説明

電源装置

【課題】簡素な構成で、電池セルの変形を抑制すると共に、振震耐性の高い締結具を備えた電源装置を提供する。
【解決手段】直方体形状の電池セルを一方向に積層させて形成される電池ブロック2と、電池ブロック2の積層方向両端に配設されるエンドプレート23と、電池ブロック2を加圧した状態で締結する締結具3とを備え、締結具3は、一対のバインドバー31で構成され、バインドバー31は、電池ブロック2及びエンドプレート23を囲繞する形状に形成されると共に、エンドプレート23に架設され、さらに、エンドプレート23と対向する面に切り欠き31Aを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備えた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドカーや電気自動車等には、電動機駆動用の高電圧出力の電源装置が備えられており、この電源装置は、複数の電池セルで構成されている。電池セルを直列に接続することで電源装置の出力電圧を高く、並列に接続することで電源装置の電流容量を大きくすることができる。電源装置を構成する電池セルとしては、繰り返し充放電ができるように、二次電池が使用される。
【0003】
一般的に電池セルは、充放電を繰り返すことにより電池セルが膨張し、膨張に伴う電池性能(入出力特性)の劣化が生じる。そのため、複数の電池セルを積層して構成される電源装置において、電池セルを加圧した状態で締結することで電池セルの膨張を防止し、膨張に伴う電池性能の劣化を抑制する締結具を備えた電源装置がある。
【0004】
この種の電源装置としては、例えば、角形電池(電池セル)と角形電池を保持する絶縁性セパレータとを交互に積層して形成される電池ブロックと、電池ブロックの両端に配設される一対のエンドプレートと、エンドプレートに架設され、積層されている角形電池を積層方向に加圧した状態で締結するバインドバーとを備えた電源装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1の電源装置を組み立てる際には、両端にエンドプレートを備えた電池ブロックを、エンドプレートの中央を押圧するバインド治具を使って、積層方向に加圧し、この状態の電池ブロックを締結するように、バインドバーがエンドプレートにネジ止め固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−157450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、バインドバーを固定しているネジがゆるむとバインドバーが外れてしまうおそれがあった。また、バインドバーが完全に外れなくとも、ネジがゆるむと、電池ブロックを加圧する力が弱くなり、電池セルの膨張を充分に抑制できなくなるという問題がある。特に車両用の電源装置においては、車両の走行に伴う振動が電源装置に伝わるため、振動耐性の高い締結具を備えた電源装置が求められている。
【0008】
本発明は、斯かる問題を解決するためになされたものであり、簡素な構成で、電池セルの変形を抑制すると共に、振動耐性の高い締結具を備えた電源装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
直方体形状の電池セルを一方向に積層させて形成される電池ブロックと、該電池ブロックの積層方向の両端に配設されるエンドプレートと、前記電池ブロックを加圧した状態で締結する締結具とを備え、前記締結具は、一対のバインドバーで構成され、該バインドバーは、前記電池ブロック及び前記エンドプレートを囲繞する形状に形成されると共に、前記エンドプレートに架設され、さらに、前記エンドプレートと対向する面に切り欠きを有することを特徴とする。
【0010】
一方の前記バインドバーに形成される前記切り欠きと、他方の前記バインドバーに形成される前記切り欠きとが、互いに隣接するように位置して一つの開口部を形成すると共に、該開口部が電池ブロックの積層方向両端にそれぞれ少なくとも一つずつ形成されるように構成されることが好ましい。
【0011】
前記バインドバーは、前記電池ブロック及び前記エンドプレートを囲繞して電池ブロックを締結する側周部と、該側周部から延設される鍔部とで構成され、前記出力端子側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記出力端子を露出させる開口を形成するように設けられることが好ましい。
【0012】
前記電池セルは、上面に前記出力端子が設けられる外装缶を有し、前記電池セルの下面側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記電池セルの底面が位置する電池ブロックの一面の少なくとも一部を露出させる開口を形成するように設けられることが好ましい。
