説明

電磁弁

【課題】 クラッチの作動応答性を向上しつつ、高電流領域での減衰性を高め、クラッチの油圧振動を防止する。
【解決手段】 ソレノイド17と、このソレノイド17に供給される電流に応じて移動するプランジャ18と、前記ソレノイド17の励磁に伴い前記プランジャ18を吸引するコア15とを備え、このコア15のプランジャ18との対向面に、前記プランジャ18の一端を収容可能な収容凹部30を開口した環状の突出部31を設け、この突出部31の外形形状を前記収容凹部30の開口端に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部32と、このテーパ部32の先端に接続されテーパ部32の小径部より小径の薄肉円筒部33にて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの励磁によりプランジャを駆動してスプールを変位させる電磁弁、特にオートマチックトランスミッションのクラッチ圧を制御するのに好適な電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に装備されたオートマチックトランスミッションのクラッチ圧を制御するために電磁弁が設けられており、その電磁弁によりクラッチ圧が所定の圧力に制御されるようになっている。
【0003】
この種の電磁弁において、コアの先端部に所定角度で傾斜するテーパ部を形成した電磁弁として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。かかる電磁弁においては、プランジャのストロークに応じて、コアの磁気絞り部の面積が増加し、磁気抵抗が減少することから、プランジャのストロークに対する磁気飽和の程度が小さくなり、プランジャのストロークに対して吸引力の変化の少ないフラットな吸引力特性となる。この特性により、高い電流がソレノイドに印加されクラッチに高い圧力が供給されているとき、プランジャに作用する減衰力が大きくなり、クラッチが圧力変動により振動することが防止できる。
【0004】
特許文献2には、テーパ部の後端から円筒部を突設し、プランジャの前端が円筒部端と整列するときの磁気吸引力を高くするものが記載されている。
【特許文献1】特開平11−287348号公報(段落0022〜0023、図2)
【特許文献2】特開2000−274546号公報(段落0009、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁弁では、ソレノイドに印加される電流が小さく、クラッチに供給される液圧が低いとき、クラッチの応答性を高めるために、入力ポートと出力ポートとの連通面積を増大することが有効である。また、プランジャのストロークに対して吸引力の変化の少ないフラットな吸引力特性は、プランジャに作用する減衰力を増大し、ソレノイドに印加される電流が大きく、クラッチに供給される液圧が高いとき、クラッチの圧力変動による振動を防止するのに有効である。従って、ソレノイドに低電流が印加されているときにクラッチの応答性がよく、高電流が印加されているときにクラッチが振動することを防止できる電磁弁が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の不具合を解消するためになされたもので、薄肉円筒部を有しながらテーパ部を所要の角度に保持できるようにし、これによって、応答性を向上しつつ、高電流領域での減衰性をも高めた電磁弁を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ソレノイドユニット部によって弁スリーブに収容されたスプールを変位させる電磁弁であって、前記ソレノイドユニット部は、ソレノイドと、このソレノイドに供給される電流に応じて移動するプランジャと、前記ソレノイドの励磁に伴い前記プランジャを吸引するコアとを備え、このコアのプランジャとの対向面に、前記プランジャの一端を収容可能な収容凹部を開口した環状の突出部を設け、この突出部の外形形状を前記収容凹部の開口端に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部と、このテーパ部の先端に接続されテーパ部の小径部より小径の薄肉円筒部にて構成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記電磁弁の出力ポートに、ピストンを摺動可能に設けたクラッチが接続され、前記ソレノイドに印加される電流値が、前記ピストン停止時のバランス位置における前記プランジャの前端面が薄肉円筒部内に位置する低電流領域にある間は、前記ピストン停止時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力は、前記ピストン移動時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力より小さく、前記ソレノイドに印加される電流値が、前記ピストン停止時のバランス位置における前記プランジャの前端面が前記薄肉円筒部内に位置する高電流領域にある間は、前記ピストン停止時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力は、前記ピストン移動時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力と略同一となることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記コアに形成されたテーパ部と円筒部は、前記プランジャの移動方向に対して直角な端面を介して接続されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記スプールには、少なくとも2つのランド部が離間して設けられ、これら2つのランド部の一方に対応して作動油が供給される供給ポートを設け、前記2つのランド部の他方に対応して作動油が排出される排出ポートを設け、前記供給ポートと排出ポートの間に前記スプールの変位によって制御される制御圧を出力する出力ポートを設け、前記ランド部の一方には前記制御圧が作用する面積差を有するフィードバック部を設け、前記スプールを介してプランジャを、プランジャに作用する吸引力に抗し、かつ前記フィードバック部に作用するフィードバック力と同方向に押圧するばねを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した各請求項に係る発明によれば、コアのプランジャとの対向面に設けた突出部の外形形状を収容凹部の開口端に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部と、このテーパ部の先端に接続されテーパ部の小径部より小径の薄肉円筒部にて構成したので、円筒部を薄肉にしたにも拘らず、テーパ部を任意所望の傾きに形成できるので、低電流領域において電磁弁から制御圧を供給される装置の応答性を向上できるばかりでなく、高電流領域でのプランジャ延いては電磁弁から制御圧を供給される装置の減衰性も向上させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態の電磁弁10は、主として、ソレノイドユニット部11と、そのソレノイドユニット部11の一端に設けられたスプール弁部12とによって構成されている。ソレノイドユニット部11は、カバー14、コア15、ヨーク16、ソレノイド17、およびプランジャ18等を備えており、スプール弁部12は弁スリーブ19とスプール20等を備えている。
【0013】
磁性体からなるカバー14は、有底円筒状をなし、このカバー14の底部側に全体として筒状をなす磁性体からなるヨーク16が収納されている。また、カバー14の開口部側に、貫通穴を形成した磁性体からなるコア15が収納されている。コア15にはカバー14の開口端側にフランジ部21が形成されているとともに、このフランジ部21よりカバー14の底部側に突設する円筒部22が形成されている。ヨーク16にはカバー14の底部側にフランジ部23が形成されているとともに、このフランジ部23よりカバー14の開口端側に突設する円筒部24が形成されている。
【0014】
コア15の円筒部22とヨーク16の円筒部24は軸方向に所定量離間して対向配置され、これら円筒部22、24の外周に非磁性体からなるステンレスリング25の両端が嵌合されている。これによってコア15とヨーク16は、磁気的に分離された状態で互いに同心に保持されている。ヨーク16の内周には磁性体からなるプランジャ18が摺動可能に嵌合されている。
【0015】
前記ヨーク16のフランジ部23はカバー14の底部に嵌合され、コア15のフランジ部21はカバー14の開口端に嵌合され、これら両フランジ部21、23の間に環状空間部26が両円筒部22、24の周りに形成されている。環状空間部26にはソレノイド17を巻回したボビン27が嵌入固定されている。
【0016】
前記ヨーク16に対向するコア15の一端には、前記プランジャ18の外径より僅かに大きな内径の収容凹部30が所定の深さに亘って開口され、これによってコア15の一端に環状の突出部31を形成している。収容凹部30にはプランジャ18の端部が収容可能となっており、収容凹部30の深さはプランジャ18に必要なストロークより僅かに大きく設定されている。
【0017】
前記コア15の突出部31は、図2に詳細図示するように、前記収容凹部30の開口端に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部32と、このテーパ部32の先端に接続された薄肉円筒部33とによって構成されている。薄肉円筒部33の肉厚は0.3〜0.5mmとするのが後述する特性上好ましい。テーパ部32の小径側の径は薄肉円筒部33の外径より大径に形成され、テーパ部32の小径側端部と薄肉円筒部33は、プランジャ18の移動方向に直角な端面34を介して接続されている。このように、テーパ部32の小径側端部と薄肉円筒部33とを端面34によって接続することにより、突出部31の先端に薄肉円筒部33を所定の厚みに形成したにも拘らず、テーパ部32の傾きを任意所望に設定できるようにしている。すなわち、テーパ部32の勾配(傾斜角)が薄肉円筒部33の存在によって大きくなるのを防止している。
【0018】
かかる突出部31は、ソレノイド17と、コア15、ヨーク16、プランジャ18、およびカバー14とで構成される磁気回路におけるコア15とプランジャ18間の磁気受渡し部を構成している。
【0019】
カバー14の開口端側に位置するコア15の端面には、スプール20を摺動可能に嵌装する弁スリーブ19が配設されている。そして、カバー14の開口側筒状端部14aを、弁スリーブ19に形成されたフランジ部とコア15のフランジ部21とを接合させた状態でかしめることにより、弁スリーブ19に対してソレノイドユニット部11を一体結合している。これにより、カバー14内に収納されたコア15とヨーク16は、カバー14の底部と弁スリーブ19のフランジ部との間で軸方向に固定されるようになっている。
