説明

電気自動車

【課題】支持部材の第2装置を支持する部分に第2装置の荷重による曲げ応力が発生されず、その支持部材における第2装置を支持する部分のこじり変形が防止される電気自動車を提供する。
【解決手段】燃料電池用酸化ガス送給機20は、その固定用突部20aが締結部材70によって支持部材60の他端部60bにおける燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面60cに固定されることにより、支持部材60が燃料電池用酸化ガス送給機20をその重心G1の位置で支持できるので、その支持部材60における燃料電池用酸化ガス送給機20を支持する他端部60bに燃料電池用酸化ガス送給機20の荷重による曲げ応力Mが発生しなくなり、その支持部材60における燃料電池用酸化ガス送給機20を支持する他端部60bのこじり変形が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取り付けられた第1装置に支持部材を介して第2装置を締結する電気自動車に関し、特に上記支持部材のこじり変形を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1および特許文献2に示すように、駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えた車両が知られている。それに対し、エンジンを備えない車両もある。例えば、駆動力源として電動機を備えた電気自動車である。特許文献3には、燃料電池からの電力により作動する電動機を備えた電気自動車(燃料電池車)が記載されており、その燃料電池車の車体に取り付けられた電動機である駆動モータに、空気を圧縮する圧縮機およびその圧縮機を駆動するための駆動装置が締結されている。
【0003】
上記のような電気自動車において、例えば、図12に示すような電気自動車を構成することが考えられる。この電気自動車は、車体に取り付けられた第1装置例えばその電気自動車の駆動力源としての駆動用電動機がエンジンおよびトルクコンバータに替えて装着されてその回転を駆動輪に伝達する既成の駆動装置110に、そのエンジンに替えて、支持部材112を介して第2装置例えば燃料電池に圧縮空気を供給する燃料電池用酸化ガス送給機114を締結するものである。図12において、一点鎖線は駆動装置110を示す仮想線であり、二点鎖線は支持部材112を示す仮想線である。
【0004】
図12に示すように、支持部材112は、一端部が駆動装置110のケースに固定され、他端部に燃料電池用酸化ガス送給機114を取り付ける環状部材であって、燃料電池用酸化ガス送給機114の一部の外周を覆うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−306356号公報
【特許文献2】特開平08−332858号公報
【特許文献3】特開2003−285652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図12に示す電気自動車おいて、燃料電池用酸化ガス送給機114を支持する際に、その燃料電池用酸化ガス送給機114の重心Gを挟むように支持することすなわち燃料電池用酸化ガス送給機114が駆動装置110のケースおよび支持部材112によって一対の支持位置A1およびA2で支持することが望ましい。しかし、例えば、駆動装置110のケースに開発工数や開発コストを低減するために以前から使用されていた既存のケースが流用されて、その駆動装置110のケースで燃料電池用酸化ガス送給機114を望ましい支持位置で支持できない等の場合、図12に示すように、燃料電池用酸化ガス送給機114が支持部材112によってその支持部材112の支持位置A3で支持されることがある。図12において、一点鎖線の一対の三角形は、燃料電池用酸化ガス送給機114が駆動装置110のケースおよび支持部材112によって支持されるべき望ましい支持位置A1およびA2を示し、実線の三角形は、駆動装置110のケースと燃料電池用酸化ガス送給機114との間に制約がある場合における燃料電池用酸化ガス送給機114が支持部材112の支持部によって支持される支持位置A3を示すものである。
【0007】
しかしながら、図12に示すように、燃料電池用酸化ガス送給機114が支持部材112によって支持位置A3で支持されると、燃料電池用酸化ガス送給機114の荷重によって支持部材112におけるその燃料電池用酸化ガス送給機114を支持する部分に曲げ応力Mが発生して、支持部材112のその燃料電池用酸化ガス送給機114を支持する部分がこじり変形してしまうという問題があった。このような課題は、燃料電池用酸化ガス送給機114が重量物であるほど顕著となる。