説明

電源システム

【課題】入出力される電流が少ない状態であっても、高い効率を維持することが可能な電源システムを提供する。
【解決手段】電源システムPSは、直流電力の入出力が行われる電源入出力端T11,T12が並列接続されており、電源入出力端T11,T12を介して直流電力の充放電が可能な電源装置1を複数備えており、各々の電源装置1は、少なくとも1つの電池モジュール10と、電池モジュール10に対して充放電される直流電力の電力変換を行うDC/DCコンバータ20と、外部から入力される指令信号C(或いは、信号C1)からDC/DCコンバータ20の制御量を示す情報を求め、その情報に基づいたDC/DCコンバータ20の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行うコントローラ40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力の充放電が可能な電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO)の排出量を低減すべく、モータが動力発生源として盛んに用いられている。例えば、自動車等の車両では、一般的に動力発生源としてエンジン等の内燃機関が用いられていたが、近年では動力発生源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)や動力発生源としてモータのみを用いる電気自動車(EV:Electric Vehicle)の研究・開発が盛んに行われている。
【0003】
モータを動力発生源として用いる装置では、直流電力の充放電が可能なリチウムイオン二次電池等の二次電池が電源として用いられる。二次電池を電源とする電源システムを構築する場合に、システム設計者は、二次電池、二次電池の充放電を制御するDC/DCコンバータ、及び制御対象の電気機器を駆動するインバータ等の機器を個別に用意し、これらの機器を電源システムの仕様に適合するように組み合わせる必要がある。大容量の電源システムを構築する場合にも同様に、大容量の二次電池(例えば、数メガワット)と大容量のコンバータとを個別に入手して電源システムの仕様に合わせた組み合わせを行う必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、太陽電池等の直流電源と負荷との間に並列接続された複数のDC/DCコンバータを備える電源装置の性能を向上させる技術が開示されている。具体的には、電源装置の総入力又は総出力電流値をDC/DCコンバータの運転台数で除した値が電流センサの定格電流値に最も近似する値となるようにDC/DCコンバータの運転台数を制御することで電源装置の性能を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−142018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した二次電池及びDC/DCコンバータを備える電源システムの大容量化を図るには、例えば二次電池を複数並列して設けるとともに、上述した特許文献1のようにDC/DCコンバータを複数並列して設けることが考えられる。このとき、二次電池とDC/DCコンバータとを1対1で対応付けてユニット化すれば、構成及び制御性の簡単化を図ることができると考えられる。
【0007】
ここで、二次電池の充放電電流は、二次電池の残容量(SOC:State Of Charge)や放電深度(DOD:Depth Of Discharge)に基づいて制御されるのが基本である。このため、上述した通り、二次電池とDC/DCコンバータとを1対1で対応付けてユニット化した場合には、全てのユニットが同時に動作することを前提として、各ユニットで入出力する必要のある電流の分担が、各ユニットに設けられた二次電池のSOCやDODに基づいて決定されることになる。
【0008】
しかしながら、電源システムで入出力される電流を全てのユニットで分担する場合には、各ユニットに設けられた二次電池の充放電電流が電源システム全体の容量に対して小さくなる状況が生じ得る。かかる状況が生ずると、各ユニットは入出力電流が予め設定された定格電流に対して低い状態(低負荷率)で動作することになる。すると、各ユニットに設けられたDC/DCコンバータの変換効率が低下してしまい、これにより電源システム全体の効率が低下する虞が考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、入出力される電流が少ない状態であっても、高い効率を維持することが可能な電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電源システムは、直流電力の入出力が行われる電源入出力端(T11、T12)が並列接続されており、該電源入出力端を介して直流電力の充放電が可能な電源装置(1)を複数備える電源システム(PS)であって、前記電源装置は、少なくとも1つの電池モジュール(10)と、前記電池モジュールに対して充放電される直流電力の電力変換を行う電力変換回路(20)と、外部から入力される指令信号(C、C1)から前記電力変換回路の制御量を示す情報を求め、該情報に基づいた前記電力変換回路の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行う制御部(40)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記電力変換回路の制御を遅延させる時間が、前記電源装置毎に異なる時間が設定されていることを