説明

電磁装置

【目的】可動コアに一体的に形成される作動杆5の正確な位置制御と、良好な応答速度を得る。
【構成】固定コア2の長手方向の中心に軸受嵌合孔2Dが貫通して穿設され、軸受嵌合孔2D内に平軸受Jが嵌合配置される。平軸受Jより外側方A側の軸受嵌合孔2D内には、通気性を有する材料によって形成された環状のフィルター部材Fが嵌合配置される。
フィルター部材Fの一側面20Cを、平軸受Jの外側端面J2に間隙をもって配置し、フィルター部材Fと平軸受Jとの間の軸受嵌合孔2Dに環状室21を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に、コイル、固定コア、作動杆、可動コアとを備えた電磁装置に関するもので、この電磁装置は、例えば自動車の自動変速機における油圧制御用のバルブを制御するアクチュエータとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁装置について図6により説明する。尚、本図には電磁装置によってその動作が制御されるバルブ部Vが含まれて示される。
電磁装置Sは以下により構成される。
1は左端が開口部1Gをもって開口し、右端に底部1Aを有する有底筒状のハウジングであり、底部1Aから開口部1G側に向かって可動コア案内孔1Bが穿設されたガイド突部1Cが突出して形成される。
ハウジング1の開口部1Gはフランジ状のヨーク2Aによって閉塞され、ヨーク2Aには、ハウジング1内に向かって突出する(図6において右方)第1の固定コア2Bと、外側方A(図6において左方)に向かって突出する第2の固定コア2Cが一体的に形成される。以下、フランジ状のヨーク2A、第1の固定コア2B、第2の固定コア2Cとによって形成される部材を単に固定コア2という。
又、ハウジング1内にあって、第1の固定コア2B及びガイド突部1Cの外周には、周囲にコイル3が巻回されたコイルボビン4が収納配置され、更に、可動コア案内孔1B内には作動杆5が一体的に取着された可動コア6が移動自在に配置される。
作動杆5の一端5Aは、ガイド筒部1Cの底部近傍にあって、可動コア案内孔1Bと同芯に穿設された軸受嵌合孔1D内に嵌合配置される平軸受Jにて移動自在に支持される。
又、作動杆5の他端5Bは、固定コア2の長手方向X−Xの中心に貫通して穿設された軸受嵌合孔2D内に嵌合配置される平軸受Jにて移動自在に支持される。
すなわち、作動杆5は、その両端5A、5Bが、平軸受Jにて移動自在に支持されるもので、これによって可動コア6は可動コア案内孔1B内にあって固定コア2に向けて進退自在に配置される。
この平軸受Jは環状をなすもので、その外周が軸受嵌合孔2D、1Dに嵌合され、その内孔J1に作動杆5が挿通して支持されるものであり、この平軸受Jは作動杆5の摺動抵抗を低減させること、及び均一な摺動抵抗を保持する為に用いられるもので、例えば銅の上に青銅粉末を燃結した後に四フッ化エチレン樹脂と鉛の混合物を含浸させて形成する。平軸受Jの縦断面形状が図7に示される。
【0003】
前記電磁装置Sによって制御されるバルブ部Vは以下よりなる。弁本体7は、内部に長手方向X−Xに沿って弁体案内孔8が穿設され、その右方端には、ソレノイド部Sを案内する為の案内孔7Aが穿設され、左方端にはメネジ孔7Bが形成される。案内孔7A及びメネジ孔7Bは弁体案内孔8と同芯に形成される。
前記弁体案内孔8には、図において右方より第1から第6の流路P1〜P6が開口して穿設され、前記各流路P1〜P6は弁本体7の下面に開口する。
そして、弁体案内孔8内には前記流路の開口を制御する弁体9が移動自在に配置される。前記第1の流路P1は弁体9の一端を収容するよう形成され、変速機のミッションケースの如き油溜10に開放される。
第2の流路P2、第5の流路P5は油溜10に開放される。
第3の流路P3は、油圧作動部11に連なる制御油路12に接続され、第4の流路P4は、油圧源13に連なる高圧油路14に接続される。又、第6の流路P6は、弁体9の他端が臨む反力室15に連通するとともにオリフィス16を介して制御油路12に接続される。一方、弁本体9の左方端に形成したメネジ孔7Bにはスプリング調整ネジ17が螺着されて該メネジ孔7Bが閉塞されるもので、スプリング調整ネジ17と弁体9の他端との間には弁体を押圧するスプリング18が縮設されるもので、弁体9はスプリング18の弾性力によって図において右方へ押圧付勢される。(スプリング18は反力室15内に縮設されることになる)そして、電磁装置Sの第2の固定コア2Cの外周部を弁本体7の案内孔7A内に挿入配置することによってリニアソレノイドバルブが形成される。
