説明

電源制御方法および電源制御装置

【課題】接続された電源の種類を判別し、判別結果に応じて、ラッシュ電流の抑制処理を行うことが可能な電源制御方法および電源制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電源からの入力電圧をスイッチング制御して出力電圧を得る電源制御方法または電源制御装置であって、入力電圧の一波ごとのパルス幅に基づいて電源が交流電源か直流電源かを判定し、電源が交流電源の場合、測定されたパルス幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行い、直流電源の場合、所定の時間幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、スイッチング電源を用いた電源制御方法および電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと環境への配慮を両立する照明機器として発光ダイオード(以下、「LED」という)を用いた照明機器が注目を集めている。LEDは電流を流す事により発光し、その明るさは電流値に比例するため、現在のLED照明機器はLEDの輝度、すなわち電流値を制御するため、LEDを制御する機能部を含め全て直流で制御される。また、LED照明機器以外にも様々な家庭用電化製品が直流により制御される。
【0003】
一般的に、商用交流電源から直流電圧を得るための手法の一つとして、パルス変調型のスイッチング電源を用いた電源制御装置を用いることが知られている。パルス変調型のスイッチング電源を用いた電源制御装置の一例を図8に示す。図8の電源制御装置100は商用交流電源に接続されるノイズ防止用のノイズフィルタ101、ノイズフィルタ101の出力を整流する整流回路102、整流回路102で整流された脈流を平滑化する平滑回路105、および平滑回路105の出力電圧を所定電圧に変換するスイッチング電源103(以下、「SW電源103」という)を備えている。
【0004】
図9は、SW電源103の概略構成を示す図である。SW電源103は、パワーMOSFETからなるスイッチング素子6(以下、「SW素子6」という)、トランス7、整流ダイオード8、平滑コンデンサ9、およびスイッチング制御部130(以下、「SW制御部130」という)からなる。SW電源103では、平滑回路105にて平滑化された入力電圧を、スイッチング素子6による高速スイッチングで高周波のパルスにしてトランス7に送る。そして、整流ダイオード8で整流を行い、平滑コンデンサ9で平滑化して出力電圧を得る。
【0005】
また、SW制御部130は、出力電圧をフィードバックしてSW素子6のON/OFF制御を行う制御部であり、出力電圧検出回路321、比較器331、異常検出器341、SW素子駆動回路351、発振器360および三角波生成部361からなる。SW制御部130では、発振器360にて生成された方形波が、三角波生成部361によって対称の三角波にされ、比較器331の一端に入力される。また、比較器331のもう一端には、出力電圧検出回路321にて検出された出力電圧が入力される。そして、図9に示すように比較器331にて三角波と出力電圧が比較され、三角波が出力電圧より大きい期間のみSW素子6がONとなる駆動信号が出力される。SW素子駆動回路351は、駆動信号に基づいて、SW素子6の駆動を行う。
【0006】
このような構成により、SW電源103からの出力電圧が上昇すると、三角波が出力電圧より大きい期間が短くなり、SW素子6のON時間が短くなる。このように制御されるSW素子6のON状態およびOFF状態のデューティー比により、出力電圧が調整される。また、異常検出器341によって過電流、過電圧、低電圧、温度異常などの異常が検出された場合は、異常検出器341からSW素子駆動回路351に停止信号が送られ、SW素子6の動作が停止される。
【0007】
続いて、図8の電源制御装置100における動作波形図を図10に示す。まず、商用交流電源から出力される交流電圧は、ノイズフィルタ101によってノイズが除去され整流回路102によって全波整流される。図10(a)は整流回路102で整流された後の入力電圧波形を示す。そして、整流回路102で整流された脈流は、平滑回路105にて平滑化され、図10(b)に示される電圧波形となる。また、この場合、平滑回路105の一次側(商用交流電源側)に流れる電流波形は図10(c)に示すように、高いピーク値を有する短いパルス波となる。ここで、図10(c)に示すようなパルス波は、高調波を多量に含んでいるため、電源ラインを通って外部に流れると、ノイズによる障害を引き起こす原因になる。また、平均的には省電力であるにも関わらず、高いピーク電力を保証するための発電・給電・配電設備が必要となるといった問題もある。このような問題を解決するために、電源の力率を改善し、高調波の発生を抑制する力率改善回路(PFC)を採用することが提案されている。
【0008】
