説明

電磁開閉弁

【課題】 シート部材に対して要求される加工精度が高くても、製造が容易な電磁開閉弁を提供する。
【解決手段】 電磁開閉弁20は、弁通路55が形成されるハウジングに変位可能に主弁体22が設けられている。主弁体22には、シート部材25が設けられている。シート部材25は、弁通路55を一次側空間56と二次側空間57とに分ける弁座34に着座して弁通路55を閉じるように構成されている。また主弁体22には、主弁体22に対して相対変位可能にパイロット弁体23が連結されている。パイロット弁体23、パイロット弁23を電磁駆動手段24の電磁力によって変位するように構成されている。更に、電磁開閉弁20は、シート部材25に一次側空間56と二次側空間57とを連通するパイロット通路40が形成され、前記パイロット弁体23がシート部材25に着座すると前記パイロット通路40が閉じられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる流路を開閉するための電磁開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の技術の電磁開閉弁1を示す断面図である。電磁開閉弁1は、高圧ガスタンク等の流体装置に設けられ、流路を開閉可能に構成されている。電磁開閉弁1は、ハウジング2と、主弁体3と、パイロット弁体4と、電磁駆動手段5とを有する。ハウジング2には、一次ポートと二次ポートとを繋ぐ弁通路6が形成されている。この弁通路6は、ハウジング2に形成される弁座7で規定される弁口7aにより一次ポートに繋がる一次側空間8と、二次ポートに繋がる二次側空間9とに分けられる。
【0003】
更に、ハウジング2には、有底筒状の主弁体3が変位可能に収容されている。主弁体3の底部3aには、軸線方向に貫通するパイロット通路10が形成されている。更に主弁体3の底部には、主シート部材11が設けられている。主シート部材11は、パイロット通路10の外側の開口を囲むように配置され、弁座7に着座するように構成されている。主弁体3は、主シート部材11が弁座7に着座することで、弁口7aを閉じて弁通路6を閉じる。
【0004】
主弁体3には、パイロット弁体4の先端部4aが挿入されており、前記主弁体3とパイロット弁体4とが相対変位可能に連結されている。主弁体3の底部3aには、パイロット通路10の内側の開口を囲むように弁座12が形成されている。弁座12は、パイロット弁体4の先端部4aに向って突出している。この弁座12に着座するように、パイロット弁体4の先端部4aには副シート部材13が設けられている。パイロット弁体4は、副シート部材13が前記弁座12に着座することで、パイロット通路10を閉じる。パイロット弁体4には、電磁駆動手段5が設けられている。電磁駆動手段5は、電力によりパイロット弁体4を変位させる。パイロット弁体4を変位させることで、それに連結する主弁体3が移動する。
【0005】
電磁駆動手段5を駆動すると、パイロット弁体4が主弁体3に対して相対変位し、副シート部材13が弁座12から離隔してパイロット通路10が開く。そうすると、一次側空間8がパイロット通路10を介して二次側空間9と連通し、二次側空間9の圧力が上昇する。二次側空間9の圧力が上昇することで、一次側空間8の圧力と二次側空間9の圧力との差が小さくなっていく。やがて圧力差が所定の圧力になると、主弁体3が移動して主シート部材11を弁座7から離隔する。これにより、一次側空間8と二次側空間9とが弁口7aを介して繋がり、圧力装置内のガスが弁口7aを通って外部の機器へと供給される。
【特許文献1】特開2005−83533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術の電磁開閉弁1のような弁では、一般的に、一次側空間8から二次側空間9へとガスが漏れないようにするために、主シート部材11及び副シート部材13の各々に対して高い加工精度が求められる。また、従来の技術の電磁開閉弁1のような主弁体3とパイロット弁体4とを備える弁では、組立てる際、これらの部品を高い位置精度で配置する必要がある。また、主弁体3及びパイロット弁体4に設けられる主シート部材11及び副シート部材13に対しても相当な位置精度が求められる。この相当な位置精度を確保するために主シート部材11及び副シート部材13に対して更なる高い加工精度が要求される。従って、主シート部材11及び副シート部材13の各々を要求通りの非常に高い加工精度で製造すると、電磁開閉弁1の製造に多大な労力が必要となり、製造コスト及び品質管理コストが高くなってしまう。
