組成物はまた、任意に、例えば、バインダー、正孔輸送材料、電子輸送材料、および半導電材料などの他の重合性または不活性(例えば、非重合性)材料(不活性ポリマーを含める)を含むことができる。
【0023】
この組成物は典型的には、転写層としてドナーシート上に配置され、発光材料が内部に配置された重合性非晶質母材を形成する。次に、転写層(任意に、1つ以上の他の転写層を有する)を、下に記載したように、ドナーシートから受容体に選択的に熱転写する。次に、重合性非晶質母材形成材料を、転写後に重合させ、重合有機母材を形成することができる。
【0024】
OEL素子のアノード252およびカソード254は典型的には、金属、合金、金属化合物、金属酸化物、導電性セラミックス、導電性分散系、および導電性ポリマー、例えば、金、白金、パラジウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、窒化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素スズ酸化物(FTO)、およびポリアニリンなどの導電材料を用いて形成される。アノード252およびカソード254は導電材料の単一層であるか、または多層を含むことができる。例えば、アノードまたはカソードが、アルミニウム層と金の層、カルシウム層とアルミニウム層、アルミニウム層とフッ化リチウム層、または金属層と導電性有機層を備えてもよい。
【0025】
正孔輸送層258は、アノードから前記素子への正孔の注入、および再結合領域の方向へのそれらの移動を容易にする。正孔輸送層258は更に、電子の、アノード252への移行のバリアの働きをすることができる。正孔輸送層258は、例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(TPDとしても周知である)またはN,N’−ビス(3−ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPB)などのジアミン誘導体、または、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)または4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)などのトリアリールアミン誘導体、を含むことができる。他の例には、銅フタロシアニン(CuPC)、1,3,5−トリス(4−ジフェニルアミノフェニル)ベンゼン(TDAPB)の他、H.フジカワ(H.Fujikawa)ら著、Synthetic Metals、91、161(1997年)、シロタ(Shirota)、J.Mater.Chem.、10、1、(2000年)およびJ.V.グラズレビシウス(J.V.Grazulevicius)、P.ストローリーグル(P・Strohriegl)著、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(“Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses”)」、Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices,H.S.ナルワ(H.S.Nalwa)編、10、233〜274(2001年)に記載されているような他の化合物がある。
【0026】
電子輸送層260は、電子の注入およびそれらの、再結合領域の方向への移動を容易にする。正孔輸送層260は更に、必要ならば、正孔の、カソード254への移行のバリアの働きをすることができる。例として、電子輸送層260が、有機金属化合物トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)を用いて形成されてもよい。電子輸送材料の他の例には、1,3−ビス[5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン、2−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBuPBD)の他、C.H.チェンら著、Macromol.Symp.125、1(1997年)、シロタ(Shirota)、J.Mater.Chem.、10、1、(2000年)およびJ.V.グラズレビシウス(J.V.Grazulevicius)、P・ストローリーグル(P.Strohriegl)著、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(“Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses”)」、Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices,H.S.ナルワ(H.S.Nalwa)編、10、233(2001年)に記載されているような他の化合物がある。
【0027】
多くの方法が、OEL素子を作製するために使用され、試みられている。例えば、SM発光素子が、正孔輸送、発光、および電子輸送分子の連続的な蒸着によって形成されている。前記層は堆積時に非晶質であるが、時間をかけて晶出し、それらの電荷輸送および発光性質を減少させることができる。一般に、SM材料は素子の耐用年数の間に、溶剤乾燥した時にまたは後に微結晶を形成する傾向があるので、それらを溶液流延するのが難しいことがある。
【0028】
別の例として、LEP材料ベースの発光層が、ポリマーの薄い層を溶液塗布することによって製造されている。この方法は、単色の表示またはランプに適している場合がある。溶液流延工程によって製造された素子の場合、多数の溶剤流延工程によって多層素子を作製することは、ずっと難しい。層が異なった溶剤から流延される多層素子を製造することができ、第1の不溶性層をin situ形成して第2の層を溶剤流延するか、第1の層を溶液流延して第2の層を蒸着するか、または前記層の一方または両方が架橋される。
【0029】
ポリマー分散小分子素子が、ホストポリマー(例えば、ポリビニルカルバゾール)と1種以上の小分子ドーパントの混合物とのブレンドを溶液流延することによって製造されている。一般に、これらの素子は作動するのに高電圧を必要とし、表示の適用に適していない。更に、それらは、LEPと同様のパターン化の制限がある。
【0030】
素子の別の形成方法には、例えば、米国特許第6,242,152号、同第6,228,555号、同第6,228,543号、同第6,221,553号、同第6,221,543号、同第6,214,520号、同第6,194,119号、同第6,114,088号、同第5,998,085号、同第5,725,989号、同第5,710,097号、同第5,695,907号、および同第5,693,446号の他、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/853,062号、同第09/844,695号、同第09/844,100号、同第09/662,980号、同第09/662,845号、同第09/473,114号、同第09/451,984号、同第09/931,598号、同第10/004,706号、および同第10/183,717号に記載されているようにレーザ熱パターン化することによる、1つ以上の転写層の転写、などがある。パターン化方法は、転写層の物理的性質に依存することがある。1つのパラメータは転写層の凝集力、またはフィルム強度、である。画像形成の間に、転写層は好ましくは、画像形成領域と非画像形成領域とを分ける線に沿ってきれいに割れてパターンのエッジを形成する。ポリフェニレンビニレンなど、伸び切り鎖構造において存在する高共役ポリマーは高引張強さを有し、ポリアラミド繊維の弾性率に同等の弾性率を有することができる。実施において、発光ポリマーをレーザ熱画像形成の間にきれいなエッジを形成するのは難しい場合がある。不十分なエッジ形成の望ましくない結果は、転写されたパターンの粗い、裂けた、またはぎざぎざのエッジである。
【0031】
これらの先行の方法に代わる選択肢または改良として、又、上に記載した問題点のいくつかに対処するために、1つ以上の発光ポリマー(LEP)または他の発光分子などの発光材料を、晶出を防止する非晶質母材を形成することができる重合性材料を含む塗料の一部として溶液塗布することができる。母材の非晶質の性質は、以下に記載したように、ドナー媒体から受容体に転写する間に、代表的なポリマー転写層と比べて、低い凝集強さを提供することができる。母材形成材料の非晶質の性質はまた、1つより多い電気活性材料(例えば、2つの、ほかの場合なら不相溶性のLEPまたはLEPと燐光発光体)を相溶化させるように作用することができる。非晶質母材形成材料の重合性の性質を用いて、転写後に層の転写部分を強化し、転写部分のより良好な耐久性、並びに、少なくともいくつかの場合、他の素子の性質を改善することができる。
【0032】
LEPを以下の説明の例として用いるが、他の発光性、半導電性、正孔輸送性、電子輸送性、または別の仕方で電気活性の分子が、1つ以上のLEPの代わりにまたはそれらに加えて用いることができることは理解されよう。更に、レーザ熱転写が発光および他の層を形成する方法の例として用いられるが、しかしながら、インクジェット印刷、スクリーン印刷、サーマルヘッド印刷、およびフォトリソグラフィパターン化などの他の転写、パターン化、および印刷技術を用いることができることは、理解されよう。
【0033】
何れの有機材料をも重合性非晶質母材形成材料に用いることができるが、ただし、(i)材料を溶液塗布して材料を受容体に転写する前に材料の期待耐用年数の間にかなりの晶出を防止する非晶質母材を形成し、(ii)材料を、受容体に転写後に重合させることができる。特に指示しない限り、重合性非晶質母材形成材料の重合への言及は何れも、材料がそれによって重合されるかまたは架橋される機構を含める。かかる重合は、例えば、重合性非晶質母材形成材料によって、任意に光または熱硬化開始剤を含む熱または光硬化条件下で行われてもよい。重合は、例えば、重合性非晶質母材形成材料中の同一の非晶質母材形成化合物の2つ以上の間で(例えば、自己重合)、重合性非晶質母材を形成する有機材料中の2つ以上の異なった非晶質母材形成化合物の間で(例えば、二官能重合(bifunctional polymerization))、または重合性非晶質母材形成材料中の1つ以上の非晶質母材形成化合物および架橋剤の間で行われてもよい。好ましくは、重合性非晶質母材形成材料は、ドナーシートから受容体に転写する前に実質的に重合または架橋しない。
【0034】
適した重合性非晶質母材形成化合物は典型的には、2つ以上の重合性部分が結合したベース構造を含む。前記ベース構造は典型的には、非晶質母材を形成することができる材料に似ている。かかる材料の例には、米国特許出願第09/931,598号に記載された材料があり、それらを本明細書に援用したものとする。適したベース構造の他の例は、J.V.グラズレビシウス(J.V.Grazulevicius)、P.ストローリーグル(P.Strohriegl)著、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(“Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses”)」、Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices,H.S.ナルワ(H.S.Nalwa)編、10、233〜274(2001年)、シロタ(Shirota)、J.Mater.Chem.、10、1、(2000年)、クレーガー(Kreger)ら著、Synthetic Metals、119、163(2001年)、PCT特許出願の国際公開第99/21935号および国際公開第00/03565号、ロビンソン(Robinson)ら著、Adv.Mat.、2000年、12(22)、1701に記載されている。これらの材料を、2つ以上の重合性部分が結合したベース構造と同じように用いることができる。
【0035】
重合性部分は、使用することにより他の重合性非晶質母材形成化合物および架橋剤を含む重合性非晶質母材形成用の有機材料中の他の分子と重合することができる何れの基であってもよい。いくつかの場合には、発光材料または発光材料の成分の1つ以上が、又、重合性部分と重合することができる。
【0036】
適した重合性非晶質母材形成化合物の1つの例は、式1:
【化1】

