電流駆動型半導体スイッチの駆動回路
【課題】従来の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路は、駆動回路における電力損失を抑制するためにスイッチやスイッチを制御するための手段が必要となり部品点数が増える。
【解決手段】電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のベース又はゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のコレクタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10を前記熱伝導部11により熱が供給されるように配置する。
本発明により、簡単な構成で部品点数を増やすことなく駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【解決手段】電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のベース又はゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のコレクタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10を前記熱伝導部11により熱が供給されるように配置する。
本発明により、簡単な構成で部品点数を増やすことなく駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動型半導体スイッチの駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を図11に示す。従来の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路は、電源1に接続された第1のスイッチング素子2と、接地された第2のスイッチング素子3との間にエネルギー蓄積用のインダクタ4を接続し、前記第1のスイッチング素子2とインダクタ4との間の接続点に逆バイアスとなって接地されるダイオード5を接続し、前記インダクタ4と第2のスイッチング素子3との間の接続点に電源6と負荷7を介してエミッタ又はドレイン接地された電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)を接続し、更には前記第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3をオンさせてインダクタ4にエネルギーを蓄積してから、該第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3をオフさせてインダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づく電流を前記電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)に供給した後、第2のスイッチング素子3をオンさせてインダクタ4を接地し、前記インダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づく電流がゼロとなってから、前記第1のスイッチング素子2をオンさせる制御信号を出力する制御部9を備える。
【0003】
このように電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)に供給する電流は、電源1から抵抗を介さずに、制御部9で制御される第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3を用いてインダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づいて供給される。(特許文献1参照)
このように電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)への電流供給について、抵抗を介さずに行うことで電力損失を抑制した駆動回路を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−243943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路では、制御電極(ベース又はゲート)に供給する電流をインダクタ4に蓄積するために、ダイオード5や第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3、該スイッチング素子を駆動するための制御部9が必要となり部品点数が多くなる。更に、制御部9を動作させるための電力や第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3を駆動させるための電力が必要となることが課題であった。本発明は部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のエミッタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10は前記熱伝導部11により熱を供給されるように配置するようにしたものである。
【0007】
これにより部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路は、部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図2】本発明の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図3】本発明の実施例における第1の可変抵抗の温度特性を示す図
【図4】本発明の実施例における第2の可変抵抗の温度特性を示す図
【図5】本発明の実施例における第3の可変抵抗の温度特性を示す図
【図6】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの電気特性を示す図
【図7】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの電気特性を示す図
【図8】本発明の実施例におけるエアコン用電力変換装置の概略図
【図9】本発明の実施例におけるインバータ回路図
【図10】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図11】従来技術における電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給されるように配置されたことで電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1と第2の可変抵抗は第1の可変抵抗の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなるようにすることで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と正の温度特性を有する第3の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1及び第3の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1及び第3の可変抵抗は、前記熱伝導部により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1と第3の可変抵抗値の和が負の温度特性を有し、第1と第3の可変抵抗の和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗は、前記熱伝導部より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチのゲート電流が制限され、ドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有することで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じ
てゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができ、更に過電流抑制による負荷の保護も合わせて行うことができる。
【0013】
第4の発明は、環境温度や電流駆動型半導体スイッチに流れるドレイン電流が条件により大きく変化する空気調和機に適用することで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができ、更に過電流抑制によりモータなどの負荷の保護も合わせて行うことができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図2は本発明における実施の形態における電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を示す。
【0016】
電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のベース端子又はゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と正の温度特性を有する第2の可変抵抗12と、正の温度特性を有する第3の可変抵抗13と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のコレクタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10及び第3の可変抵抗13は前記熱伝導部11により熱を供給され、前記第2の可変抵抗12は前記熱伝導部11以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチ8の周辺部)より熱を供給されるように配置される。
【0017】
前記第1の可変抵抗10及び第3の可変抵抗13は、前記熱伝導部11により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1の可変抵抗10と第3の可変抵抗13の和が負の温度特性を有し、第1の可変抵抗10と第3の可変抵抗13との和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗12の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗13は、前記熱伝導部11より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチ8のベース又はゲート電流が制限され、コレクタ又はドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有する。
【0018】
以上のように構成された電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路において、以下にその動作と、作用を説明する。
【0019】
まず、電流駆動型半導体スイッチ8に流れるコレクタ又はドレイン電流の動作損失により過熱される半導体デバイスを外装するパッケージあるいは半導体デバイスに相当する熱伝導部11の温度をTcとし、該熱伝導部11により供給される熱により抵抗値が変化する第1の可変抵抗10及び、第3の可変抵抗13の温度特性をそれぞれ図3、図5に示す。
【0020】
第1の可変抵抗10は図3に示すように電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcに対して負の温度特性を有し、第3の可変抵抗13は図5に示すように電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcに対して正の温度特性を有し、特に熱伝導部11の温度TcがTclim以上ではベース又はゲート電流を制限しコレクタ又はドレイン電流を遮断する抵抗値になるようにする。また、電流駆動型半導体スイッチ8の周辺温度あるいは雰囲気温度Taより供給される熱により抵抗値が変化する第2の可変抵抗12の温度特性を図4に示す。第2の可変抵抗12は図4に示すように雰囲気温度Taに対して正の温度特性を有する。
【0021】
例えば、電流駆動型半導体スイッチ8にワイドバンドギャップ型の化合物半導体であるGaN(窒化ガリウム)を用いた場合、ゲート電流Igとドレイン電流Idには図6に示すような電気特性を有する。電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcがTcaで固定されている場合、ゲート電流Ig_a、Ig_b、Ig_cの大小関係をIg_a>Ig_b>Ig_cとすると、流すことのできる最大ドレイン電流はゲート電流IgをIg_aに設定したときに最大となり、ゲート電流IgをIg_cに設定したときに最小となる。
【0022】
また、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcとドレイン電流Idには図7に示すような電気特性がある。ゲート電流IgがIg_aで固定される場合、電流駆動型半導体スイッチ8の温度Tca、Tcb、Tccの大小関係をTca>Tcb>Tccとすると、流すことのできる最大ドレイン電流は電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcをTccに設定したときに最大となり、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcをTcaに設定したときに最小となる。
【0023】
ここで雰囲気温度Taが等しく、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0024】
例えば雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔTがΔT=20℃(Tc=40℃)を条件(a)とし、雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔTがΔT=40℃(Tc=60℃)を条件(b)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第3の可変抵抗(10、12、13)を用い、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をRg2(20℃)、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をそれぞれRg1(40℃)、Rg3(40℃)とRg1(60℃)、Rg3(60℃)とすると条件(a)、条件(b)それぞれのゲート抵抗Rg(a)、Rg(b)は以下のようになる。
Rg(a)=Rg1(40℃)+Rg2(20℃)+Rg3(40℃)
Rg(b)=Rg1(60℃)+Rg2(20℃)+Rg3(60℃)
ここでRg1とRg3の抵抗値の和は負の温度特性を有するように予め選択すればRg(a)とRg(b)の大小関係は
Rg(a)>Rg(b)
となり、ドレイン電流Idの大きい駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆にドレイン電流Idの小さい駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0025】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、ドレイン電流が大きい場合(条件(b))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(b)、ドレイン電流が小さい場合(条件(a))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(a)(<Ec2/Rg(b))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0026】
