説明

電流信号入力型単一磁束量子回路

【課題】磁束量子を情報担体とする単一磁束量子回路において、クロッタジッタの少ないSFQクロック信号を発生させ、且つ、そのSFQクロック信号をSFQ回路の構成SFQ機能回路に供給する。
【解決手段】電流信号をSFQ信号に変換する機能と、被比較電流の大きさに応じてSFQデータ信号を出力するコンパレータ機能を同時実現できる電流信号入力型単一磁束量子回路でSFQ機能回路を構成する。同時に、直流電圧の大きさに応じてSFQクロック信号を生成するSFQクロック信号発信回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一磁束量子回路に関わり、単一磁束量子回路への高周波クロック信号供給およびクロック信号発生の手段に関わる。
【背景技術】
【0002】
単一磁束量子(Φ=h/2e=2.05×10−15Weber)を情報担体とする単一磁束量子(SFQ:Single Flux Quantum)回路は、数10ギガヘルツ(10Hz)以上の超高速動作と、ゲートあたり数マイクロワット(μW)以下の低消費電力特性を特徴とする超電導回路である。アイトリプリイィ、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ1巻1号(1991年)1頁(IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.1, No.1 (1991) p.1)、に示される原理に基づいて、これまで種々の論理ゲートが開発され、これらを組み合わせた実用回路の開発が広く進められている。
【0003】
SFQ回路の応用として、アナログ/デジタル(A/D:Analog/Digital)変換器がある。SFQ回路の特長である高速性を活かすため、変換方式はオーバーサンプリング方式がとられる。帯域より十分高い周波数、少数ビット精度でアナログ信号をサンプリングし(オーバーサンプリング)、次にサンプリングデータ信号をデシメーションフィルタにて信号処理することで、必要な周波数帯域において高精度なデジタル信号を得る。
【0004】
SFQ回路に基づくオーバーサンプリング方式について、シグマデルタ型変調が米国特許5140324号明細書および文献アイトリプリイィ、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ3巻1号(1993年)2732頁(IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.3, No.1 (1993) P.2732)、で公開されている。また、デルタ型変調がアイトリプリイィ、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ5巻2号(1995年)2260頁(IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.5, No.2 (1995) P.2260)、に示されている。
【0005】
一般的にSFQ回路では、SFQ回路を構成するSFQ機能回路の動作タイミングを合わせるために、SFQパルス列で構成したSFQクロック信号を各SFQ機能回路へ伝播させる。ここで、SFQ機能回路とはSFQ回路を構成する回路要素のひとつであるが、後述する比較回路、リセット−セットフリップフロップ回路、あるいは、A/D変換器のようなひとつの纏まった働きを持つ回路である。各SFQ機能回路は、供給されたSFQクロック信号をトリガ信号として利用し、回路動作をSFQクロック信号と同期させる。1つのクロック信号源から複数のSFQ機能回路に同じSFQクロック信号を供給することで、各SFQ機能回路の動作を1つのSFQクロック信号と同期させる。
【0006】
SFQ回路をA/D変換器に応用する場合も同様に、オーバーサンプリングクロック信号として、数10GHz以上周波数をもつSFQクロック信号をSFQ回路で構成したアナログ信号サンプリング回路や変調器に供給する。
【0007】
これまで、SFQクロック信号の生成には、SFQ回路の外部の半導体発振器を用いる方法とSFQ回路内部のリング型発振器を用いる方法が提案されている。
【0008】
前者の方式に基づくクロック信号供給回路を図1(A)に、クロック信号供給回路で使用されるdc/SFQコンバータ回路の例を図1(B)に、それぞれ、示す。また、回路内の各波形を図1(C)に示す。
【0009】
まず、半導体発振器101で正弦波または矩形波の電流クロック信号110を生成する。図1(C)では、一例として台形波を示した。発生させた電流クロック信号を同軸ケーブル、マイクロストリップライン等で低温環境下のSFQ回路102まで導く。SFQ回路102では、dc/SFQコンバータ103でSFQクロック信号111に変換される。
【0010】
図1(B)に示すdc/SFQコンバータ103では、電流クロック信号110が入力インダクタ122と磁場結合した量子化インダクタ125に誘導され、量子化インダクタ125、ジョセフソン接合123およびジョセフソン接合124で構成される超電導ループに時計周りの周回電流126を流す。入力される電流クロック信号110の電流レベルが上昇するにつれて、超電導ループ側に誘導された周回電流126も同様に上昇する。この周回電流126とバイアス電流源121からの電流の合計値がジョセフソン接合123の臨界電流値よりも大きくなったとき、ジョセフソン接合123が電圧状態に遷移する。これにより、ジョセフソン接合123からジョセフソン接合124へと、またコンバータの出力側へと電流が流れる。ジョセフソン接合124へ向かった電流は、ジョセフソン接合123、ジョセフソン接合124およびインダクタ122で構成される超電導ループを永続的に流れる反時計回りの周回電流127となる。この周回電流127は、入力電流クロック信号で誘導された周回電流126とは逆向きであるため、周回電流126は見かけ上消失し、ジョセフソン接合123に流れる電流は臨界電流値を下回ることになる。このため、電圧状態であったジョセフソン接合は再びゼロ電圧状態に戻る。ジョセフソン接合がゼロ電圧状態から電圧状態へ遷移し、再びゼロ電圧状態に戻るまでの動作を以降、“接合がスイッチする”と表現することとする。この接合のスイッチは、数psのうちに行われ、バイアス電流源121との接続点128に電圧パルスであるSFQパルスが生成される。
【0011】
一方、上昇していた入力電流クロック信号が減少に転ずると、時計回りの周回電流126が減少し、反時計回りの周回電流127が増加し始める。この周回電流127がジョセフソン接合124の臨界電流値を越えると、ジョセフソン接合124がスイッチし周回電流127が消失する。この時点で回路は初期状態に戻る。
【0012】
すなわち、入力される電流クロック信号の立ち上がり電流クロック信号の電流レベルがコンバータの閾値を越えた瞬間に、1個のSFQパルスが生成されることになる。よって、dc/SFQコンバータ103に電流クロック信号110を入力すると、入力した電流クロック信号の周期と同じ間隔のSFQパルス列が得られる。このSFQパルス列をSFQクロック信号111として利用する。
【0013】
生成したSFQクロック信号111はジョセフソン伝送線路104を通して分岐回路105に送られ、2つのSFQクロック信号111、SFQクロック信号111に複写され、ジョセフソン伝送線路104,104を通してSFQ機能回路106,106まで伝送される。図1(A)では、2個のSFQ機能回路106および106にSFQクロック信号が分配されることを想定している。
【0014】
一方、後者のSFQクロック信号の生成法に基づくクロック信号供給回路を図2(A)に示し、回路内の各波形を図2(B)に示す。
【0015】
図2(A)に示すように、外部から供給される電流トリガ信号220は、dc/SFQコンバータ201にて、1つのSFQパルスで構成されるSFQトリガ信号221に変換される。SFQトリガ信号221は、ジョセフソン伝送線路202を伝播してSFQトリガ信号221として、リングオシレータ回路200へ供給される。リングオシレータ回路200は、SFQトリガ信号221によって発振動作を開始する。合流回路204より入力されたSFQトリガ信号221は、SFQトリガ信号221としてジョセフソン伝送線路203を走行する。ジョセフソン伝送線路203から出力されたSFQトリガ信号221が分岐回路205を通過するとき、1個のSFQクロック信号222が新たに複写されて、リングオシレータ回路200から出力される。元のSFQトリガ信号221は分岐回路205からSFQトリガ信号221として出力され、ジョセフソン伝送線路203を走行してSFQトリガ信号221として出力される。SFQトリガ信号221は合流回路204へ戻るとともに、再び、SFQトリガ信号221として出力されるから、リングオシレータ回路200に入力されたSFQトリガ信号221がリング状に配置したジョセフソン伝送線路203,203を周回することにより、分岐回路205からは、SFQパルス列が得られる。リングオシレータ回路200で得られたSFQパルス列をSFQクロック信号222として用い、ジョセフソン伝送線路206を通してSFQクロック信号222を分岐回路207に送る。分岐回路207では2つのSFQクロック信号222、222を得て、これらをジョセフソン伝送線路206、206を通してSFQクロック信号222、222としてSFQ機能回路208、208に供給する。SFQパルス列の間隔は、SFQがジョセフソン伝送線路203を走行する周期と一致するため、ジョセフソン伝送線路203の長さを調節して数10GHzのSFQクロック信号を生成する。
