説明

電磁高周波放射線を使用して物体の像形成を行うための方法およびデバイス

本発明は電磁高周波放射線を用いて物体(4)の像形成を行うためのデバイスであって、電磁高周波放射線のための少なくとも1つの検出器(1)と焦点を生成するための少なくとも1つの像形成デバイス(3a,b,c)とを包含する。電磁高周波放射線を用いて物体の像形成を行う装置及び方法を提供するために、本装置/方法は高い解像度で物体の急速な移動を記録することができるものであって、放射線の方向を変化させるための少なくとも1つのコントロールな可能な要素(2a,b,c)を有し、それが前記像形成デバイスの焦点が可動となるように適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁高周波放射線のための少なくとも1つの検出器および焦点を生成するための少なくとも1つの像形成デバイスを包含する電磁高周波放射線を用いて物体を像形成するためのデバイスに関する。
【0002】
さらに本発明は、電磁高周波放射線を用いて物体を像形成する方法に関し、当該方法は、焦点を生成する像形成デバイスを用いて少なくとも1つの検出器上に物体の像形成を行うステップ、および当該検出器を用いて像形成を検出するステップを包含する。
【背景技術】
【0003】
テラヘルツ周波数範囲(THz)は、電磁スペクトル内における最後の『未開の』周波数範囲の1つであり、言換えれば、これまでのところその周波数範囲については放射線源および受信機の獲得の困難を伴ってのみ可能性があった。したがって、その周波数範囲における電磁放射線の応用が、これまでは、たとえば電波天文学または材料科学等の研究と密接した分野に限られていた。それに関して言えば、THz周波数範囲は、次のように電磁スペクトル内のそのほかの周波数範囲の上を行く重要な利点を提供する。
‐ 多くの光学的に不透明な材料がTHz周波数範囲においては透明になる。
‐ THz放射線は、イオン化しないため、生物医学的分野において安全であると考えられている。
‐ 所定の回転、並進、またはバイブロニック分子励起が、THz周波数範囲において共振周波数を有する。
‐ THz放射線は、電荷担体動力学、特に、将来的な光子および電子構成要素における基本的な部分を演ずるナノ構造におけるそれに関して本質的な情報の項目を提供する。
‐ THz放射線は、それが呈する散乱の程度が光学周波数と比較して低く、したがって、たとえば大量の塵埃の形成を伴う産業環境における使用に特に適切である。
‐ 通信システムが考慮される場合には、より高い周波数がより大きな送信帯域幅を可能にする。
【0004】
しばしば、THz周波数範囲を像形成応用のために、特に人のチェックならびに検査を行うためのセキュリティ・テクノロジにおいてそれを利用可能にしようとする試みが行われてきた。
【0005】
特許文献1は、ホログラフィ近似されるTHz放射線を用いた隠伏物品のリアルタイム像形成のためのデバイスを開示している。円形進路にわたって垂直線形アンテナ構成が移動されて、たとえば着衣の人といった被覆された目標物の360°の円筒走査を達成する。データは合焦されていないミリ波照明の形式で存在し、それが、たとえば着衣の人を覆っている物等に到達することが可能であり、かつ着衣等の覆っている物に浸透することが可能である。ミリ波照明は、数学的に合焦されるか、または再構築されなければならず、言換えると演算によって認識可能な画像に再構築されなければならない。
【0006】
その種のデバイスには、2次元における合成開口を用いて3次元の物品の像形成をもたらすために、第1の方向において多数の検出媒体源ならびに検出器が必要とされる一方、それに加えて、それらの検出媒体源ならびに検出器の行に対して垂直な第2の方向において合成開口を用いた画像も生成できるようにするために、それらの検出媒体源ならびに検出器の配列が物体の周囲を完全に移動しなければならないという不都合がある。このことは、一方においては必要とされる多数の検出媒体源および検出器に起因して高いコストにつながり、他方においては、たとえば完全な人の記録を行うために全体の構成が360°の円にわたって一度は回転されなければならないことから、それが比較的長い測定時間も必然的に伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,859,609号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007045103号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mehrdad Soumekh “Fourier Array Imaging”, Prentice Hall, PTR, edition: January 1994, ISBN-10:0130637696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
