電解複合研磨方法及び電解複合研磨装置
【課題】研磨後の金属膜の表面粗さを抑えることができる電解複合研磨方法及び電解複合研磨装置を提供する。
【解決手段】基板W表面の金属膜と対向電極間に電解液50を存在させて、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加し、基板W表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対移動させて、金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、電解液50は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、基板W表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする。
【解決手段】基板W表面の金属膜と対向電極間に電解液50を存在させて、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加し、基板W表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対移動させて、金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、電解液50は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、基板W表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解複合研磨方法および電解複合研磨装置に関し、特に半導体ウエハ等の基板表面に形成された導電性材料(金属)を電気化学的作用と機械的作用を組合せて研磨する電解複合研磨方法および電解複合研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線材料となる金属膜をパターン加工するのでなく、絶縁膜内に設けたトレンチやビアホール等の配線用凹部内に配線金属を埋込むようにした、いわゆるダマシンプロセスが使用されつつある。
このダマシンプロセスは、図6(b)に示すように、基板上のいわゆるLow−k材等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)62内に配線用凹部(以下「凹部」という。)63を形成し、次いで凹部63を含む層間絶縁膜62の全表面に窒化チタン等からなるバリアメタル膜(以下「バリア膜」という。)64を形成し、バリア膜64の表面に銅やタングステン等からなる金属導電膜(以下「導電膜」という。)66を形成して凹部63内に金属導電材料を埋込み、その後、凹部63の外側に形成された余分な導電膜66およびバリア膜64を除去することにより一般に行われる。これにより、基板上の凹凸が平坦化されるとともに、凹部内に前記導電膜66からなる配線が形成されるものである。
【0003】
余分な金属膜(導電膜66およびバリア膜64)の除去は、一般に、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、電解研磨、電解複合研磨等の平坦化法で行われる。
そのうち電解複合研磨は、図6(b)に示すように、基板W表面の導電膜66と対向電極(図示せず)との間に電解液50を供給し、導電膜66と対向電極との間に電圧を印加しつつ、基板W表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対移動させて、導電膜66の表面を研磨するものである。なお、「電解複合研磨」を「電解研磨」の派生技術として「電解研磨」に含めて用語を用いる場合があるが、本明細書では「電解複合研磨」の用語に統一して用いることにする。
【0004】
導電膜66と対向電極間に電圧を印加することにより導電膜が電気化学的に溶解し電解研磨が進む。一方、電解液50中に保護膜形成成分がある場合、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70を形成するため研磨が抑制される。なお層間絶縁膜62の表面に形成された凹部63に倣って、導電膜66の表面には凹部67が形成されているとすると、導電膜66の上段部(凹部67の外側)Hに形成された保護膜は研磨パッド101との当接により除去され、当該部分の導電膜66が電解液50中に溶解する。これに対して、下段部(凹部67の内側)Lの導電膜66は保護膜70により遮蔽されて電解液50中に溶解しない。このような工程を繰り返すことにより、導電膜66の表面が平坦化されるようになっている。
【0005】
ここで、導電膜66に保護膜70を形成する保護膜形成成分としては、ベンゾトリアゾール(BTA)のような腐食抑制剤が挙げられる。しかしながら、BTAのみでは保護膜70が強すぎる部分とほとんど保護膜70ができない部分ができてしまい、保護膜70の均一性や安定性を確保し難い。これを防止するため、電解液50中に保護膜形成の補助剤として、ポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性高分子化合物を含んでいるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−340600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、上述の半導体装置の配線形成プロセスにあっては、より高速で高精度な仕上げが要求されている。
