説明

電池満充電容量推定装置

【課題】本発明は、電池の満充電容量の推定の精度を高めることができる電池満充電容量推定装置を提供する。
【解決手段】電池満充電容量推定装置70は、CMU22と、BMU30と、電流計35と、OCV−満充電容量特性グラフ90とを備える。CMU22とBMU30とは、電池20のOCVを取得する。CMU22とBMU30と電流計35とは、電池20のSOCを取得する。OCV−満充電容量特性グラフ90は、電池20のSOCが所定値であるときの、電池20の満充電容量とOCVとの関係を示す。BMU30は、取得された電池20のSOCが所定で値あるときに、取得されたOCVとOCV−満充電容量特性グラフ90とに基づいて、電池20の満充電容量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車の電池の満充電容量を推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の開放電圧(OCV、Open Circuit Voltage)と、電池の充電率(SOC、State Of Charge)との初期特性を利用して、電池の満充電容量を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−19664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電池の劣化に伴い電池の満充電容量が変化する。このため、電池が劣化するにしたがい、特許文献1に開示されるOCV−SOC初期特性を用いる技術によって推定される満充電容量と、電池の実際の満充電容量とが異なってくる。
【0005】
電動モータで走行する電気自動車では、電池の充電量(電池に残っている電荷の量)を正確に把握することが求められている。電池充電量を正確に把握するために、電池の満充電容量をより正確に求めることが求められる。
【0006】
本発明は、電池の満充電容量をより正確に求めることができる電池満充電容量推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の電池満充電容量推定装置は、電池の開放電圧値を取得する開放電圧取得手段と、前記電池の充電率を取得する充電率取得手段と、前記電池が所定の充電率のときの、前記電池の満充電容量と開放電圧との関係を示す満充電容量−開放電圧情報と、前記充電率取得手段によって取得された充電率が前記所定の充電率であるときに、前記開放電圧取得手段によって取得された開放電圧値と前記満充電容量−開放電圧情報とに基づいて、前記電池の満充電容量を推定する満充電容量推定手段とを備える。
【0008】
請求項2に記載の電池満充電容量推定装置は、電池の開放電圧値を取得する開放電圧取得手段と、前記電池の充電率を取得する充電率取得手段と、複数の段階に分けられる前記電池の充電状態の各段階に設定されて、前記各段階での前記電池の満充電容量と開放電圧との関係を示す満充電容量−開放電圧情報と、前記充電率取得手段によって取得された充電率が所定の充電率であるときに、前記開放電圧取得手段によって取得された開放電圧値と、前記複数の段階のうち前記所定の充電率に対応する段階に設定される前記満充電容量−開放電圧情報とに基づいて、前記電池の満充電容量を推定する満充電容量推定手段とを備える。
【0009】
請求項3に記載の電池満充電容量推定装置では、請求項1または請求項2の記載において、前記所定の充電率は、複数設定される。
【0010】
ここで言う開放電圧について定義する。開放電圧値は、電池へ供給される電流がない状態であって、かつ、電池から外部へ供給される電流がない状態において、電圧の変動がないときの値である。この場合では電圧の変動がない状態を安定した状態とする。または、開放電圧値は、電池へ供給される電流がない状態であって、かつ、電池から外部へ供給される電流が略ない状態において、電圧の変動がほとんどないときの値である。この場合では、電圧の変動がほとんどない状態を安定した状態とする。ここで言う、略ない状態について説明する。電池が搭載される装置、例えば電気自動車などでは、電池は、各種アクセサリなどに接続されている。これらアクセサリは、電池が搭載される装置の電源がオフされた状態であっても、電池から電流が供給されている。略ない状態とは、このように、電池が搭載される装置のメインスイッチがオフされることによって外部への電流の供給が略なくなるが、電池に接続される各回路(アクセサリなど)への電流の供給が継続されている状態である。