説明

電源装置

【課題】複数の電極を端子に接続する際のエネルギーを極力低減でき、しかも、使用する電池セルの種類を少なくできる電源装置を提供する。
【解決手段】両面に電極2b、3bの配置が可能な電極接続部17a,17bを有する中間端子17と、積層された複数の電池セル2、3より構成され、電極接続部17a,17bの位置を基準として一方側に配置された電池セル2、3の電極2b、3bが電極接続部17a,17bの一方の面に重なり合って配置され、電極接続部17a,17bの位置を基準として他方側に配置された電池セル2、3の電極2b、3bが電極接続部17a,17bの他方の面に重なり合って配置された電池セル群SG2,SG3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の電池セルを有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車には、電動モータの駆動源として電源装置が搭載される。電源装置は、積層された複数の電池セルを有し、所望の電力を得るために複数の電池セルが所望の配列で接続される(特許文献1参照)。複数の電池セルを並列接続する場合には、従来では図10に示すように接続していた。
【0003】
図10において、複数の電池セル51〜54は、積層されている。各電池セル51〜54は、板状の電極51b〜54bを有する。互いに並列接続する複数の電池セル(以下、「電池セル群SG」という)の電極51b〜54bは、同じ端子60の一面側に重なり合うようにそれぞれ配置されている。同一の電池セル群SG内の各電池セル51〜54は、その電極51b〜54bの長さが異なる長さに形成されている。
【0004】
端子60の一面に重なり合うよう配置された複数の電極51b〜54bは、端子60に溶接等によって接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−55492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例では、端子60の一面には、電池セル群SGの電池セル51〜54の個数と同数の電極51b〜54bが重なり合って配置される。従って、端子60に接続される電極51b〜54bの個数が多くなると、接続方法によっては大きなエネルギーを必要とするという問題がある。
【0007】
又、電池セル群SGの各電池セル51〜54は、その電極51b〜54bの長さが全て異なるよう形成する必要である。そのため、電池セル51〜54の種類(部品品番)が多くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、複数の電極を端子に接続する際のエネルギーを極力低減でき、しかも、使用する電池セルの種類を少なくできる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、両面に電極の配置が可能な電極接続部を有する端子と、積層された複数の電池セルより構成され、前記電極接続部の位置を基準として一方側に配置された前記電池セルの電極が前記電極接続部の一方の面に重なり合って配置され、前記電極接続部の位置を基準として他方側に配置された前記電池セルの電極が前記電極接続部の他方の面に重なり合って配置された電池セル群とを備えたことを特徴とする電源装置である。
【0010】
前記端子は、連結部で連結された前記電極接続部を複数有し、前記各電極接続部には、異なる前記電池セル群における前記各電池セルの前記電極がそれぞれ接続されたものを含む。
【0011】
前記連結部には、前記各電極接続部の内面側に開口する電極挿通孔が設けられているものを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池セル群の電極は、電極接続部の両面に分割配置されるため、電極の重ね枚数が削減され、電極接続部と電池セル群の電極との接続に要するエネルギーを小さくできる。電池セル群の内で、電極接続部の位置を基準として対称位置に配置されるものは、電極の突出高さが同じものを使用できるため、電池セルの種類を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示し、電源装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、絶縁カバーを開いた状態の電源装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、積層された電池セルの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、(a)は第1電池セルの斜視図、(b)は第2電池セルの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、一方の絶縁ブロック体の分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、他方の絶縁ブロック体の分解斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、端子等の電気回路系部品を抽出した斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、中間端子の斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態を示し、(a)は出力端子や中間端子と電極の接続箇所を示す断面図、(b)は中間端子と電極の接続箇所の斜視図である。
【図10】従来の端子と電極の接続構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図9は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、電源装置Aは、積層された複数(12個)の電池セル2,3から成る電池集合体1と、この電池集合体1の両側に配置された一対の絶縁ブロック体10,20と、サーミスタ用の2本のフラットケーブル30と、電圧電出用の2本のフラットケーブル40とを備えている。
