説明

電流検出用プリント基板および電流検出器

【課題】 電流検出器の構造を簡略化させるための電流検出用プリント基板を提供する。
【解決手段】 交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出するための電流検出用プリント基板1であって、基板を貫通する貫通穴401と、貫通穴401の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部500と、遮蔽部500の外側に配置された電流検出を行うためのコイル状の配線10とを備えたことを特徴とする。上記のように、電流検出用プリント基板1に遮蔽部500を備えると、電流検出器の筐体に複雑な形状の遮蔽部を形成する必要がない。そのため、電流検出器の筐体の構造を簡略化させることができる。また、電流検出用プリント基板の遮蔽部は、スルーホールによって形成されているので、容易に形成できる。したがって、電流検出器の構造を簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出するために用いる電流検出用プリント基板、及びこの電流検出用プリント基板を用いた電流検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インピーダンス整合装置や高周波電源装置のように、交流電力の電流と電圧とを検出し、検出した電流と電圧とを用いて制御等を行うものがある。その一例として、インピーダンス整合装置について説明する。
【0003】
図17は、インピーダンス整合装置が用いられる高周波電力供給システムの一例のブロック図である。
【0004】
この高周波電力供給システムは、半導体ウエハや液晶基板等の被加工物に、例えばプラズマエッチング、プラズマCVDといった加工処理を行うためのシステムであり、高周波電源装置61、伝送線路62、インピーダンス整合装置63、負荷接続部64及び負荷65(プラズマ処理装置65)で構成されている。
【0005】
高周波電源装置61は、高周波電力を出力して、負荷となるプラズマ処理装置65に供給するための装置である。なお、高周波電源装置61から出力された高周波電力は、同軸ケーブルからなる伝送線路62及びインピーダンス整合装置63及び遮蔽された銅板からなる負荷接続部64を介してプラズマ処理装置65に供給される。また、一般にこの種の高周波電源装置61では、無線周波数帯域の周波数(例えば、数百kHz以上の周波数、上限は厳密には定まっていないが、概ね1GHz以下)を有する高周波電力を出力している。
【0006】
プラズマ処理装置65は、ウエハ、液晶基板等を加工(エッチング、CVD等)するための装置である。
【0007】
インピーダンス整合装置63は、内部に図示しない可変インピーダンス素子(例えば、可変コンデンサ、可変インダクタ等)等で構成された整合回路を備えていて、高周波電源装置61と負荷65との間がインピーダンス整合するように、整合回路内の可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させる制御機能を有する。
【0008】
このような制御を行うために、インピーダンス整合装置63の入力端63aから整合回路までの間に、高周波電源装置61から出力された高周波の電流を検出する電流検出器および高周波の電圧を検出する電圧検出器を設け、これらの検出器で検出した電流と電圧とを用いて、進行波電力や反射波電力等の情報を求めている。そして、求めた情報を用いて、インピーダンス整合するように可変インピーダンス素子のインピーダンスを制御している。
【0009】
図18は、インピーダンス整合装置63の入力端から整合回路67までの間に設けられる電流検出器80および電圧検出器90の概略の回路図である。図18に示すように、入力端63aから整合回路67までは、電力の伝送経路となる電力伝送用導電体66(例えば棒状の銅)が設けられている。そして、電力伝送用導電体66の途中に、電流検出器80と電圧検出器90とが設けられている。
【0010】
電流検出器80は、カレントトランス部81、カレントトランス部81の出力配線82,83、電流用変換回路84、および電流用変換回路84の出力配線85によって構成されている。この電流検出器80では、電力伝送用導電体66に流れる交流電流に応じた電流がカレントトランス部81に流れる。この電流は、出力配線82,83を介して電流用変換回路84に入力され、所定の電圧レベルに変換されて電流用変換回路84の出力配線85から出力されるようになっている。
【0011】
また、電圧検出器90は、コンデンサ部91、コンデンサ部91の出力配線92、電圧用変換回路93、および電圧用変換回路93の出力配線94によって構成されている。この電圧検出器90では、電力伝送用導電体66に生じる交流電圧に応じた電圧がコンデンサ部91に生じる。この電圧は、出力配線92を介して電圧用変換回路93に入力され、所定の電圧レベルに変換されて電圧用変換回路93の出力配線94から出力されるようになっている。
【0012】
そして、電流検出器80および電圧検出器90によって検出した電流と電圧とを用いて、上述したように、進行波電力や反射波電力等の情報を求めている。
【0013】
また、上述したような電流検出器80、電圧検出器90は、高周波電源装置61等、他の装置にも使用することができる。例えば、高周波電源装置の場合は、高周波電源装置61の出力端に設け、出力する進行波電力が設定値になるように制御するために必要な電流と電圧とを検出するために使用される。
【0014】
また、インピーダンス整合装置の出力端63bまたは負荷65の入力端における電流、電圧を検出して、検出した電流や電圧を制御や解析等に使用することもある。
【0015】
図19は、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路と出力端との間に設ける場合の回路図である。
この図19に示すように、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路67と出力端63bとの間の電力伝送用導電体68の途中に設けて、インピーダンス整合装置の出力端63bにおける電流、電圧を検出することもある。
【0016】
この図19では、図18に示した回路図と同じものには同符号を付けている。ただし、インピーダンス整合装置の入力端63aと出力端63bとでは、電流、電圧に違いがあるので、電流検出器80、電圧検出器90は、耐電流、耐電圧の観点から、構造上の相違がある。しかし、この図19では、それらの違いを考慮せずに同符号としている。例えば、通常、インピーダンス整合装置の入力端63aよりも出力端63bの方が、高電流、高電圧になる。そのために、インピーダンス整合装置の出力端63bに電流検出器80、電圧検出器90を設ける場合は、インピーダンス整合装置の入力端63aに設ける場合よりも、電力伝送用導電体68を太い径の導電体にしたり、電力伝送用導電体68の外周を覆う絶縁体69の肉厚を厚くして、絶縁距離を長くする必要がある。しかし、図19に示した回路図では、便宜上、これらの違いを考慮していない。
【0017】
また、図19のように、インピーダンス整合装置に使用する場合は、インピーダンス整合装置の入力側に、インピーダンス整合させるために必要な電流および電圧の情報を検出するための検出器が別途必要であるが、図示を省略している。
