説明

電池パック及び電動工具

【課題】電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能な電池パック及び電動工具を提供する。
【解決手段】電池パック1は、電動工具2に接続可能であり、二次電池3a−3cと、二次電池3a−3cの電圧が過放電電圧より大きい警告電圧Vaまで低下した場合に警告表示を行う表示手段7と、警告電圧Vaを任意に設定可能な設定手段8と、を備えたことを特徴としている。マイコン6は、スイッチが押される度に、警告電圧Vaを11.2V→11.0V→10.8Vと変更するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックからの電力により駆動されるコードレス電動工具を継続して使用すると、電池パック内の二次電池の電圧の電圧低下に伴い電動工具の出力も低下してしまい、例えば、電動工具がドライバである場合には、締め付けトルクが不足してしまう虞がある。このような出力低下を防止するために、電池電圧が所定の警告電圧以下となった場合にユーザに警告する電池パックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−246563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動工具による作業には、正確なトルクで行う必要があるものもあれば、ある程度締め付けることができればよいものもある。しかしながら、特許文献1に記載の電動工具では、作業の内容に関わらず、電池電圧が所定の警告電圧以下となった場合に一律に警告が行われてしまう。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能な電池パック及び電動工具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電動工具に接続可能な電池パックであって、二次電池と、前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、を備えたことを特徴とする電池パックを提供している。
【0007】
このような構成によれば、ユーザが警告電圧を設定することができるので、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【0008】
また、前記二次電池の電圧が前記警告電圧まで低下した場合に前記電動工具に電力供給停止のための信号を出力する停止信号出力手段を更に備えていることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、二次電池の電圧が警告電圧まで低下した場合には、二次電池が過放電状態でなくても電力供給のための信号を出力するので、所望の電圧を供給することができる場合にのみ電動工具を作動させることができ、作業の確実性を確保することが可能となる。
【0010】
また、前記表示手段は、前記二次電池の電圧が前記過放電電圧まで低下した場合に前記警告表示を停止することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、二次電池の電圧が過放電電圧よりも大きい警告電圧まで低下した場合には、警告表示を停止するので、無駄な電力消費を防止することができる。
【0012】
また、前記表示手段は、前記二次電池の電圧が前記警告電圧よりも大きい場合には前記二次電池の電圧に応じた表示を行うことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、ユーザが二次電池の残容量を容易に認識することができる。
【0014】
また、本発明の別の観点では、二次電池を備えた電池パックが接続される電動工具であって、前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、を備えたことを特徴とする電動工具を提供している。
【0015】
このような構成によれば、ユーザが警告電圧を設定することができるので、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の別の観点では、二次電池と、前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、を備えた電池パックが接続される電動工具であって、前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段を備えたことを特徴とする電動工具を提供している。
【0017】
このような構成によれば、ユーザが警告電圧を設定することができるので、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明の別の観点では、二次電池と、前記二次電池の過放電電圧より大きい前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、を備えた電池パックが接続される電動工具であって、前記二次電池の電圧が前記警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段を備えたことを特徴とする電動工具を提供している。
【0019】
このような構成によれば、ユーザが警告電圧を設定することができるので、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電池パック及び電動工具によれば、作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による電池パックの回路図
【図2】LEDの点灯と電池残容量について説明するフローチャート
【図3】警告電圧の設定について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1から図3を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態による電池パック1の回路図である。電池パック1は、電動工具2に接続可能であり、電動工具2のモータ21は、電池パック1からの電力供給により駆動される。また、電動工具2は、FET22と、制御部23と、を備えている。FET22は、モータ21と直列に接続されており、制御部23は、後述する第1又は第2の過放電信号が入力されるとFET22をオフさせ、モータ21への電力供給を停止させる。
