説明

電池電圧検出装置および電池電圧検出装置を用いた電池システム

【課題】複数個の電池を直列接続した電池ブロックの電池電圧の測定を測定するA/Dコンバータ素子の検出データの誤検出の有無を検知すること。
【解決手段】本発明の電池電圧検出装置は、複数個の電池を直列接続した電池ブロックと、該電池ブロックの内部の電池の電圧を検出する電圧検出素子と、該電圧検出素子の動作電源の電圧を検出する別の電圧検出素子とを備え、電圧検出素子の動作電源が電池ブロックの内部または両端の電圧から供給され、別の電圧検出素子の動作電源を該電池ブロックの外部の電圧から供給し、別の電圧検出素子の動作電源に電圧検出素子の動作電源よりも変動が少ない電源を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを直列接続した燃料電池スタックの燃料電池セルの電圧を検出する電池電圧検出装置、および電池電圧検出装置を用いた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ないエネルギー源として燃料電池が検討されている。例えば固体高分子型燃料電池(PEFC)は、その熱と電力を用いたコージェネレーションシステムのエネルギー源として、または電動車両の電源として利用が検討されている。
【0003】
燃料電池は、水素を主成分とする燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学的に反応させて起電力を得る装置であり、燃料電池セルの個別の起電力はせいぜい0.7V 程度に過ぎない。このため一般的に数十から数百セルを積層して一つの燃料電池スタックを構成して使用する。スタック化した燃料電池各セルの電圧は、スタック内部での燃料ガス密度や湿度、温度の分布によってばらつき、セル毎に電圧劣化傾向は異なる。各セル電圧の低下はスタックの寿命や安全性に影響を及ぼす恐れがあるため、各セル電圧の状態を監視する必要がある。直列接続した電池の各電圧を検出する電池電圧検出装置の例として、二次電池のセル電圧をA/Dコンバータ素子を用いて検出する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
A/Dコンバータ素子を作動させるには所定の動作電源およびA/D変換用の基準電圧をA/Dコンバータ素子に供給する必要がある。ここで、動作電源および基準電圧の供給には、電圧測定対象である電池の電力の一部を利用することで、外部からの電源供給用の装置を省くことができる。これは、Liイオン電池などの二次電池は自己放電を無視すれば、充放電量の調整により電池の電圧を所望の変動範囲に維持することが出来るためである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−243044号公報((0007)段落から(0021)段落の記載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしLiイオン電池などに比べ燃料電池では、燃料ガスを供給しない状態ではセル電圧はゼロとなり、また、燃料供給中のセル電圧も燃料電池セルの状態によって変動し易いため、燃料電池の電圧からA/Dコンバータ素子の動作電源およびA/D変換用の基準電圧を供給する場合に複数のセル電圧が同時に低下すると、A/Dコンバータ素子の検出データの誤検出が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は前記の問題に対処し、電池電圧の測定にA/Dコンバータ素子を用いる際に検出データの誤検出を検知できる電池電圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池電圧検出装置は、複数個の電池を直列接続した電池ブロックの内部の電池の電圧を検出する電圧検出素子Aと、該電圧検出素子Aの動作電源の電圧を検出する電圧検出素子Bを備え、該電圧検出素子Aの動作電源は該電池ブロックの内部または両端の電圧から供給され、該電圧検出素子Bの動作電源は該電池ブロックの外部の電圧から供給され、該電圧検出素子Bの動作電源に該電圧検出素子Aの動作電源よりも変動が少ない電源を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セル電圧検出データの誤検出を防止できる電池電圧検出装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の詳細を図面を用いながら説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例について図1を用いて説明する。