説明

電源装置及び照明装置

【課題】限流素子に並列接続されたスイッチ素子がオンしない場合に、周辺部品の発火などを簡易な構成により防止可能とする電源装置を提供する。
【解決手段】限流素子3は、インピーダンスZが、次の式1を満たし、Z1≦Z(式1)ここにZ1は、インダクタ7によって駆動信号が出力された場合でもスイッチング素子3がオンしない場合において、異常検出回路90によって、昇圧チョッパ回路70の出力電圧90に由来する電流と電圧との少なくともいずれかを検出可能なインピーダンスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、負荷に直流電力を供給する電源装置に関し、特に電源投入時の突入電流を制御する限流素子と異常検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
限流素子に並列にスイッチング素子が接続され、電源投入時の突入電流を抑制する機能を有する電源装置では、電源投入時に限流素子により突入電流が抑制された後は、スイッチング素子がオンすることでスイッチング素子の経路で回路電流が流れることになるため、限流素子のインピーダンスは、入力電源電圧と突入電流の抑制値との除算から決定されるのが一般的である(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−147770号公報
【特許文献2】特開2007−159265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の電源装置では、例えば、何らかの回路動作の不具合によりスイッチ素子がオンしない場合、またはスイッチ素子自体が部品故障によって開放状態となった場合に、限流素子の経路で回路電流が流れ続ける。このため、限流素子による電力損失が生じて、ひいては熱的破壊、あるいは周辺部品の発煙、発火などを招くことが懸念される。
【0005】
また前述の様に限流素子の経路で回路電流が流れた場合を想定して例えば限流素子の温度が上昇することで素子の電気抵抗値が低下する特性を持つサーミスタ素子の様な部品を使用すると、回路のコストが高価なものとなる。
【0006】
この発明は、不具合により限流素子に並列接続されたスイッチ素子がオンしない場合に、限流素子の熱的破壊や周辺部品の発煙、発火などを簡易な構成により防止可能とする電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の電源装置は、
チョッパ動作により脈流電圧を昇圧する電源装置において、
投入された交流電源を整流して脈流成分を含む脈流電圧を正極から出力する整流部と、
前記整流部が出力した脈流電圧を昇圧するエネルギを蓄えるインダクタであって前記正極から流れ出す電流を一端から入力して他端から出力すると共に素子を駆動する駆動信号を出力するインダクタを含む昇圧チョッパ回路と、
前記インダクタと前記正極との間と、前記整流部の負極の直前とのいずれかの位置に直列接続された限流素子と、
前記限流素子に並列接続され前記インダクタから出力された駆動信号に基づいてオンとなるスイッチング素子と、
前記昇圧チョッパ回路に所定の負荷が接続された場合に、前記昇圧チョッパ回路の出力電圧に由来する電流と電圧との少なくともいずれかを検出する検出回路と
を備え、
前記限流素子は、
インピーダンスZが、
以下の式1を満たし、
1≦Z (式1)
ここにZ1は、
前記インダクタによって前記駆動信号が出力された場合でも前記スイッチング素子がオンしない場合において、前記検出回路によって、前記昇圧チョッパ回路の出力電圧に由来する電流と電圧との少なくともいずれかが検出可能なインピーダンスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、不具合によって限流素子に並列接続されたスイッチ素子がオンしない場合に、限流素子の熱的破壊や周辺部品の発煙、発火などを簡易な構成により防止可能とする電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1の電源装置100Aの回路図。
【図2】実施の形態1の電源装置100Aの実験データを示す図。
【図3】実施の形態1の電源装置100Bの回路図。
【図4】実施の形態1の電源装置100Cの回路図。