【0016】
【特許文献1】米国特許5140324号明細書
【非特許文献1】IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.1, No.1 (1991) p.1
【非特許文献2】IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.3, No.1 (1993) P.2732
【非特許文献3】IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.5, No.2 (1995) P.2260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
A/D変換器を含め、すべてのSFQ回路において、SFQクロック信号を正確な時間で各SFQ機能回路へ伝播させる必要がある。とくに、A/D変換器の場合は変換器の高精度化、広帯域化を実現するために、アナログ信号のサンプリング時間は正確でなければならない。このため、SFQ回路に供給するクロック信号は高速であると同時に、クロックジッタ、つまりSFQパルスの時間間隔の揺らぎが小さいことが要求される。
【0018】
従来技術では、半導体回路の発振器またはSFQ回路のリングオシレータ回路で生成した高周波のSFQクロック信号をジョセフソン伝送線路、分岐回路により伝播させて、SFQ回路内の各SFQ機能回路へ分配する方法が用いられていた。図3(A)にジョセフソン伝送線路の等価回路を示す。ジョセフソン伝送線路はジョセフソン接合301とバイアス電流源304およびインダクタ302からなる単位回路303が直列に接続されて構成される。SFQ信号320が入力側より進入すると、ジョセフソン伝送線路内のジョセフソン接合が301、301、301と、左から右へ順次スイッチし、このスイッチに合わせてSFQは移動する。最終的にSFQは出力側に達し、SFQ信号320が出力される。この動作原理により、ジョセフソン伝送線路はSFQ信号を入力端子から出力端子に伝播させる。
【0019】
図3(B)に示した分岐回路307は、ジョセフソン伝送線路の単位回路303と同様の回路構成であり、ジョセフソン接合301、2つのインダクタ302、302およびバイアス電流源304で構成される。単位回路303を介して入力された1つのSFQ信号320を複写して、インダクタ302、302および単位回路303、303を介して2つのSFQ信号320と320を得る。
【0020】
図3(C)に示すように、バイアス電流源304はバイアス抵抗305とバイアス電圧源306で代用されることが多い。なお、ジョセフソン接合にとって、バイアス電流源は不可欠な構成要素であるが、ジョセフソン接合にバイアス電流を供給するものと見ればよい場合には、必要でない限り言及しない。
【0021】
しかし、ジョセフソン伝送線路、分岐回路にはクロック信号であるSFQパルス列がジョセフソン接合を伝播するに従い、クロックジッタが増大するという問題点がある。ジョセフソン接合がスイッチするタイミングは、SFQが接合へ進入する時間とそのジョセフソン接合の位相状態により決定される。この位相状態は1つ前に進入したSFQによるジョセフソン接合のスイッチにより、ジョセフソン接合がもつプラズマ振動周期(0.1ps程度)に揺らぐ。また、接合自身が持つ抵抗成分およびバイアス抵抗で発生する熱雑音の影響を受けて揺らぐ。このため、時間間隔を正確に一致させたSFQパルスをジョセフソン接合に進入させても、スイッチするタイミングの間隔は揺らぐ。これが1つのジョセフソン接合で発生するクロックジッタである。
【0022】
クロックジッタは、SFQパルスがジョセフソン伝送線路を伝播するうちに徐々に大きくなる。文献アイトリプリイィ、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ(IEEE Trans. on Appl. Supercond.)11巻1号(2001年)288頁によると、4.2Kの温度環境、接合L個で構成されたジョセフソン伝送線路において、クロックジッタが0psのSFQクロック信号入力に対して、出力端におけるSFQクロック信号のクロックジッタの大きさΔtは(1)式のように示される。
【0023】
【数1】

一方、A/D変換器に供給するサンプリングクロック信号の許容される最大のクロックジッタとA/D変換の変換ビット精度Nと帯域fBWの関係は(2)式のように示される。
【0024】
【数2】

たとえば、目標帯域fBWを10MHz、変換ビット精度Nを14bitと定めた場合、許容できるクロックジッタは(2)式より、2.0psとなる。A/D変換器をSFQ回路で構成し、かつクロック信号源にクロックジッタがないと仮定した場合、クロック信号源と変調器を結ぶジョセフソン伝送線路を構成するジョセフソン接合数Lは、(1)式より最大100である。しかし、目標帯域fBWを10MHz、変換ビット精度Nを16bitと定めた場合、許容できるクロックジッタは0.5psであり、ジョセフソン接合の接続数Lは6程度に限定される。
【0025】
クロック信号源の個数とクロック信号を必要とするSFQ機能回路の個数が1:1であり、かつ要求される変換精度が低い場合は、ジョセフソン伝送線路を可能な限り最短で配線することでクロックジッタの影響を回避できる。しかし、複数のSFQ機能回路がある場合、伝送経路の途中に分岐回路が必要となるため経路が長くなる。このため、クロックジッタの影響をさけることは非常に困難となる。
【0026】
ジョセフソン伝送線路によるクロックジッタを低減させる従来技術として、受動伝送線路がある。文献アイトリプリイィ、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ13巻2号(2002年)535頁(IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.13, No.2, (2002) P.535)に示されるように、SFQ信号を受動伝送線路、つまりマイクロストリップラインで伝送する方法である。ストリップライン上では原理的にクロックジッタは生じないため、SFQクロック信号の長距離伝送には有効である。
【0027】
しかし、この伝送方法ではSFQ機能回路からのSFQパルスをマイクロストリップラインに送出するためのドライバ回路、またマイクロストリップラインからSFQ信号を得るためのレシーバ回路が必要となる。これらの回路は、ジョセフソン伝送線路に類似した構造を持ち、それぞれ1段から3段程度の接合を有する。さらに、SFQ信号の分岐をマイクロストリップラインのみで実現することは困難であり、レシーバ回路、分岐回路およびドライバ回路を増設する必要がある。このため、マイクロストリップライン上のクロックジッタが0であっても、伝送系全体では接合数が3から数10個程度のジョセフソン伝送線路に相当するクロックジッタが生じる。
【0028】
さらに、リングオシレータ発振回路で生成されるクロック信号はそれ自体にクロックジッタを含んでいる。SFQトリガ信号がジョセフソン伝送線路を何度も巡回するためである。このため、高周波かつ高精度なクロック信号の生成手段としてリングオシレータ回路を用いるのは適切ではない。
【0029】
以上のことから、SFQ回路における従来のクロック信号供給方法ではクロックジッタの影響を減少させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記問題に対して、本発明では、電流信号をSFQ信号に変換する機能と、被比較電流の大きさに応じてSFQデータ信号を出力するコンパレータ機能とを同時に実現できる電流信号入力型単一磁束量子回路を構成し、これをSFQ機能回路の主要な回路要素とする。このことにより、SFQ機能回路は伝播されたSFQクロック信号を不要とする。また、高周波SFQクロック信号が必要な場合は、直流電圧の大きさに応じてSFQクロック信号をダイレクトに生成するSFQクロック信号発振回路を構成するものとする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、磁束量子を情報担体とする単一磁束量子回路において、回路を構成するSFQ機能回路にジョセフソン伝送路を用いる必要がない。このため、クロックジッタのない、あるいは、クロックジッタを最小限に抑えたクロック信号によりSFQ機能回路を動作させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図4(A)は本発明で提案する電流信号入力型単一磁束量子回路を示す。回路は、ジョセフソン接合411および412の接合対で構成されるコンパレータ401と、コンパレータ401に接続される量子化インダクタ402と量子化接合403の直列回路と量子化インダクタ402に磁場結合している入力インダクタ404で構成されるSFQ信号の生成回路と、より構成される。電流信号入力型単一磁束量子回路の原理は、入力インダクタ404に加えられる電流クロック信号420の立ち上がりに同期してSFQ信号を生成する機能と、この生成されたSFQ信号をもとに電流の比較を行うコンパレータ機能を同時に実現することである。SFQ信号の生成部分とコンパレータは直結されるから、ジョセフソン伝送線路は全く用いられないため、クロックジッタは発生しない。
