説明

電磁誘導加熱食品焼き器

【課題】 たこ焼きや今川焼き等厚みを有する被焼き物を、ほぼ同時に焼きむらなく、しかも迅速に焼き上がり、半球状をしている収容部との接触面の焦げ具合も均一に焼き上げることができる業務用の電磁誘導加熱食品焼き器を提供する。
【解決手段】 被焼き物の収容部10を備えた平面視四角形の焼き型Rの下方に、少なくとも長辺部3の長さ3Hが、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rより大きく巻回された平面視四角形の電磁誘導加熱ワークコイルHを配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により被焼き物を加熱して焼き上げる電磁誘導加熱食品焼き器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に絶縁皮膜を有する導線を渦巻き状に巻いて構成した電磁誘導コイルに、高周波電流を供給することにより金属製の焼き型に渦電流を発生させ、この金属製の焼き型に収容された例えば、たこ焼き、今川焼き等厚みを有する被焼き物を、加熱し焼き上げるようにした業務用の電磁誘導加熱食品焼き器は、いまだ実用化されていない。
【0003】
これは、たこ焼きや今川焼き、大判焼き等厚みを有する被焼き物を、従来のこの種の電磁誘導加熱装置で焼くと、焼き器の中央部に位置する物は焼けているのに、焼き器の端部に位置する物は、まだ生地が生のままである等業務用としては問題が山積しているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−253868
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、たこ焼きや今川焼き等厚みを有する被焼き物を、むらなく、しかも迅速に焼き上げることができる業務用の電磁誘導加熱食品焼き器を提供するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、たこ焼きや今川焼き等厚みを有する被焼き物を、むらなく美味しく、しかも迅速に焼き上げるために、被焼き物の収容部を備えた平面視四角形の焼き型の下方に、少なくとも長辺部の長さが、前記焼き型底部の長辺部の長さより大きく巻回された平面視四角形の電磁誘導加熱ワークコイルを配置したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電磁誘導加熱食品焼き器は、被焼き物の収容部を備えた平面視四角形の焼き型の下方に、少なくとも長辺部の長さが、前記焼き型底部の長辺部の長さより大きく巻回された平面視四角形の電磁誘導加熱ワークコイルを配置したところ、たこ焼きや今川焼き等厚みを有する被焼き物を、むらなく又美味しく、さらに見た目にも美味しそうに、しかも迅速に焼き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
たこ焼きや今川焼き等厚みを有する被焼き物を、むらなく、しかも迅速に焼き上げる
という目的を、簡単な構造で実現した。
【実施例】
【0009】
図1は本発明の実施例を適用した電磁誘導加熱食品焼き器の概略正面図、図2は焼き型の平面図、図3は同一部を切欠した正面図、図4は電磁誘導加熱ワークコイルを配置した電磁誘導加熱部の平面図、図5は同正面図、図6は同右側面図である。
【0010】
前記電磁誘導加熱食品焼き器Eは、被焼き物の収容部10を備えた平面視四角形の焼き型Rの下方に、少なくとも長辺部3の長さ3Hが、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rより大きく巻回された平面視四角形の電磁誘導加熱ワークコイルHを配置することにより構成されている。
【0011】
また、前記収容部10の底部rの外側面11の少なくとも中央部は、図3に示すように平坦に形成されている。
【0012】
そして、この平坦部12の肉厚は2mm以上必要である。これは肉厚が2mm未満では、電磁誘導加熱ワークコイルHに高周波電流を供給した際、焼き型Rの特に各収容部10に十分な渦電流の発生が期待できないからである。また、上記肉厚が5mmを超えると焼き型Rの重量が大幅に増す一方、コストアップにつながるから好ましくない。
【0013】
さらに、前記電磁誘導加熱ワークコイルHは、焼き型Rに十分な渦電流の発生を期待するためには、その短辺部4の長さ4Hを、前記焼き型Rの底部rの短辺部2の長さ2Rよりも、少なくとも20mm長くし、また、長辺部3の長さ3Hは、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rよりも、少なくとも40mm大きく形成することが望ましい。これは後述する実験の結果から、特に、長辺部3の長さ3Hが、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rより、少なくとも40mm大きくすると、列設された収容部10内の被焼き物を、ほぼ同時に焼きむら無く焼き上げることができ、しかも収容部10との接触面の焦げ具合も均一にすることができるからである。
【0014】