このため、電圧の変動はほとんどない状態となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、電池の開放電圧値と、電池の満充電容量と開放電圧との関係を示す満充電容量−開放電圧情報とを用いて電池の満充電容量を推定するので、電池のより正確な満充電容量を求めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果が得られる。さらに、所定の充電率を変更しても、当該変更後の所定の充電率に対応する満充電容量−開放電圧情報を備えているので、所定の充電率を変更しても対応することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1,2と同様の効果が得られる。さらに、所定の充電率が複数設定されることによって、電池の充電作業中に電池は所定の充電率になることが多くなる。このことによって、電池満充電容量推定装置が動作する回数が多くなるので、電池のより正確な満充電容量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の電池満充電容量推定装置を備える電気自動車を示す概略図。
【図2】図1に示された電池とBMUと統合制御ユニットとを概略的に示す概略図。
【図3】図1に示された電池のOCV−SOC特性を示すグラフ。
【図4】図1に示された電池が所定のSOCにあるときの、OCV−満充電容量特性を示すグラフ。
【図5】図1に示す電池満充電容量推定装置の動作を示すフローチャート。
【図6】図1に示すBMUが記憶しているSOHを示すグラフ。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電池満充電容量推定装置が備える、SOCが80%のときのOCV−満充電容量特性を示すグラフ。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電池満充電容量推定装置の動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る電池満充電容量推定装置が備える第3のOCV−満充電容量特性を示すグラフ。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る電池満充電容量推定装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る電池満充電容量推定装置を、図1〜6を用いて説明する。図1は、本実施形態の電池満充電容量推定装置70を備える電気自動車1を示す概略図である。電気自動車1は、電池満充電容量推定装置70を備える装置の一例である。
【0016】
図1に示すように、電気自動車1は、電気自動車1を走行可能とする電動モータ(回転電機)10と、電池20と、BMU(Battery Management Unit)30と、電流計35(図2に示す)と、統合制御ユニット40と、充電器50とを備える。電気自動車1は、例えばガソリンなどの燃料を用いる内燃機関を備えず、電動モータ10の駆動力によって走行する。電動モータ10は、後輪2に減速ギヤ部3を介して連結されている。後輪2には、電動モータ10の回転が伝達される。
【0017】
図2は、電池20と、BMU30と、統合制御ユニット40と、電流計35とを示す概略図である。図1,2に示すように、電池20は、電気自動車1において電力を必要とする装置に電流を供給する。電池20から電流が供給される装置は、上記したように、本実施形態では、電動モータ10と、図示しないアクセサリなどである。
【0018】
電池20は、充電可能な充電池である。電池20は、複数の電池セルユニット21と、各電池セルユニット21に設けられて各電池セルユニット21を監視するCMU(Cell Monitor Unit)22とを備えている。各電池セルユニット21は、複数の電池セル23を備えている。
【0019】
BMU30は、各CMU22に接続されており、電池20を制御する。この制御としては、例えば、電池20から電動モータ10へ供給される電流の調整である。また、各CMU22からBMU30へ情報が伝達される。この情報は、各電池セルユニット21の情報であり、例えば、各電池セル23の電圧値と各電池セル23の温度を示す情報である。BMU30は、各CMU22から送信される各電池セル23の電圧値に基づいて電池20の電圧値を算出する。
【0020】
電流計35は、電池20から外部(電池20の外部)へ供給される電流値を検出する。電流計35は、BMU30に接続されており、検出した電流値をBMU30に送信する。このため、BMU30は、電池20から外部へ供給される電流値を把握している。
【0021】