その最先端技術との比較において、本発明は、とりわけ上記の不都合のうちの少なくとも1つを回避する電磁高周波放射線を用いて物体の像形成を行うデバイスおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、その目的が、電磁高周波放射線のための少なくとも1つの検出器および焦点を生成するための少なくとも1つの像形成デバイスを包含する電磁高周波放射線を用いて物体を像形成するためのデバイスによって達成され、当該デバイスは、ビーム方向を変更するための少なくとも1つのコントロール可能な要素を有し、それが、像形成デバイスの焦点が可動となるように適合されている。
【0011】
それに関して言えば、この出願によるところの像形成デバイスは、ある実施態様において、光学的合焦要素を伴うことなくこの問題に取組み、数学的にのみ、すなわち演算によってのみ焦点を生成する完全に合成された開口を有する像形成システムとすることが可能である。
【0012】
好ましい実施態様においては、像形成デバイスが像形成光学システム、すなわち屈折または反射要素となり、それが少なくとも1つの次元において光学像形成をもたらす。使用される電磁放射線の少なくとも1つの次元における光学システムを用いた合焦は、完全合成システムと比較したときに、像形成光学システムの焦点を物体の上で移動することによって物体の部分ごとの検出がもたらされることから、使用されることになる検出器の数を少なくとも1つの方向において有意に減じることが可能であることを意味する。
【0013】
本発明によれば、800MHzから10THzまでの周波数範囲、すなわち拡張THz周波数範囲の電磁放射線が、高周波またはTHz放射線と呼ばれる。好ましくは像形成のために使用される周波数が、30GHzから1THzまでの範囲内、特に好ましくは約100GHzである。それらの周波数においては、多様な材料の反射および透過の特性に大きな差異が生じ、それがたとえば人を監視することにおける役割を演ずる。金属、たとえば小火器または穿刺武器の表面は、この周波数範囲において高いレベルの反射率を有するが、生物学的物質、たとえばその武器を担持する者の皮膚の表面は、この周波数範囲において明確な吸収窓を有する。
【0014】
それに関して言えば、ビーム方向を変更するためのコントロール可能な要素を、像形成デバイスの焦点を向けることが可能となるように、全体として像形成デバイスおよび検出器の両方を移動する機械的な構成とすることができる。
【0015】
しかしながら好ましい実施態様では、ビーム方向を変更するためのコントロール可能な要素が光学要素、特にミラーまたはレンズとなる。それに関して言えば、本発明の実施態様においては、ビーム方向を変更するためのコントロール可能な光学要素が、像形成光学システムの構成要素である部品とすることが可能である。
【0016】
本発明によるところのデバイスは受動システムの形式、すなわち電磁放射線のための放射線源を伴わない形式とすることが可能であるが、ある実施態様においては、それが電磁放射線のための少なくとも1つの放射線源を有し、それにおいて当該放射線源が、好ましくは800MHzから10THzまでの周波数範囲、特に好ましくは30GHzから1THzまでの周波数範囲内の電磁高周波放射線のための放射線源となる。
【0017】
物体の画像を作り出すための従来的な像形成デバイスは、像形成されるべき物体の鏡面的性質から、高分解能を伴う画像を作り出すために大きな開口数を必要とする。しかしながらこの要件は、主要な画像の瑕疵さえ許容すれば、物体の走査のために迅速な移動が行われる小型の光学システムによって満たすことが可能である。その問題を克服するために本発明の実施態様は、像形成デバイス、特に像形成光学システムにおけるそれが、焦点が多数の相互に異なる場所にある多数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを形成するように適合されること、および、それに加えて、ビーム方向を変更するためのコントロール可能な要素が、相互に隔てられたビーム・パスの焦点が空間的に移動可能となるように適合されることを提供する。
【0018】
その方法においては、ある領域にわたって複数の相互に隔てられた場所において物体の走査を行うことが可能であり、それにおいては個別の相互に隔てられた領域を、小さい開口の光学システムを用いて走査することが可能であり、それに続いて画像が多数の走査された領域から組立てられる。それに関して言えば、走査される物体の領域、すなわち焦点によって検出される領域と領域の間の領域が、好ましく補間される。
【0019】
特に、それに関して、実施態様において空間的に隔てられるビーム・パスが、異なる観察方向から物体を『眺める』ように向けられていれば有利である。言換えると、空間的に隔てられるビーム・パスは、物体への入射時に互いに関して0°(180°、すなわち相互に反対の関係も含む)より大きい角度を含む。言換えると、それらは互いに平行ではない。
【0020】
実装が単純な本発明の別の実施態様においては、デバイスが、厳密に1つの検出媒体源ならびに1つの検出器を有する。それに関して言えば、電磁放射線のための複数の放射素子の相互接続された構成もまた、当該検出媒体源として解釈される。本発明による検出器は、電磁放射線のための複数の受信機の相互接続された構成とすることも可能である。