また、電源制御装置100に電源を投入した際には、空の状態である平滑回路105の大容量の平滑コンデンサを充電するため、図10(d)に示すような大きな電流、いわゆるラッシュ電流が流れる。このようなラッシュ電流が発生することにより、ヒューズの溶断や、電源電圧の不安定化およびそれに伴う機器への影響が考えられる。このような影響を防ぐために、ラッシュ電流の大きさに耐える部材を用いる事も可能であるが、このような部材を採用することで、無駄なコストが発生し、ヒューズに関しては定常使用時の異常に対して機能しなくなる可能性があるなどの欠点がある。
【0009】
そこで、ラッシュ電流の発生を防ぐために、様々な方法が考えられている。特許文献1には、その一例として、平滑用コンデンサとは別に、容量の大きいバンク用の平滑コンデンサと、当該コンデンサを充電するための充電用抵抗などを備えた平滑コンデンサバンク回路を備えることで、ラッシュ電流の発生を防ぐ構成が開示されている。また、特許文献1に記載される手法以外に、平滑回路105における平滑コンデンサの容量を小さくすることや、平滑回路105自体をなくすことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−322539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ラッシュ電流を抑止するために、特許文献1に記載されるように平滑コンデンサバンク回路を別途備えた場合も、部品点数が増加することにより、製品コストの増加および大型化を招いてしまうといった問題がある。また、平滑コンデンサの容量を小さくしたり、平滑回路105自体をなくす場合、整流回路102で整流された脈流に応じてSW電源103での処理を行うと、入力電流波形は、図10(e)に示されるように二つのピークを備えた波形となる。この場合も、図10(c)に示される電流波形の場合と同様に、高調波によるノイズや、ピーク保証の問題がある。また、平滑回路105をなくした場合にも、SW電源103における平滑コンデンサ9を充電するために、ラッシュ電流が発生する可能性がある。
【0012】
また、電源制御装置100が商用交流電源だけでなく、直流電源に接続された場合にも、動作できることが望ましいが、接続された電源に応じてラッシュ電流の抑止処理を行うことは、今まで考えられていない。
【0013】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、接続された電源の種類を判別し、判別結果に応じて、ラッシュ電流の抑制処理を行うことが可能な電源制御方法および電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明により、電源からの入力電圧をスイッチング制御して出力電圧を得る電源制御方法であって、入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、所定時間内にパルス幅が計測された場合は、電源が交流電源であると判定し、所定時間内にパルス幅が計測されない場合は、電源が直流電源であると判定し、電源が交流電源の場合、測定されたパルス幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行い、電源が直流電源の場合、所定の時間幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行うことを特徴とする電源制御方法が提供される。
【0015】
また、上記本発明の電源制御方法における制御信号は、ラッシュ電流の発生を防ぐため、電源投入後所定の時間の間または所定の動作回数の間、電流値が低くなるよう生成されでも良く、または電流値を低い状態から徐々に増加させるよう生成されても良い。
【0016】
また、上記本発明の電源制御方法におけるスイッチング制御を行うことは、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいて、スイッチング素子のパルス幅を変更すること、を含んでも良い。さらに、制御信号を生成することは、区画ごとにD/Aコンバータのクロック周波数を制御することを含んでも良い。
【0017】
また、上記本発明の電源制御方法における所定の波形は、区画ごとに所定の傾斜を有する三角波であっても良い。
【0018】
また、上記本発明の電源制御方法において、電源が交流電源の場合、入力電圧の脈流毎に制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング電源の制御を行い、電源が直流電源の場合、所定の時間幅の間のみ、区画ごとに制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング電源の制御を行っても良い。
【0019】