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記制御部が、前記指令信号から前記電力変換回路の制御量を示す情報を求める制御量算出部(51)と、前記制御量算出部で求められた制御量を入力とするヒステリシスコンパレータ(52)と、前記制御量算出部で求められた制御量と前記ヒステリシスコンパレータの出力との積を求める演算部(53)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記電源装置の少なくとも1つが、制御量算出部で求められた制御量が零よりも大きくなった場合に前記ヒステリシスコンパレータが動作するよう設定されていることを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記電源装置が、前記電池モジュール、前記電力変換回路、及び前記制御部をユニット化してなるものであることを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記電池モジュールが、電池セルと該電池セルを監視する監視基板とをモジュール化したものであり、前記制御部が、前記電池モジュールに設けられた前記監視基板の監視結果を参照しつつ、前記情報に基づいた前記電力変換回路の制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の電源システムは、前記電源装置が、前記監視基板の監視結果を示す情報を含む信号の入出力が可能な信号入出力端(T22)を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源装置の各々に設けられた制御部が、外部から入力される指令信号電力変換回路の制御量を示す情報を求め、その情報に基づいた電力変換回路の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行うことによって、電源装置の各々に対する直流電力の充放電が輪番で行われるため、入出力される電流が少ない状態であっても、高い効率を維持することが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電源システムの要部構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態による電源システムの昇圧(放電)運転時における制御に係るブロックを抜き出して示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による電源システムの降圧(充電)運転時における制御に係るブロックを抜き出して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電源システムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電源システムの要部構成を示す回路図である。図1に示す通り、本実施形態の電源システムPSは、電源入出力端T11,T12が並列接続されるとともに信号入出力端T22が互いに接続されており、電源入出力端T11,T12を介して直流電力の充放電が可能な複数の電源装置1を備える。
【0014】
電源システムPSに設けられる複数の電源装置1のうちの1つがマスター電源装置Mとされ、残りがスレーブ電源装置Sとされている。ここで、マスター電源装置Mは、充放電すべき直流電力の電力量を示す指令信号C(例えば、電圧指令信号)が入力される信号入出力端T21を備えており、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々で充放電すべき直流電力の電力量を統括制御する電源装置である。また、スレーブ電源装置Sは、マスター電源装置Mの制御の下で、直流電力の充放電を行う電源装置である。
【0015】
かかる構成の電源システムPSは、スレーブ電源装置Sの並列数を増減させることによって、容量を変えることが可能である。具体的には、スレーブ電源装置Sの並列数を増加させることにより電源システムPSの容量を増加させることができ、逆にスレーブ電源装置Sの並列数を減少させることにより電源システムPSの容量を減少させることができる。この電源システムPSは、例えば直流電力を交流電力に変換するインバータINVに接続される。
【0016】
具体的に、マスター電源装置Mは、電池モジュール10、DC/DCコンバータ20(電力変換回路)、電流センサ31、電圧センサ32、及びコントローラ40(制御部)をユニット化した電源である。このマスター電源装置Mは、一対の電源入出力端T11,T12を介して直流電力の充電及び放電が可能な電源装置(所謂、バイポーラ電源装置)である。
【0017】
電池モジュール10は、電池セルと電池監視基板(監視基板)とをモジュール化したものであり、マスター電源装置M内において少なくとも1つ設けられている。尚、電池モジュール10の数(直列接続数)は、マスター電源装置Mの出力電圧や容量等の仕様に応じて適宜設定される。ここで、上記の電池セルは、リチウムイオン二次電池セル等の単電池セルを複数積層したものである。また、上記の電池監視基板は、電池セルの電圧・電流等を監視する基板であり、電池セル毎に設けられる。
【0018】
DC/DCコンバータ20は、電池モジュール10と一対の電源入出力端T11,T12との間に設けられており、コントローラ40の制御の下で、電池モジュール10から放電される直流電力、或いは電池モジュール10に充電される直流電力(一対の電源入出力端T11,T12を介して入力される直流電力)の電力変換を行う。このDC/DCコンバータ20は、コンデンサ21、チョークコイル22、トランジスタ23a,23b、ダイオード24a,24b、及びコンデンサ25を備える。