BMU30は、電池20のSOH(State Of Health)を示す情報と、電池20の満充電容量を示す情報と、電池20のSOC(State Of Charge)を示す情報とを記憶している。満充電容量(Ah)は、満充電時(充電率100%)のときに電池20に蓄えられる電荷の量である。
【0022】
電池20は、充電と放電とを繰り返すことによって、劣化する。電池20は、劣化することによって、電池20が劣化していないときの満充電容量に比べて、満充電容量が小さくなる。SOHは、電池20が劣化していない状態(未使用で新品の状態)での満充電容量に対する、電池20の満充電容量の割合(%)である容量維持率を示す。電池20が劣化していない状態では、SOHは、100%である。電池20が劣化して、そのときの電池20の満充電容量が小さくなると、SOHは、小さくなる。
【0023】
SOCは、電池20の満充電容量に対する、電池20の充電量である蓄えられている電荷の量の割合(%)を示す。言い換えると、SOCは、電池20の充電率である。電池20の満充電状態では、SOCは100%となる。BMU30は、記憶されている満充電容量と、電池20から外部へ供給される電流値の積算値と、電池20の電圧とから、電池20のSOCを推定する。ここで言う電流値の積算値は、前回充電が完了したときから電池20から流れる電流の積算値である。また、BMU30は、SOHとSOCとに基づいて、電池20の残量(残っている電荷量)を算出する。
【0024】
SOHは、各電池セル23の過去の温度変化の情報と電池20の使用時間とに基づいてBMU30によって推定される。この場合、満充電容量は、上記のように推定されるSOHと、電池20が劣化していないときの満充電容量とに基づいて算出される。
【0025】
また、満充電容量は、後述される電池満充電容量推定装置70によって推定される。この場合、SOHは、電池満充電容量推定装置70によって推定された満充電容量と、劣化していないときの電池20の満充電容量とに基づいて算出される。電池満充電容量推定装置70による電池20の満充電容量の推定については、後で詳細に説明する。
【0026】
ここで、開放電圧であるOCV(Open Circuit Voltage)について定義する。開放電圧値は、電池20へ供給される電流がない状態であって、かつ、電池20から外部へ供給される電流がない状態において、電圧の変動がないときの値である。この場合では、電圧の変動がない状態を、電池20の安定状態とする。または、開放電圧は、電池20へ供給される電流がない状態であって、かつ、電池から外部へ供給される電流が略ない状態において、電圧の変動がほとんどない状態の値である。この場合では、電圧の変動がほとんどない状態を電池20の安定状態とする。
【0027】
ここで言う、略ない状態について説明する。電池20が搭載される電気自動車1では、電池20は、電動モータ10と図示しないアクセサリなどに接続されている。これら電動モータ10以外の接続相手(電流を供給する相手)の中には、電気自動車1のメインスイッチがオフされた状態(走行できない状態)であっても、電池20から電流が供給されるものもある。略ない状態とは、このように、メインスイッチがオフされた状態であっても電池20に接続される供給相手への電流の供給が継続されている状態である。このため、電圧の変動がほとんどない。本実施形態では、開放電圧値は、上記の、電池20から外部への電流の供給が略ない状態ときの値である。
【0028】
BMU30は、OCV−SOC特性グラフと、OCV−満充電容量特性グラフとを備えている。OCV−SOC特性グラフは、電池20が劣化していない初期状態でのOCVとSOCとの関係を示すグラフである。図3は、電池20が劣化していない初期状態でのOCV−SOC特性グラフ80を示している。図3では、横軸は、SOCを示す。横軸は、図中右側に進むにつれて、値が大きくなる。縦軸は、OCVを示す。縦軸は、図中上側に進むにつれて、値が大きくなる。図3に示すように、OCVとSOCとは、一対一の関係である。
【0029】
一方、OCVとSOCとの関係は、電池20の劣化状態に合わせて変化する。図3中、劣化した電池20のOCV−SOC特性グラフの例として、第1の状態Aまで劣化した電池20のOCV−SOC特性グラフを2点鎖線で示し、第2の状態Bまで劣化した電池20のOCV−SOC特性グラフを1点鎖線で示している。第2の状態Bは、第1の状態Aよりもさらに劣化した状態である。なお、BUM30は、OCV−SOC特性グラフとして、上記1,2点鎖線で示されるグラフを示すマップは備えてはいない。
【0030】
図3に示すように、電池20の満充電容量の変化に応じて、OCV−SOC特性が変化する。言い換えると、OCVとSOCとに基づいて、電池20の満充電容量を推定することができる。後述されるOCV−満充電容量特性グラフは、上記に基づいて電池20の満充電容量を推定するために用いられる。