次に電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが等しく、雰囲気温度Ta、ドレイン電流Idが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0027】
例えば電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=80℃、雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=60℃を条件(c)とし、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=80℃、雰囲気温度Ta=60℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃を条件(d)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第
3の可変抵抗(10、12、13)を用い、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をRg1(80℃)、Rg3(80℃)、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をRg2(20℃)、Rg2(60℃)とすると条件(c)、条件(d)それぞれのゲート抵抗Rg(c)、Rg(d)は以下のようになる。
Rg(c)=Rg1(80℃)+Rg2(20℃)+Rg3(80℃)
Rg(d)=Rg1(80℃)+Rg2(60℃)+Rg3(80℃)
ここでRg2の抵抗値は正の温度特性を有するためRg(c)とRg(d)の大小関係は
Rg(c)<Rg(d)
となり、ドレイン電流Idの大きい駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆にドレイン電流Idの小さい駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0028】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、ドレイン電流が大きい場合(条件(c))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(c)、ドレイン電流が小さい場合(条件(d))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(d)(<Ec2/Rg(c))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0029】
次にドレイン電流Idによる温度上昇ΔTが等しく、雰囲気温度Ta、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0030】
例えばドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃、雰囲気温度Ta=20℃、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=40℃を条件(e)とし、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃、雰囲気温度Ta=60℃、熱伝導部11の温度Tc=80℃を条件(f)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第3の可変抵抗(10、12、13)を用い、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をそれぞれRg1(40℃)、Rg3(40℃)とRg1(80℃)、Rg3(80℃)、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をそれぞれRg2(20℃)、Rg2(60℃)とすると条件(c)、条件(d)それぞれのゲート抵抗Rg(c)、Rg(d)は以下のようになる。
Rg(e)=Rg1(40℃)+Rg2(20℃)+Rg3(40℃)
Rg(f)=Rg1(80℃)+Rg2(60℃)+Rg3(80℃)
ここでRg1とRg3の抵抗値の和は負の温度特性を有し、Rg1とRg3の抵抗値の和についての温度に対する負の傾きよりRg2の抵抗値の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなるように予め選択すればRg(e)とRg(f)の大小関係は
Rg(e)>Rg(f)
となり、ドレイン電流Idが等しい場合、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが高くなる駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆に雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが低くなる駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0031】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが高くなる場合(条件(f))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(f)、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが低くなる場合(条件(e))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(e)(<Ec2/Rg(f))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0032】
更に電流駆動型半導体スイッチ8の熱伝導部11の温度TcがTclim以上となる場
合について説明する。ドレイン電流Idがほぼ遮断されるゲート電流IgがIglim以下である場合、電流駆動型半導体スイッチ8あるいは負荷7の最大許容以上のドレイン電流が流れた場合の熱伝導部11の温度をTclim、このときの第3の可変抵抗13の抵抗値をRg3(Tclim)とし、以下の関係を満たすように第3の可変抵抗13を予め設定する。
Ec<{Iglim×Rg3(Tclim)}
これにより電流駆動型半導体スイッチ8あるいは負荷7において、過電流に対する機械的な装置を不要にした保護手段となり、他の保護装置と組み合わせることでより高い信頼性を実現することができる。
【0033】
また、図2に示す駆動回路をエアコン等の圧縮機駆動用インバータ回路に適用した場合について説明する。図8はエアコン用電力変換装置の概略図、図9にインバータ回路を示す。交流電源14はリアクタ15を介してダイオードブリッジ16に入力整流され、整流電圧をコンデンサ17で平滑化する。平滑化された電圧をインバータ回路18に入力し、交流電力に変換して負荷7である圧縮機モータ19に電力を伝える。ここでインバータ回路18はパワー半導体として6個(QUH、QUL、QVH、QVL、QWH、QWL)の電流駆動型半導体スイッチ8であるGaN半導体スイッチで構成する。
【0034】
一般的にエアコン等の圧縮機駆動用インバータ回路では6個のパワー半導体が1つのモジュール20に配置される構成をとる。図10は該モジュール20におけるU相の上下アームのパワー半導体スイッチ(QUH、QUL)と上アーム側の電流駆動型半導体スイッチ8であるパワー半導体スイッチ(QUH)の駆動回路を示す。
【0035】
