説明

電池ユニット

【課題】氷点下の状況においても電池ユニットを所定温度に素早く加熱することができる小型軽量の電池ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】二次電池の電極構成体が封入されて正極端子(8)と負極端子(9)が突設され、熱伝導性を有する金属で形成された二次電池ケース(11)の外面の少なくとも一部に、炭素系物質を含む材料によりフィルムシート状に形成された発熱体(13)を有する発熱シート(4)が密着して取り付けられており、発熱シート(4)における二次電池ケース(11)に対向する面の裏面を覆うように断熱ユニット(5)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に収納された二次電池を必要時に所定温度に加熱する発熱体を有する電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題及び化石燃料枯渇化問題への対応として、自動車においてはハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の環境対応自動車が開発され、実用化されている。このような環境対応自動車においては、電源として二次電池が用いられており、二次電池の性能、大きさ、重量などの仕様は環境対応自動車の性能において大きなウエイトを占めている。
【0003】
二次電池においては、低温時、特に寒冷地における冬期などの氷点下の状況では放電容量が極端に悪化し、所望の出力が得られないという大きな問題を有している。このようの問題を解決するために、並設された複数の二次電池を収容する筐体の外側に加熱手段としてのヒータを設けて筐体を加熱する構成が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数の二次電池と回路基板とを収納した樹脂製の筐体の上下面にヒータが設けられた電池ユニットが開示されている。この特許文献1におけるヒータは二枚の絶縁シートの間にニクロム線などの抵抗金属線を挟んで構成したものである。
【0005】
また、特許文献2及び特許文献3には、複数の二次電池であるニッケル水素蓄電池を収納した樹脂製の筐体と、その筐体の底面外側に加熱手段としてのヒータユニットを設けた電池ユニットが開示されている。特許文献2及び特許文献3に開示されたヒータユニットは、ジグザグに形成されたニッケル−クロム合金のヒータ素子を絶縁樹脂で挟着して、さらにアルミニウムの金属層で両側から挟み付けた構成である。このように構成されたヒータユニットが、筐体の底面外側に取り付けられて、筐体内の複数の二次電池に対して、筐体と二次電池との間に形成された離間部の空隙を介して加熱するよう構成されている。特許文献2及び特許文献3に開示された電池ユニットは、ヒータユニットの熱が離間部の空気を加熱し、その加熱された空気が二次電池に接触して複数の二次電池を全体的に加熱する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−213939号公報
【特許文献2】特開2008−077871号公報
【特許文献3】特開2008−186621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、二次電池が環境対応自動車の電源として用いられて、寒冷地対策としてヒータが用いられているが、従来の電池ユニットの構成においては、氷点下の状況でヒータにより筐体を加熱しても、筐体内の複数の二次電池が所定温度となるまでには長時間が必要であるため、始動予定時間の数時間前には筐体を予め加温する必要があった。特に、引用文献2又は引用文献3に開示された構成のように空気を介して複数の二次電池を加熱する構成の場合には、二次電池が所定の温度となり、所定の出力が発揮されるまでには長時間が必要であった。このように、従来の電池ユニットを電源として用いた環境対応自動車においては、氷点下の環境で始動する場合には、その始動時間の数時間前から複数の二次電池を収納する筐体を予め加熱しておくか、若しくは筐体を一定温度に終日保温しておく必要があった。
【0008】
また、従来の電池ユニットにおいて加熱手段として用いられているヒータは、金属抵抗線や金属抵抗体であるため、ヒータ自体の発熱立ち上がりが遅く、且つ発熱温度も低いものであった。この結果、筐体温度の立ち上がりが遅く、複数の二次電池の全体が所定温度になるまでになお一層の時間が必要であるという問題を有していた。
さらに、前述のように環境対応自動車に用いられる構成品の全ては、小型化、軽量化が重要な要素であるため、加熱手段においても小型化、軽量化は達成すべき重要な課題である。
【0009】
本発明は、従来の発熱体を有する電池ユニットにおける問題を解決し、寒冷地における氷点下の状況においても電池ユニットを所定温度に素早く加熱することができる小型軽量の電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第1の観点の電池ユニットは、複数の二次電池を配列して構成された組電池が筐体内に配置された電池ユニットにおいて、
各二次電池が、二次電池の電極構成体が封入されて正極端子と負極端子が突設され、熱伝導性を有する材料で形成された二次電池ケースと、
炭素系物質を含む材料によりフィルムシート状に形成された発熱体を有し、前記発熱体から当該二次電池ケースに熱伝導するように前記二次電池ケースの外周面の少なくとも一部に密接して取り付けられた発熱シートと、
前記発熱シートにおける前記二次電池ケースに対向する面の裏面を覆うように配設され、前記発熱体からの熱を遮断するよう構成された断熱部材と、を具備する。このように構成された第1の観点の電池ユニットは、発熱立ち上がりが早く、発熱面の全体が均一に発熱するという優れた特性を有する発熱体が二次電池ケースに対して実質的に直接的に接触して加熱するように配設されているため、電池ユニットにおける各二次電池ケースの立ち上がり温度が早くなり、当該電池ユニットが所定出力を発揮する適正温度範囲内に短時間で到達することができるとともに、電池ユニットの小型化、及び軽量化が図られている。
【0011】
本発明に係る第2の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点における前記発熱シートが、二次元的等方向性の熱伝導を有して、電圧を印加することにより均一に発熱する発熱体と、
前記発熱体を密着して覆い、電気絶縁性及び熱伝導性を有する被覆層と、を含む構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る第3の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点又は第2の観点における前記断熱ユニットが、前記発熱シートに接触する第1断熱部と、前記第1断熱部に密接して配設された第2断熱部とを有し、前記第1断熱部が前記第2断熱部より弾性を有する構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る第4の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第3の観点における前記発熱シートが、前記二次電池ケースの下面側となる領域に密接して取り付けられており、前記二次電池ケースの少なくとも下方から加温するよう前記発熱体が配置された構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る第5の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第4の観点における前記発熱シートと前記二次電池ケースの外面との間に、熱伝導性を有する接合材で形成された接合層を配設してもよい。
【0015】
本発明に係る第6の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第4の観点における前記二次電池ケースが箱形形状であり、前記発熱シートが当該二次電池ケースの少なくとも底面側に密接して取り付けられており、前記発熱体が前記二次電池ケースの少なくとも底面の全てを覆うように配置され、前記断熱部材が前記二次電池ケースの底面及び側面の少なくとも一部を覆うよう構成してもよい。
【0016】