【0024】
電池パック1は、電池セル3a−3cと、電池保護IC4と、電力供給部5と、マイコン6と、表示部7と、設定部8と、ダイオード9及び10と、を備えている。
【0025】
本実施の形態では、電池セル3a−3cは、それぞれ定格電圧3.6V、満充電電圧4.0V、過放電電圧2.5Vの規格を有するリチウムイオン二次電池であり、直列に接続されている。電池保護IC4は、電池セル3a−3cの合計電圧(以降、電池電圧)を監視し、電池電圧が7.5V(過放電電圧2.5V×3)より大きい場合には過放電信号出力端子VoutからLレベルの信号を出力し、電池電圧が7.5V以下の場合には過放電信号出力端子VoutからHレベルの第1の過放電信号を出力する。なお、電池パック1が電動工具2に接続された場合、過放電信号出力端子Voutは制御部23に接続されることとなるが、過放電信号出力端子Voutと制御部23との間にはダイオード9が接続されているため、Hレベルの第1の過放電信号のみが制御部23に入力することとなる。
【0026】
電力供給部5は、抵抗501−504と、コンデンサ505−507と、FET508と、レギュレータ509と、を備えている。
【0027】
FET508は、P型MOSFETであり、ゲートが抵抗502を介して電池保護IC4の過放電信号出力端子Voutに接続されているため、Lレベルの信号がゲートに入力された場合にオンする。また、FET508のソースは電池セル3a−3cに接続されているため、FET508がオンすると、抵抗503及び504によって分圧された電池電圧がマイコン6のA/D変換ポートVinに入力することとなる。また、FET508がオンすると、レギュレータ509によって定電圧化された電池電圧が、マイコン6の作動電圧として正電源入力端子Vccに供給される。
【0028】
一方、Hレベルの第1の過放電信号がFET508のゲートに入力された場合にはFET508はオフし、マイコン6への作動電圧の供給が停止される。従って、電池保護IC4によって過放電が検出された際には、無駄な電力消費が防止されることとなる。
【0029】
マイコン6は、A/D変換ポートVinに入力された電圧に基づき、LED接続端子A−CからHレベル信号又はLレベル信号を出力する。また、A/D変換ポートVinに入力された電圧が後述する警告電圧Va以下の場合には、Hレベルの第2の過放電信号を過放電信号出力端子Voutからダイオード10を介して電動工具2の制御部23に出力する。なお、後述するが、第2の過放電信号が出力される警告電圧Vaは、第1の過放電信号が出力される電圧(7.5V)よりも大きな値に設定される。
【0030】
表示部7は、LED701−703と、抵抗704−706と、を備えている。レギュレータ509の出力端子は、LED701−703のアノードにもそれぞれ接続されている。また、LED701のカソードは、抵抗704を介してマイコン6のLED接続端子Aと接続されており、LED702のカソードは、抵抗705を介してマイコン6のLED接続端子Bと接続されており、LED703のカソードは、抵抗706を介してマイコン6のLED接続端子Cと接続されている。LED701−703のアノードにはレギュレータ509から出力された定電圧が入力されるので、LED701−703は、LED接続端子A―CからLレベル信号が出力されている場合にそれぞれ点灯し、Hレベル信号が出力されている場合にそれぞれ消灯する。LED701−703の点灯の組み合わせ及び態様により、ユーザは、電池残容量を認識することが可能となる。LED701−703の点灯と電池残容量の関係については後述する。
【0031】
設定部8は、レギュレータ509の出力端子とGNDラインとの間に直列に接続された抵抗81及びスイッチ82から構成されている。また、抵抗81には、スイッチ82と並列にマイコン6の負電源入力端子GNDも接続されているため、スイッチ82が押されると、マイコン6の負電源入力端子GNDにレギュレータ509からの定電圧が入力されることとなる。そして、スイッチ82が押される度に、マイコン6は、警告電圧Vaの設定を変更する。
【0032】
次に、LED701−703の点灯と電池残容量の関係について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
各電池セル3a−3cの満充電電圧は4.0Vであるため、満充電時の3つの電池セル3a−3cの電池電圧の合計は12.0Vである。従って、マイコン6は、A/D変換ポートVinに電池電圧が入力されると、まず、電池電圧が12.0Vより大きいか否かを判断する(S201)。電池電圧が12.0Vより大きい場合には(S201:YES)、全てのLED接続端子A―CからHレベル信号とLレベル信号とを交互に出力して全てのLED701−703を点滅させ(S202)、S201に戻る。これにより、ユーザは、各電池セル3a−3cがまだ満充電に近いことを認識することができる。
【0034】
一方、電池電圧が12.0V以下の場合には(S201:NO)、電池電圧が11.5Vより大きいか否かを判断する(S203)。電池電圧が11.5Vより大きい場合には(S203:YES)、LED接続端子A及びBからHレベル信号及びLレベル信号を交互に出力してLED701及び702を点滅させる一方で、LED接続端子CからHレベル信号を出力してLED703を消灯させ(S204)、S203に戻る。これにより、ユーザは、各電池セル3a−3cの残容量が中程度であることを認識することができる。
【0035】
一方、電池電圧が11.5V以下の場合には(S203:NO)、電池電圧が警告電圧Vaより大きいか否かを判断する(S205)。電池電圧が警告電圧Vaより大きい場合には(S205:YES)、LED接続端子AからHレベル信号及びLレベル信号を交互に出力してLED701を点滅させる一方で、LED接続端子B及びCからHレベル信号を出力してLED702及び703を消灯させ(S206)、S205に戻る。これにより、ユーザは、各電池セル3a−3cの残容量が少なくなっていることを認識することができる。
【0036】