【0019】
コンデンサ21は、電池モジュール10の正電極と負電極との間に接続されている。尚、電池モジュール10の負電極は、電源入出力端T12に接続されている。このコンデンサ21は、マスター電源装置Mの充電時(電池モジュール10の充電時)に、電池モジュール10に供給される電力を平滑化して直流電流にするために設けられる。
【0020】
チョークコイル22は、一端がコンデンサ21の一方の電極(電池モジュール10の正電極に接続された電極)に接続されており、他端がトランジスタ23aのコレクタ電極とトランジスタ23bのエミッタ電極との接続点に接続されている。トランジスタ23a,23bは、バイポーラトランジスタであり、コントローラ40によってオン状態及びオフ状態が制御される。尚、トランジスタ23a,23bとしてFETトランジスタ(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。
【0021】
トランジスタ23aは、コレクタ電極がトランジスタ23bのエミッタ電極及びチョークコイル22の他端に接続されており、エミッタ電極がコンデンサ21の他方の電極(電池モジュール10の負電極及び電源入出力端T12に接続された電極)に接続されている。また、トランジスタ23bは、エミッタ電極がトランジスタ23aのコレクタ電極及びチョークコイル22の他端に接続されており、コレクタ電極がコンデンサ25の一方の電極及び電源入出力端T11に接続されている。これらトランジスタ23a,23bのベース電極はコントローラ40に接続されている。
【0022】
ダイオード24a,24bは、トランジスタ23a,23bのコレクタ・エミッタ間にそれぞれ接続されている。具体的に、ダイオード24aは、アノード電極がトランジスタ23aのエミッタ電極に接続され、カソード電極がトランジスタ23aのコレクタ電極に接続されている。また、ダイオード24bは、アノード電極がトランジスタ23bのエミッタ電極に接続され、カソード電極がトランジスタ23bのコレクタ電極に接続されている。コンデンサ25は、一対の電源入出力端T11,T12の間に接続されている。このコンデンサ25は、マスター電源装置Mの放電時に、電源入出力端T11,T12から外部に出力される電力を平滑化して直流電流にするために設けられる。
【0023】
電流センサ31は、電池モジュール10の正電極とDC/DCコンバータ20とを接続する電流路に取り付けられており、電池モジュール10から流出する電流(放電電流)、及び電池モジュール10に流入する電流(充電電流)を検出する。電圧センサ32は、コンデンサ25に対して並列に取り付けられており、コンデンサ25の電位差(電源入出力端T11,T12間に現れる電圧)を検出する。これら電流センサ31及び電圧センサ32の検出結果を示す検出信号はコントローラ40に出力される。
【0024】
コントローラ40は、演算器41、自動電圧制御器(AVR:Automatic Voltage Regulator)42、電流指令値生成部43、演算器44、自動電流制御器(ACR:Automatic Current Regulator)45、及びPWM制御器46を備える。そして、信号入出力端T21から入力される指令信号CからDC/DCコンバータ20の制御量を示す情報(例えば、電流指令値)を求め、この情報に基づいたDC/DCコンバータ20の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行う。
【0025】
コントローラ40の内部に設けられるブロックは、ハードウェアにより実現されていても良く、ソフトウェアにより実現されていても良い。ソフトウェアにより実現する場合には、CPUやメモリ等を用いてコントローラ40を構成し、各ブロックの機能を実現するプログラムをCPUに読み込ませ、プログラムとCPU等のハードウェア資源とが協働することにより実現される。
【0026】
演算器41は、信号入出力端T21から入力される指令信号Cから、電圧センサ32の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電圧誤差信号を求める。自動電圧制御器42は、演算器41から出力される電圧誤差信号を零とする制御信号を出力する。電流指令値生成部43は、電池モジュール10(スレーブ電源装置Sに設けられた電池モジュール10を含む)の監視結果を参照しつつ、自動電圧制御器42からの制御信号に基づいて、マスター電源装置Mが備えるDC/DCコンバータ20で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である電流指令値を求める。尚、電流指令値生成部43は、自動電圧制御器42からの制御信号及び電池モジュール10の監視結果を示す信号を含む信号C1を信号入出力端T22に出力する。
【0027】
演算器44は、電流指令値生成部43で生成された電流指令値から、電流センサ31の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電流誤差信号を求める。自動電流制御器45は、演算器34から出力される電流誤差信号を零とする制御信号を生成して出力する。PWM制御器46は、自動電流制御器45からの制御信号に基づいて、DC/DCコンバータ20に設けられたトランジスタ23a,23bをスイッチング動作(PWMスイッチング動作)させる。
【0028】