また、本発明により、電源からの入力電圧をスイッング制御して出力電圧を得るスイッチング電源を備える電源制御装置であって、スイッチング電源は、入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、所定時間内にパルス幅が計測された場合は、電源が交流電源であると判定し、所定時間内にパルス幅が計測されない場合は、電源が直流電源であると判定し、電源が交流電源の場合、測定されたパルス幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行い、電源が直流電源の場合、所定の時間幅を2以上の区画に分割し、分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、出力電圧を検出した信号と制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行う、スイッチング制御部を備えることを特徴とする電源制御装置が提供される。
【0020】
さらに、本発明により、電源からの入力電圧をスイッング制御して出力電圧を得る電源制御方法であって、入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、パルス幅に基づいて、電源が直流か交流かを判定し、判定結果に基づいて、スイッチング電源の制御を行うこと、を特徴とする電源制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源制御方法および電源制御装置によると、直流電源/交流電源の何れに接続されたかを適切に判別し、判別結果に応じてラッシュ電流の発生の抑止を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における電源制御装置の概略を示すブロック図である。
【図2】図1のスイッチング電源の構成を示す図である。
【図3】本実施形態におけるAC/DC判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】交流電源の場合における制御信号生成部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】交流電源の場合の動作波形を示す図である。
【図6】直流電源の場合における制御信号生成部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】直流電源の場合の動作波形を示す図である。
【図8】従来技術における電源制御装置の概略を示すブロック図である。
【図9】従来技術におけるスイッチング電源の構成を示す図である。
【図10】従来技術の電源制御装置における動作波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電源制御装置について説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る電源制御装置10の概略構成を示すブロック図である。電源制御装置10は、ノイズフィルタ1、整流回路2、およびスイッチング電源3(以下「SW電源3」という)を備える。本実施形態のSW電源3は、パルス変調型のスイッチング電源であり、力率改善回路も平滑回路も通さずに、整流回路2から直に入力される脈流電圧に基づいて出力電圧を得るものである。また、電源制御装置10は、商用交流電源に接続してあるが、本発明の電源制御装置10は、商用交流電源以外にも使用することができる。
【0025】
ノイズフィルタ1は、SW電源3から発生するノイズが外部に放射或いは伝搬しないようにするとともに、外部からのノイズの影響を受けないようにするためのものである。整流回路2は、整流ダイオードを備え、ノイズフィルタ1からの出力に対し、全波整流を行うものである。
【0026】
続いて、図2を参照して、本実施形態のSW電源3の構成について説明する。SW電源3は、パワーMOFETなどのスイッチング素子6(以下、「SW素子6」という)、トランス7、整流ダイオード8、平滑コンデンサ9、およびスイッチング制御部30(以下、「SW制御部30」という)からなる。SW電源3では、整流回路2にて整流された脈流電圧が、スイッチング素子6による高速スイッチングで高周波のパルスにしてトランス7に送られる。そして、整流ダイオード8にて整流が行われ、平滑コンデンサ9で平滑化されて直流の出力電圧が得られる。SW制御部30は、出力電圧をフィードバックしてSW素子6のON/OFF制御を行う制御部であり、制御信号生成部31、出力電圧検出回路32、比較器33、異常検出器34およびSW素子駆動回路35からなる。尚、本実施形態におけるSW制御部30の各部の処理は、論理規模の小さなFPGA(Field-Programmable Gate Array)やゲートアレイを用いて容易に実現することができる。
【0027】