ここでモジュール20を熱伝導部11として考えれば、第1および第3の可変抵抗(10、13)をモジュール20の内に配置して、第2の可変抵抗12をモジュール20の外に配置すれば、電流駆動型半導体スイッチ8(パワー半導体)を流れるドレイン電流やパワー半導体の雰囲気温度の変化に伴い、前述したようにゲート電流が調整され駆動回路における動作損失を抑制する。
【0036】
特にインバータエアコン等のようにインバータ回路18が設置される環境温度、雰囲気温度が季節(夏冬)や時間帯(昼夜)により大きく変動し、更にインバータ運転によりインバータ動作電流が大きく変動する場合において、常時最大ドレイン電流値や最もドレイン電流を流しにくい条件(温度)を想定してゲート電流を設定する必要がなく、ドレイン電流や温度により必要となる電流値に調整されたゲート電流を供給することで駆動回路における動作損失を抑制することができる。
【0037】
なお、第3の可変抵抗13はなくても構わない。
【0038】
また、エアコン用インバータ回路への適用について説明したが、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など温度や電流値の変動のある各種インバータ回路においても同様の効果が期待できる。
【0039】
以上のように温度により抵抗値が変化する可変抵抗を用いて、電流駆動型半導体スイッチ8の熱伝導部11の温度Tc(デバイスケース温度)や雰囲気温度Ta、ドレイン電流Idに応じてゲート電流を調整することにより駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明は従来の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路と比較して、特に環境温度や動作電流の変化の大きなインバータ機器において、部品点数の少ない簡単な
構成で駆動回路における電力損失の抑制を実現することができるためエアコンや冷蔵庫、洗濯機をはじめ様々なインバータ機器への応用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 電源(制御側)
2 第1のスイッチング素子
3 第2のスイッチング素子
4 インダクタ
5 ダイオード
6 電源(負荷側)
7 負荷
8 電流駆動型半導体スイッチ
9 制御部
10 第1の可変抵抗
11 熱伝導部
12 第2の可変抵抗
13 第3の可変抵抗
14 交流電源
15 リアクタ
16 ダイオードブリッジ
17 コンデンサ
18 インバータ回路
19 モータ
20 モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動型半導体スイッチの駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を図11に示す。従来の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路は、電源1に接続された第1のスイッチング素子2と、接地された第2のスイッチング素子3との間にエネルギー蓄積用のインダクタ4を接続し、前記第1のスイッチング素子2とインダクタ4との間の接続点に逆バイアスとなって接地されるダイオード5を接続し、前記インダクタ4と第2のスイッチング素子3との間の接続点に電源6と負荷7を介してエミッタ又はドレイン接地された電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)を接続し、更には前記第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3をオンさせてインダクタ4にエネルギーを蓄積してから、該第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3をオフさせてインダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づく電流を前記電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)に供給した後、第2のスイッチング素子3をオンさせてインダクタ4を接地し、前記インダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づく電流がゼロとなってから、前記第1のスイッチング素子2をオンさせる制御信号を出力する制御部9を備える。
【0003】
このように電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)に供給する電流は、電源1から抵抗を介さずに、制御部9で制御される第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3を用いてインダクタ4に蓄積されたエネルギーに基づいて供給される。(特許文献1参照)
このように電流駆動型半導体スイッチ8の制御電極(ベース又はゲート)への電流供給について、抵抗を介さずに行うことで電力損失を抑制した駆動回路を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−243943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路では、制御電極(ベース又はゲート)に供給する電流をインダクタ4に蓄積するために、ダイオード5や第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3、該スイッチング素子を駆動するための制御部9が必要となり部品点数が多くなる。更に、制御部9を動作させるための電力や第1のスイッチング素子2、第2のスイッチング素子3を駆動させるための電力が必要となることが課題であった。本発明は部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のエミッタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10は前記熱伝導部11により熱を供給されるように配置するようにしたものである。
【0007】
これにより部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路は、部品点数の少ない簡単な構成で且つ電力損失を抑えた電流駆動型半導体スイッチ駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図2】本発明の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図3】本発明の実施例における第1の可変抵抗の温度特性を示す図
【図4】本発明の実施例における第2の可変抵抗の温度特性を示す図
【図5】本発明の実施例における第3の可変抵抗の温度特性を示す図
【図6】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの電気特性を示す図
【図7】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの電気特性を示す図
【図8】本発明の実施例におけるエアコン用電力変換装置の概略図
【図9】本発明の実施例におけるインバータ回路図
