説明

電磁誘導加熱式の食品焼成機

【課題】食品の生地が充填された焼成金型を自動間歇的に搬送中、トンネルオーブンの内部において熱効率良く大量に焼成できる電磁誘導加熱式の食品焼成機を提供する。
【解決手段】コンベア(13)に取り付けられた焼成金型(M)が通過するトンネル釜(1)の内部を、その周囲に巻き付けられた電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)によって、食品の目標焼成温度よりも常時高い雰囲気温度に加熱維持すると共に、その焼成金型(M)の加熱温度を非接触式の金型温度センサー(4a)(4b)により検知して、上記トンネル釜(1)の内部に設置している送風ファン(5)を、そのセンサー(4a)(4b)の検知出力信号に基いて回転させることにより、上記焼成金型(M)へ熱風を直接吹き付けるように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は煎餅やクッキー、ケーキなどの各種食品を電磁誘導加熱によって大量に焼成する機械に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子やパンなどの食品をコンベアでの搬送過程において、上下方向から加熱し焼成するトンネルオーブンは、特許文献1、2に記載されているとおり、従来から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−166号公報
【特許文献2】特開2004−194564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示されているトンネルオーブンでは、その被焼成物(1)の上部加熱装置(31)としてガスバーナーが採用されているため、作業環境の悪化を招き、火力の精密な調整を行ない難いほか、大量の高温排気ガスを処理する換気設備工事が不可欠となる。
【0005】
又、同じく被焼成物(1)の下部加熱装置(30)が電気ヒータ(51)によって熱風を生成する加熱炉(55)を初め、ファン(36)やファンモータ(37)、供給ダクト(38)、排出ダクト(39)、加熱ダクト(40)などから構成されているため、その熱風を循環させる複雑な設備工事が必要であり、更に熱風での加熱された加熱ダクト(40)の輻射熱によって、被焼成物(1)を焼成するようになっているため、加熱速度が遅く、加熱温度の調整制御を容易に行なえない問題もある。
【0006】
他方、上記特許文献2に開示されているトンネルオーブンでは、焼き板(4)上の食品生地を上ヒータ(7)と下ヒータ(8)により加熱し、その電気ヒータの輻射熱により焼成するようになっているため、やはり加熱速度が遅いばかりでなく、加熱温度を精密に調整制御し難く、熱効率が悪い問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような諸問題の抜本的な解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では磁性体金属から成るトンネル釜の周囲に、1本又は複数本の電磁誘導加熱コイルが巻き付けられたトンネルオーブンと、
【0008】
食品の生地受け凹部を有する開閉可能な焼成金型の多数と、
【0009】
上記焼成金型を並列状態に取り付けた無端なチェンコンベアがその駆動用モーターにより、上記トンネル釜の内部を通過し得るよう自動間歇的に循環回走される金型搬送体と、
【0010】
その金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、上記トンネル釜の内部に設置された所要数の送風ファンと、
【0011】
同じく金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、上記トンネル釜の外部から焼成金型の加熱温度を検知する非接触式の金型温度検知センサーとを備え、
【0012】
上記トンネル釜の内部を電磁誘導加熱して、食品の目標とする焼成温度よりも常時高い雰囲気温度に維持すると共に、
【0013】
そのトンネル釜の内部にある焼成金型の加熱温度を上記金型温度検知センサーにより検知して、その加熱温度が食品の目標とする焼成温度よりも低いときには、上記センサーの検知出力信号に基き送風ファンを回転させて、その送風ファンにより上記焼成金型へ熱風を吹き付けるように設定したことを特徴とする。
【0014】