【0021】
焦点が多数の相互に異なる場所にある多数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを有する、厳密に1つの検出媒体源ならびに1つの検出器を伴う本発明によるデバイスの構成は、ある実施態様において、相互に空間的に隔てられた各ビーム・パス内に少なくとも1つのそれぞれの合焦要素を望ましく有する。
【0022】
その種の構成の代替形態においては、空間的に隔てられたビーム・パスのそれぞれが検出媒体源および検出器をそれぞれ有し、その結果としてその構成にまったく同じ数の検出媒体源および検出器が含まれるようにする。
【0023】
各ビーム・パスのためにそれぞれの合焦要素を有する実施態様の代替として、検出媒体源によって生成された高周波放射線の合焦が最初にもたらされ、その後それに続いて、複数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスに、たとえばビーム分割器によって分割されるようにできる。
【0024】
本発明のある実施態様においては、ビーム方向を変更するためのコントロール可能な要素が回転ドアのドア部材の表面であり、当該表面が、検出されるべき電磁高周波放射線を反射する。その種の構成は、回転ドアを通ってたとえば建物または建物の部分へ入る人々を検出し、検査することが、それを意識させることを必要とせずに可能にするという利点を有する。それに関して言えば、回転ドアのドア部材とともに、どのような場合においても存在し、かつ機械的に駆動される要素に、ビーム方向を変更するための要素を頼ることが可能である。別の実施態様においては、回転ドアのドア部材の反射表面が金属コーティングされて、使用される高周波放射線のための適切な反射率を提供する。
【0025】
本発明のある実施態様においては、可動光学要素が多角形の底面、好ましくは三角形の底面を有する本体であり、それの少なくとも1つの側面が使用される高周波放射線のためのミラーを形成し、かつそれが軸の周りを回転することができる。その種の構成は、回転移動によって偏向が達成されることから、物体、すなわち検出されるべき対象の表面領域の迅速な走査を可能にする。
【0026】
本発明のある実施態様においては、相互に空間的に隔てられたビーム・パスのすべてが、すべてのビーム・パスのために厳密に1つの検出媒体源ならびに1つの検出器を使用するときにビーム・パスの個別の焦点の逆反射が時間でコード化されるように、物体と検出器の間、または検出媒体源、物体、および検出器の間において相互に異なる光路長を有する。
【0027】
それに代えて、またはそれに加えて、ビーム・パスのそれぞれが少なくとも1つのそれぞれの可動光学要素を有する実施態様では、光学要素が、所定の時間的瞬間において可動光学要素のうちの1つだけが検出器に対して電磁放射線を伝達するように適合される。それの例は、3つの各ビーム・パス内に、それぞれの三角形断面の回転ミラー本体が提供される3つの相互に空間的に隔てられたビーム・パスを有する構成であり、それにおいては各ミラー本体の3つの側面のうちの1つだけがそれぞれ反射特性を有し、ミラー本体のほかの2つの側面は、それぞれ吸収性である。
【0028】
複数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを有する実施態様において、隔てられたビーム・パスのそれぞれの中に少なくとも1つの可動光学要素、好ましくは前述した類のミラー本体が提供され、かつそれに加えてさらに、低速で移動される可動ビーム偏向要素、たとえば回転ドアのドア部材の反射表面が存在する場合には、第2のビーム偏向要素の、すなわち回転ドアの遅い移動が、物体の異なる領域が連続的に走査されることを提供する一方で、ミラー本体の迅速な移動を用いて、物体の等しい数の複数の小さい表面部分を迅速に走査することが可能である。
【0029】
本発明の好ましい実施態様においては、検出器が、行を形成するように配された少なくとも2つの受信機またはピクセルを有し、それにおいてデバイスは、当該行と平行の方向において、それらが合成開口を用いて像形成をもたらす方法で受信機が動作されることが可能であるように適合されたコントロール手段または評価デバイスを有し、かつそれにおいて像形成デバイスは、この行に対して実質的に垂直な平面内においてのみ光学像形成をもたらすように適合された像形成光学システムである。
【0030】
その種のデバイスは、第1の方向または次元において像形成光学システムを用いて従来的な光学像形成をもたらし、その一方で、それと垂直の第2の方向または次元において合成開口像形成の利点を提供するハイブリッド・システムを表わす。
【0031】
合成開口像形成は、しばしば合成像形成とも呼ばれ、その原理は、大きな開口を伴うアンテナのスナップショットを、小さい開口の移動するアンテナまたは移動する物体の複数の時間的に連続する記録によって、または小さい開口の複数の静止アンテナの複数の時間的に連続する記録によって置換えるといったものである。