【0033】
電流信号入力型単一磁束量子回路の詳細な動作について以下に説明する。2つのジョセフソン接合411および412を直列に接続した接合対よりなるコンパレータ401の一端431はバイアス電流源405に、他端は接地される。この2つのジョセフソン接合の接続点432には、比較対象となる被比較電流421を入力し、同接続点から比較結果であるSFQデータ信号422を得る。コンパレータ401の閾値は、構成するジョセフソン接合411および412の臨界電流値、バイアス電流源405から供給されるバイアス電流により決定される。接合対401の一端431とバイアス電流源405の接続点には量子化インダクタ402と量子化接合403の直列回路の一端が接続され、他端が接地される。量子化インダクタ402と磁場結合している入力インダクタ404には電流クロック信号420が加えられる。
【0034】
量子化インダクタ402、量子化接合403および入力インダクタ404は、コンパレータ401とともに、入力される電流クロック信号420からSFQクロック信号を生成する機能を有する。入力インダクタ404に、図1(C)あるいは図2(B)に示すような、電流クロック信号つまり正弦波またはその高調波を含んだ(たとえば矩形波)に相当する電流信号を入力する。この電流クロック信号は、入力インダクタ404と磁場結合した量子化インダクタ402に誘導され、量子化インダクタ402、コンパレータ401および量子化接合403で構成される超電導ループに時計周りの周回電流423を流す。入力される電流クロック信号420の電流レベルが上昇するにつれて、超電導ループ側に誘導された周回電流423も同様に上昇する。この周回電流がSFQ1個に相当する周回電流に等価となったとき、コンパレータを構成する2つのジョセフソン接合411または412のいずれかがスイッチする。これは、1個のSFQがコンパレータ401に供給されたことを意味する。また、ジョセフソン接合411または412のいずれかのスイッチにより周回電流423は消失する。上昇していた電流クロック信号420が減少に転ずると、超電導ループには今度は半時計周りの破線で示す周回電流が生じる。電流クロック信号の減少に伴い、この周回電流が量子化接合403の閾値を越えると、量子化接合403がスイッチし周回電流が消失する。この時点で回路は初期状態に戻る。結果として、電流信号入力型単一磁束量子回路は、ジョセフソン伝送線路を用いないで入力クロック電流信号からSFQを1つ生成し、直接コンパレータ401にSFQを供給する機能を提供する。
【0035】
ここで、コンパレータ401の動作を説明する。被比較電流421は接続点432に流入すると、ジョセフソン接合412の方に流れる電流と、ジョセフソン接合411、量子化インダクタ402および量子化接合403の方に流れる電流とに分流する。したがって、ジョセフソン接合411とジョセフソン接合412とが、全く同じ特性であるとしても、ジョセフソン接合412の方に流れる電流が大きくなる。さらに、ジョセフソン接合411とジョセフソン接合412には、バイアス電流源405によるバイアス電流が重畳して流れる。バイアス電流は、ジョセフソン接合411では、分流する被比較電流421と逆方向に流れる。したがって、被比較電流421がコンパレータの閾値より大きい場合を仮定すると、周回電流423が大きくなる過程で、ジョセフソン接合412がスイッチしてSFQ信号がSFQデータ信号422として出力端子より出力される。
【0036】
一方、被比較電流421がコンパレータ401の閾値より小さい場合は、SFQデータ信号422が出力することは阻止されなければならない。そのためには、周回電流423に対して、ジョセフソン接合411がスイッチすることが必要である。そのためには、ジョセフソン接合411の臨界電流が、ジョセフソン接合412のそれより小さくなるように、それぞれの接合を作成すればよい。すなわち、ジョセフソン接合411の接合面積を小さくすれば良い。さらには、特性の調整のために、バイアス電流源405によるバイアス電流を調整するのが良い。
【0037】
実際問題として、ジョセフソン接合411および412を全く同一特性に製作することはできないから、ジョセフソン接合411の臨界電流が、ジョセフソン接合412のそれより小さくなるように、それぞれの接合を設計して、さらにバイアス電流源405によってバイアス電流を調整すれば、コンパレータ401の閾値を適宜選択して動作させることができる。
【0038】
図4(B)は、図4(A)で説明した電流信号入力型単一磁束量子回路のコンパレータ401を4接合型コンパレータ408に置き換えた実施例を示す図である。コンパレータ408には、コンパレータ401を構成するジョセフソン接合411および412の接合対の他にジョセフソン接合413および414の接合対が設けられ、各接合対の一端は接地され、他端はインダクタで結合されて、バイアス電流源405に接続される。被比較電流421はジョセフソン接合411および412の接続点432に導入され、ジョセフソン接合413および414の接続点433には量子化インダクタ402と量子化接合403の直列回路の一端が接続され、他端が接地される。量子化インダクタ402と磁場結合している入力インダクタ404には電流クロック信号420が加えられる。
【0039】
電流クロック信号420の立ち上がりで、量子化インダクタ402に周回電流423が流れ、電流クロック信号420の周期に一致したSFQパルスがコンパレータ408のジョセフソン接合413、414よりなる接合対の接続点433に供給される。その結果、ジョセフソン接合414がスイッチして、ジョセフソン接合411と412よりなる接合対にSFQパルスが供給される。このとき、被比較電流421がコンパレータ408の閾値を越えない場合は、ジョセフソン接合411がスイッチし出力端子にSFQデータ信号422は出力されない。一方、被比較電流421が閾値を越えた場合は、ジョセフソン接合412がスイッチし出力端子にSFQデータ信号422が出力される。また、電流クロック信号420の立下りでは、反時計回りの周回電流424が増加するが、量子化接合403のスイッチにより、周回電流424は消失し回路は初期状態に戻る。
【0040】
コンパレータ401,408のようなSFQ機能回路が複数回路存在するSFQ回路の場合に、各SFQ機能回路へ1つの入力電流クロック信号に対応したSFQクロック信号を供給するには、各SFQ機能回路の電流信号入力型単一磁束量子回路の入力インダクタを直列または並列に接続する。入力電流クロック信号は、接続されたすべてのSFQ機能回路の入力インダクタに供給され、すべての入力インダクタに電流クロック信号に対応した周回電流を同時に誘導させればよい。結果として、すべてのSFQ機能回路の動作を1つの入力電流クロック信号と同期させることができる。より具体的な例は、図13、図14に示すリセット−セット型フリップフロップ回路例において説明する。
【0041】
次に、高周波クロックの生成方法について説明する。図5にクロック信号発生回路を示す。回路は積分インダクタ501と積分抵抗502からなる積分器503、量子化接合504およびバイアス電流源505で構成される。以下にクロック信号発生回路の動作を説明する。
【0042】
積分抵抗501に所定の直流電圧520をかけ、この直流電圧が積分インダクタ501と積分抵抗502で構成された積分回路503により積分される。積分結果はインダクタ501に流れる周回電流521に反映され、量子化接合504に流れ込む。入力した直流電圧が積分されるに従い、積分値つまり周回電流521が上昇する。周回電流521とバイアス電流源505からのバイアス電流522の合計が量子化接合504の臨界電流値を越えた時点で量子化接合504がスイッチし、SFQ信号523が出力される。同時に量子化接合504のスイッチにより、積分回路503にSFQ1個に相当する周回電流がフィードバックされ、積分インダクタ501の周回電流521が減少する。この時点で積分インダクタ501の周回電流521は量子化接合504の臨界電流値を下回るため、直流電圧の積分動作に戻る。結果として周回電流を上昇させる積分動作とそれを減ずる接合のスイッチ動作の繰り返しにより回路は均衡状態になる。スイッチ動作の周期Tと入力された直流電圧VINの関係は(3)式で表される。
【0043】
【数3】

図5に示すクロック信号発振回路は量子化接合504、つまりジョセフソン接合1個でクロック信号を生成するために、発生する原理的なクロックジッタはジョセフソン接合1個分である。多数の接合で構成したジョセフソン伝送路を用いるリングオシレータ回路よりクロックジッタを小さくできる。