ここで、上述の電解複合研磨は、研磨パッド101による保護膜70の除去と形成とを繰り返しながら研磨が進行するが、研磨が進むに従い、研磨により発生する摩擦熱等によって基板Wの温度が上昇するだけでなく、電解液の液温が上昇することも生じる。これにより、研磨後の金属膜の表面粗さが大きくなるという問題がある。これは、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一、不安定になるからであると考えられる。また、電解液中の水溶性高分子化合物成分は、液温の上昇により分解することもあり、均一な保護膜形成の補助剤としての機能が弱められることがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、研磨後の金属膜の表面粗さを抑え、平坦化特性にすぐれる電解複合研磨方法及び電解複合研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させて前記金属膜と前記対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記基板表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする。
この構成によれば、基板表面を冷却することで、研磨により発生する摩擦熱等で基板の温度が上昇することを防ぐことができるため、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことができる。そのため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記金属膜は、下層のバリア膜及び上層の導電膜を備え、前記導電膜の研磨中において前記バリア膜が露出する前までに、前記基板表面を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、研磨初期から基板が冷却されていなくても、バリア膜が露出する前までに基板表面が所定の温度に冷却されていれば、研磨終了時点での平坦化特性を確保することができるとともに、金属膜の表面粗さを抑えることができる。また、基板を冷却している時間を短縮することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記水溶性高分子化合物が溶解する温度未満に、前記基板表面の温度を制御することを特徴とする。
この構成によれば、基板表面の温度を水溶性高分子化合物が凝集沈澱する温度を超えて、溶解する温度未満に制御することで、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
基板表面温度が低過ぎると基板に接する電解液の温度が低くなり、その結果電解液中で水溶性高分子化合物が凝集沈澱してしまう。この状態で研磨すると表面が荒れたり、研磨の均一性に問題が生じたりする。基板表面の温度が高過ぎると、基板表面で水溶性高分子化合物が溶解しやすく保護膜形成が不均一、不安定になり表面荒れが大きくなる。
【0011】
調製した電解液は低温になるほど凝集沈澱しやすくなるが、調製後6時間程度は凝集沈澱しない温度以上に保つことが望ましい。基板表面温度はこの温度を目安として設定できる。
また、水溶性高分子化合物の溶解を持続させるために電解液の温度を上げる場合や基板と研磨パッドの直接の摩擦による摩擦熱やヘッド構成部材のリテーナリングと研磨パッドとの摩擦熱により間接的に基板表面温度が上がることがあるが、その場合にも基板表面においては水溶性高分子化合物が溶解せず、水溶性高分子化合物の作用が良好で表面荒れを抑制する温度に基板表面温度を保つ必要がある。
【0012】
さらには、基板表面又は研磨パッドへ電解液を供給する時に電解液の温度と基板表面の温度との温度差が5℃以内となるように、温度調整された電解液を供給することが好ましい。
この構成により、電解液との接触による基板の表面温度の上昇を防止することができる。
【0013】
また本発明の一態様は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記電解液を冷却して研磨を行うことを特徴とする。
この構成によれば、電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物が、保護膜を形成した際に安定化する状態となる。この状態で、電解液と金属膜とを反応させることで、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記電解液の冷却は前記研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことを特徴とする。
この構成によれば、電解液の冷却を、研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことで、電解液に含まれる水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防いだ上で、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0015】
また本発明の一態様は、研磨パッドと、前記基板と対向または近接させた対向電極と、金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と前記研磨パッドにヘッドに保持された前記基板を押圧する押圧機構と、前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、前記基板表面を冷却する温度制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、温度制御手段により基板表面を冷却することで、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことが可能になり、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。したがって、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記ヘッドは、冷却装置を備え、前記温度制御手段は、前記冷却装置によって前記ヘッドを冷却することを特徴とする。