図1に示す燃料電池セル1a1、1a2、1a3、1a4、1a5、1a6は、符号の小さい燃料電池セルの方が高い電位となるよう6直列に接続して燃料電池ブロック1aを構成する。同様に、燃料電池セル1b1〜1b6、および1c1〜1c6は、それぞれ燃料電池ブロック1b、1cを構成する。さらに燃料電池ブロック1a、1b、1cは符号の小さい燃料電池ブロックの方が高い電位となるよう3直列に接続して燃料電池スタック1を構成する。ここで、燃料電池セルをセパレータを介して積層する構成を燃料電池セルもしくは燃料電池ブロックの直列接続と見なしても構わない。また、図1では燃料電池ブロック内の燃料電池セルを6直列、燃料電池スタック内の燃料電池ブロックを3直列としているが、他の複数個の直列構成であっても構わない。
【0012】
燃料電池ブロック1a、1b、1cには、電圧検出素子AとしてのA/Dコンバータ素子2a、2b、2cをそれぞれ接続する。燃料電池セルを6直列した燃料電池ブロック1a、1b、1cにはそれぞれ最低電位に対し燃料電池セルの起電力による6つの電圧が発生しており、これら6つの電圧を全てA/Dコンバータ素子2a、2b、2cのアナログ入力端子Aiに接続する。一方で、燃料電池ブロック1a、1b、1cそれぞれの内部に発生する電位のうち、最高電位点はA/Dコンバータ素子2a、2b、2cそれぞれの電源端子Vccに、最低電位点はA/Dコンバータ素子2a、2b、2cそれぞれのグランド電位端子Vsに接続する。
【0013】
さらに、燃料電池ブロック1a、1b、1cを構成する直列セルの最高電位および最低電位は、別の電圧検出素子BとしてのA/Dコンバータ素子2zのアナログ入力端子Aiに、分圧抵抗回路8およびバッファ回路9などを介して接続する。また、A/Dコンバータ素子2zの電源端子Vccには、各燃料電池ブロック両端の電圧に比べ変動の少ない電圧を供給する定電圧源4の出力が供給される。ここで例えば、定電圧源4には3端子レギュレータ素子やスイッチングコンバータ回路を用いても良い。ここで、燃料電池スタック1は各燃料電池ブロックよりも直列数が多く、数個のセル電圧が低下したとしても燃料電池スタック1の両端電圧に与える影響は少ないと見なせるため、定電圧源4の電源供給には燃料電池スタック1の両端電圧を用いても良い。
【0014】
本実施例では、A/Dコンバータ素子とのデータ通信、および電圧データを収集には、マイコンなどのプロセッサ5を用いる。ここで例えば、データ通信はシリアル方式またはパラレル方式のデジタル通信を用いるものとし、プロセッサ5のデジタル出力DoのピンにはA/D変換指令データのデジタル信号を発生可能なポートを割り当て、A/Dコンバータ素子2a、2b、2c、2zのデジタル入力Di1およびデジタル入力Di2のピンを接続する。また、プロセッサ5のデジタル入力DiのピンにはA/D変換結果データのデジタル信号を受信可能なポートを割り当て、A/Dコンバータ素子2a、2b、2c、2zのデジタル出力Doのピンを接続する。
【0015】
各A/Dコンバータ素子のデジタル出力Do、およびデジタル入力Di1、Di2、の接続に関しては必要に応じて絶縁手段7により各A/Dコンバータ素子のデジタルグランド電位とプロセッサ5のグランド電位を相互に変換するものとし、絶縁手段7には光学式や磁気式によるカプラを用いてもよい。また、プロセッサ5の動作電源Vccには、定電圧源4の出力電圧を接続しても良く、この構成であればプロセッサ5およびA/Dコンバータ素子2zの電源を1つの電源で供給できるため、電源回路の削減が可能となる。さらに、A/Dコンバータ素子2a、2b、2cのいずれか一つについては動作電源Vccを、プロセッサ5およびA/Dコンバータ素子2zと共通にして電源回路を削減することも可能である。
