説明

電磁クラッチ回り止め具

【課題】電磁クラッチの取り付けに際し、前記電磁クラッチの回り止めの係止不良を生じることがなく、前記電磁クラッチの取り付けを容易に行うことのできる電磁クラッチ回り止め具を提供する。
【解決手段】本発明に係る電磁クラッチ回り止め具は、回転を規制する係止部を有する電磁クラッチを収容する円筒部材と、前記円筒部材の一端側の全周に設けられ、前記係止部をガイドするガイド部と、前記係止部と係合し電磁クラッチの回転を止める回り止め部と、前記係止部と係合し軸方向の位置を規制するスラスト規制部と、を有する突起状の弾性部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチの回転を止める電磁クラッチ回り止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種装置の駆動伝達機構の駆動伝達に、電磁クラッチが多く用いられている。例えば、複写機、ファクシミリやプリンタ等の画像形成装置では、用紙搬送機構や画像形成処理機構等においてモータの駆動伝達のために電磁クラッチが多く用いられている。前記電磁クラッチは、オン・オフにより回転駆動の伝達及び遮断動作を正確なタイミングで行うことができ、用紙や原稿の搬送機構等に使用されている。
【0003】
前記電磁クラッチの取り付けに際しては、電磁クラッチの回り止めが必要となる。そのために、電磁クラッチ側には切欠き、突起等の係止部を形成し、電磁クラッチを取り付けるフレームには前記フレームを一部を折り曲げたり、突起物を設けたりして係止部材を形成し、前記係止部に前記係止部材を係合させて電磁クラッチの回り止めが行われている。
【0004】
しかしながら、電磁クラッチの取り付けとともに、回り止めの係合を行う必要があるため、電磁クラッチの取付作業に時間が掛かる等作業効率が悪かった。
【0005】
これに対し、電磁クラッチに設けられた係止部と、電磁クラッチを支持する側板に設けられた係止用ビスとを有し、前記係止用ビスが前記側板に装着した状態で、前記係止部に係止する位置と係止が解除された位置とを取り得るようにしたことが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−207158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、電磁クラッチを側板に取り付けた後、目視で係止部と係止用ビスの位置合わせを行い、係止用ビスで電磁クラッチの回り止めを行う。このように電磁クラッチの取り付けとともに回り止めの作業を行うのではなく、作業を分けて行うことで組立が容易になる。
【0007】
しかしながら、電磁クラッチの取り付けが装置の奥まった箇所のような場合、或いは目視での前記係止部と前記係止用ビスの位置合わせが困難な箇所のような場合等では、組立が困難であり、回り止めの係止不良等の組立不良を生じることがあった。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、電磁クラッチの取り付けに際し、前記電磁クラッチの回り止めの係止不良を生じることがなく、前記電磁クラッチの取り付けを容易に行うことのできる電磁クラッチ回り止め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の構成により達成される。
1.回転を規制する係止部を有する電磁クラッチを収容する円筒部材と、
前記円筒部材の一端側の全周に設けられ、前記係止部をガイドするガイド部と、前記係止部と係合し電磁クラッチの回転を止める回り止め部と、前記係止部と係合し軸方向の位置を規制するスラスト規制部と、を有する突起状の弾性部材と、
を備えることを特徴とする電磁クラッチ回り止め具。
2.前記ガイド部は、前記電磁クラッチの電気束線をガイドし、前記スラスト規制部及び前記回り止め部は前記電気束線を保持することを特徴とする1に記載の電磁クラッチ回り止め具。
【発明の効果】
【0010】
上記により、電磁クラッチ回り止め具の円周方向のどの位置で電磁クラッチを挿入し取り付けても、前記電磁クラッチの回り止めの係止を行うことができ、容易に係止不良を防止することができる。
【0011】
また、前記電磁クラッチ回り止め具で前記電磁クラッチのスラスト方向(軸方向)の位置も規制するため、別途スラスト方向の規制部材を用いる必要がなく、組立作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は、以下に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る電磁クラッチ回り止め具が適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。なお、本発明に係る電磁クラッチ回り止め具は、画像形成装置に限らず、電磁クラッチを用いる種々の装置に適用可能である。
【0014】
図1に示す画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10K、無端ベルト状の中間転写体6を有する転写ユニット60、給紙搬送手段及び定着装置9等からなる。
【0015】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0016】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y,3M,3C,3Kに送られる。