この構成によれば、冷却装置によってヘッドを冷却することで、基板を直接冷却することができるため、効果的に基板表面を冷却することができる。冷却装置としては、例えばペルチェ素子を用い、冷却部をヘッドの基板と接触する部分の近傍に配置することが望ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記ヘッドは、流体が流通する流体室を備え、前記温度制御手段は、前記流体室への前記流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記流体を冷却することを特徴とする。この流体室は1つの室(空間)に限定されず、複数に区画された室であってもよく、また、室として広い空間の意味に限定されず、ヘッドの冷却として好適に配置された管路でもよい。
この構成によれば、流体を冷却しながら流体室内に供給することで、効果的に基板表面を冷却することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記流体室は、流体の流入により膨張し前記研磨パッドに対して前記基板を押圧する押圧調整手段を備え、前記温度制御手段は、前記流体室内において前記加圧流体を冷却するか、もしくは前記流体室への前記加圧流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記加圧流体を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、前記流体室内において加圧流体を冷却するか加圧流体を冷却しながら流体室内に供給することで、効果的に基板表面を冷却することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記温度制御手段は、前記研磨パッドを載置する研磨テーブル内を流通する熱媒体を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、研磨テーブル側から電解液を介して基板表面を冷却することができる。また、温度制御手段を簡単に構成することができる。
【0020】
また本発明の一態様は、研磨パッドと、金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、前記基板と対向または近接させた対向電極と、前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、前記電解液を冷却する温度制御手段と、 を有することを特徴とする。
この構成によれば、温度制御手段により電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物を腐食抑制剤とともに金属膜と反応させたときに、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0021】
本発明の好ましい態様は、前記温度制御手段は、前記電解液供給機構における前記電解液の供給口付近において前記電解液を冷却することを特徴とする。
電解液を貯留タンク内で冷却すると、水溶性高分子化合物がタンク内や供給流路において沈殿して供給不能になったり、研磨パッドや対向電極上に沈着したりして、基板上に到達できない可能性がある。これに対して、上記構成によれば、供給口付近において電解液を冷却することで冷却状態の時間を短縮することができ、電解液に含まれる水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぐことができる。したがって、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、該電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近には、前記供給口付近以外の電解液供給流路より表面積の大きい流路を有する熱交換部が形成され、前記温度制御手段は、前記熱交換部において前記電解液を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、電解液供給ノズルの供給口付近に、他の部分より表面積が大きい流路により熱交換部を形成することで、伝熱面積を確保することができる。そのため、熱交換部に流通する電解液を効率的に冷却することができる。このようにすると、供給途中での水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、前記温度制御手段は、前記電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近に設けられたペルチェ素子であることを特徴とする。
この構成によれば、電解液供給ノズルの供給口付近にペルチェ素子を設けることで、供給途中での水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様は、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記電解液供給機構は、前記電解液のうち前記水溶性高分子化合物を含む第1溶液と、成分中に凝集成分を含まない第2溶液と、を各々異なる流路から供給するとともに、供給口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを混合し、前記温度制御手段は、前記電解液のうち、少なくとも前記第2溶液を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、例えば第2溶液のみを予め冷却し、供給口付近で第1溶液と混合することで、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を効率的に冷却することができ、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0025】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記電解液を保持した状態で貯留する第1電解液タンクと、該第1電解液タンクと供給口との間において、前記第1電解液タンクから供給される前記電解液を貯留する第2電解液タンクとを備え、前記第2電解液タンクには、前記電解液を前記第1電解液タンクから供給される前記電解液の温度より低い温度に冷却する予備冷却手段が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、第1電解液タンクと供給口との間に第2電解液タンクを設け、この第2電解液タンク内で、第1電解液タンクから供給される電解液より低い温度に電解液を冷却することで、供給口付近での冷却時において、冷却負荷を低減することができる。したがって、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を効率的に冷却することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様は、電解液を冷却する温度制御手段に加えて、基板表面を冷却する手段を備えることを特徴とする。