によって示され、上式中、3個のビニル基が重合性部分に相当し、分子の残り部分がベース構造である。2個だけのビニル基を有し、第3のビニル基が何れかの他の部分(水素を含める)によって置換された別の適した材料を製造できることは、理解されよう。他の適した材料を、他の重合性部分を用いて製造することができる。例えば、式1の構造2(重合性ビニル基を有する)の1つ以上を、ビニル基以外の重合性部分を有する構造3〜10の何れかによって、例えば、重合性ペルフルオロビニルエーテル基(3)、ペンタジエニル基(4)、アジド基(5)、アルキニル基(6)、(メタ)アクリレート基(7)、フェニルアルキニル基(8)、イソシアナト基(9)、およびベンゾシクロブタン基(10)によって置換することができる。
【化2】

他の重合性部分には、例えば、ヒドロキシル、オキセタン、チイラン、エポキシドおよびアルコキシシランなどがある。
【0037】
重合性部分が、別の分子上の同じ重合性部分と、または異なった分子上の別の重合性部分と反応するように選択することができる。いくつかの実施態様において、特定の重合性非晶質母材形成化合物の重合性部分のすべてが同一である。他の実施態様において、2つ以上の異なった重合性部分を、重合性非晶質母材形成化合物に配置することができる。これらの2つ以上の異なった重合性部分は、その部分のタイプの1つがその部分の別のタイプと重合または架橋するように選択することができる(例えば、アジドとアルキン、酸とエポキシド、酸とイソシアネート、アルコールとイソシアネート、およびアルコールとシランが、用いることができる重合性部分の組合せの例である)。単一化合物に重合性部分の両方のタイプを与えるすることに代わる選択肢として、重合性非晶質母材形成材料が、2つ以上の異なる化合物、例えば、1つの化合物に結合した重合性部分の1つのタイプおよび別の化合物に結合した重合性部分の別のタイプを含むことができる。次いで、2つの化合物同士が反応して重合することができる。
【0038】
適した重合性非晶質母材形成化合物の他の例には、以下の例があるがこれらに限定されない。
【化3】

【化4】

【0039】
重合性部分が結合することができる、適したベース構造の例には、電気活性側基を有する四面体コアーを有する構造がある。かかる構造体の例には、テトラフェニルメタン11、テトラフェニルシラン12、およびテトラフェニルアダマンタン13、並びにテトラフェニルゲルマン、テトラフェニルプルンバン、およびテトラフェニルスタナン(すなわち、12のSiをそれぞれ、Ge、Pb、またはSnで置換する)。
【化5】

各Rが独立して、正孔(例えばカチオンラジカルとして)、電子(例えばアニオンラジカルとして)を安定化するか、または発色団の働きをする1個以上の共役官能基(例えば、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、アルケニル、またはアルケニレン)を含む置換基である。各R置換基が他のR置換基と同一または異なっていてもよい。すべてのR置換基が同一であるとき、分子は典型的には特定の対称性を有する。R置換基の少なくとも1個が異なっているとき、分子は、非晶質母材の形成および維持を更に容易にする場合がある非対称性を有する。いくつかの場合には、Rは、Rが結合して例えば、置換または非置換ナフチルまたは他の縮合環構造を形成するフェニル基に結合している芳香環を含む。かかる材料の例および更に詳細な説明は、例えば、PCT特許出願の国際公開第00/03565号およびロビンソンら著、Adv.Mat.、2000年、12(22)、1701に見出すことができる。概して、重合性部分は、R置換基に結合した官能基である。
【0040】
いくつかの実施態様において、R置換基は、例えば、1個以上のアルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン(例えば、フェニレン、ナフチレン、またはアントリレン)、ヘテロアリール、またはヘテロアリーレン官能基を有する1個以上の共役構造を含む。前記置換基は、窒素および酸素などのヘテロ原子を含むことができる伸長π−共役系を有することができる。前記共役系は、カチオンラジカル(例えば正孔)を安定化する電子豊富部分(例えばトリアリールアミン)、アニオンラジカル(例えば電子)を安定化する電子欠乏部分、または発色団の働きをする紫外線−可視域のHOMO−LUMO(最高被占分子軌道−最低空分子軌道)ギャップを含むことができる。適したR基の例には、以下の基があるがそれらに限定されない。
【化6】

【0041】
適した四面体ベース構造の特定の例には、構造14〜16がある。
【化7】

Xが、C、Si、Ge、Pb、またはSnであり、R2がHまたはアルキルである。構造15および16が、発色団であってもよいフルオレン部分を含む。これらの特定のフルオレンは典型的には、青〜紫外線の範囲のバンドギャップを有する。かかる材料は、赤または緑の領域で発光するLEPに有用である場合があり、発光は、主にまたはもっぱらLEPからである。
【0042】
又、このタイプのベース構造には、構造17〜19などのスピロ構造があり、
【化8】

上式中、各Rが独立して、1個以上のアルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン(例えば、フェニレン、ナフチレン、またはアントリレン)、ヘテロアリール、またはヘテロアリーレン官能基を有する共役構造である。前記置換基は、窒素および酸素などのヘテロ原子を含むことができる伸長π−共役系を有することができる。前記共役系は、カチオンラジカル(例えば正孔)を安定化する電子豊富部分(例えばトリアリールアミン)、アニオンラジカル(例えば電子)を安定化する電子欠乏部分、または発色団の働きをする紫外線−可視域のHOMO−LUMO(最高被占分子軌道−最低空分子軌道)ギャップを含むことができる。又、重合性部分は、これらのベース構造のR置換基またはフェニル基に結合した官能基である。
【0043】
重合性非晶質母材形成化合物に使用できる他のベース構造には、デンドリマーがある。デンドリマー構造は、3個以上のデンドリティック置換基が伸長するコアー部分を有する。適したコアー部分の例には、トリフェニルアミン、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンの他、PCT特許出願の国際公開第99/21935号に記載された他のコアー部分がある。デンドリティック置換基は典型的には、2個以上のアリール、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、アルケニル、またはアルケニレン置換基を含む。いくつかの実施態様において、前記置換基は、1個以上のアルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン(例えば、フェニレン、ナフチレン、またはアントリレン)、ヘテロアリール、またはヘテロアリーレン部分を有する共役構造であってもよい。デンドリティック置換基は、同一または異なっていてもよい。概して、重合性部分は、デンドリティック置換基に結合している。デンドリマー化合物の例には、化合物20〜26など、例えば、トリフェニルアミンをベースとしたスターバースト化合物がある。
【化9】

【化10】

各R1およびR2が独立して、H、F、Cl、Br、I、−SH、−OH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、フルオロアルキル、フルオロアルキルアルコキシ、アルケニル、アルコキシ、アミノ、またはアルキル−COOHである。各R3が独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリール、アミノ、シアノ、またはニトロである。各X1が独立して、O、S、Se、NR3、BR3、またはPR3である。これらの置換基の何れかのアルキル、アリール、およびヘテロアリール部分が置換されるかまたは非置換であってもよい。各R1、R2、R3、およびX1が同一であるかまたは同じ番号の置換基と異なっている(すなわち、すべてのR1置換基が同じであるかまたはR1置換基の1個以上が互いに異なっていてもよい)。
【0044】
他のデンドリマー構造が、化合物27〜36など、コアーとしてアリールまたはヘテロアリール部分を有することができる。
【化11】

各Ar1およびAr2が独立して、置換または非置換アリールまたはヘテロアリール、例えば、置換または非置換フェニル、ピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、または以下の構造の1つである。
【化12】

各R1およびR2が独立して、H、F、Cl、Br、I、−SH、−OH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、フルオロアルキル、フルオロアルキルアルコキシ、アルケニル、アルコキシ、アミノ、またはアルキル−COOHである。各R3が独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリール、アミノ、シアノ、またはニトロである。各X1およびX2が独立して、O、S、Se、NR3、BR3、またはPR3である。これらの置換基の何れかのアルキル、アリール、およびヘテロアリール部分が、置換されているかまたは非置換であってもよい。各R1、R2、R3、X1、およびX2が同一であるかまたは同じ番号の置換基と異なっていてもよい(すなわち、すべてのR1置換基が同じであるかまたはR1置換基の1個以上が互いに異なっていてもよい)。
【0045】
重合性非晶質母材形成化合物の他のベース構造には、例えば、構造37〜42がある。
【化13】