【0031】
OCV−満充電容量特性グラフは、電池20のSOCが所定の値であるときの、OCVと電池20の満充電容量との関係を示すグラフである。図4は、一例として、SOCが50%であるときの、OCV−満充電容量特性グラフ90である。所定値である50%は、BMU30に記憶されている。
【0032】
図4では、横軸は、満充電容量を示す。横軸は、図中右側に進むにつれて値が大きくなる。縦軸は、OCVを示す。縦軸は、図中上側に進むにつれて値が大きくなる。図4は、電池20のOCVとSOCとから電池20の満充電容量を推定するために用いられる。図4に示すように、OCV−満充電容量特性グラフでは、OCVと満充電容量とは、一対一の関係である。
【0033】
統合制御ユニット40は、電気自動車1の様々な制御を行っている。例えば、統合制御ユニット40は、BMU30に接続されている。統合制御ユニット40は、運転者のアクセルペダルの操作(踏み込み量)に応じてBMU30を制御し、アクセルペダルの操作量に応じた電流が電動モータ10に供給されるようにする。
【0034】
また、統合制御ユニット40は、BMU30からの情報によって、電池20のSOCを把握する。統合制御ユニット40は、例えばインストルメントパネルに設けられる表示装置60でSOCを表示し、電池20のSOCを運転者に知らせる。
【0035】
図1に示すように、充電器50は、電池20に連結されており、図示しない外部電源から供給される電流を調整して電池20に供給する。このことによって、電池20が充電される。充電器50の動作は、BMU30によって制御される。
【0036】
上記構成を有する電気自動車1では、CMU22と、BMU30と、電流計35とは、電池20のSOCが所定値(本実施形態では、50%)であるときに電池20のOCVを用いて電池20の満充電容量を推定する電池満充電容量推定装置70を構成する。言い換えると、本実施形態では、電池満充電容量推定装置70は、CMU22と、BMU30と、電流計35とを備える。
【0037】
具体的には、CMU22が検出する各電池セル23の電圧に基づいてBMU30がOCVを算出する。CMU22とBMU30は、電池の開放電圧値を取得する開放電圧取得手段の一例である。BMU30が算出する電池20の電圧値と、電流計35が検出する電流値に基づいてBMU30が算出する電池20から流れる電流の積算値(前回の充電が完了したときから電池20から流れる電流の積算値)と、BMU30が記憶するSOH情報とから、電池20のSOCが推定される。CMU22とBMU30と電流計35とは、電池のSOC(充電率)を取得する充電率取得手段の一例である。BMU30は、電池20のOCVとSOCと、OCV−満充電容量特性グラフとから電池20の満充電容量を推定する。BMU30は、充電率取得手段によって取得された充電率が所定の充電率であるときに、開放電圧取得手段によって取得された開放電圧値と満充電容量−開放電圧情報とに基づいて、電池の満充電容量を推定する満充電容量推定手段の一例である。
【0038】
つぎに、電池満充電容量推定装置70の動作を説明する。図5は、電池満充電容量推定装置70の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、BMU30は、ステップST1で、電池20が普通充電中か否かを判定する。具体的には、BMU30は、充電器50から、電池20の充電開始の信号を受信したか否かを判定する。電池20が充電を開始したと判定されると、ステップST2に進む。
【0039】
なお、電池満充電容量推定装置70は、電池20が安定状態になりやすいときに動作する。電池20の充電作業中は、電池20に安定して電流が供給される状態であり、比較的安定状態になりやすい。このため、本実施形態では、電池満充電容量推定装置70は、一例として、電池20の充電作業の開始に合わせて動作する。
【0040】
ステップST2では、BMU30は、CMU22から送信される各電池セル23の電圧値と、電流計35から送信される電流値の積算値と、BMU30に記憶されているSOHとに基づいて、電池20のSOCを推定する。そして、推定したSOCが所定値である50%であるか否かを判定する。SOCが50%であると判定すると、ついで、ステップST3に進む。
【0041】
なお、電池20の充電作業中でも電池20から外部に電流は流れる。本実施形態では、具体的には、電池20の充電作業中は電気自動車1に搭載される各ECU(図示せず)が作動状態にあるため、12Vバッテリ(図示せず)に電力を供給するために、電池20からDCDCコンバータ(図示せず)へ電流が流れる。電流計35が検出する電流値は、上記のように電池20から外部へ流れる電流値である。12Vバッテリは、上記各ECUに電流を供給するために用いられている。