【0013】
また、前記電池セルの下面側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記電池セルの下面が位置する電池ブロックの一面を覆うように設けられる構成としても良い。
【0014】
前記電池セルの下面が位置する前記電池ブロックの一面と当接して前記電池セルを冷却する冷却装置を備えることが好ましい。
【0015】
前記冷却装置は、熱伝導性を有する冷却プレートを含み、該冷却プレートは、前記電池ブロックと前記鍔部との間に位置することが好ましい。
【0016】
前記バインドバーは、バインドバーを貫通する少なくとも一つのピンを介して、前記エンドプレートに係止可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によると、簡単な構成で、振動耐性の高い締結具を備えた電源装置を提供することができる等の効果を奏する。
【0018】
請求項2の構成によると、エンドプレートを押圧するための開口部を大きく形成することができるため、電源装置の組立を容易とすることができる等の効果を奏する。
【0019】
請求項3の構成によると、出力端子がバインドバーによって覆われないので、電池ブロックをバインドバーにより締結した状態で、出力端子を接続させることができる等の効果を奏する。
【0020】
請求項4及び請求項5の構成によると、バインドバーの鍔部により、電池ブロックを保持することができ、電池ブロックとバインドバーとの位置ずれを防止することができる等の効果を奏する。
【0021】
請求項6の構成によると、出力端子が位置する面の反対側の面から電池ブロックを冷却することができる等の効果を奏する。
【0022】
請求項7の構成によると、冷却プレートを鍔部により固定することができる等の効果を奏する。
【0023】
請求項8の構成によると、環状バインドバーの位置ずれを防止できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態における電源装置の斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同角形電池の断面図である。
【図4】同環状バインドバーを架設する工程を示す斜視図である。
【図5】同バインド治具を取り外す様子を示す斜視図である。
【図6】本実施形態における冷却プレートの配置を説明する斜視図である。
【図7】同断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態における電源装置の斜視図である。
【図9】同分解斜視図である。
【図10】本発明の冷却プレートが電池ブロックとバインドバーの間に位置する他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】同分解斜視図である。
【図12】同断面図である。
【図13】同下面から見た斜視図である。
【図14】同別の形態を示す下面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図1乃至図5に基づいて、以下に詳述する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態における電源装置1の斜視図で、図2は同分解斜視図である。図1及び図2に示すように、電源装置1は、角形電池21を一方向に積層して形成される電池ブロック2と、電池ブロック2を締結する締結具3とを備えている。そして、電池ブロック2は、積層方向の両端にエンドプレート23を備えており、このエンドプレート23を介して、締結具3が電池ブロック2を積層方向に加圧するようになっている。図2に示すように、締結具3は、エンドプレート23に架設される一対の環状バインドバー31で構成されている。環状バインドバー31は、電池ブロック2の上面及び下面の少なくとも一部を露出させるように開口した環状に形成されている。
【0027】
図3に示すように、角形電池21は、幅薄の略直方体形状に形成される外装缶211の内部に、電極212等の発電要素を封入して構成される電池セルで、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池である。外装缶211は、熱伝導性に優れた金属で形成されており、角形電池21の冷却性を向上させるようになっている。熱伝導性に優れた金属としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等がある。また、角形電池21は、外装缶211上面から突出する二つの出力端子213が長手方向に並設されており、夫々、正極と負極となっている。
【0028】