各Ar1およびAr2が独立して置換または非置換アリールまたはヘテロアリールであり、nが1〜6の範囲の整数であり、各R1が独立して、H、F、Cl、Br、I、−SH、−OH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、フルオロアルキル、フルオロアルキルアルコキシ、アルケニル、アルコキシ、アミノ、またはアルキル−COOHである。各R3が独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリール、アミノ、シアノ、またはニトロである。各X、X1、およびX2が独立して、O、S、Se、NR3、BR3、またはPR3である。これらの置換基の何れかのアルキル、アリール、およびヘテロアリール部分が、置換されているかまたは非置換であってもよい。各R1、R2、R3、X、X1、およびX2が同一であるかまたは同じ番号の置換基と異なっていてもよい(すなわち、すべてのR1置換基が同じであるかまたはR1置換基の1個以上が互いに異なっていてもよい)。
【0046】
任意の架橋剤が、重合性非晶質母材形成材料の一部分として重合性非晶質母材形成化合物と共に含まれてもよい。架橋剤は必ずしも非晶質母材を形成しないが、又、その非晶質母材の形成を妨げない。架橋剤は、重合性非晶質母材形成化合物と重合することができる2つ以上の重合性部分を有する。いくつかの実施態様において、架橋剤は、受容体に転写後に重合性非晶質母材形成材料を重合させるために必要である。適した材料の例には、トリグリシジルトリフェニルエタン(43)、トリグリシジルイソシアヌレート(44)、テトラメトキシメチルグリコウリル(45)、トリス−1,3,5−(p−トリメトキシシリルフェニル)ベンゼン(46)、およびトリス(p−トリメトキシシリルプロピルフェニル)アミン(47)などがある。
【化14】