【0042】
ステップST3では、BMU30は、充電器50を制御し、電池20への電流の供給を停止する。ついで、ステップST4に進む。BMU30は、CMU22から送信される各電池セル23の電圧値に基づいて、電池20が安定状態(電池20の電圧の変動がない状態または変動が略ない状態)であるか否かを判定する。なお、ステップST3で電池20への電流の供給を停止するのは、電池20を安定状態にするためである。上記したように、電池20の充電作業中は、電池20に供給される充電電流は小さいため、安定状態に近い状態である。このため、電池20への電流の供給が停止されると、電池20は、比較的短い時間で安定状態になる。BMU30は、電池20が安定状態になったと判定すると、ついでステップST5に進む。
【0043】
BMU30は、ステップST5では、CMU22から送信される各電池セル23の電圧値の情報から、電池20のOCVを検出する。ついで、ステップST6に進む。BMU30は、ステップST6では、検出されたOCVと、OCV−満充電容量特性グラフとから、電池20の現在の満充電容量を推定する。電池20の満充電容量が推定されると、ついでステップST7に進む。
【0044】
BMU30は、ステップST7では、記憶されている電池20の満充電容量(ステップST2で用いた満充電容量)を、ステップST6で推定された電池20の満充電容量に置き換える。また、ステップST6で推定された満充電容量に基づいて、SOHを推定する。具体的には、SOHは、電池20が劣化していない状態での満充電容量に対するステップST6で推定される満充電容量の割合である。
【0045】
図6は、BMU30が記憶している満充電容量を示すグラフ100である。図6では、横軸は、電池20の使用時間を示している。横軸は、図中右側に進むにつれて時間が経過していることを示す。縦軸は、BMU30に記憶されている満充電容量を示す。縦軸は、図中上側に進むにつれて値が大きくなる。図6中、電池20の実際の満充電容量は、2点鎖線で示され、BMU30が記憶している満充電容量は、実線で示されている。
【0046】
図6では、時間t1,t2のときに、電池満充電容量推定装置70によって電池20の満充電容量が推定されて、BMU30が記憶している満充電容量が新しく推定された満充電容量に置き換えられる様子が示されている。ついで、ステップST8に進む。BMU30は、ステップST8で、電池20への電流の供給を再開することによって電池20の充電作業を再開する。そして、ステップST1に戻る。
【0047】
なお、ステップST1,ST2において、BMU30がNo判定をすると、ステップST1に戻る。
【0048】
なお、ステップST2で求められるSOCは、BUM30に記憶されるSOHに基づいて求められる。このため、BMU30に記憶されるSOHは誤差を含む場合がある。この場合、ステップST2で求められるSOCは、誤差を含むSOHに基づいて求められるので、誤差を含む場合がある。しかしながら、ステップST1〜ステッST8の動作が繰り返されることによって、BMU30が記憶するSOHは、正しい値に近づき、それゆえステップST2で求められるSOCは正しい値に収束する。
【0049】
なお、BUM30は、電池満充電容量装置70として上記ステップST1〜ST8の動作でSOHと満充電容量とを求める以外に、上記したように各電池セル23の過去の温度変化の情報と電池20の使用時間とに基づいてSOHと満充電容量とを求めている。
【0050】
このように、BMU30は、電池20の使用時間や使用状態(本実施形態では、電池セル23の過去の温度変化)などから劣化の程度を判定し、劣化の程度に応じたSOHを推定するとともに推定されたSOHから満充電容量を算出する。
【0051】
そして、電池満充電容量推定装置70は、OCVと満充電容量とが一対一の関係であることを示すOCV−満充電容量特性グラフと、電池20のOCVとを用いて満充電容量を推定するので、電池20の満充電容量をより正確に推定することができる。言い換えると、電池20の満充電容量の推定の精度を高めることができる。
【0052】
また、ステップST1〜ステップST8の動作が繰り返されることによって、OCV−満充電容量特性グラフを用いて得られるSOHは、正しい値に収束していくので、より正確な値が推定されるようになる。
【0053】