【0016】
また、図1の構成は、燃料電池ブロック、A/Dコンバータ素子、および絶縁手段7のそれぞれ一部を図中の記号1sa、1sb、1scで示すような電池サブモジュールとして定義すれば、複数個の該電池サブモジュール内の該電池ブロックの最低電位は互いに異なる電位を持ち、A/Dコンバータ2zによる燃料電池ブロックの両端の電位の測定と、絶縁手段7を介した通信と、プロセッサ5の駆動を共通の定電圧源4を用いて行う構成となっている。
【0017】
この構成により、プロセッサ5は、各A/Dコンバータ素子2a、2b、2c、2zに、所定のA/D変換指令データを送信することで、A/D変換結果データに変換した任意のアナログ入力Aiの電圧値を収集することが出来る。また図1に示すように、単一のプロセッサ5で複数のA/Dコンバータ素子と同一のデジタル通信プロトコルを用いて通信を行う場合は、A/D変換指令データおよびA/D変換結果データの信号経路を、それぞれ絶縁手段7よりもプロセッサ5側で電気的に並列接続する。ただしこの場合は、全てのA/Dコンバータ素子のDi1にプロセッサ5から同様のデジタル信号が送信されるため、信号を受信すべきA/Dコンバータ素子を指定する信号(チップセレクト)を所望のA/Dコンバータ素子の入力端子Di2にのみ送信することで、複数のA/Dコンバータ素子のうち所望のA/Dコンバータ素子の結果データを得ることが出来る。このような構成によれば、プロセッサ5は複数のA/Dコンバータ素子とのデジタル通信を単一の通信ポートで送受信することが可能となり、プロセッサ5の通信機能を持つピンの削減が可能である。また、A/Dコンバータ素子およびプロセッサ5の間のデジタル通信プロトコルには、チップセレクトを特定のポートで送受信するデジタル通信プロトコルを例として示したが、デジタル信号中のビットでチップセレクトを行うなど、他の通信プロトコルに応じた構成でも構わない。
【0018】
図2は、燃料電池ブロック1aに接続したA/Dコンバータ素子2aを例にA/Dコンバータ素子の詳細図を示す。A/Dコンバータ素子内部では、電源端子Vccとグランド電位端子Vsとの間に供給された動作電源をもとに、バンドギャップリファレンス等を用いた基準電圧a1が作成される。信号演算部a7は、デジタル入力端子Diのチップセレクト、シリアルクロック等のデジタル指令信号に基づき、マルチプレクサ回路a3およびエンコーダa6に指令信号を出力する。これに伴い、マルチプレクサ回路a3は所望のアナログ入力端子Viを選択し、サンプルホールド回路a4は選択した端子電圧を保持する。比較器a5は、サンプルホールド回路a4の出力電圧を基準電圧a1の電圧と時間変化するゲイン回路a2において作成した参照電圧と比較し、両者の電圧の一致する条件、例えば時間をカウンタ等で計測する。エンコーダa6は比較器a5において計測した条件を実現するカウンタ数などのデジタル値を基に、Do端子に所定のデジタル信号を発生させる。
【0019】
図3には、図1および図2とは異なるA/Dコンバータ素子2a′の構成例を示す。図2ではA/Dコンバータ素子2a内部で作成される基準電圧a1を用いていたが、図3に示すようにA/Dコンバータ素子2a′の外部回路として基準電圧素子a1′を用いて、変動の少ない基準電圧をA/Dコンバータ素子の基準電圧端子Vrefに接続し、比較器a5の入力の基準電圧としても良い。
【0020】
図4は、燃料電池ブロック1aの両端の電圧がA/Dコンバータ素子2aの動作電源耐圧を超える場合の燃料電池ブロック1aとA/Dコンバータ素子2aの接続例について示している。この場合、出力電圧がA/Dコンバータ素子2aの耐圧以下となるような定電圧源a12を設け、定電圧源a12の入力Vinに燃料電池ブロック1a両端の電圧を供給する。一方で、燃料電池ブロック1a内部の電池電位とA/Dコンバータ素子2aのアナログ入力端子Aiとの間には、所定の分圧抵抗回路a10およびバッファ回路a11を設け、A/Dコンバータ素子2aの入力Aiには定電圧源a12の出力電圧以上の電圧が供給されないようにする。また電圧検出素子AとしてのA/Dコンバータ素子が図4の構成で接続される場合は、電圧検出素子BとしてのA/Dコンバータ素子2zで検出する電圧検出素子Aの動作電源の電圧は、定電圧源a12の両端電位のほか、燃料電池ブロック1aの両端の電位を検出することによって求めることが出来る。