電池ブロック2を構成する角形電池21は、環状バインドバー31の開口から出力端子213が露出するように、出力端子213が電池ブロック2の上面に並ぶように積層され、隣接している角形電池21同士は、バスバー(図示せず)を介して接続される。角形電池21は直列に接続され、電源装置1の出力電圧を大きくしている。この構成によると、環状バインドバー31から出力端子213が露出しているので、電池ブロック2を環状バインドバー31で締結した状態で、バスバーによる角形電池21の接続が行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0029】
尚、上記実施形態では、各角形電池21は直列に接続されているが、並列に接続してもよい。角形電池21を並列に接続することで、電源装置1の電流容量を大きくすることができる。また、目的の出力電圧や電流容量に応じて、並列接続や直列接続を組み合わせて電池ブロック2を構成する場合もある。
【0030】
電池ブロック2を構成する角形電池21の間には、セパレータ22が配設されている。セパレータ22は、絶縁材で形成されており、隣接する角形電池21同士の短絡を防止することができるようになっている。絶縁材としては、例えば、絶縁性、耐熱性に優れた樹脂やプラスチックが使用される。セパレータ22は、両面に角形電池21が嵌合するように形成されており、角形電池21を積層する際、隣接する角形電池21の位置ずれを阻止するようになっている。
【0031】
尚、上記実施形態では、隣接する角形電池21の間には、セパレータ22が配設されているが、例えば、角形電池21の外装缶211を覆うチューブ状の絶縁材を備える構成とすることもできる。この構成では、セパレータ22よりも薄いチューブ状の絶縁材により、隣接する角形電池21を絶縁することができるため、電池ブロック2の積層方向の長さを短くすることができる。このチューブ状の絶縁材としては、例えば、熱収縮する絶縁性フィルムであるシュリンクチューブなどが知られている。
【0032】
エンドプレート23は、外形が角形電池21の外形とほぼ等しい直方体形状で、アルミニウムやアルミニウム合金等の比較的高い強度を有する金属や硬質のプラスチック等で形成されている。また、エンドプレート23の環状バインドバー31と対向する面には、位置決め穴231が複数形成されている(本実施例では、エンドプレート23の各隅部に形成)。尚、図示はしないが、エンドプレート23は、曲げ強度を高めるために、外側面に縦横に延設される補強リブを備える構成とすることもできる。
【0033】
環状バインドバー31は、エンドプレート23を備えた電池ブロック2を周方向に囲繞するバインドバーで、上下一対の環状バインドバー31がエンドプレート23に架設される。環状バインドバー31の内径は、エンドプレート23を両端に備えた電池ブロック2が積層方向に押圧される前の状態の周長よりも、少許小さくなるように形成されている。環状バインドバー31には、エンドプレート23と対向する面に、エンドプレート23に形成されている複数の位置決め穴231と対応する位置に、小孔311が形成されており、小孔311及び位置決め穴231にピン4を挿通することで、環状バインドバー31の位置決めを行うことができるようになっている。
【0034】
図4及び図5は環状バインドバー31をエンドプレート23に架設し、電池ブロック2を締結する様子を示す斜視図である。環状バインドバー31で電池ブロック2を締結する際、バインド治具Jを用いて、電池ブロック2の両端に備えられたエンドプレート23を両端から押圧し、電池ブロック2を積層方向に弾性収縮させる。この時、電池ブロック2は、積層方向に収縮しているので、環状バインドバー31の内径よりも、電池ブロック2の周長のほうが小さくなっており、両端に備えられたエンドプレート23に、環状バインドバー31を架設することができる。また、環状バインドバー31は、バインド治具Jの取り外しを阻害しないように、バインド治具Jと対応する位置となるエンドプレート23と対向する面の中央部分に、切り欠き31Aが設けられている。
【0035】
ここで、前段落で説明した切り欠き31Aの構成について補足する。上述の通り、一対の環状バインドバー31は、それぞれ、電池ブロック2の上部と下部に架設されており、以下、電池ブロック2の上部に位置する環状バインドバー31を第一環状バインドバー31a、電池ブロック2の下部に位置する環状バインドバー31を第二環状バインドバー31bとする。第一環状バインドバー31aは、エンドプレート23と対向する面に、エンドプレート23の中央部から上方へ向けて第一環状バインドバー31aの半分程度まで切り欠いた切り欠き31Aが形成されている。第二環状バインドバー31bは、エンドプレート23と対向する面に、エンドプレート23の中央部から下方へ向けて第二環状バインドバー31bの半分程度までを切り欠いた切り欠き31Aが形成されている。第一環状バインドバー31aの切り欠き31Aと、第二環状バインドバー31bの切り欠き31Aとは、対応する位置に形成されており、二つの切り欠き31Aによって形成される開口部の形状とバインド治具Jの形状が一致するようになっている。