ここで、コントローラ40が、トランジスタ23bをオフ状態にし、トランジスタ23aをスイッチング動作させると、DC/DCコンバータ40は非絶縁型昇圧チョークコンバータとして動作する。このため、電池モジュール10から放電された直流電力は、電圧が昇圧されて電源入出力端T11,T12を介して外部に出力される。尚、かかる動作は、マスター電源装置Mに設けられた電池モジュール10から直流電力を放電させる場合に行われる。
【0029】
これに対し、コントローラ40が、トランジスタ23aをオフ状態にし、トランジスタ23bをスイッチング動作させると、DC/DCコンバータ40は、非絶縁型降圧チョークコンバータとして動作する。このため、外部から電源入出力端T11,T12を介して入力された直流電力は、電圧が降圧されて電池モジュール10に供給される。尚、かかる動作は、マスター電源装置Mに設けられた電池モジュール10を充電する場合に行われる。
【0030】
スレーブ電源装置Sは、基本的な構成がマスター電源装置Mとほぼ同様のバイポーラ電源装置である。具体的に、スレーブ電源装置Sは、電池モジュール10、DC/DCコンバータ20(電力変換回路)、電流センサ31、及びコントローラ40(制御部)をユニット化した電源である。但し、マスター電源装置Mが備える信号入出力端T21及び電圧センサ32が省略されているとともに、コントローラ40においては演算器41及び自動電圧制御器42が省略されている。
【0031】
かかる構成のスレーブ電源装置Sに設けられたコントローラ40は、マスター電源装置Mに設けられたコントローラ40とは異なり、信号入出力端T22から入力される信号C1からDC/DCコンバータ20の制御量を示す情報(例えば、電流指令値)を求め、この情報に基づいたDC/DCコンバータ20の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行う。
【0032】
具体的には、電流指令値生成部43が、電池モジュール10(マスター電源装置M及び他のスレーブ電源装置Sに設けられた電池モジュール10を含む)の監視結果を参照しつつ、信号C1に含まれる制御信号に基づいて、自装置が備えるDC/DCコンバータ20で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である電流指令値を求める。尚、生成された電流指令値に基づいたDC/DCコンバータ20の制御は、マスター電源装置Sと同様に行われる。
【0033】
ここで、前述したマスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられるコントローラ40の遅延時間は、それぞれ異なる時間に設定されている。このような遅延時間を設定するのは、電源装置1(マスター電源装置M,スレーブ電源装置S)を輪番で動作させることによって、入出力される電流が少ない状態であっても、高い効率を維持するためである。つまり、全ての電源装置1を同時に動作させると各電源装置1は低負荷率で動作してしまうため、電源装置1を輪番で動作させることによって各電源装置1を極力高負荷率で動作させるためである。
【0034】
尚、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sは、基本的な構成が同様である。このため、これらの構成を全く同じにし、設定によってマスター電源装置Mにするのか、スレーブ電源装置Sにするのかを選択しても良い。例えば、電源装置1の各々を識別するために割り当てられる識別番号が「0」である場合にはマスター電源装置Mにし、「0」以外である場合にはスレーブ電源Sにするといった具合である。また、コントローラ40で用いるプログラムの種類に応じてマスター電源装置Mにするのか、スレーブ電源装置Sにするのかを決定しても良い。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態による電源システムの昇圧(放電)運転時における制御に係るブロックを抜き出して示す図である。図2に示す通り、電源装置1(マスター電源装置M及びスレーブ電源装置S)に設けられる電流指令値生成部43は、制御量算出部51、ヒステリシスコンパレータ52、演算部53、及び電流制限部54をそれぞれ備える。尚、図2において、符号D1,D2を付して示す信号は、マスター電源装置Mが備える電圧センサ32及び電流センサ31から出力される検出信号をそれぞれ示しており、符号D3を付して示す信号は、スレーブ電源装置Sの各々が備える電流センサ31から出力される検出信号を示している。
【0036】
制御量算出部51は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられた電池モジュール10の残容量(SOC1〜SOCn)を参照しつつ、マスター電源装置Mのコントローラ40に設けられる自動電圧制御器42から出力される制御信号(或いは、信号C1に含まれる制御信号)に基づいて、DC/DCコンバータ20の制御量を求める。つまり、制御量算出部51は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々において、出力すべき電流の分担を求める。
【0037】
ヒステリシスコンパレータ52は、制御量算出部51で求められた制御量を入力としており、入力される制御量が予め設定された閾値を超えた場合に、予め設定された時間(遅延時間)が経過した時点で出力する。ここで、マスター電源装置Mに設けられるヒステリシスコンパレータ52は、制御量算出部51で求められた制御量が値「0」よりも大きい場合に動作し、その制御量が予め設定された閾値を下回った場合に動作を停止(リセット)するよう設定されている。尚、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられるヒステリシスコンパレータ52の遅延時間は、それぞれ異なる時間に設定されている。