【0016】
電池集合体1は、12個の電池セル2,3より構成されている。電池集合体1は、図3に詳しく示すように、4つの電池セル2,3を並列接続する3組の電池セル群SG1,SG2,SG3に分けられ、この3組の電池セル群SG1,SG2,SG3が直列接続されている。
【0017】
各電池セル2,3は、扁平長方形のセル本体2a,3aと、その左右の側面より突出された一対の電極(プラス電極とマイナス電極)2b,3bを有する。各電極2b,3bは、電池セル2,3を表裏逆転配置しても上下の向きが異なるのみで、平面視で同じ位置に位置するよう設定されている。各電極2b,3bは、薄膜形状(板状)である。各電極2b,3bは、裏面側に向かって突出している。
【0018】
電池セル2,3としては、その電極2b,3bの突出高さが異なる2種類のもの、つまり、第1電池セル2と第2電池セル3が使用されている。第1電池セル2は、図4(a)に示すように、電極2bの突出高さH1が低い。第2電池セル3は、図4(b)に示すように、電極3bの突出高さH2が高い。積層された12個の電池セル2,3は、上から順に第1電池セル群SG1、第2電池セル群SG2、第3電池セル群SG3を構成している。各電池セル群SG1,SG2,SG3内の電池セル2,3の積層パターンについては、下記に詳述する。
【0019】
一方の絶縁ブロック体10は、図5に詳しく示すように、絶縁ケース本体11と絶縁カバー15を有する。絶縁ケース本体11は、端子収容部12と、この端子収容部12にヒンジ部13を介して連結された基板収容部14を有する。端子収容部12内には、1個の出力端子16と1個の中間端子17が固定されている。出力端子16と中間端子17については、下記に詳述する。基板収容部14には、制御基板19が収容されている。絶縁カバー15は、基板収容部14内の制御基板19を被うようにして装着される。基板収容部14をヒンジ部13を介して回転することによって、図1の閉状態と図2の開状態に変移できる。図1の閉状態では、基板収容部18及び絶縁カバー15によって端子収容部12の開口側が閉塞される。これにより、一方の絶縁ブロック体10は、電池集合体1の一方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行う。又、一方の絶縁ブロック体10は、一方の絶縁ブロック体10側に配策されるサーミスタ用と電圧検出用の各フラットケーブル30,40の保持を行っている。
【0020】
他方の絶縁ブロック体20は、図6に詳しく示すように、絶縁ケース本体21と絶縁カバー22を有する。絶縁ケース本体21内には、1個の出力端子23と1個の中間端子24が固定されている。出力端子23と中間端子24については、下記に詳述する。絶縁カバー22は、絶縁ケース本体21の開口側を被うようにして装着される。他方の絶縁ブロック体20は、電池集合体1の他方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行う。又、他方の絶縁ブロック体20は、他方の絶縁ブロック体20側に配策されるサーミスタ用と電圧検出用の各フラットケーブル30,40の保持を行っている。
【0021】
一対の絶縁ブロック体10,20のいずれか一方の出力端子16,23は、プラス側出力端子であり、他方の出力端子23,16は、マイナス側出力端子である。各出力端子16,23は、図7に詳しく示すように、導電性金属製のバスバーより形成されている。各出力端子16,23は、ストレート形状である。各出力端子16,23は、その一部が各絶縁ケース本体11,21より露出し、この露出箇所が外部接続部16a,23aである。各出力端子16,23の各絶縁ケース11,21内での露出箇所が電極接続部16b,23bである。電極接続部16b,23bの両面には、絶縁ケース本体11,21の開口を介して挿入された電極2b、3bがそれぞれ配置できる。
【0022】
各中間端子17,24は、図7及び図8に詳しく示すように、導電性金属製のバスバーより形成されている。各中間端子17,24は、間隔を置いて平行に配置された2つの電極接続部17a,17b,24a,24bと、この2つの電極接続部17a,17b,24a,24bを連結する連結部17c,24cから略コ字形状である。連結部17c,24cの各電極接続部17a,17b,24a,24bの内面近くの位置には、電極挿通孔17d,24dがそれぞれ開口されている。この各電極挿通孔17d,24dを利用して各電極接続部17a,17b,24a,24bの内面側に電極2b,3bを挿入できるようになっている。各電極接続部17a,17b,24a,24bの外面側には、連結部17c,24cの上方や下方スペースを利用して電極2b,3bを挿入できる。以上より、各電極接続部17a,17b,24a,24bの両面には、絶縁ケース本体11,21の開口を介して挿入された電極2b,3bが配置できるようになっている。連結部17c,24cには、検査用接続部17e,24eが一体に設けられている。検査用接続部17e,24eには、サーミスタ用のフラットケーブル30の一端側がクリップ31を使用して固定されている。サーミスタ用のフラットケーブル30の一端側にはサーミスタ(図示せず)が搭載されている。サーミスタ用のフラットケーブル30の他端は、制御基板19に接続されている。これにより、中間端子17,24の温度情報は、制御基板19に出力されている。検査用接続部17e,24eには、電圧電出用のフラットケーブル40の一端が接続されている。電圧電出用のフラットケーブル40の他端は、制御基板19に接続されている。これにより、中間端子17,24の位置における電圧情報が制御基板19に出力されている。制御基板19では、これら情報に基づいて温度や電池セルの出力電圧に関する異常の有無を判断できるようになっている。
【0023】