又、請求項2では送風ファンに代わる又は加わる水噴射ノズルの所要数を、金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、トンネル釜の内部に設置すると共に、
【0015】
上記焼成金型の加熱温度が食品の目標とする焼成温度よりも低いときには、これを検知した金型温度検知センサーの出力信号に基いて、上記水噴射ノズルから焼成金型へ水を噴射することにより、過熱蒸気を生成するように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の上記構成によれば、トンネル釜の内部における空気(雰囲気)温度を食品の目標とする焼成温度よりも常時高い加熱温度に保っておき、その上で焼成金型の現在加熱温度を検知(測定)して、その加熱温度が食品の目標とする焼成温度よりも低下しているときには、送風ファンを回転駆動し、その熱風を上記焼成金型へ直接吹き付けて加熱(昇温)するようになっているため、トンネル釜の内部温度(雰囲気温度)を短時間での容易に変更(昇温)し難い点を、焼成金型へ直接吹き付ける熱風の加熱により補なうことができ、その温度の調整制御を容易・精密に行なえる効果がある。
【0017】
又、電磁誘導加熱コイルはトンネル釜の周囲に巻き付けられているため、これを保護する電気絶縁や断熱などの施工が容易となるほか、上記トンネル釜の内部に電気部品が存在しないため、その内部の洗浄に必要な配水管などの設置も支障なく行なえる効果がある。
【0018】
更に、電磁誘導加熱コイルは焼成金型を直接加熱せず、その加熱コイルが巻き付けられたトンネル釜の内部を、焼成金型が金型搬送体のチェンコンベアによって搬送されるようになっているため、その焼成金型とトンネル釜との間隙を自由に広く確保することができ、これらを製作・加工する上での高度な技術や豊富な経験を要さず、量産効果を最大限に期待し得るのである。
【0019】
請求項2の構成を採用するならば、トンネル釜の内部に設置された水噴射ノズルから、焼成金型へ水を直接噴射して、その生成した過熱蒸気の強い乾燥力と高い凝縮伝熱性により、焼成金型を加熱(昇温)することができ、特に上記送風ファンと水噴射ノズルとを併用するならば、焼成金型をますます急速に効率良く加熱(昇温)し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電磁誘導加熱式食品焼成機の全体概略側面図である。
【図2】その食品焼成機のトンネルオーブンを抽出して示す斜面図である。
【図3】図2の一部を切り欠いた状態の斜面図である。
【図4】図1のトンネルオーブンを抽出して示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る電磁誘導加熱式食品焼成機の制御回路図である。
【図6】焼成金型の蓋体を開放した状態の断面図である。
【図7】図4の7−7線拡大断面図である。
【図8】図4の8−8線拡大断面図である。
【図9】図7の9−9線断面図である。
【図10】図1の10−10線拡大断面図である。
【図11】トンネルオーブンの第1変形実施形態を示す斜面図である。
【図12】トンネルオーブンの第2変形実施形態を示す図4に対応する断面図である。
【図13】トンネルオーブンの第3変形実施形態を示す図8に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基いて本発明の実施形態を詳述すると、図1はその本発明に係る電磁誘導加熱式食品(例えばクッキー類)焼成機の概略全体を示しており、これは機枠(F)に支持されたトンネルオーブン(T)と金型搬送体(C)並びに多数の焼成金型(M)を主要な構成部材として具備している。
【0022】
先ず、トンネルオーブン(T)は鉄やニッケル、マンガン、これらの合金、その他の磁性体金属から断面円形や断面角形に作成された一定長さ(L)のトンネル釜(1)と、その周囲に一定間隔(D)を保って巻き付けられた複数本の電磁誘導加熱コイル(2a)(2b)(2c)(2d)とから成り、その各加熱コイル(2a)〜(2d)の切り離し両端部が図外の接続端子を介して、その励磁用高周波電源(加熱用インバータ)(3a)(3b)(3c)(3d)の出力端子と接続配線されている。
【0023】
そして、その高周波電源(3a)〜(3d)から対応する電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)へ高周波電流を供給し、上記トンネル釜(1)と鎖交する磁束を発生させれば、そのトンネル釜(1)に渦電流が流れ、ジュール熱によりトンネル釜(1)が発熱して、その内部を食品(クッキー類)の目標とする焼成温度(例えば約180℃)よりも高い温度(例えば約300℃)に加熱することができる。