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第2装置が支持部材を介して第1装置に支持される場合において、その支持部材におけるその第2装置を支持する部分に、第2装置の荷重による曲げ応力が発生されず、その曲げ応力に起因するこじり変形の発生が防止される電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 車体に取り付けられた第1装置に支持部材を介して第2装置を締結する電気自動車であって、(b) 前記支持部材は、一端部が前記第1装置に固定され、他端部に前記第2装置の重心を含む鉛直面に位置する取付面を有する環状部材であって、その第2装置のうち前記第1装置側の一部或いは全部の外周を覆うものであり、(c) 前記第2装置には、その第2装置から外周側へ突き出す固定用突部が備えられ、(d) 前記第2装置は、その第2装置の固定用突部が前記支持部材の取付面に当接させられた状態で、その固定用突部が締結部材によりその支持部材の取付面に固定されることで、前記支持装置に固定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気自動車によれば、(b) 前記支持部材は、一端部が前記第1装置に固定され、他端部に前記第2装置の重心を含む鉛直面に位置する取付面を有する環状部材であって、その第2装置のうち前記第1装置側の一部或いは全部の外周を覆うものであり、(c) 前記第2装置には、その第2装置から外周側へ突き出す固定用突部が備えられ、(d) 前記第2装置は、その第2装置の固定用突部が前記支持部材の取付面に当接させられた状態で、その固定用突部が締結部材によりその支持部材の取付面に固定されることで、前記支持部材に固定される。このため、前記第2装置は、その固定用突部が前記締結部材によって前記支持部材の他端部における前記第2装置の重心を含む鉛直面に位置する取付面に固定されることにより、前記支持部材が前記第2装置をその第2装置の重心の位置で支持することできるので、その支持部材における前記第2装置を支持する部分に前記第2装置の荷重による曲げ応力が発生しなくなり、その支持部材における前記第2装置を支持する部分のこじり変形が防止される。
【0011】
ここで、好適には、(a) 前記第1装置は、ハイブリッド車用のトランスアクスルケース内に設けられた第2電動機によって駆動輪を駆動する駆動装置であり、(b) 前記第2装置は、前記トランスアクスルケースのエンジンの装着部位にそのエンジンに替えて設けられた燃料電池用ガス送給機であり、(c) 前記燃料電池用ガス送給機の前記トランスアクスルケース側の一部が、前記トランスアクスルケース内におけるトランスアクスルダンパーおよび第1電動機が取り外された空間に挿入された状態で、前記支持部材によって前記燃料電池用ガス送給機が前記トランスアクスルケースに締結される。このため、前記燃料電池用ガス送給機の前記トランスアクスルケース側の一部が、前記トランスアクスルケース内に挿入されてそのトランスアクスルケースの内部に締結しづらい場合であっても、前記燃料電池用ガス送給機を前記支持部材によって好適に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の電気自動車の全体的な構成を概念的に示す図である。
【図2】図1の電気自動車の車体フレームの一部に取り付けられた駆動装置と、その駆動装置に装着された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【図3】図2のIII矢視の駆動装置および燃料電池用酸化ガス送給機を示す図である。
【図4】図2および図3の支持部材に燃料電池用酸化ガス送給機が支持された際における、その燃料電池用酸化ガス送給機の重心と、燃料電池用酸化ガス送給機が支持部材に支持される支持位置との関係を示す図である。
【図5】図4の燃料電池用酸化ガス送給機の重心とその燃料電池用酸化ガス送給機が支持部材によって支持される支持位置との関係を拡大して示す、図4の拡大図である。
【図6】本発明の他の実施例の電気自動車において、その電気自動車の車体フレームの一部に取り付けられた駆動装置と、燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図であり、図3に相当する図である。
【図7】図6の実施例において、燃料電池用酸化ガス送給機を支持する支持部材を説明する拡大図であり、図4に相当する図である。
【図8】本発明の他の実施例の電気自動車において、その電気自動車の車体フレームの一部に取り付けられた駆動用電動機および変速装置と、その駆動用電動機に支持された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【図9】図8の実施例において、燃料電池用酸化ガス送給機を支持する支持部材を説明する拡大図である。
【図10】本発明の他の実施例の電気自動車において、その電気自動車の車体フレームの一部に搭載された駆動用電動機および変速装置と、その駆動用電動機に支持された空調用圧縮機とを説明する図である。
【図11】図10の空調用圧縮機を支持する支持部材を説明する拡大図である。