【図5】実施の形態1の電源装置100Dの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の電源装置100Aの回路図である。電源装置100Aは、ダイオードブリッジ2(整流部)、昇圧チョッパ回路70、突入電流抑制回路80、及び異常検出回路90を備えている。
【0011】
本実施の形態1の電源装置の特徴は、限流素子3のインピーダンス値にある。電源装置においては、インピーダンスZが後述するZ1以上の値の限流素子3を採用する。このインピーダンスにより、限流素子3に並列接続されたスイッチング素子4が他の素子あるいは自身の不具合によりオンしない時に限流素子3の経路で回路電流が流れた場合に、昇圧チョッパ回路70の出力電圧を故意に低下させ、異常検出回路によってその出力電圧あるいは出力電圧に由来する負荷回路中の電圧あるいは電流(後述するA点、B点、C点の電流あるいは電圧)を検出させて、検出値が異常のときは、インバータ制御回路29がインバータ回路の動作を停止する構成である。
【0012】
(直流電源50)
直流電源50は商用電源等の交流電源1をダイオードブリッジ2で全波整流して得られる。直流電源50の出力電圧は、昇圧チョッパ回路70で昇圧され、負荷60に供給される。
【0013】
(突入電流抑制回路80)
突入電流抑制回路80は、電源投入時に直流電源50から昇圧値チョッパ回路70のコンデンサ10に突入電流が流れるのを抑制する回路であり、直流電源50と昇圧チョッパ回路70との間に接続される。突入電流抑制回路80は、ダイオードブリッジ2の正極側から抵抗等の限流素子3(限流素子という場合もある)を介して昇圧チョッパ回路70のインダクタ7の一端(a端子)に接続される。図1のように限流素子3は、インダクタ7とダイオードブリッジ2の正極との間との位置に直列接続されている。スイッチング素子4は、限流素子3に並列接続され、インダクタ7から出力された駆動電圧(駆動信号)に基づいてオンとなる。図1では、スイッチング素子4の駆動電圧は、インダクタ7の中間端子(c端子)に誘起する電圧からダイオード6で整流、コンデンサ5で平滑して得る。
【0014】
(昇圧チョッパ回路70)
昇圧チョッパ回路70は限流素子3に一端が接続されたインダクタ7の他端(b端をスイッチング素子9でスイッチングし、その際インダクタ7に蓄積されたエネルギをダイオード8で整流、コンデンサ10で平滑して直流電源2の電圧を昇圧して負荷60に供給する。
【0015】
(負荷60)
スイッチング素子21とスイッチング素子22とは直列接続され、昇圧チョッパ回路70の出力に接続されるスイッチング素子21とスイッチング素子22との接続点から、コンデンサ23、インダクタ24、放電灯25を介して直流電源50の負極に接続される。放電灯25に並列にコンデンサ26が接続される。インバータ制御回路29はインバータ制御電源Vcc2から駆動電圧の供給を受けて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22を交互にオン、オフする。なお、インバータ制御回路29は電源投入時は昇圧チョッパ回路から抵抗30を介してインバータ制御電源Vcc2に流れる電流によって起動される。
【0016】
(昇圧チョッパ制御回路11)
昇圧チョッパ制御回路11は、昇圧チョッパ制御電源Vcc1から駆動電圧を供給されてスイッチング素子9のチョッパ動作を制御する。
【0017】
(限流素子3のインピーダンスZ:条件1)
電源装置100Aの特徴である限流素子3のインピーダンスZの条件は、以下のように決めるものとする。突入電流抑制回路80が何らかの不具合によりスイッチング素子4に駆動電圧を供給できない場合や、スイッチング素子4の自体の故障の場合に、スイッチング素子4がオンしない(閉じない)時に、限流素子3の経路で回路電流が流れる。この場合、限流素子3の経路で回路電流が流れことに伴い昇圧チョッパ回路70の出力電圧71が低下し、異常検出回路90が出力電圧71の低下を検出可能であり、かつ、この異常検出回路90による検出結果によってインバータ制御回路29が出力電圧71の低下を異常と判定し、負荷60(スイッチング素子21、22から構成されるインバータ回路、以下単にインバータ回路という)の動作を停止することができる最も小さいインピーダンスZ1以上の値とする。
すなわち、限流素子3のインピーダンスZの条件は、最小インピーダンスZ1に対して、
Z1≦Z