【0032】
その種のハイブリッド・システムの実施態様においては、本発明によるデバイスが、少なくとも第1および第2の放射素子を有する電磁高周波放射線のための検出媒体源を有し、それらが検出器の受信機とともに、放射素子および受信機を伴った行を形成するような方法で配される。その場合においては、その構成が、放射素子によって放射された放射線を用いた物体の照明を提供し、ある実施態様においては、同一の像形成デバイス、特に同一の像形成光学システムが受信機上への放射線の像形成行うべく働く。
【0033】
それに関して言えば、本発明によるハイブリッド・システムが2つの放射素子または受信機に限定されることはなく、実施態様においては、2つより多くの放射素子および/または受信機を有する。
【0034】
この出願によれば、行という用語が、放射素子および/または受信機の構成を示すために使用され、それにおいて放射素子および/または受信機は、直線に沿って配される。このことは、放射素子および/または受信機の構成が、1つの方向において、それと垂直な方向より大きく延びるものとなることを意味する。しかしながら本発明によるところの行は、行の各列が1つより多くの放射素子または受信機を有することを排除しない。このことは、たとえば2×4または4×20の放射素子または受信機の構成もまた、その構成が1つの方向において、それと垂直な方向より大きく延びるものである限り行と見なされることを意味する。
【0035】
本発明の説明が、像形成光学システムが、行に対して実質的に垂直な平面内においてのみ光学的像形成をもたらすようにそれが適合されていると言及するときは、たとえば、平行な関係にある像形成光学システム上におけるビームの入射が行に対して垂直な平面内においてだけ、それらが像形成光学システムの背後のライン上に合焦されるような方法で偏向されることを意味する。
【0036】
本発明のある実施態様においては、像形成光学システムが円筒状光学システムを有する。その種の円筒状光学システムは、理想的な意味では非点収差であり、言換えるとそれらは、円筒軸に対して垂直な平面内においてのみ光学的像形成をもたらす。その種の円筒状光学システムは、したがって、それらの円筒軸が放射素子および/または受信機の行に対して実質的に平行に延びるとき、それらが行に対して垂直な平面内に光学的像形成をもたらし、その一方でそれらが、それらの円筒軸と平行な方向においてまったく像形成効果を持たないことから、本発明によるデバイス内での使用に特に適したものとなる。
【0037】
本発明によるところの円筒状光学システムという用語は、屈折境界面または反射表面が円筒の周縁表面または中空円筒の内側表面またはそれの表面部分によって形成される光学システムを示すために使用される。それらの円筒状光学システムのための本体は、好ましくは周縁または内側表面が底面に対して垂直である直円筒を伴い、それにおいて底面または内側断面領域が好ましくは円または楕円によって形成される。放物面または双曲面を伴う光学システムもまた、本発明の意味において、それらが非点収差である限り、円筒状光学システムの中に含められる。
【0038】
ある実施態様においては、放射素子および/または受信機の行が中空円筒状光学システムの第1の焦点に配される。本発明の実施態様において、中空円筒状光学システムが本体の内側反射表面の形態を定義する楕円状内側断面領域を有する場合には、円筒状光学システムが2つの焦点を有する。
【0039】
放射素子および/または受信機が中空円筒状光学システムの反射表面に向かってポイントするように放射素子および/または受信機の円筒状の行が第1の焦点に配される場合には、放射線源によって放射される電磁放射線が楕円状ミラーによって物体上の直線(焦線)上に合焦される。行の構成に対して垂直な方向におけるその像形成デバイスの分解能が像形成効果自体によって達成され、その一方で合成開口がその行に対して平行な方向において計算されて、その合成開口がその方向における画像生成のために働く。
【0040】
ここで述べた楕円状または放物状中空ミラーの代替として、本発明の実施態様における像形成光学システムは、円筒状望遠鏡、たとえば円筒状カセグレン望遠鏡、ニュートン望遠鏡、シュミット望遠鏡、またはそれらのハイブリッド形によっても形成することができる。
【0041】
行と垂直な方向において画像を作り出すことを可能にするために、本発明の実施態様は、円筒状光学システムが円筒軸に対して平行な、すなわち放射素子および/または受信機の行に対しても平行な軸周りに枢動可能であることを提供する。その方法により、行に対して垂直な方向において物体を走査またはラスタリングすることが可能である。そのときは円筒状光学システムが、本発明に従ってビーム方向を変更するためのコントロール可能な要素を同時に表わす。
【0042】
本発明の追加の実施態様においては、電磁高周波放射線のための第1の放射素子が第1の一意的に識別可能な電磁信号を放射するべく適合され、および電磁高周波放射線のための第2の放射素子が第2の一意的に識別可能な電磁信号を放射するべく適合され、2つの受信機が、それらのそれぞれが第1および第2の信号を実質的に同時に、かつ区別可能に受信するように適合される。