【図12】従来の電気自動車の問題点を説明するために、電気自動車の車体に取り付けられた駆動装置に、支持部材を介して燃料電池用酸化ガス送給機を締結する電気自動車の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は理解を容易とするために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の一実施例の電気自動車10の構成を概念的に示す図である。図1においては、矢印FRは車両前方方向を示している。図1に示すように、電気自動車10は、車両中央に設けられた燃料電池12と、車両後方に設けられ、燃料電池12へ燃料としての水素ガスを供給する燃料電池用燃料送給機14と、車両前方に設けられ、燃料電池12または図示しない蓄電池からの電力により作動して駆動輪16を駆動する駆動装置(第1装置)18と、その駆動装置18に隣接して設けられて燃料電池12へ酸化ガスとしての圧縮空気を供給する燃料電池用酸化ガス送給機(第2装置)20とを備えている。電気自動車10は、燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車である。なお、上記燃料電池用酸化ガス送給機20は、本発明における燃料電池用ガス送給機に相当するものである。
【0015】
燃料電池12は、高分子電解質膜の両側にアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体をセパレータによって挟持した発電セルが、所定数(例えば、数十〜数百)だけ積層されることで構成されている。この燃料電池12は、燃料電池用燃料送給機14からアノード側電極に供給される水素ガス中の水素と、燃料電池用酸化ガス送給機20からカソード側電極に供給される空気中の酸素との電気化学反応によって発電する。この燃料電池12で発電した電力は、駆動装置18、燃料電池用燃料送給機14、および燃料電池用酸化ガス送給機20を作動させるために使用される他、必要に応じて図示しない蓄電池を充電するために使用される。
【0016】
図2は、電気自動車10の車体フレーム(車体)22の一部とそれに搭載された駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を示す図である。図2では、矢印FRで示す方向が車両前方である。図3は、図2のIII矢視の駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を示す図である。図2および図3に示すように、駆動装置18は、電気自動車10の駆動力源としての駆動用電動機(後述する第2電動機)24と、その駆動用電動機24の回転を減速して左右一対の駆動輪16に伝達する差動歯車装置26と、それらをそれぞれ収容したトランスアクスルケース28とを備えている。図3に示す二点鎖線は、トランスアクスルケース28を示す仮想線である。
【0017】
トランスアクスルケース28は、たとえば2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケースであり、本実施例においては、その2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース内に収容されていた、バッテリーの充電や駆動用電力の供給を行う第1電動機と、エンジンからのトルク変動および回転変動による振動を吸収するトランスアクスルダンパーと、エンジン動力を第1電動機と出力軸とに分割する動力分割プラネタリーギヤとが、その2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース内から取り外された状態で使用されている。すなわち、本実施例においては、たとえば2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース内に収容された第2電動機が、電気自動車10の駆動力源すなわち駆動用電動機24として機能している。駆動用電動機24から出力された駆動力は、2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース内に配設された公知のリダクションプラネタリーギヤ30およびカウンタギヤ32を介して差動歯車装置26に伝達され、左右一対の駆動輪16が駆動するようになっている。
【0018】
トランスアクスルケース28は、図2および図3に示すように、駆動用電動機24、リダクションプラネタリーギヤ30、カウンタギヤ32および差動歯車装置26を収容したケース部材34と、そのケース部材34の図2に示す車両左側の開口を塞ぐように固定されたケースカバー36と、前記第1電動機および前記トランスアクスルダンパーを収容する収容空間(空間)38aを有する略円筒状のハウジング38とを、相互に締結することで構成されている。トランスアクスルケース28は、横置型のものであり、図2に示す車幅方向の左側に配設されている。
【0019】