また、制御信号生成部31は、出力電圧検出回路32にて検出される出力電圧と比較される制御信号を生成するものであり、時間計測部311、クロック制御部312、およびD/Aコンバータ313からなる。時間計測部311は、タイマーおよび記憶部(図示せず)を有し、整流回路2によって整流された脈流一波ごとに、所定の検出レベルを超える時間幅をパルス幅WLとして計測し、記憶/更新する。また、時間計測部311では、記憶されたパルス幅WLをn分割し、分割された時間Tnごとに、ステージカウンタCNT(0〜n−1)を設定する。さらに、時間計測部311では、電源制御装置10に接続された電源の種別を判別するための後述するAC/DC判定処理も行われる。
【0028】
クロック制御部312は、D/Aコンバータ313におけるクロック周波数を制御する制御部である。クロック制御部312では、一波の脈流に対して、時間計測部311において設定されるステージカウンタCNTごとに異なる周波数fを設定する。これにより、ステージカウンタCNTごとにSW素子6が動作する時間値を制御することができる。D/Aコンバータ313は、例えば4ビットの抵抗ラダーを備えるデジタル−アナログコンバータであり、クロック制御部312により設定されるクロック周波数に応じて制御信号を出力する。具体的には、D/Aコンバータ313は、カウンタと抵抗ラダーとによって構成することができる。この場合、カウンタをクロック制御部312からのクロック周波数fでカウントアップ/ダウンさせ、抵抗ラダーによってカウンタ出力値に対応する電圧レベルを生成する。この構成によれば、クロック制御部312のクロック周波数fを調整することによって、所望の立ち下り(または立ち上がり)波形を有する制御信号を生成し、比較器33に入力することができる。
【0029】
本実施形態におけるSW電源3は、SW制御部30により、整流回路2によって整流された脈流の一波ごとに所定の電圧レベルを超えたパルス幅WLを測定し、夫々の一波を幅方向にn個に分割して、電圧の立ち上がり部分で急峻な電流増加が発生しないように電流値を次第に立ち上げ(漸増させ)ることにより、ラッシュ電流の発生を抑止するものである。特に、本実施形態では、制御信号生成部31において、比較器33にて出力電圧と比較される制御波形を区画毎に生成することにより、上記のようなラッシュ電流の発生を防ぐ構成となっている。
【0030】
制御信号生成部31における具体的な処理について、図3、4、6のフローチャートならびに図5および図7の動作波形を参照して説明する。尚、図3〜図7では、一波の脈流を幅方向に4分割した場合を例にとって説明する。本処理では、まず電源制御装置10に接続される電源が交流電源(AC)か直流電源(DC)かが判断される。図3は、AC/DC判定処理の流れを示す図である。尚、AC/DC判定処理を行っている間は、スイッチング素子6がOFF状態となるよう制御される。
【0031】
図3に示すように、本処理では、まず、整流回路2にて整流された脈流の電圧レベルが検出され、所定の検出レベルとの比較が行われる(S1)。ここで、所定の検出レベルとは、SW電源3の動作下限電圧値である。そして、脈流電圧が検出レベルより大きい場合(S1:YES)、タイマーがスタートされる(S2)。そして、所定時間が経過したか否かが判断される(S3)。ここで、所定時間としては、想定し得る脈流のパルス幅よりも十分に長い時間が設定される。そして、所定時間が、経過していない場合は(S3:NO)、再度、脈流電圧と検出レベルとの比較が行われる(S4)。
【0032】
そして、脈流電圧が検出レベルより大きい場合は(S4:YES)、S3の処理に戻る。一方で、脈流電圧が検出レベル以下となった場合は(S4:NO)、接続された電源は交流電源であると判断し(S5)、この時のタイマー値をパルス幅WLとして記憶する(S6)。また、S3の処理において、所定時間が経過したと判断された場合(S3;YES)、接続された電源は直流電源であると判断し(S7)、所定の時間幅WL’を設定する(S8)。この場合、SW電源3の立ち上がりからラッシュ電流が発生すると想定され得る期間よりも長い期間が所定の時間幅WL’として設定される。そして、WL’をn分割し、Tn’とする(S9)。尚、電源投入時は、波形が安定していない場合があるので、2以上の脈流の経過後に、上記の判定処理を行うようにする。
【0033】
図4は、図3のAC/DC判定処理において、接続される電源が交流電源であると判断された場合(S5)の、制御信号生成部31における処理の流れを示すフローチャートである。本処理では、まず、整流回路2にて整流された脈流の電圧レベルが検出され、所定の検出レベルとの比較が行われる(S101)。ここで、所定の検出レベルとは、SW電源3の動作下限電圧値である。そして、図5(a)に示すように、時間計測部311において、脈流電圧が検出レベルより大きくなった時(S101:YES)から検出レベル以下になる時(S108、S109:NO)まで(すなわち脈流電圧が、SW電源3の動作下限値を超えて動作可能となってから、動作下限値以下となって不動作になるまで)の時間幅をパルス幅WLとして測定し、記憶する(S110)。また、記憶されたパルス幅WLを4分割し、各区画のTnを求める(S111)。尚、電源投入時は、波形が安定していない場合があるので、2以上の脈流の経過後にパルス幅を測定してWLとする。