【0043】
本発明の実施態様においては、個別の放射素子によって放射される電磁信号が、放射される信号の周波数を用いて一意的にエンコードされ、言換えるとそれらは、それぞれの周波数によって互いに区別される。ある実施態様においては、それぞれ放射された電磁信号に関してまったく同じ周波数を伴う2つの放射素子が存在しないことから、受信機によって受信される各信号が、単一の放射素子と一意的に関連付けされることが可能になる。
【0044】
受信機のそれぞれがこれらの第1および第2の信号を同時に受信することから、放射素子および/または受信機の行の方向において大きな開口を合成することが短い時間内に受信された信号から可能であり、行形式の画像を高いレベルの分解能で計算することができる。
【0045】
この実施態様によれば、電磁信号の周波数という表現が、それらの搬送波周波数を示すために使用され、たとえばそれらの変調周波数を示すためではない。
【0046】
説明中の周波数エンコーディングの代替として、移動無線および通信の分野から周知となるとおり、個別の放射素子によって放射される電磁信号の一意的な識別可能性が、同一搬送波周波数を用いる一意的なチャンネルのコード化によってもたらされるということも可能である。
【0047】
本発明の追加の実施態様においては、放射線源と受信機が位相ロック関係で結合されているか否かに関わりなく、第1および第2の受信機が位相ロック関係で互いに結合される。電磁信号の検出は、その方法で干渉法的にもたらされることが可能であり、それにおいては個別の受信機の間の電磁信号内の位相差を考慮に入れる干渉法アルゴリズムが画像生成のために使用される。
【0048】
それに加えて、ある実施態様においては、第1および第2の受信機が放射線源と位相結合される。
【0049】
それに関して言えば、本発明によるところのデバイスが、電磁連続波信号(CW信号)の放射および受信に特に適している。ある実施態様においては、放射された電磁連続波信号の周波数を測定時間にわたって一定に維持することができる。代替として信号の周波数を測定時間にわたって変更することができるが、受信機によって受信される個別の信号とそれぞれの放射素子の一意的な関連付けを測定時間全体にわたって可能にするために、2つの信号が同一周波数または同一の一意的に識別可能なシグニチャを伴う時間的瞬間が存在しないことを前提とする。
【0050】
ある実施態様においては、第1および第2の信号の放射もまた実質的に同時にもたらされる。信号の同時の放射にもかかわらず、個別の放射素子によって放射される電磁信号の一意的な識別可能性が功を奏して、それらを放射素子と一意的に関連付けすることができる。
【0051】
放射素子および/または受信機の行形式の構成の方向における行形式での画像の演算は、合成開口を用いる像形成プロセスおよび干渉法レーダ像形成または干渉法電波天文学に一般に使用されているとおり、アルゴリズムを用いてもたらされる。その場合、ある実施態様においては、少なくとも2つの受信機によって同時に受信される単一放射素子の信号を処理して、大きな合成開口を有する単一仮想アンテナの第1の合成画像を提供するために、合成像形成の原理が使用される。その場合においては、その合成画像の作成がまた、ほかの放射素子によって放射されるすべての追加の信号についても同時にもたらされる。
【0052】
対応する像形成アルゴリズムは、たとえば非特許文献1から周知であり、当該文献の内容は、像形成アルゴリズムに関する限りにおいてそれの全体が参照によってここに援用される。合成開口像形成としてこの中で述べられている物体の画像を作り出すためのプロセスはまた、当該文献内の別の箇所ではホログラフ像形成または干渉像形成とも呼ばれている。
【0053】
上で述べたとおりの第1および第2の放射素子を有し、それにおいて第1の放射素子が第1の周波数において第1の電磁信号を放射するべく適合され、第2の放射素子が第2の周波数において第2の電磁信号を放射するべく適合され、かつ第1および第2の周波数が互いに異なり、さらにそれぞれが第1および第2の信号を実質的に同時に受信するように適合された少なくとも2つの受信機を有する実施態様は、特許文献2(独国特許出願第102007045103.4号)の中に記述されている。特に、少なくとも1つの第1および第2の放射素子ならびに少なくとも2つの受信機の構成は、上に示した公開済みの明細書の記述の中から見つけることができるが、特にその特許請求の範囲には見つけられない。それに関して言えば、特許文献2(独国特許出願第102007045103.4号)の開示は、その全開示とともに参照によってここに援用される。
【0054】
前述した目的のうちの少なくとも1つは、電磁高周波放射線を用いる物体の像形成の方法によって達成され、当該方法は、焦点を生成する像形成デバイス、好ましくは像形成光学システムを用いて少なくとも1つの検出器上に物体の像形成を行うステップ、検出器を用いて当該像形成を検出するステップ、および像形成デバイスの焦点の場所が物体の上を空間的に移動するようにビーム方向を変更する要素をコントロールするステップを包含する。