【0018】
上述した電流検出器80に相当するものとしては、例えば、図20および図21に示す電流検出用プリント基板6、電圧検出器90に相当するものとしては、例えば、図22に示す電圧検出用プリント基板7がある。
【0019】
図20は、電流検出用プリント基板6を示す図である。
図20において、同図(a)は、電流検出用プリント基板6の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだA部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板6の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0020】
図20(a)〜(d)に示すように、電流検出用プリント基板6は、基板を貫通する貫通穴101が設けられており、その周囲にコイル状に形成された配線10(以下、コイル状の配線10という)が設けられている。このコイル状の配線10は、基板を貫通しながら、基板の表面121と裏面122とを交互に接続することによって両端部10a,10bを有するコイル状に形成されたものである。この配線の内、基板を貫通する部分は、スルーホール(Through Hole)11によって形成され、基板の表面および裏面の配線は、パターン配線12,13によって形成されている。
【0021】
なお、図20(b)〜(c)において、点線で示した部分は、基板の裏面のパターン配線を示すが、透過したものであるため、点線で示している。また、コイル状の配線10の両端部10a,10bには、出力配線21,22が接続されている。この出力配線が出力端子23,24に接続されている。
【0022】
また、この例の場合は、両面構造の基板(以下、両面基板という)であるために、1つの絶縁体部110の表面層および裏面層にパターン配線が形成されることになる。
【0023】
図20に示したような電流検出用プリント基板6にすると、交流電流が流れる電力伝送用導電体66が、貫通穴101の内側を通るように配置された場合に、電磁誘導によって、コイル状の配線10に電流が流れる。すなわち、プリント基板にカレントトランス機能を持たすことができる。換言すれば、電流検出用プリント基板6に、カレントトランスを形成することができる。
【0024】
したがって、コイル状の配線10の部分は、図18,図19に示した回路図のカレントトランス部81に相当する。
【0025】
図21は、電流検出用プリント基板6の他の一例を示す図である。
図21において、同図(a)は、電流検出用プリント基板6の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだB部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板6の配線を図示したものであり、同図(e)は、電流検出用プリント基板6の配線を、出力配線21等の部分を中心に、側面から図示したものである。なお、図21に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。また、便宜上、電流検出用プリント基板6、スルーホール11、パターン配線12,13等は、図1と同符号を用いている。
【0026】
図21に示す電流検出用プリント基板6は、基本的には、図1に示した電流検出用プリント基板6と同様であるが、基板が多層構造になっていて、コイル状の配線10が内部の層間に形成されている。
【0027】
なお、本明細書では、多層構造の基板(以下、多層基板という)を構成する絶縁体部を、図面の上部から見て順に、第1絶縁体部、第2絶縁体部、第3絶縁体部、・・・という具合に呼ぶ。また、基板の各絶縁体部の間に形成される導体層を、図面の上部から見て順に、第1導体層、第2導体層、第3導体層、・・・という具合に呼ぶ。また、基板の表面に形成される導体層を表面層、基板の裏面に形成される導体層を裏面層と呼ぶ。
【0028】
なお、両面基板も表面層および裏面層の2つの層があるので、多層基板と言えるが、絶縁体部が1つしかないので、基板の各絶縁体部の間に形成される導体層がない形態である。
【0029】
図21の例では、基板の絶縁体部が、第1絶縁体部111、第2絶縁体部112、および第3絶縁体部113の3つの絶縁体部で構成されているために、第1絶縁体部111と第2絶縁体部112との間に第1導体層131が形成され、第2絶縁体部112と第3絶縁体部113との間に第2導体層132が形成されている。また、基板の表面121(第1絶縁体部の上の面)には表面層が形成可能である。また、基板の裏面122(第3絶縁体部の下の面)には裏面層が形成可能であるが、図21の例では、基板の裏面層を設けていない。
【0030】
そのために、図21の場合、コイル状の配線10は、第1導体層131と第2導体層132との層間に形成されていることになる。したがって、コイル状の配線10が、基板の外側からは見ることができない構造にすることもできる。また、このような場合も、コイル状の配線10の部分は、図22に示した回路図のカレントトランス部81に相当する。
【0031】
また、図21(e)に示すように、コイル状の配線10の出力配線21は、第1導体層131に形成されたコイル状の配線10の一端10aに接続されたパターン配線21aと、スルーホール21bと、基板の表面に形成されたパターン配線21cによって形成されて、出力端子23に接続される。コイル状の配線10の出力配線22については、同様であるために説明を省略する。
【0032】
図22は、電圧検出用プリント基板7を示す図である。
図22において、同図(a)は、電圧検出用プリント基板7の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだC部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)を側面から見た場合の電流検出用プリント基板6の配線を図示したものである。なお、同図(d)に図示した配線は、説明のために、通常は見えない部分を透過させて図示している。
【0033】
図22(a)〜(d)に示すように、電圧検出用プリント基板7は、基板を貫通する貫通穴201が設けられており、その周囲にリング状の配線30が設けられている。このリング状の配線30は、貫通穴201の周囲に、基板を貫通するスルーホール31を複数設け、且つ基板の表面および裏面にスルーホール部を繋げるようにパターン配線32,33を設けることによって形成されたものである。そのために、基板の表面および裏面にあるパターン配線32,33の間にスルーホールが設けられているので、基板の厚みと略同じ厚みを有するように形成されて、あたかも、リング状の配線30となる。
【0034】
なお、図22(b)〜(c)では、基板の表面および裏面にあるパターン配線32、33が重なっている。また、リング状の配線30には、出力配線40が接続されている。この出力配線が出力端子41に接続されている。
【0035】
また、この例の場合は、両面構造の基板(以下、両面基板という)であるために、1つの絶縁体部210の表面層および裏面層にパターン配線が形成されることになる。
【0036】