【0034】
また、パルス幅WLの計測と平行して、分割された区画毎に制御信号が生成され、SW素子6のON時間が制御される。詳しくは、整流された脈流電圧の電圧値が検出レベルよりも大きい場合(S101:YES)、時間計測部311のタイマーがスタートされる(S102)。そして、クロック制御部312において、ステージカウンタCNTの値が0に設定され、変数TがTnに設定される(S103)。ここで、時間Tnは、時間計測部311で、前の処理において測定されたパルス幅WL(すなわちひとつ前の脈流のパルス幅)を4分割して求められたものである。尚、本処理の開始時には、図3のS6にて求められたパルス幅WLに基づいてTnが求められる。
【0035】
続いて、D/Aコンバータ313のクロック周波数fがステージカウンタCNT(この場合は0)に対応する値(f0)に設定される(S104)。ここで、本実施形態では、立ち上がり部分での急峻な電流増加が発生しないよう、ステージカウンタCNT(0)に対応する周波数(f0)が設定される。具体的には、SW素子6のON時間は、D/Aコンバータ313から出力される三角波の幅、すなわち傾斜によって制御される(図5(c)〜(g))。より詳しくは、三角波の傾斜が急になるほど、SW素子6のON時間は短くなり、傾斜が緩やかになるほど、ON時間は長くなる。また、D/Aコンバータ313から出力される三角波の傾斜は、クロック周波数fを高くすることに伴い急になる。そのため、立ち上がり時のステージカウンタCNT(0)に対応する周波数(f0)を高く設定することにより、SW素子6のON時間を短くすることができ、電流値を抑えることが可能となる。
【0036】
続いて、時間Tが経過したか否かが判断される(S105)。時間Tが経過していない場合は(S105:NO)、経過するまで待機する。この間、D/Aコンバータ313はクロック周波数f0にて動作される。一方、時間Tが経過した場合は(S105:YES)、ステージカウンタCNTに1が加算され、時間TにTnが加算される(S106)。そして、ステージカウンタCNTが4より小さいか否かが判断される(S107)。ここで、ステージカウンタCNTが4より小さい場合(S107:YES)、S109にて、脈流電圧が検出レベルより大きいか否かが判断される。そして、脈流電圧が検出レベルより大きい場合(S109:YES)、S104の処理へ戻る。そして、S104では、D/Aコンバータ313のクロック周波数が、ステージカウンタCNT(この場合1)に対応する値(f1)に設定される。このように、ステージカウンタCNTが分割数(4)以上となるか(S107:NO)、脈流電圧が検出レベル以下になる(S109:NO)まで、S104からS106の処理が繰り返され、各区画における周波数が設定される。
【0037】
また、ステージカウンタCNTが4以上となった場合(S107:NO)、S108にて、S109と同様に脈流電圧が検出レベルより大きいか否かが判断される。そして、脈流電圧が検出レベルより大きい場合(S108:YES)は、検出レベル以下になるまで待機する。そして、S108にて脈流電圧が検出レベル以下であると判断された場合(S108:NO)、およびS109にて同様の判断がされた場合(S109:NO)は、その時のタイマーの値を脈流のパルス幅WLとして記憶する(S110)。その後、新たに記憶したパルス幅WLを4分割して、時間Tnを更新する(S111)。そして、タイマーをリセットし(S112)、S101の処理に戻り、次の脈流に対して同様の処理を行う。
【0038】
図5(c)および(e)〜(h)に、脈流を4分割したときの各ステージカウンタCNT(0〜3)におけるD/Aコンバータ313の出力波形を示す。ここで、図5(e)〜(h)は、図5(c)に示される波形の拡大図である。図5(c)に示されるように、D/Aコンバータ313からは、区画ごとに傾斜の異なる三角波が出力され、各区画の三角波の繰り返し周波数は、例えば、低い場合には100kHz程度、高い場合には1MHz程度に設定される。そして、ステージカウンタCNT=0の場合(図5(e))とステージカウンタCNT=3(図5(h))の場合には、比較的高いクロック周波数を設定することで、傾斜の急な三角波形が出力される。一方、中間のステージカウンタCNT=1の場合(図5(f))とステージカウンタCNT=2(図5(g)の場合には、比較的低いクロック周波数を設定することで、傾斜の緩い三角波形が出力される。
【0039】
D/Aコンバータ313の出力波形(図5(c))は、制御信号として比較器33に入力される。そして、比較器33にて、出力電圧検出回路32で検出された出力電圧と比較され、図5(d)に示される駆動信号が生成される。図5(i)は、図5(d)に示される波形の拡大図である。図5(i)に示されるように、ステージカウンタCNT=0の場合とステージカウンタCNT=3の場合は、各周期におけるSW素子6のON時間が短くなり、中間のステージカウンタCNT=1の場合とステージカウンタCNT=2の場合には、ON時間が長くなる。このようにSW素子6を制御することにより、出力電流波形を図5(j)に示すように正弦波に近い波形とすることができる。