とする。また、負荷60(インバータ回路)の動作を停止させた後は、入力電源1がOFFされて再度ONされない限りはその状態(インバータ回路の停止状態)が保持されるものとする。つまり、インバータ制御回路29はインバータ回路をいったん停止させた後は、入力電源1がOFFされて再度ONされるまで停止状態を維持する。
【0018】
(限流素子3のインピーダンスZの温度変化率:条件2)
また、限流素子3としては、そのインピーダンスZの温度変化率が略一定のものを使用する。これは、従来では安全を考え限流素子は温度上昇に従ってインピーダンスZが高くなる高コストのものを使用している場合が多いが、上記の条件1(すなわちZ1≦Z)を満たす限流素子を選定すれば、異常検出回路により限流素子の異常がただちに発見できるので(点灯するべき放電灯が点灯しないのでユーザには異常がただちにわかる)、例えば通常の抵抗のように、インピーダンスZの温度変化率が略一定のものを用いることにより低コスト化を図ることができる。
【0019】
(実験データ)
図2は、入力電源1がそれぞれ100V、200V、254Vの場合において、放電灯FHT42を用いた場合の実験結果である。図中の「丸印」はスイッチング素子4がオンせず、限流素子3の経路で回路電流が流れ続けた場合に、異常検出回路の検出結果に基づきインバータ制御回路29がインバータ回路を停止できず点灯が継続した場合を示している。また図中の「×印」は、異常検出回路の検出結果に基づきインバータ制御回路29がインバータ回路を停止できた場合を示している。また図中の「−印」は、試験省略(「×印」で確認できているためそれより大きいインピーダンスは試験省略)を示している。従って図2によれば、
入力100Vでは、Z1=160Ω、
入力200Vでは、Z1=400Ω、
入力254Vでは、Z1=500Ω、
とすることができる。
一方、従来の限流素子のインピーダンスは100〜120Ω程度であるので、前記の値をZ1とすることで、限流素子の本来の機能を満たすことができるのは明らかである。
また、図2の実験では電源投入時に起動電流が確保できる限流素子のインピーダンスについても確認したが、次のようであった。入力100Vでは1.1kΩまで起動、発振できた。また入力200Vでは10kΩまで起動、発振できた。よって、前記のインピーダンスZ1よりも十分に高いインピーダンスにおいても回路の起動電流は確保される。
【0020】
(負荷60における異常な電圧/電流の検出)
図1では、昇圧チョッパ回路70の出力電圧71を低下させることで、回路の異常を検出する異常検出回路90を備えた構成を示した。前述のように、何らかの不具合により、限流素子3の経路で回路電流が流れた場合に、限流素子3のインピーダンスに起因して出力電圧71を低下させるようにしたことで、出力電圧71の先の負荷60の電圧あるいは電流(検出箇所72、検出箇所73における昇圧チョッパ回路70の出力電圧71に由来する電流または電圧)の変化を異常検出回路90にて検出し、異常検出回路90の検出信号をインバータ制御回路29が入力することで、インバータ制御回路29が、検出信号に応じて負荷60(インバータ回路)の動作を停止する。
【0021】
(昇圧チョッパ回路出力における異常な電圧/電流の検出)
図3は電源装置100Bの回路図である。電源装置100Bは電源装置100Aに対して異常検出回路による検出箇所を変更した構成である。電源装置100Bの異常検出回路91は、限流素子3のインピーダンスの効果による昇圧チョッパ回路の出力電圧71の低下を直接検出する。図1の場合と同様に異常検出回路90の検出信号をインバータ制御回路29が入力することで、インバータ制御回路29が、検出信号に応じて負荷60(インバータ回路)の動作を停止する。
【0022】
(負極側接続:負荷60における異常な電圧/電流の検出)
図4は電源装置100Cの回路図であり、図1に対応する。電源装置100Cは、電源装置100Aに対して突入電流抑制回路80を、ダイオードブリッジ2の負極側から抵抗等の限流素子3を介して、昇圧チョッパ回路70の負極側の一端に接続した構成であり、異常検出の動作は図1の電源装置100Aと同様である。
【0023】
(負極側接続:昇圧チョッパ回路出力における異常な電圧/電流の検出)
図5は電源装置100Dの回路図であり、図3に対応する。電源装置100Dは、電源装置100Cに対して異常検出回路91が、昇圧チョッパ回路70の出力電圧71の異常を検出する構成である。異常検出の動作は電源装置100Bと同様である。
