説明

電流・電圧検出用プリント基板および電流・電圧検出器

【課題】 電流検出点と電圧検出点とを近づけることを可能にする電流・電圧検出用プリント基板、電流・電圧検出器を提供する。
【解決手段】 スルーホールとパターン配線によって形成された電流検出用のコイル状の配線10及び電圧検出用の略半リング状の配線30を同一基板上に形成する。両者の間には、複数のスルーホールによって形成された遮蔽部500が設けられる。この遮蔽部500によって、コイル状の配線10及び電圧検出用の略半リング状の配線30を同一基板上に形成しても、コイル状の配線10に対する電界の影響を低減させることができる。これによって、電流検出点と電圧検出点とを略同一点とすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に生じる交流電圧と電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出するために用いる電流・電圧検出用プリント基板、及びこの電流・電圧検出用プリント基板を用いた電流・電圧検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インピーダンス整合装置や高周波電源装置のように、交流電力の電流と電圧とを検出し、検出した電流と電圧とを用いて制御等を行うものがある。その一例として、インピーダンス整合装置について説明する。
【0003】
図32は、インピーダンス整合装置が用いられる高周波電力供給システムの一例のブロック図である。
【0004】
この高周波電力供給システムは、半導体ウエハや液晶基板等の被加工物に、例えばプラズマエッチング、プラズマCVDといった加工処理を行うためのシステムであり、高周波電源装置61、伝送線路62、インピーダンス整合装置63、負荷接続部64及び負荷65(プラズマ処理装置65)で構成されている。
【0005】
高周波電源装置61は、高周波電力を出力して、負荷となるプラズマ処理装置65に供給するための装置である。なお、高周波電源装置61から出力された高周波電力は、同軸ケーブルからなる伝送線路62及びインピーダンス整合装置63及び遮蔽された銅板からなる負荷接続部64を介してプラズマ処理装置65に供給される。また、一般にこの種の高周波電源装置61では、無線周波数帯域の周波数(例えば、数百kHz以上の周波数)を有する高周波電力を出力している。
【0006】
プラズマ処理装置65は、ウエハ、液晶基板等を加工(エッチング、CVD等)するための装置である。
【0007】
インピーダンス整合装置63は、内部に図示しない可変インピーダンス素子(例えば、可変コンデンサ、可変インダクタ等)等で構成された整合回路を備えていて、高周波電源装置61と負荷65との間がインピーダンス整合するように、整合回路内の可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させる制御機能を有する。
【0008】
このような制御を行うために、インピーダンス整合装置63の入力端63aから整合回路までの間に、高周波電源装置61から出力された高周波の電流を検出する電流検出器および高周波の電圧を検出する電圧検出器を設け、これらの検出器で検出した電流と電圧とを用いて、進行波電力や反射波電力等の情報を求めている。そして、求めた情報を用いて、インピーダンス整合するように可変インピーダンス素子のインピーダンスを制御している。
【0009】
図33は、インピーダンス整合装置63の入力端から整合回路67までの間に設けられる電流検出器80および電圧検出器90の概略の回路図である。図33に示すように、入力端63aから整合回路67までは、電力の伝送経路となる電力伝送用導電体66(例えば棒状の銅)が設けられている。そして、電力伝送用導電体66の途中に、電流検出器80と電圧検出器90とが設けられている。
【0010】
電流検出器80は、カレントトランス部81、カレントトランス部81の出力配線82,83、電流用変換回路84、および電流用変換回路84の出力配線85によって構成されている。この電流検出器80では、電力伝送用導電体66に流れる交流電流に応じた電流がカレントトランス部81に流れる。この電流は、出力配線82,83を介して電流用変換回路84に入力され、所定の電圧レベルに変換されて電流用変換回路84の出力配線85から出力されるようになっている。
【0011】
また、電圧検出器90は、コンデンサ部91、コンデンサ部91の出力配線92、電圧用変換回路93、および電圧用変換回路93の出力配線94によって構成されている。この電圧検出器90では、電力伝送用導電体66に生じる交流電圧に応じた電圧がコンデンサ部91に生じる。この電圧は、出力配線92を介して電圧用変換回路93に入力され、所定の電圧レベルに変換されて電圧用変換回路93の出力配線94から出力されるようになっている。
【0012】
そして、電流検出器80および電圧検出器90によって検出した電流と電圧とを用いて、上述したように、進行波電力や反射波電力等の情報を求めている。
【0013】
また、上述したような電流検出器80、電圧検出器90は、高周波電源装置61等、他の装置にも使用することができる。例えば、高周波電源装置の場合は、高周波電源装置61の出力端に設け、出力する進行波電力が設定値になるように制御するために必要な電流と電圧とを検出するために使用される。
【0014】
また、インピーダンス整合装置の出力端63bまたは負荷65の入力端における電流、電圧を検出して、検出した電流や電圧を制御や解析等に使用することもある。
【0015】
図34は、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路と出力端との間に設ける場合の回路図である。
この図34に示すように、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路67と出力端63bとの間の電力伝送用導電体68の途中に設けて、インピーダンス整合装置の出力端63bにおける電流、電圧を検出することもある。
【0016】
この図34では、図33に示した回路図と同じものには同符号を付けている。ただし、インピーダンス整合装置の入力端63aと出力端63bとでは、電流、電圧に違いがあるので、電流検出器80、電圧検出器90は、耐電流、耐電圧の観点から、構造上の相違がある。しかし、この図34では、それらの違いを考慮せずに同符号としている。例えば、通常、インピーダンス整合装置の入力端63aよりも出力端63bの方が、高電流、高電圧になる。そのために、インピーダンス整合装置の出力端63bに電流検出器80、電圧検出器90を設ける場合は、インピーダンス整合装置の入力端63aに設ける場合よりも、電力伝送用導電体68を太い径の導電体にしたり、電力伝送用導電体68の外周を覆う絶縁体69の肉厚を厚くして、絶縁距離を長くする必要がある。しかし、図34に示した回路図では、便宜上、これらの違いを考慮していない。
【0017】
また、図34のように、インピーダンス整合装置に使用する場合は、インピーダンス整合装置の入力側に、インピーダンス整合させるために必要な電流および電圧の情報を検出するための検出器が別途必要であるが、図示を省略している。
【0018】
上述した電流検出器80に相当するものとしては、例えば、図35に示す電流検出用プリント基板1’、電圧検出器90に相当するものとしては、例えば、図36に示す電圧検出用プリント基板2’がある。
【0019】
図35は、電流検出用プリント基板1’を示す図である。
図35において、同図(a)は、電流検出用プリント基板1’の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだE部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板1’の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0020】
図35(a)〜(d)に示すように、電流検出用プリント基板1’は、基板を貫通する貫通穴101’が設けられており、その周囲にコイル状に形成された配線10’(以下、コイル状の配線10’という)が設けられている。このコイル状の配線10’は、基板を貫通しながら、基板の表面121’と裏面122’とを交互に接続することによって両端部10a’,10b’を有するコイル状に形成されたものである。この配線の内、基板を貫通する部分は、スルーホール(Through Hole)11’によって形成され、基板の表面および裏面の配線は、パターン配線12’,13’によって形成されている。
【0021】
なお、図35(b)〜(c)において、点線で示した部分は、基板の裏面のパターン配線を示すが、透過したものであるため、点線で示している。また、コイル状の配線10’の両端部10a’,10b’には、出力配線21’,22’が接続されている。この出力配線が出力端子23’,24’に接続されている。
【0022】
また、この例の場合は、両面構造の基板(以下、両面基板という)であるために、1つの絶縁体部110’の表面層および裏面層にパターン配線が形成されることになる。
【0023】
図35に示したような電流検出用プリント基板1’にすると、交流電流が流れる電力伝送用導電体66が、貫通穴101’の内側を通るように配置された場合に、電磁誘導によって、コイル状の配線10’に電流が流れる。すなわち、プリント基板にカレントトランス機能を持たすことができる。換言すれば、電流検出用プリント基板1’に、カレントトランスを形成することができる。
【0024】
したがって、コイル状の配線10’の部分は、図33,図34に示した回路図のカレントトランス部81に相当する。
【0025】
図36は、電圧検出用プリント基板2’を示す図である。
図36において、同図(a)は、電圧検出用プリント基板2’の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだF部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板1’の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0026】
図36(a)〜(d)に示すように、電圧検出用プリント基板2’は、基板を貫通する貫通穴201’が設けられており、その周囲にリング状の配線30’が設けられている。このリング状の配線30’は、貫通穴201’の周囲に、基板を貫通するスルーホール31’を複数設け、且つ基板の表面および裏面にスルーホール部を繋げるようにパターン配線32’,33’を設けることによって形成されたものである。そのために、基板の表面および裏面にあるパターン配線32’,33’の間にスルーホールが設けられているので、基板の厚みと略同じ厚みを有するように形成されて、あたかも、リング状の配線30’となる。
【0027】
なお、図36(b)〜(c)では、基板の表面および裏面にあるパターン配線32’、33’が重なっている。また、リング状の配線30’には、出力配線40’が接続されている。この出力配線が出力端子41’に接続されている。
【0028】
また、この例の場合は、両面構造の基板(以下、両面基板という)であるために、1つの絶縁体部210’の表面層および裏面層にパターン配線が形成されることになる。
【0029】
図36に示したような電圧検出用プリント基板2’にすると、交流電圧が生じている電力伝送用導電体66が、貫通穴201’の内側を通るように配置された場合に、リング状の配線30’が、前記電力伝送用導電体66の内、リング状の配線30’と対向する箇所と対となるコンデンサの電極として機能する。すなわち、プリント基板にコンデンサの電極としての機能を持たすことができる。したがって、リング状の配線30’の部分は、図33,図34に示した回路図のコンデンサ部の電極91bに相当する。
【0030】
図37は、電流・電圧検出器3cの概略の外観図である。
図37において、同図(a)は、電流・電圧検出器3cを立体的に示した概略の外観図であり、同図(b)は、導電体製の筐体の側面から見た概略の外観図であり、同図(c)は、同図(b)の筐体を取り除いた場合の図である。
