説明

電気自動車の空気調和装置とその制御方法

【課題】室内暖房のためのバッテリー電力の消耗量を低減させて燃費を向上させることができる電気自動車の空気調和装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】車室内の空気を送風するブロワーと、ブロワーにより送風される空気の供給を受けるバッテリー及びインバーターと、空気の流れ方向及び流量を制御し、バッテリー及びインバーターを通過した空気を車室内に循環させるか、または室外に排出する弁と、インバーターと弁との間に設置され、バッテリー及びインバーターを通過した空気を加熱したのちに車室内に循環させて室内暖房を補助する電気式ヒーターと、車室内の空気によってバッテリー及びインバーターを冷却するようにブロワーと弁とを制御するコントローラーと、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気自動車の空気調和装置とその制御方法に係り、より詳しくは、効率よく室内暖房を行い、バッテリー電力の消耗量を低減させ、走行距離と燃費を向上させることができる電気自動車の空気調和装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジンは、排気ガスによる環境汚染、二酸化炭素による地球温暖化、及び窒素酸化物(NOX)などの生成による呼吸器疾患の誘発などのような多くの問題点を有している。また、地球上に存在する化石燃料は埋蔵量が限定されているため、いつかは枯渇する危機に置かれている。
【0003】
これらの問題点を解決するために、バッテリーのような蓄電手段に蓄積した電気エネルギーを用いてモーターを駆動して走行する純粋の電気自動車(EV)、エンジンとモーターとで走行するハイブリッド自動車(HEV)、及び燃料電池で生成される電力によってモーターを駆動させて走行する燃料電池自動車(FCEV)などのような電気自動車が開発されてきた。
【0004】
純粋の電気自動車とハイブリッド自動車とは、車両を駆動させるためのモーターと併せて、モーターに電力を供給する蓄電手段としてバッテリーを含む。燃料電池自動車の場合も主動力源である燃料電池と並列に連結される補助動力源として蓄電手段が使用され、また補助動力源としてバッテリーの他にスーパーキャパシタが具備された燃料電池ハイブリッドシステムも開発されている。
また、電気自動車にはモーターを回転させるためのインバーターが具備される。インバーターは制御装置で印加される制御信号に従って蓄電手段または燃料電池から供給される電気を相変換させてモーターを駆動させる。
【0005】
電気自動車には室内暖房のための暖房装置が具備され、更に空気浄化装置を備えて車両の室内空気を快適に維持できるようにしたものもある。
【0006】
電気自動車の暖房装置としてバッテリーの電力を利用するためにはヒーター装置が使用される。このようなヒーター装置の例としてPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーターを挙げることができる(例えば特許文献1参照)。PTCヒーターは、車両の暖房性能を補完するための補助暖房装置として、既存のガソリンエンジン車両またはディーゼルエンジン車両でも使用されている。
【0007】
しかし、バッテリーに貯蔵された電気エネルギーを使用して暖房のためにヒーター装置(PTCヒーター)を使用すると、バッテリーの電力を消耗するため、車両の走行距離が短くなるという問題が発生する。燃料電池自動車の場合も室内暖房のための過度な電力を消耗させると燃費の低下の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−268045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、室内暖房のためのバッテリー電力の消耗量を低減させて燃費を向上させることができる電気自動車の空気調和装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明による電気自動車の空気調和装置は、車室内の空気を送風するブロワーと、ブロワーにより送風される空気の供給を受けることができるように設置されたバッテリー及びインバーターと、室内温度センサー、室外温度センサー、バッテリー温度センサー、及びインバーター温度センサーからの検知信号を受信し、車室内の空気によってバッテリー及びインバーターを冷却するように制御するコントローラーと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0011】