本発明に係る第7の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第6の観点における前記発熱体が、正特性の温度−抵抗特性を有し、且つ設定温度範囲内においてキュリー温度を持たない特性を有する構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る第8の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第7の観点における発熱シートと断熱部材が一体化された加温ユニットを有し、前記加温ユニットが、前記二次電池ケースが複数個並設されて構成された組電池に対して、一体的に装着されるよう構成してもよい。
【0018】
本発明に係る第9の観点の電池ユニットは、前記の第1の観点乃至第8の観点における前記発熱体が、高分子フィルム、又はフィラーを添加した高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理することにより得られたグラファイトフィルムシートを所定形状に切断した後、当該切断されたグラファイトフィルムシートをその厚み方向に加圧する加圧処理により形成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、寒冷地における氷点下の状況においても電池ユニットを素早く加熱して、当該電池ユニットが所定出力を発揮する適正温度範囲内に短時間で到達することができる、小型軽量の電池ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態1の電池ユニットの内部構成を示す図
【図2】実施の形態1の電池ユニットの組電池における1つのセル(二次電池)を示す断面図であり、(a)がセルの正面断面図、(b)がセルの側面断面図
【図3】実施の形態1の電池ユニットにおけるセルの底面に設けられた加温ユニットを示す拡大図
【図4】実施の形態1の電池ユニットにおけるセル、発熱シート及び断熱ユニットを示す部分斜視図
【図5】実施の形態1の電池ユニットにおける発熱シートと従来のPTCヒータとの比較実験結果を示すグラフ
【図6】温度上昇特性測定実験におけるセルケースの測定位置(a,b)を示す図
【図7】温度上昇特性測定実験結果を示すグラフ
【図8】本発明に係る実施の形態2の電池ユニットにおける1つのセル(二次電池)を示す断面図であり、(a)がセルの正面断面図、(b)がセルの側面断面図
【図9】実施の形態2の電池ユニットにおける加温ユニットを示す斜視図
【図10】本発明に係る実施の形態3の電池ユニットにおける円筒形状のセルが並設された状態を示す斜視図
【図11】実施の形態3の電池ユニットにおけるセルの円筒中心軸に直交する方向で切断した断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る好適な実施の形態として、環境対応自動車としての電気自動車に電源として搭載されたリチウムイオン電池の電池ユニットについて説明するが、本発明は以下の実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成される電池ユニットを含むものである。
【0022】
リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、電解液で構成されており、リチウムイオンが正極と負極に出入りすることにより充放電が行われるものである。リチウムイオン電池は、軽量であり、且つ高出力が得られるため、自動車用電源やパーソナルコンピュータの電源として期待されている。以下の実施の形態において、外形が薄型で直方体形状や円筒形状のリチウムイオン電池を用いた例で説明するが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、例えば扁平形状等の各種形状に対応するものである。
【0023】
《実施の形態1》
図1は、リチウムイオン電池である二次電池2が複数個並設された状態で電気的に直列接続して所定の電力を出力するよう構成された本発明に係る実施の形態1の電池ユニット10の内部構成を示す図であり、筐体部分を断面にて示している。実施の形態1の電池ユニット10においては、二次電池2が50個直列に接続された組電池20が所定電圧を出力するよう構成されている。以下の説明において、組電池20を構成する複数の二次電池2における1つの二次電池を単に「セル」と称する。
【0024】
図1に示すように、複数のセル2がセパレータ3を介して並設された組電池20が電池ユニットケース(筐体)1の内部に収納されている。電池ユニットケース1は、上ユニットケース1Aと中ユニットケース1Bと下ユニットケース1Cで構成されており、各ユニットケース1A,1B,1Cは挟着手段18、例えばボルトとナット等により各ユニットケース1A,1B,1Cの各フランジ部21が挟着されてそれぞれが固着されている。
【0025】
複数のセル2とセパレータ3で構成された組電池20は、長手方向(図1におけるX方向)の両端部分となるセパレータ3が締め付け手段7、例えばネジ棒及びナット等による挟み付けにより対向方向に押圧されて一体化されている。一体化された組電池20の下側には各セル2を所定温度に加温するための加温ユニット19(後述)が一体的に設けられている。
【0026】
また、電池ユニットケース1には、組電池20の温度が上昇して高温となったときに電池ユニットケース1の内部を冷却する手段が設けられている。冷却手段としては、例えば、電池ユニットケース1における長手方向(図1のX方向)の対向する壁面に2つの開口部25,26を形成し、電池ユニットケース1の外気を取り込んで組電池20を冷却するためのファンを設けること等が考えられる。実施の形態1においては、一方の開口部26が組電池20の上側部分と対向する壁面位置に形成されて電池ユニットケース外部より外気を取り込み、他方の開口部25が組電池20の下側部分と対向する壁面位置に形成されて電池ユニットケース外部へ排気している。開口部25の内側にはファン6が配設されおり、電池ユニットケース1の内部に外気を流して、組電池20を冷却する構成となっている。なお、上記のように組電池20の上側部分と対向する開口部26から外気を取り込み、組電池20下側部分と対向する開口部25より排気するように通気路を形成することで組電池20を効率よく冷却することが可能となる。
【0027】
図2は、実施の形態1の電池ユニット10の組電池20における1つのセル(二次電池)2を示す断面図であり、図2の(a)がセル2の正面断面図であり、(b)が(a)に示すセル2におけるA−A線による側面断面図である。図2において、セル2は、金属製のセルケース11を備えており、このセルケース11の内部には正極活物質層を有する長尺シートの正極シートと、負極活物質層を有する負極シートが、非水電解質を有するセパレータを介して交互に積層されて、扁平状に巻回された電極構成体22が封入されている。なお、図2において、リチウムイオン電池の正極シート、負極シート、セパレータ等の電極構成体22は図示を省略している。実施の形態1において、セルケース11はアルミニウム材を用いて形成した例で説明するが、セルケース11の材料としては、高い熱伝導性を有する材料であればよい。さらに、セルケース11としては、鉄にニッケルメッキを施したもの、アルミニウムと樹脂シートを重ね合わせて一体化したアルミラミネートフィルム等を用いることにより酸化や腐食を防止することが可能となる。
電極構成体22が封入されたセルケース11の上面には、正極シートに接続された正極端子8と、負極シートに接続された負極端子9が突設されている。
【0028】
図2に示すように、セルケース11の下側には、加温ユニット19が設けられている。この加温ユニット19は、発熱シート4及び断熱ユニット5により構成されている。図3は、電池ユニット10におけるセル2の底面に設けられた加温ユニット19を示す拡大断面図である。図3に示すように、発熱シート4は、発熱源となる薄膜の発熱体13が上面側被覆層(第1被覆層)12及び下面側被覆層(第2被覆層)14により上下両面から挟着されて被覆されている。図4は並設された複数のセル2の組電池20に対する発熱シート4及び断熱ユニット5で構成された加温ユニット19を示す部分斜視図である。なお、図4においては、組電池20における1つのセル2のみを示している。
【0029】