【0031】
この図37(a)に示すように、電流・電圧検出器3cは、電力伝送用導電体66が筐体を貫通できる構造となっている。なお、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、電流・電圧検出器3cの構成には含まれないが、説明に必要であるので、図示している。また、絶縁体69は、電力伝送用導電体66と電流・電圧検出器3cとの絶縁を行うためのものである。そのために、絶縁体69の長さは、図示したよりも短くてよいが、図面の簡略化のために図37(a)のようにしている。これに関しては、他の図面も同様である。
【0032】
また、図37(c)に示すように、筐体内に、電流検出用プリント基板1’と電圧検出用プリント基板2’とが収容された構造となっている。そのために、筐体内を通過する電力伝送用導電体66に流れる電流を電流検出用プリント基板1’によって検出し、電力伝送用導電体66に生じている電圧を電圧検出用プリント基板2’によって検出することが出来る構造になっている。
【0033】
すなわち、図37(b)に示した例で説明すると、電流・電圧検出器3cの左側の部分が電流検出器340に相当し、右側の部分が、電圧検出器350に相当することになる。なお、筐体は、アルミニウム等の導電体で作られている。そして、この電流検出器340は、図33,図34に示した電圧検出器80に相当し、電圧検出器350は、図33,図34に示した電圧検出器90に相当する。
【0034】
図38は、図37に示した電流・電圧検出器3cの概略構成図である。この図38において、同図(a)は、電流・電圧検出器3cの概略の構成図であり、同図(b)は、同図(a)の構成要素を組み立てたときの概略図である。なお、この図38では、各構成要素の形状は概略を示すのみである。例えば、筐体や基板には、電力伝送用導電体66を貫通させるための貫通穴や磁束を通過させるための開口部が設けられているが、これらは図示していない。また、図38では、外側から見えない部分の概略を点線で示している。
【0035】
図38(a)に示すように、電流・電圧検出器3cは、筐体本体330と、筐体本体330に固定される電流検出用プリント基板1’、電圧検出用プリント基板2’、電流検出部用蓋331、および電圧検出部用蓋332によって構成されている。もちろん、それらを固定するための螺子やビス等の部品も含まれるが、これらの部品は構成要素の一部と見なすとともに、説明の簡略化のために図示を省略する。また、図38(a)に示した矢印で図示したように各構成部品を筐体本体330に固定すると、図38(b)に示したように、電流検出用プリント基板1’、電圧検出用プリント基板2’がそれぞれ筐体本体330の内部に固定されるとともに、電流検出用プリント基板1’、電圧検出用プリント基板2’をそれぞれ覆うように蓋がされる。
【0036】
このように、筐体本体330は、電流検出用プリント基板1’、電圧検出用プリント基板2’とで共通であるが、電流検出用プリント基板1’が固定される側を表面とすると、電圧検出用プリント基板2’が裏面に固定されるようになっているので、概略的には、電流検出用プリント基板1’、電圧検出用プリント基板2’とがそれぞれ独立した空間内に収容されることになる。
【0037】
【特許文献1】特開2007−225588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
図39は、図37(b)に示した電流・電圧検出器3cの断面図である。
この図39に示すように、電流検出用プリント基板1’および電圧検出用プリント基板2’を用いた電流・電圧検出器3cでは、構造上、電力伝送用導電体66の軸方向に対して、少しではあるが、電流検出用プリント基板1’と電圧検出用プリント基板2’とが離れてしまう。すなわち、電流検出用プリント基板1’の電流検出点と電圧検出用プリント基板2’の電圧検出点との距離が離れていることを示している。
ところが、当然ながら、検出した電流と電圧とから求められる両者の位相差、電流の振幅検出値、および電圧の振幅検出値の観点から考えると、電流検出点と電圧検出点が近い方が好ましい。
【0039】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、電流検出点と電圧検出点とを、さらに近づけることを可能にする電流・電圧検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
第1の発明によって提供される電流・電圧検出用プリント基板は、
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流と前記電力伝送用導電体に生じる交流電圧とを検出するための電流・電圧検出用プリント基板であって、
基板に設けた切欠部と、
前記切欠部の周囲に配置された電圧検出を行うための第1配線と、
前記第1配線の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、
前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための第2配線と、
を備えたことを特徴としている。
【0041】
第2の発明によって提供される電流・電圧検出用プリント基板は、
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略半円形に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0042】
第3の発明によって提供される電流・電圧検出用プリント基板は、
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0043】
第4の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流と前記電力伝送用導電体に生じる交流電圧とを検出するための電流・電圧検出器において、
基板に設けた切欠部と、前記切欠部の周囲に配置された電圧検出を行うための第1配線と、前記第1配線の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための第2配線とを含む電流・電圧検出用プリント基板と、
前記電流・電圧検出用プリント基板を内部に固定するとともに、前記電力伝送用導電体を前記基板に設けた切欠部に隣接できるようにした導電体製の筐体と、
を備えたことを特徴としている。
【0044】
第5の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0045】
第6の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0046】
第7の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部および前記筐体によって、一部遮蔽しない部分を含む遮蔽部を形成していることを特徴としている。
【0047】
第8の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板の表面と裏面との間に設けられていることを特徴としている。
【0048】
第9の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板と筐体との間に設けられていることを特徴としている。
【0049】
第10の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記筐体は、前記電流・電圧検出用プリント基板を固定する筐体本体と、前記筐体本体に対応する蓋部と、からなることを特徴としている。
【0050】
第11の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記第1配線は、前記切欠部の周囲に、基板の最上層と最下層との間または基板の一部分の層間を貫通するスルーホールを複数設け、かつ貫通した部分の最上層から最下層の内の少なくとも1つの層に前記スルーホール部を繋げるようにパターン配線を設けたものであることを特徴としている。
【0051】
第12の発明によって提供される電流・電圧検出器は、
前記交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であることを特徴としている。
【0052】
また、前記第2配線は、基板の最上層と最下層との間を貫通しながら基板の最上層と最下層とを交互に接続することによって両端部を有するコイル状に形成された少なくとも1つの配線、又は/及び基板の一部分の層間を貫通しながら貫通した部分の最上層と最下層とを交互に接続することによって両端部を有するコイル状に形成された少なくとも1つの配線からなっていてもよい。
【0053】
また、前記第2配線の内、基板の最上層と最下層との間または基板の一部分の層間を貫通する部分の配線がスルーホールであり、貫通した部分の最上層および最下層の配線がパターン配線となっていてもよい。
【0054】
また、前記第2配線が基板に複数形成される場合は、各第2配線の両端部または電気的に同一箇所において、他の第2配線の両端部または電気的に同一箇所と、電気的に接続可能となっていてもよい。
【0055】
また、前記切欠部が略半円形であり、前記第1配線が前記切欠部の周囲に略半円形に形成されているとともに、前記第2配線が略半円形に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、電圧検出を行うための第1配線と、電流検出を行うための第2配線とを同一基板上に形成できるので、電流検出点と電圧検出点とを略同一点とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明の詳細を図面を参照して説明する。
【0058】
(1)電流検出用プリント基板:
図1は、電流検出用プリント基板1の一例を示す図である。
図1において、同図(a)は、電流検出用プリント基板1の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだA部分)を拡大した概略図(切欠部101の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板1の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0059】
図1(a)〜(d)に示すように、電流検出用プリント基板1は、基板に略半円形の切欠部101が設けられており、この切欠部の周囲にコイル状に形成された配線10(以下、コイル状の配線10という)が設けられている。このコイル状の配線10は、基板を貫通しながら、基板の表面121と裏面122とを交互に接続することによって両端部10a,10bを有するコイル状に形成されたものである。この配線の内、基板を貫通する部分は、スルーホール(Through Hole)11によって形成され、基板の表面および裏面の配線は、パターン配線12,13によって形成されている。
【0060】
なお、図1(b)〜(c)において、点線で示した部分は、基板の裏面のパターン配線を示すが、透過したものであるため、点線で示している。また、コイル状の配線10の両端部10a,10bには、出力配線21,22が接続されている。この出力配線が出力端子23,24に接続されている。
【0061】
また、この例の場合は、両面構造の基板(以下、両面基板という)であるために、1つの絶縁体部110の表面層および裏面層にパターン配線が形成されることになる。
【0062】
図2は、交流電流が流れる電力伝送用導電体66および電力伝送用導電体66を覆う絶縁体69が、電流検出用プリント基板1に設けられた切欠部101に隣接するように配置された場合を示す概略図である。なお、図面の簡略化のために、配線の図示は省略している。また、本実施例および以降の実施例では、電流検出用プリント基板、後述する電圧検出用プリント基板等が、インピーダンス整合装置63の入力端から整合回路67までの間に設けられた場合を例にして説明をする。
