説明

電磁遮蔽合わせガラス

【課題】
放送波から、無線LANまで、かなり広い周波数範囲にわたり、通信が行われるようになり、また、通信機器の感度も高性能になり、誤動作や盗聴などのリスクが増大してきた。このような状況に対して十分な電磁遮蔽性能を有する電磁遮蔽合わせガラスの提供を課題とする。
【解決手段】
本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、合わせガラスのガラスの間に金属製網体を挿入してなる電磁遮蔽合わせガラスであって、金属製網体を2枚の中間膜の間に挿入して2層中間膜(15、16)とし、3枚のガラス板(10、11、12)と2枚の2層中間膜(15、16)とを用い、ガラス板(10)、2層中間膜(15)、ガラス板(11)、2層中間膜(16)、ガラス板(12)の順に、ガラス板と2層中間膜とを交互に積層して合わせガラス(1)とし、外側に位置するガラス板(10、12)の空気側の面に導電性膜(41、42)が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインテリジェントビルの開口部などに装着される、合わせガラス構造の電磁遮蔽ガラスに関し、特に10MHzから20GHzの周波数範囲において、高い電磁遮蔽性能を有する電磁遮蔽ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用建物において、OA機器や通信機器等の電子機器・装置が多量に使用されている。これらの電子機器・装置の多くが発生させる電磁波は、他の電子機器や電子制御機器が誤動作する原因となる。また、ノイズを発生させる原因にもなっている。
【0003】
さらに、高度情報化に伴い、開口部から侵入する電磁波が、建物内の電子機器を誤動作させることがある。
【0004】
また、開口部から出ていく電磁波も、外部の電子機器などを誤動作させる原因となる。
【0005】
このため、多くの建物で、開口部に電磁遮蔽性能を付与するようになった。
【0006】
合わせガラスに2枚の中間膜を用い、中間幕の間に金属製網が挿入され、金属製網がガラスの端部で合わせガラスの表面まで折り曲げられた電磁遮蔽ガラスが知られている(特許文献1)。
【0007】
さらに、合わせガラスに3枚の中間膜を用い、中間幕の間に導電性メッシュと導電性フィルムが挿入され、導電性メッシュと導電性フィルムはガラスの端部で合わせガラスの表面まで折り曲げられ、さらに導電性テープで合わせガラスの端部が導電性メッシュと導電性フィルムとが固定されている電磁遮蔽ガラスが開示されている。導電性フィルムには、金属膜あるいはITO膜が形成されたものが用いられる(特許文献2)。
【0008】
特許文献3には、1MHz−30MHzの周波数範囲で50−65dBの遮蔽性能を有する、導電性の網体が2枚の中間膜の間に挿入された合わせガラス構成の電磁遮蔽ガラスが開示されており、特許文献4には、導電性膜が形成されているガラス板と導電性網体が2枚の中間膜に挿入されてなる合わせがラストを用いて構成される複層ガラス構成の電磁遮蔽ガラスが開示され、電磁遮蔽性能は、0.1MHz〜20GHzの周波数範囲で、約70dBである。
【0009】
特許文献5には、金属製網1枚を2枚の中間膜の間に挿入した合わせガラスと、金属製網2枚を2枚の中間膜に挿入した合わせがラストを用いてなる、複層ガラス構成の電磁遮蔽ガラスが開示され、0.1MHz〜1GHzの周波数範囲で70〜95dB程度の電磁遮蔽性能が記載されている。
【0010】
また、特許文献6には、65〜150メッシュの導電性網体2枚を用いる電磁遮蔽多重ガラスで、0.1MHz〜20GHzにわたり60〜70dB程度の遮蔽性能であることが開示されている。
【0011】
また、特許文献7には酸化スズ膜を用いて、10〜30dBの電磁遮蔽パネルが開示されている。
【0012】
建物の開口部には、電磁遮蔽性能の他に遮音性能が求められており、合わせガラスの遮音性能を高めるために、透明な樹脂層を積層して成る遮音性中間膜が用いられている。
【0013】
例えば、特許文献8、9に、化学組成を変えて粘性等の物性を異ならせた透明樹脂として、モノマー組成比または分子量を変えたPVB、あるいはPVBとは化学構造の異なるポリビニルアセタール樹脂を積層させた、遮音性中間膜が開示されている。
【0014】
特許文献8には、 アセタール基の炭素数が4〜6であり、且つアセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が8〜30モル%であるポリビニルアセタール樹脂(A)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(A)と、アセタール基の炭素数が3〜4であり、かつ、アセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が4モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂(B)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(B)とが積層されてなる、合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0015】