【0020】
前記弁スリーブ19には、径の異なる第1の弁孔35と第2の弁孔36が形成されるとともに、この第2の弁孔36に接続するばね収容孔37が形成されている。これら各弁孔35、36およびばね収容孔37は、前記コア15およびプランジャ18と同軸上に延びるように形成されている。
【0021】
前記スプール20には、前記第1の弁孔35にそれぞれ嵌合する第1および第2のランド部41、42と、前記第2の弁孔36に嵌合する第3のランド部43が設けられている。第2のランド部42と第3のランド部43は互いに隣接して設けられ、その境界部に段差部44が設けられている。段差部44に連通するフィードバックポート45が弁スリーブ19に形成されている。
【0022】
前記第1および第2のランド部41、42は軸方向に所定量離間して設けられ、小径部46によって互いに連結されている。小径部46に対応して環状溝47が前記弁スリーブ19に形成され、この環状溝47に制御圧を出力する出力ポート48が連通されている。出力ポート48は、図略の連通路を介して前記フィードバックポート45に連通されている。また、前記弁スリーブ19には、前記第1および第2のランド部41、42の互いに対向する端面にそれぞれ対応して開口する排出ポート49および供給ポート50が形成されている。さらに、前記弁スリーブ19には、ばね収容孔37に開口するドレンポート51が形成されている。
【0023】
なお、前記スプール20の一端には、コア15の貫通穴を貫通してプランジャ18に当接するシャフト部52が突設されている。
【0024】
前記ばね収容孔37の開口端はその内周面に形成されたねじ孔に螺合するプラグ53によって閉塞され、このプラグ53とスプール20の間にばね54が設けられている。スプール20はばね54の付勢力によってプランジャ18に向けて押圧され、これにより、スプール20のシャフト部52を介してプランジャ18が、通常カバー14の底面に当接する初期位置に保持されている。かかるプランジャ18の初期位置において、図1及び図2に示すように、コア15の突出部31の端縁とプランジャ18の端縁とが軸方向に一致されている。
【0025】
前記供給ポート50には圧油供給源より、図略のレギュレータバルブによって定圧に制御された作動油が供給されるようになっている。一方、出力ポート48は、図3に示すオートマチックトランスミッションのクラッチ60に供給ライン61を介して接続されている。クラッチ60は、供給された作動油によって摺動するピストン63と、このピストン63の摺動によって摩擦係合する多板のクラッチプレート64とによって構成されている。ピストン63はばね65によってクラッチプレート64から離間する方向に付勢されている。
【0026】
次に、上記した構成の本実施の形態における作用について説明する。ソレノイド17が非励磁状態の場合には、スプール20は、ばね54の付勢力によりプランジャ18を図1の右方向に押圧し、プランジャ18をカバー14の底面に当接する初期位置に保持している。この非励磁状態においては、出力ポート48は、供給ポート50との連通が遮断されているとともに、排出ポート49に連通され、これによって出力ポート48は低圧に保持されている。
【0027】
ソレノイド17を励磁すると、プランジャ18がコア15側へ引き寄せられることにより前記ばね54の付勢力に抗してスプール20が変位する。その結果、第2のランド部42が供給ポート50を開口し始めるとともに、第1のランド部41が排出ポート49の開口面積を制限し始めるので、出力ポート48の制御圧は次第に上昇され、この制御圧によってクラッチ60が制御される。
【0028】
前記制御圧は、また、フィードバックポート45に導入され、第2のランド部42と第3のランド部43の境界部に設けられた段差部44に作用する。このため、第2のランド部42と第3のランド部43との面積差と制御圧との積によって求められるフィードバック力がばね54の付勢方向と同方向に作用する。
【0029】
すなわち、かかる電磁弁10においては、ソレノイド17に通電される電流値に応じてコア15がプランジャ18を吸引する吸引力と、ばね54の付勢力および前記フィードバック力の合力とがバランスする位置にスプール20が保持され、これによって制御圧はソレノイド17に通電された電流値に応じた圧力に制御される。
【0030】
すなわち、下記のつりあい関係式より、制御圧Pが決定される。
F(Ix)=P・S+k(a+L−x)
【0031】
ここで、Iはソレノイド17に供給した電流、kはばね54のばね定数、Lはプランジャ18のフルストローク量、xはスプール20がプラグ53に当接する摺動端位置を原点としたプランジャ18の実ストローク量、Sはフィードバック部(44)の受圧面積、aはばね54の初期たわみ量、F(Ix)は吸引力を表わしている。
【0032】
本実施の形態においては、突出部31の先端に薄肉円筒部33を設けたことにより、起磁力の小さい低電流領域においても、磁気飽和の度合いが大きくなり、このために、図4の吸引力特性図に示すように、プランジャ18のストロークが小さな領域(図2および図4のRa)においては、プランジャ18の実ストローク量xに対して吸引力が低下する右下がりの吸引力特性となる。一方、プランジャ18が所定量ストロークして、プランジャ18の端縁が突出部31のテーパ部32に対応する領域(図2および図4のRb)に達すると、テーパ部32に付与した角度の影響によって、プランジャ18の実ストロークxに対して吸引力がほとんど変化しないほぼフラットな吸引力特性となる。