【0063】
図1に示したような電流検出用プリント基板1にすると、交流電流が流れる電力伝送用導電体66が、図2に示すように、切欠部101に隣接するように配置された場合に、電磁誘導によって、コイル状の配線10に電流が流れる。これは、コイル状の配線10に磁束が作用するからである。すなわち、プリント基板にカレントトランス機能を持たすことができる。換言すれば、電流検出用プリント基板1に、カレントトランスを形成することができる。
したがって、コイル状の配線10の部分は、図33,図34に示した回路図のカレントトランス部81に相当する。
【0064】
なお、本明細書では、電力伝送用導電体66の周囲に絶縁体69がある状態であっても、図2に示すように電力伝送用導電体66および絶縁体69が配置されている場合は、電力伝送用導電体66が、切欠部101に隣接しているとみなす。すなわち、電力伝送用導電体66とコイル状の配線10とが多少離れていても良い。要は、コイル状の配線10に磁束が作用して電流が流れる状態であればよい。したがって、図2とは異なり、電流検出用プリント基板1と電力伝送用導電体66とが多少離れていてもよい。もちろん、カレントトランスとして適切に機能させるためには、限度があるので、実験等を行い、適切な設計をすればよい。
【0065】
また、このようにすると、コイル状の配線10の部分が、スルーホール及びパターン配線によって形成されるために、形状や位置のばらつきが殆どない。したがって、巻線間隔や巻き付け強さにばらつきが殆どないので、複数の電流検出用プリント基板1を製作した場合でも、個々の電流検出用プリント基板1に起因する電流検出値のばらつきが少ない。特に、電力伝送用導電体66を用いて伝送される交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であると、電流検出用プリント基板1における巻線間隔や巻付け強さのばらつきが、電流の検出値に大きく影響を及ぼす。しかし、上述したように、電流検出用プリント基板1を構成することによって、たとえ、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であっても、その影響を最小限に止めることができる。
【0066】
なお、図33,図34に示した電流用変換回路84に相当する電流用変換回路51を、図1の電流検出用プリント基板1上に構成してもよい。この場合、図1に示した出力端子23,24は不要となって、コイル状の配線10の出力配線21,22が、直接、電流用変換回路51に接続される。
【0067】
また、基板の絶縁体部110は、例えば、ガラスエポキシで作られる。このような、基板の絶縁体部110の比透磁率は、磁性体よりも小さい。そのために、例えば、コアとして用いる磁性体に配線を巻き付けてカレントトランスを構成するよりも、自己共振周波数が高くすることができる。したがって、検出可能な周波数帯域の上限が従来よりも高くなるという効果もある。
【0068】
図3は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
図3において、同図(a)は、電流検出用プリント基板1の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだB部分)を拡大した概略図(切欠部101の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板1の配線を図示したものであり、同図(e)は、電流検出用プリント基板1の配線を、出力配線21等の部分を中心に、側面から図示したものである。なお、図3に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。また、便宜上、電流検出用プリント基板1、スルーホール11、パターン配線12,13等は、図1と同符号を用いている。
【0069】
図3に示す電流検出用プリント基板1は、基本的には、図1に示した電流検出用プリント基板1と同様であるが、基板が多層構造になっていて、コイル状の配線10が内部の層間に形成されている。
【0070】
なお、本明細書では、多層構造の基板(以下、多層基板という)を構成する絶縁体部を、図面の上部から見て順に、第1絶縁体部、第2絶縁体部、第3絶縁体部、・・・という具合に呼ぶ。また、基板の各絶縁体部の間に形成される導体層を、図面の上部から見て順に、第1導体層、第2導体層、第3導体層、・・・という具合に呼ぶ。また、基板の表面に形成される導体層を表面層、基板の裏面に形成される導体層を裏面層と呼ぶ。
【0071】
なお、両面基板も表面層および裏面層の2つの層があるので、多層基板と言えるが、絶縁体部が1つしかないので、基板の各絶縁体部の間に形成される導体層がない形態である。
【0072】
図3の例では、基板の絶縁体部が、第1絶縁体部111、第2絶縁体部112、および第3絶縁体部113の3つの絶縁体部で構成されているために、第1絶縁体部111と第2絶縁体部112との間に第1導体層131が形成され、第2絶縁体部112と第3絶縁体部113との間に第2導体層132が形成されている。また、基板の表面121(第1絶縁体部の上の面)には表面層が形成可能である。また、基板の裏面122(第3絶縁体部の下の面)には裏面層が形成可能であるが、図3の例では、基板の裏面層を設けていない。
【0073】
そのために、図3の場合、コイル状の配線10は、第1導体層131と第2導体層132との層間に形成されていることになる。したがって、コイル状の配線10が、基板の外側からは見ることができない構造にすることもできる。また、このような場合も、コイル状の配線10の部分は、図33,図34に示した回路図のカレントトランス部81に相当する。
【0074】
また、図3(e)に示すように、コイル状の配線10の出力配線21は、第1導体層131に形成されたコイル状の配線10の一端10aに接続されたパターン配線21aと、スルーホール21bと、基板の表面に形成されたパターン配線21cによって形成されて、出力端子23に接続される。コイル状の配線10の出力配線22については、同様であるために説明を省略する。
【0075】
なお、図33,図34に示した電流用変換回路84に相当する電流用変換回路51を、図3の電流検出用プリント基板1上に構成してもよい。この場合、図3に示した出力端子23,24は不要となって、コイル状の配線10の出力配線21,22が、直接、電流用変換回路51に接続される。また、図3(a)に示す出力配線21の長さと、図3(e)に示す出力配線21の長さとが異なるが、これは、図面を簡略化するために、このように図示したためである。
【0076】
図4は、コイル状の配線10の他の例を示す図である。例えば、図4(a)に示すように、コイル状の配線10が、基板の表面層と第2導体層132との層間に形成されていてもよい。なお、図4(a)の場合は、基板の裏面122に裏面層が設けられていないため、コイル状の配線10が、基板の最上層である表面層と最下層である第2導体層132とを交互に接続することによって形成されていることになる。
また、図4(b)に示すように、コイル状の配線10が、基板の表面層と裏面層との層間に形成されていてもよい。なお、図4(b)の場合は、図1と同様に、コイル状の配線10が、基板の最上層である表面層と最下層である裏面層とを交互に接続することによって形成されていることになる。
【0077】
また、一般的に、スルーホールとは、基板の層間に貫通穴を開け、その内側に導体層(例えば銅)を設けることによって、基板の層間の導通をさせるものである。なお、基板の層間とは、基板の表裏間にある全ての層間の場合もあるし、一部分の層間の場合もある。
【0078】
このようなスルーホールは、リード線を挿入するタイプのものもあるが、層間の導通のみを目的としたスルーホールは、特にバイアホール(Via Hole)と呼ばれる。そして、バイアホールには、基板の表面から裏面に亘って貫通穴を開ける貫通型のバイアホール(Via Hole)と、特定の層間だけで貫通穴を開けるインターステシャルバイアホール(Interstitial Via Hole)とがある。また、インターステシャルバイアホールには、図4(a)のように、基板の片面から穴が見えるブラインドバイア(Blind Via)と、図3のように、基板の両面から穴が見えないベリードバイア(Buried Via)とがある。
【0079】
また、図3、図4に示した例は、所謂、4層基板(表面層と裏面層の層を含めて導体層が4つ形成可能)であるが、これに限定されることはなく、例えば、3層基板、6層基板、8層基板等の多層基板であってもよい。
【0080】
図5は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。この図5に示す電流検出用プリント基板1は、図1と異なり、2つのコイル状の配線10が、1つの電流検出用プリント基板1に備わっているところに特徴がある。具体的には、第1のコイル状の配線10−1と、第1のコイル状の配線10−1よりも切欠部101に近い位置にある第2のコイル状の配線10−2とが、電流検出用プリント基板1に備わっている。また、これらの第1のコイル状の配線10−1および第2のコイル状の配線10−2は、図1(b)〜(d)で示したものと同様に、スルーホール(Through Hole)およびパターン配線によって形成されている。そのために、ここでは、その説明を省略する。また、もちろん、図3に示したような多層基板に適用することもできるが、ここでは、説明を省略する。
【0081】
上述したように、図5に示した電流検出用プリント基板1では、2つのコイル状の配線10が備わっているので、1つの電流検出用プリント基板1に、複数種類のカレントトランスを形成することが可能となる。この様子を図6を参照して説明する。
【0082】
図6は、図5に示した電流検出用プリント基板1の結線図である。
図5に図示したように、第1のコイル状の配線10−1の両端部10−1a,10−1bには、出力配線21−1,22−1を介して、出力端子23−1,24−1が接続されている。また、第2のコイル状の配線10−2の両端部10−2a,10−2bには、出力配線21−2,22−2を介して、出力端子23−2,24−2が接続されている。この場合、図6に示すように結線することによって、1つの電流検出用プリント基板1に、複数種類のカレントトランスを形成することが可能となる。なお、図6において、「×」は、他と接続しないという意味である。
【0083】
具体的には、図6(a)に示すように結線した場合、電流検出用プリント基板1には、第1のコイル状の配線10−1を用いたカレントトランスが形成される。
また、図6(b)に示すように結線した場合、電流検出用プリント基板1には、第2のコイル状の配線10−2を用いたカレントトランスが形成される。
また、図6(c)に示すように、出力端子23−2と出力端子24−1とを接続すると、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とが直列接続した場合のカレントトランスが形成される。したがって、この場合は、図6(a)、図6(b)に示した場合よりもインダクタンスの大きいカレントトランスを形成することができる。
また、図6(d)に示すように、出力端子23−1と出力端子23−2とを接続し、出力端子24−1と出力端子24−2とを接続すると、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とを並列接続した場合のカレントトランスを形成することができる。
【0084】
なお、図6(a)に示すように結線する場合は、出力配線21−2,22−2が不要である。また、図6(b)に示すように結線する場合は、出力配線21−1,22−1が不要である。そのために、不要な出力配線および出力端子は、設けないようにしてもよい。
【0085】