【0055】
それに加えて、本発明による方法の実施態様は、複数の相互に異なる場所に焦点がある複数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを用いて物体の像形成を行うステップ、および相互に隔てられたビーム・パスの焦点が空間的に移動するようにビーム方向を変更するための要素をコントロールするステップを包含する。
【0056】
本発明のこのほかの利点、特徴、および可能な用途は、以下の実施態様の説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】物体の像形成のための本発明によるデバイスの第1の実施態様を示した説明図である。
【図2】物体の像形成のための本発明によるデバイスの追加の実施態様を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1に示されている実施態様は、いわゆる能動システムを包含し、言換えればそれは、高周波放射線を用いて検出されるべき物体を照明する照明構成を有するシステムであり、その後当該高周波放射線が、検出媒体源と同じハウジング1内に配される検出器によって検出される。
【0059】
検出媒体源および検出器の構成1は、複数の放射素子および受信機、すなわち検出媒体源を形成する放射素子および検出器を形成する受信機を有する。行形状の構成は、不規則な順序で相互に近接並置された関係で配される放射素子および受信機を有する。図解されている実施態様においては、行が5つの放射素子および受信機をそれぞれ有する。これは、個別の放射素子および受信機の放射および受信の位置の間に多数の空間的隔たりを提供する。したがって、kを逆波数ベクトルとするk空間内の良好なカバレッジが、1つの次元において、すなわち相互に近接並置された関係の方向において、少ない数の放射素子および受信機を用いてすでに達成されている。
【0060】
図解されている実施態様における放射素子および受信機の行形式のアレイは、第1の焦線内、すなわち3つの楕円形中空円筒状ミラー3a、3b、3cの焦点に配される。図1の略図的な像形成デバイスの平面図において、放射素子および受信機の行の形態は、図の紙面に対して垂直である。その方向において、すなわち行に対して平行な方向において、ミラー3a〜3cは湾曲されてなく、その結果、円筒状レンズの場合と同じく、行に対して垂直な平面内、言換えると図1の図の紙面に対して平行な平面内において非点収差像形成だけが提供される。
【0061】
ここでは図示していないが、これの代替となる別の実施態様においては、中空円筒状ミラー3a〜3cを、対応する円筒状レンズによって置換えることが可能であり、それにおいては物体が検出媒体源‐検出器構成1から見たときにレンズの背後に配されることになる。
【0062】
合焦ミラー3a〜3cは、それらがそれぞれ、検出媒体源の総出力の約3分の1を3つの相互に空間的に隔てられたビーム・パスに概略で分割するような方法で検出媒体源‐検出器構成1の放射ウェッジ内に配されている。検出媒体源‐検出器構成1内の放射素子および受信機の行に配置される第1の焦点のほかに、合焦ミラー3a〜3cは、それぞれ、像形成されるべき物体4上に位置することになるように配される第2の焦点または焦線8a〜8cを作り出す。
【0063】
3つの相互に空間的に隔てられたビーム・パスは、それぞれ異なる観察方向から物体4を観察する。
【0064】
図解されている実施態様においては、これらの3つの別々のビーム・パスが、それぞれ相互に異なる光路長を有するように選択される。その方法においては、物体によって反射された3つの信号成分を、それらの通過時間遅延、言換えると検出媒体源‐検出器構成の受信機における、それらの発生の時間分割関係によって区別することが可能である。
【0065】
物体の3つの部分すべてを、したがって個別の部分の情報の混合を伴うことなく、検出媒体源‐検出器構成内の同一の受信機を用いて検出することが可能である。
【0066】
3つのビーム・パス内のそれぞれに可動ミラー要素2a〜2cが配される。ミラー要素2a〜2cは、焦点または焦線8a〜8cが互いに独立して物体の上で移動されること、および物体が、それぞれの部分にわたって走査されることを可能にする。デバイスの動作においては、焦線8a〜8cによって走査される物体の各部分についてそれぞれの画像が作り出される。焦線8a〜8cの間の領域が、その後、その方法において規則に従って異なる評価基準に基づいて補間され、全体的な物体4の画像が獲得される。
【0067】
焦線8a〜8cが上を通過した物体4の表面の部分画像のそれぞれは、その場合に、図1の図の紙面と平行な平面内における『真正の』光学画像、すなわち対応する合焦要素3a〜3cによって物理的に生じた画像と、それに対して垂直な(すなわち、図1の図の紙面に対しても垂直な)方向の合成開口を用いた画像の組合わせを表わす。
【0068】