例えば、2個以上のヒドロキシル部分を有する非晶質母材形成化合物を、架橋剤としてトリス−1,3,5−(p−トリメトキシシリルフェニル)ベンゼンまたはトリス(p−トリメトキシシリルプロピルフェニル)アミンを用いて重合させることができる。
【0047】
特に指示しない限り、用語「アルキル」は、直鎖状、分枝状、および環状アルキル基の両方を含み、非置換および置換アルキル基を含める。特に指示しない限り、アルキル基は典型的には、C1〜C20である。本明細書中で用いた「アルキル」の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、およびイソプロピルなどがあるがこれらに限定されない。
【0048】
特に指示しない限り、用語「アルキレン」は、直鎖状、分枝状、および環状二価炭化水素基の両方を含み、非置換および置換アルケニレン基を含める。特に指示しない限り、アルキレン基は典型的には、C1〜C20である。本明細書中で用いた「アルキレン」の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、およびイソプロピレンなどがあるがこれらに限定されない。
【0049】
特に指示しない限り、用語「アルケニル」は、1個以上の二重結合を有する直鎖状、分枝状、および環状一価炭化水素基の両方を含み、非置換および置換アルケニル基を含める。特に指示しない限り、アルケニル基は典型的には、C2〜C20である。本明細書中で用いた「アルケニレン」の例には、エテニル、プロペニルなどがあるがこれらに限定されない。
【0050】
特に指示しない限り、用語「アルケニレン」は、1個以上の二重結合を有する直鎖状、分枝状、および環状二価炭化水素基の両方を含み、非置換および置換アルケニレン基の両方を含める。特に指示しない限り、アルキレン基は典型的にはC2〜C20である。本明細書中で用いた「アルケニレン」の例には、エテン−1,2−ジイル、プロペン−1,3−ジイルなどがあるがこれらに限定されない。
【0051】
特に指示しない限り、用語「アリール」は、フェニルまたはビフェニル、もしくは多数の縮合環、例えば、ナフチルまたはアントリル、またはそれらの組合せなど、1〜15の環を有する一価の不飽和芳香族炭素環基を指す。本明細書中に用いたアリールの例には、フェニル、2−ナフチル、1−ナフチル、ビフェニル、2−ヒドロキシフェニル、2−アミノフェニル、2−メトキシフェニルなどがあるがそれらに限定されない。
【0052】
特に指示しない限り、用語「アリーレン」は、フェニレンまたは多数の縮合環、例えばナフチレンまたはアントリレン、またはそれらの組合せなど、1〜15の環を有する二価の不飽和芳香族炭素環基を指す。本明細書中に用いた「アリーレン」の例には、ベンゼン−1,2−ジイル、ベンゼン−1,3−ジイル、ベンゼン−1,4−ジイル、ナフタリン−1,8−ジイル、アントラセン−1,4−ジイルなどがあるがそれらに限定されない。
【0053】
特に指示しない限り、用語「ヘテロアリール」は、S、O、またはNから独立して選択された1個以上のヘテロ原子を有する、一価の5〜7員環の芳香環基を含む官能基を指す。かかるヘテロアリール環は、別の複素環、ヘテロアリール環、アリール環、シクロアルケニル環、またはシクロアルキル環の1個以上に任意に結合していてもよい。本明細書中に用いた「ヘテロアリール」の例には、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル、およびインダゾリルなどがあるがそれらに限定されない。
【0054】
特に指示しない限り、用語「ヘテロアリーレン」は、S、O、またはNから独立して選択された1個以上のヘテロ原子を有する、二価の5〜7員環の芳香環基を含む官能基を指す。かかるヘテロアリーレン環は、別の複素環、ヘテロアリール環、アリール環、シクロアルケニル環、またはシクロアルキル環の1個以上に任意に結合していてもよい。本明細書中に用いた「ヘテロアリーレン」の例には、フラン−2,5−ジイル、チオフェン−2,4−ジイル、1,3,4の−オキサジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4の−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3−チアゾール−2,4−ジイル、1,3の−チアゾール−2,5−ジイル、ピリジン−2,4−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,4−ジイル、キノリン−2,3−ジイルなどがあるがそれらに限定されない。
【0055】
置換アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、およびヘテロアリーレン基の適した置換基には、アルキル、アルキレン、アルコキシ、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、アルケニル、アルケニレン、アミノ、F、Cl、Br、I、−OH、−SH、シアノ、ニトロ、−COOH、および−COO−アルキルなどがあるがそれらに限定されない。
【0056】
好ましくは、重合性非晶質母材形成材料が、期待された操作および貯蔵条件下で安定した結晶相を形成する実質的な傾向を有しないか、または形成しない。好ましくは、重合性非晶質母材形成材料は期待された貯蔵条件下で重合する実質的な傾向を有しない。更に、好ましくは、重合性非晶質母材形成材料および発光材料が相溶性であるかまたは共通溶剤に可溶性であり、溶液塗布する間に本質的に相分離せず、より好ましくは、溶剤の除去時に相分離しない。
【0057】
一般に、非晶質母材が形成されるとき、非晶質母材/LEP(または他の発光材料)ブレンドの凝集力を低減させるための域値は、LEPが不連続相になる点(2つの観察可能な相がある場合)、またはLEP鎖が非晶質母材によって溶解される点(単一相が存在する場合)である。概して、発光ポリマーまたは他の発光分子の全量が、塗料の固形分の50重量%以下であり、固形分の40重量%、25重量%、またはそれ以下であってもよい。典型的には、重合性非晶質母材形成材料の、発光材料(例えば、発光ポリマー)に対する重量比は少なくとも1:1、典型的には1:1〜100:1の範囲である。概して、少なくとも1:1、典型的には少なくとも2:1または3:1以上の比が、熱転写の適用に適している。
【0058】
いくつかの実施態様において、重合性非晶質母材形成材料は、正孔または電子輸送材料であるかまたはそれらを含む。これらの実施態様のいくつかにおいて、正孔または電子輸送層が、重合性非晶質母材形成材料またはその成分を用いて形成され、同じ重合性非晶質母材形成材料を含む発光層で塗布されるか、またはその上に塗布される。
【0059】
いくつかの実施態様において、異なった濃度の発光層を有するいくつかの層を堆積して所望の断面形を達成することによって、発光材料の勾配を形成することができる。以下に記載した熱転写方法は、層の各々を順次に転写することによってかかる構造体を製造するときに有用である場合がある。更に、異なった発光材料を用いて層を形成し、異なった色を得るか、または、各画素間に電極を介在させることで、スタック積みした赤、緑、および青色の画素を作り出すことができる。
【0060】
重合性非晶質母材形成材料が正孔または電子輸送材料ではない場合、正孔または電子輸送材料を塗料の一部分として含むことが望ましい場合がある。塗料中に含まれてもよい他の材料には、例えば、小分子ドーパント(例えばトリプレット発光体)、不活性ポリマー、熱開始剤、光開始剤、塗布助剤、界面活性剤の他、例えば、凝集力を低減させるための粒状材料、分散剤、安定剤、および光増感剤などがある。
【0061】
いくつかの実施態様において、重合性非晶質母材形成材料はまた、発光分子である。これらの実施態様において、材料および操作条件は、重合性非晶質母材形成材料の代わりに発光材料によって発光を促進するように選択することが好ましい。例えば、重合性非晶質母材形成材料は、スペクトルの青色領域で発光することができる場合がある。この場合、スペクトルの赤または緑の領域で放射する発光ポリマーを選択してもよい。選択は、例えば、分子エネルギー転写の機構および材料のバンドギャップに基づいて行うことができる。いくつかの場合には、発光材料または発光材料の1つ以上の成分が、重合性非晶質母材形成材料と重合することができる重合性部分を有する。
【0062】
発光材料以外の電気活性材料を、重合性非晶質母材形成材料を用いて形成された非晶質母材に配置させることができることは、理解されよう。例えば、導電性または半導電材料を、重合性非晶質母材形成材料に配置させることができる。適用の例には、重合性非晶質母材形成材料に正孔輸送材料または電子輸送材料を配置させることによる正孔輸送層または電子輸送層または他の電荷伝導層の形成、がある。非晶質母材を、例えば、上に記載した材料の何れかを用いて形成することができる。この構造は、ポリマーそれ自体より低い凝集強さを有する層を製造する導電性または半導電ポリマー材料のために特に有用な場合がある。
【0063】
LEPおよびSM光発光体などののいろいろな発光材料を用いることができる。発光体には、例えば、螢光および燐光材料などがある。適したLEP材料の種類の例には、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ−パラ−フェニレン(PPP)、ポリフルオレン(PF)、現在周知の、またはその後に開発される他のLEP材料、およびそれらのコポリマーまたはブレンド、などがある。適したLEPはまた、分子ドープされ、螢光染料または他のPL材料を分散され、活性または非活性材料をブレンドされ、活性または非活性材料を分散される等が可能である。適したLEP材料の例は、クラフト(Craft)ら著、Angew.Chem.Int.Ed.、37、402〜428(1998年)、米国特許第5,621,131号、同第5,708,130号、同第5,728,801号、同第5,840,217号、同第5,869,350号、同第5,900,327号、同第5,929,194号、同第6,132,641号、および同第6,169,163号、PCT特許出願の国際公開第99/40655号に記載されている。
【0064】
SM材料は概して、OEL表示および素子内で発光体材料、電荷輸送材料として、発光体層(例えば、発光色を制御するために)または電荷輸送層中でドーパントとして用いることができる有機金属分子材料である。一般に用いられるSM材料には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(TPD)などの金属キレート化合物がある。他のSM材料は、例えば、C.H.チェン(Chen)ら著、Macromol.Symp.125、1(1997年)、特開2000−195673号、米国特許第6,150,043号、同第6,030,715号および同第6,242,115号、およびPCT特許出願の国際公開第00/18851号(二価ランタニド金属錯体)、国際公開第00/70655号(シクロ金属化イリジウム化合物など)、および国際公開第98/55561号に開示されている。
【0065】
図1に戻ると、素子層110が基材120上に配置される。基材120は、OEL素子および表示に適した何れの基材であってもよい。例えば、基材120が、ガラス、透明プラスチック、または可視光に本質的に透明である他の適した材料を含むことができる。基材120はまた、可視光線に対して不透明であってもよく、例えば、ステンレス鋼、結晶性ケイ素、ポリケイ素などであってもよい。OEL素子のいくつかの材料は特に、酸素または水への暴露により損傷を受けやすい場合があるので、基材120は好ましくは、十分な環境バリアを提供するか、または十分な環境バリアを提供する1つ以上の層、塗布、または積層体を設けられる。
【0066】
基材120はまた、トランジスタアレイおよび他の電子素子、カラーフィルター、偏光子、波長板、拡散体、および他の光学素子、絶縁体、バリアリブ、黒色母材、マスク工作物および他のかかる成分などのOEL素子および表示に適した任意の数の素子または部品を備えることができる。概して、1つ以上の電極が、素子層110のOEL素子の残りの層を形成する前に基材120上に塗布、堆積、パターン化されるか、または他の方法で配置される。光透過基材120が用いられ、OEL素子が下面発光型であるとき、基材120と発光材料との間に配置される電極は、好ましくは本質的に透明であり、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)または多くの他の透明な導電性酸化物の何れかなどの透明な導電性電極である。
【0067】
要素130は、OEL表示または素子100に使用するために適した何れの要素または要素の組合せであってもよい。例えば、要素130は、素子100がバックライトである時にLCDモジュールであってもよい。1つ以上の偏光子または他の要素、例えば吸収性または反射クリーンアップ偏光子を、LCDモジュールとバックライト素子100との間に設けることができる。あるいは、素子100がそれ自体、情報表示であるとき、要素130が、偏光子、波長板、タッチパネル、反射防止塗布、汚れ防止塗布、投射スクリーン、輝度増強フィルム、または他の光学部品、塗布、ユーザインタフェースデバイスなどの1つ以上を備えることができる。
【0068】
発光用の有機電子素子含有材料は、少なくとも一部は、熱転写ドナーシートから所望の受容基材への発光材料の選択的な熱転写によって作製されてもよい。例えば、発光ポリマー表示およびランプが、ドナーシート上にLEPおよび重合性非晶質母材形成材料を塗布し、次に、LEP層を表示基板に単独で、または他の素子層または材料とともに選択的に転写して作製されてもよい。
【0069】
有機電子素子の発光材料を含む層の選択的な熱転写を、熱転写ドナーを用いて行うことができる。図2は、本発明に使用するのに適した熱転写ドナー200の例を示す。ドナー要素200は、ベース基材210、任意の下層212、任意の光−熱変換層(LTHC層)214、任意の中間層216、および転写層218を備える。これらの要素の各々は、以下の考察でより詳細に記載される。他の層もまた、存在することができる。適したドナーまたはドナー層の例は、米国特許第6,242,152号、同第6,228,555号、同第6,228,543号、同第6,221,553号、同第6,221,543号、同第6,214,520号、同第6,194,119号、同第6,114,088号、同第5,998,085号、同第5,725,989号、同第5,710,097号、同第5,695,907号、および同第5,693,446号、および本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/853,062号、同第09/844,695号、同第09/844,100号、同第09/662,980号、同第09/662,845号、同第09/473,114号、同第09/451,984号、同第09/931,598号、同第10/004,706号、および同第10/183,717号に開示されている。
【0070】
本発明の方法において、ドナー要素の転写層を受像体に隣接して置き、ドナー要素を選択的に加熱することによって、LEPまたは他の材料などの発光有機材料を、ドナーシートの転写層から受容基材に選択的に転写することができる。実例として、ドナー中に、しばしば別個のLTHC層に配置された光−熱変換材料によって吸収され、熱に変換され得る画像形成輻射線でドナー要素を照射することによって、ドナー要素を選択的に加熱することができる。これらの場合、ドナー基材を通して、受容体を通して、または両方を通してドナーを画像形成輻射線に露光することができる。輻射線は、例えばレーザ、ランプ、または他のかかる輻射線源からの可視光、赤外線、または紫外線などの1つ以上の波長を含めることができる。サーマルプリントヘッドの使用またはサーマルホットスタンプ(例えば、ドナーを選択的に加熱するために用いることができるレリーフパターンを有する加熱シリコーンスタンプなどのパターン化サーマルホットスタンプ)の使用など、他の選択的な加熱方法もまた、用いることができる。熱転写層の材料をこのように受容体に選択的に転写して、受容体上に転写された材料のパターンを画像の通り形成することができる。多くの場合、例えばランプまたはレーザからの光を用いてパターンの通りドナーを露光する熱転写は、しばしば達成することができる正確度および精度のために有利である場合がある。転写されたパターン(例えば、線、四角形、円または他の形状)の寸法および形状は、光線の寸法、光線の露光パターン、有向ビームとドナーシートとの接触の時間、またはドナーシートの材料を選択することによって、制御することができる。又、転写されたパターンは、マスクを通してドナー要素を照射することによって制御することができる。