駆動装置18は、図2に示すように、トランスアクスルケース28の車両前方側に配設された第1マウント部材40と、トランスアクスルケース28の車両後方側に配設された第2マウント部材42と、トランスアクスルケース28の車両左側に配設された第3マウント部材44とを介して車体フレーム(車体)22にマウントすなわち取り付けられている。第1マウント部材40は、車体フレーム22の第1クロスメンバ46に固定されている。第2マウント部材42は、車体フレーム22の第2クロスメンバ48に固定されている。第3マウント部材44は、左フロントサイドメンバ50に固定されている。上記マウント部材40、42、および44は、それぞれ、トランスアクスルケース28側の部材と車体フレーム22側の部材との間に介在させられたゴムなどから成るマウントブッシュ(弾性部材)40a、42a、および44aを有している。駆動装置18で生じた振動は上記マウントブッシュ40a、42a、および44aにより吸収或いは減衰させられる。
【0020】
燃料電池用酸化ガス送給機20は、図示しないフィルタを介して外気を取り込むエアクリーナと、そのエアクリーナから供給された空気を圧縮する圧縮機54と、その圧縮機54を駆動する圧縮機用電動機56と、圧縮機54から吐出された圧縮空気を冷却するインタークーラ58(図1参照)とを備えている。圧縮機用電動機56は、例えば燃料電池12や前記蓄電池からの電力により作動するモータたとえば交流同期型のモータである。圧縮機54は、例えばルーツ式ポンプ、ベーンポンプ、またはブロア等から構成されている。インタークーラ58は、熱交換器であり、圧縮機54から吐出された圧縮空気の温度を燃料電池12の運転に適した温度、例えば80℃以下に冷却し、燃料電池12に供給する。本実施例では、インタークーラ58は、水冷式の多管式熱交換器が使用されている。
【0021】
燃料電池用酸化ガス送給機20は、本実施例において、前述した2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース内の前記第1電動機および前記トランスアクスルダンパーとそのトランスアクスルケースに隣接するエンジンとの装着部位に、それら前記第1電動機および前記トランスアクスルダンパーと前記エンジンとに替えて、重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が駆動用電動機24の出力軸24aの軸心C上に燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1が配置されるように設けられている。そして、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その燃料電池用酸化ガス送給機20のトランスアクスルケース28側の一部がトランスアクスルケース28のハウジング38内の収容空間38aに挿入された状態で、支持部材60を介してハウジング38に締結されており、その燃料電池用酸化ガス送給機20とトランスアクスルケース28とのマウントが共用させられている。すなわち、燃料電池用酸化ガス送給機20で発生した振動は、マウント部材40、42、および44のマウントブッシュ40a、42a、および44aで吸収或いは減衰させられるようになっている。
【0022】
さらに、電気自動車10には、ポンプおよびモータを有する空調用圧縮機62が備えられている。この空調用圧縮機62は、副マウント部材64を介して図2に示す支持部材60に固定された固定部材66にマウントされている。上記副マウント部材64は、空調用圧縮機62側の部材と支持部材60側の部材との間に介在させられたゴムなどから成るマウントブッシュ(弾性部材)を有している。
【0023】
図2乃至図5に示すように、支持部材60は、一端部60aが駆動装置18のトランスアクスルケース28に固定され、他端部60bに燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面(取付面)60cを有する環状部材である。また、支持部材60は、燃料電池用酸化ガス送給機20のうち鉛直面68を境とする駆動装置18側の一部の外周すなわち燃料電池用酸化ガス送給機20の圧縮機用電動機56の一部の外周を覆うものである。
【0024】
支持部材60の一端部60aは、トランスアクスルケース28のハウジング38における支持部材60側の開口部に隣接するように環状に形成されており、その支持部材60の一端部60aとそのハウジング38の開口部とが図示されないボルト等によって一体的に固定されるものである。支持部材60の一端部60aがトランスアクスルケース28のハウジング38に固定されることによって、図4に示す圧縮機用電動機56の外周を支持部材60で覆われないその圧縮機用電動機56のトランスアクスルケース28側の一部がトランスアクスルケース28のハウジング38内の収容空間38aに挿入される。
【0025】