図7は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。この図7に示す電流検出用プリント基板1は、図5と同様に、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とが、1つの電流検出用プリント基板1に備わっているが、図5と異なり、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とが、あたかも2重螺旋構造のように配置されているところに特徴がある。また、この図7の場合でも、図5と同様に、1つの電流検出用プリント基板1に、複数種類のカレントトランスを形成することが可能となる。なお、図5及び図7では、配線の区別をし易くするために、出力端子の位置をずらして図示しているが、これに限定されるものではなく、他の位置関係にしてもよい。
【0086】
また、図7に示すように、2重螺旋構造のように第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2を配置することができるが、この図7に示す例以外にも、多くの配置例が考えられる。
【0087】
図8は、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2の配置例を示す図である。この図8は、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2の断面を概略的に示すものであって、様々な配置例があることを示している。なお、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とは、紙面で見て奥行き方向に対してずれているが、説明の都合上、通常は見えない部分を透過させて図示しているので、重なっているように見えている。
【0088】
例えば、図8(a)は、同一の導体層に第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2を形成しているが、第1のコイル状の配線10−1の方が第2のコイル状の配線10−2よりも、パターン配線が長い例である。もちろん、第1のコイル状の配線10−1の方よりも第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を長くしてもよい。
図8(b)は、図8(a)と同様であるが、第1のコイル状の配線10−1と第2のコイル状の配線10−2とのパターン配線が同一長となっている例である。
図8(c)は、第1のコイル状の配線10−1よりも内側に第2のコイル状の配線10−2のスルーホールを形成し、且つ、第1のコイル状の配線10−1よりも内側の導体層に、第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を形成した例である。
図8(d)は、第1のコイル状の配線10−1よりも内側に第2のコイル状の配線10−2のスルーホールを形成しているが、第1のコイル状の配線10−1よりも外側の導体層に、第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を形成した例である。
図8(e)は、第1のコイル状の配線10−1よりも外側に第2のコイル状の配線10−2のスルーホールを形成しているが、第1のコイル状の配線10−1よりも内の導体層に、第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を形成した例である。
【0089】
その他にも、様々な変形例が考えられるが、上記の例から容易に考えられるので、説明を省略する。なお、図8(a)及び(b)のように、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を同一の導体層に形成する場合は、両面基板を用いることができる。
【0090】
また、図8では、電流検出用プリント基板1の平面図で見たときに、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2のスルーホール及びパターン配線がずれている例を示した。このようにすると、様々な配置例が可能となるが、図8(c)のように、第1のコイル状の配線10−1のスルーホールよりも内側に、第2のコイル状の配線10−2のスルーホールを形成し、且つ、第1のコイル状の配線10−1のパターン配線よりも内側に、第2のコイル状の配線10−2のパターン配線を形成すれば、平面図で見たときに、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2のパターン配線が部分的に重なってもよい。もちろん、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2の関係を逆にすることも可能である。
【0091】
なお、図5、図7では、2つのコイル状の配線10が、1つの電流検出用プリント基板1に備わっている例を示したが、この数に限定されるものではなく、3つ以上のコイル状の配線10を、1つの電流検出用プリント基板1に備えるようにしてもよい。もちろん、そうなると、1つの電流検出用プリント基板1に形成されるコイル状の配線10の組み合わせも増やすことができる。また、電流検出用プリント基板1上に電流用変換回路51を備える場合でも、同じ考え方を適用できる。この場合は、上記と同様に、コイル状の配線10の両端部付近で、配線の結線をしてもよいし、電流用変換回路51の内部で結線するようにしてもよい。すなわち、各配線の両端部または電気的に同一箇所において、他の配線の両端部または電気的に同一箇所と、電気的に接続可能である。
【0092】
次に、図5、図7に示したような、電流検出用プリント基板1に複数のコイル状の配線10が設けられている場合の効果を説明する。
【0093】
一般にコイル(インダクタともいう)をカレントトランスとして機能させる場合、使用する周波数によって特性が変化する。具体的には、周波数の低い領域では、電流の検出レベルが低い。また、周波数が高くなりすぎても、コイルが共振してしまう。共振するときの周波数を共振周波数と言うが、共振周波数付近では、コイルの特性が大きく変化するので、カレントトランスとしての電流の検出レベルも大きく変化してしまう。そのために、共振周波数付近は、電流の検出には不向きである。したがって、概略的には、検出可能な周波数帯域が限定される。すなわち、使用できる周波数には、下限と上限とが生じる。
【0094】
また、検出可能な周波数帯域は、コイルのインダクタンスが大きくなると、周波数が低くなる方に移行し、コイルのインダクタンスが小さくなると、周波数が高くなる方に移行する傾向がある。そのために、電力伝送用導電体66に流れる交流電流の周波数によって、コイル状の配線10のインダクタンスを適切な値に選定する必要がある。
【0095】
さて、前述した高周波電源装置61は、用途に応じて出力する高周波電力の周波数が異なる。例えば、用途に応じて、2MHz、13.56MHz等の周波数が用いられる。そのために、これらの周波数に応じて、コイル状の配線10のインダクタンスを選定する必要が生じるので、1つの電流検出用プリント基板1に、複数種類のカレントトランスを形成できるようにしておくと、利便性が高まる。例えば、2MHz用のカレントトランスと13.56MHz用のカレントトランスの両方を形成できるようにしておくと、それぞれの周波数に応じた電流検出用プリント基板1を用意する必要がないので、製品の種類を削減することができる。
【0096】
また、図1、図3に示した例のように、コイル状の配線10が、1重巻きの配線であると、巻数を多くするにも限度があるので、インダクタンスを大きくするにも限度がある。そこで、図6(c)のような直列接続にすれば、コイル状の配線10のインダクタンスを大きくできるので、検出可能な周波数帯域をより低くすることができる。
【0097】
(2)電圧検出用プリント基板:
図9は、電圧検出用プリント基板2の一例を示す図である。
図9において、同図(a)は、電圧検出用プリント基板2の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだC部分)を拡大した概略図(切欠部201の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板1の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0098】
図9(a)〜(d)に示すように、電圧検出用プリント基板2は、基板に略半円形の切欠部201が設けられており、その周囲に略半リング状の配線30が設けられている。この略半リング状の配線30は、切欠部201の周囲に、基板を貫通するスルーホール31を複数設け、且つ基板の表面221および裏面222にスルーホール部を繋げるようにパターン配線32,33を設けることによって形成されたものである。そのために、基板の表面および裏面にあるパターン配線32,33の間にスルーホールが設けられているので、基板の厚みと略同じ厚みを有するように形成されて、あたかも、略半リング状の配線30となる。
【0099】
なお、図9(b)〜(c)では、基板の表面および裏面にあるパターン配線32、33が重なっている。また、略半リング状の配線30には、出力配線40が接続されている。
【0100】
図9に示したような電圧検出用プリント基板2にすると、交流電圧が生じている電力伝送用導電体66が、切欠部201に隣接するように配置された場合に、略半リング状の配線30が、前記電力伝送用導電体66の内、略半リング状の配線30と対向する箇所と対となるコンデンサの電極として機能する。すなわち、プリント基板にコンデンサの電極としての機能を持たすことができる。したがって、略半リング状の配線30の部分は、図33,図34に示した回路図のコンデンサ部の電極91bに相当する。
なお、電流検出用プリント基板1の場合と同様に、略半リング状の配線30と電力伝送用導電体66とは多少離れていてもよい。要は、略半リング状の配線30と対向する箇所と対となるコンデンサの電極として機能すればよい。もちろん、コンデンサの電極として適切に機能させるためには、限度があるので、実験等を行い、適切な設計をすればよい。
【0101】
また、このようにすると、略半リング状の配線30の部分が、スルーホール31およびパターン配線32,33によって形成されるために、形状や位置のばらつきが殆どないので、複数の電圧検出用プリント基板2を製作した場合でも、個々の電圧検出用プリント基板2に起因する電圧検出値のばらつきが少ない。特に、電力伝送用導電体66を用いて伝送される交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であると、電圧検出用プリント基板2における構造上のばらつきが、電圧の検出値に大きく影響を及ぼす。しかし、上述したように、電圧検出用プリント基板2を構成することによって、たとえ、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であっても、その影響を最小限に止めることができる。
【0102】
なお、図33,図34に示した電圧用変換回路93に相当する電圧用変換回路53を、図9の電圧検出用プリント基板2上に構成してもよい。この場合、図9に示した出力端子41は不要となって、略半リング状の配線30の出力配線40が、直接、電圧用変換回路53に接続される。
【0103】
図10は、電圧検出用プリント基板2の他の一例を示す図である。
図10において、同図(a)は、電圧検出用プリント基板2の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだD部分)を拡大した概略図(切欠部201の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電圧検出用プリント基板2の配線を図示したものであり、同図(e)は、電圧検出用プリント基板2の配線を、出力配線40等の部分を中心に、側面から図示したものである。なお、図10に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。また、便宜上、電圧検出用プリント基板2、スルーホール31、パターン配線32,33等は、図9と同符号を用いている。