【0007】
また、電磁開閉弁1では、主シート部材11及び副シート部材13が、接着剤等で主弁体3及びパイロット弁体4に夫々固定されている。そのため、主シート部材11及び副シート部材13は、繰り返し応力及び熱に対する耐久性が低い。また接着固定では、固定時に主シート部材11及び副シート部材13が動くなどして位置決めが難しく、主弁体3及びパイロット弁体4などに対する主シート部材11及び副シート部材13の同軸度を高精度で確保することが困難である。
【0008】
本件発明の第1の目的は、シート部材に対して要求される精度(平面度、直角度及び表面粗度等)が高くても、製造が容易な電磁開閉弁を提供することである。
【0009】
本件発明の第2の目的は、シート部材の主弁体に固定された部分の繰り返し応力及び熱に対する耐久性を向上させた電磁開閉弁を提供することである。
【0010】
本件発明の第3の目的は、主弁体に対するシート部材の位置決めが容易な電磁開閉弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁開閉弁は、一次ポートに繋がる一次側空間と、二次ポートに繋がる二次側空間と、弁座により規定されて前記一次側空間と前記二次側空間とを繋ぐ弁口が形成されるハウジングと、前記ハウジングに変位可能に設けられる主弁体と、前記主弁体に設けられ、前記弁座に着座して前記弁口を閉じるシート部材と、前記主弁体と連結され、かつ前記主弁体に対して相対変位可能なパイロット弁体と、電磁力によって前記パイロット弁体を変位させる電磁駆動手段とを備え、前記シート部材は、前記一次側空間と前記二次側空間とを連通するパイロット通路が形成され、前記パイロット弁体が着座すると前記パイロット通路が閉じられるように構成されているものである。
【0012】
本発明に従えば、弁座に着座して弁口を閉じるためのシート部材をパイロット弁体も着座可能に構成することで、従来の技術では主弁体及びパイロット弁体に夫々設けられていた主シート部材及び副シート部材が一体成形可能になる。これにより、高い位置精度を必要とする部品を従来の技術のものから削減することができ、位置精度を規定すべき箇所が従来の技術のものに比べて少なくなる。またシート部材にパイロット通路を形成することで、組立時におけるシート部材とパイロット通路との間の位置精度を規定する必要がなくなる。これによっても位置精度を規定すべき箇所が従来の技術のものに比べて少なくなる。このように位置精度を規定すべき箇所が少ないので、従来の技術のものより製造が容易となる。
【0013】
上記発明において、前記主弁体は、その一端部に前記シート部材を挿入する貫通孔部を有し、前記シート部材は、その外周壁の軸線方向中間部に半径方向外方に突出するフランジ部を有し、前記貫通孔部の軸線方向中間部に形成される凹部に前記フランジ部を嵌め込むことによって前記主弁体に固定されていることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、シート部材のフランジ部を主弁体の貫通孔部の凹部に嵌め込むことで、主弁体にシート部材を接着することなく、シート部材が主弁体に固定される。これにより、樹脂及び金属等の異なる材料の接着することに伴う繰り返し応力及び熱に対する耐久性の劣化が生じず、従来のものに比べて耐久性を向上させることができ信頼性がさらに向上する。
【0015】
上記発明において、前記主弁体の貫通孔部と前記シート部材の外周壁とは、前記シート部材が前記弁座に着座する状態でそれらの間を流れる流体が前記一次側空間に導かれるように形成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成に従えば、仮に主弁体の貫通孔部とシート部材の外周壁との間が完全にシールされていなくとも、シート部材が前記弁座に着座する時に前記一次側空間の流体が二次側空間に漏れることがない。従って、主弁体の貫通孔部及びシート部材の外周壁の加工精度を低くすることができ、主弁体及びシート部材の製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0017】