【0036】
この構成により、バインド治具Jで、電池ブロック2を押圧した状態のまま、第一環状バインドバー31aを電池ブロック2の上方から被せてエンドプレート23に架設し、第二環状バインドバー31bを電池ブロック2の下方から被せてエンドプレート23に架設することができる。そして、バインド治具Jを取り外すと、弾性収縮していた電池ブロック2は、元の寸法へ戻ろうとするが、電池ブロック2を囲繞している環状バインドバー31により、電池ブロック2の寸法が規制される。具体的には、エンドプレート23を両端に備えた電池ブロック2が環状バインドバー31の内径を超えて伸長するためには、寸法を規制している環状バインドバー31を弾性変形させる必要があり、このような構成とすることで、環状バインドバー31により、電池ブロック2を積層方向に加圧した状態で締結することができる。この時、環状バインドバー31とエンドプレート23とは、ピン4を介して、位置決めされているので、環状バインドバー31とエンドプレート23との相対位置がずれる事はなく、電池ブロック2をしっかりと締結することができるようになっている。
【0037】
尚、環状バインドバー31は、電池ブロック2を積層方向に充分な力で加圧して締結することができるように、電池ブロック2を締結する際にかかる圧力ではほとんど変形しない程度の強度を有する金属板、例えば、充分な強度を有する幅と厚さのステンレス板や鋼板等の金属板で形成されることが好ましい。
【0038】
また、上記実施形態では、位置決め穴231にピン4を挿通して環状バインドバー31を仮止めする構成であるが、位置決め穴231及びピン4の先端にネジ山またはネジ溝を設ける構成としても良い。この構成によると、仮止めの際、ピン4が抜け落ちることがなく、電源装置1の組み立てを容易に行うことができる。
【0039】
図6及び図7は本実施形態の電源装置の冷却構造を示すための図で、熱伝導性に優れた平板状の冷却プレート51が、電池ブロック2の下面側に配設される。前述の通り、環状バインドバー31は、電池ブロック2の上面及び下面の少なくとも一部を露出させるように開口した環状に形成されているので、電池ブロック2の下面から露出した角形電池21を冷却することができるようになっている。冷却プレートは、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウム等で形成される金属板で形成される。冷却プレート51と電池ブロック2との間には、絶縁性の熱伝導シート53が配設され、電池ブロック2と冷却プレート51とは熱的に結合された状態となっている。熱伝導シート53は、例えば、シリコンやゴム系の素材で形成され、電池ブロック2と冷却プレート51との絶縁性を保ちつつ、電池ブロック2の熱を冷却プレート51へ効率良く伝えることができる。冷却プレート51の内部には、不凍性の冷却液が通過する冷媒配管52が配設されている。この冷媒配管52には、図示しない冷却機構から冷却液が供給され、冷却液が冷媒配管52内を循環するように構成されており、この冷却液により冷却プレート51が冷却されるようになっている。冷却プレート51と、熱伝導シート53と、冷媒配管52とで冷却装置5が構成され、この構成により、環状バインドバー31に覆われていない電池ブロック2の一面(本実施例では、電池ブロック2の下面)と冷却プレート51を熱的に結合させることができ、電池ブロック2の冷却を行うことができる。
【0040】
尚、上記実施形態では、絶縁性の熱伝導シートを備える構成としているが、例えば、外装缶211が樹脂で形成される構成や、角形電池21をチューブ状の絶縁材で覆う構成では、冷却プレート51と電池ブロック2とは、外装缶211やチューブ状の絶縁材等により絶縁されているので、冷却プレート51と電池ブロック2の下面とを直接当接させて、熱的に結合させる構成としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、冷却液を用いて冷却プレート51を冷却する構成の冷却装置5を例示したが、この構成に限定する必要はなく、例えば、冷媒配管52内を循環している冷却液を気化させて冷却プレート51を冷却する構成や、冷却プレート51に放熱フィンを設ける構成等の周知の構成であっても良い。
【0042】
さらに、上記実施形態では、冷却プレート51を用いた冷却方式を例示したが、環状バインドバー31の側面にスリット状の開口部を複数形成し、この開口部から冷却風を入れて、電池ブロック2を冷却させる構成でもよい。