また、特許文献9にはポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる厚み0.05mm以上の層(A)と、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる層(B)とが、層(B)/層(A)/層(B)なる積層構成で積層され、層(A)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数6〜8のアルデヒド(a)と炭素数2〜4のアルデヒド(b)とにより共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(a)でアセタール化された部分と、アルデヒド(b)でアセタール化された部分との重量比が60:40〜100:0の範囲にあり、層(B)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数2〜4のアルデヒド(b)と、炭素数6〜8のアルデヒド(a)により共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(b)でアセタール化された部分と、アルデヒド(a)でアセタール化された部分との重量比が80:20〜100:0の範囲にあり、層(A)と層(B)の少なくとも一方のポリビニルアセタール樹脂は共アセタール化された樹脂であることを特徴とする遮音性中間膜が開示されている。
【0016】
また、遮音性能を高めた合わせガラスとして、水添スチレン・イソプロレン・ブタジエンブロック共重合物を含有する膜をエチレン−ビニルアセテート膜の間に積層させた中間膜をガラス板の間に挟みこみ、加熱融着してガラス板を接着一体化させて合わせガラスとしたものが、特許文献10に開示されている。
【0017】
サッシの遮音性能の規格は、JIS A4706:2000「サッシ」に記載されている。即ち、JIS A4706:2000において、サッシの遮音性は、遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級に分けられる。サッシの片側から音を出し、反対側でサッシによる音の反射、吸収減衰による音圧レベルの減少を測ることで、サッシの音響透過損失を前記JIS規格に定める各周波数で測定し、遮音等級T−1等級線、T−2等級線、T−3等級線、T−4等級線に準拠し、前記JISに記載された条件に適合、即ち、合格したサッシを、各々遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級とする。
【0018】
図4にJIS A4706:2000に記載される遮音等級線のグラフを示す。
【0019】
図4に示すように、音響透過損失による遮音等級線において、500Hz以上の遮音性能が、遮音等級T−3等級は35dB以上であり、遮音等級T−4等級は40dB以上である。遮音等級T−3等級、T−4等級に合格するには、音響透過損失が前述の等級線を実質的に上回る必要がある。
【0020】
デシベル(dB)は音圧レベルの単位であり、音圧レベルは、音による大気圧から圧力変動を対数で表した無次元量としデシベル(dB)を単位として表される。圧力変動は音圧レベル10dBで3.2倍変動する。音圧レベルはある音の音圧P(単位:Pa)と人間の最小可聴音である基準音圧P0(2×10-5Pa)との比の常用対数を20倍したものとして定義され、dBで表される。
【0021】
遮音等級T−4等級に合格するには、遮音等級T−3等級に比較して、500Hz以上の音響透過損失35dB以上を、40dB以上に、即ち、5dB以上遮音性能を向上させなければならない。また、125Hz以上、500Hz以下の周波数域においても、図4に示すように、JIS A4706:2000に示された遮音等級線に沿って5dB以上遮音性能を向上させなければならない。遮音等級T−4等級に合格するガラスサッシの遮音性能は、例えば、同厚のコンクリート壁に匹敵する。
【0022】
なお、透過音響損失は、JIS A1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」の、音源室と受音室とでなる試験室、音源装置及び受音装置等で構成される試験装置を用いる測定方法で測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平11−312893号公報
【特許文献2】特開平10−322083号公報
【特許文献3】特開2001−177291号公報
【特許文献4】特開2000−183586号公報
【特許文献5】特開平9−321484号公報
【特許文献6】特開2000−183584号公報
【特許文献7】特開2004−346555号公報
【特許文献8】特開平6−926号公報
【特許文献9】特開平5−104687号公報
【特許文献10】特開2007−91491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
近年、放送波から、無線LANまで、かなり広い周波数範囲にわたり、通信が行われるようになり、また、通信機器の感度も高性能になり、誤動作や盗聴などのリスクが増大してきた。
【0025】
本発明は、このような状況に対して十分な電磁遮蔽性能を有する電磁遮蔽合わせガラスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、ガラスの間に金属製網体を挿入してなる電磁遮蔽合わせガラスであって、金属製網体を2枚の中間膜の間に挿入して2層中間膜(15、16)とし、3枚のガラス板(10、11、12)と2枚の2層中間膜(15、16)とを用い、ガラス板(10)、2層中間膜(15)、ガラス板(11)、2層中間膜(16)、ガラス板(12)の順に、ガラス板と2層中間膜とを交互に積層して合わ
せガラス(1)とし、外側に位置するガラス板(10、12)の空気側の面に導電性膜(41、42)が形成されてなることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【0027】