上記発明において、前記シート部材は、前記主弁体の貫通孔部にインサート成形することで形成されることが好ましい。上記構成に従えば、シート部材が主弁体にインサート成形され、主弁体に対するシート部材の位置決めが容易である。そのため、製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電磁開閉弁によれば、シート部材に対して要求される精度(平面度、直角度及び表面粗度等)が高くても、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である電磁開閉弁20を示す断面図である。電磁開閉弁20は、天然ガス自動車用の燃料タンク等、高圧可燃ガス(以下、単に「ガス」ともいう)を収容する高圧ガスタンク(以下、単に「タンク」ともいう)に設けられている。電磁開閉弁20は、タンク内のガスの排出を制御するための弁装置である。
【0020】
電磁開閉弁20は、ハウジング21と、主弁体22と、シート部材25と、パイロット弁体23と、電磁駆動手段24とを有する。電磁開閉弁20は、基本軸線L1を有し、ハウジング21、主弁体22、シート部材25、パイロット弁体23及び電磁駆動手段24の軸は、基本軸線L1と一致している。以下では、基準軸線L1に沿う方向を軸線方向Zといい、図1の紙面上方を軸線方向一方Z1、紙面下方を軸線方向他方Z2という。
【0021】
ハウジング21には、軸線方向一方Z1に開放する弁室31が基準軸線L1に沿って形成されている。また、ハウジング21には、基準軸線L1に垂直な方向に延びる一次通路32が形成されている。一次通路32は、その一端が弁室31に接続され、他端がタンク内に接続されている。更にハウジング21には、基準軸線L1に沿って二次通路33が形成されている。二次通路33は、軸線方向一端が弁室31に接続され、他端が天然ガス用自動車のエンジン等のタンク外の機器に接続されている。二次通路33の弁室31に臨む開口の周りには、軸線方向一方Z1に突出する円環状の弁座34が形成されている。本実施形態では、一次通路32のタンク内に臨む開口が一次ポート35となり、二次通路33のタンク外の機器内に望む開口が二次ポート36となる。そして前記弁座34の先端の内側に弁口34aが規定される。
【0022】
ハウジング21の弁室31には、主弁体22が軸線方向Zに変位可能に収容されている。主弁体22は、金属材料、例えば黄銅又はステンレス鋼から成り、有底円筒状に形成されている。主弁体22の外周部には、その軸線方向一端から他端にわたって延びる複数の溝22aが周方向に等間隔をあけて形成されている。そして主弁体22は、底部に軸線方向に貫通する貫通孔部37が形成されている。貫通孔部37には、シート部材25が嵌め込まれている。また、主弁体22の軸線方向一方Z1に開放する開口には、パイロット弁体23が挿入されている。
【0023】
図2は、図1のシート部材25の周辺の部分を拡大して示す断面図である。シート部材25は、合成樹脂又は合成ゴムから成り、具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂又はナイロンモノマーから成る。シート部材25は、大略的に円板状に形成されており、その外形は貫通孔部37の内周面の形状と略一致している。シート部材25の外周部の軸線方向中間部には、半径方向外方に突出するフランジ部38が周方向全周にわたって形成されている。そして、主弁体22の貫通孔部37には半径方向外方に向って凹む凹部が形成されている。シート部材25は、フランジ部38が凹部39に嵌まり込むことで固定されている。
【0024】
このように主弁体22にシート部材25を接着することなく、シート部材25が主弁体22に固定されるので、樹脂及び金属等の異なる材料の接着することに伴う繰り返し応力及び熱に対する耐久性の劣化を生じない。従って、従来のものに比べて耐久性を向上させることができ信頼性がさらに向上する。
【0025】
またシート部材25は、その軸線方向一端部が弁口34aより大径に形成されており、前記軸線方向一端部が弁座34に着座している。シート部25は、弁座34に着座することで、弁口34aを塞ぐように構成される。更に、シート部材25には、基準軸線L1に沿って貫通するパイロット通路40が形成されている。
【0026】