【0071】
記載したように、サーマルプリントヘッドまたは他の加熱要素(パターン化やその他)もまた使用して、直接にドナー要素を選択的に加熱し、それによって転写層の部分をパターンの通り転写することができる。かかる場合、ドナーシート中の光−熱変換材料は任意である。サーマルプリントヘッドまたは他の加熱要素が、より低解像度のパターンを作るために、またはその配置が精密に制御される必要がない要素をパターン化するために特に適していることがある。
【0072】
転写層はまた、転写層を選択的に転写せずにドナーシートから転写することができる。例えば、典型的には熱または圧力を適用して、転写層を受容基材に接触させた後に剥離できる仮ライナーとして本質的に作用するドナー基板上に転写層を形成することができる。積層転写と称されるかかる方法を用いて、全転写層、またはその大部分を受容体に転写することができる。
【0073】
熱物質転写(thermal mass transfer)の方式は、使用された選択的加熱のタイプ、ドナーを露光するために使用する場合は照射のタイプ、任意のLTHC層の材料および性質のタイプ、転写層の材料のタイプ、ドナーの全構造体、受容基材のタイプなどに依存して変更することができる。何れの理論にも縛られることを望まないが、転写は概して、画像形成条件、ドナーの構造などに依存して選択的な転写の間にその1つ以上が強められるかまたは弱められる場合がある1つ以上の機構によって行われる。熱転写の機構の1つは、熱転写層とドナー要素の残部との間の境界面での局部加熱が、選択された位置のドナーへの熱転写層の接着性を低下させることができる熱溶融粘着転写がある。ドナー要素が除去される時に転写層の選択された部分が受像体上に残っているように熱転写層の選択された部分がドナーによりも受像体に強く付着する。熱転写の別の機構には、局部加熱を用いて転写層の部分をドナー要素から融蝕し、それによって融蝕材料(ablated material)を受容体の方向に誘導することができるアブレイティブ転写(ablative transfer)がある。熱転写の更に別の機構には昇華があり、それによって転写層に分散された材料を、ドナー要素中に発生した熱によって昇華させることができる。昇華された材料の一部分が受容体上に凝縮することができる。本発明は、ドナーシートの選択的加熱を用いて転写層から受容体表面への材料の転写を起こすことができるこれらおよび他の機構の1つ以上を有する転写方式を考察する。
【0074】
いろいろな輻射線源を用いてドナーシートを加熱することができる。アナログ技術(例えば、マスクを通して露光)については、強力光源(例えば、クセノンフラッシュランプおよびレーザ)が有用である。デジタル画像形成技術については、赤外線、可視光、および紫外線レーザが特に有用である。適したレーザには、例えば、高出力(100mW)の単モードレーザダイオード、ファイバー結合レーザダイオード、およびダイオード励起固体レーザ(例えば、Nd:YAGおよびNd:YLF)などがある。レーザ露光停滞時間は、例えば、100分の数マイクロセカンド〜数十マイクロセカンドに広く変更することができ、レーザフルエンスが、例えば、約0.01〜約5J/cm2以上の範囲であってもよい。他の輻射線源および照射条件は、とりわけ、ドナー要素構造体、転写層材料、熱物質転写の方式、および他のかかる要因に基づいて、適している場合がある。
【0075】
基材の大きな領域にわたってスポット配置の高い正確度が望ましいとき(例えば、高情報内容表示および他のかかる適用)、レーザが輻射線源として特に有用な場合がある。レーザ源はまた、大きな硬質基材(例えば、1m×1m×1.1mmのガラス)および連続的またはシート状フィルム基材(例えば、厚さ100μmのポリイミドシート)の両方と適合できる。
【0076】
画像形成の間に、ドナーシートを受容体と十分に接触させることができ(典型的には、熱溶融−粘着転写機構の場合が挙げられる)、またはドナーシートを受容体から少し隔置することができる(アブレイティブ転写機構または材料の昇華転写機構の場合が挙げられる)。少なくともいくつかの場合、圧力または真空を使用して、ドナーシートを受容体と十分に接触保持することができる。いくつかの場合には、マスクをドナーシートと受容体との間に配置することができる。かかるマスクは取り外し可能であるか、または転写後に受容体上に残っていてもよい。光−熱変換材料がドナー中に存在している場合、輻射線源をLTHC層(または輻射線吸収材を含む他の層)を画像の通り(例えば、デジタルに、またはマスクを通してアナログの露光によって)加熱し、ドナーシートから受容体に転写層を画像の通り転写またはパターン化することができる。
【0077】
典型的には、転写層の選択された部分が、任意の中間層またはLTHC層など、ドナーシートの他の層の相当な部分を転写することなく、受容体に転写される。任意の中間層が存在することにより、LTHC層から受容体への材料の転写を除くかまたは低減させ、または転写層の転写された部分の変形を低減させることができる。好ましくは、画像形成条件下で、LTHC層への任意の中間層の接着性は、転写層への中間層の接着性より大きい。中間層は画像形成輻射線に対して透過性、反射性、または吸収性であってもよく、ドナーを通して透過された画像形成輻射線のレベルを減衰または他の仕方で制御するかまたはドナーの温度を管理し、画像形成の間に転写層への熱的または輻射線による損傷を低減するために使用することができる。多数の中間層が存在してもよい。
【0078】
1メートル以上の長さおよび幅寸法を有するドナーシートなど、大きなドナーシートを用いることができる。大きなドナーシートにわたってレーザをラスターするかまたは他の方法で移動させることができ、レーザが所望のパターンに従ってドナーシートの部分を照らすように選択的に作動される。あるいは、レーザが固定されていてもよく、ドナーシートまたは受容基材がレーザ下で移動させられてもよい。
【0079】
いくつかの場合には、2つ以上の異なったドナーシートを順次に用いて受容体上に電子素子を形成することが必要であり、望ましいか、または都合が良い場合がある。例えば、多層素子が、別個の層または別個の層積層体を異なったドナーシートから転写することによって形成されてもよい。多層積層体はまた、単一ドナー要素から単一転写単位として転写することができる。例えば、正孔輸送層およびLEP層を、単一ドナーから同時転写することができる。別の例として、半導性ポリマーおよび発光層を単一ドナーから同時転写することができる。又、多数のドナーシートを用いて受容体上に別個の成分を同じ層に形成することができる。例えば、異なった色(例えば、赤、緑、および青)を各々が放射することができるLEPを含む3つの異なったドナーを用いて、全色偏光電子表示のRGBサブピクセルOEL素子を形成することができる。別の例として、発光層を1つのドナーから熱転写し、その後に、1つ以上の他のドナーから発光層を選択的に熱転写することによって導電性または半導性ポリマーをパターン化し、表示に複数のOEL素子を形成することができる。更に別の例として、(配向されるかまたはされていない)電気活性有機材料を選択的に熱転写し、その後に、カラーフィルター、発光層、電荷輸送層、電極層などの1つ以上のピクセルまたはサブピクセル要素を選択的に熱転写することによりパターン化することによって、有機トランジスタ層をパターン化することができる。
【0080】
別個のドナーシートからの材料を、受容体上に他の材料に隣接して転写し、隣接した素子、隣接した素子の部分、または同じ素子の異なった部分を形成することができる。あるいは、熱転写または何か他の方法(例えば、フォトリソグラフィ、シャドウマスクを通しての堆積など)によって受容体上に予めパターン化された他の層または材料の上に、または部分的に上に重ね合せて別個のドナーシートからの材料を直接に転写することができる。2つ以上のドナーシートのいろいろな他の組合せを用いて素子を形成することができ、各ドナーシートが、素子の1つ以上の部分を形成する。フォトリソグラフィ方法、インクジェット方法、および様々な他の印刷またはマスクベースのプロセスなど、従来から使用されているかまたは新たに開発されたかに関わらず、何れかの適した方法によって全部または部分的に、これらの素子の他の部分、または他の素子を受容体上に形成することができることは理解されよう。
【0081】
図2を参照して、ドナーシート200の様々な層についてここで説明する。
【0082】
ドナー基材210は、ポリマーフィルムであってもよい。ポリマーフィルムの適したタイプの1つはポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。しかしながら、特定の適用に応じて、特定の波長の高い光透過性などの十分な光学的性質、または十分な機械的および熱安定性の性質を有する他のフィルムを用いることができる。ドナー基材は、少なくともいくつかの場合、均一な塗布をその上に形成することができるように平らである。ドナー基材はまた、典型的には、ドナーの1つ以上の層の加熱にもかかわらず安定したままである材料から選択される。しかしながら、下に記載したように、基板とLTHC層との間に下層を介在させ、画像形成の間にLTHC層に発生した熱から絶縁することができる。ドナー基材の代表的の厚さは、0.025〜0.15mm、好ましくは0.05〜0.1mmの範囲であるが、より厚いかまたはより薄いドナー基材を用いてもよい。
【0083】
ドナー基材および任意の隣接した下層を形成するために用いた材料は、ドナー基材と下層との間の接着性を改善し、基材と下層との間の熱輸送を制御し、LTHC層への画像形成輻射線の輸送を制御し、画像形成の欠陥を低減するように選択することができる。任意の下塗層を用いて、基材上に後続の層を塗布する間に均一性を増大させ、又、ドナー基材と隣接した層との間の結合強さを増大させることができる。
【0084】
任意の下層212を、ドナー基材とLTHC層との間に塗布または他の仕方で配置し、例えば、画像形成の間に基材とLTHC層との間の熱流を制御するか、または貯蔵、取扱、ドナーの加工、または画像形成のためにドナー要素に機械的安定度を提供することができる。適した下層および下層の提供方法の例は、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/743,114号に開示されている。
【0085】
下層は、ドナー要素に所望の機械的または熱的性質を与える材料を含むことができる。例えば、下層は、比熱と密度との小さい積(例えば、比熱×密度)またはドナー基材に対して低い熱伝導率を示す材料を含むことができる。かかる下層を用いて、転写層への熱流を増大させ、ドナーの画像形成感度を改善することができる。
【0086】
又、下層は、それらの機械的特性のためのまたは基材とLTHCとの間の接着性のための材料を含んでいてもよい。基材とLTHC層との間の接着性を改善する下層を用いることにより、転写された画像の変形をより少なくすることができる。例として、ある場合には、例えば使用しなければドナー媒体の画像形成の間に起こる可能性があるLTHC層の離層または分離を低減または除く下層を用いることができる。これは、転写層の転写された部分によって示される物理的な変形の量を低減させることができる。他の場合、画像形成の間に層間の少なくともある程度の分離を促進する下層を使用し、断熱機能を提供することができる、画像形成の間に層間の空隙を作り出すことが望ましい場合がある。画像形成の間の分離はまた、画像形成の間にLTHC層を加熱することによって発生する場合があるガスを放出する溝を提供することができる。かかる溝を提供することで、画像形成欠陥を低減できる場合がある。
【0087】
下層は、画像形成波長において本質的に透明であってもよく、または、又、画像形成輻射線を少なくとも部分的に吸収または反射してもよい。下層による画像形成輻射線の減衰または反射を利用して、画像形成の間に熱発生を制御することができる。
【0088】
再び図2に戻ると、本発明のドナーシートは、照射エネルギーをドナーシートに結合するためにLTHC層214を備えることができる。LTHC層は好ましくは、入射放射(例えば、レーザ光)を吸収して、入射放射の少なくとも一部分を熱に変換してドナーシートから受像体に転写層を転写することができる輻射線吸収材を備える。
【0089】
概して、LTHC層の輻射線吸収材は、電磁スペクトルの赤外線、可視光、または紫外線領域の光を吸収し、吸収された輻射線を熱に変換する。輻射線吸収材は典型的には、選択された画像形成輻射線を高度に吸収し、約0.2〜3以上の範囲の画像形成輻射線の波長の光学濃度を有するLTHC層を提供する。層の光学濃度は、層を通して透過された光の強さの、層上に入射した光の強さに対する比の対数(底10)の絶対値である。
【0090】
輻射線吸収材材料を、LTHC層の全体にわたって均一に配置することができ、または不均一に分散させることができる。例えば、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/474,002号に記載されているように、不均一なLTHC層を用いて、ドナー要素の温度プロフィルを制御することができる。これは、改善された転写性質(例えば、所期の転写パターンと実際の転写パターンとの間の、より良好な忠実度)を有するドナーシートをもたらすことができる。
【0091】
適した輻射線吸収材料には、例えば、染料(例えば、可視染料、紫外線染料、赤外線染料、螢光染料、および放射線偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属フィルム、および他の適した吸収材料などが挙げられる。適した輻射線吸収材の例には、カーボンブラック、金属酸化物、および金属硫化物などがある。適したLTHC層の1つの例には、カーボンブラックなどの顔料、有機ポリマーなどのバインダーを挙げることができる。別の適したLTHC層が、薄フィルムとして形成された金属または金属/金属酸化物、黒色アルミニウム(すなわち、黒い視覚的外観を有する部分酸化アルミニウム)を含む。金属および金属化合物フィルムが、例えば、スパッタリングおよび蒸着などの技術によって形成されてもよい。微粒子塗布が、バインダーおよび何れかの適した乾式または湿式塗布技術を用いて形成されてもよい。LTHC層はまた、類似したまたは異なった材料を含む2つ以上のLTHC層を組み合わせることによって形成することができる。例えば、LTHC層が、バインダーに配置されたカーボンブラックを含む塗布の上に黒色アルミニウムの薄い層を蒸着することによって形成されてもよい。
【0092】
LTHC層中で輻射線吸収材として使用するのに適した染料が微粒子の形で存在してもよく、バインダー材料中に溶解されるか、またはバインダー材料中に少なくとも部分的に分散されてもよい。分散された微粒子輻射線吸収材が用いられるとき、粒度は、少なくともいくつかの場合には、約10μm以下であってもよく、約1μm以下であってもよい。適した染料には、スペクトルのIR領域を吸収する染料、がある。特定の染料が、特定のバインダーまたは塗布溶剤への溶解度および相溶性、並びに吸収の波長範囲などの因子に基づいて選択されてもよい。
【0093】