また、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、前期電磁遮蔽合わせガラスにおいて、合わせガラス(1)の中央に用いられるガラス板(11)の厚さが3〜20mmであることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【0028】
また、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、前期電磁遮蔽合わせガラスにおいて、合わせガラス(1)の外側に用いられるガラス(10、12)の厚さが3〜10mmであることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【0029】
また、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、前期電磁遮蔽合わせガラスにおいて、導電性膜(41、42)が酸化スズでなることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【0030】
また、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、前期電磁遮蔽合わせガラスにおいて、金属製網体31、32が50〜150メッシュであることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【0031】
また、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、前期電磁遮蔽合わせガラスにおいて、4枚の中間膜のうち、少なくとも2枚の中間膜に遮音性中間膜を用い、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級がT−4等級であることを特徴とする電磁遮蔽合わせガラスである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、広い周波数範囲に対応した高性能の電磁遮蔽合わせガラスの提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の電磁遮蔽合わせガラスの構成を示す概略断面図。
【図2】電磁遮蔽合わせガラスの端部の概略断面図。
【図3】導電性部材を4層にした、複層ガラス構成の電磁遮蔽ガラスの概略断面図。
【図4】JIS A4706:2000に記載される遮音等級線のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、図1に示されるような、3枚のガラス板(10、11、12)を用いて作製される、合わせガラス(1)の構成をした、電磁遮蔽合わせガラスである。
【0035】
ガラス板(10、11、12)には、ソーダ石灰シリカ系ガラスをはじめとする無機ガラスの板が用いられ、特に、フローと法で製造されるフロートガラスあるいはフロートガ
ラスを強化した強化ガラス等が好適に用いられる。
【0036】
ガラス板(10、11、12)には、建築用に用いられる厚さ3mm以上20mm以下のフローとガラスが好適に用いられる。特に外側に用いるガラス板(10、12)には厚さ3〜10mmのガラス板が、また中央に用いられるガラス板(11)には厚さ3〜20mmのガラス板が好ましく、さらに望ましくは、ガラス板(10、12)には厚さ5〜10mmのガラス板が、また中央に用いられるガラス板(11)には厚さ6〜15mmのガラス板が好ましい。
【0037】
ガラス板(10、11、12)は2層中間膜15、16によって一体化され、合わせガラス(1)を構成する。
【0038】
さらに、ガラス板(10、12)の片面に導電膜(41、42)が形成され、導電膜(41、42)は、合わせガラス(1)の2層中間膜側ではなく、表面側に位置させる。
【0039】
導電膜を合わせ面ではなく、外側の面に設けるため、導電膜(41、42)にはCVD法で製膜される、耐久性の良い酸化スズ膜(ネサ膜)が好適である。ソーダ石灰シリカ系ガラスの表面に酸化スズ膜を形成する場合、ガラスの表面に酸化ケイ素膜などのバリア層をCVD法で形成することが好ましい。
【0040】
導電膜(41、42)のシート抵抗値は、高い電磁遮蔽性能を得るためには、30Ω/□以下とすることが好ましい。
【0041】
2層中間膜15は、2枚の中間膜21、22の間に金属網体31を挿入した構成であり、2層中間膜16は、2枚の中間膜23、24の間に金属網体32を挿入した構成である。
【0042】
中間膜21、22、23、24には、ポリビニルブチラール(PVB)やエチレンビニルアセテート(EVA)が好適に用いられる。
【0043】
金属製網体31、32には、透視性を保つために、目開きが10mm以上(50メッシュ以上)であることが好ましく、また、高い電磁遮蔽性能を得るためには、目開きは50mm以下(150メッシュ以下)とすることが望ましい。
【0044】
また、金属製網体31、32の線材については、特定するものではないが、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属の導線を用いることができる。さらに、前期導線に反射防止用の黒染酸化皮膜を施したものなどが好ましく採用できる。
【0045】
金属製網体に用いられる線材の径は、取り扱い安さから、50μm以上とし、透視性の観点から180μm以下とすることが望ましい。
【0046】
金属製網体31はガラス板(10)の端面を跨って、また、金属製網体32はガラス板(12)の端面を跨って、それぞれ、合わせガラスの表面にまで折り曲げられていることが、導電膜(41)あるいは導電膜(42)と導通が図られ、好ましい。
【0047】
合わせガラスの端面で折り曲げられた金属製網体の上から、合わせガラスの端部全体を覆うように、導電テープ50を導電膜(41)から導電膜(42)に跨って設けることが好ましい。