【0044】
このクロック信号発振回路からクロック信号を得る方法は3つある。第1の方法は積分インダクタ501に流れる周回電流521を電流クロック信号として利用する方法である。周回電流501は入力直流電圧520の積分時に上昇しジョセフソン接合504からのフィードバックで下降する動作の繰り返しにより回路は均衡状態になる。すなわち、積分インダクタ501の周回電流521は周期的に増減するから、図1(C)に示す電流クロック信号110と同じ振る舞いをする。積分インダクタ501を、図4で説明した電流信号入力型単一磁束量子回路の入力インダクタ404として量子化インダクタ402と磁場結合させることで、図5に示すクロック信号発振回路で生成された電流クロック信号(周回電流521)を、図4に示す電流信号入力型単一磁束量子回路の量子化インダクタ402に誘導することができる。
【0045】
この場合、図4に示す電流信号入力型単一磁束量子回路のコンパレータ401で説明したのと同様に、1つの積分インダクタ501に、複数のSFQ機能回路の電流信号入力型単一磁束量子回路の量子化インダクタ402を磁場結合させることで、複数のSFQ機能回路をクロック信号発振回路の電流クロック信号521に複数のSFQ機能回路の動作を同期させることが可能となる。
【0046】
クロック信号発振回路からクロック信号を得る第2の方法は、量子化接合から得られるSFQパルスを直接利用する方法である。量子化接合からは、(3)式で与えられる間隔を持つSFQパルス列が得られる。このSFQパルス列をSFQクロック信号として用いる。クロックジッタの影響を考慮しない場合は、クロック信号発振回路の出力端子にジョセフソン伝送線路を接続してSFQ機能回路にSFQクロック信号を伝送する。
【0047】
第3の方法は、クロックジッタの影響を最小限に抑えるため、ジョセフソン伝送路を用いずにSFQ機能回路に伝播させる。図5の回路における量子化接合504を2つのジョセフソン接合611,612が直列に接続されたコンパレータ604に置き換えた図6の回路がその例である。図6の回路は、上述した図4に示す電流信号入力型単一磁束量子回路の量子化インダクタ402と量子化接合403の直列回路と量子化インダクタ402に磁場結合している入力インダクタ404で構成されるSFQ信号の生成回路の部分をクロック信号発振回路で置き換えたものであり、クロック信号の生成機能とコンパレータの機能を備える。
【0048】
図6の回路の動作は以下の通りである。入力された電流クロック信号620は積分インダクタ601と積分抵抗602で構成される積分器603により積分され、積分インダクタ601に流れる周回電流621として反映される。時間の経過とともに積分値つまり周回電流621の値が上昇し、バイアス電流622との合計電流が、SFQ1つ分の電流値を超えると、コンパレー604を構成する直列接続された2つのジョセフソン接合611、612の何れかがスイッチする。これはコンパレータ604を構成する接合対に1つのSFQ信号を供給したことを意味する。このスイッチ動作により、積分回路603にはSFQ1つ分の周回電流がフィードバックされる。これは、図5において、積分インダクタ501の周回電流521について説明したのと同じである。すなわち、積分インダクタ601の積分動作、ジョセフソン接合611、612の接合対のスイッチング動作およびフィードバック動作により、周期的にSFQをコンパレータ604に供給することが可能となる。
【0049】
一方、コンパレータ604の2つのジョセフソン接合611と612の接続点632に入力される被比較電流624の大きさにより、コンパレータ604にSFQパルスが供給されたときに、ジョセフソン接合611と612のどちらがスイッチするかは、図4に示すコンパレータで説明したのと同じである。すなわち、被比較電流624がコンパレータ604の閾値より大きい場合、ジョセフソン接合612がスイッチし、SFQデータ信号625が出力される。被比較電流がコンパレータの閾値より小さいときは、ジョセフソン接合611がスイッチし、SFQデータ信号625が出力されることはない。これによりコンパレータ動作を実現する。以上の回路動作によって、高周波SFQクロック信号の生成とコンパレータ動作を同時に実現する。
【0050】
上述した例でも分かるように、SFQ回路では、SFQクロック信号を必要とするすべてのSFQ機能回路が、その内部に電流信号を比較するコンパレータを有する。例えば、A/D変換器を構成する変調器においては、回路内にアナログ信号またはフィードバックループの電流を被比較電流とするコンパレータを1つ以上有する。また、フリップフロップ回路においては、回路内に状態変数を記憶するストレージループを有し、そのループに流れる周回電流を被比較電流とするコンパレータが1つ以上存在する。つまり、SFQクロック信号はSFQ機能回路内にて必ずコンパレータ回路に入力される。よって、SFQ回路の各SFQ機能回路にSFQクロック信号を供給することは、各SFQ機能回路のコンパレータにSFQクロック信号を供給することを意味する。
【0051】
以下に本願発明の応用について実施例により説明する。この実施例は本願発明を用いた一例であり、本願発明は本例により限定されない。
【0052】
(実施例1)
本発明で提案した電流信号入力型単一磁束量子回路をオーバーサンプリング型A/D変換器の変調器へ適用した例を図7に示す。回路は、本発明の電流信号入力型単一磁束量子回路701とアナログ信号積分回路702で構成される。
【0053】
被変換アナログ信号であるアナログ電圧信号722は積分インダクタ707および積分抵抗708で構成したアナログ信号積分回路702で積分され、積分結果は積分インダクタ707を流れる周回電流721に反映される。この周回電流721は電流信号入力型単一磁束量子回路701内のコンパレータ703に被比較電流として入力される。一方、電流信号入力型単一磁束量子回路701へ供給される電流クロック信号720により、図4で説明したように、電流クロック信号720の周期に一致したSFQパルスがコンパレータ703に供給される。被比較電流であるアナログ信号積分回路702の周回電流721がコンパレータ703の閾値を越えない場合は、コンパレータ703のジョセフソン接合411がスイッチし出力端子にSFQデータ信号723は出力されない。一方、周回電流721が閾値を越えた場合は、ジョセフソン接合412がスイッチし出力端子にSFQデータ信号723が出力される。電流クロック信号720の1周期分の期間内に、出力端子よりSFQデータ信号723が出力されない場合は、デジタルデータ“0”、SFQデータ信号723が出力された場合は、デジタルデータ“1”として定義される。
【0054】
また、ジョセフソン接合411あるいは412のいずれかのスイッチにより、以下に示す(4)式で定義されるSFQ1個に相当した電流Iが積分インダクタ707に周回電流721とは逆方向に流れ、積分インダクタ707の周回電流721を減ずる。
【0055】
【数4】

ただし、LSDAは、積分インダクタ707のインダクタンスである。
【0056】
この動作は、比較器の出力結果が積分入力にフィードバックされることを意味する。アナログ信号を積分し積分結果をコンパレータの閾値と比較し、その結果を積分器にフィードバックする一連の動作により、アナログ入力信号のシグマデルタ変調を実現する。
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様にシグマデルタ変調器を構成した。等価回路を図8に示す。本例では高温超電導体(HTS:High TC Superconductor)で変調回路を構成することを仮定している。HTSに適した回路構成とするため、電流信号入力型単一磁束量子回路801の構成を、図4(B)で示した回路構成から一部変更した。まず、電流クロック信号820は、図4(B)の入力インダクタ404、量子化インダクタ402の磁場結合に代えて、電流クロック信号820,820に示すように、量子化インダクタ804を通過する形で直接入力される。現在のHTSプロセスでは、2層の超電導体を1層の絶縁体を挟んで積層する3層構造とすることが要求されるインダクタの磁場結合の実現は困難であるためである。また、コンパレータ803には、図4(B)と同様、HTSプロセスによるSFQ回路に適した4接合型コンパレータを用いた。コンパレータからのSFQデータ信号825は、ジョセフソン伝送線路806を伝播し、SFQデータ信号825として出力される。ここでは、ジョセフソン伝送線路806のバイアス電流源304は接合2つに対して1つとした。
【0058】