顔料材料もまた、輻射線吸収材としてLTHC層中で用いられてもよい。適した顔料の例には、カーボンブラックおよび黒鉛、並びにフタロシアニン、ニッケルジチオレン、および米国特許第5,166,024号および同第5,351,617号に記載された他の顔料がある。更に、ピラゾロンイエロー、ジアニシジンレッド、およびニッケルアゾイエローの銅またはクロム錯体ベースの黒色アゾ顔料が有用である場合がある。例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、亜鉛、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ジルコニウム、鉄、鉛、およびテルル等の金属酸化物および硫化物などの無機顔料もまた、用いることができる。金属ホウ化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、青銅構造化酸化物、および構造上青銅系(例えば、WO2.9)の酸化物もまた、用いてもよい。
【0094】
米国特許第4,252,671号に記載されているように粒子の形においてか、または米国特許第5,256,506号に記載されているようにフィルムとして、金属輻射線吸収材を用いてもよい。適した金属には、例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、テルルおよび亜鉛などがある。
【0095】
LTHC層に用いるのに適したバインダーには、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラックおよびレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、およびポリカーボネートなどのフィルム形成ポリマーがある。適したバインダーには、重合または架橋した、または重合または架橋可能であるモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含めてもよい。光開始剤などの添加剤もまた、LTHCバインダーの架橋を容易にするために含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、バインダーは主に、任意のポリマーと架橋可能なモノマーまたはオリゴマーの塗布を用いて形成される。
【0096】
熱可塑性樹脂(例えば、ポリマー)を含むことにより、少なくともいくつかの場合、LTHC層の性能(例えば、転写性質または塗布性)を改善することができる。熱可塑性樹脂が、ドナー基材へのLTHC層の接着性を改善する場合があると考えられる。1つの実施態様において、バインダーは、25〜50重量%(重量パーセントを計算するとき、溶剤を除外する)の熱可塑性樹脂、好ましくは、30〜45重量%の熱可塑性樹脂を含むが、熱可塑性樹脂の、より低量(例えば、1〜15重量%)を用いてもよい。熱可塑性樹脂は典型的には、バインダーの他の材料と相溶性(すなわち、一相の結合を形成する)であるように選択される。少なくともいくつかの実施態様において、9〜13(cal/cm31/2、好ましくは、9.5〜12(cal/cm31/2の範囲の溶解パラメーターを有する熱可塑性樹脂がバインダーのために選択される。適した熱可塑性樹脂の例には、ポリアクリル、スチレン−アクリルポリマーおよび樹脂、ポリビニルブチラールなどがある。
【0097】
界面活性剤および分散剤などの従来の塗布助剤を添加して、塗布プロセスを容易にすることができる。LTHC層を、本技術分野に周知のいろいろな塗布方法を用いてドナー基材に塗布することができる。ポリマーまたは有機LTHC層を、少なくともいくつかの場合、0.05μm〜20μmの厚さまで、好ましくは、0.5μm〜10μm、より好ましくは1μm〜7μmの厚さまで塗布することができる。無機LTHC層を、少なくともいくつかの場合、0.0005〜10μmの範囲の厚さまで、好ましくは、0.001〜1μmの範囲の厚さまで塗布することができる。
【0098】
再び図2に戻ると、任意の中間層216を、LTHC層214と転写層218との間に配置してもよい。中間層を用いて、例えば、転写層の転写された部分の損傷および汚染を最小にすることができ、又、転写層の転写された部分の変形を低減させる場合がある。中間層はまた、ドナーシートの残部への転写層の接着性に影響を与える場合がある。典型的には、中間層は高い耐熱性を有する。好ましくは、中間層は、特に、転写された画像を非機能的にする程度にまで、画像形成条件下で変形または化学分解しない。中間層は典型的には、転写プロセスの間、LTHC層に接触したままであり、実質的に転写層を転写されない。
【0099】
適した中間層には、例えば、ポリマーフィルム、金属層(例えば、蒸着金属層)、無機層(例えば、ゾル−ゲル堆積層および蒸着無機酸化物(例えば、シリカ、チタニア、および他の金属酸化物))、および有機/無機複合層などがある。中間層材料として適した有機材料には、熱硬化性および熱可塑性材料の両方がある。適した熱硬化性材料には、架橋したまたは架橋可能なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ、およびポリウレタンなどがあるがそれらに限定されない熱、輻射線、または化学処理によって架橋することができる樹脂がある。熱硬化性材料を、例えば、熱可塑性樹脂前駆物質としてLTHC層上に塗布し、引き続いて架橋して架橋中間層を形成してもよい。
【0100】
適した熱可塑性材料には、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、およびポリイミドなどがある。これらの熱可塑性有機材料を、従来の塗布技術(例えば、溶剤塗布、噴霧塗布、または押出し塗布)によって適用してもよい。典型的には、中間層に使用するのに適した熱可塑性材料のガラス転移温度(Tg)は、25℃以上、好ましくは50℃以上である。いくつかの実施態様において、中間層は、画像形成の間に転写層で達した何れの温度より高いTgを有する熱可塑性材料を含む。中間層は、画像形成輻射線の波長において透過性、吸収性、反射性であるか、またはそれらの特定の組合せのどちらであってもよい。
【0101】
中間層材料として適した無機材料には、画像形成光の波長において高度に透過性または反射性である材料を含めて、例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物、および無機炭素塗布がある。これらの材料を、従来の技術(例えば、真空スパッタリング、真空蒸着、またはプラズマジェット堆積)によって光−熱変換層に適用してもよい。
【0102】
中間層は、多くの利点を提供する場合がある。中間層は、光−熱変換層からの材料の転写に対してのバリアである場合がある。それはまた、熱的に不安定な材料を転写することができるように、転写層において達する温度を変えることができる。例えば、中間層が熱拡散体として作用し、LTHC層で達成した温度に対して中間層と転写層との間の境界面の温度を制御することができる。これは、転写層の質(すなわち、表面の粗さ、エッジの粗さ、など)を改善することができる。中間層の存在はまた、転写された材料の改善された塑性復原をもたらす場合がある。
【0103】
中間層は、例えば、光開始剤、界面活性剤、顔料、可塑剤、および塗布助剤などの添加剤を含んでいてもよい。中間層の厚さは、例えば、中間層の材料、LTHC層の材料および性質、転写層の材料および性質、画像形成輻射線の波長、および画像形成輻射線にドナーシートを露光する時間などの因子に依存する場合がある。ポリマー中間層については、中間層の厚さは典型的には、0.05μm〜10μmの範囲である。無機中間層(例えば、金属または金属化合物中間層)については、中間層の厚さは典型的には、0.005μm〜10μmの範囲である。
【0104】
再び図2に戻ると、熱転写層218がドナーシート200に含まれる。転写層218は単独で、または他の材料と組み合わせて、1つ以上の層に配置された、何れかの適した材料を含むことができる。ドナー要素が直接加熱を行われるかまたは光−熱変換材料によって吸収されて熱に変換され得る画像形成輻射線に露光されるとき、転写層218を、何れかの適した転写機構によって一体としてまたは部分において選択的に転写することができる。
【0105】
本発明は、転写層の部分として非晶質母材を形成する重合性非晶質母材形成材料に配置された発光性、電荷輸送性、電荷ブロッキング性、または半導電材料を含む転写層を考察する。本発明は、発光材料としてLEPまたは他の発光分子を含む転写層を考察する。転写層を提供する一つの方法は、発光材料および重合性非晶質母材形成材料をドナー上に溶液塗布して発光材料を含む非晶質母材を形成することによる。この方法において、発光材料および重合性非晶質母材形成材料を、適した相溶性の溶剤を添加することによって可溶化し、スピン塗布、グラビア塗布、マイヤーロッド塗布、ナイフ塗布などによってドナーシート上に塗布することができる。選択された溶剤は好ましくは、ドナーシート中に既に存在している層と有害に相互作用(例えば、膨張または溶解)しない。次に、塗布を任意にアニールすることができ、溶剤を蒸発させて非晶質母材を含む転写層を残す。
【0106】
次いで、転写層を、ドナー要素から、隣接して配置された受容基材に選択的に熱転写することができる。多層構造体が単一ドナーシートを用いて転写されるように、必要ならば、1つより多い転写層が存在してもよい。付加的な転写層が、重合性非晶質母材形成材料または何か他の材料を含むことができる。受像基板[MBW1]は、ガラス、透明フィルム、反射フィルム、金属、半導体、およびプラスチックなどであるがそれらに限定されない特定の適用に適した何れの品目であってもよい。例えば、受容基材は、表示の適用に適した何れのタイプの基材または表示要素であってもよい。液晶表示または発光型表示などの表示に使用するのに適した受像基材には、可視光線に本質的に透過性である硬質または可撓性の基材がある。適した硬質の受容体の例には、インジウムスズ酸化物で塗布またはパターン化されるかまたは低温ポリ−シリコン(LTPS)または有機トランジスタを含めて他のトランジスタ構造体で回路化されるガラスおよび硬質のプラスチックがある。
【0107】
適した可撓性基材には、本質的に透明且つ透過性のポリマーフィルム、反射フィルム、半透過フィルム、偏光フィルム、多層光学フィルムなどがある。可撓性基材はまた、電極材料またはトランジスタで塗布またはパターン化されることができ、例えば、トランジスタアレイが仮キャリア基板上に形成された後に可撓性基材上に直接形成されるかまたは可撓性基材に転写される。適したポリマー基材には、ポリエステルベース(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタールなど)、セルロースエステルベース(例えば、三酢酸セルロース、酢酸セルロース)、および支持体として用いられる他の従来のポリマーフィルムがある。プラスチック基材上にOELを作製するために、バリアフィルムまたは塗布をプラスチック基材の一方または両方の表面の上に備えて望ましくないレベルの水、酸素等に暴露することから有機発光素子およびそれらの電極を保護することが、しばしば望ましい。
【0108】
受像基材を、電極、トランジスタ、コンデンサー、絶縁リブ、スペーサ、カラーフィルター、黒色母材、正孔輸送層、電子輸送層の他、電子表示に有用な他の要素または他の素子の何れかの1つ以上で予備パターン化することができる。
【0109】
本発明は、偏光発光OEL表示および素子を考察する。1つの実施態様において、発光する、および異なった色を有する光を放射することができる隣接した素子を有するOEL表示を作製することができる。例えば、図3は、基材320上に配置された複数のOEL素子310を備えるOEL表示300を示す。異なった光の色を放射する隣接した素子310を作製することができる。
【0110】
素子310間に示した分離は、説明に役立てるだけのものである。隣接した素子は、表示基材上に1つより多い方向で、分離、接触、重複させる等、またはこれらの異なった組合せであってもよい。例えば、平行なストライプの透明導電性アノードのパターンを基材上に形成した後、正孔輸送材料のストライプのパターンおよび赤、緑、および青の発光LEP層のストライプの反復パターンを形成し、その後、アノードストライプに垂直に方向付けしたカソードのストライプのパターンを形成することができる。かかる構造体は、受光型マトリクス表示の形成に適している場合がある。他の実施態様において、透明導電性アノードパッドを、基材上に2次元のパターンとして設けることができ、発光型マトリクス表示の作製に適しているような、1つ以上のトランジスタ、コンデンサーなどの電子回路のアドレスと結合することができる。次に、発光層などの他の層を、単一層として塗布または堆積することができ、またはアノードもしくは電子素子の上にパターン化することができる(例えば、平行なストライプ、アノードと等しい2次元のパターンなど)。他の何れかの適した構造体もまた、本発明によって考察される。
【0111】
1つの実施態様において、表示300は多色表示であってもよい。それ故に、発光素子と視認者との間に任意の偏光子330を配置し、表示のコントラストを増強することが望ましい場合がある。典型的な実施態様において、素子310の各々が発光する。図3に示した一般的な構造体に包含される多くの表示および素子構造体がある。それらの構造体のいくつかを、以下の通り考察する。
【0112】
OELバックライトは、発光層を備えることができる。構造体には、無塗布または回路付き基板、アノード、カソード、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、発光層、色変化層、およびOEL素子に適した他の層および材料を挙げることができる。又、構造体には、偏光子、拡散体、光ガイド、レンズ、光制御フィルム、輝度増強フィルムなどを挙げることができる。適用には、例えば、発光材料がサーマルスタンプ転写、積層転写、抵抗ヘッド感熱印刷などによって提供される場合、白色または単一色大面積単一ピクセルランプ、レーザによる熱転写によってパターン化された多数の近接して隔置された発光層を有する白色または単一色大面積単一電極対ランプ、およびチューナブルカラー多数電極大面積ランプ、などがある。
【0113】
低解像度OEL表示は、発光層を含むことができる。構造体には、無塗布または回路付き基板、アノード、カソード、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、発光層、色変化層、およびOEL素子に適した他の層および材料を挙げることができる。又、構造体には、偏光子、拡散体、光ガイド、レンズ、光制御フィルム、輝度増強フィルムなどを挙げることができる。適用には、グラフィックインジケータランプ(例えば、アイコン)、セグメント化英数字表示(例えば、電気器具の時刻表示器)、小型白黒受光型または発光型マトリクス表示、集積表示の一部として小型白黒受光型または発光型マトリクス表示とグラフィックインジケータランプの両方(例えば、携帯電話の表示)、使用される屋外表示に適している場合があるような、大面積ピクセル表示タイル(例えば、各々、比較的小数のピクセルを有する複数のモジュール、またはタイル)、および安全表示の適用などがある。
【0114】
高解像度OEL表示は、発光層を備えることができる。構造体には、無塗布または回路付き基板、アノード、カソード、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、発光層、色変化層、およびOEL素子に適した他の層および材料を挙げることができる。又、構造体には、偏光子、拡散体、光ガイド、レンズ、光制御フィルム、輝度増強フィルムなどを挙げることができる。適用には、発光型または受光型マトリクスマルチカラーまたはフルカラー表示、発光型または受光型マトリクスマルチカラーまたはフルカラー表示とセグメント化またはグラフィックインジケータランプの両方(例えば、同じ基板上にレーザによる高解像度素子の転写とアイコンのサーマルホットスタンプ)、および安全表示の適用がある。
【実施例】
【0115】
実施例1:1−(7−メトキシ−フルオレン−2−イル)−エタノンの合成
【化15】