合成開口像形成は、測定された信号の振幅ならびに位相の評価、すなわち行の方向と平行な合成合焦を可能にする適切なアルゴリズムを用いてもたらされる。通過時間情報、すなわち位相ポジションに関する情報が利用可能な場合には、検出媒体源‐検出器構成1からの物体4の空間的隔たりについての情報の再構築をもたらすことも可能である。
【0069】
合成像形成が、1つの次元のみに放射素子および受信機を包含する行形式の検出媒体源‐検出器構成1を用いてもたらされるという事実が奏して、放射素子および受信機の数、ならびに物体平面内の物体4の像形成される表面を再構築するための演算パワーの両方に課せられる要求が、完全合成システムと比較したときに著しく低減される。それに加えて、中空ミラー3a〜3cを用いた像形成によって少なくとも1つの次元において信号内に著しい利得が達成されることから、2つの空間的方向において合成開口を計算する完全合成システムと比較したとき、この構成の信号対雑音比が著しく改善される。
【0070】
純粋な光学システム、すなわち2次元で像形成を行うシステムと比較すると、物体のそれぞれの部分の像形成のために使用されるミラー3a〜3cが、より高いレベルの分解能につながる著しく大きな開口数を有する。その場合においてはミラー3a〜3cの空間的に小さいサイズが功を奏し、画像の瑕疵が、ミラー3a〜3cに匹敵する開口数を有し、かつ物体4全体の走査に使用される単一の光学システムを用いて物体全体の像形成を行うときより、著しく少ないことが明らかにされた。
【0071】
図1に示されている構造を有するシステムにおいては、焦線8a〜8cが上を通過する物体表面上の領域と領域の間にある物体4の比較的大きな領域が補間されなければならないが、図2に示されている代替実施態様は、検出されるべき物体のより大きな領域にわたって通過することを可能にする。その場合において、図1の構成とまったく等しい要素は、図2においても同一の参照番号によって示されている。
【0072】
3つのビーム・パス内のそれぞれにおいて迅速に回転される図1のミラー構成2a〜2cに加えて、図2においてはさらに、共通反射可動要素、すなわち回転ドア10のドア部材6が3つのビーム・パス内に存在する。
【0073】
この種の構成は、たとえばその種の回転ドアを通って建物内へ入るときに人の検出を行うために使用することが可能である。焦線8a〜8cが、迅速に回転するミラー要素2a〜2cに起因して物体4の上を迅速に通過する間に、焦線8a〜8cが上を通過する領域が、回転ドア10によって連続的に変更される。回転ドア10のドア部材6の反射表面9a〜9cは、反射要素2a〜2cと比較してより遅い回転速度で回転するが、個別のビーム・パスの観察方向を連続的に変更する。その方法においては、焦線8a〜8cが上を通過する領域と領域の間にある補間されるべき物体4の表面の領域を縮小することが可能である。
【0074】
図1および2に示されている反射要素2a〜2cは、三角形の底面を伴う円筒状本体を包含し、その結果3つの側面を有する。ミラー本体2a〜2cは、それぞれのビーム・パスを通って反射表面が回転されるように回転軸周りに回転される。焦線8a〜8cが上を通過する各領域についての高い走査レートが、要素2a〜2cの純粋な回転移動によって達成可能である。図解されている実施態様においては、各三角形ミラー本体2a〜2cのそれぞれ1つの側面11a〜11cだけが、使用される高周波放射線を反射し、残り2つの側面は、高周波放射線に対して吸収性である。その方法においては、1つのビーム・パスだけが(図示の簡略化のために図1および2に示されている形とは異なるが)能動的となること、すなわちそのパスが電磁放射線に対して透過性となることを保証できる。またその方法においては、3つの異なる物体の部分の信号の間における追加の区別を行うことが可能である。
【0075】
ここで指摘しておくが、この説明、図面、および請求項から当業者によって理解され得るとおり、本来の開示の目的のために、すべての特徴を個別に結合すること、およびこの中に開示されているほかの特徴または特徴のグループとの任意の組合わせにおいて結合することは、たとえそれらが特定のほかの特徴に関連してだけ特定の表現で述べられている場合であっても、それが明示的に除外されているか、または技術的側面がその種の組合わせを不可能とするかまたは無意味としていない限りにおいていずれも可能である。すべての考えられる特徴の組合わせの包括的かつ明確な表現は、説明の簡潔さならびに読みやすさだけのためにここに与えられている。
【0076】
本発明は、図面および以上の説明の中で詳細に述べられ、図解されているが、それらの図解および説明は例として用いられているに過ぎず、請求の範囲によって定義されるところの保護範囲に対する限定と見なされるべきでない。本発明は、開示されている実施態様に限定されない。
【0077】
開示されている実施態様における修正は、図面、説明、および付随する請求の範囲から当業者には明らかである。請求項内の単語『有する』は、そのほかの要素またはステップを排除せず、『複数であることの非表示』は複数を排除しない。異なる請求項の中で特定の特徴が請求されているという単なる事実は、それらの組合わせを排除するものではない。請求項内の参照番号は、保護範囲に対する限定と見なされない。