図22に示したような電圧検出用プリント基板7にすると、交流電圧が生じている電力伝送用導電体66が、貫通穴201の内側を通るように配置された場合に、リング状の配線30が、前記電力伝送用導電体66の内、リング状の配線30と対向する箇所と対となるコンデンサの電極として機能する。すなわち、プリント基板にコンデンサの電極としての機能を持たすことができる。したがって、リング状の配線30の部分は、図18,図19に示した回路図のコンデンサ部の電極91bに相当する。
【0037】
図23は、電流・電圧検出器5の概略の外観図である。
図23において、同図(a)は、電流・電圧検出器5を立体的に示した概略の外観図であり、同図(b)は、導電体製の筐体の側面から見た概略の外観図であり、同図(c)は、同図(b)の筐体を取り除いた場合の図である。
【0038】
この図23(a)に示すように、電流・電圧検出器5は、電力伝送用導電体66が筐体を貫通できる構造となっている。なお、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、電流・電圧検出器5の構成には含まれないが、説明に必要であるので、図示している。また、絶縁体69は、電力伝送用導電体66と電流・電圧検出器5との絶縁を行うためのものである。そのために、絶縁体69の長さは、図示したよりも短くてよいが、図面の簡略化のために図23(a)のようにしている。これに関しては、他の図面も同様である。
【0039】
また、図23(c)に示すように、筐体内に、電流検出用プリント基板6と電圧検出用プリント基板7とが収容された構造となっている。そのために、筐体内を通過する電力伝送用導電体66に流れる電流を電流検出用プリント基板6によって検出し、電力伝送用導電体66に生じている電圧を電圧検出用プリント基板7によって検出することが出来る構造になっている。
【0040】
すなわち、図23(b)に示した例で説明すると、電流・電圧検出器5の左側の部分が電流検出器3に相当し、右側の部分が、電圧検出器4に相当することになる。なお、筐体は、アルミニウム等の導電体で作られている。そして、この電流検出器3は、図18,図19に示した電圧検出器80に相当し、電圧検出器4は、図18,図19に示した電圧検出器90に相当する。
【0041】
図24は、図23に示した電流・電圧検出器5の概略構成図である。この図24において、同図(a)は、電流・電圧検出器5の概略の構成図であり、同図(b)は、同図(a)の構成要素を組み立てたときの概略図である。なお、この図24では、各構成要素の形状は概略を示すのみである。例えば、筐体や基板には、電力伝送用導電体66を貫通させるための貫通穴や磁束を作用させるための開口部が設けられているが、これらは図示していない。また、図24では、外側から見えない部分の概略を点線で示している。
【0042】
図24(a)に示すように、電流・電圧検出器5は、筐体本体330と、筐体本体330に固定される電流検出用プリント基板6、電圧検出用プリント基板7、電流検出部用蓋331、および電圧検出部用蓋332によって構成されている。もちろん、それらを固定するための螺子やビス等の部品も含まれるが、これらの部品は構成要素の一部と見なすとともに、説明の簡略化のために図示を省略する。また、図24(a)に示した矢印で図示したように各構成部品を筐体本体330に固定すると、図24(b)に示したように、電流検出用プリント基板6、電圧検出用プリント基板7がそれぞれ筐体本体330の内部に固定されるとともに、電流検出用プリント基板6、電圧検出用プリント基板7をそれぞれ覆うように蓋がされる。
【0043】
このように、筐体本体330は、電流検出用プリント基板6、電圧検出用プリント基板7とで共通であるが、電流検出用プリント基板6が固定される側を表面とすると、電圧検出用プリント基板7が裏面に固定されるようになっているので、概略的には、電流検出用プリント基板6、電圧検出用プリント基板7とがそれぞれ独立した空間内に収容されることになる。
【0044】
図25は、図23(b)に示した電流・電圧検出器5の断面図である。
図26は、筐体本体330を立体的に図示した図であり、同図(a)は、電流検出用プリント基板1が固定される側から見た図であり、同図(b)は、電圧検出用プリント基板2が固定される側から見た図である。
【0045】
図25〜図26に示したように、筐体本体330には、貫通穴303および凹部311、312、321、322が設けられているので、電力伝送用導電体66および電力伝送用導電体66を覆う絶縁体69を貫通させるとともに、電流検出用プリント基板6と電圧検出用プリント基板7とを筐体内部に収容できるようになっている。
【0046】
図27は、電流検出用プリント基板6と電圧検出用プリント基板7とを別の筐体に収容するようにして、それぞれ独立した電流検出器3および電圧検出器4にした一例を示す図である。
【0047】
図28は、図27に示した電流検出器3の断面図である。この図28は、図25に示した電流・電圧検出器5の断面図のうち、電圧検出器4に相当する下側の部分を取り除いたものに相当する。そのため、電流検出器3用の筐体本体310を使用しているが、その他は、図25と同様である。
【0048】
この図27、図28に示すように、電流検出器3および電圧検出器4を独立させることもできる。この場合、電流検出器3および電圧検出器4を表裏重ね合わせると、上述した筐体本体を一体形成したものと同様になる。
【0049】
【特許文献1】特開2007−225588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
ところで、電流・電圧検出器5の筐体本体330の電圧検出用プリント基板7側は、比較的簡単な形状になっている。しかし、筐体本体330の電流検出用プリント基板6側には、貫通穴の周囲に第1遮蔽部313が設けられており、複雑な形状をしている。そして、第1遮蔽部313と電流検出部用蓋301との間の隙間によって開口部317が形成されていることが分かる。この理由を以下に説明する。
【0051】
電力伝送用導電体66に電流が流れると、導体の周りには磁束が発生する。この磁束が電流検出用プリント基板6に設けたコイル状の配線10に作用することによって、コイル状の配線10に電流が流れる。そして、このコイル状の配線10に流れる電流を検出することによって、電力伝送用導電体66に流れる電流が分かる仕組みとなっている。そのために、電力伝送用導電体66と電流検出用プリント基板6との間を導電体製の筐体によって遮蔽してしまうと、磁束が電流検出用プリント基板6に作用しないために、電流を検出できなくなる。したがって、筐体には、導体の周りに生じる磁束を筐体内に取り入れるための開口部317が設けられている。
【0052】
さらに詳述すると、電力伝送用導電体66に電流が流れることによって、導体の周りには磁束が発生するだけでなく電界も発生する。しかしながら、その電界は、電流検出用プリント基板6で電流を検出することに対して悪影響を及ぼす。そのため、電力伝送用導電体66と電流検出用プリント基板6との間に第1遮蔽部313を設けている。すなわち、電力伝送用導電体66と電流検出用プリント基板6との間に、導体を配置することによって、電界の影響を弱める機能を筐体に持たせている。
【0053】
しかしながら、第1遮蔽部313および開口部317を形成するためには、図示するように複雑な形状にする必要がある。そのため、例えば、筐体の製作コストが高くなるという課題があった。これは、図28に示した電流検出器3の場合も同様である。