【図10】本発明の実施例における電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【図11】従来技術における電流駆動型半導体スイッチの駆動回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給されるように配置されたことで電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1と第2の可変抵抗は第1の可変抵抗の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなるようにすることで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と正の温度特性を有する第3の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、前記第1及び第3の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1及び第3の可変抵抗は、前記熱伝導部により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1と第3の可変抵抗値の和が負の温度特性を有し、第1と第3の可変抵抗の和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗は、前記熱伝導部より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチのゲート電流が制限され、ドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有することで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じ
てゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができ、更に過電流抑制による負荷の保護も合わせて行うことができる。
【0013】
第4の発明は、環境温度や電流駆動型半導体スイッチに流れるドレイン電流が条件により大きく変化する空気調和機に適用することで、電流駆動型半導体スイッチの周囲温度を考慮したドレイン電流に応じてゲート電流の調整を行うことが可能になり、駆動回路における電力損失を抑制することができ、更に過電流抑制によりモータなどの負荷の保護も合わせて行うことができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図2は本発明における実施の形態における電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路を示す。
【0016】
電源1と電流駆動型半導体スイッチ8のベース端子又はゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗10と正の温度特性を有する第2の可変抵抗12と、正の温度特性を有する第3の可変抵抗13と、前記電流駆動型半導体スイッチ8のコレクタ又はドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部11を備え、前記第1の可変抵抗10及び第3の可変抵抗13は前記熱伝導部11により熱を供給され、前記第2の可変抵抗12は前記熱伝導部11以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチ8の周辺部)より熱を供給されるように配置される。
【0017】
前記第1の可変抵抗10及び第3の可変抵抗13は、前記熱伝導部11により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1の可変抵抗10と第3の可変抵抗13の和が負の温度特性を有し、第1の可変抵抗10と第3の可変抵抗13との和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗12の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗13は、前記熱伝導部11より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチ8のベース又はゲート電流が制限され、コレクタ又はドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有する。
【0018】
以上のように構成された電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路において、以下にその動作と、作用を説明する。
【0019】
まず、電流駆動型半導体スイッチ8に流れるコレクタ又はドレイン電流の動作損失により過熱される半導体デバイスを外装するパッケージあるいは半導体デバイスに相当する熱伝導部11の温度をTcとし、該熱伝導部11により供給される熱により抵抗値が変化する第1の可変抵抗10及び、第3の可変抵抗13の温度特性をそれぞれ図3、図5に示す。
【0020】
第1の可変抵抗10は図3に示すように電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcに対して負の温度特性を有し、第3の可変抵抗13は図5に示すように電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcに対して正の温度特性を有し、特に熱伝導部11の温度TcがTclim以上ではベース又はゲート電流を制限しコレクタ又はドレイン電流を遮断する抵抗値になるようにする。また、電流駆動型半導体スイッチ8の周辺温度あるいは雰囲気温度Taより供給される熱により抵抗値が変化する第2の可変抵抗12の温度特性を図4に示す。第2の可変抵抗12は図4に示すように雰囲気温度Taに対して正の温度特性を有する。
【0021】
例えば、電流駆動型半導体スイッチ8にワイドバンドギャップ型の化合物半導体であるGaN(窒化ガリウム)を用いた場合、ゲート電流Igとドレイン電流Idには図6に示すような電気特性を有する。電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcがTcaで固定されている場合、ゲート電流Ig_a、Ig_b、Ig_cの大小関係をIg_a>Ig_b>Ig_cとすると、流すことのできる最大ドレイン電流はゲート電流IgをIg_aに設定したときに最大となり、ゲート電流IgをIg_cに設定したときに最小となる。
【0022】
また、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcとドレイン電流Idには図7に示すような電気特性がある。ゲート電流IgがIg_aで固定される場合、電流駆動型半導体スイッチ8の温度Tca、Tcb、Tccの大小関係をTca>Tcb>Tccとすると、流すことのできる最大ドレイン電流は電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcをTccに設定したときに最大となり、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度TcをTcaに設定したときに最小となる。
【0023】
ここで雰囲気温度Taが等しく、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0024】
例えば雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔTがΔT=20℃(Tc=40℃)を条件(a)とし、雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔTがΔT=40℃(Tc=60℃)を条件(b)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第3の可変抵抗(10、12、13)を用い、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をRg2(20℃)、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をそれぞれRg1(40℃)、Rg3(40℃)とRg1(60℃)、Rg3(60℃)とすると条件(a)、条件(b)それぞれのゲート抵抗Rg(a)、Rg(b)は以下のようになる。
Rg(a)=Rg1(40℃)+Rg2(20℃)+Rg3(40℃)