【0033】
ところで、前述したように、スプール20は、コア15がプランジャ18を吸引する吸引力と、ばね54の付勢力およびフィードバック力の合力とがバランスするように制御されるため、クラッチ60が移動し終わってピストン63が停止した状態(以下この状態をピストン停止時という)でのばね54の付勢力およびフィードバック力の合力は、図4の二点鎖線で示す線図Bのように変化するのに対し、制御圧によってピストン63が移動しているピストン移動時におけるばね54の付勢力およびフィードバック力の合力は、図4の一点鎖線で示す線図Aのように変化する。これは、ピストン移動時においては、クラッチ60に大容量の圧油を供給するために、制御圧Pが低下しプランジャ18が図1の初期位置からより多く変位することを表している。
【0034】
なお、図4の吸引力特性図は、横軸の右端がプランジャ18の初期位置における吸引力を示し、左端がプランジャ18のフルストローク状態における吸引力を示している。また、線図A、Bは、ソレノイド17に供給された各電流値に応じた吸引力と、ばね54の付勢力およびフィードバック力の合力とがバランスする位置をそれぞれ結んだものである。ソレノイドに供給される電流値が同じ場合において、プランジャ18はピストン移動時にピストン停止時より多く初期位置から変移される。
【0035】
電流がソレノイド17に印加されると、プランジャ18およびスプール20は、先ずピストン移動時のバランス位置に移動され、制御圧P1が出力ポート48からクラッチ60に供給される。ピストン63がクラッチプレート64に当接し、プランジャ18およびスプール20がピストン停止時のバランス位置に移動すると、制御圧がP2に上昇してクラッチプレート64を互いに摩擦係合させる。図5のクラッチ圧力特性図は、このようにクラッチ60に供給される制御圧が時間の経過とともに上昇する特性を示している。 また、ピストン移動時における制御圧P1は、ピストン停止時における制御圧P2より、圧力低下量ΔP(=P2−P1)だけ低い。ピストン移動時およびピストン停止時における制御圧は、図6のグラフが示すように、ソレノイド17に印加される電流値の変化に応じて変化する。
【0036】
ピストン移動時における制御圧P1がピストン停止時における制御圧P2より低下する圧力低下量は、下記式より求められる。
ΔP=(ΔF(Ix)−kΔx)/S
【0037】
ここで、ΔF(Ix)はピストン停止時とピストン移動時の吸引力差、Δxはピストン停止時とピストン移動時のプランジャ18のストローク差を表し、kは先に述べた如くばね54のばね定数を表している。
【0038】
ソレノイド17に印加される電流値が、ピストン停止時のバランス位置におけるプランジャ18の前端面の位置が範囲Raとなる低電流領域にある間は、ピストン停止時のバランス位置に位置するプランジャ18に作用する電磁吸引力は、ピストン移動時のバランス位置に位置するプランジャ18に作用する電磁吸引力より小さい。そして、ソレノイド17に印加される電流値が、ピストン停止時のバランス位置におけるプランジャ18の前端面の位置が範囲Rbとなる高電流領域にある間は、ピストン停止時のバランス位置に位置するプランジャ18に作用する電磁吸引力は、ピストン移動時のバランス位置に位置するプランジャ18に作用する電磁吸引力と殆ど変わらない。図4のグラフがかかる特性を示している。
【0039】
もし、圧力低下量ΔPがあると、ピストン移動時とピストン停止時のバランス位置のスプール20の実ストローク量xの差Δxは、ピストン移動時とピストン停止時のバランス位置においてプランジャ18に作用する磁気吸引力の差ΔF(Ix)に応じて増大する。即ち、ピストン移動時のスプール20のバランス位置は、スプール20の第2ランド部42が、供給ポート50と出力ポート48との連通面積を増大する。これにより、電流値がピストン移動時とピストン停止時に磁気吸引力差がある低電流領域であるとき、供給ポート50および出力ポート48を介してクラッチ60に供給される流量が増大し、クラッチ60の応答性が向上する。
【0040】
クラッチ60は、ピストン停止時にソレノイド17に印加される高電流が増加されて磁気吸引力が増大し、制御圧が増加すると、振動する傾向がある。本実施の形態では、図4の楕円Zに囲まれる部分において、磁気吸引力を示す略水平な線と二点鎖線で示される線とのなす角度θが大きいので、ソレノイド17に印加される電流が高電流領域であるときに、プランジャ18およびスプール20に作用する減衰力が増大する。二点鎖線で示される線は、ばね54の付勢力とフィードバック力との合力を示す。制御圧を増大するためにソレノイド17に印加される電流値が増加された場合、プランジャ18はピストン停止時のバランス位置をオーバランする傾向がある。しかしながら、角度θが大きくなるほどプランジャ18およびスプール20をバランス位置に戻す減衰力が増大する。これにより、プランジャ18およびスプール20の減衰性が向上し、クラッチ60が制御圧の変動により振動されることが防止できる。
【0041】