以下、図1及び図2を参照しつつ説明する。パイロット弁体23は、電磁ステンレス鋼等の強磁性体から成り、小径のパイロット弁部41と大径の可動鉄心42とが一体に構成されて大略的に円柱形状を成している。パイロット弁部41は、先端側の部分が主弁体22に挿入されている。パイロット弁部41と主弁体22とは、それら各々に形成される連結孔41a,22bに連結ピン43が挿通されて連結されている。連結孔41a,22bは、共に基準軸線L1に垂直な方向に延びており、パイロット弁部41の連結孔41aの孔径は、連結ピン43の外径より大径に形成されている。それ故、パイロット弁体23は、主弁体22に対して軸線方向Zに相対変位可能に構成される。
【0027】
また、パイロット弁部41の先端41bには、弁体片44が形成されている。弁体片44は、軸線方向他方Z2に突出し、その先端に向うにつれて先細りとなるテーパ形状になっている。弁体片44は、その先端部分がパイロット通路40に嵌まり込むようにしてシート部材25に着座している。パイロット弁部41は、弁体片44の先端部がシート部材25に着座することで、パイロット通路40を閉じるように構成されている。パイロット弁部41の基端41cには、可動鉄心42が一体的に設けられている。そして、可動鉄心42には、可動鉄心42を変位させるための電磁駆動手段24が設けられている。
【0028】
電磁駆動手段24は、ソレノイドケーシング47と、固定磁極48と、コイル部材49と、ガイド部材50とを備える。ソレノイドケーシング47は、大略的に円筒状に形成され、軸線方向Zの両端部に半径方向内方に延在する内向きフランジ部47a,47bを有する。これら2つの内向きフランジ部47a,47bの間には、コイル部材49が嵌め込まれている。コイル部材49は、ボビン51とコイル52とを有する。ボビン51は、大略的に円筒状に形成され、軸線方向Zの両端部に半径方向外方に延在する外向きフランジ部51a,51bを有する。そしてそれらの間には、コイル線が巻きつけて形成されるコイル52が設けられている。また、ソレノイドケーシング47の軸線方向一方Z1側の開口には、強磁性体から成る固定磁極48が嵌め込まれている。
【0029】
更に、ソレノイドケーシング47内には、ガイド部材50が設けられている。ガイド部材50は、その軸線方向他方Z2側の開口がハウジング21の弁室31に接続されるように、前記ハウジング21に設けられている。また、ガイド部材50には、軸線方向他方Z2側の開口から可動鉄心42が挿入され、可動鉄心42がコイル部材49内に達する。可動鉄心42の軸線方向他端部は、固定磁極48の軸線方向一端部と対向する。対向する他端部及び一端部の間には、圧縮コイルばね53が設けられ、可動鉄心42と固定磁極48とが離されて配置される。可動鉄心42は圧縮コイルばね53により軸線方向他方Z2に押圧されている。そのため、パイロット弁部41の弁体片44がシート部材25に押し付けられる。
【0030】
本実施形態において、二次通路33、弁室31及び一次通路32により弁通路55が形成されている。また弁通路55において、弁口34aより一次ポート35側の空間が一次側空間56を成し、弁口34aより二次ポート36側の空間が二次側空間57を成している。従って、一次側空間56と二次側空間57とが弁口34aにより繋がれている。
【0031】
図3(a)は、パイロット弁体23がシート部材25から離脱した状態を示す断面図であり、図3(b)は、シート部材25が弁座34から離脱した状態を示す断面図である。電磁開閉弁20では、コイル52に電流が流れていない状態でパイロット通路40及び弁通路55が共に閉じられている。これにより一次側空間56と二次側空間57とが遮断されている。この際、シート部材25及び主弁体22の加工精度によりシート部材25と主弁体22の貫通孔部との間が完全にシールされずに隙間58が形成されることがあるが、シート部材25の軸線方向一端部が弁口34aより大径に形成されているので、前記隙間58が弁座34より半径方向外方の空間、つまり一次側空間56に接続される。そのため、前記隙間58からガスが二次側空間57に漏れることが防止されている。そのため、主弁体22の貫通孔部37及びシート部材25の外周壁の加工精度を低くすることができ、主弁体22及びシート部材25の製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0032】