燃料電池用酸化ガス送給機20は、その燃料電池用酸化ガス送給機20から外周側へ突き出す複数個本実施例では例えば8つの固定用突部20aを備えられており、その複数個の固定用突部20aには、それぞれ、燃料電池用酸化ガス供給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第2取付面20bが形成されている。
【0026】
図4および図5に示すように、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その複数個の固定用突部20aに形成された第2取付面20bと支持部材60の第1取付面60cとが合わせられて、その燃料電池用酸化ガス送給機20の固定用突部20aが支持部材60の第1取付面60cに当接させられた状態で、その固定用突部20aが例えばボルト等の締結部材70により支持部材60の他端部60bの第1取付面60cに固定されることで、支持部材60に固定されるものである。このため、燃料電池用酸化ガス送給機20は、支持部材60によって燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68上で締結部材70を用いて支持される。図4および図5に示される実線の三角形は、燃料電池用酸化ガス送給機20が支持部材60によって支持される軸心C方向の支持位置A4を示すものである。
【0027】
本実施例の電気自動車10によれば、支持部材60は、一端部60aが駆動装置18のトランスアクスルケース28に固定され、他端部60bに燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面60cを有する環状部材であって、その燃料電池用酸化ガス送給機20のうちその鉛直面68を境とするその燃料電池用酸化ガス送給機20の駆動装置18側の一部の外周を覆うものであり、燃料電池用酸化ガス送給機20には、その燃料電池用酸化ガス送給機20から外周側へ突き出す複数個の固定用突部20aが備えられ、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その燃料電池用酸化ガス送給機20の固定用突部20aが支持部材60の第1取付面60cに当接させられた状態で、その固定用突部20aが締結部材70によりその支持部材60の第1取付面60cに固定されることで、支持部材60に固定される。このため、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その固定用突部20aが締結部材70によって支持部材60の他端部60bにおける燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面60cに固定されることにより、支持部材60が燃料電池用酸化ガス送給機20をその燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68上で支持することできるので、その支持部材60における燃料電池用酸化ガス送給機20を支持する部分に燃料電池用酸化ガス送給機20の荷重による曲げ応力Mが発生しなくなり、その支持部材60における燃料電池用送給機20を支持する部分のこじり変形が防止される。
【0028】
また、本実施例の電気自動車10によれば、駆動装置18は、2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース28内に設けられた第2電動機すなわち駆動用電動機24によって左右一対の駆動輪16を駆動するものであり、燃料電池用酸化ガス送給機20は、トランスアクスルケース28のエンジンの装着部位にそのエンジンに替えて設けられたものであり、燃料電池用酸化ガス送給機20のトランスアクスルケース28側の一部が、トランスアクスルケース28のハウジング38内における2モータハイブリッド車用のトランスアクスルケース28のトランスアクスルダンパーおよび第1電動機が取り外された空間38aに挿入された状態で、支持部材60によって燃料電池用ガス送給機20がトランスアクスルケース28に締結される。このため、燃料電池用酸化ガス送給機20のトランスアクスルケース28側の一部が、トランスアクスルケース28のハウジング38内に挿入されてそのトランスアクスルケース28のハウジング38の内部に締結しづらい場合であっても、燃料電池用酸化ガス送給機20を支持部材60によって好適に支持することができる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
図6および図7に示すように、本実施例の電気自動車72は、前述の実施例1の電気自動車10に比較して、支持部材74の形状が実施例1の支持部材60の形状と異なる点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。
【0031】