【0024】
以上に説明した電源装置100A〜電源装置100Dでは、それぞれ異常検出回路90、91にて検出した検出結果を昇圧チョッパ制御回路11へ入力し、昇圧チョッパ制御回路11が検出結果を異常かどうかを判定するようにし、異常と判定した場合には昇圧チョッパ制御回路11が出力電圧71を低減あるいは停止する制御して、負荷60への供給電圧を低下もしくは遮断する仕組みとしても良い。
【0025】
以上に説明した電源装置100A〜電源装置100Dは、図1等に示したように放電灯を使用する照明装置に使用される。
【0026】
以上の電源装置100A〜電源装置100Dでは、限流素子3のインピーダンスの効果により、限流素子3に並列接続されたスイッチング素子4が他の素子あるいは自身の不具合によりオンしない時に限流素子3の経路で回路電流が流れた場合に昇圧チョッパ回路70の出力電圧を故意に低下させ、異常検出回路によってその出力電圧あるいは出力電圧に由来する負荷回路中の電圧あるいは電流を検出させて、検出値が異常のときは、インバータ制御回路29がインバータ回路の動作を停止する構成である。したがって、スイッチング素子がオンしない場合にも、限流素子の熱的破壊や周辺部品の発煙、発火などを簡易な構成により防止できる。
【符号の説明】
【0027】
cc1 昇圧チョッパ制御電源、Vcc2 インバータ制御電源、1 入力電源、2 ダイオードブリッジ、3 限流要素、4,9 スイッチング素子、5 コンデンサ、6,8 ダイオード、7 インダクタ、10 コンデンサ、11 昇圧チョッパ制御回路、21,22 スイッチング素子、23 コンデンサ、24 インダクタ、25 放電灯、26 コンデンサ、29 インバータ制御回路、30 抵抗、50 直流電源、60 負荷、70 昇圧チョッパ回路、80 突入電流抑制回路、90,91 異常検出回路、100A,100B,100C,100D 電源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョッパ動作により脈流電圧を昇圧する電源装置において、
投入された交流電源を整流して脈流成分を含む脈流電圧を正極から出力する整流部と、
前記整流部が出力した脈流電圧を昇圧するエネルギを蓄えるインダクタであって前記正極から流れ出す電流を一端から入力して他端から出力すると共に素子を駆動する駆動信号を出力するインダクタを含む昇圧チョッパ回路と、
前記インダクタと前記正極との間と、前記整流部の負極の直前とのいずれかの位置に直列接続された限流要素と、
前記限流要素に並列接続され前記インダクタから出力された駆動信号に基づいてオンとなるスイッチング素子と、
前記昇圧チョッパ回路に所定の負荷が接続された場合に、前記昇圧チョッパ回路の出力電圧に由来する電流と電圧との少なくともいずれかを検出する検出回路と
を備え、
前記限流要素は、
インピーダンスZが、
以下の式1を満たし、
1≦Z (式1)
ここにZ1は、
前記インダクタによって前記駆動信号が出力された場合でも前記スイッチング素子がオンしない場合において、前記検出回路によって、前記昇圧チョッパ回路の出力電圧に由来する電流と電圧との少なくともいずれかを検出可能なインピーダンスであることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記Z1は、
前記交流電源の電圧が100Vの場合は略160Ω、前記交流電源の電圧が200Vの場合は略400Ω、前記交流電源の電圧が254Vの場合は略500Ωであることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記限流要素は、
インピーダンスの温度変化率が略一定であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電源装置を備えた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−4462(P2011−4462A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143353(P2009−143353)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】