次に、電池セル2,3の各電極2b,3bと出力端子16,23及び中間端子17,24との接続について説明する。先ず、積層された12個の電池セル2,3は、上から順に第1電池セル群SG1、第2電池セル群SG2、第3電池セル群SG3を構成している。各電池セル群の4個の電池セル2,3は、内側の2個を第1電池セル2とし、外側の2個を第2電池セル3とし、互いに対向する電極2b,3b同士が同じ極で、且つ、互いの電極2b,3bの突出方向が互いに向かい合う方向となる配列で積層されている。
【0024】
これにより、図9(a)に示すように、第1電池セル群SG1の一方側では、出力端子16の電極接続部16bの位置を基準として上方側(一方側)に配置された電池セル2,3の電極2b,3bが電極接続部16bの上面(一方の面)に重なり合って配置され、下方側(他方側)に配置された電池セル2,3の電極2b,3bが電極接続部16bの下面(他方の面)に重なり合って配置されている。
【0025】
図9(a)、(b)に示すように、第2電池セル群SG2と第3電池セル群SG3の一方側では、中間端子17の各電極接続部17a,17bの位置を基準として上方側(一方側)に配置された電池セル2,3の電極2b,3bが電極接続部17a,17bの上面(一方の面)に重なり合って配置され、下方側(他方側)に配置された電池セル2,3の電極2b,3bが電極接続部17a,17bの下面(他方の面)に重なり合って配置されている。
【0026】
第1電池セル群SG1と第2電池セル群SG2の他方側では、図示していないが、各電極2b,3bが中間端子24の各電極接続部24a,24bに上記と同様の状態でそれぞれ配置され、第3電池セルSG3の他方側では、各電極2b,3bが出力端子23の電極接続部23bに上記と同様の状態でそれぞれ配置される。
【0027】
出力端子16,23や中間端子17,24の各面に重なり合うよう配置された複数の電極2,3は、出力端子16,23や中間端子17,24に溶接等によって接続される。
【0028】
以上説明したように、各電池セル群SG1〜SG3の電極2b,3bは、電極接続部16b,17a,17b,23b,24a,24bの両面に分割配置されるため、電極2b,3bの重ね枚数が削減され、電極接続部16b,17a,17b,23b,24a,24bと各電池セル群SG1〜SG3の電極2b,3bとの接続に要するエネルギーを小さくできる。各電池セル群SG1〜SG3の内で、電極接続部16b,17a,17b,23b,24a,24bの位置を基準として対称位置の一対の電池セル2(又は3)は、電極2b,3bの突出高さが同じもの(つまり、同一の部品品番)を使用できるため、電池セル2,3の種類(部品品番)を少なくできる。ここで、第1電池セル2と第2電池セル3は、電極2b,3bの突出高さのみ相違するため、電極2b,3bの折曲工程を除いて同一製造の電池セル2,3を使用できる。
【0029】
この実施形態では、電池セル群SG1〜SG3内の電池セル2,3の個数が4個であるが、電池セル群SG1〜SG3内の電池セル2,3の個数が6個以上であっても良い。電池セル群SG1〜SG3内の電池セル2,3の個数が多くなっても、上記した理由によって、使用する電池セル2,3の種類を極力少なくできる。
【0030】
中間端子17,24は、互いに連結部17c,24cを介して連結される2つの電極接続部17a,17b,24a,24bを有する。従って、2つの電池セル群(SG2とSG3の組み合わせ、SG1とSG2の組み合わせ)内の各電池セル2,3同士をそれぞれ並列接続し、且つ、2つの電池セル群(SG2とSG3の組み合わせ、SG1とSG2の組み合わせ)間を直列接続できる。尚、中間端子17,24は、互いに連結部17c,24cを介して連結される3つ以上の電極接続部17a,17b,24a,24bを有するものであっても良い。
【0031】
連結部17c、24cには、各電極接続部17a,17b、24a,24bの内面側に開口する電極挿通孔17d、24dが設けられている。従って、連結部17c,24cの外面側から電極2b,3bを挿入できるため、中間端子17,24と電極部2b,3b間を接続する接続作業性が良い。
【0032】
フラットケーブル30,40は、扁平な帯状のケーブルであり、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)である。
【符号の説明】
【0033】
A 電源装置
2,3 電池セル
2b、3b 電極
16,23 出力端子(端子)
17,24 中間端子(端子)
17a,17b,24a,24b 電極接続部
17c,24c 連結部
17d,24d 電極挿通孔
SG1〜SG3 第1〜第3電池セル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に電極の配置が可能な電極接続部を有する端子と、
積層された複数の電池セルより構成され、前記電極接続部の位置を基準として一方側に配置された前記電池セルの電極が前記電極接続部の一方の面に重なり合って配置され、前記電極接続部の位置を基準として他方側に配置された前記電池セルの電極が前記電極接続部の他方の面に重なり合って配置された電池セル群とを備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記端子は、連結部で連結された前記電極接続部を複数有し、
前記各電極接続部には、異なる前記電池セル群における前記各電池セルの前記電極がそれぞれ接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置であって、
前記連結部には、前記各電極接続部の内面側に開口する電極挿通孔が設けられていることを特徴とする電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−89489(P2013−89489A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229804(P2011−229804)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】