この構成によれば、研磨パッドや基板表面へ供給後の電解液の温度上昇を防ぐことができる。また、基板表面の冷却は保護膜の均一性、安定性を向上させることができる。さらに、基板表面が冷却されていることにより、その分、供給口付近での冷却負荷を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、表面荒れを抑え、基板の平坦化特性を向上させることができるため、より高速で高精度な仕上げが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
(基板処理装置)
図1は、本発明に係る電解複合研磨装置を備えた基板処理装置の配置構成を示す平面図である。
図1に示すように、基板処理装置300は、例えば、被研磨基板である多数の基板W(図2等参照)をストックする基板カセット204を収容するロード・アンロードステージを備えている。ロード・アンロードステージ内の各基板カセット204に到達可能となるように、走行機構200の上に2つのハンドを有した搬送ロボット202が配置されている。走行機構200にはリニアモータからなる走行機構が採用されている。リニアモータからなる走行機構を採用することにより、大口径化し重量が増した基板の高速且つ安定した搬送ができる。走行機構200の延長線上には、研磨前または研磨後に基板上の膜厚測定を行うITM(In−line Thickness Monitor)224が配置されている。
【0029】
搬送ロボット202の走行機構200を挟んで、基板カセット204とは反対側に2台の乾燥ユニット212が配置されている。各乾燥ユニット212は、搬送ロボット202のハンドが到達可能な位置に配置されている。また2台の乾燥ユニット212の間で、搬送ロボット202が到達可能な位置に、4つの基板載置台を備えた基板ステーション206が配置されている。
【0030】
各乾燥ユニット212と基板ステーション206に到達可能な位置に搬送ロボット208が配置されている。乾燥ユニット212と隣接するように、搬送ロボット208のハンドが到達可能な位置に洗浄ユニット214が配置されている。搬送ロボット208のハンドの到達可能な位置にロータリトランスポータ210が配置され、このロータリトランスポータ210と基板受渡し可能な位置に、本発明の実施形態における電解複合研磨装置250が2台配置されている。
【0031】
各電解複合研磨装置250は、ヘッド1、研磨テーブル100、研磨パッド101(図2等参照)、研磨パッド101に電解液を供給する電解液供給ノズル(電解液供給部)102、研磨パッド洗浄等のための純水を供給する純水供給ノズル103、研磨パッド101のドレッシングを行うためのドレッサー218、及びドレッサー218を洗浄するための水槽222を有する、いわゆるロータリー方式の電解複合研磨装置250である。
【0032】
(電解複合研磨装置、ヘッド駆動部)
図2は、電解複合研磨装置250の概略構成図である。
図2に示すように、ヘッド1は、自在継手部10を介してヘッド駆動軸11に接続されており、ヘッド駆動軸11は、揺動アーム110に固定されたヘッド用エアシリンダ111に連結されている。ヘッド用エアシリンダ111によってヘッド駆動軸11は上下動し、ヘッド1の全体を昇降させるとともに、ヘッド本体2の下端に保持された半導体ウエハ等の基板Wを研磨テーブル100に押圧する。ヘッド用エアシリンダ111は、レギュレータRE1を介して圧縮空気源120に接続されており、レギュレータRE1によって、ヘッド用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等の流体圧力を調整することができる。これにより、基板Wが研磨パッド101を押圧する押圧力を調整することができる。
【0033】
ヘッド駆動軸11は、キー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。揺動アーム110には、回転駆動部としてのヘッド用モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してヘッド用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、ヘッド用モータ114を回転駆動することによって、タイミングプーリ116、タイミングベルト115及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びヘッド駆動軸11が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。揺動アーム110は、フレーム(図示せず)に固定支持されたシャフト117によって支持されている。
【0034】
(ヘッド)
図3はヘッド1を示す断面図であり、図4は図3に示すヘッド1の底面図である。図3に示すように、ヘッド1は、内部に収容空間を有する円筒容器状のヘッド本体2と、ヘッド本体2の下端に固定されたリテーナリング3を備えている。ヘッド本体2は、例えば金属やセラミックス等の強度及び剛性が高い材料から形成されている。リテーナリング3は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの剛性の高い樹脂又はセラミックス等の材料から形成されている。
【0035】