一方、電池電圧が警告電圧Va以下の場合には(S205:NO)、過放電信号出力端子Voutからダイオード10を介して電動工具2の制御部23に過放電信号を出力した上で(S207)、電池電圧が10.5Vより大きいか否かを判断する(S208)。電池電圧が10.5Vより大きい場合には(S208:YES)、LED接続端子CからHレベル信号及びLレベル信号をS303、305及び307よりも高速に交互に出力してLED703を高速点滅させる一方で、LED接続端子A及びBからHレベル信号を出力してLED701及び702を消灯させ(S209)、S208に戻る。これにより、ユーザは、各電池セル3a−3cの残容量が、設定された警告電圧Vaを下回ったことを認識することができる。
【0037】
一方、電池電圧が10.5V以下の場合には(S208:NO)、全てのLED接続端子A―CからHレベル信号を出力して全てのLED701−703を消灯させ(S210)、マイコン6は動作を終了する。これにより、無駄な電力消費が防止されることとなる。
【0038】
次に、図3を用いて警告電圧Vaの設定について説明する。
【0039】
本実施の形態のマイコン6は、スイッチ82が押される度に、警告電圧Vaを11.2V→11.0V→10.8Vと変更するように設計されている。また、マイコン6は、Lレベル信号を、警告電圧Vaを11.2Vに設定した場合にはLED接続端子Cから、警告電圧Vaを11.0Vに設定した場合にはLED接続端子Bから、警告電圧Vaを10.8Vに設定した場合にはLED接続端子Aから、それぞれ3秒間出力する。これにより、ユーザは、スイッチ82を押すことによって警告電圧Vaを3段階に設定することができると同時に、設定された警告電圧Vaを認識することが可能となる。
【0040】
以上のような構成によれば、本実施の形態による電池パック1では、ユーザが警告電圧Vaを設定することができるので、電動工具の作業内容に応じた適切な警告を行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態による電池パック1では、電池電圧が警告電圧Vaまで低下した場合には、電池セル3a−3cが過放電状態でなくても電動工具2への電力供給を停止させるので、所望の電圧を供給することができる場合にのみ電動工具2を作動させることができ、作業の確実性を確保することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態による電池パック1では、電池電圧が、規格上の過放電電圧(本実施の形態では7.5V)よりも大きい警告電圧Vaまで低下した場合には、全てのLED701−703を消灯させるので、無駄な電力消費を防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態による電池パック1では、電池電圧が警告電圧Vaよりも大きい場合には電池電圧に応じた表示を行うので、ユーザが電池セル3a−3cの残容量を容易に認識することができる。
【0044】
なお、本発明による電池パック1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0045】
例えば、上記実施の形態では、3つのリチウム電池セル3a−3cが直列に接続された電池パック1について説明しているが、二次電池の種類、個数及び接続の態様、LEDの個数、LEDの点灯・消灯を切り換える電圧、並びに、警告電圧Vaの設定可能数は、これらに限らない。また、警告電圧Vaは、例えば、ダイアル等を用いて可変抵抗を変化させることによって設定することも可能である。
【0046】
また、上記実施の形態では、表示部7及び設定部8の両方が電池パック1に設けられていたが、いずれか一方又は両方が電動工具2に設けられていても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 電池パック
2 電動工具
3a−3c 電池セル
4 電池保護IC
5 電力供給部
6 マイコン
7 表示部
8 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具に接続可能な電池パックであって、
二次電池と、
前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、
前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記二次電池の電圧が前記警告電圧まで低下した場合に前記電動工具に電力供給停止のための信号を出力する停止信号出力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記表示手段は、前記二次電池の電圧が前記過放電電圧まで低下した場合に前記警告表示を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記表示手段は、前記二次電池の電圧が前記警告電圧よりも大きい場合には前記二次電池の電圧に応じた表示を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
二次電池を備えた電池パックが接続される電動工具であって、
前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、
前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、
を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項6】
二次電池と、前記二次電池の電圧が過放電電圧より大きい警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段と、を備えた電池パックが接続される電動工具であって、
前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項7】
二次電池と、前記二次電池の過放電電圧より大きい前記警告電圧を任意に設定可能な設定手段と、を備えた電池パックが接続される電動工具であって、
前記二次電池の電圧が前記警告電圧まで低下した場合に警告表示を行う表示手段を備えたことを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−165420(P2011−165420A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25112(P2010−25112)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】