【0024】
(4a)(4b)は上記トンネル釜(1)内での搬送中にある焼成金型(M)の現在加熱温度を、そのトンネル釜(1)の外部から検知(測定)する所要数(1個又は複数)の非接触式金型温度検知センサー(好ましくは放射温度計)であり、上記トンネル釜(1)の囲い壁面における電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)同士の隣り合う相互間に耐熱ガラス窓(図示省略)を形成することにより、そのガラス窓を通じて、焼成金型(M)の加熱温度を検知(測定)することができる。
【0025】
(5)(6)は上記金型温度検知センサー(4a)(4b)の検知出力信号に基き、その焼成金型(M)の温度が低下している時に回転される所要数(1個又は複数)の送風ファンとその駆動用ファンモーターであり、やはり上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)同士の隣り合う相互間に臨む位置関係として、そのトンネル釜(1)の囲い壁面(好ましくは下部や側部)に設置されている。トンネル釜(1)内での搬送中にある焼成金型(M)へ、送風ファン(5)の回転作用により熱風を直接吹き付けて、その焼成金型(M)を加熱(昇温)することにより、食品(クッキー類)の目標とする焼成温度に調整できるようになっている。
【0026】
つまり、上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)はトンネル釜(1)の内部における空気(雰囲気)の加熱だけに専念し、食品(クッキー類)の生地が熱を奪うことによる焼成金型(M)の温度低下を、送風ファン(5)の熱風によって防止し、言わばサウナ風呂の中に居ながら、扇風機での熱風を受ける如く、食品(クッキー類)を短時間での熱効率良く焼成し得るようになっているのである。
【0027】
これによれば、トンネル釜(1)の内部温度(雰囲気温度)を短時間での簡単に変更(昇温)し難い点を、熱風による焼成金型(M)の加熱によって補完でき、その温度の調整制御を容易に行なえる利点がある。又、上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)の隣り合う同士を相互誘導障害が起生しないように、離隔させたり或いは磁気シールドを介在させたりすると、その隣り合う相互間での加熱温度が著しく低下することになるが、ここには焼成金型(M)へ直接熱風を吹き付ける送風ファン(5)が介在しているほか、トンネル釜(1)の電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)は食品を目標の焼成温度(例えば約180℃)まで加熱するものでなく、トンネル釜(1)における内部(焼成室)の空気(雰囲気)をその食品の焼成温度よりも、遙かに高い温度(例えば約300℃)まで加熱維持するものであるため、しかもそのトンネル釜(1)の内部を焼成金型(M)が通過する所要時間は、例えば2分程度の短時間であるに過ぎないため、上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)同士の隣り合う相互間に発生する加熱温度の局部的な低下や、その温度の高精度な調整制御の困難性などを招来しない効果もある。
【0028】
尚、図1〜4に示したトンネルオーブン(T)では複数本の電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)をトンネル釜(1)へ一定間隔(D)おきに巻き付けており、その加熱力を対応する高周波電源(3a)〜(3d)の個別制御によって調整し、トンネル釜(1)における内部全体の空気(雰囲気)温度を保持するようになっているが、図2と対応する図11の第1変形実施形態に示す如く、1本の長尺な電磁誘導加熱コイル(2)を上記トンネル釜(1)の周囲全体に巻き付けて、その切り離し両端部を対応的な1個の高周波電源(3)に接続配線しても良い。(7)は上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)の周囲を被覆・保護した断熱層であり、ガラス繊維や合成樹脂などから成る。
【0029】