カジガエシ(Kajigaeshi)ら著Bull.Chem.Soc.Jpn.,52,3569〜3572(1979年)またはグレイ(Gray)ら著、J.Chem Soc.,1955;2686〜2688により、フルオレン−2−イルメチルエーテルを塩化アセチル/AlCl3でアシル化することによって1−(7−メトキシ−フルオレン−2−イル)−エタノンを調製する。
【0116】
実施例2:1−(7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イル)−エタノンの合成
【化16】

ツノ(Tsuno)ら著、Bull.Chem.Soc.Jpn.,51,601〜607(1978年)により、2−ブロモフルオレン(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))製)と無水酢酸/AlCl3/ニトロベンゼンとの反応によって1−(7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イル)−エタノンを調製する。
【0117】
実施例3:1−(7−ブロモ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)−エタノンの合成
【化17】

ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(3.19g、14mmole、0.077eq)および1−(7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イル)−エタノン(52.26g、182mmole、1eq)を178mLのDMSO中で懸濁した。50%NaOH水溶液(80mL)を添加する。次に、1−ブロモプロパン(59.88g、437mmole、2.4eq)を少しずつ添加する。反応物を2時間、室温で撹拌してから止め、次いで、水性層をエーテルで抽出する。混合エーテル層を5回、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させる。次に、有機層を濾過し、蒸発させて乾燥させ、残留物をシリカゲルカラムでフラッシュクロマトグラフを実施し、1−(7−ブロモ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)−エタノンを生じた。
【0118】
実施例4:トリブロミド(A)の合成
【化18】