図8に示す等価回路の動作の概要は以下の通りである。4接合型コンパレータ803のジョセフソン接合811と812よりなる接合対とジョセフソン接合813と814よりなる接合対は、インダクタを介してバイアス電流源に並列に接続される。各接合対にバイアス電流以外に流入する電流がないときは各ジョセフソン接合はゼロ電圧状態にある。ジョセフソン接合813と814よりなる接合対の接合の接続点には量子化インダクタ804の一端が接続される。量子化インダクタ804には、量子化接合805が接続されるとともに、電流クロック信号820が供給される。電流クロック信号820は量子化インダクタ804で積分され、これが周回電流823を流す。この周回電流823はジョセフソン接合813と814よりなる接合対の接合の接続点から流入し、ジョセフソン接合814、量子化接合805を流れる。一方、被変換アナログ信号であるアナログ電圧信号722は、図7で説明したように、積分インダクタ707および積分抵抗708で構成したアナログ信号積分回路802で積分され、積分結果は積分インダクタ707を流れる周回電流721に反映される。この周回電流721は4接合型コンパレータ803内のコンパレータ803のジョセフソン接合811と812よりなる接合対の接合の接続点に被比較電流として入力される。
【0059】
図4(B)で説明したと同様に、電流クロック信号820の立ち上がりで、量子化インダクタ804に周回電流823が流れ、電流クロック信号820の周期に一致したSFQパルスがコンパレータ803のジョセフソン接合813、814よりなる接合対の接続点に供給される。その結果、ジョセフソン接合814がスイッチして、ジョセフソン接合811と812よりなる接合対にSFQパルスが供給される。このとき、被比較電流であるアナログ信号積分回路802の周回電流721がコンパレータ803の閾値を越えない場合は、ジョセフソン接合811がスイッチし出力端子にSFQデータ信号825は出力されない。一方、周回電流721が閾値を越えた場合は、ジョセフソン接合812がスイッチし出力端子にSFQデータ信号825が出力される。電流クロック信号820の1周期分の期間内に、出力端子よりSFQデータ信号825が出力されない場合は、デジタルデータ“0”、SFQデータ信号825が出力された場合は、デジタルデータ“1”として定義される。コンパレータ803のSFQデータ信号825は電流信号入力型単一磁束量子回路801から流出してジョセフソン伝送線路806を介してSFQデータ信号825として得られる。また、電流クロック信号820の立下りで、反時計回りの周回電流が増加するが、量子化接合805のスイッチにより、周回電流は消失し回路は初期状態に戻る。
【0060】
図9(A)にHTSの作製プロセスによって、図8に示すシグマデルタ変調器を作製する回路レイアウトの例を示す。図9(B)にHTSのプロセスによって作製された接合の断面図を示した。回路は、基板910上に超電導層であるベース電極層902およびカウンタ電極層903の2層と抵抗層901とを所定のパターンで形成することで構成される。ジョセフソン接合は、図9(B)に示すように、ベース電極層902の上にカウンタ電極層903が乗り上げる形に構成された段差の部分(ランプエッジ)の接触面に形成される。911は絶縁層であり、カウンタ電極層903が乗り上げた頂上部でベース電極層902と絶縁するために設けられる。ジョセフソン接合の臨界電流値は、カウンタ電極層903の線幅で決定される。また、ベース電極層902に乗り上げるカウンタ電極層903の線幅を充分大きくとって、接合の臨界電流値を実際に流れる電流に対して十分余裕のある大きさにすることで、ベース電極層902とカウンタ電極層903間のコンタクト(電気抵抗零接続)を形成する。
【0061】
図9(A)において、抵抗層901の面上にベース電極層902,902を入れ子状にパターニングして抵抗708を構成する。抵抗値の大きさはベース電極層902,902の対向する部分の長さおよび対向する部分の距離によって決まる。ベース電極層902の端部に接地のためのコンタクトホール905が形成される。ベース電極層902の端部には乗り上げる形でカウンタ電極層903の端部が形成される。ここでは、破線で示すように長い接合部を持つジョセフソン接合として形成されるが、流れる電流よりも十分おおきな臨界電流値をもつ。このため、カウンタ電極層903とベース電極層902の乗り上げ部分は単純なコンタクトとして機能する。カウンタ電極層903の他の端部は屈曲しながら延伸され積分インダクタ707を形成する。積分インダクタ707の延伸された端部はジョセフソン伝送線路806のインダクタとなるカウンタ電極層903のパターンと連なる。カウンタ電極層903のパターンと左右対称な位置に、電流クロック820をSFQパルスに変換するための回路の量子化インダクタ804を形成するカウンタ電極層903のパターンが設けられる。カウンタ電極層903のパターンとカウンタ電極層903のパターンとの間にはベース電極層902のパターンが設けられ、カウンタ電極層903のパターンとカウンタ電極層903のパターンの端面にはベース電極層902のパターンが設けられる。ベース電極層902のパターンには接地のためのコンタクトホール905が形成される。カウンタ電極層903のパターンとベース電極層902との間には、接合811が、カウンタ電極層903のパターンとベース電極層902との間には、接合813が、それぞれ、破線で示す丸の位置に形成される。カウンタ電極層903のパターンとベース電極層902との間には、接合814,805が、カウンタ電極層903のパターンとベース電極層902との間には、接合812および参照符号を付さなかった接合が、それぞれ、破線で示す丸の位置に形成される。
【0062】
図8と対比して容易に分かるように、図9(A)に示すレイアウトによれば、図8に示す等価回路が実現できる。ここで、ベース電極層902とカウンタ電極層903とは、バイアス電流源に接続するためのパターニングも必要であるが、図が煩雑となるので、省略した。また、それぞれの接合の臨界電流値は、ベース電極層に乗り上げているカウンタ電極層の線幅を変えれば良い。
【0063】
次に、実施例2を用いた変調回路のビット精度を回路シミュレーションにより評価した。本発明におけるクロックジッタの影響低減効果を説明するため、従来技術で構成した変調器のビット精度と比較した。従来技術で構成した変調器の例を図10に示す。クロックジッタのないSFQクロック信号1020を10個のジョセフソン接合で構成したジョセフソン伝送線路1001を伝播させてから、4接合型コンパレータ803に供給した。図8と図10とを対比して明らかなように、両者は4接合型コンパレータ803に供給されるSFQパルスの形成方法を異にするだけで、他は同じである。
【0064】
回路シミュレーションでは、両回路ともにアナログ信号として波高値はフルスケールの50%、周波数は60MHzである正弦波を入力した。またサンプリングクロック信号の周波数は40GHzに設定した。Nb系超電導体回路の動作温度4.2Kと酸化物超電導体回路の動作温度20Kを想定し、回路内のすべての抵抗成分に、熱雑音(4.2Kと20K)を付加した。コンパレータ803から出力されるデータSFQ信号825のスペクトラムを高速フーリエ変換にて得た。最後にスペクトラムにおけるアナログ信号電力と帯域内(100MHz)の雑音電力の比(SN比)を求め、さらに以下に示すSN比とビット精度の関係を示す式(5)により、ビット精度を評価した。
【0065】
【数5】

図11に、出力データ信号のスペクトラムを示す。図11(A)と図11(B)はそれぞれ、動作温度4.2Kと20Kにおける従来技術および本発明に基づく変調器の出力スペクトラムである。従来技術では、動作温度4.2KでSN比58.3dB、20KでSN比49.3dBが得られた。一方、本発明では、動作温度4.2KでSN比60.7dB、20KでSN比54.4dBが得られた。
【0066】
これらの結果から、本発明を用いることで動作温度4.2Kでは2.4dB、20Kでは5.1dBのSN比が向上することが明らかとなった。式(5)により、ビット精度に換算すると、動作温度4.2Kでは0.1ビット、20Kでは、0.6ビットの精度改善が可能であることが示された。
【0067】
(実施例3)
本発明で提案したクロック信号入力回路を順序回路の一つであるリセット―セット型フリップフロップ(RS−FF:Reset Set Flip Flop)回路へ適用した例を説明する。従来公知のRS−FF回路の一例を図12(A)に示す。RS−FF回路はジョセフソン接合対からなる2つのコンパレータ1201、1202と、それぞれのコンパレータ1201、1202の接合対の接続点間を結ぶ1つのストレージインダクタ1203およびバイアス電流源1204で構成される。コンパレータ1201を構成するジョセフソン接合1212、ストレージインダクタ1203およびコンパレータ1202を構成するジョセフソン接合1222で超電導ループを形成する。コンパレータ1201、1202はともに、超電導ループに流れる周回電流1233を被比較電流とする。ただし、コンパレータ1201のジョセフソン接合1212にはバイアス電流1234が付加され、さらにコンパレータ1202に流れ込む周回電流1233の向きを正とするならばジョセフソン接合1212に流れる周回電流の向きは負となる。以下にRS―FF回路の動作を説明する。なお、バイアス電流1234はストレージインダクタ1203を介してコンパレータ1202にも流れ込むが、コンパレータ1201に流れ込む電流に比較して実質的に無視できる大きさでしかない。