実施の形態1における加温ユニット19は、並設された複数のセル2を持つ組電池20に対して一体的に装着されるよう構成されている。加温ユニット19においては、各セル2に対向する位置に各発熱体13が配置され、各発熱体13に対向するように発熱シート4の裏面に各断熱ユニット5が設けられている。このため、並設された複数のセル2に加温ユニット19を装着することにより、各発熱体13が各セルケース11の底面に上面側被覆層12を介して密着するよう構成されている。したがって、並設された複数のセル2を有する組電池20に加温ユニット19を装着するだけで、寒冷地仕様の電池ユニット10を容易に構成することができる。なお、実施の形態1における断熱ユニット5は、各発熱体13に対応するように分断された構成を示すが、複数の発熱体13に対応するように断熱ユニット5を一体的な構成としてもよい。
【0030】
加温ユニット19における断熱ユニット5は、断熱性を有するとともに、弾性(クッション性)を有する材料により形成された第1断熱部15と、断熱性を有するとともに、第1断熱部15より弾性(クッション性)が少なく硬い材料により形成された第2断熱部16とにより構成されている。
【0031】
第1断熱部15として用いられる材料としては、弾性(クッション性)のある断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.07〜0.15、密度[kg/m]が60〜400のものが好ましい。また、第2断熱部16として用いられる材料としては、ある程度硬く変形しにくい断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.15〜0.25、密度[kg/m]が400〜1000のものが好ましい。
【0032】
実施の形態1の電池ユニット10における断熱ユニット5においては、第1断熱部15が断熱性及び弾性(クッション性)を有する材料として、例えばアルミナシリカ系の繊維が集合して綿状となった材料等により形成されている。また、第2断熱部16としては、断熱性を有するとともに、第1断熱部15より弾性(クッション性)が少なく硬い材料として、例えばケイ酸カルシウムを主成分とする材料等により形成されている。
なお、実施の形態1においては、断熱ユニット5として第1断熱部15及び第2断熱部16の2種類の断熱材料を積層して構成した例で説明するが、いずれか一方の材料のみにより断熱ユニット5を構成してもよい。いずれの構成であっても、断熱ユニット5が断熱性を有しており、発熱シート4から輻射された熱を遮断すると共に、発熱シート4をセルケース11の底面に密着させる構成であればよい。
【0033】
実施の形態1の電池ユニット10において、セルケース11の底面と発熱シート4は熱伝導性を有する接合材料で構成された接合層17(図3参照)により固着されている。この接合層17は、セルケース11の底面における微細な凹凸部分に入り込み、セルケース11と発熱シート4との密着性を高めている。この結果、発熱シート4から輻射された熱は、発熱シート4の裏面側においては断熱ユニット5により遮断されるが、発熱シート4の表面側においては接合層17を介して金属製(例えば、アルミニウム製)のセルケース11に確実に伝熱される。
【0034】
接合層17の材料としては、熱伝導性に優れた材料、例えば熱伝導率が0.7W/(m・K)より大きいも、のが好ましい。また、接合層17の材料としては、電気絶縁性に優れた材料、例えば体積抵抗率が1×1015Ω・cm(JISC2318)より大きいものが好ましい。さらに接合材17の材料としては、耐熱性に優れた材料、例えば耐熱温度が120℃以上のものが好ましい。接合層17の材料組成としては、シリコン樹脂を主成分とする組成物が用いられており、形状としてはエラストマー状、ゲル状、グリース状、コンパウンド状、パッド状(或いはフィルム状)のものがある。ゲル状、コンパウンド状等は、セルケース11又は発熱シート4のいずれか一方の面に予め塗布して使用される。エラストマー状、パッド状等は、予め所定の形状に切断して、組み立て時にセルケース11と発熱シート4との間に挿入して用いられる。
実施の形態1においては、接合層17の材料として、シリコン樹脂製コンパウンド(熱伝導率が0.80W/(m・K)、体積抵抗率が2×1016Ω・cm)、耐熱温度が120℃のものを用いた。
【0035】
なお、実施の形態1においては、発熱シート4とセルケース11との間に接合層17を形成して互いに密着させた例で説明するが、本発明においては、発熱シート4とセルケース11とを直接的に密着接触させてもよく、発熱シート4とセルケース11との間に接合層を設けなくても略同様の効果を奏する。但し、接合層を設けない構成の場合には、セルケース11の接触面(底面)を滑らかにして、微細な凹凸を無くすよう形成することが好ましい。
【0036】
実施の形態1の電池ユニット10においては、複数のセルケース11が並設されており、その並設されたセルケース11の各底面に対向する位置に各発熱体13が配置されるように発熱シート4が構成されている。
【0037】
図4に示すように、発熱シート4において、複数の発熱体13が並設されており、それぞれの端部がリード帯23により電気的に接続されて、各発熱体13が電気的に並列接続されている。発熱シート4における各発熱体13は、セルケース11の底面のほぼ全面を覆うように対向して配置されており、セルケース11の底面全面を均一に加熱するよう構成されている。
【0038】
[発熱体]
本発明に係る実施の形態1の電池ユニット10において用いた発熱体13は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において複数のフィルムシート素材の各層が互いに空隙を介して積層され、優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・k以上を有するフィルムシート状の材料で帯状に形成されている。
【0039】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向において同じように熱伝導されることを示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向の1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向の2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではない。
したがって、実施の形態1の電池ユニット10に用いられる発熱体13は、発熱体13の両端に電圧を印加することにより、その全面において瞬時に均一な温度で発熱するものである。
【0040】
発熱体13の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が600から950W/m・kの特性を有する。天然の黒鉛を主成分とした粉末を成型し、焼成して圧延加工によりフィルムシート状としたものであれば、一般的には熱伝導率が200から400W/m・kであるが、本発明の実施の形態1において用いた発熱体13は、前述のように面方向の熱伝導率が600から950W/m・kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する。したがって、発熱体13においては、発熱と熱伝導により、温度ムラのない均一な熱源となる。
【0041】
本発明において用いられる発熱体13の材料であるフィルムシート素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面あるいは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルムシート素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。したがって、本発明における発熱体13の材料であるフィルムシート素材は、前述のように、面方向においては優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有する材料である。
【0042】
前述のように製造されたフィルムシート素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などとグリコール、グリセリン類とのポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0043】