また、前記平面視四角形状に巻回された電磁誘導加熱ワークコイルHの偶角部hにおける曲率半径は、使用される線材20の径をDmmとすると、2Dmm〜3Dmmとしている。これは、前記ワークコイルHの偶角部hが、コイル自体が有する剛性の関係で円弧状になる。しかしながら、焼き型Rに十分な渦電流の発生を期待するためには、ワークコイルHを極力密に巻く必要がある関係上、円弧の径を極力小さくし直角に近づける必要があるからである。これは、2Dmm未満では焼き型Rに十分な渦電流の発生を期待することができないからであり、3Dmmを超えるとワークコイルHの偶角部hにおける円弧の径を直角に近づけることができず、やはり焼き型Rに十分な渦電流の発生を期待することができないからである。
【0015】
さらに、前記電磁誘導加熱ワークコイルHは上述したように、極力密に巻く必要がある関係上、コイルHの投影面積は角形コイル部分の60%以上に形成されている。これは、60%未満では、焼き型Rに十分な渦電流の発生を期待することができないからである。
【0016】
続いて、本発明の実施例を適用した電磁誘導加熱食品焼き器Eの構造を各図面を参照して説明する。
【0017】
この電磁誘導加熱食品焼き器Eは、図1に示すように、平面視長方形に形成された焼き型Rの下方に、この焼き型Rよりも一回り大きく形成された平面視長方形の電磁誘導加熱ワークコイルHを配置を配置することにより構成されている。さらに、この実施例においては図1に示すように、前記焼き型Rと前記電磁誘導加熱ワークコイルHとの間に、セラミックプレート30が配置され、さらに、電磁誘導加熱ワークコイルHの下方にはアルミ遮蔽板40が配置されている。
【0018】
前記焼き型Rは、電磁誘導加熱可能な金属この実施例では鉄が用いられており、上面には一列9個で4列合計36個の被焼き物すなわち、たこ焼き生地の収容部10が設けられている。この収容部10の内面形状は、断面ほぼ半球状に形成され、外面形状は、底部rの外側面11の少なくとも中央部を、図3に示すように平坦面に形成し、その肉厚は3mmに設定してある。
【0019】
前記電磁誘導加熱ワークコイルHは、この実施例において、その長辺部3の長さ3Hは、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rよりも40mm長く形成すると共に、短辺部4の長さ4Hを、前記焼き型Rの底部rの短辺部2の長さ2Rよりも20mm長く形成した。
【0020】
また、前記平面視長方形状に巻回される電磁誘導加熱ワークコイルHの各偶角部hの折り曲げ角度を90°に近づけるため、この実施例では径16.5mmの線材を用い、コイルHの投影面積は角形コイル部分の80%になるよう極力密に巻きあげてある。
【0021】
50は前記電磁誘導加熱ワークコイルHのコントロール装置(図示しない)を内蔵したコントロールボックスで、このボックス50の上方にブラケット51を介して、渦巻き状にした前記電磁誘導加熱ワークコイルHを内設したコイルボックス52が取り付けられている。
【0022】
前記コントロールボックス50で支持されていないコイルボックス52の自由端側は、図7に示すように高さ調節自在な脚体53で支持されている。54は冷却ファンで、図5に示すように上記コイルボックス52のコイルボックス52側に取り付けられており、電磁誘導加熱ワークコイルHの過度の加熱を阻止するものである。
上述したように構成した電磁誘導加熱食品焼き器Eを用いて、実際にたこ焼きを焼いたところ、図2に示すように、一列9個で4列合計36個列設された収容部10内のたこ焼きは、ほぼ同時に焼きむら無く焼き上がり、しかも半球状をしている収容部10との接触面の焦げ具合も均一であった。
【0023】
これは特に、長辺部3の長さ3Hを、前記焼き型Rの底部rの長辺部1の長さ1Rより、少なくとも40mm大きくすると、一列9個で4列合計36個の被焼き物すなわち、たこ焼き生地を、ほぼ同時に焼きむら無く焼き上げることができ、しかも収容部10との接触面の焦げ具合も均一にすることができた。しかしながら、この値を20mm未満に設定すると、焼き型Rの中心部と両サイドで焼きむらが発生することがあり、半球状をしている収容部10との接触面の焦げ具合も不均一なものが発生し好ましくない。
【0024】
さらに、この実施例において前記電磁誘導加熱ワークコイルHの短辺部4の長さ4Hを、前記焼き型Rの底部rの短辺部2の長さ2Rよりも、20mm長く形成してある。しかしながら、この短辺部4の長さ4Hをの値を、前記焼き型Rの底部rの短辺部2の長さ2Rの値未満に設定すると、焼き型Rの中心部と両サイドで焼きむらが発生することがあり、半球状をしている収容部10との接触面の焦げ具合も不均一なものが発生し好ましくない。
【0025】
また、前記平坦面の肉厚を3mmに設定したから電磁誘導加熱ワークコイルHに高周波電流を供給した際、焼き型Rの特に各収容部10に十分な渦電流を発生させることができ、上述したような好ましい結果をえることができた。しかしながら、この値を2mm未満に設定すると、期待した効果を得ることができなかった。また、上記肉厚が5mmを超えると昇温に時間がかかるばかりか、重量が重くなり焼き型の清掃作業が難しくなる。
【0026】
また、前記平面視長方形状に巻回される電磁誘導加熱ワークコイルHの各偶角部hの折り曲げ角度を90°に近づけるため、この実施例では径16.5mmの線材を用い、コイルHの投影面積は角形コイル部分の80%になるよう極力密に巻きあげられており、前述したような好い結果を得ることができた。