次に、電磁開閉弁20では、コイル52に電流が流れると、磁気力を発生して可動鉄心42及び固定磁極48が磁化される。磁化されることで、可動鉄心42が固定磁極48に磁気吸引され、固定磁極48に近接する方向(即ち、軸線方向一方Z1)の力が可動鉄心42に作用する。これにより、パイロット弁体23は、連結ピン43がパイロット弁体23に当るまで主弁体22に対して軸線方向一方Z1に相対変位する。これにより、図3(a)に示すように、弁体片44がパイロット通路40から離脱し、パイロット通路40が開かれる。パイロット通路40が開くことで、一次側空間56と二次側空間57とがパイロット通路40により連通され、二次側空間57の圧力が上昇する。
【0033】
二次側空間57の圧力が上昇することで、一次側空間56の圧力と二次側空間57の圧力との差が小さくなっていく。やがて前記差圧が所定の圧力になると、コイル52の磁気力によって変位させられるパイロット弁体23により主弁体22が軸線方向一方Z1に引張られ、主弁体22が軸線方向一方Z1に移動する。主弁体22が移動することで、シート部材25が弁座34から離れて弁通路55が開かれ、タンク内のガスが弁通路55を通ってタンク外の機器へと流れてゆく。具体的には、タンク内のガスが一次通路32を通って弁室31に入り、主弁体22の溝22aを通って二次通路33に導かれ、タンク外の機器へと流れてゆく。
【0034】
コイル52に流れる電流を止めると、パイロット弁体23に作用していた磁気力がなくなり、圧縮コイルばね53の押圧力によりパイロット弁体23がシート部材25に着座させられる。これにより、パイロット通路40が閉じられる。その後も、圧縮コイルばね53により押圧され続けるパイロット弁体23が、主弁体22を押圧して軸線方向他方Z2に移動させる。やがて、主弁体22に設けられるシート部材25が弁座34に着座して弁通路55が閉じられる。
【0035】
本実施の形態の電磁開閉弁20によれば、弁座34に着座して弁通路55を閉じるためのシート部材25をパイロット弁体23も着座可能に構成することで、従来の技術では主弁体3及びパイロット弁体4毎に設けられていた主シート部材11及び副シート部材13が一体成形可能になる。これにより、高い位置精度を必要とする部品を従来の技術のものから削減することができ、位置精度を規定すべき箇所が従来の技術のものに比べて少なくなる。またシート部材25にパイロット通路40を形成することで、組立時におけるシート部材25とパイロット通路40との間の位置精度を規定する必要がなくなる。これによっても位置精度を規定すべき箇所が従来の技術のものに比べて少なくなる。このように位置精度を規定すべき箇所が少ないので、シート部材25に対して要求される精度(平面度、直角度及び表面粗度等)が高くても、組立後の加工精度を高いものにすることが従来の技術のものより容易であり、従来の技術のものより製造が容易となる。
【0036】
本実施形態のシート部材25は、主弁体22にインサート成形することで形成されている。そのため、主弁体22に対するシート部材25の位置決めが容易である。そのため、製造コストが低減される。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態である電磁開閉弁20Aのシート部材25Aの周辺を拡大して示す断面図である。第2実施形態の電磁開閉弁20Aは、第1実施形態の電磁開閉弁20と構成が類似している。そのため、以下では、第2実施形態の電磁開閉弁20Aの構成について、第1実施形態の電磁開閉弁20と異なる構成についてだけ説明し、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。後述する第3実施形態の電磁開閉弁20Bについても同様である。パイロット弁体23Aのパイロット弁部41Aの先端に形成される弁体片44Aは、その先端に向って先細りとなるテーパ形状であって、先端が平坦に形成されている。弁体片44Aは、その先端部がシート部材25のパイロット通路40に嵌まり込むことなく、シート部材25に着座してパイロット通路40を閉じる。
【0037】
本実施形態の電磁開閉弁20Aは、第1実施形態の電磁開閉弁20と同様の作用効果を奏する。
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態である電磁開閉弁20Bのシート部材25Bの周辺を拡大して示す断面図である。シート部材25Bは、その軸線方向他端部に弁座61を有する。弁座61は、パイロット通路40の周りを囲むように円環状に形成され、軸線方向一方Z1に突出している。またパイロット弁体23Bのパイロット弁部41Bの先端は、平坦に形成され、弁座61に着座するように構成されている。パイロット弁部41Bが弁座61に着座することで、パイロット通路40が閉じられる。