本実施形態では、SOCが50%のときのOCV−満充電容量特性グラフが用いられている。しかしながら、OCV−満充電容量特性グラフは、SOCが50%のときのものに限定されるものではない。例えば、SOCの所定値として、SOCが80%のOCV−満充電容量特性グラフが用いられてもよい。OCV−満充電容量特性グラフのSOCは、任意に設定することができる。
【0054】
例えば、SOCの所定値として90%を選択すると、電池20が充電される際には高い頻度で、OCV−満充電容量特性グラフを用いて満充電容量が推定されることになる。このため、記憶される満充電容量の情報とSOHの情報とがより正確な状態で維持される。
【0055】
なお、第1の実施形態では、OCV−満充電容量特性グラフ90は、満充電容量−開放電圧情報の一例である。満充電容量−開放電圧情報は、グラフではなくマップなど他の形式であってもよい。
【0056】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る電池満充電容量推定装置を、図7,8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、電池満充電容量推定装置70は、SOCの所定値が複数設定される点と、SOCの所定値が複数設定されることにともなってOCV−満充電容量特性を示すグラフを複数備える点のみが第1の実施形態と異なる。他の点については、第1の実施形態と同じである。また、本実施形態では、電池満充電容量推定装置70は、第1の実施形態と同じに、電気自動車1に搭載される。上記異なる点について、具体的に説明する。
【0058】
本実施形態では、SOCの所定値は、複数設定される。所定値は、BMU30に記憶される。具体的には、所定値として、80%と、60%と、50%とが用いられる。また、BMU30は、SOCの所定値が複数設定されることに伴って、各所定値に対応するOCV−満充電容量特性を示すグラフを備える。
【0059】
図7は、SOCが80パーセントのときのOCV−満充電容量特性を示すグラフ100である。図中80%は実線で示されている。図7の横軸と縦軸とは、図4と同じである。具体的には、横軸は、満充電容量を示し、図中右側に進むにつれて値が大きくなる。縦軸は、OCVを示し、図中上側に進むにつれて値が大きくなる。BMU30は、SOCの所定値が50,60%の各々に対応するOCV−満充電容量特性を示すグラフも同様に備えている。図7中、比較のため、SOCの所定値が50%のときのOCV−満充電容量特性を示すグラフを1点鎖線で示し、所定値が60%のときのOCV−満充電容量特性グラフを2点鎖線で示す。
【0060】
図8は、本実施形態の電池満充電容量推定装置70の動作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートに対して、ステップST5,ST7間に、ステップST21,ST22が設けられる。他の動作は、図5に示すフローチャートと同じである。ステップST21,ST22について説明する。
【0061】
図8に示すように、ステップST5からステップST21に進む。ステップST21では、BMU30は、複数のOCV−満充電容量特性グラフから、所定値に対応するものを検索する。対応するグラフが検索されると、ついで、ステップST22に進む。
【0062】
ステップST22では、BMU30は、検出されたOCVと、ステップST21で選択したOCV−満充電容量特性グラフとから、電池20の満充電容量を推定する。ついで、ステップST7に進む。
【0063】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果とを得ることができる。さらに、SOCの所定値が複数設定されることによって、電池20の充電作業中に、電池20のSOCが所定値になることが多くなる。
【0064】
例えば、SOCの所定値を1つとするとともに、比較的高い値とした場合、例えば所定値を90%とした場合、電池20の充電作業開始時のSOCが90未満でありかつSOCの所定値まで充電されずに充電作業を終了すると、電池満充電容量推定装置70は動作しない。
【0065】
しかしながら、本実施形態のように、SOCの所定値として複数の値を設定することによって、電池20の充電作業中にSOCが所定値になることが多くなる。このことによって、電池満充電容量推定装置が動作する回数が多くなるので、電池20の満充電容量をより正確に推定することができる。
【0066】
本実施形態では、SOCの所定値として、3つの値が設定された。しかしながら、3つは一例である。4つや6つなど他の複数でもよい。
【0067】
本実施形態では、各段階に設定されるOCV−満充電容量特性グラフは、満充電容量−開放電圧情報の一例である。各段階に設定される満充電容量−開放電圧情報は、グラフではなくマップなどの他の形式であってもよい。
