説明

電磁弁装置

本発明は、弁保持装置(1.1)と、この弁保持装置(1.1)の中に取付けられている電磁弁(MV)の弁インサート(1.3)とを持ち、その際諸実施態様の一つによってより高い圧力強さが実現される電磁弁装置(MVV)に関する。この電磁弁装置は弁インサートを弁保持装置に対して押し当てるための押圧手段かあるいは、弁インサートの中の切込みの中のシール要素(3.15)かあるいはアキシャルフィルタ(4.2)と弁インサート(4.3)との間のシール要素(4.15)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁保持装置と、この弁保持装置の中に取付けられている電磁弁の弁インサートとを持つ電磁弁装置に関する。
【0002】
これまでの電磁弁、特に図5に示されている様な、アンチブロックシステム(ABS)あるいはエレクトロニックスタビリティプログラムシステム(ESP)で使用されている電磁弁は弁保持装置5.1を含んでおり、この中に電磁弁MVの弁インサート5.3が取付けられる。作動中に生じる力は弁インサート5.3の支持領域を通して弁保持装置5.1の中へ逃される。システムの密閉は弁下部のインサート、図5ではプラスチックインサート、によって行われ、その際このインサートは弁インサートの、弁保持装置によって受けられている端部の中へ挿入される。プラスチックインサートはこれによって、発生する圧力に対してシールするために役立ち、弁保持装置に対してシールを行う。更にこのプラスチックインサートの中には逆止め弁が組込まれている。その様な装置は例えば DE10 2005 044 673 A1 から知られている。
【0003】
しかしながらそれ等の従来からの装置は両方向に対して発生する圧力を不十分にしかシールすることができない。このことは、例えばアンチブロックシステムやエレクトロニックスタビリティプログラムシステムの中で分離弁として用いる場合に必要となる。
【0004】
更に製造コストが個別コンポーネントの数の多さによって引上げられまた取付けにも時間とコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、上述の諸問題の中の少なくとも幾つかを解決しまた両方向についてより高い圧力強さをもたらす、改良された電磁弁装置を作ることが望まれている。
【0006】
この課題は独立の諸請求項の中の何れかのメルクマールを持つ電磁弁装置によって解決される。
【0007】
本発明の一つの実施態様に基づく電磁弁装置は弁保持装置と、この弁保持装置の中に取付けられている電磁弁の弁インサートとを含んでいる。この電磁弁装置は更に、弁インサートを弁保持装置に対して押し付けるための押圧手段を含んでいる。
【0008】
弁インサートの中への押圧手段の押込みによって弁保持装置に対する弁インサートの押しつけが、またそれによって弁保持装置の内壁に対する弁インサート外壁の圧力嵌めによる密着が実現される。これによって弁インサートがまたそれによって電磁弁が弁保持装置としっかりと結合される。両方向への高い圧力強さも、例えばプラスチックインサートの様な、追加のコンポーネントの使用無しに、実現される。
【0009】
押圧手段は弁インサートの中で圧力を課せられる、電磁弁装置の弁ボディを含んでいることが望ましい。その場合には弁保持装置と弁インサートとの圧力嵌めによる結合と両方向への高い圧力強さが追加の部品の使用無しに実現される。
【0010】
押圧手段は更に弁インサートの中で圧力を課せられる、電磁弁装置のアキシャルフィルタを含むことができる。このことは唯一つの部品の加圧によって同時にシールとろ過を行うと云う利点をもたらす。同時にまたアキシャルフィルタの押込みによって取付け高さを更に縮小することができる。
【0011】
押圧手段或いは弁ボディの外径は弁インサートの内径よりも僅かに大きくすると有利となる。
【0012】
別の実施態様は弁保持装置と、この弁保持装置の中に取付けられた電磁弁の弁インサートとを備えた電磁弁装置を含んでいる。この弁インサートには切込みが付けられ、その中にシール要素が取付けられている。
【0013】
弁インサートと弁保持装置との間に取付けられているシール要素はより高い圧力強さと両方向へのシール効果とをもたらす。このことは同時にコンポーネント数を技術水準と比べて減らしながら達成される。
【0014】
電磁弁装置のもう一つの別の実施態様ではアキシャルフィルタが軸方向に弁保持装置と弁インサートとの間に取付けられ、その際弁インサートとアキシャルフィルタは軸方向に互いに間隔を置いて配置され、シール要素がアキシャルフィルタと弁インサートとの間に取付けられている。
【0015】