【0054】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、電流検出器の構造を簡略化させるための電流検出用プリント基板を提供することを目的としている。ひいては、簡単な構造の電流検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0055】
第1の発明によって提供される電流検出用プリント基板は、
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出するための電流検出用プリント基板であって、
基板を貫通する貫通穴と、
前記貫通穴の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、
前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための配線と、
を備えたことを特徴としている。
【0056】
第2の発明によって提供される電流検出用プリント基板は、
前記遮蔽部が、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0057】
第3の発明によって提供される電流検出用プリント基板は、
前記遮蔽部が、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0058】
第4の発明によって提供される電流検出器は、
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出する電流検出器において、
基板を貫通する貫通穴と、前記貫通穴の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための配線とを含む電流検出用プリント基板と、
前記電流検出用プリント基板を内部に固定するとともに、前記電力伝送用導電体を通過させるための貫通穴を設けて、前記電流検出用プリント基板を覆うように構成された導電体製の筐体と、
を備えたことを特徴としている。
【0059】
第5の発明によって提供される電流検出器は、
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部が、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0060】
第6の発明によって提供される電流検出器は、
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部が、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されていることを特徴としている。
【0061】
第7の発明によって提供される電流検出器は、
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部および前記筐体によって、
前記電流検出用プリント基板の前記貫通穴と前記配線との間に、一部遮蔽しない部分を含む遮蔽部を形成していることを特徴としている。
【0062】
第8の発明によって提供される電流検出器は、
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板の表面と裏面との間に設けられていることを特徴としている。
【0063】
第9の発明によって提供される電流検出器は、
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板と筐体との間に設けられていることを特徴としている。
【0064】
第10の発明によって提供される電流検出器は、
前記筐体が、前記電流検出用プリント基板を固定する筐体本体と、前記筐体本体を覆う蓋部と、からなることを特徴としている。
【0065】
第11の発明によって提供される電流検出器は、
前記交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力であることを特徴としている。
【0066】
また、前記電流検出用プリント基板の前記配線は、基板の最上層と最下層との間を貫通しながら基板の最上層と最下層とを交互に接続することによって両端部を有するコイル状に形成された少なくとも1つの配線、又は/及び基板の一部分の層間を貫通しながら貫通した部分の最上層と最下層とを交互に接続することによって両端部を有するコイル状に形成された少なくとも1つの配線からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、電流検出用プリント基板に遮蔽部を備えることができるので、電流検出器の筐体に複雑な形状の遮蔽部を形成する必要がない。そのため、電流検出器の筐体の構造を簡略化させることができる。
また、電流検出用プリント基板の遮蔽部は、スルーホールによって形成されているので、容易に形成できる。したがって、電流検出器の構造を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明の詳細を図面を参照して説明する。
【0069】
(1)電流検出用プリント基板
図1は、本発明に係る電流検出用プリント基板1の一例を示す図である。
図1において、同図(a)は、電流検出用プリント基板1の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだD部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)の一部を側面から見た概略図である。また、同図(e)は、同図(a)のE−E断面図である。
【0070】
図1(a)に示すように、電流検出用プリント基板1は、基板を貫通する貫通穴401が設けられており、その外側には、遮蔽機能を有する遮蔽部500が形成されている。この遮蔽部500については後述する。
遮蔽部500の外側には、前述したコイル状の配線10が形成されている。また、コイル状の配線10には、出力配線21,22が接続されている。また、出力配線21,22には、それぞれ出力端子23,24が接続されている。
【0071】
上記のコイル状の配線10は、図20に示したものと同様である。すなわち、図20では、コイル状の配線10は、貫通穴101の周囲に形成されていたが、図1では遮蔽部500の外側に形成されているという相違点があるが、カレントトランスとして機能する点は同じである。出力配線21,22及び出力端子23,24も、図20に示したものと同様である。
【0072】
このように、コイル状の配線10等は、図20に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。そのために、コイル状の配線10等の詳細説明は省略する。また、説明を容易にするために、前述したものと同様の機能のものには、同符号を用いている。
【0073】
このように、電流検出用プリント基板1は、コイル状の配線10が備わっているので、電流検出機能を有する。
【0074】
次に遮蔽部500について説明する。
遮蔽部500は、図1(b)〜(c)に示すように複数のスルーホール501、502を略円形に配置することによって形成されている。より具体的には、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている。