【0068】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係る電池満充電容量推定装置を、図9,10を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、満充電容量−開放電圧情報が、第1の実施形態と異なる。他の構成は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。なお、本実施形態の電池満充電容量推定装置70は、第1の実施形態と同じに、電気自動車1に搭載される。
【0069】
電池20の充電状態は、複数の段階に分けられる。本実施形態では、充電率(SOC)が0≦SOC≦20(%)の状態を第1の段階とし、充電率が20<SOC≦40(%)の状態を第2の段階とし、充電率が40<SOC≦60(%)の状態を第3の段階とし、充電率が60<SOC≦80(%)の状態を第4の段階とし、充電率が80<SOC≦100(%)の状態を第5の段階とする。
【0070】
BMU30は、上記各段階での、OCVと電池20の満充電容量との関係を示す満充電容量−開放電圧情報として、OCV−満充電容量特性グラフを備えている。具体的には、BMU30は、第1の段階に設定される第1のOCV−満充電容量特性グラフと、第2の段階に設定される第2のOCV−満充電容量特性グラフと、第3の段階に設定される第3のOCV−満充電容量特性グラフと、第4の段階に設定される第4のOCV−満充電容量特性グラフと、第5の段階に設定される第5のOCV−満充電容量特性グラフ101とを備えている。
【0071】
図9は、第5のOCV−満充電容量特性グラフ101を実線で示している。図9の横軸と縦軸とは、図4と同じである。具体的には、横軸は、満充電容量を示し、図中右側に進むにつれて値が大きくなる。縦軸はOCVを示し、図中上側に進むにつれて値が大きくなる。第1〜4のOCV−満充電容量特性グラフも、図9のように形成される。第1〜4のOCV−満充電容量特性グラフを示す図は省略する。なお、比較のため、第1のOCV−満充電容量特性グラフを、図9中1点鎖線で示している。第2のOCV−満充電容量特性グラフを、図9中2点鎖線で示している。第3のOCV−満充電容量特性グラフを、図9中3点鎖線で示している。第4のOCV−満充電容量特性グラフを、図9中4点鎖線で示している。
【0072】
BMU30は、SOCが予め設定される所定値になると、第1〜5のOCV−満充電容量特性グラフのうち、SOCの所定値に対応するものを選択し、用いる。本実施形態では、SOCの所定値が50%であるので、第3のOCV−満充電容量特性グラフが用いられる。
【0073】
つぎに、電池満充電容量推定装置70の動作を説明する。図10は、電池満充電容量推定装置70の動作を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、第1の実施形態で用いられた図5に示すフローチャートに対して、ステップST5,ST7間にステップST31,ST32が設けられる点と異なる。他のステップは、図5に示されるステップと同じである。ステップST31,ST32について説明する。
【0074】
ステップST5からステップST31に進む。ステップST31では、BMU30は、電池20の充電状態を示す第1〜5の段階のうち、SOCの所定値に対応する段階に設定されるOCV−満充電容量特性グラフを検索する。本実施形態では、BMU30は、第3のOCV−満充電容量特性グラフを検索しる。ついで、ステップST32に進む。
【0075】
ステップST32では、BMU30は、検出されたOCVと、ステップST31で検索された第3のOCV−満充電容量特性グラフとから、電池20の現在の満充電容量を推定する。ついで、ステップST7に進む。
【0076】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果とを得ることができる。さらに、電池20の充電段階に応じて第1〜5のOCV−満充電容量特性グラフが設けられるので、充電率の所定値が変更されても、BMU30は、当該変更後の所定値に対応するOCV−満充電容量特性グラフを備えているの、対応することができる。
【0077】
本実施形態では、電池20の充電状態は、第1〜5の段階に分けられた。しかしながら、これは、一例である。電池20の充電状態が複数の段階に分かれていればよい。例えば、第1〜8の段階に分かれてもよい。第1〜5のOCV−満充電容量特性グラフは、満充電容量―開放電圧情報の一例である。
【0078】