前記フィルムシート素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することによりフィルムシート状の発熱体が製造される。
【0044】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子フィルムの厚さによって異なり、高分子フィルムの厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。すなわち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助けるものである。フィラーはこうして均一発泡状態を作り出すのに役立つ機能を有している。
【0045】
上記のように、実施の形態1における発熱体13の材料は、フィルムシート素材であり、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートを材料としている。そして、発熱体13は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・kの特性を有する材料で形成されている。
【0046】
本発明に係る実施の形態1の電池ユニット10に用いられる発熱体13においては、フィルムシート状の素材に対して切断処理を行って、セルケース11の底面形状に対応する形状に形成されて発熱体素材が形成されている。この切断処理は、切断金型を素材に押し付けて切断する切断プレス加工により行われる。
【0047】
なお、レーザー加工により、フィルムシート状の素材に対する切断処理を行うことも可能である。フィルムシート状の素材に対してレーザー加工により所望の形状の発熱体素材を形成する場合、非熱加工作用を主体とした波長1064から380nmのレーザー加工、例えば、呼称1064nmの短波長レーザー加工や、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることが好ましい。レーザー加工におけるレーザー波長が短くなると熱加工からケミカル加工に近づくために、発熱体13への熱の影響は小さくなり、加工によるススやバリの発生を抑えた高精度の加工が実現できる。
【0048】
なお、好ましいレーザー加工方法は、発熱体13の材料、すなわち面方向の熱伝導性及び形状によって、前述の非熱加工作用を主体としたレーザー加工波長(1064から380nm)を持つ加工方法から適宜選択し得ることは言うまでもない。
【0049】
[発熱シート]
発熱シート4においては、前述のように製造された複数の発熱体13が、並設されたセルケース11の底面に対応する位置に配置されている。発熱シート4における各発熱体13の両端部は、リード帯23(図4参照)により電気的に接続されて、各発熱体13は電気的に並列に接続されている。このように並設された発熱体13とこれらを接続するリード帯23は、上側被覆層(第1被覆層)12及び下側被覆層(第2被覆層)14により被覆されている。上側被覆層12及び下側被覆層14は、耐熱性、可撓性、及び熱透過性を持つ樹脂材、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等により形成された薄い膜体である。上側被覆層12及び下側被覆層14の外縁部分は、互いに接着されているため、発熱体13及びリード帯23は防水状態に被覆されている。なお、リード帯23に接続されたリード線は、上側被覆層12及び下側被覆層14の外部に導出されており、そのリード線に電力が供給されるよう構成されている。
【0050】
実施の形態1の電池ユニット10においては、上側被覆層12及び下側被覆層14として、ポリイミド(PI)樹脂で形成された厚み37μmのポリイミドフィルムを用いて発熱シート4を製造した。
発熱シート4の製造方法は、以下の通りである。
(1)一方の被覆層12又は14の対向面に対して接着剤を塗布する。
(2)接着剤が塗布された一方の被覆層12又は14の対向面における所定位置に複数の発熱体13及びリード線が接続されたリード帯23を所定位置に配置する。
(3)発熱体13等が配置された一方の被覆層12又は14に対して、当該発熱体13等を封入するように、接着剤が塗布されていない他方の被覆層14又は12を被せる。
(4)発熱体13等を挟んだ被覆層12,14に対して、約350℃に設定された加熱用プレートにより上下面から加圧して、厚み約3μmの接着層を持つラミネート状の発熱シート4が製造される。実施の形態1において用いた接着剤は融点が320℃であった。
【0051】
なお、実施の形態1における発熱シート4は、加熱用プレートによる加圧力が、約0.1kgf/cm、加圧時間が、20分であった。これらの加圧力及び加圧時間は、発熱シート4の厚み、形状、製造環境状態等に応じて適宜、所定の値に設定されるものである。実施の形態1における発熱シート4の使用温度としては、使用した接着剤の融点320℃より低い250℃以下が好ましい。
【0052】
上記のように製造される発熱シート4は、加熱用プレートによる加熱処理の時、所望の形状、例えば平面形状、湾曲形状等の各種形状に形成することが可能である。したがって、本発明に係る電池ユニットにおいては、発熱シート4を、例えばセルケース11の底面形状に対応する形状となるように形成することが可能となり、発熱シート4とセルケース11の底面等との密着性を高めることができる。
【0053】
なお、実施の形態1における発熱シート4は、上側被覆層12及び下側被覆層14をポリイミド(PI)樹脂で形成した例で説明したが、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、又はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂で形成することが可能である。
【0054】
例えば、上側被覆層12及び下側被覆層14として、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合、発熱シート4は次のように製造される。
(1)上側被覆層12及び下側被覆層14における対向面に、予め表面処理、例えばコロナ放電による表面処理が行われる。
(2)上側被覆層12及び下側被覆層14の間の所定位置に複数の発熱体13、及びリード線が接続されたリード帯23を配置する。
(3)発熱体13を挟んだ上側被覆層12及び下側被覆層14に対して、約280℃に設定された加熱用プレートにより上下面から加圧して、ラミネート状の発熱シート4が製造される。
【0055】
上記のように製造された発熱シート4は、加熱用プレートによる加圧力が、約0.1kgf/cm、加圧時間が、10分であった。これらの加圧力及び加圧時間は、発熱シート4の厚み、形状、製造環境状態等に応じて適宜、所定の値に設定されるものである。上記のように製造されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた発熱シート4の使用温度としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の融点258℃より低い180℃以下が好ましい。
【0056】
さらに、実施の形態1における発熱シート4は、上側被覆層12及び下側被覆層14を熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂で形成する場合には次のように製造される。
上側被覆層12及び下側被覆層14として、厚み50μmのポリフェニレンサルファイドフィルムを用いた場合、発熱シート4は次のように製造される。
(1)上側被覆層12及び下側被覆層14の間の所定位置に複数の発熱体13、及びリード線が接続されたリード帯23を配置する。
(2)発熱体13を挟んだ上側被覆層12及び下側被覆層14に対して、約320℃に設定された加熱用プレートにより上下面から加圧して、ラミネート状の発熱シート4が製造される。
【0057】
上記のように製造された発熱シート4は、加熱用プレートによる加圧力が、約0.1kgf/cm、加圧時間が、15分であった。これらの加圧力及び加圧時間は、発熱シート4の厚み、形状、製造環境状態等に応じて適宜、所定の値に設定されるものである。上記のように製造されたポリフェニレンサルファイドフィルムを用いた発熱シート4の使用温度としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂の融点280℃より低い220℃以下が好ましい。