図示した例では、遮蔽部500の内側(貫通穴401に近い側)に複数のスルーホール501を略円形に配置し、遮蔽部500の外側に複数のスルーホール502を略円形に配置している。また、スルーホール501とスルーホール502とをずらして配置している。そのために、遮蔽部500を側面から見た場合には、スルーホール501とスルーホール502とが重なり、隙間が無くなる。そのため、電力伝送用導電体66が、貫通穴401の内側を通るように配置された場合に生じる電界に対して遮蔽機能を有するようになる。しかも、スルーホールは、プリント基板を制作する上で容易に形成できるので、遮蔽部500を形成することは容易である。
【0075】
なお、後述する図10等に示すように、遮蔽部500は、筐体に接続する必要がある。そのため、電流検出用プリント基板1単体として、遮蔽部500の遮蔽機能を有するものではないが、電流・電圧検出用プリント基板の構造としては、図1で説明したように、貫通穴401とコイル状の配線10との間に、遮蔽部500を設ける必要がある。
【0076】
また、図1では、遮蔽部500を2重のスルーホールで形成したが、スルーホールを3重以上に配置する場合は、上記の概念に従い、遮蔽部500を側面から見た場合に、遮蔽部500を形成するスルーホールの隙間が無くなるようにすればよい。
【0077】
図1(d)は、図1(c)に示した複数のスルーホール501を側面から見た概略図である。この図1(d)に示すように、電流検出用プリント基板1は、多層基板になっている。また、スルーホール501は、図1(d)に示すように、上側のスルーホール501aと、下側のスルーホール501bとに分かれており、基板を貫通しないようになっている。また、図1(d)では図示していないが、スルーホール502側も同様に、上側のスルーホール502aと、下側のスルーホール502bとに分かれており、基板を貫通しないようになっている。すなわち、遮蔽部500には、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分が設けられている。この様子は、図1(e)からも明らかである。なお、図1(e)は、図1(a)のE−E断面図であるが、遮蔽部500等の様子を模式的に表した断面図である。
【0078】
なお、上述したように、遮蔽部500は、略円形に形成されているが、これに限定されるものではなく、貫通穴401とコイル状の配線10との間に設ければよい。そのため、例えば、楕円形にすることも可能であるし、一部を直線的にすることも可能である。しかし、貫通穴401およびコイル状の配線10が略円形であるならば、遮蔽部500も略円形にした方が、面積を少なくできるなどのメリットがあるので好ましい。
【0079】
図2は、本発明に係る電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
図2において、同図(a)は、電流検出用プリント基板1の平面図(基板の上から見た図)であり、同図(b)は、同図(a)の一部(点線で囲んだF部分)を拡大した概略図であり、同図(c)は、同図(b)の図示を簡略化するために、直線的に展開した図であり、同図(d)は、同図(c)の一部を側面から見た概略図である。また、同図(e)は、同図(a)のG−G断面図である。
【0080】
この図2に示した電流検出用プリント基板1は、図1に示したものと比べて、コイル状の配線10が異なっている。
具体的には、図2のコイル状の配線10は、図21に示したものと同様なものを使用している。また、遮蔽部500は、図1に示したものと同じである。そのため、これらについての詳細説明は省略する。また、説明を容易にするために、前述したものと同様の機能のものには、同符号を用いている。
【0081】
なお、図1と同様に、コイル状の配線10等は、図21に示したものと相違点はあるものの、基本的な構成は同じである。また、コイル状の配線10は、カレントトランスとして機能する。
【0082】
このように、これまで説明したコイル状の配線10の他の形態を用いることも可能である。また、例えば、特許文献1(特開2007−225588号公報)の図5〜8に示すように、2重化したコイル状の配線10を用いることも可能である。
【0083】
(2)電流検出器
図3は、本発明に係る電流検出器3を立体的に示した概略の外観図である。
【0084】
この図3に示すように、電流検出器3は、従来と同様に、電力伝送用導電体66が筐体を貫通できる構造となっている。なお、電力伝送用導電体66およびその周囲にある絶縁体69は、電流検出器3の構成には含まれないが、説明に必要であるので、図示している。また、絶縁体69は、電力伝送用導電体66と電流検出器3との絶縁を行うためのものである。そのために、絶縁体69の長さは、図示したよりも短くてよいが、図面の簡略化のために図3のようにしている。これに関しては、他の図面も同様である(例えば図10)。なお、筐体は、アルミニウム等の導電体で作られている。
【0085】
図4は、図3に示した電流検出器3の概略構成図である。なお、この図4では、各構成要素の形状は概略を示すのみである。例えば、筐体や基板には、電力伝送用導電体66を貫通させるための貫通穴等が設けられているが、これらは図示していない。
【0086】
図4に示すように、電流検出器3は、筐体本体300と、筐体本体300に固定される電流検出用プリント基板1、蓋301によって構成されている。もちろん、それらを固定するための螺子やビス等の部品も含まれるが、これらの部品は構成要素の一部と見なすとともに、説明の簡略化のために図示を省略する。なお、蓋301は、筐体の一部であり、アルミニウム等の導電体で作られている。また、図4に示した矢印で図示したように各構成部品を筐体本体300に固定すると、電流検出用プリント基板1が筐体本体300の内部に固定されるとともに、電流検出用プリント基板1を覆うように蓋がされる。
【0087】
次に、蓋301を除いた部分について、具体的に説明する。
図5は、筐体本体300の図である。図5において、同図(a)は、筐体本体300の側面の断面図であり、同図(b)は、平面図(電流検出用プリント基板1が固定される側から見た図)である。
【0088】
図6は、筐体本体300を立体的に図示した図である。
【0089】
図7は、蓋301を取り付けない状態で、電流検出用プリント基板1を筐体本体300に取り付けたときの図である。なお、電流検出用プリント基板1は、一例として、図1と同様のものとしている。
【0090】
図5〜図7に示したように、筐体本体300には、貫通穴303および凹部311、312が設けられているので、電力伝送用導電体66および電力伝送用導電体66を覆う絶縁体69を貫通させるとともに、電流検出用プリント基板1を筐体内部に収容できるようになっている。
【0091】
また、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300の一部であり、筐体本体300に電流検出用プリント基板1が取り付けられたときに、遮蔽部500と接続されるように設けられている。すなわち、第1筐体遮蔽部306は、遮蔽部500の形状に合わせて略円形に形成されている。もちろん、前述したように、遮蔽部500が略円形でない場合は、遮蔽部500の形状に合わせた形状にすればよい。なお、第1筐体遮蔽部306を、例えばネジ止めによって、着脱可能にしてもよいが、この場合でも、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300の一部とする。また、第1筐体遮蔽部306は、筐体本体300と同様に、アルミニウム等の導電体で作られる。