【0104】
図10に示す電圧検出用プリント基板2は、基本的には、図9に示した電圧検出用プリント基板2と同様であるが、基板が多層構造になっていて、略半リング状の配線30が内部の層間に形成されている。これについては、図3と同様であるので、説明は省略する。
【0105】
そのために、図10の場合、略半リング状の配線30は、第1導体層231と第2導体層232との層間に形成されていることになる。したがって、略半リング状の配線30が、基板の外側からは見ることができない構造にすることもできる。また、このような場合も、略半リング状の配線30の部分は、図33,図34に示した回路図のコンデンサ部の電極91bに相当する。
【0106】
また、略半リング状の配線30の出力配線40は、例えば、図10(e)に示すように、第1導体層231に形成されたコイル状の配線10の一端10aに接続されたパターン配線40aと、スルーホール40bと、基板の表面に形成されたパターン配線40cとによって形成されて、出力端子41に接続される。
【0107】
なお、これまで説明した例とは異なり、図11のように略半リング状の配線30を形成してもよい。
【0108】
図11は、略半リング状の配線30の他の一例である。
図11(a)は、スルーホール31が貫通した部分の最上層から最下層の間に、スルーホール部を繋げるようための別のパターン配線を設けた例である。この例では、基板の上から順に、パターン配線34、パターン配線35、パターン配線36、およびパターン配線37の4つのパターン配線が設けられている。このように、3つ以上のパターン配線を設けてもよい。
また、図11(b)は、スルーホール31が貫通した部分の最上層から最下層の間の1層のみに、パターン配線38を設けた例である。このように、1つのパターン配線だけを設けてもよい。
したがって、スルーホールが貫通した部分の最上層から最下層の内の少なくとも1つの層に前記スルーホール部を繋げるようにパターン配線を設ければよい。また、この図11のような場合も、略半リング状の配線30の部分は、図33,図34に示した回路図のコンデンサ部の電極91bに相当する。
【0109】
(3)電流・電圧検出用プリント基板
これまで、コイル状の配線10及び略半リング状の配線30は、それぞれ別のプリント基板に形成する例を示したが、図12に示すように、同一のプリント基板に形成することも可能である。以下、図12を参照して説明する。
【0110】
図12は、本発明に係る電流・電圧検出用プリント基板4の一例を示す図である。
図12において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだE部分)を拡大した概略図(切欠部401の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)の一部を側面から見た概略図である。また、同図(e)は、同図(a)のF−F断面図である。
【0111】
図12(a)に示すように、電流・電圧検出用プリント基板4は、基板に略半円形の切欠部401が設けられており、この切欠部401の周囲に前述した略半リング状の配線30が形成されている。また、略半リング状の配線30には、出力配線40が接続されている。出力配線40には、出力端子41が接続されている。
【0112】
また、略半リング状の配線30の外側には、遮蔽機能を有する遮蔽部500が形成されている。この遮蔽部500については後述する。なお、略半リング状の配線30の外側とは、電流・電圧検出用プリント基板4の中で、切欠部401から遠ざかる方を示す。すなわち、略半リング状の配線30から見て、切欠部401と反対側のことである。
【0113】
また、遮蔽部500の外側には、前述したコイル状の配線10が形成されている。また、コイル状の配線10には、出力配線21,22が接続されている。また、出力配線21,22には、それぞれ出力端子23,24が接続されている。なお、遮蔽部500の外側とは、電流・電圧検出用プリント基板4の中で、切欠部401から遠ざかる方を示す。すなわち、遮蔽部500から見て、切欠部401や略半リング状の配線30と反対側のことである。
【0114】
なお、コイル状の配線10は、本発明の第2配線の一例であり、略半リング状の配線30は、本発明の第1配線の一例である。
【0115】
また、上記のコイル状の配線10は、図1に示したものと同様である。すなわち、図1では、コイル状の配線10は、貫通穴101の周囲に形成されていたが、図12では遮蔽部500の外側に形成されているという相違点があるが、カレントトランスとして機能する点は同じである。出力配線21,22及び出力端子23,24も、図1に示したものと同様である。
【0116】
また、略半リング状の配線30は、図9に示したものと同様である。すなわち、図9では、略半リング状の配線30は、貫通穴201の周囲に形成されていたが、図12では切欠部401の周囲に形成されているという相違点があるが、コンデンサの電極として機能する点は同じである。また、出力配線40は、後述する図14等に示すように、図9とは若干相違点があるが、略半リング状の配線30に生じる電圧を出力する機能を有する点は同じである。
【0117】
このように、コイル状の配線10等は、図1に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。また、略半リング状の配線30等は、図9に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。そのために、コイル状の配線10等、略半リング状の配線30等の詳細説明は省略する。また、説明を容易にするために、前述したものと同様の機能のものには、同符号を用いている。
【0118】
このように、電流・電圧検出用プリント基板4は、コイル状の配線10及び略半リング状の配線30が備わっているので、電流検出機能及び電圧検出機能を有する。また、電流検出点及び電圧検出点を、略同一とすることができる。
【0119】
また、電力伝送用導電体66を用いて伝送される交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であると、コイル状の配線10における巻線間隔や巻付け強さのばらつきが、電流の検出値に大きく影響を及ぼす。また、略半リング状の配線30における構造上のばらつきが、電圧の検出値に大きく影響を及ぼす。しかし、上述したように、電流・電圧検出用プリント基板4を構成することによって、たとえ、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であっても、その影響を最小限に止めることができる。
【0120】
次に遮蔽部500について説明する。
遮蔽部500は、図12(b)〜(c)に示すように複数のスルーホール501、502を略半円形に配置することによって形成されている。より具体的には、複数のスルーホールを略半円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている。
図示した例では、遮蔽部500の内側(切欠部401に近い側)に複数のスルーホール501を略半円形に配置し、遮蔽部500の外側に複数のスルーホール502を略半円形に配置している。また、スルーホール501とスルーホール502とをずらして配置している。そのために、遮蔽部500を側面から見た場合には、スルーホール501とスルーホール502とが重なり、隙間が無くなる。そのため、電力伝送用導電体66が、切欠部401に隣接するように配置された場合に生じる電界に対して遮蔽機能を有するようになる。しかも、スルーホールは、プリント基板を制作する上で容易に形成できるので、遮蔽部500を形成することは容易である。
【0121】
なお、後述する図25等に示すように、遮蔽部500は、筐体に接続する必要がある。そのため、電流・電圧検出用プリント基板4単体として、遮蔽部500の遮蔽機能を有するものではないが、電流・電圧検出用プリント基板の構造としては、図12で説明したように、コイル状の配線10と略半リング状の配線30との間に、遮蔽部500を設ける必要がある。
【0122】
また、図12では、遮蔽部500を2重のスルーホールで形成したが、スルーホールを3重以上に配置する場合は、上記の概念に従い、遮蔽部500を側面から見た場合に、遮蔽部500を形成するスルーホールの隙間が無くなるようにすればよい。
【0123】
図12(d)は、図12(c)に示した複数のスルーホール501を側面から見た概略図である。この図12(d)に示すように、電流・電圧検出用プリント基板4は、多層基板になっている。また、スルーホール501は、図12(d)に示すように、上側のスルーホール501aと、下側のスルーホール501bとに分かれており、基板を貫通しないようになっている。また、図12(d)では図示していないが、スルーホール502側も同様に、上側のスルーホール502aと、下側のスルーホール502bとに分かれており、基板を貫通しないようになっている。すなわち、遮蔽部500には、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分が設けられている。この様子は、図12(e)からも明らかである。なお、図12(e)は、図12(a)のF−F断面図であるが、遮蔽部500等の様子を模式的に表した断面図である。
【0124】
なお、上述したように、遮蔽部500は、略半円形に形成されているが、これに限定されるものではなく、コイル状の配線10と略半リング状の配線30との間に設ければよい。そのため、例えば、楕円形にすることも可能であるし、一部を直線的にすることも可能である。しかし、コイル状の配線10および略半リング状の配線30が略半円形であるならば、遮蔽部500も略半円形にした方が、面積を少なくできるなどのメリットがあるので好ましい。
【0125】
図13は、本発明に係る電流・電圧検出用プリント基板4の他の一例を示す図である。
図13において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだG部分)を拡大した概略図(切欠部401の方向から見た図)であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)の一部を側面から見た概略図である。また、同図(e)は、同図(a)のH−H断面図である。
【0126】
この図13に示した電流・電圧検出用プリント基板4は、図12に示したものと比べて、コイル状の配線10および略半リング状の配線30が異なっている。
具体的には、図13のコイル状の配線10は、図3に示したものと同様なものを使用し、略半リング状の配線30は、図10に示したものと同様なものを使用している。また、遮蔽部500は、図12に示したものと同じである。そのため、これらについての詳細説明は省略する。また、説明を容易にするために、前述したものと同様の機能のものには、同符号を用いている。
【0127】
なお、図12と同様に、コイル状の配線10等は、図3に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。また、コイル状の配線10は、カレントトランスとして機能する。また、略半リング状の配線30等は、図10に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。また、略半リング状の配線30は、コンデンサの電極として機能する。
【0128】
このように、これまで説明したコイル状の配線10や略半リング状の配線30の他の形態を用いることも可能である。そのため、コイル状の配線10としては、図5、図7、図8、またはこれらと同様のものを用いることができる。また、略半リング状の配線30としては、図11または同様のものを用いることができる。
【0129】
次に、略半リング状の配線30に接続される出力配線40について説明する。