【0048】
導電テープ50により、金属網体31、32および導電膜(41、42)の全ての導通
がとられるので、好ましい電磁波の遮蔽効果が得られる。
【0049】
導電テープ50には、銅、アルミ、SUS、亜鉛などの金属箔に、カーボンなどを含有した導電性の粘着剤を積層したもの、あるいは前記金属箔に孔を開けた絶縁性粘着剤を積層したものなどを使用することができる。
【0050】
さらに、本発明の電磁遮蔽合わせガラスは、中間膜に遮音性中間膜を用いることにより、JISA4706:2000に準拠する遮音等級のT−4等級を満たすものである。
【0051】
本発明の電磁遮蔽合わせガラスには4枚の中間膜が用いられるが、4枚の中間膜のうち、少なくとも2枚の中間膜を遮音性中間膜とすることにより、JISA4706:2000に準拠する遮音等級のT−4等級を満たすので、好ましい。
【0052】
遮音性中間膜として、特許文献8、9、10に開示されている次の(1)〜(3)の遮音性中間膜を用いることができる。
(1)アセタール基の炭素数が4〜6であり、且つアセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が8〜30モル%であるポリビニルアセタール樹脂(A)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(A)と、アセタール基の炭素数が3〜4であり、かつ、アセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が4モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂(B)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(B)とが積層されてなる遮音性中間膜。
【0053】
(2)ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる厚み0.05mm以上の層(A)と、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる層(B)とが、層(B)/層(A)/層(B)なる積層構成で積層され、層(A)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数6〜8のアルデヒド(a)と炭素数2〜4のアルデヒド(b)とにより共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(a)でアセタール化された部分と、アルデヒド(b)でアセタール化された部分との重量比が60:40〜100:0の範囲にあり、層(B)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数2〜4のアルデヒド(b)と、炭素数6〜8のアルデヒド(a)により共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(b)でアセタール化された部分と、アルデヒド(a)でアセタール化された部分との重量比が80:20〜100:0の範囲にあり、層(A)と層(B)の少なくとも一方のポリビニルアセタール樹脂は共アセタール化された樹脂である、遮音性中間膜。
【0054】
(3)水添スチレン・イソプロレン・ブタジエンブロック共重合物を含有する膜をエチレン−ビニルアセテート膜の間に積層させた遮音性中間膜。
【実施例】
【0055】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0056】
実施例1
図1に示す、ガラス板3枚を用いた合わせガラス構成の電磁遮蔽合わせガラスを作製した。ガラス板(11)には、厚さ12mmのフロートガラスをもちい、ガラス板(10、12)には厚さ6mmのフロートガラスを用いた。
【0057】
2層中間膜15には、厚さ0.8mmの2枚のPVB膜21、22の間に金属製網体31を挟み込んだものを用いた。
【0058】
金属製網体31には、ステンレス鋼の線材(太さが約 50μm)を用いてなるメッシュサイズ 100メッシュ(目開き約 150μm)の網体を用いた。2層中間膜16にも、2層中間膜15と同じものを用いた。
【0059】
ガラス板(10、12)には酸化スズ膜(ネサ膜)をCVD法で形成した。シート抵抗は15Ω/□であった。
【0060】
本実施例で作製した電磁遮蔽合わせガラスの電磁遮蔽性能を、米国ミル規格 MIL−STD 285 に則り、水平偏波、垂直偏波における電磁遮蔽性能(電磁波減衰率)を測定し、表1の結果を得た。
【0061】
電磁遮蔽性能は70dBBを下回ることはなく、ほとんどの周波数範囲で90〜100dB以上のきわめて良好な遮蔽性能を示した。
【0062】
比較例1
図3に示すような複層ガラス構成の電磁遮蔽ガラス(2)を作製した。
【0063】
2枚の金属製網体(33、34)を中間膜(25)と中間膜との間に挟み込み、厚さ6mmのガラス板(13)と厚さ12mmのガラス板(14)の2枚のガラス板を用いて、合わせガラス(3)を作製した。
【0064】
金属製網体(33,34)には実施例1と同様の金属製網体を用いた。また、中間膜(25、26)にも、実施例1と同様の中間膜を用いた。
【0065】
次に、合わせガラス(3)とシート抵抗が20Ω/□のAg膜(65)をスパッタリング法で成膜したガラス板(15)とを、空気層(16)が12mmとなるようにスペーサー73を用いて複層ガラス(2)にした。
【0066】