【0004】
そして、電磁装置Sの通電時には、可動コア6から作動杆5に働く電磁推力により弁体9がスプリング18の反発力に抗して左方へ変位する。これによると、第2及び第3の流路P2、P3間を遮断すると共に、第3及び第4の流路P3、P4間を導通させ、高圧油路14から制御油路12に油圧が供給される。
そして、その油圧は油圧作動部11に直ちに供給される外、オリフィス16を介して反力室15にも伝達し、その油圧による押圧力とスプリング18のバネ力とが反力として弁体9に作用し、これを作動杆5側へ押圧する。その結果、弁体9は、作動杆5の電磁推力と上記反力との釣合いを図るように左右動し、油圧作動部11には、電磁装置Sに流れる電流値に比例した油圧を供給することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の電磁装置によると、特に固定コア2に配置された平軸受Jの外側端面J2は、固定コア2に穿設された軸受嵌合孔2Dを介して外側方Aに向かって直接的に開口する。
すなわち平軸受Jの外側端面J2は油溜10に連なる弁本体7の第1の流路P1に臨んで開口する。
一方油溜10内にあっては自動車の運転時において、オイルミストが発生するもので、このオイルミストは、第1の流路P1に開口する固定コア2の軸受嵌合孔2Dから平軸受Jの外側端面J2に達し、作動杆5の外周と平軸受Jの内孔J1との間に形成される微小なる環状の摺動間隙内に侵入する。
ここで油溜10内に生ずるオイルミスト中には、例えば、バルブ部Vの作動部分(弁体案内孔8、弁体9)において発生する摩耗粉あるいは機関の駆動部において発生する摩耗粉、等によるコンタミ(異物)が含まれるもので、前記摺動間隙内にオイルミストが侵入するとコンタミもまた同時に侵入することになる。
以上によると、コンタミによって作動杆5と平軸受Jの内孔J1との摺動面に摩耗が生じ、その摺動抵抗が増加すること、及び磁路上エアギャップのズレによる正常荷重発生変動が生ずることから、(1)電流値に比例した作動杆5の正確な位置制御が得られない。(2)電流値に対する作動杆5の良好な応答速度が得られない。という不具合を生ずる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み成されたもので、作動杆の正確な位置制御と良好な作動杆の応答速度を得ることのできる電磁装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明になる電磁装置は前記目的達成の為に、ハウジングにコイル、固定コア、作動杆、可動コアを収納配置するとともに、前記作動杆が移動自在に支持された電磁装置において、
固定コア2の長手方向X−Xの中心に貫通して穿設された軸受嵌合孔2Dと、
他側面20Dが外側方Aに臨み、中心部に作動杆5の外周面が摺接して配置される挿通孔20Aが穿設される環状のフィルター部材Fとを有し、
外側方Aに開口する軸受嵌合孔2D内に侵入するコンタミを含んだオイルミストを、環状のフィルター部材Fによって除去してなることを第1の特徴とする電磁装置である。
【0008】
又、上記に加えて前記フィルター部材Fは、通気性を有する材料によって形成されることを第2の特徴とする電磁装置である。
又、上記に加えて前記フィルター部材Fの一側面20C側に、第1環状室21を形成したことを第3の特徴とする電磁装置である。
又、上記に加えて前記フィルター部材Fの他側面20D側に、第2環状室23を形成したことを第4の特徴とする電磁装置である。
【0009】
又、上記に加えて前記第1環状室21を第1排出孔24を介して外部に向けて開口したことを第5の特徴とする電磁装置である。
又、上記に加えて前記第2環状室23を第2排出孔25を介して外部に向けて開口したことを第6の特徴とする電磁装置である。
又、上記に加えて前記フィルター部材Fの一側面20C側に第1環状室21を形成するとともに、フィルター部材Fの他側面20D側に第2環状室23を形成したことを第7の特徴とする電磁装置である。
【0010】
又、上記に加えて前記第1環状室21を第1排出孔24を介して外部に向けて開口し、第2環状室23を第2排出孔25を介して外部に向けて開口したことを第8の特徴とする電磁装置である。