【0058】
なお、実施の形態1の電池ユニット10においては、上側被覆層12及び下側被覆層14がポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂について説明したが、他の樹脂材を用いて形成することが可能である。
【0059】
熱可塑性樹脂で形成された上側被覆層12及び下側被覆層14としては、下記に列記する樹脂材から選ぶことができる。
例えば、汎用プラスチックと呼ばれる、PVC(塩化ビニル樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PMMA(ポリメチルメタアクリレート樹脂)、PA(ナイロン樹脂)、ABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂の共重合体)、AS(アクリルニトリル-スチレン樹脂の共重合体)、PS(ポリスチレン樹脂)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン樹脂)、EVA(エチレン酢酸ビニル樹脂)、EVAL(エチレンビニルアルコール樹脂)、熱可塑性エラストマーと呼ばれる、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、TPE(オレフィン系あるいはスチレン系エラストマー)、PETP(ポリエステル系エラストマー)、エンプラ(エンジニアリングプラスチック)と呼ばれる、PA(ポリアミド樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PC(ポリカーボネイト樹脂)、POM(ポリアセタール樹脂)、PPE(ポリフェニレンエーテル樹脂)、PEN(ポリエチレンナフタレート樹脂)、UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン樹脂)、スーパーエンプラ(超エンプラ)と呼ばれる、PSF(ポリサルフォン樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PAR(ポリアリレート樹脂)、PEI(ポリエーテルイミド樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、熱可塑性PI樹脂、PBI(ポリベンゾイミダゾール樹脂)、フッ素樹脂と呼ばれる、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PFA(パーフルオロアルコキシルアルカン樹脂)、FEP(パーフルオロ-エチレン-プロピレン樹脂)、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン樹脂)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、PCTFE(3フッ化塩化エチレン樹脂)等である。
【0060】
また、熱硬化性樹脂で形成された上側被覆層12及び下側被覆層14としては、下記に列記する樹脂材から選ぶことができる。
例えば、PI(熱硬化性ポリイミド樹脂)、PAI(ポリアミドイミド樹脂)、PF(フェノール樹脂)、UF(ユリア樹脂)、UP(不飽和ポリエステル樹脂、ガラス繊維強化したものも含む)、MF(メラミン-ホルムアルデヒド樹脂)、EP(エポキシ樹脂、ガラス繊維強化したものも含む)、SI(シリコン樹脂)、PUR(ウレタン樹脂)等である。
【0061】
また、実施の形態1の電池ユニット10においては、発熱シート4をセルケース11に接着するための接合層17の材質としては、熱可塑性ポリイミドからなる組成物、熱可塑性ポリアミドからなる組成物、エポキシ樹脂からなる組成物、シリコン樹脂からなる組成物、ウレタン樹脂からなる組成物、ポリエステル樹脂からなる組成物、アクリル樹脂からなる組成物等から選択される。
【0062】
[温度上昇特性]
発明者は、上記のように製造された発熱シート4と断熱ユニット5とを有する加温ユニット19を、セルケース11の底面に接合層17を介して密着させて構成した電池ユニット10において、発熱シート4の加熱によるセルケース11における温度上昇特性を測定する実験を行った。また、発熱シート4と、従来のヒータとしてのPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを用いて比較実験を行った。
【0063】
温度上昇特性測定実験においては、実施の形態1の発熱シート4に対して異なる入力電力により、発熱温度を変化させて測定実験を行うと共に、セルケース11における複数(2箇所)の位置で測定した。また、従来のヒータであるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを用いても同様の測定実験を行った。このとき用いたPTCヒータは、導電性カーボンとポリエチレン系高分子の混合物を樹脂シート上に印刷した後、熱処理を行い絶縁性シートで挟んで発熱シートを形成して、セルケース11の底面に固着して測定実験を行った。
【0064】
この実験で用いたセルケース11は、高さ100mm×幅10mm×奥行き100mm×厚み1mmのアルミニウム材で形成されたものを用いた。長さ100mm×幅10mmの発熱シート4をアルミケース11の底面の全面に張り付けた。また、断熱ユニット5としては、第1断熱部15の材質がセラミックファイバー製のフェルト材であり、その厚みが2〜3mmであり、第2断熱部16の材質がロックウール製の板材であり、その厚みが10mmであった。
【0065】
図5は、実施の形態1における発熱シート4(曲線D)と、PTCヒータ(曲線E)とを比較した実験結果を示すグラフである。この実験で使用した発熱シート4は、長さ100mm、幅8mm、厚み1mmであり、発熱体13は、長さ100mm、幅8mm、厚み0.2mmであった。従来のヒータは、導電性カーボンとポリエチレン系高分子の混合物を樹脂シート上に印刷した後、熱処理を行い製造されたPTCヒータであり、長さ100mm、幅8mm、厚み1mmであった。このPTCヒータは、一定温度を印加すると初期抵抗に応じた電流が流れて自己発熱し、キュリー温度に到達すると急激に抵抗が大きくなり、電流が減少する性質を有する。このため、PTCヒータにおいて、設定温度内ではキュリー温度が無いことが好ましい。しかし、この実験で使用したPTCヒータの材料構成においてはキュリー温度を90度以上の温度に設定することができなかった。また、その他のPTCヒータとしては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)に希土類元素等を添加して焼結したセラミックスがある。このようなPTCヒータの材料構成においては、設定温度として200℃まで対応可能であるが、柔軟性(弾力性、クッション性)を有するものではなく、硬質材であった。
【0066】
なお、発熱シート4及びPTCヒータのヒータ温度は60℃に設定したものである。図5に示すように、電源投入(0秒)から30分が経過した時点において、発熱シート4は約17K(ケルビン温度)上昇し、従来のPTCヒータは約11K上昇した。発熱シート4(曲線D)の方が従来のPTCヒータ(曲線E)に比べて、発熱温度が約55%向上していることが理解できる。
【0067】
PTCヒータは、その設定温度範囲内にキュリー点を有しており、そのキュリー点に到達すると急激に抵抗が大きくなり、電流が減少するという特性を有している。このため、PTCヒータはキュリー温度に到達すると設定温度以上の温度(60℃)より上昇することはなく、高い温度の制御を行うには問題を有していた。一方、本願における発熱シート4は、その設定温度範囲内にはキュリー点がなく、設定温度範囲内の全ての領域においては温度が高くなれば抵抗が大きくなるという正特性(温度−抵抗特性)を有しており、特に高い温度での温度制御に最適な熱源である。
【0068】
図6は、温度上昇特性測定実験におけるセルケース11の測定位置(a,b)を示している。測定位置aは発熱シート4に近い位置であり、測定位置bは発熱シート4から遠く、電極端子8,9に近い位置である。