更に本発明は、コントローラーにより制御されて空気の流れの方向及び流量を制御し、バッテリー及びインバーターを通過した空気を車室内に循環させるか、または室外に排出することによって、車室内の空気を暖房するように設置された弁を更に備えることが好ましい。
【0012】
また本発明は、インバーターと弁との間に設置され、バッテリー及びインバーターを通過した空気を加熱したのちに車室内に循環させて室内暖房を補助する電気式ヒーターを更に備えることが好ましい。
また本発明のコントローラーは、弁及びブロワーを制御して車室内の空気が前記バッテリーを加熱するように設定されることが好ましい。
【0013】
また本発明の電気自動車の空気調和装置の制御方法は、空気を送風するブロワーを駆動する段階と、バッテリー及びインバーターの温度が予め設定した温度以上に上昇した場合にブロワーにより送風される空気をバッテリー及びインバーターに供給してバッテリー及びインバーターを冷却する段階と、を含む。
【0014】
また本発明は、車室内の温度が使用者が設定した要求温度より低い場合に、前記バッテリー及びインバーターを通過して加熱された空気を車室内に供給して室内暖房を行う段階を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電気自動車の空気調和装置とその制御方法によると、車両走行時にバッテリー及びインバーターの放出熱を室内暖房用として利用することで、より効率的な暖房が可能となり、車両の室内暖房のためのバッテリー電力の使用量を低減させることができるため、走行距離と燃費を向上させることができる。
【0016】
また本発明によると、車室内の空気を送風してバッテリー及びインバーターを冷却し、バッテリー及びインバーターの効率を増大させると同時に、暖房機能を使用することにより効率的な車室内暖房を行うことができる。
また本発明によると、低温始動時に、ブロワーの送風方向を逆回転させて車室内の空気を電気式ヒーター13で加熱した後、バッテリー11及びインバーター12に送り、バッテリー11を加温することができる。
【0017】
車体の重量と製造原価の多くの割合を占めているブロワーを1個だけ設置することによって、バッテリー及びインバーターの冷却と、バッテリー及びインバーターの放出熱を利用した暖房とを、同時に行うことができ、部品数の縮小、車体の重量の削減、及び原価節減の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例による電気自動車用空気調和装置を表す概略図である。
【図2】本発明の一実施例による空気調和装置を制御するための構成を図示したブロック図である。
【図3】図1でバッテリー及びインバーターの廃熱を利用して室内暖房をするための車室内の空気の循環を表す概略図である。
【図4】図1でバッテリー及びインバーターの冷却後、室外排出される車室内の空気の循環を表す概略図である。
【図5】図1でバッテリーを加熱するための車室内の空気の循環を表す概略図である。
【図6】本発明の一実施例で空気調和装置の制御方法を表す順序図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。
図1は本発明の一実施例による電気自動車用空気調和装置を表す概略図であり、図2は本発明の一実施例による空気調和装置を制御するための構成を図示したブロック図である。
【0020】
本発明は、バッテリー11に貯蔵された電気エネルギー又は燃料電池で生成された電気エネルギーを使用して駆動モーターを駆動させて走行する純粋の電気自動車、ハイブリッド自動車、及び燃料電池自動車などのような電気自動車の空気調和装置に関する。
【0021】
本発明に係る空気調和装置は、車両に装着されたバッテリー11及びインバーター12を冷却または加熱し、バッテリー11及びインバーター12の廃熱を利用して車室内を暖房する暖房装置であって、電気式ヒーター13(PTCヒーター)、その他の車両に搭載され得るヒーター装置、または電気エネルギーを熱エネルギーに変換する補助熱交換装置を使用する電気自動車の冬季の室内暖房用装置として有用に使用し得る。
【0022】
本発明の一実施例による空気調和装置はブロワー10、バッテリー11、インバーター12、電気式ヒーター13、弁14及びコントローラー15を含む。
【0023】
空気調和装置は、更に車室内とブロワー10を連結する第1循環ライン20と、ブロワー10、バッテリー11、インバーター12、及び弁14を連結する連結ライン21と、第1循環ライン20と連結ライン21を通して流入された空気が再び車室内に排出されるように車室内と弁14とを連結する第2循環ライン22と、第1循環ライン20を通して流入された空気を車室外に排出するように弁14と室外とを連結する空気排出ライン23と、を含む。
【0024】