又、上記に加えて前記第1排出孔24と第2排出孔25の外部への開口端を、固定コア2の外周面と、外周面を囲繞する案内孔7Aとの間に形成され、微小間隙を有する溝30内に開口したことを第9の特徴とする電磁装置である。
【0011】
本発明の第1の特徴によると、軸受嵌合孔内にコンタミを含んだオイルミストが侵入すると、フィルター部材によってコンタミが除去される。
又、フィルター部材の挿通孔には、作動杆の外周面が摺接して配置される。
又、本発明の第2の特徴によると、比較的小なる弾性荷重がフィルター20の挿通孔20Aから作動杆5に加えられるもので、作動杆の摺動抵抗を大きく増加させることがない。
又、本発明の第3の特徴によると、仮にフィルター部材を通過したコンタミは、一度環状室内に落下して収納される。
又、本発明の第4の特徴によると、オイルミスト中に含まれるコンタミは、それ自体が有する質量によって第2環状室23内に重力方向に落下して第2環状室23内に貯溜される。
又、本発明の第5の特徴によると、第1環状室21内に貯溜されるコンタミは、第1排出孔24から、オイルミストあるいは凝縮されて液状となったオイルとともに外部へ排出される。
又、本発明の第6の特徴によると、第2環状室23内に貯溜されるコンタミは、第2排出孔25から、オイルミストあるいは凝縮されて液状となったオイルとともに外部へ排出される。
【0012】
又、本発明の第7の特徴によると、オイルミスト中に含まれるコンタミは、第2環状室、フィルター部材、第1環状室において段階的に除去される。
【0013】
又、本発明の第8の特徴によると、第1環状室及び第2環状室内に貯溜されたコンタミは第1排出孔及び第2排出孔を介して各環状室から外部へ向けて排出できるので、長期間に渡る使用時において環状室内にコンタミが継続して貯溜されることがない。
【0014】
又、本発明の第9の特徴によると、第1排出孔、第2排出孔の外部への開口端を微小間隙を有する溝内に開口させたので、第1排出孔、第2排出孔を介して第1環状室、第2環状室内へ直接的に流入するオイルミストの流速を低下できる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明の電磁装置の第1の特徴によると、作動杆の摺動抵抗を長期渡ってほぼ一定の低摺動抵抗状態に安定保持できたので、作動杆の正確な位置制御と、良好な作動杆の応答速度を得ることができる。
又、本発明の第2の特徴によると、比較的小なる弾性荷重がフィルター20の挿通孔20Aから作動杆5に加えられるもので、作動杆の摺動抵抗を大きく増加させることがない。
又、本発明の第3の特徴によると、フィルター部材を通過したコンタミは、環状室によって更に確実に除去される。
又、本発明の第4の特徴によると、オイルミスト中に含まれるコンタミは、それ自体が有する質量によって第2環状室23内の重力方向に落下して第2環状室23内に貯溜させる。
又、本発明の第5の特徴によると、第1環状室21内に貯溜されるコンタミは、第1排出孔24から、オイルミストあるいは凝縮されて液状となったオイルとともに外部へ排出される。
又、本発明の第6の特徴によると、第2環状室23内に貯溜されるコンタミは、第2排出孔25から、オイルミストあるいは凝縮されて液状となったオイルとともに外部へ排出される。
又、本発明の第7の特徴によると、コンタミは第2環状室、フィルター部材、第1環状室によって複数段に渡って分離、除去される。
又、本発明の第8の特徴によると、第1、第2環状室内に貯溜されるコンタミは第1、第2排出孔を介して外部へ遂次排出されるので、長期間に渡ってコンタミを効果的に除去できる。
又、本発明の第9の特徴によると、特に第1環状室内へ直接的に多量のオイルミストが侵入することが抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明になる電磁装置の一実施例を図により説明する。尚、従来と同一構造部分については同一符号を使用して説明を省略する。
図1には本発明の電磁装置Sの1実施例が示される。
又、図2には本発明の電磁装置に用いられるフィルター部材Fが示される。
フィルター部材Fは、環状のフィルター20と、フィルター20の外周部分を収納して保持するケース21とによって形成される。
フィルター20は発泡樹脂材料、フェルト、スポンジ、繊維質、等の通気性を有する材料によって厚肉環状に形成されるもので、中心部には作動杆5の外周に摺接する挿通孔20Aが穿設される。