【0027】
ここで、上述した電磁誘導加熱食品焼き器Eを用いて焼き型Rの温度上昇状態を測定した結果を図8を用いて説明する。図7に示すように焼き型Rの中央部1chと外側部2chで測定した。
【0028】
図8に示すように、通電後約12分間で希望温度まで上昇し、その後は一定の温度を維持することができている。しかも、焼き型Rの中央部1chと外側部2chで、ほぼ同等の加熱温度が得られ、前述した実際にたこ焼きを焼いた結果と一致することがわかる。すなわち、一列9個で4列合計36個列設された収容部10内のたこ焼きは、ほぼ同時に焼きむら無く焼き上がり、しかも半球状をしている収容部10との接触面の焦げ具合も均一なたこ焼きを得ることができる。
【0029】
図9は、一列9個で4列合計36個列設された収容部有する上記たこ焼き型を、従来から使用されている電磁誘導加熱装置で加熱した時の、焼き型各収容部の温度上昇状態を測定した結果の一例である。なお、横軸には一列9個の各収容部の位置を示している。
【0030】
この図から焼き型の中央部の温度が異常に高く、左右両側の温度が異常に低いことがわかる。
【0031】
これは、たこ焼きや今川焼き、大判焼き等厚みを有する被焼き物を、従来のこの種の電磁誘導加熱装置で焼くと、焼き器の中央部に位置する物は焼けているのに、焼き器の端部に位置する物は、まだ生地が生のままである等業務用としては到底用いられないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例を適用した電磁誘導加熱食品焼き器の概略正面図。
【図2】焼き型の平面図。
【図3】同一部を切欠した正面図。
【図4】電磁誘導加熱ワークコイルを配置した電磁誘導加熱部の平面図。
【図5】同正面図。
【図6】同右側面図。
【図7】本発明の実施例を適用した電磁誘導加熱食品焼き器を用いて焼き型の温度上昇状態を測定した結果を示す図。
【図8】同測定位置を示す焼き型の平面図
【図9】従来の電磁誘導加熱食品焼き器を用いて焼き型の温度分布状態を測定した結果を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 長辺部(焼き型)
1R 長辺部の長さ(焼き型)
2 短辺部 (焼き型)
2R 短辺部の長さ(焼き型)
3 長辺部 (電磁誘導加熱ワークコイル)
3H 長辺部の長さ(電磁誘導加熱ワークコイル)
4 短辺部 (電磁誘導加熱ワークコイル)
4H 短辺部の長さ(電磁誘導加熱ワークコイル)
10 焼き物の収容部
11 焼き型の底部の外側面
12 平坦部
20 線材
E 電磁誘導加熱食品焼き器
R 焼き型
r 焼き型の底部
H 電磁誘導加熱ワークコイル
h 偶角部
Dコイルの径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼き物の収容部を備えた平面視四角形の焼き型と、
この焼き型の下方に配置され、少なくとも長辺部の長さが、前記焼き型底部の長辺部の長さより大きく巻回された平面視四角形の電磁誘導加熱ワークコイルから構成したことを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。
【請求項2】
請求項1記載の電磁誘導加熱熱食品焼き器であって、
前記焼き型に形成されている被焼き物の収容部は、その底部外側面の少なくとも中央部が平坦であることを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電磁誘導加熱食品焼き器であって、
前記電磁誘導加熱ワークコイルは、その短辺部の長さを、前記焼き型底部の短辺部のさと同等〜40mm大きく形成し、長辺部の長さは、前記焼き型底部の長辺部の長さより20mm〜60mm大きくしたことを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の電磁誘導加熱食品焼き器であって、
前記平面視四角形状に巻回された電磁誘導加熱ワークコイルの偶角部における曲率半径を、使用される線材の径をDとすると、2D〜3Dとすることを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の電磁誘導加熱食品焼き器であって、
前記電磁誘導加熱ワークコイルは、コイルの投影面積が角形コイル部分の60%以上であることを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の電磁誘導加熱食品焼き器であって、
前記焼き型の肉厚は2mm〜5mmの鉄製又は電磁誘導加熱可能な金属で構成したことを特徴とする電磁誘導加熱食品焼き器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−141681(P2007−141681A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334641(P2005−334641)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000125587)梶原工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】