ブロワー10は、送風の方向を反転できる構造であって、空気を車室内からバッテリー11に送風したり、バッテリー11から排出される空気を車室内に送風できることが好ましい。
バッテリー11は、駆動モーターに電力を供給する蓄電手段である。
【0025】
インバーター12は、コントローラー15から印加される制御信号に従ってバッテリー11から供給される電気を相変換して駆動モーターを駆動させる。
電気式ヒーター13は、バッテリー11及びインバーター12から排出される熱により空気を加熱した後、車室内に供給することで、室内暖房を行う本発明の補助暖房システムで不足した熱量を補充するためのものである。
【0026】
即ち、バッテリー11及びインバーター12の温度が低く、室内暖房に必要な熱がバッテリー11及びインバーター12から放出されておらず、室内暖房のための熱量が不足するとき、バッテリー11及びインバーター12で1次加熱された空気を電気式ヒーター13により更に加熱したのちに車室内に供給することで、車室内の温度を目標とする暖房温度に容易に到達させることができる。
【0027】
弁14は、選択された方向へ空気が流れるようにする切換弁の役割を行うように制御することが可能であり、さらに各方向の開度量の調節を通して空気量を適切に分配する分配弁の役割を行うように制御することが可能であることが好ましく、例えば、3方向弁を使用し得る。
【0028】
前記コントローラー15は、ブロワー10、及び電気式ヒーター13を制御し、また、室内温度センサー16、室外温度センサー17、バッテリー温度センサー18、及びインバーター温度センサー19からの信号の入力を受け、これに基いて弁14の動作を制御することができる。
【0029】
前記コントローラー15は、室内温度センサー16の検出値である車両の室内温度、室外温度センサー17の検出値である外気温度、バッテリー温度センサー18の検出値であるバッテリー11の温度、及びインバーター温度センサー19の検出値であるインバーター12の温度に基づいて、ブロワー10のオンオフ、ブロワー10の回転速度(送風量)、ブロワー10の回転方向(送風の方向)、及び弁14の開度状態を制御するよう設定され、同時に、使用者のスイッチング操作によってもブロワー10の駆動を制御することができるように設定されることが好ましい。
【0030】
このような構成による本発明の一実施例による電気自動車の空気調和装置の制御方法を説明すると次のとおりである。
図3は図1でバッテリー及びインバーターの廃熱を利用して室内暖房をするための車室内の空気の循環を表す概略図であり、図4は図1でバッテリー及びインバーターの冷却後、室外排出される車室内の空気の循環を表す概略図であり、図5は図1でバッテリーを加熱するための車室内の空気の循環を表す概略図であり、図6は本発明の一実施例で空気調和装置の制御方法を表す順序図である。
【0031】
1.バッテリー11及びインバーター12の冷却
車両の走行時にバッテリー11とインバーター12が高温状態にあり、室内温度より相対的に高いとき、例えば、車両の室内温度が16〜20℃であり、バッテリー11及びインバーター12の温度が30〜40℃である場合に、これらの温度を室内温度センサー16、バッテリー温度センサー18、及びインバーター温度センサー19が検知する。
【0032】
次いで、コントローラー15がバッテリー温度センサー18とインバーター温度センサー19からの検知信号の入力を受けてブロワー10にオン信号を送り、図3に示すように、車室内の空気をバッテリー11とインバーター12に供給するようにブロワー10を作動させる。ブロワー10が作動されると、第1循環ライン20を通して車室内の空気が流入してバッテリー11及びインバーター12を冷却することができる。
【0033】
2.室内暖房
バッテリー11及びインバーター12を通過した空気は、バッテリー11とインバーター12で発生した熱を吸収するため、車室内の空気の温度より相対的に高い場合がある。例えば、使用者が要求する設定温度が20℃であるが、室内温度センサー16を通して検知された温度が18℃であって暖房が必要な状態であると判断される場合、コントローラー15が弁14を車室内に送風するように調節し、バッテリー11を通過した空気の大部分を車室内に送ることができる。
【0034】
車室内で要求される使用者要求温度がバッテリー11及びインバーター12を通過した空気の温度より高い場合、例えば、使用者の要求温度が23℃でありバッテリー11及びインバーター12が16℃である場合、電気式ヒーター13を作動させ前記バッテリー11及びインバーター12を通過した空気を電気式ヒーター13に供給して更に空気を加熱した後、第2循環ライン22を通して車室内に供給することで室内温度を高めることができる。
【0035】