支持部材74は、一端部74aが駆動装置18のトランスアクスルケース28に固定され、他端部74bに燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面(取付面)74cを有する環状部材である。また、支持部材74は、燃料電池用酸化ガス送給機20のうち鉛直面68を境とする駆動装置18側の一部の外周すなわち圧縮機用電動機56の一部の外周を覆う筒形状の筒部74dと、その筒部74dの鉛直面68側の端部が半円筒形状に駆動装置18から離間する方向に一体に延長した半円筒部74eとによって形成されている。
【0032】
図7に示すように、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その複数個の固定用突部20aに形成された第2取付面20bと支持部材74の第1取付面74cとが合わせられ、その燃料電池用酸化ガス送給機20の固定用突部20aが支持部材74の第1取付面74cに当接させられた状態で、その固定用突部20aが例えばボルト等の締結部材76により支持部材74の他端部74bの第1取付面74cに固定されることで、支持部材74に固定されるものである。これによって、燃料電池用酸化ガス送給機20は、支持部材74によって燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68上で締結部材76を用いて支持される。そのため、前述の実施例1の効果と同様に、支持部材74における燃料電池用酸化ガス送給機20を支持する部分には、燃料電池用酸化ガス送給機20の荷重による曲げ応力Mが発生しなくなり、その支持部材74における燃料電池用送給機20を支持する部分のこじり変形が防止される。図7に示される実線の三角形は、燃料電池用酸化ガス送給機20が支持部材74によって支持される支持位置A5を示すものである。
【実施例3】
【0033】
図8および図9において、本実施例の電気自動車78は、実施例1の電気自動車10に比較して、駆動装置80の駆動用電動機(第1装置)82に支持部材84を介して燃料電池用酸化ガス送給機(第2装置)20が締結されている点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。なお、図8には示していないが、駆動装置80は、例えば実施例1で示された、第1マウント部材40と、第2マウント部材42と、第3マウント部材44とを介して、車体フレーム(車体)22の一部にマウントすなわち取り付けられている。
【0034】
駆動装置80は、電気自動車78の駆動力源としての駆動用電動機82と、その駆動用電動機82の回転を変速しつつその回転を左右一対の駆動輪16に伝達する変速装置86とを備えている。駆動用電動機82は、本実施例では駆動源として機能するものであり、例えは燃料電池12や蓄電池からの電力により作動する交流同期型のモータである。この駆動用電動機82の出力は、図示しないインバータにより例えばアクセル開度等の要求出力関連値に基づいて制御される。
【0035】
変速装置86には、駆動用電動機82の出力軸に連結された例えば公知のベルト式無段変速機等から成る変速機88と、その変速機88の出力軸にカウンタギヤを介して連結された公知の図示しない差動歯車装置と、それらをそれぞれ収容した変速装置用ケース90とが備えられている。駆動用電動機82から出力された駆動力は、変速機88および前記カウンタギヤを介して前記差動歯車装置に伝達され、左右一対の駆動輪16が駆動するようになっている。駆動用電動機82と変速装置86の変速装置用ケース90とは、例えばボルト等によって一体的に固定されている。支持部材84には、その支持部材84に固設された固定部材92とその固定部材92に取り付けられた副マウント部材64とを介して空調用圧縮機62が取り付けられている。
【0036】
図8および図9に示すように、支持部材84は、一端部84aが駆動装置80の駆動用電動機82に固定され、他端部84bに燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面(取付面)84cを有する環状部材である。支持部材84は、燃料電池用酸化ガス送給機20のうち鉛直面68を境とする駆動装置80側の全部の外周すなわち圧縮機用電動機56の全部の外周を覆うものである。
【0037】
図9に示すように、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その複数個の固定用突部20aに形成された第2取付面20bと支持部材84の第1取付面84cとが合わせられて、その燃料電池用酸化ガス送給機20の固定用突部20aが支持部材84の第1取付面84cに当接させられた状態で、その固定用突部20aが例えばボルト等の締結部材94により支持部材84の他端部84bの第1取付面84cに固定されることで、支持部材84に固定されるものである。このため、燃料電池用酸化ガス送給機20は、支持部材84によって燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68上で締結部材94を用いて支持される。図9に示される実線の三角形は、燃料電池用酸化ガス送給機20が支持部材84の他端部84bによって支持される支持位置A6を示すものである。