上記のように発熱シート4に近い位置(a)と、発熱シート4から遠い位置(b)の2箇所のセルケース11の側面の位置で温度上昇特性測定実験を行ったところ、2つの測定位置における温度差はほとんど認められなかった。これは、セルケース11のアルミニウム材の熱伝導率が高いため、発熱シート4からの熱がセルケース11において素早く伝熱されていることを示している。
【0069】
図7は、上記の温度上昇特性測定実験結果を示すグラフである。図7において、符号Aにて示す測定曲線は発熱シート4に6.4Wが入力され、設定温度が225℃の場合である。また、符号Bにて示す測定曲線は発熱シート4に3.8Wが入力され、設定温度が155℃の場合である。符号Cにて示す測定曲線は発熱シート4に1.4Wが入力され、設定温度が60℃の場合である。この温度上昇特性測定実験においては、27℃のセルケース11が加熱されて67℃(温度差40K)に到達するまでの時間を測定した。即ち、セルケース11を40K(ケルビン温度)だけ上昇させる時間を測定した。これは、セルケース11を零下20℃から20℃(温度差40K)まで上昇させるための時間と相対的に同様と見ることができる。
【0070】
図7に示すように、実施の形態1における発熱シート4を用いて消費電力(ワット数)を変更した場合の温度上昇時間を表したものであり、消費電力(ワット数)が高いほど立ち上がりが早く、且つ所定温度差(40K)までの到達時間が極端に短いことが理解できる。発熱シート4に6.4Wが入力された設定温度が225℃の場合(測定曲線A)、所定温度差(40K)までの到達時間は約10分であった。また、発熱シート4に3.8Wが入力された設定温度が155℃の場合(測定曲線B)、所定温度差(40K)までの到達時間は約30分であった。また、発熱シート4に1.4Wが入力された設定温度が60℃の場合(測定曲線C)、所定温度差(40K)に到達するためには図示していないが数時間(約3時間)を要した。
【0071】
なお、氷点下の過酷な使用状態において、例えば氷点下の−20℃の環境下においては最適温度の+20℃との温度差が40K(ケルビン温度)である。このような使用状態において、発熱シート4が+60℃で設定されているとき、環境温度(−20℃)と設定温度(+60℃)との温度差は80Kとなる。同様に、発熱シート4が+225℃で設定されているときには、その温度差が245Kとなり、発熱シート4が+155℃に設定されているときには、その温度差が175Kとなる。環境温度と発熱シート4の設定温度との温度差(温度勾配)が、大きいほうが最適温度(例えば、+20℃)までの到達時間が早くなることはいうまでもない。
【0072】
なお、本発明においては、電池ユニットにおける発熱手段としてPTCヒータを用いて、発熱シート4と同様にセル2に張り付ける構成とすることにより、例えば−20℃の環境下で設定温度60℃として、その温度差80Kで使用することは可能である。PTCヒータを発熱手段として用いた場合には、発熱シート4を発熱手段として用いた場合に比べて最適温度(40K)までの到達時間は長くなるが、本発明のセルを直接的に加熱する構成とすることにより従来技術の欄で説明した筐体全体を加熱する構成に比べて、最適温度までの到達時間を大幅に短くすることが可能となる。
【0073】
上記のように、実施の形態1の電池ユニット10においては、発熱体13を用いた発熱シート4がセルケース11の底面全面を均一に加熱するように構成されているため、セルケースの温度立ち上がりが早く、所定温度への到達時間が飛躍的に早くなっている。
【0074】
実施の形態1の電池ユニット10におけるセル(二次電池)2の使用温度としては、好ましくは20℃であり、セルケース11の温度は常に60℃以下となるよう設定されている。このため、実施の形態1の電池ユニット10には、複数の温度センサが組電池20に設けられている。温度センサの取付け位置としては組電池20の上部、即ちセル2の上面に設けられている。実施の形態1においては全てのセル2の上面に温度センサを設けた例で説明するが、組電池20における複数のセル2において、等間隔となるように選択されたセル2の上面に配置してもよい。
【0075】
各温度センサからの温度情報は、電池ユニット10に設けられた制御部(図示無し)に送られ、予め決められた設定温度と比較されて当該組電池20に対する温度制御が行われる。実施の形態1の電池ユニット10においては、設定温度を、例えば20℃として制御するよう構成してもよい。即ち、温度センサからの温度情報により、セルケース11の温度が20℃に達したことが検知されたとき、加温ユニット19における発熱体13に対する電力の供給が遮断される。また、セルケース11の温度が10℃より低いことが検知されたとき、加温ユニット19における発熱体13に対する電力が供給されるよう構成されており、低温度の環境において当該電池ユニット10を使用する場合には、直ぐに最適温度(例えば20℃前後)となるよう設定されている。この結果、実施の形態1の電池ユニット10においては、当該電池ユニット10が電気特性や寿命に関して最適な温度範囲で常に稼働されるよう構成されており、安全性及び信頼性の高い電池ユニットとなっている。
【0076】
前述のように、セルケース11は高い熱伝導率を持つ金属、例えばアルミニウム、銅等で形成されているため、加温ユニット19により加熱されたセルケース11の底部の熱が、直ぐに上部に熱伝導する。したがって、温度センサにより検出された温度情報は、セルケース11のほぼ全域の温度と考えられる。このように、温度センサが検出するセルケース11の上部の温度は、実質的にセルケース11の全域の温度を示しており、温度センサからの温度情報による制御によりセルケース11に対する好適な温度制御が可能となっている。
【0077】
上記のように、実施の形態1の電池ユニット10においては、発熱立ち上がりが早く、発熱面の全体が均一に発熱するという優れた特性を有する特殊な発熱体13をセルケース11に対して実質的に直接的に接触するように配設して、発熱体13によりセルケース11を加熱するように構成されている。したがって、実施の形態1の電池ユニット10を環境対応自動車の電源として用いた場合には、寒冷地の氷点下の状況においても電池ユニット10を素早く加温して所定温度に短時間で到達させることができる。この結果、実施の形態1の電池ユニット10を用いた環境対応自動車は、氷点下の状況において始動前に、予め電源を長時間加温しておく必要が無く、放熱による無駄な電力消費を無くし、省エネルギー化を図ることができ、氷点下における環境対応自動車の始動を素早く行うことが可能となる。
【0078】
また、実施の形態1の電池ユニット10においては、薄膜体の発熱体13を耐熱性のある薄い樹脂により被覆して個々のセルケース11に直接取り付けた構成であるため、電池ユニット10における各セルケース11の発熱立ち上がりが早くなると共に、電池ユニットの小型化、及び軽量化を達成することができる。この結果、実施の形態1の電池ユニットは、環境対応自動車の小型化、軽量化に大きく寄与するものとなる。また、車両に使用した場合において生じる振動に対して、金属発熱体等の硬質な発熱体であれば絶縁物を傷つけ、当該絶縁物の絶縁破壊を起こすことがある。しかし、実施の形態1の電池ユニットにおける発熱体13は、絶縁物より柔らか材質であるため、振動状態であっても絶縁物を傷つけることがない。
【0079】
《実施の形態2》
以下、本発明に係る実施の形態2の電池ユニットについて添付の図面を参照しつつ説明する。図8は、本発明に係る実施の形態2の電池ユニットにおける1つのセル100を示す断面図である。図8において、(a)がセル100の正面断面図であり、(b)が(a)に示したセル100におけるB−B線による側面断面図である。実施の形態3の電池ユニットの説明において、前述の実施の形態1の電池ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0080】
図8に示すように、セル100は、実施の形態1と同様に、金属製のセルケース11を備えており、このセルケース11の内部には正極シートと負極シートが、非水電解質を有するセパレータを介して交互に積層されて、扁平状に巻回された電極構成体が封入されている。電極構成体が封入されたセルケース11の上面には、正極シートに接続された正極端子8と、負極シートに接続された負極端子9が突設されている。
【0081】