150mLのp−シメンに溶かした実施例3の1−(7−ブロモ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)−エタノン(20g、53.9mmol)とp−MeC64SO3H(0.3g)との混合物をディーンスターク装置で3日間、還流し、化合物Aを生じる。
【0119】
実施例5:重合性非晶質母材形成化合物1の合成
【化19】

化合物1を、W.A.ヌーゲント(W.A.Nugent)およびR.J.マッキンニー(R.J.MckKinney)著、J.Org.Chem.,50,5370〜5372(1985年)に記載されているのと同様な方法によって合成することができる。THFに溶かした実施例4のトリブロミドA(1mmole)および[ビス(ジメチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)クロリド(0.03mmol)を、室温でビニルマグネシウムブロミド(3.75mL、1.0MのTHF溶液)で処理した。反応が終了した後、それを半飽和NH4Cl水溶液で急冷する。この混合物をエーテルで抽出し、エーテルの蒸発後に生成物が得られる。
【0120】
実施例6:アジド部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
アジド化合物を、P.A.S.スミス(P.A.S.Smith)、C.D.ロウ(C.D.Rowe)およびL.B.ブルーナー(L.B.Bruner)著、J.Org.Chem.,34,3430〜3433(1969年)に記載されているのと同様な方法によって合成することができる。エーテル(10mL)中に溶かした実施例4のトリブロミドA(1mmole)をゆるやかな還流しながらマグネシウム削り屑(4mmole)で処理する。反応が終了した後、反応混合物を、0℃のエーテル10mL中のp−トルエンスルホニルアジド(3.3mmole)の溶液に添加する。添加が終わると、ピロリン酸四ナトリウム十水化物(3mmol)水溶液を滴下する。一晩、撹拌した後に、エーテル層を分離し、CaCl2で乾燥させ、石油エーテルで酸化アルミニウムカラムで溶出することによって精製する。石油エーテルの蒸発により、生成物を生じる。
【0121】
実施例7:アセチレン部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
【化20】

実施例4のトリブロミドA(30.0mmol)を、アルゴン雰囲気下、ジエチルアミン(250mL)に溶解する。ヨウ化銅(50mg)およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(400mg)を、撹拌した溶液に添加する。トリメチルシリルアセチレン(10.6g、108mmol)を添加し、混合物を7時間、50℃で加熱した。冷却した後に、ジエチルアミンブロミドヒドロブロミドの形成された沈殿物を濾過し、エーテルで洗浄する。次に、混合濾液を蒸発させて乾燥させ、次いで、残留物をカラムでクロマトグラフを実施する(Al23担体、石油エーテル(light petroleum ether))。成果物を1時間、室温で撹拌しながらMeOH−NaOHの混合物(50ml、30ml 1M)で処理する。有機溶剤を蒸発させ、残留物をエーテルで抽出し、乾燥させる(Na2SO4)。溶剤を除去することにより、生成物を生じ、それを昇華によって精製することができる。
【0122】
実施例8:メトキシド部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
【化21】

この化合物は、実施例4のトリブロミドAの調製と同じ一般的な方法によって製造されるが、ただし、1−(7−ブロモ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)−エタノンの代わりに1−(7−メトキシ−フルオレン−2−イル)−エタノン(実施例1)を用いる。
【0123】
実施例9:ヒドロキシル部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
【化22】

BBr3を用いて標準条件下で実施例8の化合物の脱メチル化によって、このアルコールを合成することができる。
【0124】
あるいは、M.F.ホーソーン(M.F.Hawthorne)、J.Org.Chem.,22,1001(1957年)に記載されているのと同様な方法によって、このアルコールを合成することができる。エーテル(10mL)中に溶かした実施例4(1mmole)のトリブロミドAを、ゆるやかな還流しながらマグネシウム削り屑(4mmole)で処理する。反応が終了した後、それを、−78℃のエーテル10mLに溶かしたエーテルホウ酸メチル(3.3mmole)の溶液に添加する。添加が終わると、10%のHClを3mL添加しながら反応物を室温に昇温させる。エーテル層を分離し、数回、水で洗浄した。次に、10%のH22を3mL、エーテル層に添加する。次いで、エーテル層を(NH42Fe(SO42水溶液で洗浄し、過剰なH22を除去する。エーテルの蒸発により、生成物を生じる。
【0125】
実施例10:ペルフルオロビニルエーテル部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
この化合物を、米国特許第5,023,380号の実施例1に記載されているのと同様な方法によって実施例4のトリブロミドAから合成することができる。
【0126】
実施例11:メタクリレート部分を有する重合性非晶質母材形成化合物の合成
代表的なアシル化条件下で実施例9のアルコールをメタクリロイルクロリドと反応させることによって、このメタクリレート化合物を前記アルコールから合成することができる。
【0127】
本発明は、上に記載した特定の実施例に限定されると考えられるべきではなく、添付した請求項に明白に示される本発明のすべての態様にわたると理解されるべきである。本発明が適用可能である様々な改良、同等の方法、並びに多数の構造は、本明細書を検討すると、本発明の技術分野の当業者には容易に理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
発光材料が内部に配置された重合性非晶質母材を含む転写層をドナー基材上に溶液塗布する工程と、
前記転写層の一部分を受容体に選択的に熱転写する工程と、
前記受容体に転写された前記転写層の前記一部分の前記重合性非晶質母材を重合させる工程と、を含む方法。
【請求項2】
光−熱変換層を前記ドナー基材上に形成する工程を更に含み、前記転写層を前記受容体に選択的に熱転写する工程が、前記光−熱変換層を画像形成輻射線で選択的に照射し、前記画像形成輻射線を熱に変換する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの付加的な転写層を前記基材上に形成する工程を更に含み、前記転写層を前記受容体に選択的に熱転写する工程が、前記転写層および前記少なくとも1つの付加的な転写層を前記受容体に選択的に熱転写する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記発光材料が発光ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記発光材料が燐光材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重合性非晶質母材が、非晶質母材形成ベース構造および前記ベース構造に結合した少なくとも2つの重合性部分を有する少なくとも1つの重合性非晶質母材形成化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重合性部分が独立して、ビニル、ペルフルオロビニルエーテル、アジド、ペンタジエニル、アルキニル、(メタ)アクリレート、フェニルアルキニル、イソシアナト、およびベンゾシクロブタン部分から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベース構造がデンドリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ベース構造が、
【化1】

から選択され、上式中、各Rが独立して、アルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、およびヘテロアリーレンから選択された少なくとも1つの官能基を含む置換基である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記重合工程が、前記受容体に転写された前記転写層の前記一部分の前記重合性非晶質母材を熱重合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記転写層が架橋剤を更に含み、前記重合工程が、前記受容体に転写された前記転写層の前記一部分の、前記重合性非晶質母材および前記架橋剤を重合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記発光材料が重合性発光化合物を含み、前記重合工程が、前記受容体に転写された前記転写層の前記一部分の、前記重合性非晶質母材および前記重合性発光化合物を重合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ドナーシートであって、
基材と、
前記基材上に配置され、重合性非晶質母材および前記母材に配置された発光材料を含む転写層と、を含み、前記転写層が、前記ドナーシートから隣接して配置された受容体に選択的に熱転写され得るドナーシート。
【請求項14】
前記基材と前記転写層との間に配置された光−熱変換層を更に含む、請求項13に記載のドナーシート。
【請求項15】
前記発光材料が発光ポリマーを含む、請求項13に記載のドナーシート。
【請求項16】
前記発光材料が燐光材料を含む、請求項13に記載のドナーシート。
【請求項17】
前記重合性非晶質母材が、非晶質母材形成ベース構造および前記ベース構造に結合した少なくとも2つの重合性部分を有する少なくとも1つの重合性非晶質母材形成化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記重合性部分が独立して、ビニル、ペルフルオロビニルエーテル、アジド、ペンタジエニル、アルキニル、(メタ)アクリレート、フェニルアルキニル、イソシアナト、およびベンゾシクロブタン部分から選択される、請求項17に記載のドナーシート。
【請求項19】
前記ベース構造がデンドリマーを含む、請求項17に記載のドナーシート。
【請求項20】
前記ベース構造が、
【化2】

から選択され、上式中、各Rが独立して、アルケニル、アルケニレン、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、およびヘテロアリーレンから選択された少なくとも1個の官能基を含む置換基である、請求項17に記載のドナーシート。
【請求項21】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1および第2の電極の間に配置され、発光材料が内部に配置された重合有機母材を含む発光層と、を含む、エレクトロルミネセンス素子。
【請求項22】
前記発光材料が、前記母材中で重合された発光化合物を含む、請求項21に記載のエレクトロルミネセンス素子。
【請求項23】
前記発光材料が発光ポリマーを含む、請求項21に記載のエレクトロルミネセンス素子。
【請求項24】
前記発光材料が燐光材料を含む、請求項21に記載のエレクトロルミネセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【公開番号】特開2010−45051(P2010−45051A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266834(P2009−266834)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2003−521064(P2003−521064)の分割
【原出願日】平成14年8月15日(2002.8.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】