図12は上記トンネルオーブン(T)の第2変形実施形態を示しており、これではそのトンネル釜(1)が図4のような全体として1個の長尺物に形成されておらず、短かく分割された複数のトンネル釜セグメント(1a)(1b)(1c)(1d)から、必要な一定長さ(L)に組み立てられている
【0030】
つまり、電磁誘導加熱コイル(2a)(2d)が各々巻き付けられた端部トンネル釜セグメント(1a)(1a)並びに中間トンネル釜セグメント(1d)(1d)や、電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)は巻き付けられておらず、言わばその代りに非接触式の金型温度検知センサー(4a)(4b)又は/及び送風ファン(5)とその回転駆動用ファンモーター(6)が設置された中間トンネル釜セグメント(1b)(1b)(1c)を作成準備し、これらを好ましくは図12のような交互する直列状態として、その取付フランジ(8)同士での着脱・交換自在に連結することにより、同図のような一定長さ(L)のトンネル釜(1)に組立一体化している。
【0031】
このような構成のトンネル釜(1)も採用することができ、そうすれば上記トンネル釜セグメント(1a)〜(1d)の組み変えや継ぎ足しなどを行なって、各種食品の焼成にふさわしい長さのトンネルオーブン(T)を容易に得られる効果がある。尚、上記トンネル釜セグメント(1a)〜(1d)の周囲に電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)を保護する断熱層(7)が被覆されていることは、言うまでもない。
【0032】
更に、図13は図8と対応するトンネルオーブン(T)の第3変形実施形態を示しており、これでは上記トンネル釜(1)における電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)同士の隣り合う相互間に臨む位置関係として、そのトンネル釜(1)の囲い壁面(好ましくは上部や下部)に所要数(1個又は複数)の水噴射ノズル(9)を設置し、これからトンネル釜(1)内での搬送中にある焼成金型(M)へ水を直接噴射して、過熱蒸気を生成し、その過熱蒸気により焼成金型(M)の加熱(昇温)効率を向上させている。
【0033】
このような過熱蒸気を生成する水噴射ノズル(8)と、上記熱風を吹き付ける送風ファン(5)とは、別々に採用してもさしつかえないが、特に併用することが好ましい。そうすれば、焼成金型(M)をますます短時間での効率良く加熱できるからであり、その加熱温度の調整も支障なく行なえる。
【0034】
次に、金型搬送体(C)は上記機枠(F)に固定設置されたチェンコンベア回走駆動用ギヤードモーター(10)と、これに伝動連結された駆動スプロケット(11)並びに従動スプロケット(12)と、その両スプロケット(11)(12)の前後相互間へ屈曲自在に巻き掛けられた無端なチェンコンベア(ローラーチェン)(13)とから成り、そのチェンコンベア(13)へ一定間隔おきに取り付けられた多数の焼成金型(M)が、図1の矢印方向(A)(B)へ自動間歇的に搬送される間に、上記トンネル釜(1)の内部を通過し得るようになっている。
【0035】
上記焼成金型(M)の各個は水平のヒンジ部(14)を介して、上下方向への開閉自在に枢支連結された金型本体(15)と蓋体(16)とから成り、その金型本体(15)の生地受け凹部(17)に目的とする食品(クッキー類)の生地(18)が充填されることとなる。
【0036】
図示実施形態では金型本体(15)に左右一対(2個)の生地受け凹部(17)が並列設置されているが、その1個だけや3個以上として形成されることもある。又、図示実施形態の焼成金型(M)は金型本体(15)とその蓋体(16)との互いに異なる上下1組から成るが、互いに同じ生地受け凹部(17)が向かい合う半割り形態の焼成金型(M)を採用しても勿論良い。
【0037】
何れにしても、上記チェンコンベア(13)の自動間歇的な搬送ラインにおけるトンネル釜(1)の入口側で、目的とする食品(クッキー類)の生地(18)が焼成金型(M)の生地受け凹部(17)へ、上方から自動機械的に定量充填された上、そのチェンコンベア(13)の循環回走に連れてトンネル釜(1)の内部へ進入し、その内部において上記電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)による空気(雰囲気)の加熱と、必要に応じては送風ファン(5)の熱風とを受けて焼成されることになる。その生地(18)の焼成された食品は、トンネル釜(1)の出口側において焼成金型(M)から自動機械的に又は人手によって取り出される。