【0043】
而して、組立工程の際、角形電池21とセパレータ22を交互に積層し、両端にエンドプレート23を配設して電池ブロック2を形成する。エンドプレート23を押圧するバインド治具Jを介して、電池ブロック2を積層方向に加圧して弾性縮小させ、縮小した電池ブロック2を囲繞するように、電池ブロックの上方及び下方から一対の環状バインドバー31をエンドプレート23に架設する。この時、エンドプレート23の位置決め穴231と環状バインドバー31の小孔311とは、互いに対向する位置となるようになっている。そして、ピン4を環状バインドバー31及びエンドプレート23の小孔311に挿通して、環状バインドバー31をエンドプレート23に係止することで、環状バインドバー31を仮止めすることができるようになっている。
【0044】
バインド治具Jを取り外すと、電池ブロック2を加圧していた力がなくなり、電池ブロック2は、環状バインドバー31の内径と一致する程度まで伸長するが、環状バインドバー31によって囲繞されているので、元の寸法までは伸長しない。そのため、環状バインドバー31で締結された電池ブロック2は、環状バインドバー31により積層方向に加圧される。電池ブロック2の上面から突出している角形電池21の出力端子213にバスバーを装着し、各角形電池21を直列に接続する。冷却プレート51の上面に、絶縁性の熱伝導シート53を配設し、この熱伝6導シート53と電池ブロックの下面が当接するように、冷却プレート51に電池ブロック2を配設する。
【0045】
上記実施形態の電源装置1は、一般的なネジやナットを使ってエンドプレートにバインドバーを固定する方法と異なり、環状バインドバー31はネジやナット等の固定部材のみで固定されているわけではないため、例えば、振動によってネジやナットが緩んで環状バインドバー31が外れたり、電池ブロック2を加圧する力が低下したりするおそれはない。この構成によると、組立工程も少なく、ネジ等のトルク管理を行う必要もないので、生産効率を高めることができる。
【0046】
また、環状バインドバー31は、エンドプレート23の中央と対向する位置に、切り欠きが形成されているので、組立工程において、バインド治具を取り外す際、バインド治具Jと環状バインドバー31とが物理的に干渉することがなく、バインド治具Jを容易に取り外すことができる。
【0047】
さらに、ピン4を使って仮止めできるように構成されているため、環状バインドバー31を位置決めすることができ、環状バインドバー31が電池ブロック2に対して斜めに架設されることを防止することができる。環状バインドバー31が斜めに架設されると、電池ブロック2を想定よりも強い力で加圧され、環状バインドバー31に負荷がかかる。加えて、電池ブロック2が想定より強い力で加圧されると、電池ブロック2がより収縮するため、出力端子213とバスバーとの相対位置がずれ、バスバーで接続されている出力端子213に想定以上の負荷がかかるおそれもある。上記実施形態の電源装置では、環状バインドバー31を位置決めした状態で架設する構成とすることで、電池ブロック2が想定より強い力で加圧されることを防止できるようになっている。
【0048】
図8及び図9は、別の実施形態における環状バインドバー32の形状を示す斜視図である。以下、電池ブロック2の上部に位置する環状バインドバー32を第一環状バインドバー32a、電池ブロック2の下部に位置する環状バインドバー32を第二環状バインドバー32bとする。環状バインドバー32は、電池ブロック2を囲繞する側周部321と、該側周部321から延設される鍔部322とで構成される。電池ブロック2の上部を締結する第一環状バインドバー32aは、側周部321の上部に鍔部322が形成されており、エンドプレート23に架設した際に、電池ブロック2の上部に鍔部322が当接するようになっている。同様に、電池ブロック2の下部を締結する第二環状バインドバー32bは、側周部321の下部に鍔部322が形成されており、エンドプレート23に架設した際に、電池ブロック2の下部に鍔部322が当接するようになっている。
【0049】
この構成によると、環状バインドバー32の鍔部322を介して、環状バインドバー32の位置決めをすることができる。そのため、環状バインドバー32をエンドプレート23に架設する際に、環状バインドバー32の位置ずれをより確実に防止することができるので、電源装置1の組み立てを容易に行うことができる。
【0050】