この実施態様の場合にもシール領域は弁インサートの中に組込まれており、より高いシール効果がシール要素によって達成され、また両方向への高い圧力強さが保証される。同時に製造=および組立て=コストが最小限に削減される。
【0016】
好ましくは追加のアキシャルフィルタが軸方向に弁保持装置と弁インサートとの間に取付けられ、これが取付けられると、流れの手前での弁によるろ過が可能となる。
【0017】
更に、好ましくは圧縮ばね受けが弁インサートの内部に備えられる。この圧縮ばねは圧縮ばね受けの上に取付けられる。これによって圧縮ばねは最早、電磁弁を通って流れる液体の流れ領域の中には置かれないことになる。このことは流れ抵抗の低減、ばね負荷の減少、およびより少ない損耗をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は弁ボディを押圧手段として示した、本発明の一つの特別な実施態様に基づく電磁弁装置を示す。
【図2】図2は特に追加のばね受けを示している、本発明のもう一つの特別な実施態様に基づく電磁弁装置を示す。
【図3】図3は弁インサートの切込みの中のシール要素を含んでいる、本発明のもう一つの特別な実施態様に基づく電磁弁装置を示す。
【図4】図4は追加のアキシャルフィルタとシール要素を含んでいる、本発明のもう一つの特別な実施態様に基づく電磁弁装置を示す。
【図5】図5は技術水準に基づく電磁弁を示す;また
【図6】図6は本発明の一つの実施態様に基づく分離弁を含んでいる、ブレーキシステムの回路図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の幾つかの好ましい実施態様が以下に付属の図面を参照しながら詳しく説明される。その際異なる図面の中で同じ或いは対応する部品にはそれぞれ同じかまたは類似の参照記号が付けられている。
【0020】
本発明の一つの実施態様によるとこの電磁弁装置は電磁弁の弁保持装置と、この弁保持装置の中に取付けられている弁インサートとを含んでいる。電磁弁装置は更に、弁インサートを弁保持装置に対して押し付け且つそれによって弁保持装置に対する弁インサートのシールを実現するために、押圧手段を含んでいる。
【0021】
図1は押圧手段が弁ボディ1.5として作られている、本発明の一つの実施態様に基づく電磁弁装置MVVを示している。更に弁保持装置1.1と電磁弁MVが備えられている。電磁弁MVは弁インサート1.3を含んでおり、弁インサートの一端は弁保持装置1.1の中へ挿入されている。弁ボディ1.5は弁インサート1.3の中へ押し込まれており、これによって弁インサート1.3は弁保持装置1.1に押し付けられている。例えば弁ボディ1.5は、弁ボディ1.5の外径が、弁ボディが押し込まれるべき箇所における弁インサート1.3の内径よりも僅かに大きく作られ、これによって弁インサートの僅かな拡張がもたらされる。挿入を更に容易化するために弁インサートの内面には先端が円錐形に終わる軸方向の領域が備えられることがある。アンカ1.9と結合されているプランジャ1.7が弁インサート1.3の中に挿入されている。弁ボディ1.5とタペット1.7との間には圧縮ばね1.6が取付けられている。アンカ1.9の周りに配置されているコイル1.11の通電によって圧縮ばね1.6が圧縮され、弁インサートの中のプランジャ1.7が圧縮ばねの力に逆らって弁ボディ1.5に対して押し付けられる。これによって電磁弁MVが閉じられ且つ両方向の流れ方向に密閉する。圧縮ばねの開放は圧縮ばねの力によって達成される。原理的には、非通電時に閉じている弁のための装置を考えることも出来る。
【0022】
更に、弁インサートの上に押し付けられている追加の軸方向のフィルタ1.2が備えられることもある。
【0023】
弁保持装置1.1による電磁弁MV或いは弁インサート1.3の押し付けは図1の例では弁ボディ1.5の挿入によって達成される。これによって弁保持装置1.1と弁インサートとの力嵌めによる結合が生み出され、両方の流れ方向のシールが高い強さで達成される。これによって、技術水準における様な、支持領域による弁保持装置1.1と弁インサート1.3との追加の結合は必要ではない。例えばアキシャルフィルタの様な他のコンポーネントの挿入も考えることができるが、その場合には押圧手段の寸法が弁インサートの、押圧手段が挿入されるべき箇所に対して僅かに大きく作られる。
【0024】
図2は本発明に基づく電磁弁装置のもう一つの実施態様を示している。追加のアキシャルフィルタ2.2が弁保持装置の中に挿入された、弁インサートの端部の中に押し込まれている。弁保持装置1.1に対する弁インサート1.3の力嵌めによる押し付けは弁インサート1.3の僅かな拡張によって生み出される。その際アキシャルフィルタは、外径が弁保持装置1.1の中へ挿入される端部における弁インサート1.3の内径よりも僅かに大きくなる様に作ることができる。更に、弁インサートの、弁保持装置の中へ挿入される端部における内壁は内壁の円錐形の部分をまたアキシャルフィルタ2.2は外壁の円錐形の部分を備えている。このことは弁インサートの中へのアキシャルフィルタ2.2の挿入を容易にする。