【0092】
また、図5〜図7では図示を省略しているが、後述する図10等で図示されているように、蓋301にも第1筐体遮蔽部306と同様な第2筐体遮蔽部307が設けられている。具体的には、筐体本体300に電流検出用プリント基板1が取り付けられた後に、蓋301が筐体本体300に取り付けられたときに、遮蔽部500と接続されるように設けられている。すなわち、第2筐体遮蔽部307は、遮蔽部500の形状に合わせて略円形に形成されている。
なお、第2筐体遮蔽部307を、例えばネジ止めによって、着脱可能にしてもよいが、この場合でも、第2筐体遮蔽部307は、蓋301の一部とする。また、第2筐体遮蔽部307は、アルミニウム等の導電体で作られる。遮蔽部500等の機能については、後述する。
【0093】
また、凹部311の四隅に4つの基板固定部315を設けて、この部分に電流検出用プリント基板1を固定するようになっている。これは、電流検出用プリント基板1に設ける配線が筐体(遮蔽部500は配線ではない)に接触しないようにするために、凹部311の底面に対して、電流検出用プリント基板1を浮かせるためである。
【0094】
なお、例えば、図2のように電流検出用プリント基板1のコイル状の配線10が、基板の裏面層に形成されない場合は、凹部311の四隅に設けた基板固定部315を不要にでき、凹部311と凹部312との底面の高さを同一とすることができる。また、第1筐体遮蔽部306も不要となる。
【0095】
図8は、基板固定部315を設けない場合の筐体本体300を立体的に図示した図である。この図8のようにすると、筐体本体300の構造を簡略化することが可能である。
【0096】
また、通常は、円筒形(断面が円形)の電力伝送用導電体66が用いられるので、それに合わせて、筐体本体300に設けられた貫通穴303も円形になっている。また、電流検出用プリント基板1の貫通穴401が円形になっている。
【0097】
次に、電流検出用プリント基板1について説明する。
電流検出用プリント基板1のコイル状の配線10は、図1で説明したものと同様であるが、出力配線21,22がパターン配線のまま、電流用変換回路51に接続されている。この電流用変換回路51は、図18、図19に示した電流用変換回路84に相当するものである。
【0098】
したがって、図1で説明した電流検出用プリント基板1と異なり、同一基板上にコイル状の配線10および電流用変換回路51が備わっている。すなわち、電流検出用プリント基板1の形状は、図1とは異なる。
【0099】
また、この電流用変換回路51に接続された出力配線52が、配線用の開口部316を通って筐体の外部に伸びている。なお、電流用変換回路51には、出力配線52を接続するための出力端子が備わっているものとする。また、出力配線52は、途中までをパターン配線としてもよいし、全てをパターン配線以外の配線にしてもよい。
【0100】
また、筐体本体300には、電流検出用プリント基板1のコイル状の配線10と電流用変換回路51との間に相当する位置に第3筐体遮蔽部308が設けられている。そのため、電流検出用プリント基板1は、この第3筐体遮蔽部308に応じて、基板の途中で基板幅が狭くなった形状をしている。
【0101】
この例では、この第3筐体遮蔽部308は、コイル状の配線10がある空間と電流用変換回路51がある空間との間の一部を遮蔽する機能を有している。
【0102】
図9は、第3筐体遮蔽部308の応用例の一例である。
図5〜図8に示すように、筐体本体300の第3筐体遮蔽部308だけでは出力配線の部分に隙間が生じるため、遮蔽が十分できない場合がある。その場合は、この図9(a)に示すように、蓋301に隙間を埋めるような遮蔽部317を設けてもよい。このようにすることによって、出力配線の部分の隙間が殆ど無くなるので、遮蔽効果が高まる。また、図9(b)に示すように、第3筐体遮蔽部308の代わりに、蓋301に遮蔽部318を設けてもよい。
【0103】
次に遮蔽部500の遮蔽機能について説明する。
図10は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の一例である。この図10は、例えば、図7に示すものに蓋301を取り付けた状態におけるH−H断面の様子を模式的に図示したものである。
【0104】
仮に、遮蔽部500が存在しない場合を考えと、電力伝送用導電体66とコイル状の配線10との間が遮蔽されていないので、電流検出に必要な磁束がコイル状の配線10に作用する。それとともに、コイル状の配線10は、電界の影響を受ける。ところが、コイル状の配線10は、前述したように、電界の影響を受けるのが好ましくないため、電流検出の精度が低下する要因となる。そのために、コイル状の配線10に対する電界の影響を低減させて、電流検出の精度を高める工夫が必要となる。
【0105】
そこで、遮蔽部500および遮蔽部500の上下の遮蔽部(第1筐体遮蔽部306、第2筐体遮蔽部307)を設けて、電力伝送用導電体66とコイル状の配線10との間を可能な限り遮蔽している。もちろん、電流検出に必要な磁束をコイル状の配線10に作用させる必要があるので、完全な遮蔽ではなく、一部に遮蔽しない部分を設けている。
【0106】
上記の遮蔽しない部分は、遮蔽という観点から見ると、可能な限り小さくするのが好ましいが、コイル状の配線10による電流検出を考慮して、具体的な設計をすればよい。いずれにしても、遮蔽部500が存在しない場合に比べると、コイル状の配線10に対する電界の影響を低減させることができ、かつ、電流検出に必要な磁束をコイル状の配線10に作用させることができる。
【0107】
さらに補足すると、これまでの説明から分かるように、遮蔽部500は、遮蔽部500の上下にある第1筐体遮蔽部306、第2筐体遮蔽部307と接続されることによって、筐体と電気的に接続される。これによって、遮蔽部500は、遮蔽機能を有するものとなる。
【0108】
なお、遮蔽部500と図22で説明したリング状の配線30とは、ともにスルーホールを用いて形成されているが、これまでの説明から分かるように、両者は、構造的にも機能的にも異なる。
【0109】
図11は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
図11(a)は、図10と異なり、遮蔽部500を形成するスルーホールが2分割されずに、基板の表面付近を除いて基板に設けられた例である。所謂、ブラインドバイア(Blind Via)となっている。このように、遮蔽部500の構成は図10と異なるが、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分を設けている点は共通している。このようにしても、図10と同様に電界の遮蔽を行うとともに、コイル状の配線10に磁束が作用される。
また、図11(b)は、図10と異なり、遮蔽部500を形成するスルーホールが基板を貫通している。その代わりに、第2筐体遮蔽部307が、遮蔽部500と接続されずに隙間が空いている例である。この場合は、基板の表面と裏面との間の一部に、遮蔽しない部分が設けられてはいないが、図10、図11(a)と同様の効果がある。すなわち、図10、図11(a)と同様に電界の遮蔽を行うとともに、コイル状の配線10に磁束が作用される。