【0021】
ここで、燃料電池セル1a1〜1a6、1b1〜1b6、1c1〜1c6に固体高分子型燃料電池(PEFC)を用いた場合について説明を行う。PEFCの燃料電池セルは、水素リッチガスを燃料ガスとして通流することによりセル1個あたり約0.7〜1.0Vの電圧を発生することが出来る。ただし発電中の燃料電池セルでは水素を酸化して水を生成する反応が行われており、燃料電池セル内の湿潤が過剰になり燃料ガスおよび酸化ガスの通流が阻害され、ガス欠運転となることがある。ガス欠運転となった場合に燃料電池セルの性能は損なわれ、そのセル電圧は低下し、0V付近まで低下することがある。
【0022】
従って、例えば燃料電池ブロック1aを構成する6つの燃料電池セルのうち多くのセルの電圧が一度に低下した場合には、A/Dコンバータ素子2aの動作電源端子Vccとグランド電位端子Vsとの間の電圧も低下し、A/Dコンバータ素子2aの動作電圧は許容値を下回り、A/Dコンバータ素子2aから送出されるA/D変換結果データに異常な値が現れる可能性がある。
【0023】
図5には、本実施例のプロセッサ5で実行するセル電圧検出のフローチャートの例を示す。まず、ステップ1においてA/D変換およびデータ通信の基準となるクロック信号を発生する。その後ステップ2において、所定の電圧検出手段AとしてのA/Dコンバータ素子にチップセレクトのDoを送信し、選択したA/Dコンバータ素子の全てのアナログ入力チャンネルの電位を検出するよう、指令の送信および結果の受信を行い、得られた結果を電圧データ配列Vcell[1..6]に仮保存しておく。続いてステップ3において、A/Dコンバータ素子2zに対してチップセレクトのDoを送信し、仮保存したA/Dコンバータ素子の動作電源の両端の電位を検出するよう、指令の送信および受信を行う。ここで得られた両端の電位の差分からA/Dコンバータ素子の動作電源の電圧を求め、A/Dコンバータ素子の動作電源の電圧が所定の電圧閾値Vlowよりも高ければ、先に仮保存した電圧データ配列Vcell[1..6]を真と判定し、新しいデータとして所定のデータベースに更新を行うなどの正常処理を行う。また、ここでA/Dコンバータの動作電源の電圧が所定の電圧閾値Vlow以下であれば、先に仮保存した電圧データ配列Vcell[1..6]の検出中にA/Dコンバータ素子の動作電源が低下しておりA/D変換結果データに異常が含まれると判断し、仮保存した電圧データVcell[1..6]を無視するか、あるいはデータを補正するなどの異常処理を行い、電圧の誤検出を回避する。また、本フローは、ステップ2におけるチップセレクトを送信する燃料電池ブロックを変更しながらステップ2およびステップ3を繰り返し、燃料電池スタック1を構成する燃料電池ブロックを全て検出した時点で終了する。
【0024】
このように本実施例では、接続した各燃料電池ブロックの内部の電圧を電源とする電圧検出素子AとしてのA/Dコンバータ素子2a、2b、2cの他に、変動の少ない定電圧源4を接続した電圧検出素子BとしてのA/Dコンバータ素子2zを用いて、電圧検出素子Aの動作電源である燃料電池ブロック1a、1b、1cの両端電圧を計測することにより、燃料電池セルの電圧低下によるA/Dコンバータ素子の誤検出を検知することができる。
【実施例2】
【0025】
本実施例について図6を用いて説明する。実施例1と同一の機能を有する構成要素については同一の符号を用いることとし、詳細な説明を省略する。本実施例では図6に示すように、各燃料電池ブロックに設けられたA/Dコンバータ素子の基準電圧端子Vrefに各燃料電池ブロックの最高電位を接続する。このように構成した場合、A/Dコンバータ素子2aから得られる電池電圧のデジタル値は、測定対象の燃料電池ブロック1aの両端電圧に対するアナログ入力端子Aiの電圧の相対値を出力することになる。
【0026】