【0025】
更に、図2に示されている様に弁インサート2.3の中に追加の保持装置2.16を備えることができる。圧縮ばね2.6はこの場合圧縮ばね保持装置2.16とプランジャ2.7との間に置かれている。これによって圧縮ばね2.6は液体の流れ領域の外に置かれている。このことは流れ抵抗の低減をもたらし且つ圧縮ばね2.6の負荷と損耗を減少させる。圧縮ばね保持装置2.16は圧入されたリングとして、または例えば、弁インサートの突起の形をした部分として作ることができる。
【0026】
弁インサート2.3を弁保持装置2.1に対して押し付けることによって弁の両方の流れ方向のシールが達成されまた圧力強さが高められる。弁インサート2.3と弁保持装置2.1との力嵌めによる結合は弁下部或いはコーキングフランジ無しに達成される。
【0027】
図3は本発明のもう一つの例としての実施態様を示している。この場合には弁インサート3.3が弁保持装置3.1の中へ押し込まれている。弁インサート3.3は、弁インサートの中へ挿入される端部の外面に切込み3.14を持つ様に作られている。この切込み3.14の中には、例えばエラストマーシール要素として作ることのできるシール要素3.15が嵌め込まれている。このシール要素は弁インサートと弁保持装置との間をシールし且つ弁流入流れの間に好ましくは軸線方向に取付けられている。この様にしてシール領域は直接弁インサート3.3の中に組込まれている。このことは両方の流れ方向のシール効果と圧力強さとの更なる向上をもたらす。弁保持装置3.1に対する弁インサート3.3の押し付けは例えば弁インサートのわずかな過大寸法によるプレス嵌めの他に、弁インサートの中への押圧手段の押込みによっても達成される。図3の中では例えば弁ボディ3.5は弁インサートの中に押込むことができ、そうすれば弁インサートと弁保持装置3.1との力嵌め結合が実現される。追加のアキシャルフィルタ3.2、またはラジアルフィルタ3.4の挿入も可能である。更に、図3の実施態様に基づく弁装置の中に、図2に示されている様な圧縮ばね受けを組込むことも考えることができる。
【0028】
図4に示されている実施例は追加のアキシャルフィルタ4.2が弁保持装置4.1の中に挿入された弁インサート4.3から間隔を置いて配置されていると云うことを示している。アキシャルフィルタ4.2と弁インサート4.3との間には、それによって、例えばエラストマーシール要素として作ることのできるシール要素4.14を挿入することができる。かくしてこの実施例の場合にもシール領域は弁インサート4.3の中に組込まれている。両方の方向への高い圧力強さはかくして追加のコンポーネントの使用無しにまた弁インサートの最小限の加工=及び製造=コストで実現されることができる。弁保持装置4.1の中への弁インサート4.3の押込みは圧力嵌めと共に押圧手段の取付けによっても行われる。
【0029】
かくしてここに示された諸実施例は両方の方向へのシール、高い圧力強さと同時に製造コストと組立てコストの最小化をもたらす。更に弁下部の省略によって電磁弁装置の取付け高さも大幅に削減することができる。
【0030】
この電磁弁装置MVVはとりわけ、例えばアンチブロックシステム(ABS)またはエレクトロニックスタビリティプログラムシステム(ESP)で用いられる油圧機器の中での使用に適している。
【0031】
図6にはブレーキシステムが示されている。本発明に基づく、電磁弁MV付きの電磁弁装置は例えば分離弁TVとして使用することができる。この分離弁はブレーキシステムの高圧領域を低圧領域から分離する。このシステムは更に、ブレーキ圧力を制御し又ブレーキ圧力を左右の前輪と後輪へ配分するためのその他の弁、並びにブレーキ圧力の制御のための、エンジンを用いて作動される油圧ポンプ、を含んでいる。
【0032】
以上の説明から当業者は、本発明の範囲を外れること無しに本弁装置の様々な変更やバリエーションを行うことができると云うことが分かるであろう。
【0033】
また本発明が特定の実施例と関連させながら説明されたが、それ等の例は本発明のより良い理解のためだけのものであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
1.1 弁保持装置
1.2 アキシャルフィルタ
1.3 弁インサート
1.5 弁ボディ、
1.6 圧縮ばね
1.7 プランジャ
1.9 アンカ
1.11 コイル
2.1 弁保持装置
2.16 追加の保持装置、或いは圧縮ばね受け
2.2 追加のアキシャルフィルタ