【0038】
本実施例の電気自動車78によれば、支持部材84は、一端部84aが駆動用電動機82に固定され、他端部84bに燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面84cを有する環状部材であって、その燃料電池用酸化ガス送給機20のうちその鉛直面68を境とするその燃料電池用酸化ガス送給機20の駆動装置80側の全部の外周を覆うものであり、燃料電池用酸化ガス送給機20には、その燃料電池用酸化ガス送給機20から外周側へ突き出す複数個の固定用突部20aが備えられ、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その燃料電池用酸化ガス送給機20の固定用突部20aが支持部材84の第1取付面84cに当接させられた状態で、その固定用突部20aが締結部材94によりその支持部材84の第1取付面84cに固定されることで、支持部材84に固定される。このため、燃料電池用酸化ガス送給機20は、その固定用突部20aが締結部材94によって支持部材84の他端部84bにおける燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68に位置する第1取付面20bに固定されることにより、支持部材84が燃料電池用酸化ガス送給機20をその燃料電池用酸化ガス送給機20の重心G1を含む鉛直面68上で支持することできるので、その支持部材84における燃料電池用酸化ガス送給機20を支持する他端部84bに燃料電池用酸化ガス送給機20の荷重による曲げ応力Mが発生しなくなり、その支持部材84における燃料電池用送給機20を支持する部分のこじり変形が防止される。
【実施例4】
【0039】
図10および図11において、本実施例の電気自動車96は、実施例3の電気自動車78に比較して、その実施例3の電気自動車78に備えられた駆動装置80の駆動用電動機(第1装置)82に支持部材98を介して空調用圧縮機62(第2装置)20が締結されている点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。なお、図10には示されないが、実施例3において駆動装置80に支持部材84を介して締結された燃料電池用酸化ガス送給機20は、例えば、その駆動装置80にマウンド部材を介して取り付けられる。
【0040】
図10および図11に示すように、支持部材98は、一端部98aが駆動装置80の駆動用電動機82に固定され、他端部98bに空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100に位置する第1取付面(取付面)98cを有する環状部材である。また、支持部材98は、空調用圧縮機62のうち鉛直面100を境とする駆動装置80側の全部の外周を覆うものである。
【0041】
空調用圧縮機62は、その空調用圧縮機62から外周側へ突き出す複数個本実施例では例えば4つの固定用突部62aを備えており、その複数個の固定用突部62aには、それぞれ、空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100に位置する第2取付面62bが形成されている。
【0042】
図11に示すように、空調用圧縮機62は、その複数個の固定用突部62aに形成された第2取付面62bと支持部材98の第1取付面98cとが合わせられて、その空調用圧縮機62の固定用突部62aが支持部材98の第1取付面98cに当接させられた状態で、その固定用突部62aが例えばボルト等の締結部材102により支持部材98の他端部98bの第1取付面98cに固定されることで、支持部材98に固定されるものである。このため、空調用圧縮機62は、支持部材98によって空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100上で締結部材102を用いて支持される。図11に示される実線の三角形は、空調用圧縮機62が支持部材98によって支持される支持位置A7を示すものである。
【0043】
本実施例の電気自動車96によれば、支持部材98は、一端部98aが駆動用電動機82に固定され、他端部98bに空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100に位置する第1取付面98cを有する環状部材であって、その空調用圧縮機62のうちその鉛直面100を境とするその空調用圧縮機62の駆動装置80側の全部の外周を覆うものであり、空調用圧縮機62には、その空調用圧縮機62から外周側へ突き出す複数個の固定用突部62aが備えられ、空調用圧縮機62は、その空調用圧縮機62の固定用突部62aが支持部材98の第1取付面98cに当接させられた状態で、その固定用突部62aが締結部材102によりその支持部材98の第1取付面98cに固定されることで、支持部材98に固定される。このため、空調用圧縮機62は、その固定用突部62aが締結部材102によって支持部材98の他端部98bにおける空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100に位置する第1取付面62bに固定されることにより、支持部材98が空調用圧縮機62をその空調用圧縮機62の重心G2を含む鉛直面100上で支持することできるので、その支持部材98における空調用圧縮機62を支持する他端部98bに空調用圧縮機62の荷重による曲げ応力Mが発生しなくなり、その支持部材98における空調用圧縮機62を支持する他端部98bのこじり変形が防止される。