さらに、導電膜付プラスチックフィルム(63、64)を、複層ガラス2の外側のガラス面に設けた。導電膜付プラスチックフィルム(63、64)には、ポリエチレンテレフタレートのフィルムに、SnO2膜、Ag膜、SnO2膜、Ag膜、SnO2膜の順に積層してなる導電膜を、スパッタリング法で成膜したものを用いた。導電膜付プラスチックフィルム(63、64)の導電膜のシート抵抗値は2Ω/□とした。導電膜付プラスチックフィルム(63、64)の合わせガラス(3)およびガラス板(15)への接着には、アクリル系接着剤を用いた。
【0067】
合わせガラス(13)とガラス板(15)とを対向配置し、ガラス板の周辺部にスペーサー(72)を挿入し、合わせガラス(13)とスペーサー(72)とを、また、ガラス板(15)とスペーサー(72)とを、維持1次シール材で接着し、さらに、合わせガラス(13)、ガラス板(15)およびスペーサー(72)とで囲まれる周辺部分を、2次シール材で充填した。
【0068】
1次シール材にはブチルゴム系の接着剤を用い、2次シール材にはシリコーン系の接着剤を用いた。
【0069】
合わせガラス(3)の作製に用いた金属製網体(33、34)はガラス板よりも大きいものを用い、金属性網体(33、34)のガラスのエッジからはみ出た部分を、金属製網体(33)は、ガラス板(13)の端部を跨ぐようにガラス板(13)の端部を折り返し、また、金属製網体(34)は、ガラス板(14)の端部を覆い、Ag膜を成膜してあるガラス板(15)の端部を跨ぐように折り返した。
【0070】
金属製網体(34)とガラス板(15)に成膜されているAg膜とを導通させるため、ガラス板(15)の端部には、ガラス板(15)の端面を覆い、端部を跨ぐようにして導電テープ(52)を設けた。
【0071】
また、複層ガラス2の端部全体を跨ぐように導電テープ51を設け、金属性網体(33、34)、Ag膜(65)および導電膜付プラスチックフィルム(63、64)の導電膜との導通を行った、
比較例1で作製した複層ガラス構成の電磁遮蔽ガラスは、導電膜付プラスチックフィルムの導電膜、合わせガラス2に用いた2枚重ねの金属製網体、及び、Ag膜の、実施例1と同じ、4層の導体を設けたものである。
【0072】
比較例1の電磁遮蔽性能を実施例1と同様に測定した。測定結果は表1の通りである。比較例の電磁遮蔽性能は、実施例1に比較し、大きいところでは20dB以上劣るものであった。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例2
実施例1の2枚の2層中間膜15、16のうち、 2層中間膜15のPVB膜21、22を同じ厚さの遮音性中間膜にした他は、全て実施例1と同様にして、電磁遮蔽合わせガラスを作製した。
【0075】
実施例3
実施例1の2枚の2層中間膜15に用いたPVB膜21と、2層中間膜16に用いた23とを、同じ厚さの遮音性中間膜にした他は、全て実施例1と同様にして、電磁遮蔽合わせガラスを作製した。
【0076】
実施例1〜3で作製した電磁遮蔽合わせガラスの遮音性能を評価するため、JISA1416:2000に準じて透過音響損失の測定を行い、JISA3207:2000に準じて遮音性能の評価を行い、表2に示す評価結果を得た。
【0077】
【表2】

【符号の説明】
【0078】
10、11、12、13、14、15 ガラス板
16 空気層
21、22、23、24、25、26 中間膜
31、32、33、34 金属製網体
41、42 導電膜
50、51、52 導電テープ
63、64 導電膜付プラスチックフィルム
65 Ag膜
71 2次シール
72 1次シール
73 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの間に金属製網体を挿入してなる電磁遮蔽ガラスであって、金属製網体を2枚の中間膜の間に挿入して2層中間膜とし、3枚のガラス板(10、11、12)と2枚の2層中間膜(15、16)とを用い、ガラス板(10)、2層中間膜(15)、ガラス板(11)、2層中間膜(16)、ガラス板(12)の順に、ガラス板と2層中間膜とを交互に積層して合わせガラス1とし、外側に位置するガラス板(10、12)の空気側の面に導電性膜(41、42)が形成されてなることを特徴とする電磁遮蔽ガラス。
【請求項2】
合わせガラス1の中央に用いられるガラス板11の厚さが3〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の電磁遮蔽ガラス。
【請求項3】
合わせガラス1の外側に用いられるガラス(10、12)の厚さが3〜10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁遮蔽ガラス。
【請求項4】
導電性膜(41、42)が酸化スズでなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁遮蔽ガラス。
【請求項5】
金属製網体31、32が50〜150メッシュであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁遮蔽ガラス。
【請求項6】
4枚の中間膜のうち、少なくとも2枚の中間膜に遮音性中間膜を用い、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級がT−4等級であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電磁遮蔽合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138688(P2010−138688A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138905(P2009−138905)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】