2.3 弁インサート
2.6 圧縮ばね
2.7 プランジャ
3.1 弁保持装置
3.14 切込み
3.15 シール要素
3.2 アキシャルフィルタ
3.3 弁インサート
3.4 ラジアルフィルタ
3.5 弁ボディ
4.1 弁保持装置
4.14 シール要素
4.2 アキシャルフィルタ
4.3 弁インサート、
MV 電磁弁
MVV 電磁弁装置
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図1f】

【図1g】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁保持装置の中に取付けられている、電磁弁(MV)の弁保持装置(1.1)と弁インサート(1.3)とを備える電磁弁装置(MVV)であって、
弁インサート(1.3)を弁保持装置(1.1)に対して押し付けるための押圧手段(M)を備えることを特徴とする電磁弁装置(MVV)。
【請求項2】
押圧手段(M)が弁インサート(1.3)の中に圧力を加えて挿入されている、電磁弁(MV)の弁ボディ(1.5)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項3】
押圧手段(M)が弁インサート(1.3)の中に圧力を加えて挿入されている、電磁弁(MV)のアキシャルフィルタ(2.2)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項4】
押圧手段(M)の外径が弁インサート(1.3)の内径よりも僅かに大きく作られていることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項5】
弁ボディ(1.5)の外径が弁インサート(1.3)の内径よりも僅かに大きく作られていることを特徴とする、請求項2に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項6】
弁保持装置の中に取付けられている、電磁弁(MV)の弁保持装置(3.1)と弁インサート(3.3)とを持つ電磁弁装置(MVV)であって、
弁インサート(3.3)が切込み(3.14)を持ち且つシール要素(3.15)がその切込みの中に嵌め込まれていることを特徴とする、電磁弁装置(MVV)。
【請求項7】
弁保持装置の中に取付けられている、電磁弁(MV)の弁保持装置(4.1)と弁インサート(4.3)とを持つ電磁弁装置(MVV)であって、
弁保持装置(4.1)と弁インサート(4.3)との間の軸線方向のアキシャルフィルタ(4.2)が取付けられており、その際
弁インサート(4.3)とアキシャルフィルタ(4.2)が軸線方向に互いに間隔を置いて配置されており、また
シール要素(4.14)がアキシャルフィルタ(4.2)と弁インサート(4.3)との間に取付けられていることを特徴とする、電磁弁装置(MVV)。
【請求項8】
弁保持装置(1.1;3.1)と弁インサート(1.3;3.3)との間の軸線方向の追加のアキシャルフィルタ(1.2;3.2)を特徴とする、請求項1から6までの何れか一項に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項9】
シール要素がエラストマーシール要素であることを特徴とする、請求項6または7に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項10】
圧縮ばね(2.6)と、弁インサート(2.3)の中に備えられており、圧縮ばねがその上に取付けられている圧縮ばね受け(2.16)を特徴とする、請求項1から7までの何れか一項に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項11】
弁インサート(1.3;2.3;3.3;4.3)の先細りとなっている内径を特徴とする、請求項1から7までの何れか一項に記載の電磁弁装置(MVV)。
【請求項12】
シール要素が弁インサートと弁保持装置との間に取付けられていることを特徴とする、請求項1から11までの何れか一項に記載の電磁弁装置(MVV)。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−515220(P2013−515220A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545185(P2012−545185)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067531
【国際公開番号】WO2011/076484
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】