図14は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の配線の様子を示す図である。図14において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだJ部分)を側面から見た一部断面図である。なお、図14(b)は、断面の様子を模式的に図示している。また、理解し易いように、出力端子41等も図示しているが、出力配線21は図示を省略している。
【0130】
この図14に示すように、略半リング状の配線30に接続される出力配線40は、遮蔽部500の一部に設けられた遮蔽しない部分を通過するとともに、コイル状の配線10の部分を通過するように配線されている。なお、図14(b)では、断面の様子を模式的に図示したものであるため、出力配線40とコイル状の配線10とが重なって図示されているが、実際には接触することがないように配線されている。
【0131】
図15は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。図15において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだK部分)を側面から見た一部断面図である。なお、図15(b)は、断面の様子を模式的に図示している。また、理解し易いように、出力端子41等も図示しているが、出力配線21は図示を省略している。
【0132】
この図15は、図14と類似しているが、出力配線40が、基板の表面に配線されるとともに、コイル状の配線10の部分を通過するように配線されている。なお、図15(b)では、断面の様子を模式的に図示したものであるため、出力配線40とコイル状の配線10とが重なって図示されているが、実際には接触することがないように配線されている。
また、遮蔽部500は、基本的には、図12で説明したようになっているが、出力配線40が通過する部分だけ、図15(b)に示すようになっている。すなわち、基板の表面付近だけが、遮蔽しない部分となっている。このように、一部が他の箇所と異なるように遮蔽部500を形成してもよい。また、この図15(a)に示すように、一部が途切れているものも含めて略半円形とする。
【0133】
図16は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。図16において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだL部分)を側面から見た一部断面図である。なお、図16(b)は、断面の様子を模式的に図示している。また、理解し易いように、出力端子41等も図示している。
【0134】
この図16は、図15と類似しているが、出力配線40が、平面図(基板の上から見た図)で見て、出力配線21と交差しないように配線されている。他は、図15と同様なので説明を省略する。
【0135】
図17は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。図17において、同図(a)は、電流・電圧検出用プリント基板4の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだM部分)を側面から見た一部断面図である。なお、図17(b)は、断面の様子を模式的に図示している。また、理解し易いように、出力端子41等も図示している。
【0136】
この図17は、出力配線40が、電流・電圧検出用プリント基板4の端の方に接続されていて、コイル状の配線10の部分を通過しないようになっている。他は、これまでの説明から明らかであるので、説明を省略する。
【0137】
また、図13に示すように、コイル状の配線10として、図3に示したものと同様なものを使用し、略半リング状の配線30として、図10に示したものと同様なものを使用することもできる。この場合、出力配線40は、これらのコイル状の配線10や略半リング状の配線30に応じて、適切に配線すればよい。
【0138】
このように、略半リング状の配線30に接続される出力配線40は、様々な形態が考えられる。また、遮蔽部500も様々な形態が考えられる。
【0139】
(4)電流・電圧検出器:
図18は、電流・電圧検出器3を立体的に示した概略の外観図である。
この図18に示すように、電流・電圧検出器3には、概略的には、略半円柱形の凹部303が設けられていて、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69が、この凹部303に隣接できる構造となっている。なお、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、電流・電圧検出器3の構成には含まれないが、説明に必要であるので図示している。また、絶縁体69は、電力伝送用導電体66と電流・電圧検出器3との絶縁を行うためのものである。そのために、絶縁体69の長さは、図示したよりも短くてよいが、図面の簡略化のために図18(a)のようにしている。これに関しては、他の図面も同様である(例えば図25)。なお、筐体は、アルミニウム等の導電体で作られている。
【0140】
図19は、図18に示した電流・電圧検出器3の概略構成図である。なお、この図19では、各構成要素の形状は概略を示すのみである。例えば、前述したように、電流・電圧検出用プリント基板4には、略半円形の切欠部401が設けられているが、これらは図示していない。
【0141】
図19に示すように、電流・電圧検出器3は、筐体本体300と、筐体本体300に固定される電流・電圧検出用プリント基板4、筐体本体300に対応する蓋301によって構成されている。もちろん、それらを固定するための螺子やビス等の部品も含まれるが、これらの部品は構成要素の一部と見なすとともに、説明の簡略化のために図示を省略する。また、図19に示した矢印で図示したように各構成部品を筐体本体300に固定すると、電流・電圧検出用プリント基板4が筐体本体300の内部に固定されるとともに、電流・電圧検出用プリント基板4を覆うように蓋がされる。
【0142】
次に、蓋301を除いた部分について、具体的に説明する。
図20は、筐体本体300の図である。図20において、同図(a)は、筐体本体300の側面の断面図であり、同図(b)は、平面図(電流・電圧検出用プリント基板4が固定される側から見た図)である。
【0143】
図21は、筐体本体300を立体的に図示した図である。
【0144】
図22は、蓋301を取り付けない状態で、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体本体300に取り付けたときの図である。なお、電流・電圧検出用プリント基板4は、一例として、図12と同様のものとしている。
【0145】
図20〜図22に示したように、筐体本体300には、凹部311、312が設けられているので、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体内部に収容できるようになっている。また、筐体本体300には、略半円形の切欠部304が設けられている。
【0146】
なお、蓋301にも、切欠部304と同様形状の切欠部(図略)が設けられており、この切欠部と、筐体本体300に設けられた切欠部304によって、前述した電流・電圧検出器3の略半円柱形の凹部303が形成される。そして、この略半円柱形の凹部303に、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69が隣接される。このとき、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、電流・電圧検出用プリント基板4に設けられた切欠部401にも隣接することになる。また、電圧検出用プリント基板2の場合と同様に、略半リング状の配線30と電力伝送用導電体66とは多少離れていてもよい。要は、略半リング状の配線30と対向する箇所と対となるコンデンサの電極として機能すればよい。もちろん、コンデンサの電極として適切に機能させるためには、限度があるので、実験等を行い、適切な設計をすればよい。
【0147】
また、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300の一部であり、筐体本体300に電流・電圧検出用プリント基板4が取り付けられたときに、遮蔽部500と接続されるように設けられている。すなわち、第1筐体遮蔽部306は、遮蔽部500の形状に合わせて略半円形に形成されている。もちろん、前述したように、遮蔽部500が略半円形でない場合は、遮蔽部500の形状に合わせた形状にすればよい。なお、第1筐体遮蔽部306を、例えばネジ止めによって、着脱可能にしてもよいが、この場合でも、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300の一部とする。また、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300と同様に、アルミニウム等の導電体で作られる。
【0148】
また、図20〜図22では図示を省略しているが、後述する図25等で図示されているように、蓋301にも第1筐体遮蔽部306と同様な第2筐体遮蔽部307が設けられている。具体的には、筐体本体300に電流・電圧検出用プリント基板4が取り付けられた後に、蓋301が筐体本体300に取り付けられたときに、遮蔽部500と接続されるように設けられている。すなわち、第2筐体遮蔽部307は、遮蔽部500の形状に合わせて略半円形に形成されている。
なお、第2筐体遮蔽部307を、例えばネジ止めによって、着脱可能にしてもよいが、この場合でも、第2筐体遮蔽部307は、蓋301の一部とする。すなわち、筐体の一部とする。また、第2筐体遮蔽部307は、アルミニウム等の導電体で作られる。遮蔽部500等の機能については、後述する。
【0149】
また、凹部311の四隅に4つの基板固定部315を設けて、この部分に電流・電圧検出用プリント基板4を固定するようになっている。これは、電流・電圧検出用プリント基板4に設ける配線が筐体(遮蔽部500は配線ではない)に接触しないようにするために、凹部311の底面に対して、電流・電圧検出用プリント基板4を浮かせるためである。
【0150】
なお、例えば、図13のように電流・電圧検出用プリント基板4のコイル状の配線10および略半リング状の配線30が、基板の裏面層に形成されない場合は、凹部311の四隅に設けた基板固定部315を不要にでき、凹部311と凹部312との底面の高さを同一とすることができる。また、第1筐体遮蔽部306も不要となる。
【0151】
図23は、基板固定部315を設けない場合の筐体本体300を立体的に図示した図である。この図23のようにすると、筐体本体300の構造を簡略化することが可能である。
【0152】
また、通常は、円筒形(断面が円形)の電力伝送用導電体66が用いられるので、それに合わせて、筐体本体300に設けられた切欠部304は、略半円形になっている。また、電流・電圧検出用プリント基板4の切欠部401が略半円形であり、略半リング状の配線30が切欠部401の周囲に形成されている。
【0153】
次に、電流・電圧検出用プリント基板4について説明する。
電流・電圧検出用プリント基板4のコイル状の配線10は、図12で説明したものと同様であるが、出力配線21,22がパターン配線のまま、電流用変換回路51に接続されている。この電流用変換回路51は、図33,図34に示した電流用変換回路84に相当するものである。
【0154】
電流・電圧検出用プリント基板4の略半リング状の配線30は、図12で説明したものと同様であるが、出力配線40がパターン配線のまま、電圧用変換回路53に接続されている。この電圧用変換回路53は、図33,図34に示した電圧用変換回路93に相当するものである。
【0155】
したがって、図12で説明した電流・電圧検出用プリント基板4と異なり、同一基板上にコイル状の配線10、略半リング状の配線30、電流用変換回路51および電圧用変換回路53が備わっている。
【0156】
また、この電流用変換回路51に接続された出力配線52が、配線用の開口部316を通って筐体の外部に伸びている。なお、電流用変換回路51には、出力配線52を接続するための出力端子が備わっているものとする。また、出力配線52は、途中までをパターン配線としてもよいし、全てをパターン配線以外の配線にしてもよい。