特に本実施の形態においては、テーパ部32と薄肉円筒部33との間に段差をもつ端面34を設けることにより、薄肉円筒部33の肉厚を十分薄くしても、テーパ部32の傾きを適切な値にすることができる。これにより、テーパ部32の先端部における磁気絞り面積が大きくなって、磁気抵抗が低下し、テーパ部32の先端部での吸引力を増加させることができる。これにより、プランジャ18のストロークが大きな高電流領域での領域においても、吸引力がストロークに対して変化の少ないフラットな特性に維持できる。
【0042】
上記した実施の形態においては、テーパ部32の小径側端部と薄肉円筒部33とを、プランジャ18の移動方向に直角な端面34で接続した例について述べたが、端面34は必ずしもプランジャ18の移動方向に直角である必要はなく、例えば、図7に示すように勾配の大きな傾斜面134で接続しても、実質的な影響は少ないものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態を示す電磁弁の断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して図である。
【図3】オートマチックトランスミッションのクラッチを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における吸引力特性を示す図である。
【図5】クラッチの圧力特性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における圧力特性を示す図である。
【図7】本発明の別の実施の形態を示す図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0044】
10… 電磁弁、11…ソレノイドユニット部、12…スプール弁部、14…カバー、15…コア、16…ヨーク、17…ソレノイド、18…プランジャ、19…弁スリーブ、20…スプール、30…収容凹部、31…突出部、32…テーパ部、33…薄肉円筒部、34…端面、35、36…弁孔、41、42、43…ランド部、45…フィードバックポート、48…出力ポート、49…排出ポート、50…供給ポート、54…ばね、60…クラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドユニット部によって弁スリーブに収容されたスプールを変位させる電磁弁であって、
前記ソレノイドユニット部は、ソレノイドと、このソレノイドに供給される電流に応じて移動するプランジャと、前記ソレノイドの励磁に伴い前記プランジャを吸引するコアとを備え、このコアのプランジャとの対向面に、前記プランジャの一端を収容可能な収容凹部を開口した環状の突出部を設け、この突出部の外形形状を前記収容凹部の開口端に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部と、このテーパ部の先端に接続されテーパ部の小径部より小径の薄肉円筒部にて構成したことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1において、前記電磁弁の出力ポートに、ピストンを摺動可能に設けたクラッチが接続され、前記ソレノイドに印加される電流値が、前記ピストン停止時のバランス位置における前記プランジャの前端面が薄肉円筒部内に位置する低電流領域にある間は、前記ピストン停止時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力は、前記ピストン移動時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力より小さく、前記ソレノイドに印加される電流値が、前記ピストン停止時のバランス位置における前記プランジャの前端面が前記薄肉円筒部内に位置する高電流領域にある間は、前記ピストン停止時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力は、前記ピストン移動時のバランス位置に位置する前記プランジャに作用する電磁吸引力と略同一となることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記コアに形成されたテーパ部と円筒部は、前記プランジャの移動方向に対して直角な端面によって接続されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記スプールには、少なくとも2つのランド部が離間して設けられ、これら2つのランド部の一方に対応して作動油が供給される供給ポートを設け、前記2つのランド部の他方に対応して作動油が排出される排出ポートを設け、前記供給ポートと排出ポートの間に前記スプールの変位によって制御される制御圧を出力する出力ポートを設け、前記ランド部の一方には前記制御圧が作用する面積差を有するフィードバック部を設け、前記スプールを介してプランジャを、プランジャに作用する吸引力に抗し、かつ前記フィードバック部に作用するフィードバック力と同方向に押圧するばねを設けたことを特徴とする電磁弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−52839(P2006−52839A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168621(P2005−168621)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】