【符号の説明】
【0078】
1 ハウジング、構成、検出媒体源‐検出器構成
3a 楕円形中空円筒状ミラー
3b 楕円形中空円筒状ミラー
3c 楕円形中空円筒状ミラー
4 物体
6 ドア部材
10 回転ドア
2a〜2c ミラー要素、反射要素、ミラー本体
3a〜3c ミラー、合焦ミラー、合焦要素
8a〜8c 第2の焦点、焦点または焦線、焦線
9a〜9c 反射表面
11a〜11c 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁高周波放射線を用いて物体の像形成を行うためのデバイスであって、
電磁高周波放射線のための少なくとも1つの検出器と、
焦点を生成するための少なくとも1つの像形成デバイスとを包含し、
ビーム方向を変更するための少なくとも1つのコントロール可能な要素を有し、それが前記像形成デバイスの焦点が可動となるように適合されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記像形成デバイスが、焦点が複数の相互に異なる場所にある複数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを形成するように適合されること、および、前記ビーム方向を変更する前記コントロール可能な要素が、前記相互に隔てられたビーム・パスの焦点が空間的に移動可能となるように適合されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ビーム方向を変更する前記コントロール可能な要素が、検出されるべき電磁高周波放射線について反射性の回転ドアのドア部材の表面であることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ビーム方向を変更する前記コントロール可能な要素が、可動光学要素、好ましくは回転可能または枢動可能なミラーであることを特徴とする、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記可動光学要素が多角形の底面、好ましくは三角形の底面を有する本体であり、それの少なくとも1つの側面が使用される前記放射線のためのミラーを形成し、かつそれが軸の周りで回転可能であることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記多角形の底面を有する本体の前記側面の少なくとも1つが、前記使用される高周波放射線について吸収性の材料を有することを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記空間的に隔てられたビーム・パスのそれぞれが少なくとも1つの可動光学要素を有することを特徴とする、請求項4乃至6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記空間的に隔てられたビーム・パスのそれぞれが前記検出器と前記焦点の間に光路長を有し、それにおいて前記光路長がすべて互いに異なることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記空間的に隔てられたビーム・パスのそれぞれが少なくとも1つの焦点要素を有することを特徴とする、請求項2乃至8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
電磁高周波放射線を用いて物体の像形成を行う方法であって、
焦点を生成する像形成デバイスを用いて少なくとも1つの検出器上に前記物体の像形成を行うステップと、
前記検出器を用いて前記像形成を検出するステップと、
前記像形成デバイスの前記焦点の場所が前記物体の上を空間的に移動するようにビーム方向を変更する要素をコントロールするステップとを包含する方法。
【請求項11】
さらに、
複数の相互に異なる場所に焦点がある複数の相互に空間的に隔てられたビーム・パスを用いて前記物体の像形成を行うステップと、
前記相互に隔てられたビーム・パスの複数の焦点が前記物体の上を空間的に移動するような方法で前記ビーム方向を変更する前記要素をコントロールするステップとを含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−510625(P2012−510625A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538969(P2011−538969)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065994
【国際公開番号】WO2010/063654
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511133288)ハプナー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】