Rg(b)=Rg1(60℃)+Rg2(20℃)+Rg3(60℃)
ここでRg1とRg3の抵抗値の和は負の温度特性を有するように予め選択すればRg(a)とRg(b)の大小関係は
Rg(a)>Rg(b)
となり、ドレイン電流Idの大きい駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆にドレイン電流Idの小さい駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0025】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、ドレイン電流が大きい場合(条件(b))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(b)、ドレイン電流が小さい場合(条件(a))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(a)(<Ec2/Rg(b))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0026】
次に電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが等しく、雰囲気温度Ta、ドレイン電流Idが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0027】
例えば電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=80℃、雰囲気温度Ta=20℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=60℃を条件(c)とし、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=80℃、雰囲気温度Ta=60℃、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃を条件(d)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第
3の可変抵抗(10、12、13)を用い、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をRg1(80℃)、Rg3(80℃)、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をRg2(20℃)、Rg2(60℃)とすると条件(c)、条件(d)それぞれのゲート抵抗Rg(c)、Rg(d)は以下のようになる。
Rg(c)=Rg1(80℃)+Rg2(20℃)+Rg3(80℃)
Rg(d)=Rg1(80℃)+Rg2(60℃)+Rg3(80℃)
ここでRg2の抵抗値は正の温度特性を有するためRg(c)とRg(d)の大小関係は
Rg(c)<Rg(d)
となり、ドレイン電流Idの大きい駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆にドレイン電流Idの小さい駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0028】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、ドレイン電流が大きい場合(条件(c))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(c)、ドレイン電流が小さい場合(条件(d))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(d)(<Ec2/Rg(c))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0029】
次にドレイン電流Idによる温度上昇ΔTが等しく、雰囲気温度Ta、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tcが異なる場合の駆動回路の電力損失について説明する。
【0030】
例えばドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃、雰囲気温度Ta=20℃、電流駆動型半導体スイッチ8における熱伝導部11の温度Tc=40℃を条件(e)とし、ドレイン電流Idによる温度上昇ΔT=20℃、雰囲気温度Ta=60℃、熱伝導部11の温度Tc=80℃を条件(f)とした場合、ドレイン電流Idにより必要なゲート電流が流れるように予め温度特性が考慮された第1から第3の可変抵抗(10、12、13)を用い、熱伝導部11の温度Tcに依存する第1、第3の可変抵抗(10、13)の抵抗値をそれぞれRg1(40℃)、Rg3(40℃)とRg1(80℃)、Rg3(80℃)、雰囲気温度Taに依存する第2の可変抵抗12の抵抗値をそれぞれRg2(20℃)、Rg2(60℃)とすると条件(c)、条件(d)それぞれのゲート抵抗Rg(c)、Rg(d)は以下のようになる。
Rg(e)=Rg1(40℃)+Rg2(20℃)+Rg3(40℃)
Rg(f)=Rg1(80℃)+Rg2(60℃)+Rg3(80℃)
ここでRg1とRg3の抵抗値の和は負の温度特性を有し、Rg1とRg3の抵抗値の和についての温度に対する負の傾きよりRg2の抵抗値の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなるように予め選択すればRg(e)とRg(f)の大小関係は
Rg(e)>Rg(f)
となり、ドレイン電流Idが等しい場合、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが高くなる駆動回路のゲート電流が大きくなるように調整され、逆に雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが低くなる駆動回路のゲート電流が小さくなるように調整される。
【0031】
よってゲート駆動用電源電圧Ecとすると、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが高くなる場合(条件(f))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(f)、雰囲気温度Ta、熱伝導部11の温度Tcが低くなる場合(条件(e))の駆動回路の電力損失はEc2/Rg(e)(<Ec2/Rg(f))となり、ドレイン電流Idの必要に応じたゲート電流を供給することで駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【0032】
更に電流駆動型半導体スイッチ8の熱伝導部11の温度TcがTclim以上となる場
合について説明する。ドレイン電流Idがほぼ遮断されるゲート電流IgがIglim以下である場合、電流駆動型半導体スイッチ8あるいは負荷7の最大許容以上のドレイン電流が流れた場合の熱伝導部11の温度をTclim、このときの第3の可変抵抗13の抵抗値をRg3(Tclim)とし、以下の関係を満たすように第3の可変抵抗13を予め設定する。
Ec<{Iglim×Rg3(Tclim)}
これにより電流駆動型半導体スイッチ8あるいは負荷7において、過電流に対する機械的な装置を不要にした保護手段となり、他の保護装置と組み合わせることでより高い信頼性を実現することができる。
【0033】
また、図2に示す駆動回路をエアコン等の圧縮機駆動用インバータ回路に適用した場合について説明する。図8はエアコン用電力変換装置の概略図、図9にインバータ回路を示す。交流電源14はリアクタ15を介してダイオードブリッジ16に入力整流され、整流電圧をコンデンサ17で平滑化する。平滑化された電圧をインバータ回路18に入力し、交流電力に変換して負荷7である圧縮機モータ19に電力を伝える。ここでインバータ回路18はパワー半導体として6個(QUH、QUL、QVH、QVL、QWH、QWL)の電流駆動型半導体スイッチ8であるGaN半導体スイッチで構成する。