実施例1と同様に、A/Dコンバータ素子2zにより燃料電池ブロック1aの両端電圧の絶対値は測定されていることから、例えば燃料電池セル1a1の電圧は、A/Dコンバータ素子2zの検出した絶対値に、A/Dコンバータ2aで検出した燃料電池ブロック1a内の燃料電池セル1a1の相対値を乗算すれば検出可能であり、乗算はプロセッサ5の演算において実行可能である。
【0027】
このように構成すれば、電圧検出素子AとしてのA/Dコンバータ素子2a、2b、2cそれぞれに基準電圧Vrefを用いずとも各燃料電池セルの電圧値が検出可能であり、A/Dコンバータ素子周辺回路の機能を削減することが出来る。
【実施例3】
【0028】
本実施例について図7を用いて説明する。図7に示す燃料電池モジュールの筐体M11内には、複数の燃料電池セルを積層して構成される燃料電池スタックM1、昇圧コンバータM2、およびセル状態監視基板M3が納められる。筐体M11外面には端子台M13、および通信コネクタM12が設けられる。また、筐体M11外面に燃料電池モジュールの状態を示す発光ダイオードや液晶パネルを設置しても良い。さらに筐体M11には、燃料電池スタックM1の燃料ガスとなる水素リッチガスを通流する燃料供給手段M8i、燃料供給手段M8iより供給された水素リッチガスの一部の水素が燃料電池スタックM1で消費された後の排ガスを排出する排ガス排出手段M8o、燃料電池スタックM1の発熱を冷却するための熱媒体を循環するための熱媒体供給手段M9iおよび熱媒体排出手段M9oが接続され、筐体M11の外部の燃料ガス系統、および伝熱系統との連系が行われる。
【0029】
図8は、筐体M11に納めた燃料電池モジュールのシステム構成を示す。昇圧コンバータM2は、燃料電池スタックM1両端のセルに電気的に接続される。また、燃料電池スタックM1のうち数セルまたは全セルはそれぞれ電圧検出端子M101を備えており、電圧検出端子M101はセル状態監視基板M3内部のセル電圧検知部M301に電気的に接続されている。また同様に燃料電池スタックM1は温度検出器M102を備えており、温度検出器M102はセル状態監視基板M3内部のスタック温度検知部M302に接続されている。
【0030】
セル電圧検知部M301およびスタック温度検知部M302で得られたセル電圧およびスタック温度の情報に基づき、セル状態監視基板M3内部のスタック状態監視部M303において、燃料電池スタックM1の状態について正常か異常かを診断する異常診断処理、およびユーザの用途に合わせた最適電流指令値を演算する最適電流指令値演算が行われる。スタック状態監視部M303で得られた異常診断結果および最適電流指令値は、セル状態監視基板M3内部の通信部M304および接続ケーブルM6を通じて、昇圧コンバータM2に送信される。
【0031】
昇圧コンバータM2内部にはコンバータ主回路M201、コンバータ制御部M202、通信部M203、および補器電源M207があり、コンバータ制御部M202では、接続ケーブルM6を通じて得た最適電流指令値、コンバータ入力電圧検出値M208、コンバータ入力電流検出値M204、およびコンバータ出力電圧M205の各情報に基づきコンバータ制御パルスM206を演算し、コンバータ主回路M201中の半導体スイッチング素子に対しパルスの出力を行う。
【0032】
また、通信部M203では、接続ケーブルM6を通じて得た異常診断結果の情報が、通信ケーブルM10および通信コネクタM12を介して所定の通信手法、例えばデジタル通信やアナログ通信で筐体M11の外部へ送信される。補器電源M207は、燃料電池スタックM1の両端の電圧が所定の閾値V1以上となった場合に、燃料電池スタックM1の発生電力の一部を変換し、昇圧コンバータM2およびセル状態監視基板M3を構成する電気回路素子などで消費するDC5V、12V、15Vなどの所定電圧の電力を供給する。ここで、補記電源M207より電池電圧検出装置における定電圧源7を構成しても良い。また、図示を省略しているがコンバータ主回路M201の出力端に設けたコンデンサと端子台M13との接続線上に、外部から端子台を介してコンデンサへ電流が流入することを防止する逆流防止ダイオードを設置しても良い。
【0033】