【0038】
演算部53は、制御量算出部51で求められた制御量とヒステリシスコンパレータ52の出力との積を求める。電流制限部54は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々において、制御量算出部51で求められた制御量に応じた電流を放電することができない場合に、放電量を制限する電流指令値を生成する処理(リミッタ処理)を行う。
【0039】
次に、電源システムPSにおいて直流電力の放電が行われる場合の動作について図2を参照しつつ説明する。直流電力を放電すべき旨を示す指令信号Cがマスター電源装置Mに設けられた信号入出力端T21から入力されると、まずマスター電源装置Mに設けられている演算器41によって、指令信号Cから電圧センサ32の検出結果が減算されて電圧誤差信号が求められる。この電圧誤差信号は、マスター電源装置Mに設けられている自動電圧制御器42に入力され、自動電圧制御器42において電圧誤差信号を零とする制御信号が生成される。
【0040】
自動電圧制御器42で生成された制御信号は、マスター電源装置Mに設けられた電流指令値生成部43に加えて、スレーブ電源装置Sに設けられた電流指令値生成部43にそれぞれ出力される。そして、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sに設けられた電流指令値生成部43の各々において、自装置に設けられたDC/DCコンバータ20で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である電流指令値が求められる。
【0041】
具体的には、電流指令値生成部43に設けられた制御量算出部51において、全ての電源装置1(マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置S)の残容量(SOC)の総和に対する自装置の残容量の比が算出されて自装置に設けられたDC/DCコンバータ20の制御量が求められる。そして、この制御量が、演算部53及び電流制限部54を順に介して電流指令値として出力されることとなる。
【0042】
ここで、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sに設けられたヒステリシスコンパレータ52のうち、マスター電源装置Mに設けられたヒステリシスコンパレータ52のみが、制御量算出部51で算出される制御量が値「0」よりも大きい場合に動作するよう設定されている。このため、マスター電源装置Mに設けられた電流指令値生成部43からは電流指令値が出力されるが、スレーブ電源装置Sに設けられた電流指令値生成部43からは電流指令値が出力されない。このように、動作が開始された直後においては、マスター電源装置Mからの直流電力の放電のみが行われ、スレーブ電源装置Sからの直流電力の放電は行われない。
【0043】
指令信号Cの値(放電すべき直流電力の大きさ)が徐々に大きくなるにつれて、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sの制御量算出部51で算出される制御量の値も大きくなる。スレーブ電源装置Sの各々において、制御量算出部51で算出される制御量の値がヒステリシスコンパレータ52に設定された閾値を超えると、遅延時間が最も短く設定されたものから順に動作する。これにより、ヒステリシスコンパレータ52が動作したスレーブ電源装置Sから直流電力の放電が順次開始され、指令信号Cの値が増大するにつれて直流電力の放電を行うスレーブ電源装置Sの数が増加する。尚、放電が開始されるタイミングは、ヒステリシスコンパレータ52に設定された遅延時間に依存する。
【0044】
これに対し、指令信号Cの値が徐々に小さくなると、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sの制御量算出部51で算出される制御量の値も徐々に小さくなる。マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々において、制御量算出部51で算出される制御量の値がヒステリシスコンパレータ52に設定された閾値以下になると、遅延時間が最も短く設定されたものから順に動作を停止する。このように、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sは、ヒステリシスコンパレータ52の作用によって、放電を先に開始したものから順に動作を停止する。尚、放電が停止されるタイミングも、ヒステリシスコンパレータ52に設定された遅延時間に依存する。
【0045】
以上の通り、本実施形態において、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sは、ヒステリシスコンパレータ52の作用によって輪番で動作し、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sの各々からの直流電力の放電が輪番で行われるとともに、直流電力の放電の停止が輪番で行われる。このため、特定の電源装置1のみからの放電が継続されるといった事態を避けることができるとともに、入出力される電流が少ない状態であっても、高い効率を維持することが可能である。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態による電源システムの降圧(充電)運転時における制御に係るブロックを抜き出して示す図である。図3に示す通り、電源装置1(マスター電源装置M及びスレーブ電源装置S)に設けられる電流指令値生成部43は、図2中に示す制御量算出部51に代えて、制御量算出部61及び除算部62を設けた構成である。尚、図3において、符号V1を付して示す信号は、マスター電源装置Mに設けられた電池モジュール10の出力電圧を示す信号を示しており、符号V2を付して示す信号は、スレーブ電源装置Sの各々に設けられた電池モジュール10の出力電圧を示す信号を示している。