【0040】
続いて、図6は、接続される電源が直流電源であると判断された場合の、制御信号生成部31における処理の流れを示すフローチャートである。図6では、まず、時間計測部311のタイマーがスタートされる(S201)。そして、クロック制御部312において、ステージカウンタCNTの値が0’に設定され、変数TがTn’に設定される(S202)。ここで、時間Tn’は、図3のS9において求められた値であり、所定の時間幅WL’を4分割したものである。
【0041】
続いて、D/Aコンバータ313のクロック周波数fがステージカウンタCNT(この場合は0’)に対応する値(f0’)に設定される(S203)。ここで、直流の場合においても、交流の場合と同様に、立ち上がり部分での急峻な電流増加が発生しないよう、ステージカウンタCNT(0’)に対応して高い周波数(f0’)が設定される。
【0042】
続いて、時間Tが経過したか否かが判断される(S204)。時間Tが経過していない場合は(S204:NO)、経過するまで待機する。この間、D/Aコンバータ313はクロック周波数f0’にて動作される。一方、時間Tが経過した場合は(S204:YES)、ステージカウンタCNTに1が加算され、時間TにTnが加算される(S205)。そして、ステージカウンタCNTが4より小さいか否かが判断される(S206)。ここで、ステージカウンタCNTが4より小さい場合(S206:NO)、S203の処理へ戻る。そして、S203では、D/Aコンバータ313のクロック周波数が、ステージカウンタCNT(この場合1’)に対応する値(f1’)に設定される。このように、ステージカウンタCNTが分割数(4)以上(S206:NO)になるまで、S203からS205の処理が繰り返され、各区画における周波数が設定される。
【0043】
また、ステージカウンタCNTが4以上となった場合(S206:YES)、S207にて、D/Aコンバータ313のクロック周波数fが所定の値に設定され、本処理を終了する。すなわち、直流電源が接続された場合には、最初の動作開始に対してのみ、ラッシュ電流を防ぐためのSW素子6のON時間制御が行われ、それ以降については、通常の処理が行われる。
【0044】
図7(c)および(e)〜(h)に、脈流を4分割したときの各ステージカウンタCNT(0’〜3’)におけるD/Aコンバータ313の出力波形を示す。ここで、図7(e)〜(h)は、図7(c)に示される波形の拡大図である。図7(c)に示されるように、D/Aコンバータ313からは、区画ごとに傾斜の異なる三角波が出力され、各区画の三角波の繰り返し周波数は、例えば、低い場合には100kHz程度、高い場合には1MHz程度に設定される。本実施形態では、ステージカウンタCNT=0’の場合に(図7(e))、比較的高いクロック周波数を設定することで、傾斜の急な三角波形が出力される。その後は、設定する周波数を低くしていくことで、徐々に傾斜の緩い三角波形が出力される(図7(f)〜(h))。
【0045】
D/Aコンバータ313の出力波形(図7(c))は、交流の場合と同様に、制御信号として比較器33に入力される。そして、比較器33にて、出力電圧検出回路32で検出された出力電圧と比較され、図7(d)に示される駆動信号が生成される。図7(j)は、図7(d)に示される波形の拡大図である。図7(j)に示されるように、ステージカウンタCNT=0’の場合は、SW素子6のON時間が短く、ステージカウンタCNTの値が増えるに従って、徐々にON時間が長くなる。このようにSW素子6を制御することにより、立ち上がり時の電流値を低く抑え、ラッシュ電流の発生を抑止することが可能となる。そして、WL’が経過した後は、区分毎に異なる波形を有する制御信号を生成する必要はなく、図7(i)に示されるように図6のS207で定められた周波数に基づいた所定の制御信号が生成され、通常のスイッチング制御が行われる。
【0046】
このように、上記実施形態では、脈流のパルス幅に基づいてAC/DC判定処理を行うことで、各場合に応じたラッシュ電流抑止処理を行うことができる。また、出力電圧と比較される制御波形を区画毎に生成し、電源の投入時にはSW素子6のON時間が最初は短く徐々に長くなるよう制御することにより、ラッシュ電流を抑止することができる。尚、上記説明では、直流動作の場合も交流動作と同じくステージカウンタCNTを用いてSW素子のON時間制御を行う場合について説明したが、直流動作の場合には、別の処理を行う構成としても良い。
【0047】
また、本実施形態では、また、本実施形態では、比較器33における比較の際に図5または7の(e)〜(h)における各波形の「SP」で示される点を開始点として、制御信号が生成される。すなわち、SW素子6の制御を開始する各開始点SPの位置は、変動することなく一義的に定められる。また、三角波が降りきった点がSW素子6の動作の終了点となる。ここで、駆動波形を生成するために必要なのは、開始点SPから終了点までの波形であるため、終了点から次の開始点までの波形はどのようなものであっても良い。このような構成とすることで、脈流間のOFF期間を容易に設定することも可能となる。