また、図7および図8では部位ごとに機能を分離したため昇圧コンバータ2とセル状態監視基板3を別のブロックとして示しているが、燃料電池モジュール内部の配置構成によっては、昇圧コンバータ2とセル状態監視基板3を同一のブロック、例えば同一の基板上に配置しても構わない。昇圧コンバータ2とセル状態監視基板3を同一のブロックに配置した場合、接続ケーブル6は省略できる。
【0034】
図9は、図7および図8に示す燃料電池モジュール内部で行う最適電流指令値演算を含めた燃料電池スタックM1の発電制御ブロック図を示している。最初に、セル電圧検知部M301で検出された各セル電圧VcINを基準値Vc_refと比較し、基準値Vc_refよりもセル電圧が低下した場合にこれを異常と判断し電流指令値を絞り込むセル電圧静定ブロックCVS、コンバータ出力電圧検出値M205を所定のコンバータ出力電圧指令値V2_refとの差分を最小とする電流指令値を決定する出力電圧制御ブロックAVR、電流指令値を微小変化させながら燃料電池スタックM1の発電電力が最大となる点に電流指令値を追従させる最大電力追従制御ブロックMPPTの各ブロックは、それぞれに所望の電流指令値を計算する。一方で、これらの各ブロックの出力する電流指令値の他にも、燃料電池モジュールの外部からシリアル通信やアナログ指令電圧を用いて、電流指令値Iref2、または電力指令値Pref2が入力可能である。燃料電池モジュールのユーザは所望の運転条件に合わせ、電圧静定ブロックCVS、出力電圧制御ブロックAVR、最大電力追従制御ブロックMPPTで得られた電流指令値、および燃料電池モジュールの外部から入力する電流指令値の中から、切り替えスイッチSW1〜SW5の組み合わせで実際の電流指令値を選択することが出来る。選択された電流指令値の上限はIref_limH、下限は0に制限し、電流指令値とコンバータ入力電流検出値M204との差分を最小とする電流制御ACRにおいて所定の変調信号を得て、変調信号を三角波の搬送信号と比較しパルス幅制御PWMによりコンバータ制御パルスM206を作成する。ここで、例えば起動・停止シーケンスなど燃料電池スタックM1の発電電流を増加または減少させる際に、電流指令値の上限Iref_limHを調整すれば、燃料電池スタック1の急激な負荷変化を抑制して燃料電池スタック1へ与えるダメージを軽減することも可能である。また、コンバータ出力電圧指令値V2_refには300V〜400Vを設定することにより、連系インバータM407との接続が容易となる。
【0035】
以上述べたような燃料電池モジュールは、燃料電池セルの発電特性ノウハウに基づく発電電流調整を自動化し、燃料電池スタックを用いた発電システムの設計を簡易化できるものであるが、本燃料電池モジュールのセル電圧検知部M102およびスタック状態監視部M303に、実施例1で述べた本実施例の電圧検出装置を適用すれば、燃料電池モジュール内部における電池セル電圧の検出異常を防ぐことが出来る。
【実施例4】
【0036】
本実施例について図10を用いて説明する。前述の実施例3と同一の機能を有する構成要素については同一の符号を用いることとし、詳細な説明を省略する。図10は、本実施例に示す燃料電池モジュールを使用した発電システムを示す。端子台M13を介して電極M7PおよびM7Nには、連系インバータM407が電気的に接続される。連系インバータM407は端子台M13に発生した電力を、商用交流電力系統M409の電圧振幅および周波数をもつ交流電力に逆変換を行う。連系インバータM407の逆変換により得た交流電力は、商用交流電力系統M409または系統負荷M411に供給される。また、筐体M11の所定の接地端子には接地線M410が接続される。
【0037】
水素製造装置M401は燃料電池スタックM1の燃料となる水素リッチガスを発生する装置であり、都市ガスや灯油より水素を抽出する改質装置や、水を電気分解する電解槽などを用いることができる。水素製造装置M401で発生した水素リッチガスは燃料ブロアM402により燃料供給手段M8iに送られる。排ガス排出手段M8oより排出された排ガスは水素製造装置へと循環し、排ガス中の水素は回収もしくは燃焼に利用される。冷却水タンクM403には燃料電池スタックM1で発生した熱を交換する熱媒体となる冷却水が貯水されており、冷却水は冷却水ポンプM404により熱媒体供給手段M9iへ送られる。ここで例えば、冷却水には純度の高い水を使用する。燃料電池スタックM1の熱を交換した後の冷却水は熱媒体排出手段9oから排出され、熱交換器M405を通過した後に冷却水タンクM403へと循環する。