車室内の温度が使用者が設定した要求温度と同じか要求温度より高いため暖房が必要でない場合は、図4に示すように、コントローラー15が弁14制御して空気をを室外に放出するように作動させてバッテリー11を通過した空気を空気排出ライン23を通して室外に排出させることが好ましい。
【0036】
3.バッテリー11の加熱
最初の始動時もしくは冬季の低温始動時はバッテリー11が十分に加熱されていない状態であるため、バッテリー11を適正温度に上げるために、図5に示すように、コントローラー15が弁14を車室内と連通するように作動させると共に、ブロワー10を逆方向に作動させて、車室内の空気が第2循環ライン22を通して電気式ヒーター13により加熱された後、インバーター12及びバッテリー11を通過しながらバッテリー11を加熱し、第1循環ライン20を通して車室内に循環されるように設定することが好ましい。
【0037】
このような制御方法により、ブロワー10を通して流入された車室内の空気が高温のバッテリー11及びインバーター12に送られながら、熱交換を通してバッテリー11及びインバーター12を冷却させるだけでなく、バッテリー11及びインバーター12から高温の熱を奪って車室内の空気を暖房させることができる。
【0038】
更に、冬季の低温始動時、ブロワー10の送風方向を逆回転させて第2循環ライン22を通して流入した車室内の空気が、高温の電気式ヒーター13を通過しながら加熱された後、バッテリー11及びインバーター12を通過しながらバッテリー11を加熱することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 ブロワー
11 バッテリー
12 インバーター
13 電気式ヒーター
14 弁
15 コントローラー
16 室内温度センサー
17 室外温度センサー
18 バッテリー温度センサー
19 インバーター温度センサー
20 第1循環ライン
21 連結ライン
22 第2循環ライン
23 空気排出ライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気を送風するブロワーと、
前記ブロワーにより送風される空気の供給を受けることができるように設置されたバッテリー及びインバーターと、
室内温度センサー、室外温度センサー、バッテリー温度センサー、及びインバーター温度センサーからの検知信号を受信し、車室内の空気によって前記バッテリー及び前記インバーターを冷却するように制御するコントローラーと、
を含んで構成されることを特徴とする電気自動車の空気調和装置。
【請求項2】
前記コントローラーにより制御されて空気の流れ方向及び流量を制御し、前記バッテリー及び前記インバーターを通過した空気を車室内に循環させるか、または室外に排出することによって、車室内の空気を暖房するように設置された弁を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の空気調和装置。
【請求項3】
前記インバーターと前記弁との間に設置され、前記バッテリー及び前記インバーターを通過した空気を加熱したのちに車室内に循環させて室内暖房を補助する電気式ヒーターを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の空気調和装置。
【請求項4】
前記コントローラーは、前記弁及び前記ブロワーを制御して、車室内の空気が前記バッテリーを加熱するように設定されることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の空気調和装置。
【請求項5】
空気を送風するブロワーを駆動する段階と、
バッテリー及びインバーターの温度が予め設定した温度以上に上昇した場合に、前記ブロワーにより送風される空気を前記バッテリー及び前記インバーターに供給して前記バッテリー及び前記インバーターを冷却する段階と、
を含むことを特徴とする電気自動車の空気調和装置の制御方法。
【請求項6】
車両の室内温度が使用者が設定した要求温度より低い場合に、前記バッテリー及び前記インバーターを通過して加熱された空気を車室内に供給して室内暖房を行う段階を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の電気自動車の空気調和装置の制御方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−116331(P2011−116331A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27619(P2010−27619)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】