【0048】
さらに、パルス状の電流の発生を防ぎ、ピーク電流値を少なくすることも可能となる。また、交流の場合は、電流波形を正弦波に近くすることができるため、不要輻射の少ない低放射雑音動作が可能となる。さらに、力率改善回路を使用しなくとも高調波の発生を低減できるため、小型化と低コスト化が同時に可能となる。
【0049】
また、脈流を分割してステージ毎にSW素子6を制御する方法として、SW電源103の動作に制限を設けない状態の時のSW素子のON時間を計測し、この情報を元にステージカウンタ値毎にON時間制御を行うことも可能である。しかしながら、この場合、ON時間を計測するために、高速なクロックが必要となる。また、計測したクロック数を割り算する際には論理規模が大幅に増加してしまう。これに対し、上記実施形態のようにSW電源103を構成することで、高速なクロック数を必要とせず、論理規模を小さく抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態のSW電源3は、力率改善回路の替わりとして用いることも可能である。ここで、力率改善回路は一般に昇圧しかできないのに対し、本実施形態のSW電源3は、降圧も可能である点においてより有用である。また、LED照明器具の電源制御装置として用いた場合には、位相制御方式の既存の白熱電球対応の調光装置に接続することで、LED照明具の発光輝度を制御(調光)することも可能となる。
【0051】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態の具体的態様は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。例えば、上記実施形態においては、所定の時間幅WL’の間、区画に分割してSW素子のON時間を制御する構成としたが、これ以外にも所定の動作回数の間、区画に分割して制御する構成としても良い。また、上記実施形態においては、所定の時間幅WL’の間に、最初は低く設定した周波数を徐々に上げる(電流値を徐々に高くする)構成としたが、所定の時間幅WL’の間、一定の低い周波数に設定することでも、ラッシュ電流を防止することが可能である。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、脈流を4分割した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の数に分割することが可能である。ただし、デジタル処理を行う場合には2に分割することが実用的である。また、各区画における周波数の設定は、上記実施形態に限定されるものでもなく、任意の値に設定することで、種々の電流波形を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 ノイズフィルタ
2 整流回路
3 スイッチング電源
6 スイッチング素子
7 トランス
8 整流ダイオード
9 平滑コンデンサ
10 電源制御装置
30 スイッチング制御部
31 制御信号生成部
32 出力電圧検出回路
33 比較器
34 異常検出器
35 スイッチング素子駆動回路
311 時間計測部
312 クロック制御部
313 D/Aコンバータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの入力電圧をスイッチング制御して出力電圧を得る電源制御方法であって、
前記入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、
所定時間内に前記パルス幅が計測された場合は、前記電源が交流電源であると判定し、
前記所定時間内に前記パルス幅が計測されない場合は、前記電源が直流電源であると判定し、
前記電源が交流電源の場合、
測定された前記パルス幅を2以上の区画に分割し、
前記分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング制御を行い、
前記電源が直流電源の場合、
所定の時間幅を2以上の区画に分割し、
前記分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング制御を行うことを特徴とする電源制御方法。
【請求項2】
前記制御信号は、ラッシュ電流の発生を防ぐため、電源投入後所定の時間の間または所定の動作回数の間、電流値が低くなるよう生成される、または電流値を低い状態から徐々に増加させるよう生成されることを特徴とする、請求項1に記載の電源制御方法。
【請求項3】