【0038】
システム制御M406は、連系インバータM407と系統負荷M411との接続点と、商用電力系統M409との間に設置された受電電力センサM408の検出した受電電流値M412と、燃料電池モジュールの通信コネクタM12より得たモジュール状態信号M415とを監視しながら、燃料ブロア流量指令M413および冷却水ポンプ指令M414を指令する。
【0039】
複数台の燃料電池モジュールを組み合わせる場合には、例えばモジュール状態信号M415の通信に関して、それぞれの燃料電池モジュールをマスタ/スレーブの選択を出来るようにして、システム制御M406にはマスタを選択した燃料電池モジュールからのみ通信用の配線を接続するようにしても良い。
【0040】
以上述べた燃料電池システムは、燃料電池の発電した電力を例えば家庭などの商用の電力系統に接続して電力利用するシステムであるが、燃料電池を用いた発電システムに対し、本実施例の電池電圧検出装置を備えた燃料電池モジュールを適用すれば、燃料電池システムにおける電池セル電圧の検出異常を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係わる電池電圧検出装置の概要を示す図。
【図2】実施例1の電池電圧検出装置におけるA/Dコンバータ素子周辺の例を示す図。
【図3】実施例1の電池電圧検出装置におけるA/Dコンバータ素子周辺の例を示す図。
【図4】実施例1の電池電圧検出装置におけるA/Dコンバータ素子の接続例を示す図。
【図5】実施例1の電池電圧検出装置におけるセル電圧検出フローの例を示す図。
【図6】実施例2の電池電圧検出装置におけるA/Dコンバータ素子の内部の例を示す図。
【図7】実施例3の燃料電池モジュールの概要を示す図。
【図8】実施例3の燃料電池モジュールの詳細構成の例を示す図。
【図9】実施例3の燃料電池モジュールにおける燃料電池スタックの発電制御ブロックの例を示す図。
【図10】実施例4に係わる発電システムの概要を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1a1〜1a6、1b1〜1b6、1c1〜1c6…燃料電池セル、1a、1b、1c、1sa、1sb、1sc…燃料電池ブロック、1、M1…燃料電池スタック、2a、2b、2c、2z…A/Dコンバータ素子、4…定電圧源、5…プロセッサ、7…絶縁手段、8…抵抗回路、9…バッファ回路、Vcc…動作電源端子、Vs…グランド電位端子、Vref…基準電圧端子、Ai…アナログ入力端子、Do…デジタル出力端子、Di1、Di2…デジタル入力端子、M11…筐体、M2…昇圧コンバータ、M3…セル状態監視基板、M12…通信コネクタ、M13…端子台、M8i…燃料供給手段、M8o…排ガス排出手段、M9i…熱媒体供給手段、M9o…熱媒体排出手段、M101…電圧検出端子、M301…セル電圧検知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の電池を直列接続した電池ブロックの内部の電池の電圧を検出する電圧検出素子と、
該電圧検出素子の動作電源の電圧を検出する別の電圧検出素子とを備え、
前記電圧検出素子の動作電源が、前記電池ブロックの内部または前記電池ブロックの両端の電圧から供給され、
前記別の電圧検出素子の動作電源が、前記電池ブロックの外部の電圧源から供給され、前記別の電圧検出素子の動作電源が、前記電圧検出素子の動作電源よりも電圧変動が少ない電源を用いていることを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