ケース21は、フィルター20の外周面20Bと、外周面20Bに近い側の一側面20Cと他側面20Dの外周部分の一部を囲繞するリング形状をなすものであり、フィルター20はこのケース21内に収納配置される。
フィルター20がケース21に収納された状態において、フィルター20の挿通孔20A及び一側面20C、他側面20Dのおおくの部分はケース21によって閉塞されることはなく、直接的に開口するものでなければならない。
【0017】
そして、このフィルター部材Fは、固定コア2の外側端面2E(外側端面2Eとは固定コア2の外側方Aの端部であって、図1において第2の固定コア2Cの左端をいう)より平軸受Jが配置された軸受嵌合孔2D内へ嵌合配置される。
そして、フィルター部材Fの一側面20Cと平軸受Jの外側端面J2との間に間隙Eが形成される。これによると、フィルター部材Fの一側面20Cと平軸受Jの外側端面J2との間の軸受嵌合孔2D内に環状室21が形成される。
又、フィルター部材Fの他側面20Dは軸受嵌合孔2D内にあって外側方Aに臨む。又、フィルター部材Fの挿通孔20A(この挿通孔はフィルター20の挿通孔20Aに相当する)は作動杆5の外周面に摺接する。
【0018】
以上によると、油溜10内に生起するオイルミストが固定コア2の外側端面2Eに開口する軸受嵌合孔2D内に侵入すると、フィルター20の他側面20D、フィルター20の厚肉部、フィルター20の一側面20Cによって、オイルミスト中に含まれるコンタミが除去されるので、固定コア2に配置された平軸受Jの外側端面J2から、平軸受Jの内孔J1と作動杆5の外周面との間に形成される環状の摺動間隙内にコンタミが侵入することが抑止できる。
然しながら、万が一にもオイルミスト中に含まれるコンタミがフィルター部材Fを通過して平軸受J側へ侵入せんとした場合、このコンタミは環状室21内へ効果的に収納される。これは、フィルター部材Fをオイルミストが通過する際、オイルミストはフィルター部材Fによって流れ抵抗を受けてコンタミを含むオイルミスト自体の流れ速度が低下すること、フィルター部材Fを通過したオイルミストは室容積が拡大された環状室21においてその流れ速度が更に低下すること、及び環状室21内へ侵入したコタミはそれ自体質量を有すること。によってコンタミが環状室21の重力方向へ向けて落下することによるものである。
以上によると、フィルター部材Fを仮にコンタミが通過した場合にあっても、そのコンタミは確実に環状室21内に収納されて貯溜されるので、コンタミが平軸受Jの摺動間隙に向かって侵入することが一層抑止される。
従って、作動杆の摺動抵抗を増加させることがない。又、長期間に渡る使用時にあっても、平軸受Jの内孔J1と作動杆5の外周面との摺動部の摩耗発生を大きく抑止できたもので、作動杆の摺動抵抗を長期間に渡ってほぼ一定に保持することができる。
又、フィルター部材Fの挿通孔20Aは、作動杆5の外周面に摺接するものであるが、通気性を有する材料によってフィルター20を形成したので、比較的小なる弾性荷重がフィルター20の挿通孔20Aから作動杆5に加えられるもので、作動杆の摺動抵抗を大きく増加させることがない。
又、フィルター部材Fは、通気性を有する材料によって形成されるので、コンタミが除去されたオイルミストは、フィルター部材F、固定コア2の平軸受J、可動コア案内孔1Bを通ってハウジング1の平軸受Jに達する。
これによると、ハウジング1の平軸受Jと作動杆5とのオイル潤滑が良好に行なわれて作動杆5の摺動抵抗を低減できる。
更に又、可動コア6の往復動時において、可動コア6が収納される室、例えば可動コア案内孔1B内の室容積が増減して、室内の圧力が変化するものであるが、この圧力変動に対し、フィルター20はブリージング効果(呼吸孔効果)を奏するので、可動コア6、作動杆5の移動に対して何等の抵抗となるものでない。
【0019】
以上の如く、作動杆5の摺動抵抗を、長期間に渡ってほぼ一定の低摺動抵抗状態に安定保持することができたことによると、(1)電流値に比例した作動杆5の正確な位置制御を長期間に渡って安定して制御できる。而して、かかる電磁装置を、油圧制御弁の駆動用アクチュエータとして使用した際、電流値に比例した正確な油圧制御を行なうことができる。(2)電流値に比例した作動杆5の良好な応答速度を得ることができるもので、上記と同様に油圧制御弁に用いた場合、応答性の優れた油圧制御を行なうことができる。
(3)平軸受Jの内孔J1と作動杆5との間に形成される摺動間隙は、常に清浄なる状態に保持される。