【0047】
制御量算出部61は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられた電池モジュール10の放電深度(DOD1〜DODn)を参照しつつ、マスター電源装置Mのコントローラ40に設けられる自動電圧制御器42から出力される制御信号(或いは、信号C1に含まれる制御信号)に基づいて、DC/DCコンバータ20の制御量を求める。つまり、制御量算出部51は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々における電池モジュール10の充電量の分担を求める。除算部62は、制御量算出部61で求められた制御量と自装置が備える電池モジュール10の出力電圧との比を算出する。
【0048】
電源システムPSにおいて直流電力の充電が行われる場合の動作は、基本的には図2を参照して説明した動作と同じである。つまり、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sは、ヒステリシスコンパレータ52の作用によって輪番で動作し、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sの各々における充電が輪番で行われるとともに、充電の停止が輪番で行われる。このため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
以上、本発明の一実施形態による電源システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態で説明したマスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられるヒステリシスコンパレータ52の閾値は、同じ値が設定されていても良く、異なる値が設定されていても良い。また、ヒステリシスコンパレータ52の遅延時間は、電源システムPSに要求される仕様や、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの性能に応じて任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 電源装置
10 電池モジュール
20 DC/DCコンバータ
40 コントローラ
51 制御量算出部
52 ヒステリシスコンパレータ
53 演算部
C 指令信号
C1 信号
PS 電源システム
T11,T12 電源入出力端
T22 信号入出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力の入出力が行われる電源入出力端が並列接続されており、該電源入出力端を介して直流電力の充放電が可能な電源装置を複数備える電源システムであって、
前記電源装置は、少なくとも1つの電池モジュールと、
前記電池モジュールに対して充放電される直流電力の電力変換を行う電力変換回路と、
外部から入力される指令信号から前記電力変換回路の制御量を示す情報を求め、該情報に基づいた前記電力変換回路の制御を予め設定された時間だけ遅延させて行う制御部と
を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記電力変換回路の制御を遅延させる時間は、前記電源装置毎に異なる時間が設定されていることを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記指令信号から前記電力変換回路の制御量を示す情報を求める制御量算出部と、
前記制御量算出部で求められた制御量を入力とするヒステリシスコンパレータと、
前記制御量算出部で求められた制御量と前記ヒステリシスコンパレータの出力との積を求める演算部と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電源システム。
【請求項4】
前記電源装置の少なくとも1つは、制御量算出部で求められた制御量が零よりも大きくなった場合に前記ヒステリシスコンパレータが動作するよう設定されていることを特徴とする請求項3記載の電源システム。
【請求項5】
前記電源装置は、前記電池モジュール、前記電力変換回路、及び前記制御部をユニット化してなるものであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記電池モジュールは、電池セルと該電池セルを監視する監視基板とをモジュール化したものであり、
前記制御部は、前記電池モジュールに設けられた前記監視基板の監視結果を参照しつつ、前記情報に基づいた前記電力変換回路の制御を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電源装置は、前記監視基板の監視結果を示す情報を含む信号の入出力が可能な信号入出力端を備えることを特徴とする請求項6記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−42583(P2013−42583A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176755(P2011−176755)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】