【0157】
また、この電圧用変換回路53に接続された出力配線54が、配線用の開口部316を通って筐体の外部に伸びている。なお、電圧用変換回路53には、出力配線54を接続するための出力端子が備わっているものとする。また、出力配線54は、途中までをパターン配線としてもよいし、全てをパターン配線以外の配線にしてもよい。なお、この例では、出力配線52と出力配線54とが同一の開口部316を通って筐体の外部に伸びているが、別の開口部から筐体の外部に伸びるようにしてもよい。
【0158】
また、電力伝送用導電体66を用いて伝送される交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であると、コイル状の配線10における巻線間隔や巻付け強さのばらつきが、電流の検出値に大きく影響を及ぼす。また、略半リング状の配線30における構造上のばらつきが、電圧の検出値に大きく影響を及ぼす。また、出力配線の形状のばらつきも検出値に影響を及ぼす一因となっている。しかし、上述したように、電流・電圧検出用プリント基板4を構成することによって、たとえ、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であっても、その影響を最小限に止めることができる。
【0159】
また、筐体本体300には、電流・電圧検出用プリント基板4のコイル状の配線10と電流用変換回路51との間に相当する位置に第3筐体遮蔽部308が設けられている。そのため、電流・電圧検出用プリント基板4は、この第3筐体遮蔽部308に応じて、基板の途中で基板幅が狭くなった形状をしている。
【0160】
この例では、この第3筐体遮蔽部308は、コイル状の配線10及び略半リング状の配線30がある空間と、電流用変換回路51及び電圧用変換回路53がある空間を遮蔽する機能を有している。
【0161】
図24は、第3筐体遮蔽部308の応用例の一例である。
図20〜図23に示すように、筐体本体300の第3筐体遮蔽部308だけでは出力配線の部分に隙間が生じるため、遮蔽が十分できない場合がある。その場合は、この図24(a)に示すように、蓋301に隙間を埋めるような遮蔽部317を設けてもよい。このようにすることによって、出力配線の部分の隙間が殆ど無くなるので、遮蔽効果が高まる。また、図24(b)に示すように、第3筐体遮蔽部308の代わりに、蓋301に遮蔽部318を設けてもよい。
【0162】
次に遮蔽部500の遮蔽機能について説明する。
図25は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の一例である。この図25は、例えば、図22に示すものに蓋301を取り付けた状態におけるN−N断面の様子を模式的に図示したものである。
【0163】
図25に示すように、電流・電圧検出用プリント基板4を収容した状態で、交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体66が、切欠部401に隣接するように配置された場合には、略半リング状の配線30は、コンデンサの電極として機能する。これは、例えば図9に示した電圧検出用プリント基板2を、筐体に収容した場合と同様である。
【0164】
しかし、コイル状の配線10に関しては、例えば、図1に示した電流検出用プリント基板1を、筐体に収容した場合とは異なる。すなわち、コイル状の配線10の構成だけで考えると、前述したように、図1等に示した電流検出用プリント基板1のコイル状の配線10の構成と、図12等に示した電流・電圧検出用プリント基板4のコイル状の配線10の構成とは同様である。しかし、図25に示すような接続状態では、電力伝送用導電体66とコイル状の配線10の間に略半リング状の配線30が存在するので、図1に示した電流検出用プリント基板1を、筐体に収容した場合とは異なる。
【0165】
仮に、遮蔽部500が存在しない場合を考えと、コイル状の配線10と略半リング状の配線30との間が遮蔽されていないので、電流検出に必要な磁束がコイル状の配線10に作用する。それとともに、コイル状の配線10は、電界の影響を受ける。ところが、コイル状の配線10は、電界の影響を受けるのが好ましくないため、電流検出の精度が低下する要因となる。そのために、同一基板上にコイル状の配線10と略半リング状の配線30が備わっている場合であっても、コイル状の配線10に対する電界の影響を低減させて、電流検出の精度を高める工夫が必要となる。
【0166】
そこで、遮蔽部500および遮蔽部500の上下の遮蔽部(第1筐体遮蔽部306、第2筐体遮蔽部307)を設けて、コイル状の配線10と略半リング状の配線30との間を可能な限り遮蔽している。もちろん、電流検出に必要な磁束をコイル状の配線10に作用させる必要があるので、完全な遮蔽ではなく、一部に遮蔽しない部分を設けている。
【0167】
上記の遮蔽しない部分は、遮蔽という観点から見ると、可能な限り小さくするのが好ましいが、コイル状の配線10による電流検出や、図14等で説明した出力配線の兼ね合いがあるので、これらを考慮して、具体的な設計をすればよい。いずれにしても、遮蔽部500が存在しない場合に比べると、コイル状の配線10に対する電界の影響を低減させることができ、かつ、電流検出に必要な磁束をコイル状の配線10に作用させることができる。また、電流検出点と電圧検出点とを略同一点をすることが可能となる。
【0168】
さらに補足すると、これまでの説明から分かるように、遮蔽部500は、遮蔽部500の上下にある第1筐体遮蔽部306、第2筐体遮蔽部307と接続されることによって、筐体と電気的に接続される。これによって、遮蔽部500は、遮蔽機能を有するものとなる。
また、略半リング状の配線30と遮蔽部500は、ともにスルーホールを用いて形成されているが、両者は、構造的にも機能的にも異なる。
【0169】
図26は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
図26(a)は、図25と異なり、遮蔽部500を形成するスルーホールが2分割されずに、基板の表面付近を除いて基板に設けられた例である。所謂、ブラインドバイア(Blind Via)となっている。このように、遮蔽部500の構成は図25と異なるが、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分を設けている点は共通している。このようにしても、図25と同様に電界の遮蔽を行うとともに、コイル状の配線10に磁束を作用させることができる。
また、図26(b)は、図25と異なり、遮蔽部500を形成するスルーホールが基板を貫通している。その代わりに、第2筐体遮蔽部307が、遮蔽部500と接続されずに隙間が空いている例である。この場合は、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分が設けられてはいないが、図25、図26(a)と同様の効果がある。すなわち、図25、図26(a)と同様に電界の遮蔽を行うとともに、コイル状の配線10に磁束を作用させることができる。
【0170】
図27は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
図27(a)は、図23に示した筐体本体300と図13に示した電流・電圧検出用プリント基板4を用いた例である。すなわち、コイル状の配線10と略半リング状の配線30とが内部の層間に形成されているので、図23に示した筐体本体300を用いるとともに、第1筐体遮蔽部306を不要にすることができる。この場合は、遮蔽部500を形成するスルーホールが筐体本体300に接続させるので、図25、図26の場合と同様の効果がある。
図27(b)は、さらに第2筐体遮蔽部307を取り除き、スルーホールが蓋301に接続されるような筐体本体300にした例である。この場合も、図25、図26の場合と同様の効果がある。
【0171】
(電流・電圧検出器の変形例)
図28は、電流・電圧検出器3の変形例である電流・電圧検出器3aを示すものである。ただし、蓋301aは図示を省略している。この図28は、電流・電圧検出用プリント基板4が、図12で示したものである場合を示している。この図28に示すように、電流用変換回路51および電圧用変換回路53を、電流・電圧検出器3aの外部に設けることもできる。なお、筐体は、電流・電圧検出用プリント基板4に合わせた形状の筐体本体300aを用いている。また、電流・電圧検出用プリント基板4の出力は、パターン配線ではない出力配線によって筐体外部に出力される。この場合、電流用変換回路51、電圧用変換回路53は、電流・電圧検出器3aの外部に別途設けられる。
【0172】
図29は、電流・電圧検出器3の変形例である電流・電圧検出器3bを示すものである。ただし、蓋301bは図示を省略している。この図29に示すように電流・電圧検出用プリント基板4上に、電流用変換回路51、電圧用変換回路53を設けるようにすることも可能である。なお、電流用変換回路51の出力配線および電圧用変換回路53の出力配線は、途中までをパターン配線としてもよいし、全てをパターン配線以外の配線にしてもよい。
【0173】
なお、これまでの説明では、電流・電圧検出器(3,3a、3b)を、インピーダンス整合装置の入力端63aに設ける例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、高周波電源装置61の出力端に用いても良いし、インピーダンス整合装置の出力端63bに設けても良い。なお、上述したように、インピーダンス整合装置の入力端63aと出力端63b(負荷65の入力端も同様)とでは、電流・電圧に違いがある。そのために、インピーダンス整合装置の出力端63bや負荷65の入力端に設ける場合、その違いを考慮して、電力伝送用導電体68を太い径の導電体にしたり、電力伝送用導電体68の外周を覆う絶縁体69の肉厚を厚くして、絶縁距離を長くすればよい。また、高周波電力供給システム以外の用途で使用してもよい。
【0174】
また、これまでの説明したように、電流・電圧検出用プリント基板4を構成する遮蔽部、コイル状の配線10、略半リング状の配線30には、様々な種類があるので、説明した以外の組み合わせにしてもよい。
【0175】
(電流・電圧検出器3を取り付ける際の効果)
図30は、電流・電圧検出器3を取り付ける際の説明図である。この図30において、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、例えば、インピーダンス整合装置63内に取り付けられた状態になっているものとする。また、図面を簡略化するために、電力伝送用導電体66等の周辺にある他の構成部品の図示を省略している。
【0176】
さて、上記のように電力伝送用導電体66等が、筐体に設けられた略半円柱形の凹部303に隣接するように配置することができると、電流・電圧検出器3と電力伝送用導電体66等とを同時に取り付ける必要がない。すなわち、図30(a)のように、既に電力伝送用導電体66等が装置内に取り付けられている場合でも、図30(b)のように、後から電流・電圧検出器3を取り付けることができる。また、図30(b)のように、電流・電圧検出器3が、電力伝送用導電体66等に取り付けられた状態から、図30(a)のように、電力伝送用導電体66等を取り外すことなく、電流・電圧検出器3を取り外すことができる。
【0177】
(電流・電圧検出器3を2つ用いる場合)
図31は、2つの電流・電圧検出器3を、それぞれの略半円柱形の凹部303が対向するように配置した例である。
このように配置すると、例えば、電流・電圧検出用プリント基板4に設けたコイル状の配線10を、電流・電圧検出器3毎に別の特性のものにすることができる。そのため、電流・電圧検出用プリント基板4に、図1に示した電流検出用プリント基板1のように、1種類のカレントトランスだけを形成する場合であっても、図5、図7で説明したような複数のカレントトランスを形成するプリント基板のように、複数の周波数に対応できるようになる。もちろん、図5、図7で説明したように、電流・電圧検出用プリント基板4に複数のカレントトランスを形成してもよい。その場合は、さらに、周波数の種類を増やすことができる。