【0038】
本実施形態の電磁開閉弁20Bは、第1実施形態の電磁開閉弁20と同様の作用効果を奏する。
【0039】
第1乃至第3の実施形態では、高圧ガスタンクに適用される場合について説明したが、油圧装置などに適用してもよく、扱う流体は、ガスに限定するものではない。またハウジング2とソレノイドケーシング47が別体の構成について説明しているが、これらが一体的に構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態である電磁開閉弁20を示す断面図である。
【図2】図1のシート部材25の周辺の部分を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)は、パイロット弁体23がシート部材25から離脱した状態を示す断面図であり、(b)は、シート部材25が弁座34から離脱した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である電磁開閉弁20Aのシート部材25Aの周辺を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態である電磁開閉弁20Bのシート部材25Bの周辺を拡大して示す断面図である。
【図6】従来の技術の電磁開閉弁1を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
20,20A,20B 開閉弁
21 ハウジング
22 主弁体
23,23A,23B パイロット弁体
24 電磁駆動手段
25,25A,25B シート部材
34 弁座
34a 弁口
35 一次ポート
36 二次ポート
37 貫通孔部
38 フランジ部
39 凹部
40 パイロット通路
56 一次側空間
57 二次側空間
58 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ポートに繋がる一次側空間と、二次ポートに繋がる二次側空間と、弁座により規定されて前記一次側空間と前記二次側空間とを繋ぐ弁口が形成されるハウジングと、
前記ハウジングに変位可能に設けられる主弁体と、
前記主弁体に設けられ、前記弁座に着座して前記弁口を閉じるシート部材と、
前記主弁体と連結され、かつ前記主弁体に対して相対変位可能なパイロット弁体と、
電磁力によって前記パイロット弁体を変位させる電磁駆動手段とを備え、
前記シート部材は、前記一次側空間と前記二次側空間とを連通するパイロット通路が形成され、前記パイロット弁体が着座すると前記パイロット通路が閉じられるように構成されていることを特徴とする電磁開閉弁。
【請求項2】
前記主弁体は、その一端部に前記シート部材を挿入する貫通孔部を有し、
前記シート部材は、その外周壁の軸線方向中間部に半径方向外方に突出するフランジ部を有し、前記貫通孔部の軸線方向中間部に形成される凹部に前記フランジ部を嵌め込むことによって前記主弁体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁開閉弁。
【請求項3】
前記主弁体の貫通孔部と前記シート部材の外周壁とは、前記シート部材が前記弁座に着座する状態でそれらの間を流れる流体が前記一次側空間に導かれるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁開閉弁。
【請求項4】
前記シート部材は、前記主弁体の貫通孔部にインサート成形することで形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の電磁開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−65780(P2010−65780A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233573(P2008−233573)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(592216188)株式会社カワサキプレシジョンマシナリ (67)
【Fターム(参考)】