【0068】
まず超電導ループにSFQが保持されていない状態を仮定する。周回電流1233は流れていないため、コンパレータ1201に流れる被比較電流はバイアス電流1234のみであり、その電流値はコンパレータ1201の閾値を越えるように設定されている。
【0069】
この状態でSFQセット信号1231を入力すると、接合1212がスイッチしSFQが超電導ループに保持される。同時に周回電流1233が発生し、コンパレータ1201、1202に流れる。コンパレータ1201では周回電流の向きがバイアス電流1243とは逆であるため、被比較電流は閾値より小さくなる。一方コンパレータ1202では、周回電流が流れ込み被比較電流は閾値を越える。このため、SFQリセット信号1232が入力されると接合1222がスイッチしてデータSFQ信号1235が出力される。同時に、接合1222のスイッチにより超電導ループ内のSFQは消失し、周回電流1233は0となる。
【0070】
周回電流が流れていない状態でSFQリセット信号1232を入力した場合、コンパレータ1202の被比較電流は閾値以下であるため、ジョセフソン接合1221がスイッチしデータSFQ信号1235は出力されない。また、周回電流が流れている状態で、SFQセット信号1231を入力した場合、コンパレータ1201の被比較電流も閾値以下であるため、1211がスイッチして、超電導ループに余分なSFQが保持されるのを防ぐ。
【0071】
図12(B)は、上述したRS−FF回路に本発明を適用した実施例3を示す回路である。実施例3はRS−FF回路のリセット側のコンパレータ1202を電流信号入力型単一磁束量子回路1205に置き換えて構成される。図12(A)、(B)を対比して分かるように、従来のRS−FF回路との違いは、リセット入力がSFQリセット信号1232に代えて、電流リセット信号1236とされている点である。リセット電流信号1236は、図4で説明したように、入力インダクタ1209に流れ、量子化インダクタ1208、量子化接合1207によって、リセット電流信号1236の立ち上がりに対応してSFQパルスを発生するから、超電導ループ内に存在するSFQの有無を評価できる。回路へのリセット信号の伝播にジョセフソン伝送路を用いないため、クロックジッタを低減することが可能となる。
【0072】
図12(C)は、図12(B)に示す実施例が電流リセット信号1236を入力インダクタ1209と量子化インダクタ1208の磁場結合によって導入しているのに対して、図8のコンパレータ801の電流クロックを磁場結合なしで導入したのと同様に、量子化インダクタ1208に、直接、電流リセット信号1236を導入する例を示す。この他の点では、図12(B)に示す実施例の動作と同じである。
【0073】
本発明は、RS−FF回路のセット側にも適用できる。この場合、RS−FF回路のセット側のコンパレータ1201を電流信号入力型単一磁束量子回路に置き換えて電流セット信号の立ち上がりで超電導ループ内にSFQを生成させ、電流リセット信号の立ち上がりで回路内のSFQの有無を評価する。電流信号入力型単一磁束量子回路をRS−FF回路のセット入力側とリセット入力側の両方に用いることで、セット電流信号とリセット電流信号の到着時間の前後関係をクロックジッタ無しで高精度に評価することが可能となる。
【0074】
(実施例4)
実施例4では、一つのクロック信号源で2個以上のSFQ機能回路を駆動する方法を説明する。実施例3と同様に、SFQ機能回路はRS−FF回路とした。図13に示すように、4つのRS−FF回路1301、1301、1301および1301を用いた。実施例4では、各RS−FF回路1301の電流信号入力型単一磁束量子回路の入力インダクタ1309を直列に接続してクロック信号入力端子に接続する。電流クロック信号1336は、各RS−FF回路の電流信号入力型単一磁束量子回路の量子化インダクタ1308−1308に誘導され各コンパレータへSFQを供給する。RS−FF回路の個数が少なく、電流クロック信号1336の伝播遅延が無視できる場合、電流クロック信号の電流変化は全RS−FFの電流信号入力型単一磁束量子回路における量子化インダクタ1308−1308の周回電流に同時に反映されるため、RS−FF回路を同時に駆動できる。一方、駆動するRS−FF回路数が多く、最初のRS−FFと最後のRS−FF間での電流クロック信号の伝播遅延が無視できない場合、実施例4でも、駆動タイミングに遅延が生じる。しかし、その遅延はクロックジッタと異なり、伝播遅延として評価できるものであるため、RS−FF回路側で遅延を考慮した回路設計を行うことで、遅延の影響を回避することは容易である。
【0075】
また、図14に示すように、各SFQ機能回路の入力インダクタ1409−1409を並列に接続して構成しても各RS−FF1401の同時駆動が実現できる。この場合、各RS−FF回路の入力クロック回路の電流クロック信号の入力端から入力インダクタ1409−1409までの配線長さを等しくするように構成すれば、全ての入力インダクタ1409−1409に同時に入力クロック信号1436を入力することができ、各RS−FFの量子化インダクタ1408−1408に電流クロック信号1436を同時に誘導し、各コンパレータに同時にSFQを供給することが可能となる。
【0076】
従来技術では、複数のRS−FF回路に対して、ジョセフソン伝送線路を伝播するクロック信号を、ジョセフソン伝送線路の途中に形成した分岐回路から導出して各RS−FF回路にクロック信号を供給した。その結果、ジョセフソン伝送路で発生するクロックジッタにより、RS−FFにおけるSFQクロック信号の到着タイミングは(1)式で示した程度に揺らぐ。このためRS−FF回路間でのSFQクロック信号の到着時間にはばらつきのある遅延を伴う。さらに、揺らぎに起因した遅延はSFQクロック信号の到着毎に変動するため、遅延を考慮した回路設計が困難であった。結果として、複数のRS−FF回路の同時駆動は困難であった。
【0077】
(実施例5)
実施例5は、本発明で提案したクロック信号発振回路をHTSプロセスで構成したオーバーサンプリング型シグマデルタ変調器へ実施したものである。図15に等価回路、図16に回路レイアウトを示す。回路は、直流電圧積分回路1502、4つのジョセフソン接合で構成したコンパレータ1501、被測定アナログ信号積分回路1503および出力側のジョセフソン伝送線路1504、1505で構成される。4接合型コンパレータ1501のジョセフソン接合1511と1512よりなる接合対とジョセフソン接合1513と1514よりなる接合対は、インダクタを介してバイアス電流源に並列に接続され、各接合対にバイアス電流以外に流入する電流がないときは、電流状態にある。ジョセフソン接合1513と1514よりなる接合対の接合の接続点には直流積分回路1502より供給される周回電流1521が流入し、ジョセフソン接合1511と1512よりなる接合対の接合の接続点にはアナログ信号積分回路1503より供給される周回電流1523が流入する。
【0078】
以下に回路の動作を説明する。所定の直流電圧1520は、積分抵抗1506と積分インダクタ1507で構成された直流積分回路1502により積分される。積分結果は積分インダクタ1507に流れる周回電流1521に反映され、コンパレータ1501を構成するジョセフソン接合1514に流れ込む。入力した直流電圧1520が積分されるに従い、積分値つまり周回電流1521が上昇する。周回電流がジョセフソン接合1514の臨界電流値を越えた時点でジョセフソン接合1514がスイッチする。このとき、SFQ1個がコンパレータ1501に取り込まれる。同時にこのスイッチにより、直流電圧積分回路1502にSFQ1つ分の周回電流がフィードバックされ、積分値を減ずる。このため、周回電流を上昇させる積分動作とそれを減ずる接合のスイッチ動作により回路は均衡状態になる。よって、コンパレータ1501には(3)式で表される周期TをもつSFQクロック信号が供給される。
【0079】
一方、被測定アナログ信号1522は積分インダクタ1509および積分抵抗1508で構成したアナログ信号積分回路1503で積分され、積分結果は積分インダクタ1509を流れる周回電流1523に反映される。この周回電流1523はコンパレータ1501に被比較電流として入力される。上述のSFQクロック信号がコンパレータ1501内に取り込まれたとき、被比較電流であるアナログ信号積分回路1503の周回電流1523がコンパレータ1501の閾値を越えない場合は、コンパレータのジョセフソン接合1511がスイッチし出力端子にSFQデータ信号1524は出力されない。一方、周回電流が閾値を越えた場合は、ジョセフソン接合1512がスイッチしSFQデータ信号1524
が出力される。また、ジョセフソン接合1512のスイッチにより、SFQ1個に相当した電流がアナログ信号積分回路1503の積分インダクタ1509に流れ、積分インダクタの周回電流1523を減ずる。このフィードバック動作により、アナログ信号のシグマデルタ変調を実現する。
【0080】