【0178】
また、電流・電圧検出器3を、略同一特性のものにすることもできる。この場合、同一の検出点で略同一特性の検出器を用いることになるので、双方の検出値は略同じである。そのため、たとえ、一方の電流・電圧検出器3が故障しても、他方の電流・電圧検出器3を使用できるので、信頼性を向上させることができる。
【0179】
また、これまでの説明では、電力伝送用導電体66、68が、例えば、円筒形状の銅製の棒、すなわち、断面が円形のものとして説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、断面が楕円形や長方形のものであってもよい。
【0180】
また、これまでの説明では、電流・電圧検出用プリント基板4の切欠部401や筐体本体300に設けられた切欠部304は、略半円形であるとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、半円形よりも円形に近い形状にしてもよい。しかし、略半円形にすると、例えば、図31で説明したようなことが可能になるので好ましい。
また、コイル状の配線10、略半リング状の配線30の形状も、略半円形に限定されるものではなく、切欠部401の形状等に合わせて、変形することが可能である。例えば、切欠部401が、半円形よりも円形に近い形状であった場合、それに合わせて、コイル状の配線10、略半リング状の配線30の形状を、半円形よりも円形に近い形状にさせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、電流検出用プリント基板1の一例を示す図である。
【図2】図2は、交流電流が流れる電力伝送用導電体66および電力伝送用導電体66を覆う絶縁体69が、電流検出用プリント基板1に設けられた切欠部101に隣接するように配置された場合を示す概略図である。
【図3】図3は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
【図4】図4は、コイル状の配線10の他の例を示す図である。
【図5】図5は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
【図6】図6は、図5に示した電流検出用プリント基板1の結線図である。
【図7】図7は、電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1のコイル状の配線10−1及び第2のコイル状の配線10−2の配置例を示す図である。
【図9】図9は、電圧検出用プリント基板2の一例を示す図である。
【図10】図10は、電圧検出用プリント基板2の他の一例を示す図である。
【図11】図11は、略半リング状の配線30の他の一例である。
【図12】図12は、本発明に係る電流・電圧検出用プリント基板4の一例を示す図である。
【図13】図13は、本発明に係る電流・電圧検出用プリント基板4の他の一例を示す図である。
【図14】図14は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の配線の様子を示す図である。
【図15】図15は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。
【図16】図16は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。
【図17】図17は、略半リング状の配線30に接続される出力配線40の他の配線の様子を示す図である。
【図18】図18は、電流・電圧検出器3を立体的に示した概略の外観図である。
【図19】図19は、図18に示した電流・電圧検出器3の概略構成図である。
【図20】図20は、筐体本体300の図である。
【図21】図21は、筐体本体300を立体的に図示した図である。
【図22】図22は、蓋301を取り付けない状態で、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体本体300に取り付けたときの図である。
【図23】図23は、基板固定部315を設けない場合の筐体本体300を立体的に図示した図である。
【図24】図24は、第3筐体遮蔽部308の応用例の一例である。
【図25】図25は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の一例である。
【図26】図26は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
【図27】図27は、電流・電圧検出用プリント基板4を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
【図28】図28は、電流・電圧検出器3の変形例である電流・電圧検出器3aを示すものである。
【図29】図29は、電流・電圧検出器3の変形例である電流・電圧検出器3bを示すものである。
【図30】図30は、電流・電圧検出器3を取り付ける際の説明図である。
【図31】図31は、2つの電流・電圧検出器3を、それぞれの略半円柱形の凹部303が対向するように配置した例である。
【図32】図32は、インピーダンス整合装置が用いられる高周波電力供給システムの一例のブロック図である。
【図33】図33は、インピーダンス整合装置63の入力端から整合回路67までの間に設けられる電流検出器80および電圧検出器90の概略の回路図である。
【図34】図34は、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路と出力端との間に設ける場合の回路図である。
【図35】図35は、電流検出用プリント基板1’を示す図である。
【図36】図36は、電圧検出用プリント基板2’を示す図である。
【図37】図37は、電流・電圧検出器3cの概略の外観図である。
【図38】図38は、図37に示した電流・電圧検出器3cの概略構成図である。
【図39】図39は、図37(b)に示した電流・電圧検出器3cの断面図である。
【符号の説明】
【0182】
1 電流検出用プリント基板
2 電圧検出用プリント基板
3 電流・電圧検出器
3a 電流・電圧検出器
3b 電流・電圧検出器
10 コイル状の配線
10−1 第1のコイル状の配線
10−2 第2のコイル状の配線
11 スルーホール
12 パターン配線
13 パターン配線
21 出力配線
22 出力配線
23 出力端子
24 出力端子
25 出力配線
26 出力配線
30 略半リング状の配線
31 基板を貫通するスルーホール
32 パターン配線
33 パターン配線
34 パターン配線
35 パターン配線
36 パターン配線
37 パターン配線
38 パターン配線
40 出力配線
41 出力端子
42 出力配線
51 電流用変換回路
52 出力配線
53 電圧用変換回路
54 出力配線
66 電力伝送用導電体
69 電力伝送用導電体66を覆う絶縁体
80 電圧検出器
81 カレントトランス部
84 電流用変換回路
90 電圧検出器
91 コンデンサ部
91b コンデンサ部の電極
93 電圧用変換回路
101 切欠部
110 絶縁体部
111 第1絶縁体部
112 第2絶縁体部
113 第3絶縁体部
121 基板の表面
122 基板の裏面
131 第1導体層
132 第2導体層
201 切欠部
211 第1絶縁体部
212 第2絶縁体部
213 第3絶縁体部
221 基板の表面
222 基板の裏面
231 第1導体層
232 第2導体層
300 筐体本体
301 蓋
303 略半円柱形の凹部
304 切欠部
306 第1筐体遮蔽部
307 第2筐体遮蔽部
308 第3筐体遮蔽部
311 凹部
312 凹部
315 基板固定部
316 配線用の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流と前記電力伝送用導電体に生じる交流電圧とを検出するための電流・電圧検出用プリント基板であって、
基板に設けた切欠部と、
前記切欠部の周囲に配置された電圧検出を行うための第1配線と、
前記第1配線の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、
前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための第2配線と、
を備えた電流・電圧検出用プリント基板。
【請求項2】
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略半円形に配置することによって形成されている請求項1に記載の電流・電圧検出用プリント基板。
【請求項3】
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている請求項1に記載の電流・電圧検出用プリント基板。
【請求項4】
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流と前記電力伝送用導電体に生じる交流電圧とを検出するための電流・電圧検出器において、
基板に設けた切欠部と、前記切欠部の周囲に配置された電圧検出を行うための第1配線と、前記第1配線の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための第2配線とを含む電流・電圧検出用プリント基板と、
前記電流・電圧検出用プリント基板を内部に固定するとともに、前記電力伝送用導電体を前記基板に設けた切欠部に隣接できるようにした導電体製の筐体と、
を備えた電流・電圧検出器。
【請求項5】
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されている請求項4に記載の電流・電圧検出器。
【請求項6】
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている請求項4に記載の電流・電圧検出器。
【請求項7】
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部および前記筐体によって、一部遮蔽しない部分を含む遮蔽部を形成している請求項4〜請求項6のいずれかに記載の電流・電圧検出器。
【請求項8】
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板の表面と裏面との間に設けられている請求項7に記載の電流・電圧検出器。
【請求項9】
前記電流・電圧検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板と筐体との間に設けられている請求項7に記載の電流・電圧検出器。
【請求項10】
前記筐体は、前記電流・電圧検出用プリント基板を固定する筐体本体と、前記筐体本体に対応する蓋部と、からなる請求項4〜請求項9のいずれかに記載の電流・電圧検出器。
【請求項11】
前記第1配線は、前記切欠部の周囲に、基板の最上層と最下層との間または基板の一部分の層間を貫通するスルーホールを複数設け、かつ貫通した部分の最上層から最下層の内の少なくとも1つの層に前記スルーホール部を繋げるようにパターン配線を設けたものである請求項4〜請求項10のいずれかに記載の電流・電圧検出器。
【請求項12】
前記交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力である請求項4〜請求項11のいずれかに記載の電流・電圧検出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2009−85783(P2009−85783A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256394(P2007−256394)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】