【0038】
その場合、詳細は図示省略するが、焼成金型(M)がトンネル釜(1)の入口側において、その上向き開口する生地受け凹部(17)へ食品の生地(18)を充填後に、自づと徐々に閉合し、その完全な施蓋状態のもとで、図1の矢印方向(A)へ往動し、同じくトンネル釜(1)の出口側において自づと徐々に開放し、その下方への回走時完全に裏返し開蓋されて、その下向く生地受け凹部(17)から生地(18)の焼成した食品が、ほぼ真下位置に存在するベルトコンベア(19)上へ脱落し、そのベルトコンベア(19)によって搬出されるようになっていると共に、上記食品の取り出された焼成金型(M)は開放状態のままで、図1の逆な矢印方向(B)へ復動し、その上方への回走によりトンネル釜(1)の入口側へ到達するようになっている。
【0039】
上記した構成の食品焼成機を用いて、食品(クッキー類)を焼成するに当っては、その食品の生地(18)をトンネルオーブン(T)におけるトンネル釜(1)の入口側で、焼成金型(M)の生地受け凹部(17)へ上方から自動機械的に充填すれば良い。
【0040】
そうすれば、その焼成金型(M)は生地受け凹部(17)の施蓋された状態のもとで、金型搬送体(C)のチェンコンベア(13)により上記トンネル釜(1)の内部へ進入し、そのトンネル釜(1)の電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)により加熱されている内部の雰囲気(空気)温度を受けて、上記食品の生地(18)を間接的に焼成することとなる。
【0041】
その場合、トンネル釜(1)の内部では焼成金型(M)の加熱温度が、非接触式の金型温度検知センサー(放射温度計)(4a)(4b)によって検知(測定)されており、万一未だ食品の目標とする焼成温度に到達していない時には、そのセンサー(4a)(4b)からの検知出力信号を受けたファンモーター(6)が、上記焼成金型(M)に指向している送風ファン(5)を回転させて、熱風を焼成金型(M)へ直接吹き付けることにより、加熱(昇温)する。
【0042】
この点、図13に示したトンネルオーブン(T)の第3変形実施形態では、トンネル釜(1)の内部にある焼成金型(M)の加熱温度がやはり上記金型温度検知センサー(放射温度計)(4a)(4b)によって検知(測定)されており、万一未だ食品の目標とする焼成温度に到達していないときには、そのセンサー(4a)(4b)からの検知出力信号を受けた図外のノズル開閉弁が、上記焼成金型(M)に向かっている水噴射ノズル(9)を開放して、その水噴射ノズル(9)から水を焼成金型(M)へ直接噴射し、その生成した過熱蒸気の高い凝縮伝熱性や強い乾燥力により、上記送風ファン(5)の熱風よりも短時間での効率良く焼成金型(M)を加熱(昇温)するようになっている。
【0043】
そして、何れにしても生地(18)の焼成し終わった食品は、上記トンネル釜(1)を通過した出口側において裏返し状態となる焼成金型(M)の生地受け凹部(17)から、そのほぼ真下位置にあるベルトコンベア(19)上へ脱落し、そのベルトコンベア(19)から図外の捕集容器へ移し入れられるのである。
【0044】
このような食品の焼成法は、図11〜13に示したトンネルオーブン(T)の第1〜3変形実施形態を採用した場合でも、実質的に同一である。何れにしても、本発明の食品焼成機を構成しているトンネルオーブン(T)は、そのトンネル釜(1)の内部における空気(雰囲気)温度を食品の目標とする焼成温度に応じて調整制御することにより、その食品を直接焼成する方式ではない。
【0045】
あくまでも、トンネル釜(1)の内部における空気(雰囲気)温度は、食品の目標とする焼成温度よりも遙かに高い温度に加熱維持しておき、このことは食品の種類やその目標の焼成温度が変るも、常に一定不変である。その上で、トンネル釜(1)の内部にある焼成金型(M)の現在加熱温度を検知(測定)して、必要がある場合だけ送風ファン(5)を回転駆動し、熱風を焼成金型(M)へ直接吹き付けて、その金型(M)を加熱(昇温)することにより、目的とする食品の焼成温度に調整するようになっている。
【0046】
その結果、焼成金型の加熱温度と延いては食品の目標とする焼成温度を容易に、しかも高精度に調整制御することができ、各種食品の焼成に広く適用し得る効果がある。
【0047】