図10乃至図14では、冷却プレート51を電池ブロック2と環状バインドバー32の間に位置させ、第二環状バインドバー32bの鍔部322によって冷却プレート51を固定した実施形態を示している。図10乃至図13に示される環状バインドバー32において、電池ブロック2の下面側に位置する第二環状バインドバー32bは、エンドプレート23と対向する面から底面にかけて開口した開口部32Bが形成されている。この開口部32Bを形成することで、冷却プレート51を電池ブロック2と環状バインドバー32bの間に位置させた状態で、冷却プレート51内に配設される冷媒配管52を外部へ配管することができるようになっている。
【0051】
尚、図10乃至図14に示す実施形態では、第二環状バインドバー32bの鍔部322は、電池ブロック2の下部ではなく、冷却プレート51の下部と当接するようになっている。
【0052】
さらに、図14に示す実施形態では、第二環状バインドバー32bは、有底の箱形状に形成され、冷却プレート51の下面を覆って、冷却プレート51の下面を全面で支える形状としている。換言すると、図14に示す実施形態では、第二環状バインドバー32bの鍔部322は電池ブロック2の下面を閉塞するように延接されており、上述したバインド治具Jを挿通可能に構成するための切り欠き31Aと、冷媒配管52を外部へ配管可能に構成するための開口部32Bとが形成されている。
【0053】
図10乃至図14に示した実施形態では、冷却プレート51を電池ブロック2の下面に当接した状態で、環状バインドバー32で締結する構成となっているため、冷却プレート51を固定するための部品とバインドバーとを同一の部材で達成できるほか、冷却プレート51と電池ブロック2とをモジュール化することができる。この構成により、例えば、電源装置1を車両等に搭載する組立工程等において、作業性を向上させることができる。
【0054】
また、図8乃至図14に示した環状バインドバー32の構成では、前述の通り、環状バインドバー32の鍔部322が電池ブロック2または冷却プレート51に当接するので、より確実に環状バインドバー32の位置ずれを防止することができるようになっている。特に積層する角形電池21の数が増えると、環状バインドバー32の位置がずれによる締結力のばらつきが大きくなるが、環状バインドバー32の位置ずれを確実に防止することで、想定より強い力で電池ブロック2が加圧されること等を防止することができる。加えて、鍔部322は、積層されている角形電池21の上下方向の位置ずれも抑制することができる。この種の電源装置は、組立時の角形電池21の上下方向の位置ずれや、製造時の外装缶211の寸法のばらつきにより、電池ブロック2の上面や下面を平坦にすることは困難である。電池ブロック2の下面が平坦でない場合、冷却プレート51や熱伝導シート53と電池ブロック2との密着性が悪くなるため、角形電池21を充分に冷却できなかったり、積層されている角形電池21に温度差が生じたりするおそれがある。電池ブロック2を構成している角形電池21に温度差が生じると、角形電池21の容量にばらつきが生じて、過放電や過充電が起きるおそれもある。
【0055】
さらに、図8及び図9に示した実施形態では、鍔部322により、積層されている角形電池21の上下方向の位置ずれも抑制することができるので、電池ブロック2と熱伝導シート53との密着性を向上させることができる。また、図10乃至図14に示した実施形態では、環状バインドバー32bによって、冷却プレート51が電池ブロック2の下面に当接した状態で保持されるようになっているので、環状バインドバー32を介して、冷却プレート51が電池ブロック2の下面(熱伝導シート53)に押圧された状態となり、電池ブロック2と熱伝導シート53との密着性を向上させることができる。
【0056】
尚、上記実施形態では、直方体形状の電池セルとして、角形電池を例示しているが、本発明で用いる電池セルは角形電池に限らず、電極等の発電要素をラミネートフィルムで被覆して形成される角形形状のラミネート電池等であってもよい。また、上記実施形態において、ピン4と、位置決め穴231と、小孔311とは、複数形成されているが、必ずしも複数である必要はない。例えば、積層する角形電池21の数が少ない電源装置1では、比較的、環状バインドバー31や環状バインドバー32が位置ずれするおそれが少ないので、一つの環状バインドバーに対して、ピン4と、位置決め穴231と、小孔311を一つだけ備える構成としてもよい。
【0057】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータのみで走駆するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、またはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
【0058】
また、車両用の電源装置のほかに、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【0059】