【0017】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング装置8Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像装置4M及びクリーニング装置8Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C及びクリーニング装置8Cを配置している。黒(Bk)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K及びクリーニング装置8Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光装置3C、及び帯電手段2Kと露光装置3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0018】
中間転写体6は、複数のローラ61により巻回され、回動可能に支持されている。
【0019】
定着装置9は、芯金上に弾性体層を有する第1加圧ローラ93と、内部に加熱手段を有する加熱ローラ92と、第1加圧ローラ93と加熱ローラ92の間に張架された無端状の定着ベルト91と、第1加圧ローラ93と対向する位置に定着ベルト91に圧接可能に配設され、定着ニップ部を形成する第2加圧ローラ94と、を備え、未定着画像を担持する記録材Pの未定着トナー面が定着ベルト91と接触する向きで定着ニップ部を通過することで未定着トナーを記録材Pに、加熱・加圧して定着する。
【0020】
かくして、画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y,7M,7C,7Kにより逐次重ね合わせて転写されて(1次転写)、カラー画像が合成された画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録材Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A,22B,22C,22D,レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、記録材P上にカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された記録材Pは定着装置9において加熱・加圧され、記録材P上のカラー画像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0021】
上記の感光体ドラム、中間転写体、各種ローラ、定着装置等の駆動をするための駆動伝達機構(不図示)が、画像形成装置の奥側(図面裏面方向)に設けられている。
【0022】
図2は、電磁クラッチ310を含む前記駆動伝達機構の一部を示す側面図であり、図3は図2の矢印X1方向から見た正面図である。また、電磁クラッチ310の回転止めとスラスト方向規制は従来の方法を示している。
【0023】
軸A231及び軸B232は、軸受241を介して側板210に支持される。軸A231の一端側に、電磁クラッチ310とギヤA221が矢印X1方向から嵌合するように取り付けられる。軸A231の電磁クラッチ310が取り付けられる左側端部(図2左方向)はD字形状に加工されている。また、本実施の形態では、電磁クラッチ310とギヤA221は一体的に構成されている。
【0024】
図4は、電磁クラッチ310及びギヤA221の構成の一例を示す図である。中空軸313は軸受312を介し、ステータ314と回動可能に嵌合されている。また、中空軸313の左側端部はD字形状に加工されていて、前述の軸A231のD字形状に加工された部分と嵌合し、回り止めされる。ロータ315は中空軸313と回り止め(不図示)された状態で勘合されている。アーマチュア316は、板バネ317を介しギヤA221に取り付けられている。ギヤA221は、中空軸313に回動可能に嵌合されている。ステータ314とロータ315の空隙SA及びロータ315とアーマチュア316の空隙SBは、電磁クラッチがオフ時にそれぞれ所定の空隙となるように保持される。ストップリング318は各部材のスラスト方向の位置を規制する。ステータ314には、電磁クラッチ310の回り止めの係止部である係止アーム311が設けられている。係止アーム311は、切り欠き、長穴等を有している。
【0025】
電磁クラッチ310がオンになると、アーマチュア316がロータ315に吸着され、ロータ315、アーマチュア316、板バネ317を介して中空軸313とギヤA221が接続状態となり駆動伝達される。オフになると、板バネ317によりアーマチュア316とロータ315の接続が解除され、駆動伝達解除状態となる。
【0026】
図2において、軸A231の他端側は、駆動モーター(不図示)に接続されていて、軸A231を通して駆動が伝えられる。
【0027】
軸B232の一端側にはギヤB222がギヤA221と噛み合うように取り付けられている。また、他端側は被駆動部材、例えばローラ等が取り付けられる。
【0028】
電磁クラッチ310の回り止めは、従来、一般的には係止アーム311の切り欠き、長穴等に係止部材、図2の例では係止板211を係合して行われていた。また、電磁クラッチ310のスラスト方向の規制は、電磁クラッチ310を取り付けた後、ストップリング242で行われていた。しかしながら、前述のように電磁クラッチ310の取り付けが装置の奥まった箇所のような場合、或いは目視での係止アーム311と係止板211の位置合わせが困難な箇所のような場合等では、組立が困難であり、回り止めの係止不良等の組立不良を生じることがあった。また、ストップリング242の組立作業性も劣っていた。
【0029】
次に、本発明に係る電磁クラッチ回り止め具について説明する。
【0030】
図5は、電磁クラッチ回り止め具(以下、回り止め具と略す)500を示す図であり、図5(a)は正面図で、図5(b)は側面図である。図6は、回り止め具500の斜視図である。
【0031】
回り止め具500は、電磁クラッチ310の一部を収容する円筒部材501、円筒部材501の一端側の全周に配設された突起状の弾性部材502、取り付け部503を有する。円筒部材501、弾性部材502、取り付け部503は、生産上、組立上一体的に構成されることが好ましい。
【0032】