【0110】
図12は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
図12(a)は、図8に示した筐体本体300と図2に示した電流検出用プリント基板1を用いた例である。すなわち、コイル状の配線10が内部の層間に形成されているので、図8に示した筐体本体300を用いるとともに、第1筐体遮蔽部306を不要にすることができる。この場合は、遮蔽部500を形成するスルーホールが筐体本体300に接続させるので、図10、図11の場合と同様の効果がある。
図12(b)は、さらに第2筐体遮蔽部307を取り除き、スルーホールが蓋301に接続されるような筐体本体300にした例である。この場合も、図10、図11の場合と同様の効果がある。
【0111】
これまで説明したように、本実施形態のように電流検出用プリント基板1に遮蔽部500を備えると、電流検出器の筐体に複雑な形状の遮蔽部を形成する必要がない。そのため、電流検出器の筐体の構造を簡略化させることができる。
また、電流検出用プリント基板の遮蔽部は、スルーホールによって形成されているので、容易に形成できる。したがって、電流検出器の構造を簡略化できる。
【0112】
(3)電流検出器3の変形例
図13は、電流検出器3の変形例である電流検出器3aを示すものである。ただし、蓋301aは図示を省略している。この図13は、電流検出用プリント基板1が、図1で示したものである場合を示している。この図13に示すように、電流用変換回路51および電圧用変換回路53を、電流検出器3aの外部に設けることもできる。なお、筐体は、電流検出用プリント基板1に合わせた形状の筐体本体300aを用いている。また、電流検出用プリント基板1の出力は、パターン配線ではない出力配線によって筐体外部に出力される。この場合、電流用変換回路51、電圧用変換回路53は、電流検出器3aの外部に別途設けられる。
【0113】
図14は、電流検出器3の変形例である電流検出器3bを示すものである。ただし、蓋301bは図示を省略している。この図14に示すように電流検出用プリント基板1上に、電流用変換回路51、電圧用変換回路53を設けるようにすることも可能である。なお、電流用変換回路51の出力配線および電圧用変換回路53の出力配線は、途中までをパターン配線としてもよいし、全てをパターン配線以外の配線にしてもよい。
【0114】
なお、これまでの説明では、電流検出器3(3a〜3b含む)を、インピーダンス整合装置の入力端63aに設ける例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、高周波電源装置61の出力端に用いても良いし、インピーダンス整合装置の出力端63bに設けても良い。なお、上述したように、インピーダンス整合装置の入力端63aと出力端63b(負荷65の入力端も同様)とでは、電流・電圧に違いがある。そのために、インピーダンス整合装置の出力端63bや負荷65の入力端に設ける場合、その違いを考慮して、電力伝送用導電体68を太い径の導電体にしたり、電力伝送用導電体68の外周を覆う絶縁体69の肉厚を厚くして、絶縁距離を長くすればよい。また、高周波電力供給システム以外の用途で使用してもよい。
【0115】
(4)固定方法
絶縁体69の外径を筐体本体300に設けられた貫通穴303の内径と略同じにすることによって、実質上、絶縁体69と電流検出器3とを固定状態にすることができる。しかし、実際には、絶縁体69の外径を貫通穴の内径よりも小さくして用いることもある。この場合、絶縁体69と筐体本体300との間には、隙間が生じることになる。このように、隙間があると、電力伝送用導電体66等と電流検出器3とを、インピーダンス整合装置63に取り付ける際に、取り付ける装置毎に、両者の相対位置が一定ではなくなる可能性がある。すなわち、電力伝送用導電体66等と電流検出用プリント基板1との相対位置が一定ではなくなる可能性がある。そうなると、複数の装置を製作した場合に、各装置の検出値にばらつきが生じる要因となり得る。そのために、隙間が大きい場合は、電力伝送用導電体66等と電流検出器3との相対位置を一定にさせることが望ましい。
【0116】
図15は、絶縁体69の固定方法を示す図である。この図15に示すように、絶縁体69に凹部を設け、その凹部に嵌合するような蓋301にすると、蓋301によって、絶縁体69を固定することができる。なお、蓋301は、貫通穴の部分で2分割すればよい。このようにすることによって、絶縁体69の外径が貫通穴303の内径よりも小さい場合であっても、電力伝送用導電体66等と電流検出用プリント基板1との相対位置を略一定にすることができる。
なお、図15のような場合、蓋が筐体の上側にしかないので、絶縁体69を安定して固定できない場合がある。この場合は、より安定させるために、(紙面で見て)筐体本体300の下部に絶縁体69を固定させる取付け部品(図略)を取り付けてもよい。
【0117】
図16は、図15に示した電流検出器3において、電力伝送用導電体66および絶縁体69を、電流検出器3の大きさに合わせた大きさにした場合の図である。
【0118】
図15のように、電流検出器3に絶縁体69を固定させた場合に、メンテナンス性を向上させるために、図16に示すように、電力伝送用導電体66および絶縁体69を、電流検出器3の大きさに合わせた大きさにして、電力伝送用導電体66および絶縁体69を、電流検出器3ごと取り外しできるようにしてもよい。このようにすることによって、メンテナンス性を向上させることができる。なお、図16では、図示を省略しているが、電力伝送用導電体66には、他の導電体と接続するための接続部が設けられている。
【0119】
また、これまでの説明では、電力伝送用導電体66、68が、例えば、円筒形状の銅製の棒、すなわち、断面が円形のものとして説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、断面が楕円形や長方形のものであってもよい。また、電流検出用プリント基板1の貫通穴401が、円形のものとして説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、楕円形や長方形であってもよい。
【0120】
また、これまでの説明したように、電流検出用プリント基板1を構成する遮蔽部、コイル状の配線10には、様々な種類があるので、説明した以外の組み合わせにしてもよい。例えば、特許文献1(特開2007−225588号公報)の図5〜図8に示すように、複数種類のコイル状の配線10を電流検出用プリント基板1に設けてもよい。
【0121】
そのため、電流検出用プリント基板のコイル状の配線10のうち、基板の最上層と最下層との間または基板の一部分の層間を貫通する部分の配線がスルーホールであり、貫通した部分の最上層および最下層の配線がパターン配線となっていてもよい。
【0122】
また、電流検出用プリント基板のコイル状の配線10が、基板に複数形成される場合は、各コイル状の配線10の両端部または電気的に同一箇所において、他のコイル状の配線10の両端部または電気的に同一箇所と、電気的に接続可能となっていてもよい。
【0123】