つぎに、本発明の第4の実施形態に係る電池満充電容量推定装置を説明する。なお、第3の実施形態と同様の機能を有する構成は、第3の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態では、SOCの所定値が複数設定される点が第3の実施形態と異なる。他は、第3の実施形態と同じである。本実施形態の電池満充電容量推定装置70は、第3の実施形態と同じに、電気自動車1に搭載されている。
【0079】
本実施形態では、SOCの複数の所定値として、一例として、80,60,50%が用いられる。
【0080】
本実施形態では、SOCの所定値が複数設定されることによって、第3の実施形態の効果に加えて、第2の実施形態の効果を得ることができる。
【0081】
なお、第1〜4の実施形態では、開放電圧取得手段の一例として、CMU22とBMU30を備える。開放電圧取得手段は、CMU22とBMU30とを備える構造以外であってもよい。要するに、電池の開放電圧を取得する機能を有していればよい。また、開放電圧値を取得するために、CMU22が電池セル23の電圧値を検出し、BMU30が電池セル23の電圧値から電池20の電圧値を算出した。このように、開放電圧値を取得するために、検出、算出などの手段が用いられてよく、これらの手段が複数組み合わされて用いられてもよい。
【0082】
また、第1〜4の実施形態では、充電率取得手段の一例として、CMU22とBMU30電流計35とを備える。充電率取得手段は、CMU22とBMU30と電流計35とを備える構造以外であってもよい。要するに、電池の充電率を取得する機能を有していればよい。また、充電率を取得するために、電流計35が電流値を検出し、BMU30が電池20の電圧値を算出するとともに、これらの結果から充電率を推定した。このように、充電率を取得するために、検出、算出、推定などの手段が用いられてよく、これら手段が複数組み合わされて用いられてもよい。
【0083】
また、第1〜4の実施形態では、BMU30は、満充電容量推定部の一例である。BMU30とは別の装置が満充電容量推定部として機能してもよい。
【0084】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0085】
20…電池、22…CMU(開放電圧取得手段、充電率取得手段)、30…BMU(開放電圧取得手段、充電率取得手段、満充電容量推定部)、35…電流計(充電率取得手段)、70…電池満充電容量推定装置、90…OCV−満充電容量特性グラフ(満充電容量−開放電圧情報)、100…OCV−満充電容量特性グラフ(満充電容量−開放電圧情報)、101…OCV−満充電容量特性グラフ(満充電容量−開放電圧情報)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の開放電圧値を取得する開放電圧取得手段と、
前記電池の充電率を取得する充電率取得手段と、
前記電池が所定の充電率のときの、前記電池の満充電容量と開放電圧との関係を示す満充電容量−開放電圧情報と、
前記充電率取得手段によって取得された充電率が前記所定の充電率であるときに、前記開放電圧取得手段によって取得された開放電圧値と前記満充電容量−開放電圧情報とに基づいて、前記電池の満充電容量を推定する満充電容量推定手段と
を具備することを特徴とする電池満充電容量推定装置。
【請求項2】
電池の開放電圧値を取得する開放電圧取得手段と、
前記電池の充電率を取得する充電率取得手段と、
複数の段階に分けられる前記電池の充電状態の各段階に設定されて、前記各段階での前記電池の満充電容量と開放電圧との関係を示す満充電容量−開放電圧情報と、
前記充電率取得手段によって取得された充電率が所定の充電率であるときに、前記開放電圧取得手段によって取得された開放電圧値と、前記複数の段階のうち前記所定の充電率に対応する段階に設定される前記満充電容量−開放電圧情報とに基づいて、前記電池の満充電容量を推定する満充電容量推定手段と
を具備することを特徴とする電池満充電容量推定装置。
【請求項3】
前記所定の充電率は、複数設定される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池満充電容量推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−132761(P2012−132761A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284415(P2010−284415)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】