なお、SFQクロック信号1525はジョセフソン伝送線路1505から、またSFQデータクロック信号1524は、ジョセフソン伝送線路1504から1525、1524として取り出すことができる。このため、同ジョセフソン伝送線路を介して、信号処理等の後段回路へ変調データを伝達することが可能である。SFQクロック信号の1周期分の期間内に、出力端子よりSFQデータ信号が出力されない場合は、デジタルデータ“0”、SFQデータ信号が出力された場合は、デジタルデータ“1”として定義される。ジョセフソン伝送線路1504、1505を介してのSFQクロック信号およびSFQデータ信号の伝送は、クロックジッタの変換精度に与える影響が懸念される。しかし、サンプリングされたデジタル信号では、クロックジッタの大きさがサンプリング周期(数10ps)の半分以下である限り、変換精度に影響を与えない。
【0081】
図16に示すHTSの作製プロセスを想定した回路レイアウトは、図9で説明した実施例2と同様に、基板上に超電導層であるベース電極層およびカウンタ電極層の2層と抵抗層とで構成される。ジョセフソン接合は、図9(B)で説明したのと同様に、ベース電極層の上にカウンタ電極層が乗り上げる形に構成された段差の部分(ランプエッジ)に形成される。ジョセフソン接合の臨界電流値は、カウンタ電極層の線幅で決定される。また、ベース電極層に乗り上げるカウンタ電極層の線幅を充分大きくとって、接合の臨界電流値に対して十分余裕のある電流が流れるようにすることで、ベース電極層1520とカウンタ電極層1603間のコンタクトを形成する。
【0082】
図16による回路レイアウトは、図9と対比して容易に理解できるので、図15に示す回路素子の参照符号を付すにとどめ、説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(A)−(C)は単一磁束量子クロック信号の供給方法を示す図である。
【図2】(A)、(B)は単一磁束量子クロック信号の生成および供給方法を示す図である。
【図3】(A)−(C)はジョセフソン伝送線路および分岐回路の等価回路図である。
【図4】(A)、(B)は本願発明の電流信号入力型単一磁束量子回路の二つの異なるタイプの等価回路図である。
【図5】本願発明のクロック信号発振回路の等価回路図である。
【図6】本願発明のクロック信号発振回路と電流信号入力型単一磁束量子回路を組み合わせた回路の等価回路図である。
【図7】本願発明の第1の実施例における、単一磁束量子シグマデルタ変調回路の等価回路図である。
【図8】本願発明の第2の実施例における、単一磁束量子シグマデルタ変調回路の等価回路図である。
【図9】(A)は本願発明の第2の実施例の構成レイアウト図、(B)はジョセフソン接合の部分の断面図である。
【図10】従来技術に基づく、一磁束量子シグマデルタ変調回路の等価回路図である。
【図11】(A)、(B)は本願発明の第2の実施例および従来技術の一磁束量子シグマデルタ変調回路の出力スペクトラムを示す図である。
【図12】(A)−(C)は本願発明の電流信号入力型単一磁束量子回路を応用した第3の実施例のフリップフロップ回路の等価回路図である。
【図13】本願発明の第3の実施例のフリップフロップ回路を直列接続した第4の実施例の回路の等価回路図である。
【図14】本願発明の第3の実施例のフリップフロップ回路を並列接続した第4の実施例の回路の等価回路図である。
【図15】本願発明の第5の実施例の単一磁束量子シグマデルタ変調回路の等価回路図である。
【図16】本願発明の第5の実施例の単一磁束量子シグマデルタ変調回路の構成レイアウト図である。
【符号の説明】
【0084】
101:半導体発振器、102:SFQ回路、103:dc/SFQコンバータ、104:ジョセフソン伝送線路、105:分岐回路、106:SFQ機能回路、110:電流クロック信号、111:SFQクロック信号、121:バイアス電流源、122:入力インダクタ、123:ジョセフソン接合、124:ジョセフソン接合、125:インダクタ、126:周回電流、127:周回電流、128:接続点、200:リングオシレータ回路、201:dc/SFQコンバータ、202:ジョセフソン伝送線路、203:ジョセフソン伝送線路、204:合流回路、205:分岐回路、206:ジョセフソン伝送線路、207:分岐回路、208:SFQ機能回路、220:電流トリガ信号、221:SFQトリガ信号、222:SFQクロック信号、301:ジョセフソン接合、302:インダクタ、303:単位回路、304:バイアス電流源、305:バイアス電圧源、306:バイアス抵抗、307:分岐回路、320:SFQ信号、401:コンパレータ、402:量子化インダクタ、403:量子化接合、404:入力インダクタ、405:バイアス電流源、411:ジョセフソン接合、412:ジョセフソン接合、420:電流クロック信号、421:被比較電流、422:SFQデータ信号、423:周回電流、424:周回電流、431:接合対の他端、432:接続点、501:積分インダクタ、502:積分抵抗、503:積分回路、504:量子化接合、505:バイアス電流源、520:直流電圧、521:周回電流、522:バイアス電流、523:SFQ信号、601:積分インダクタ、602:積分抵抗、603:積分回路、604:コンパレータ、606:バイアス電流源、611:ジョセフソン接合、612:ジョセフソン接合、632:接続点、620:直流電圧、621:周回電流、622:バイアス電流、624:被比較電流、625:SFQデータ信号、701:電流信号入力型単一磁束量子回路、702:アナログ信号積分回路、703:コンパレータ、707:アナログ信号積分インダクタ、708:アナログ信号積分抵抗、720:アナログ信号、722:電流クロック信号、723:SFQデータ信号、801:電流信号入力型単一磁束量子回路、802:アナログ信号積分回路、803:4接合型コンパレータ、804:量子化インダクタ、805:量子化接合、806:ジョセフソン伝送線路、811:ジョセフソン接合、812:ジョセフソン接合、813:ジョセフソン接合、814:ジョセフソン接合、820:電流クロック信号、823:周回電流、825:SFQデータ信号、901:抵抗、902:ベース電極層、903:カウンタ電極層、905:接地のためのコンタクトホール、910:基板、911:絶縁層、1001:ジョセフソン伝送線路、1020:SFQクロック信号、1201:コンパレータ、1202:コンパレータ、1203:ストレージインダクタ、1204:バイアス電流源、1211:ジョセフソン接合、1212:ジョセフソン接合、1221:ジョセフソン接合、1222:ジョセフソン接合、1231:SFQセット信号、1232:SFQリセット信号、1233:周回電流、1234:バイアス電流、1235:SFQデータ信号、1205:電流信号入力型単一磁束量子回路、1206:コンパレータ、1207:量子化接合、1208:量子化インダクタ、1209:入力インダクタ、1236:電流リセット信号、1301:RS−FF回路、1308:量子化インダクタ、1309:入力インダクタ、1331:SFQデータ信号、1335:SFQデータ信号、1336:電流リセット信号、1401:RS−FF回路、1408:量子化インダクタ、1409:入力インダクタ、1431:SFQデータ信号、1435:SFQデータ信号、1436:電流リセット信号、1501:4接合型コンパレータ、1502:直流電圧積分回路、1503:アナログ信号積分回路、1504:ジョセフソン伝送線路、1505:ジョセフソン伝送線路、1506:積分抵抗、1507:積分インダクタ、1508:積分抵抗、1509:積分インダクタ、1512:ジョセフソン接合、1513:ジョセフソン接合、1514:ジョセフソン接合、1520:直流電圧、1521:周回電流、1522:アナログ信号、1523:周回電流、1524:SFQデータ信号、1525:SFQクロック信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのジョセフソン接合を直列に接続したジョセフソン接合の接合対と、
該接合対の一端を接地する回路と、
一端が接地され他端が前記接合対の他端に接続されたバイアス電流源と、
前記接合対と前記バイアス電流源との接続点と接地との間に接続された第1のインダクタと第3のジョセフソン接合の直列回路と、
前記第1のインダクタと磁場結合する第2のインダクタと、
を備え、
前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に、被比較アナログ信号電流を入力し、前記第2のインダクタに流れる電流信号に誘導されて前記第1のインダクタに流れる電流が所定の閾値を超えたとき、前記被比較アナログ信号電流が所定の閾値を超えているとき前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点から単一磁束量子信号を出力することを特徴とする電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項2】
二つのジョセフソン接合を直列に接続したジョセフソン接合の接合対の二つと、
それぞれの接合対の一端を接地する回路と、
それぞれの接合対の他端間を接続する第1のインダクタと、