尚、上述の実施形態では、各構成要素を説明するために、電池セルの出力端子側を上面、外装缶の底面を下面としたが、この上下等の方向は電源装置1の載置方法を制限するものではない。例えば、上述したハイブリッド自動車等に搭載する際、電池ブロックの上面を側方や下方に向けるように電源装置1を載置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電源装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 電源装置
2 電池ブロック
21 角形電池
211 外装缶
212 電極
213 出力端子
22 セパレータ
23 エンドプレート
231 位置決め穴
3 締結具
31 環状バインドバー
31a 第一環状バインドバー
31b 第二環状バインドバー
311 小孔
31A 切り欠き
32 環状バインドバー
32a 第一環状バインドバー
32b 第二環状バインドバー
321 側周部
322 鍔部
32B 開口部
4 ピン
5 冷却装置
51 冷却プレート
52 冷媒配管
53 熱伝導シート
J バインド治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の電池セルを一方向に積層させて形成される電池ブロックと、該電池ブロックの積層方向の両端に配設されるエンドプレートと、前記電池ブロックを加圧した状態で締結する締結具とを備え、
前記締結具は、一対のバインドバーで構成され、
該バインドバーは、前記電池ブロック及び前記エンドプレートを囲繞する形状に形成されると共に、前記エンドプレートに架設され、さらに、前記エンドプレートと対向する面に切り欠きを有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、
一方の前記バインドバーに形成される前記切り欠きと、他方の前記バインドバーに形成される前記切り欠きとが、互いに隣接するように位置して一つの開口部を形成すると共に、
該開口部が電池ブロックの積層方向両端にそれぞれ少なくとも一つずつ形成されるように構成されることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電源装置において、
前記電池セルは、前記電池ブロックの一面に並んで位置する出力端子を有し、
前記バインドバーは、前記電池ブロック及び前記エンドプレートを囲繞して電池ブロックを締結する側周部と、該側周部から延設される鍔部とで構成され、
前記出力端子側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記出力端子を露出させる開口を形成するように設けられることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3記載の電源装置において、
前記電池セルは、上面に前記出力端子が設けられる外装缶を有し、
前記電池セルの下面側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記電池セルの下面が位置する電池ブロックの一面の少なくとも一部を露出させる開口を形成するように設けられることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項3記載の電源装置において、
前記電池セルは、上面に前記出力端子が設けられる外装缶を有し、
前記電池セルの下面側に位置する前記バインドバーの鍔部は、前記電池セルの下面が位置する電池ブロックの一面を覆うように設けられることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の電源装置において、
前記電池セルの下面が位置する前記電池ブロックの一面に前記電池セルを冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項6記載の電源装置において、
前記冷却装置は、熱伝導性を有する冷却プレートを含み、
該冷却プレートは、前記電池ブロックと前記鍔部との間に位置することを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の電源装置において、
前記バインドバーは、バインドバーを貫通する少なくとも一つのピンを介して、前記エンドプレートに係止可能に構成されることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−51048(P2013−51048A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186977(P2011−186977)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】