前記スイッチング制御を行うことは、前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて、スイッチング素子のパルス幅を変更すること、を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電源制御方法。
【請求項4】
前記制御信号を生成することは、前記区画ごとにD/Aコンバータのクロック周波数を制御することを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源制御方法。
【請求項5】
前記所定の波形は、前記区画ごとに所定の傾斜を有する三角波であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源制御方法。
【請求項6】
前記電源が交流電源の場合、
入力電圧の脈流毎に前記制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング電源の制御を行い、
前記電源が直流電源の場合、
前記所定の時間幅の間のみ、前記区画ごとに前記制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング電源の制御を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電源制御方法。
【請求項7】
電源からの入力電圧をスイッチング制御して出力電圧を得るスイッチング電源を備える電源制御装置であって、
前記スイッチング電源は、
前記入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、
所定時間内に前記パルス幅が計測された場合は、前記電源が交流電源であると判定し、
前記所定時間内に前記パルス幅が計測されない場合は、前記電源が直流電源であると判定し、
前記電源が交流電源の場合、
測定された前記パルス幅を2以上の区画に分割し、
前記分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行い、
前記電源が直流電源の場合、
所定の時間幅を2以上の区画に分割し、
前記分割された区画ごとに所定の波形を有する制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいてスイッチング制御を行う、スイッチング制御部を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項8】
前記スイッチング制御部は、ラッシュ電流の発生を防ぐため、電源投入後所定の時間の間または所定の動作回数の間、電流値が低くなるように、もしくは電流値を低い状態から徐々に増加させるように、前記制御信号を生成することを特徴とする、請求項7に記載の電源制御装置。
【請求項9】
前記スイッチング制御部は、前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて、スイッチング素子のパルス幅を変更することを特徴とする、請求項7または8に記載の電源制御装置。
【請求項10】
前記スイッチング制御部は、前記区画ごとにD/Aコンバータのクロック周波数を制御して、前記制御信号を生成すること特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の電源制御装置。
【請求項11】
前記所定の波形は、前記区画ごとに所定の傾斜を有する三角波であることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の電源制御装置。
【請求項12】
前記スイッチング制御部は、
前記電源が交流電源の場合、
入力電圧の脈流毎に前記制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング電源の制御を行い、
前記電源が直流電源の場合、
前記所定の時間幅の間のみ、前記区画ごとに制御信号を生成し、
前記出力電圧を検出した信号と前記制御信号との比較結果に基づいて前記スイッチング電源の制御を行うことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の電源制御装置。
【請求項13】
電源からの入力電圧をスイッング制御して出力電圧を得る電源制御方法であって、
前記入力電圧の一波ごとのパルス幅を計測し、
前記パルス幅に基づいて、電源が直流か交流かを判定し、
前記判定結果に基づいて、前記スイッチング電源の制御を行うこと、
を特徴とする電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−13238(P2013−13238A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144288(P2011−144288)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(310016795)株式会社ブリンツテクノロジー (17)
【出願人】(503455802)
【Fターム(参考)】