【0034】
一般的にエアコン等の圧縮機駆動用インバータ回路では6個のパワー半導体が1つのモジュール20に配置される構成をとる。図10は該モジュール20におけるU相の上下アームのパワー半導体スイッチ(QUH、QUL)と上アーム側の電流駆動型半導体スイッチ8であるパワー半導体スイッチ(QUH)の駆動回路を示す。
【0035】
ここでモジュール20を熱伝導部11として考えれば、第1および第3の可変抵抗(10、13)をモジュール20の内に配置して、第2の可変抵抗12をモジュール20の外に配置すれば、電流駆動型半導体スイッチ8(パワー半導体)を流れるドレイン電流やパワー半導体の雰囲気温度の変化に伴い、前述したようにゲート電流が調整され駆動回路における動作損失を抑制する。
【0036】
特にインバータエアコン等のようにインバータ回路18が設置される環境温度、雰囲気温度が季節(夏冬)や時間帯(昼夜)により大きく変動し、更にインバータ運転によりインバータ動作電流が大きく変動する場合において、常時最大ドレイン電流値や最もドレイン電流を流しにくい条件(温度)を想定してゲート電流を設定する必要がなく、ドレイン電流や温度により必要となる電流値に調整されたゲート電流を供給することで駆動回路における動作損失を抑制することができる。
【0037】
なお、第3の可変抵抗13はなくても構わない。
【0038】
また、エアコン用インバータ回路への適用について説明したが、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など温度や電流値の変動のある各種インバータ回路においても同様の効果が期待できる。
【0039】
以上のように温度により抵抗値が変化する可変抵抗を用いて、電流駆動型半導体スイッチ8の熱伝導部11の温度Tc(デバイスケース温度)や雰囲気温度Ta、ドレイン電流Idに応じてゲート電流を調整することにより駆動回路における電力損失を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明は従来の電流駆動型半導体スイッチ8の駆動回路と比較して、特に環境温度や動作電流の変化の大きなインバータ機器において、部品点数の少ない簡単な
構成で駆動回路における電力損失の抑制を実現することができるためエアコンや冷蔵庫、洗濯機をはじめ様々なインバータ機器への応用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 電源(制御側)
2 第1のスイッチング素子
3 第2のスイッチング素子
4 インダクタ
5 ダイオード
6 電源(負荷側)
7 負荷
8 電流駆動型半導体スイッチ
9 制御部
10 第1の可変抵抗
11 熱伝導部
12 第2の可変抵抗
13 第3の可変抵抗
14 交流電源
15 リアクタ
16 ダイオードブリッジ
17 コンデンサ
18 インバータ回路
19 モータ
20 モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給されるように配置されたことを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項2】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1と第2の可変抵抗は第1の可変抵抗の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなることを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項3】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と正の温度特性を有する第3の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1及び第3の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1及び第3の可変抵抗は、前記熱伝導部により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1と第3の可変抵抗値の和が負の温度特性を有し、第1と第3の可変抵抗の和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗は、前記熱伝導部より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチのゲート電流が制限され、ドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有することを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項4】
出力可変型の空気調和機に適用したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項1】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と、前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給されるように配置されたことを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項2】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1と第2の可変抵抗は第1の可変抵抗の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さくなることを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項3】
電源と電流駆動型半導体スイッチのゲート端子の間に直列に接続される負の温度特性を有する第1の可変抵抗と正の温度特性を有する第2の可変抵抗と正の温度特性を有する第3の可変抵抗と、
前記電流駆動型半導体スイッチのドレイン電流による動作損失により過熱される熱伝導部を備え、
前記第1及び第3の可変抵抗は前記熱伝導部により熱を供給され、前記第2の可変抵抗は前記熱伝導部以外(例えば前記電流駆動型半導体スイッチの周辺部)より熱を供給されるように配置され、前記第1及び第3の可変抵抗は、前記熱伝導部により供給される熱量が所定値未満の場合、前記第1と第3の可変抵抗値の和が負の温度特性を有し、第1と第3の可変抵抗の和の温度に対する抵抗値の負の傾きより第2の可変抵抗の温度に対する抵抗値の正の傾きが小さく、前記第3の可変抵抗は、前記熱伝導部より供給される熱量が所定値を超過した場合、前記電流駆動型半導体スイッチのゲート電流が制限され、ドレイン電流が概ね遮断される抵抗値になるような温度特性を有することを特徴とする電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【請求項4】
出力可変型の空気調和機に適用したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電流駆動型半導体スイッチの駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−21583(P2013−21583A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154537(P2011−154537)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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