【0044】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0045】
例えば、実施例1、2の電気自動車10、72では、駆動装置18のトランスアクスルケース28に支持部材60、74を介して燃料電池用酸化ガス送給機20が締結され、実施例3の電気自動車78では、駆動用電動機82に支持部材84を介して燃料電池用酸化ガス送給機20が締結され、実施例4の電気自動車96では、駆動用電動機82に支持部材98を介して空調用圧縮機62が締結された。しかしながら、本実施例において、燃料電池用酸化ガス送給機20或いは空調用圧縮機62が締結される第1装置は、トランスアクスルケース28や駆動用電動機82に限られるものではなく、電気自動車の車体に取り付けられるものであればどのようなものが適用されても良い。また、本実施例において、トランスアクスルケース28或いは駆動用電動機82に締結される第2装置は、燃料電池用酸化ガス送給機20や空調用圧縮機62の重量物に限られるものではなく、電気自動車内に配設されるものであればどのようなものが適用されても良い。
【0046】
また、前述の実施例1では、駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を車体フレーム22にマウントするために、トランスアクスルケース28の車両前方側、車両後方側、および車両左側にそれぞれ設けられた3個のマウント部材40、42、および44が用いられていたが、上記駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20の振動を抑えることができれば、マウント部材の数や材質、設置箇所等は適宜変更可能である。
【0047】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
10、72、78、96:電気自動車
16:駆動輪
18:駆動装置(第1装置)
20:燃料電池用酸化ガス送給機(第2装置、燃料電池用ガス送給機)
20a:固定用突部
24:駆動用電動機(第2電動機)
28:トランスアクスルケース
36a:収容空間(空間)
60、74、84、98:支持部材
60a、74a、84a、98a:一端部
60b、74b、84b、98b:他端部
60c、74c、84c、98c:第1取付面(取付面)
62:空調用圧縮機(第2装置)
62a:固定用突部
68:鉛直面
70、76、94、102:締結部材
82:駆動用電動機(第1装置)
100:鉛直面
G1、G2:重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた第1装置に支持部材を介して第2装置を締結する電気自動車であって、
前記支持部材は、一端部が前記第1装置に固定され、他端部に前記第2装置の重心を含む鉛直面に位置する取付面を有する環状部材であって、該第2装置のうち前記第1装置側の一部或いは全部の外周を覆うものであり、
前記第2装置には、該第2装置から外周側へ突き出す固定用突部が備えられ、
前記第2装置は、該第2装置の固定用突部が前記支持部材の取付面に当接させられた状態で、該固定用突部が締結部材により該支持部材の取付面に固定されることで、前記支持装置に固定されることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記第1装置は、ハイブリッド車用のトランスアクスルケース内に設けられた第2電動機によって駆動輪を駆動する駆動装置であり、
前記第2装置は、前記トランスアクスルケースのエンジンの装着部位に該エンジンに替えて設けられた燃料電池用ガス送給機であり、
前記燃料電池用ガス送給機の前記トランスアクスルケース側の一部が、前記トランスアクスルケース内におけるトランスアクスルダンパーおよび第1電動機が取り外された空間に挿入された状態で、前記支持部材によって前記燃料電池用ガス送給機が前記トランスアクスルケースに締結される請求項1の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56599(P2013−56599A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195390(P2011−195390)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】