複数個の該電池ブロックを直列接続した電池スタックを備え、前記別の電圧検出素子の動作電源が、前記複数個の該電池ブロックを直列接続した電池スタック内部の少なくとも1つの前記電池ブロックを含む電池の直列接続体であることを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電圧検出素子と前記別の該電圧検出素子とが、アナログ−デジタルデータ変換機能を有する半導体素子であることを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記電池電圧検出装置が、前記電圧検出素子と前記別の電圧検出素子のデジタル信号の電位とを絶縁する絶縁手段を備え、前記電圧検出素子が備えたデジタルデータバスを、該絶縁手段を介して前記別の電圧検出素子が備えたデジタルデータバスに並列接続し、前記電圧検出素子と前記別の電圧検出素子のデジタル通信プロトコルとを互換可能としたことを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記電池電圧検出装置が、通信およびデータ保存を行うプロセッサ素子を備え、該プロセッサ素子が、前記電圧検出素子および前記別の電圧検出素子とデジタルデータ通信を行うことを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記電池電圧検出装置が、前記電圧検出素子の動作電源のグランド電位と該プロセッサ素子のグランド電位を共通としたことを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記電池電圧検出装置が、電圧を測定する対象となる目標電池を定め、該目標電池の両端の電位差を該目標電池に接続された前記電圧検出素子で測定するとともに、前記電圧検出素子の動作電源の両端の電位差を、前記別の電圧検出素子で測定し、該別の電圧検出素子で測定した電位差が所定の電圧閾値以上であれば、前記目標電池の両端の電位差測定値の正常処理を行い、別の電圧検出素子で測定した電位差が所定の電圧閾値未満であれば、前記目標電池の両端の電位差測定値の異常処理を行うことを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項8】
請求項3において、
前記電圧検出素子が、アナログ−デジタル変換の基準電圧と、グランド端子とを備え、前記電圧検出素子が接続する前記電池ブロックの最高電位を前記基準電圧に、前記電圧検出素子が接続する前記電池ブロックの最低電位を該グランド端子にそれぞれ接続したことを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記電池電圧検出装置が、
前記電圧検出素子のデジタル出力値と前記別の電圧検出素子のデジタル出力値の乗算を含む電池電圧検出アルゴリズムに基づいて電池電圧を検出していることを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項10】
複数個の電池サブモジュールとプロセッサ素子とを備え、
該電池サブモジュールが、複数個の電池を直列接続した電池ブロックと絶縁型通信手段とを有し、複数個の前記電池サブモジュール内の前記電池ブロックの最低電位は互いに異なる電位であって、前記電池ブロック両端の電位の測定と、前記絶縁型通信手段との通信と、プロセッサ素子の駆動とを共通の定電圧源を用いて行う電池電圧検出装置。
【請求項11】
複数個の燃料電池を直列接続した燃料電池ブロックの内部の燃料電池の電圧を検出する電圧検出素子と、
該電圧検出素子の動作電源の電圧を検出する別の電圧検出素子とを備え、
前記電圧検出素子の動作電源が、前記燃料電池ブロックの内部または前記燃料電池ブロックの両端の電圧から供給され、
前記別の電圧検出素子の動作電源が、前記燃料電池ブロックの外部の電圧源から供給され、前記別の電圧検出素子の動作電源が、前記電圧検出素子の動作電源よりも電圧変動が少ない電源を用いていることを特徴とする電池電圧検出装置。
【請求項12】
請求項11において、前記複数個の燃料電池が固体高分子型燃料電池であることを特徴とする電池電圧検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−232417(P2007−232417A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51464(P2006−51464)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】