図8に示すように、セルケース11の下側には、加温ユニット119が設けられている。この加温ユニット119は、発熱シート104及び断熱ユニット105により構成されている。発熱シート104は、発熱体13が上面側被覆層112及び下面側被覆層114により上下両面から挟着されて、被覆されている。
【0082】
図8の(b)に示すように、断熱ユニット105には、セルケース11の正面側及び背面側に立ち上がり部105Aがそれぞれ形成されている。このため、断熱ユニット105はセルケース11の底面の全域を覆うと共に、セルケース11の正面側と背面側のそれぞれの一部を覆うよう構成されている。
【0083】
図9は、実施の形態2の電池ユニットにおける加温ユニット119を示す斜視図である。図9に示すように、加温ユニット119には、第1断熱部115と第2断熱部116を有する断熱ユニット105、及び発熱体113を有する発熱シート104が設けられている。発熱シート104は、耐熱性と可撓性と熱透過性を有する樹脂材、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等により形成された薄い膜体が発熱体113の全面に被着されている。
【0084】
断熱ユニット105は、断熱性を有するとともに、弾性(クッション性)を有する材料により形成された第1断熱部115と、断熱性を有するとともに、第1断熱部115より弾性(クッション性)が少なく硬い材料により形成された第2断熱部116とにより構成されている。
第1断熱部115として用いられる材料としては、弾性(クッション性)のある断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.07〜0.15、密度[kg/m]が60〜400のものが好ましい。また、第2断熱部116として用いられる材料としては、ある程度硬く変形しにくい断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.15〜0.25、密度[kg/m]が400〜1000のものが好ましい。断熱ユニット105の具体的な材料としては、前述の実施の形態1において説明した材料等が用いられる。
【0085】
なお、実施の形態2においては、断熱ユニット105として第1断熱部115及び第2断熱部116の2種類の断熱材料を積層して用いた例で説明するが、いずれか一方の材料のみにより断熱ユニット105を構成してもよい。
前述のように、断熱ユニット105には、立ち上がり部105Aが形成されており、セルケース11の正面側及び背面側の底面近傍部分を覆うよう構成されている。但し、複数のセル100の間にはセパレータが配置されているため、断熱ユニット105には、セパレータの一部を挟むように、凹部105Bが形成されている。したがって、断熱ユニット105は、セルケース11の底面の全域に配置された発熱シート104を完全に覆う形状となり、即ち、セルケース11の底面を完全に覆うと共に、その正面及び背面に繋がる部分を覆うように形成されている。
【0086】
上記のように構成された実施の形態2の電池ユニットにおいては、発熱シート104をセルケース11の底面形状より大きく形成することが可能となり、発熱体113がセルケース11の底面の全域を加熱する構成とすることが可能となる。
上記のように発熱シート104に並設された複数の発熱体113は、前述の実施の形態1と同様に、それぞれの端部がリード帯23により接続されて、電気的に並列接続されている。
【0087】
実施の形態2の電池ユニットにおいて、セルケース11の底面と発熱シート104は熱伝導性を有する接合材料で構成された接合層17(図3参照)により固着されている。この接合層17は、セルケース11の底面における微細な凹凸部分に入り込み、その表面を平坦にしてセルケース11と発熱シート104との密着性を高めている。この結果、発熱シート104から輻射された熱は、発熱シート104の裏面側においては断熱ユニット105により遮断されるが、発熱シート104の表面側から輻射された熱は接合層17を介して金属製(例えば、アルミニウム製)のセルケース11に確実に伝熱される。
接合層17の材料としては、熱伝導性に優れた材料であり、前述の実施の形態1において説明した材料が用いられる。
【0088】
なお、実施の形態2においては、発熱シート104とセルケース11との間に接合層17を設けた例で説明したが、本発明においては、発熱シート104は可撓性、柔軟性を有するため、発熱シート104をセルケース11に直接的に密着接触させて、発熱シート104とセルケース11との間に接合層17を設けなくても同様の効果を奏する。但し、接合層17を設けない場合には、セルケース11の接着面(底面)を滑らかにして、微細な凹凸を無くすことが好ましい。
【0089】
上記のように、実施の形態2の電池ユニットにおいては、発熱シート104における複数の発熱体113は並設されており、各発熱体113の端部はリード帯23により電気的に接続され、各発熱体113が電気的並列接続されている。また、発熱シート104における各発熱体113は、セルケース11の底面のほぼ全面に接触して、且つ断熱ユニット105により覆われているため、発熱体113から輻射された熱はセルケース11に伝導されセルケース11を効率高く加熱している。
【0090】
また、実施の形態2の電池ユニットにおいては、前述の実施の形態1の電池ユニットと同様に、発熱立ち上がりが早く、発熱面の全体が均一に発熱するという優れた特性を有する特殊な発熱体113をセルケース11に対して実質的に直接接触するように配設している。このため、当該環境対応自動車の電源として用いた場合、寒冷地の氷点下の状況においても電池ユニットを所定温度に素早く加温することができ、且つ電池ユニットの小型化、及び軽量化を達成することができる。
【0091】
《実施の形態3》
以下、本発明に係る実施の形態3の電池ユニットについて添付の図面を参照しつつ説明する。本発明に係る実施の形態3の電池ユニットは、複数のリチウムイオン電池であるセルが円筒形状を有しており、これらの円筒形状のセルはその円筒中心軸が平行となるように並設されて電池ユニットケース内に収納されている。電池ユニットケース内に収納された複数のセルは、電気的に直列に接続されて所定電力を出力するよう構成されている。
【0092】
図10は、本発明に係る実施の形態3の電池ユニットにおける円筒形状のセル200が並設された状態を示す斜視図である。図11は、実施の形態3の電池ユニットにおけるセル200の円筒中心軸に直交する方向で切断した断面図である。図11において、リチウムイオン電池の正極シート、負極シート、セパレータ等の電極構成体22は図示を省略している。実施の形態3の電池ユニットの説明において、前述の実施の形態1の電池ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
実施の形態3の電池ユニットにおけるセル200の外観は、高い熱伝導性を有する材料での円筒形状に形成されたセルケース211により構成されており、このセルケース211の内部に正極シートと負極シートが、非水電解質を有するセパレータを介して交互に積層されて、円筒状に巻回された電極構成体22が封入されている。電極構成体22が封入されたセルケース211の両端面には、正極シートに接続された正極端子と、負極シートに接続された負極端子がそれぞれ設けられている。
【0094】
実施の形態3において、セルケース211は熱伝導性の高い金属材料たとえば、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。また、鉄にニッケルメッキしたものを用いると酸化や腐食を防止することが可能となる。さらに、アルミニウムと樹脂シートを重ね合わせ一体化したアルミラミネートフィルム等を用いることにより酸化や腐食を防止することはもちろん各セル間の絶縁することが可能となる。
【0095】
図11に示すように、円筒形状の各セル200は、その円筒中心軸が水平となるように横置きされている。したがって、実施の形態3の電池ユニットにおいては、セル200の円筒面がセル200の上下面を構成している。