一端が接地され他端が前記インダクタの中点に接続されたバイアス電流源と、
前記二つの接合対の一つの二つのジョセフソン接合の接続点と接地との間に接続された第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の直列回路と、
前記第2のインダクタと磁場結合する第3のインダクタと、
を備え、
前記二つの接合対の他の一つの二つのジョセフソン接合の接続点に、被比較アナログ信号電流を入力し、前記第3のインダクタに流れる電流信号に誘導されて前記第2のインダクタに流れる電流が所定の閾値を超えたとき、前記被比較アナログ信号電流が所定の閾値を超えているとき前記他の一つの接合対の二つのジョセフソン接合の接続点から単一磁束量子信号を出力することを特徴とする電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項3】
一つのジョセフソン接合とバイアス電流源とを直列に接続した回路の両端を接地した回路と、
一端を接地した抵抗と、
前記ジョセフソン接合と前記バイアス電流源の接続点と前記抵抗の他端に接続されたインダクタと、
を備え、
前記インダクタと前記抵抗の直列回路の接続点に、所定の直流電圧を加え、前記ジョセフソン接合とバイアス電流源の直列回路のジョセフソン接合とバイアス電流源の接続点から、前記直流電圧に反比例する周期の単一磁束量子パルス列を出力することを特徴とする電流信号入力型単一磁束量子回路を利用する高周波クロック回路。
【請求項4】
二つのジョセフソン接合を直列に接続したジョセフソン接合の接合対の二つと、
それぞれの接合対の一端を接地する回路と、
それぞれの接合対の直列に接続されたジョセフソン接合の接続点間を接続する第1のインダクタと、
一端が接地され他端が前記二つの接合対の一つの直列に接続されたジョセフソン接合の接続点と第1のインダクタの接続点に接続されたバイアス電流源と、
前記二つの接合対の他の一つの他端と接地の間に接続された第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の直列回路と、
前記第2のインダクタと磁場結合する第3のインダクタと、
を備え、
前記二つの接合対の一つの他端に単一磁束量子セット信号を加え、前記第3のインダクタに電流リセット信号を与え、前記二つの接合対の他の一つの直列に接続されたジョセフソン接合の接続点からデータ単一磁束量子信号を出力することを特徴とする電流信号入力型単一磁束量子回路を利用するリセットーセットフリップフロップ回路。
【請求項5】
前記接合対と前記バイアス電流源との接続点と接地との間に接続された第1のインダクタと第3のジョセフソン接合の直列回路および前記第1のインダクタと磁場結合する第2のインダクタとに代えて、
前記接合対の他端に一端が接続された第1のインダクタと一端が接地された第1のジョセフソン接合の直列回路を備え、
前記第1のインダクタと前記接合対の接続点から前記第1のインダクタと第3のジョセフソン接合の接続点へと、所定の電流信号を流す請求項1記載の電流信号入力型単一磁束量子回路
【請求項6】
前記接合対と前記バイアス電流源との接続点と接地との間に接続された第1のインダクタと第3のジョセフソン接合の直列回路および前記第1のインダクタと磁場結合する第2のインダクタとに代えて、
前記接合対の他端に一端が接続されたインダクタと一端が接地された抵抗の直列回路を備え、前記インダクタと抵抗の直列回路の接続点に、所定の直流電圧を加える請求項1記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項7】
前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に入力される被比較アナログ信号電流が、前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に一端が接続された積分インダクタと一端が接地された積分抵抗の直列回路の積分インダクタと積分抵抗の接続点に加えられるアナログ電圧によって与えられる請求項1記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項8】
前記二つの接合対の一つの二つのジョセフソン接合の接続点と接地との間に接続された第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の直列回路と、前記第2のインダクタと磁場結合する第3のインダクタとに代えて、
前記二つの接合対の一つの二つのジョセフソン接合の接続点に一端が接続された第2のインダクタと一端が接地された第5のジョセフソン接合の直列回路を備え、
前記第2のインダクタと前記二つの接合対の一つの二つのジョセフソン接合の接続点から前記第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の接続点へと、所定の電流信号を流す請求項2記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項9】
前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に入力される被比較アナログ信号電流が、前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に一端が接続された積分インダクタと一端が接地された積分抵抗の直列回路の積分インダクタと積分抵抗の接続点に加えられるアナログ電圧によって与えられる請求項2記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項10】
前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に入力される被比較アナログ信号電流が、前記接合対の二つのジョセフソン接合の接続点に一端が接続された積分インダクタと一端が接地された積分抵抗の直列回路の積分インダクタと積分抵抗の接続点に加えられるアナログ電圧によって与えられる請求項8記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。
【請求項11】
前記二つの接合対の他の一つの他端と接地の間に接続された第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の直列回路と、前記第2のインダクタと磁場結合する第3のインダクタとに代えて、前記二つの接合対の他の一つの他端に一端が接続された第2のインダクタと一端が接地された第5のジョセフソン接合の直列回路を備え、
前記第2のインダクタと前記二つの接合対の他の一つの二つのジョセフソン接合の接続点から前記第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の接続点へと、所定の電流信号を流す請求項4記載の電流信号入力型単一磁束量子回路を利用するリセットーセットフリップフロップ回路。
【請求項12】
前記リセットーセットフリップフロップ回路が複数個配列されるとともに、各リセットーセットフリップフロップ回路の前記第3のインダクタが直列に接続されて一つの電流リセット信号を与えられる請求項4記載の電流信号入力型単一磁束量子回路を利用するリセットーセットフリップフロップ回路。
【請求項13】
前記リセットーセットフリップフロップ回路が複数個配列されるとともに、各リセットーセットフリップフロップ回路の前記第3のインダクタが並列に接続されて一つの電流リセット信号を与えられる請求項4記載の電流信号入力型単一磁束量子回路を利用するリセットーセットフリップフロップ回路。
【請求項14】
前記二つの接合対の一つの二つのジョセフソン接合の接続点と接地との間に接続された第2のインダクタと第5のジョセフソン接合の直列回路と前記第2のインダクタと磁場結合する第3のインダクタとに代える、一端が接地され他端が前記接合対の他端に接続されたインダクタと抵抗の第1の直列回路と、
前記二つの接合対の他の一つの二つのジョセフソン接合の接続点に接続される一端が接地され他端が前記接合対の他端に接続されたインダクタと抵抗の第2の直列回路と、
を備え、
前記第1の直列回路の前記インダクタと抵抗の直列回路の接続点に、所定の直流電圧を加え、
前記第2の直列回路の前記インダクタと抵抗の直列回路の接続点に、被比較アナログ信号電流を入力し、
前記第1の直列回路の前記インダクタに流れる電流が所定の閾値を超えたとき、前記被比較アナログ信号電流が所定の閾値を超えているとき前記第2の直列回路が接続される二つのジョセフソン接合の接続点から単一磁束量子信号を出力する請求項2記載の電流信号入力型単一磁束量子回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−5959(P2007−5959A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181446(P2005−181446)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】