円筒部材501の他端側には、ギヤが接続するための切り欠きが設けられている。突起状の弾性部材502は、図5(a)及び(b)に示すように、同形状のものが相対するように交互に、また撓んでも接触しないように配設される。円筒部材501及び配設された弾性部材502の内径は、電磁クラッチ及びギヤA221の外径より大きくされる。回り止め具500は、取り付け部503で支持部材、例えば図2の側板210にネジ等で取り付けられる。
【0033】
回り止め具500は弾性及び強度を有する材質であれば、特に限定されないが、POM(ポリアセタール)、ポリカーボネート、ABS等の樹脂を用いることができる。
【0034】
図7は、弾性部材502の一部を平面上に展開した図である。図7に示すように、弾性部材502は、ガイド部、回り止め部、スラスト規制部の各面有する。
【0035】
図8は図2に示す駆動伝達機構に回り止め具500を用いた例である。図8では、回り止め具500の弾性部材503は一部を図示している。図2と同じ符号は一部省略している。図8(a)は電磁クラッチ310の係止アーム311側の面、(b)はギヤA221が一体化された電磁クラッチ310、(c)は電磁クラッチ310が組み込まれた状態を示す図である。回り止め具500は側板210にネジ止めされる。
【0036】
電磁クラッチ310は図の矢印X3方向から、軸A231に嵌合するように回り止め具500に挿入される。前記挿入時に、係止アーム311の切り欠き側部311a、311bは、弾性部材502のガイド部(図7参照)で形成される入口に入り込み、ガイド部にガイドされ、回り止め部に挿入される。切り欠き側部311a、311bの挿入に際しては、弾性部材502は、撓みながら切り欠き側部311a、311bをガイドする。
【0037】
切り欠き側部311a、311bが隣接する前記入口に確実に入り込むため、ガイド部で形成される弾性部材の頂点間の長さl1(図8(c)参照)と切り欠き側部311a、311bの外形長さl2(図8(a)参照)との関係は、l1<l2とされる。
【0038】
所定の位置に電磁クラッチが挿入されると、弾性部材502の回り止め部は、軸の回転方向に係止アーム311を規制し、電磁クラッチ310の回り止めを行う。また、弾性部材502のスラスト規制部は、スラスト方向に係止アーム311を規制し、電磁クラッチ310のスラスト方向の移動を規制する。
【0039】
電磁クラッチ310の挿入にともない、電磁クラッチ310の電気束線319も弾性部材502に挿入される。図9は、電気束線319が弾性部材502に挿入された状態を示す図である。電磁クラッチ310の挿入とともに、電気束線319は弾性部材502のガイド部で形成される入口に入り込み、ガイド部にガイドされ、所定の位置に挿入される。電気束線319は、回り止め部で図9の上下方向の位置を規制され、スラスト規制部で図9の左右方向の位置を規制され、保持される。
【0040】
上記により、電磁クラッチ310を回り止め具500に挿入し取り付けることにより、電磁クラッチの回り止めとスラスト方向規制を同時に且つ容易に行うことができる。また、電磁クラッチ310の係止アーム311の位置が回り止め具500の円周方向のどの位置であっても弾性部材502に挿入し、係止できるため、係止不良を防止することができる。
【0041】
また、電磁クラッチ310の取り付けと同時に電気束線319を所定の位置に保持できるため、組立が容易にできる。
【0042】
このため、装置の奥側等の組立が困難な箇所での電磁クラッチ500の取り付けに際しても、組立不良を起こすことなく、組立作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】電磁クラッチを含む前記駆動伝達機構の一部を示す側面図である。
【図3】図2の矢印X1方向から見た正面図である。
【図4】電磁クラッチ及びギヤの構成の例を示す図である。
【図5】電磁クラッチ回り止め具を示す図である。
【図6】電磁クラッチ回り止め具の斜視図である。
【図7】電磁クラッチ回り止め具の弾性部材の一部を平面上に展開した図である。
【図8】電磁クラッチを含む駆動伝達機構に電磁クラッチ回り止め具を用いた例である。
【図9】電磁クラッチの電気束線が弾性部材に挿入された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
GH 画像形成装置本体
YS 画像読取装置
P 記録材
210 側板
211 係止板
221 ギヤA
222 ギヤB
231 軸A
232 軸B
241 軸受
242 ストップリング
310 電磁クラッチ
311 係止アーム
319 電気束線
500 電磁クラッチ回り止め具
501 円筒部材
502 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転を規制する係止部を有する電磁クラッチを収容する円筒部材と、
前記円筒部材の一端側の全周に設けられ、前記係止部をガイドするガイド部と、前記係止部と係合し電磁クラッチの回転を止める回り止め部と、前記係止部と係合し軸方向の位置を規制するスラスト規制部と、を有する突起状の弾性部材と、
を備えることを特徴とする電磁クラッチ回り止め具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記電磁クラッチの電気束線をガイドし、前記スラスト規制部及び前記回り止め部は前記電気束線を保持することを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ回り止め具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−185967(P2009−185967A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28571(P2008−28571)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】