【0020】
図3により本発明の電磁装置の第2の実施例について説明する。
尚、図1と同一構造部分については同一符号を使用して説明を省略する。固定コア2に穿設される軸受嵌合孔2Dには、固定コア2の外側端面2Eに向けて小径孔2Fが連設される。この小径孔2Fは、軸受嵌合孔2Dより小径であって、作動杆5より大径をなすもので、軸受嵌合孔2Dは縮小径部2Gによってその径が縮小されて小径孔2Fに連なり、この小径孔2Fが固定コア2の外側端面2Eに開口する。
そして、固定コア2の平軸受Jと縮小径部2Gとの間の軸受嵌合孔2D内にフィルター部材Fが嵌合配置されるもので、このときフィルター部材Fの一側面20Cと平軸受Jの外側端面J2との間に第1間隙Gが形成され、フィルター部材Fの他側面20Dと縮小径部2Gとの間に第2間隙Hが形成される。
而して、第1間隙Gと軸受嵌合孔2Dとによって第1環状室22が形成され、第2間隙Hと軸受嵌合孔2Dとによって第2環状室23が形成される。
いいかえると、第1環状室22は、フィルター部材Fの一側面20Cと、平軸受Jの外側端面J2との間の軸受嵌合孔2Dに形成され、第2環状室23は、フィルター部材Fの他側面20Dと、縮小径部2Gとの間の軸受嵌合孔2Dに形成される。
【0021】
かかる第2の実施例によると、オイルミストは、固定コア2の外側端面2Eに開口する小径孔2Fから軸受嵌合孔2D内へ侵入する。このとき、オイルミストは、小径孔2Fによってその流れ速度が低下されること、及び第2環状室23において、その室容積が拡大されることによって流れ速度が更に低下されることからオイルミスト中に含まれるコンタミは、それ自体が有する質量によって第2環状室23内の重力方向に落下して第2環状室23内に貯溜される。
そして、未だコンタミを含んだオイルミストは、フィルター部材Fに侵入するものであり、このコンタミはフィルター部材Fによって除去される。このフィルター部材Fを更に通過したオイルミストは、次に第1環状室22内へ侵入するものであるが、このオイルミストの流れ速度は、フィルター部材を通過する際、フィルター部材Fの抵抗を受けること、及び第1環状室22内の室容積が拡大されること、によって更に低下する。
以上によると、フィルター部材Fを通過したオイルミスト中に仮にコンタミが含まれていたとしても、コンタミ自体が有する質量によって第1環状室22の重力方向に落下して貯溜される。
【0022】
以上によると、オイルミスト中に含まれるコンタミは、第2環状室23、フィルター部材F、第1環状室22において複数段に渡って分離、除去されるので、平軸受Jの摺動間隙内へのコンタミの侵入は一層効果的に抑止される。
而して、前記第1の実施例において奏される効果を更に一層効果的に高めることができる。
【0023】
次に図4により第3の実施例について説明する。尚、図3と同一構造部分については同一符号を使用して説明を省略する。
第1環状室22には第2の固定コア2Cの外周部2Kへ連なる第1排出孔24が開口し、第2環状室23には、第2の固定コア2Cの外周部2Kへ連なる第2排出孔25が開口する。
本実施例で、第1排出孔24、第2排出孔25は第2の固定コア2Cの外周部2Kに開口され、更に弁本体7の案内孔7Aには第1排出孔24、第2排出孔25を油溜10内へ開口させる為の通孔26が穿設された。
【0024】
以上によると、第1、第2環状室22、23内に貯溜されるコンタミは、それぞれの室に開口する第1、第2排出孔24、25から、オイルミストあるいは凝縮されて液状となったオイルとともに固定コア2外へ逐次排出されるので、長期に渡る使用時において、それらの室22、23にコンタミが充満するという不具合が解消されるもので、長期に渡ってコンタミを効果的に除去できるものである。
【0025】
図5により本発明の電磁装置の第4の実施例について説明する。尚、図4と同一構造部分については、同一符号を使用して説明を省略する。
30は、第2の固定コア2Cの外周部2Kに穿設された溝であり、この溝30は、外周部2Kに極めて微小なる溝深さにて長手方向X−Xに沿って形成される。
一方、第1排出孔24及び第2排出孔25の外部への開口端は、この溝30内に開口される。
そして、この第2の固定コア2Cは、本実施例において、弁本体7の案内孔7A内へ挿入配置されるものであり、これによると溝30の外部への開口部は案内孔7Aによって閉塞され、微小間隙を有する袋溝30として形成され、この溝30の外側方Aが油溜10に開口することになる。