また、図23に示したように、電流検出器と電圧検出器とを合わせた電流・電圧検出器として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明に係る電流検出用プリント基板1の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る電流検出用プリント基板1の他の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る電流検出器3を立体的に示した概略の外観図である。
【図4】図4は、図3に示した電流検出器3の概略構成図である。
【図5】図5は、筐体本体300の図である。
【図6】図6は、筐体本体300を立体的に図示した図である。
【図7】図7は、蓋301を取り付けない状態で、電流検出用プリント基板1を筐体本体300に取り付けたときの図である。
【図8】図8は、基板固定部315を設けない場合の筐体本体300を立体的に図示した図である。
【図9】図9は、第3筐体遮蔽部308の応用例の一例である。
【図10】図10は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の一例である。
【図11】図11は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
【図12】図12は、電流検出用プリント基板1を筐体に収容したときの断面図の他の一例である。
【図13】図13は、電流検出器3の変形例である電流検出器3aを示すものである。
【図14】図14は、電流検出器3の変形例である電流検出器3bを示すものである。
【図15】図15は、絶縁体69の固定方法を示す図である。
【図16】図16は、図15に示した電流検出器3において、電力伝送用導電体66および絶縁体69を、電流検出器3の大きさに合わせた大きさにした場合の図である。
【図17】図17は、インピーダンス整合装置が用いられる高周波電力供給システムの一例のブロック図である。
【図18】図18は、インピーダンス整合装置63の入力端から整合回路67までの間に設けられる電流検出器80および電圧検出器90の概略の回路図である。
【図19】図19は、電流検出器80、電圧検出器90をインピーダンス整合装置内の整合回路と出力端との間に設ける場合の回路図である。
【図20】図20は、電流検出用プリント基板6を示す図である。
【図21】図21は、電流検出用プリント基板6の他の一例を示す図である。
【図22】図22は、電圧検出用プリント基板7を示す図である。
【図23】図23は、電流・電圧検出器5の概略の外観図である。
【図24】図24は、図23に示した電流・電圧検出器5の概略構成図である。
【図25】図25は、図23(b)に示した電流・電圧検出器5の断面図である。
【図26】図26は、筐体本体330を立体的に図示した図である。
【図27】図27は、電流検出用プリント基板6と電圧検出用プリント基板7とを別の筐体に収容するようにして、それぞれ独立した電流検出器3および電圧検出器4にした一例を示す図である。
【図28】図28は、図27に示した電流検出器3の断面図である。
【符号の説明】
【0125】
1 電流検出用プリント基板
2 電圧検出用プリント基板
3 電流検出器
3a 電流検出器
3b 電流検出器
4 電圧検出器
5 電流・電圧検出器
10 コイル状の配線
11 スルーホール
12 パターン配線
13 パターン配線
30 リング状の配線
66 電力伝送用導電体
69 電力伝送用導電体66を覆う絶縁体
300 電流検出器の筐体本体
303 貫通穴
306 第1筐体遮蔽部
307 第2筐体遮蔽部
308 第3筐体遮蔽部
500 遮蔽部
501 スルーホール
502 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出するための電流検出用プリント基板であって、
基板を貫通する貫通穴と、
前記貫通穴の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、
前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための配線と、
を備えた電流検出用プリント基板。
【請求項2】
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されている請求項1に記載の電流検出用プリント基板。
【請求項3】
前記遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている請求項1に記載の電流検出用プリント基板。
【請求項4】
交流電力の伝送経路として用いる電力伝送用導電体に流れる交流電流を検出する電流検出器において、
基板を貫通する貫通穴と、前記貫通穴の外側に配置され、スルーホールによって形成された遮蔽部と、前記遮蔽部の外側に配置された電流検出を行うための配線とを含む電流検出用プリント基板と、
前記電流検出用プリント基板を内部に固定するとともに、前記電力伝送用導電体を通過させるための貫通穴を設けて、前記電流検出用プリント基板を覆うように構成された導電体製の筐体と、
を備えた電流検出器。
【請求項5】
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に配置することによって形成されている請求項4に記載の電流検出器。
【請求項6】
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部は、複数のスルーホールを略円形に、少なくとも2重に配置することによって形成されている請求項4に記載の電流検出器。
【請求項7】
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部および前記筐体によって、
前記電流検出用プリント基板の前記貫通穴と前記配線との間に、一部遮蔽しない部分を含む遮蔽部を形成している請求項4〜請求項6のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項8】
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板の表面と裏面との間に設けられている請求項7に記載の電流検出器。
【請求項9】
前記電流検出用プリント基板の遮蔽部の遮蔽しない部分は、基板と筐体との間に設けられている請求項7に記載の電流検出器。
【請求項10】
前記筐体は、前記電流検出用プリント基板を固定する筐体本体と、前記筐体本体を覆う蓋部と、からなる請求項4〜請求項9のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項11】
前記交流電力が、無線周波数帯域の周波数を有する交流電力である請求項4〜請求項10のいずれかに記載の電流検出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2010−8120(P2010−8120A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165331(P2008−165331)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】