実施の形態3の電池ユニットにおいて、各セル200の下側、即ち各セルケース211の下面には加温ユニット219が設けられている。この加温ユニット219は、発熱シート204、及び断熱ユニット205により構成されている。発熱シート204は、実施の形態1における発熱シート4と同様に、薄膜の発熱体13を上面側被覆層12及び下面側被覆層14により上下両面から被着して構成されている。上面側被覆層12及び下面側被覆層14は、耐熱性と可撓性と熱透過性を有する樹脂材、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等により形成された薄い膜体である。
【0096】
断熱ユニット205は、断熱性を有するとともに、弾性(クッション性)を有する材料により形成された第1断熱部215と、高い断熱性を有するとともに、第1断熱部215より弾性(クッション性)が少なく硬い材料により形成された第2断熱部216とにより構成されている。
第1断熱部215として用いられる材料としては、弾性(クッション性)のある断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.07〜0.15、密度[kg/m]が60〜400のものが好ましい。また、第2断熱部216として用いられる材料としては、ある程度硬く変形しにくい断熱材として熱伝導率[W/(m・K)]が0.15〜0.25、密度[kg/m]が400〜1000のものが好ましい。断熱ユニット205の具体的な材料としては、前述の実施の形態1において説明した材料等が用いられる。
なお、実施の形態3においては、断熱ユニット205として第1断熱部215及び第2断熱部216の2種類の断熱材料を積層して用いた例で説明するが、いずれか一方の材料のみにより断熱ユニット205を構成してもよい。
【0097】
実施の形態3の電池ユニットにおいて、セルケース211の円筒面における下側面と発熱シート204は熱伝導性を有する接合材料で構成された接合層217により固着されている。この接合層217は、セルケース211の下側面における微細な凹凸部分に入り込み、その表面を平坦にしてセルケース211と発熱シート204との密着性を高めている。この結果、発熱シート204から輻射された熱は、発熱シート204の裏面側においては断熱ユニット205により遮断されるが、発熱シート204の表面側においては接合層217を介してアルミニウム製のセルケース211に確実に伝熱される。
接合層217の材料としては、前述の実施の形態1における接合層17と同じ特性を持つ材料が用いられる。
【0098】
なお、実施の形態3においては、発熱シート204とセルケース211との間に接合層217を設けて密着させた例で説明するが、本発明においては、発熱シート204とセルケース211とを直接的に密着接触させてもよく、発熱シート204とセルケース211との間に接合層を設けなくても略同様の効果を奏する。但し、接合層を設けない構成の場合には、セルケース211の接触面(底面)を滑らかにして、微細な凹凸を無くすよう形成することが好ましい。
【0099】
上記のように、実施の形態3の電池ユニットにおいては、発熱立ち上がりが優れた特性を有する特殊な発熱体13を円筒形状のセルケース211の下側面(曲面)に対して実質的に直接的に接触するように配設して、発熱体13によりセルケース211を直接的に加熱するように構成されている。したがって、実施の形態3の電池ユニットを環境対応自動車の電源として用いた場合には、寒冷地の氷点下の状況においても電池ユニットを素早く加温して所定温度に短時間で到達させることができる。この結果、実施の形態3の電池ユニットを用いた環境対応自動車は、氷点下の状況において始動するまでに、予め電源を長時間加温しておく必要が無く、氷点下における環境対応自動車の始動を素早く行うことが可能となる。
【0100】
また、実施の形態3の電池ユニットにおいては、薄膜体の発熱体13を耐熱性のある薄い樹脂により被覆して個々のセルケースに直接取り付けた構成であるため、電池ユニットの小型化、及び軽量化を達成することができる。この結果、実施の形態4の電池ユニットは、環境対応自動車の小型化、軽量化に大きく寄与するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの環境対応自動車、及び電源として二次電池が用いられる各種電子電気機器において、特に寒冷期の電源として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 電池ユニットケース
2 セル(二次電池)
3 セパレータ
4 発熱シート
5 断熱ユニット
6 冷却部
7 挟着手段
8 正極端子
9 負極端子
10 電池ユニット
11 セルケース
12 上側被覆層(第1被覆層)
13 発熱体
14 下側被覆層(第2被覆層)
15 第1断熱部
16 第2断熱部
17 接合層
18 挟着手段
19 加温ユニット
20 組電池
21 フランジ部
22 電極構成体
23 リード帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を配列して構成された組電池が筐体内に配置された電池ユニットにおいて、
各二次電池は、
二次電池の電極構成体が封入されて正極端子と負極端子が突設され、熱伝導性を有する材料で形成された二次電池ケースと、
炭素系物質を含む材料によりフィルムシート状に形成された発熱体を有し、前記発熱体から当該二次電池ケースに熱伝導するように前記二次電池ケースの外周面の少なくとも一部に密接して取り付けられた発熱シートと、
前記発熱シートにおける前記二次電池ケースに対向する面の裏面を覆うように配設され、前記発熱体からの熱を遮断するよう構成された断熱部材と、
を具備する電池ユニット。
【請求項2】
前記発熱シートは、二次元的等方向性の熱伝導を有して、電圧を印加することにより均一に発熱する発熱体と、
前記発熱体を密着して覆い、電気絶縁性及び熱伝導性を有する被覆層と、を含む請求項1に記載の電池ユニット。
【請求項3】
前記断熱部材は、前記発熱シートに接触する第1断熱部と、前記第1断熱部に密接して配設された第2断熱部とを有し、前記第1断熱部が前記第2断熱部より弾性を有する請求項1又は2に記載の電池ユニット。
【請求項4】
前記発熱シートは、前記二次電池ケースの下面側となる領域に密接して取り付けられており、前記二次電池ケースの少なくとも下方から加温するよう前記発熱体が配置された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項5】
前記発熱シートと前記二次電池ケースの外面との間に、熱伝導性を有する接合材で形成された接合層が配設された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項6】
前記二次電池ケースが箱形形状であり、前記発熱シートが当該二次電池ケースの少なくとも底面側に密接して取り付けられており、前記発熱体が前記二次電池ケースの少なくとも底面の全てを覆うように配置され、前記断熱部材が前記二次電池ケースの底面及び側面の少なくとも一部を覆うよう構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項7】
前記発熱体は、正特性の温度−抵抗特性を有し、且つ設定温度範囲内においてキュリー温度を持たない特性を有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項8】
発熱シートと断熱部材が一体化された加温ユニットを有し、前記加温ユニットは、前記二次電池ケースが複数個並設されて構成された組電池に対して、一体的に装着されるよう構成された請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項9】
前記発熱体は、高分子フィルム、又はフィラーを添加した高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理することにより得られたグラファイトフィルムシートを所定形状に切断した後、当該切断されたグラファイトフィルムシートをその厚み方向に加圧する加圧処理により形成された請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165390(P2011−165390A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24306(P2010−24306)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】