又、電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)が巻き付けられているトンネル釜(1)と、チェンコンベア(13)により搬送される焼成金型(M)との間隙を、広く確保することが可能になるため、機械製作上の高度な技術や加工を要さず、量産効果を最大限に発揮させることができる。
【0048】
更に、電磁誘導加熱コイル(2a)〜(2d)はトンネル釜(1)の周囲(外周面)に巻き付けられているため、その電気絶縁や断熱などを比較的簡単に行なえるほか、トンネル釜(1)の内部に電気部品が存在していないため、その焼成作業終了後や定期的なトンネル釜(1)の洗浄に必要となる配水管の設置を行なえる効果もある。
【0049】
冒頭に述べたガスバーナーを加熱源とするトンネルオーブンと比較しても、排熱・燃焼排気(煙すす、CO2 )がなく、クリーン・クールな作業環境並びに高い昇温速度(急速加熱)を得られるほか、食品焼成に携わる作業者の熟練度や高いライニングコストなどを必要としない効果がある。
【0050】
他方、シーズヒーターやその他の電気ヒーターを加熱源とするトンネルオーブンと比較しても、トンネル釜を電磁誘導加熱することにより、その内部(焼成室)の空気(雰囲気)を間接的に急速加熱することができ、その加熱温度の維持制御も行ないやすい効果がある。
【符号の説明】
【0051】
(1)・トンネル釜
(1a)(1b)(1c)(1d)・トンネル釜セグメント
(2)(2a)(2b)(2c)(2d)・電磁誘導加熱コイル
(3)(3a)(3b)(3c)(3d)・高周波電源(インバーター)
(4a)(4b)・金型温度検知センサー
(5)・送風ファン
(6)・ファンモーター
(7)・断熱層
(8)・取付フランジ
(9)・水噴射ノズル
(10)・ギヤードモーター
(11)・駆動スプロケット
(12)・従動スプロケット
(13)・チェンコンベア
(14)・ヒンジ部
(15)・金型本体
(16)・蓋体
(17)・生地受け凹部
(18)・食品の生地
(19)・ベルトコンベア
(C)・金型搬送体
(F)・機枠
(M)・焼成金型
(D)・一定間隔
(L)・一定長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体金属から成るトンネル釜の周囲に、1本又は複数本の電磁誘導加熱コイルが巻き付けられたトンネルオーブンと、
食品の生地受け凹部を有する開閉可能な焼成金型の多数と、
上記焼成金型を並列状態に取り付けた無端なチェンコンベアがその駆動用モーターにより、上記トンネル釜の内部を通過し得るよう自動間歇的に循環回走される金型搬送体と、
その金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、上記トンネル釜の内部に設置された所要数の送風ファンと、
同じく金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、上記トンネル釜の外部から焼成金型の加熱温度を検知する非接触式の金型温度検知センサーとを備え、
上記トンネル釜の内部を電磁誘導加熱して、食品の目標とする焼成温度よりも常時高い雰囲気温度に維持すると共に、
そのトンネル釜の内部にある焼成金型の加熱温度を上記金型温度検知センサーにより検知して、その加熱温度が食品の目標とする焼成温度よりも低いときには、上記センサーの検知出力信号に基き送風ファンを回転させて、その送風ファンにより上記焼成金型へ熱風を吹き付けるように設定したことを特徴とする電磁誘導加熱式の食品焼成機。
【請求項2】
送風ファンに代わる又は加わる水噴射ノズルの所要数を、金型搬送体上の焼成金型を指向する状態として、トンネル釜の内部に設置すると共に、
上記焼成金型の加熱温度が食品の目標とする焼成温度よりも低いときには、これを検知した金型温度検知センサーの出力信号に基いて、上記水噴射ノズルから焼成金型へ水を噴射することにより、過熱蒸気を生成するように設定したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱式の食品焼成機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−130275(P2012−130275A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284350(P2010−284350)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】