【0026】
かかる第4の実施例によると、油溜10内と第1環状室22とは、溝30、第1排出孔24と直接的に連結されるもので、油溜10内のオイルミストが直接的に第1環状室22内へ侵入せんとするものであるが、第1排出孔24を微小間隙を有する溝30を介して油溜10と連絡したので、油溜10内のオイルミストが第1環状室22内へ侵入する際、この溝30によって大きな抵抗を受けて第1環状室22内への侵入を阻止することができ、平軸受Jの摺動間隙へのコンタミの侵入が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明になる電磁装置の第1の実施例を示すバルブ部を含む縦断面図。
【図2】図1に用いられるフィルター部材の縦断面図。
【図3】本発明になる電磁装置の第2の実施例を示すバルブ部を含む縦断面図。
【図4】本発明になる電磁装置の第3の実施例を示すバルブ部を含む縦断面図。
【図5】本発明になる電磁装置の第4の実施例を示すバルブ部を含む縦断面図。
【図6】従来の電磁装置のバルブ部を含む縦断面図。
【図7】平軸受の断面図。
【符号の説明】
【0028】
2 固定コア
2D 軸受嵌合孔
2E 外側端面
2F 小径孔
2G 縮小径部
20 フィルター
20A 挿通孔
20C 一側面
20D 他側面
22 第1環状室
23 第2環状室
24 第1排出孔
25 第2排出孔
30 溝
J 平軸受
J2 外側端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにコイル、固定コア、作動杆、可動コアを収納配置するとともに、前記作動杆が移動自在に支持された電磁装置において、
固定コア2の長手方向X−Xの中心に貫通して穿設された軸受嵌合孔2Dと、
他側面20Dが外側方Aに臨み、中心部に作動杆5の外周面が摺接して配置される挿通孔20Aが穿設される環状のフィルター部材Fとを有し、
外側方Aに開口する軸受嵌合孔2D内に侵入するコンタミを含んだオイルミストを、環状のフィルター部材Fによって除去してなることを特徴とする電磁装置。
【請求項2】
前記フィルター部材Fは、通気性を有する材料によって形成されることを特徴とする請求項1記載の電磁装置。
【請求項3】
前記フィルター部材Fの一側面20C側に、第1環状室21を形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁装置。
【請求項4】
前記フィルター部材Fの他側面20D側に、第2環状室23を形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁装置。
【請求項5】
前記第1環状室21を第1排出孔24を介して外部に向けて開口したことを特徴とする請求項3記載の電磁装置。
【請求項6】
前記第2環状室23を第2排出孔25を介して外部に向けて開口したことを特徴とする請求項4記載の電磁装置。
【請求項7】
前記フィルター部材Fの一側面20C側に第1環状室21を形成するとともに、フィルター部材Fの他側面20D側に第2環状室23を形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁装置。
【請求項8】
前記第1環状室21を第1排出孔24を介して外部に向けて開口し、第2環状室23を第2排出孔25を介して外部に向けて開口したことを特徴とする請求項7記載の電磁装置。
【請求項9】
前記第1排出孔24と第2排出孔25の外部への開口端を、固定コア2の外周面と、外周面を囲繞する案内孔7Aとの間に形成され、微小間隙を有する溝30内に開口したことを特徴とする請求項8記載の電磁装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−73997(P2007−73997A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329576(P2006−329576)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【分割の表示】特願2004−190748(P2004−190748)の分割
【原出願日】平成7年4月19日(1995.4.19)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】