ヘッド本体2は、円筒容器状のハウジング部2aと、ハウジング部2aの円筒部の内側に嵌合される環状の加圧シート支持部2bと、ハウジング部2aの上面の周縁部に嵌合された環状のシール部2cとを備えている。ヘッド本体2のハウジング部2aの下面に固定されているリテーナリング3の下部は内方に突出している。なお、リテーナリング3をヘッド本体2と一体的に形成してもよい。
【0036】
ヘッド本体2のハウジング部2aの中央部上方には、上述したヘッド駆動軸11が配設されており、ヘッド本体2とヘッド駆動軸11とは自在継手部10により連結されている。この自在継手部10は、ヘッド本体2及びヘッド駆動軸11を互いに傾動可能とする球面軸受け機構と、ヘッド駆動軸11の回転をヘッド本体2に伝達する回転伝達機構とを備えており、ヘッド本体2のヘッド駆動軸11に対する傾動を許容しつつ、ヘッド駆動軸11の押圧力及び回転力をヘッド本体2に伝達する。
【0037】
球面軸受け機構は、ヘッド駆動軸11の下面の中央に形成された球面状凹部11aと、ハウジング部2aの上面の中央に形成された球面状凹部2dと、両凹部11a,2d間に介装された、セラミックスのような高硬度材料からなるベアリングボール12とから構成されている。回転伝達機構は、ヘッド駆動軸11に固定された駆動ピン(図示せず)とハウジング部2aに固定された被駆動ピン(図示せず)とから構成される。ヘッド本体2が傾いても被駆動ピンと駆動ピンは相対的に上下方向に移動可能であるため、これらは互いの接触点をずらして係合して、回転伝達機構がヘッド駆動軸11の回転トルクをヘッド本体2に確実に伝達する。
【0038】
ヘッド本体2及びヘッド本体2に一体に固定されたリテーナリング3の内部に画成された空間内には、研磨ヘッド1によって保持される半導体ウエハ等の基板Wに当接する弾性パッド4と、環状のホルダーリング5と、弾性パッド4を支持する概略円盤状のチャッキングプレート6とが収容されている。弾性パッド4は、その外周部がホルダーリング5と該ホルダーリング5の下端に固定されたチャッキングプレート6との間に挟み込まれており、チャッキングプレート6の下面を覆っている。これにより、弾性パッド4とチャッキングプレート6との間には空間が形成されている。
【0039】
ホルダーリング5とヘッド本体2との間には弾性膜からなる加圧シート7が張設されている。加圧シート7は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。加圧シート7は、一端をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込み、他端をホルダーリング5の上端部5aとストッパ部5bとの間に挟み込んで固定されている。ヘッド本体2、チャッキングプレート6、ホルダーリング5、及び加圧シート7によって、ヘッド本体2の内部に流体室(圧力室)21が形成されている。図4に示すように、流体室(圧力室)21には、チューブやコネクタ等からなる流体流路31が延設されており、流体室(圧力室)21は、流体流路31内に設置されたレギュレータRE2を介して圧縮空気源120に接続されている。
【0040】
なお、加圧シート7がゴムなどの弾性体からなり、加圧シート7をリテーナリング3とヘッド本体2との間に挟み込んで固定した場合には、弾性体としての加圧シート7の弾性変形によってリテーナリング3の下面において好ましい平面が得られなくなってしまう。したがって、これを防止するため、この例では、別部材として加圧シート支持部2bを設けて、加圧シート7をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込んで固定している。
【0041】
弾性パッド4とチャッキングプレート6との間に形成される空間の内部には、流体室が形成され、弾性パッド4に当接する当接部材としてのセンターバッグ(中心部当接部材)8及びリングチューブ(外側当接部材)9が設けられている。この例においては、図3及び図4に示すように、センターバッグ8は、チャッキングプレート6の下面の中心部に配置され、リングチューブ9は、このセンターバッグ8の周囲を取り囲むようにセンターバッグ8の外側に配置されている。なお、弾性パッド4、センターバッグ8及びリングチューブ9は、加圧シート7と同様に、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0042】
図3に示すように、チャッキングプレート6と弾性パッド4との間に形成される空間は、流体室として上記センターバッグ(エアバッグ)8及びリングチューブ(エアバッグ)9によって複数の空間に区画されており、センターバッグ8とリングチューブ9の間には流体室(圧力室)22が、リングチューブ9の外側には流体室(圧力室)23がそれぞれ形成されている。
【0043】
センターバッグ8は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜81と、弾性膜81を着脱可能に保持するセンターバッグホルダー(保持部)82とから構成されている。センターバッグホルダー82にはねじ穴82aが形成されており、このねじ穴82aにねじ55を螺合させることにより、センターバッグ8がチャッキングプレート6の下面の中心部に着脱可能に取り付けられている。センターバッグ8の内部には、弾性膜81とセンターバッグホルダー82とによって中心部流体室(圧力室)24が形成されている。
【0044】
同様に、リングチューブ9は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜91と、弾性膜91を着脱可能に保持するリングチューブホルダー(保持部)92とから構成されている。リングチューブホルダー92にはねじ穴92aが形成されており、このねじ穴92aにねじ56を螺合させることにより、リングチューブ9がチャッキングプレート6の下面に着脱可能に取り付けられている。リングチューブ9の内部には、弾性膜91とリングチューブホルダー92とによって中間部流体室(圧力室)25が形成されている。
【0045】
流体室(圧力室)22,23、中心部流体室(圧力室)24及び中間部流体室(圧力室)25には、チューブやコネクタ等からなる流体流路33,34,35,36がそれぞれ連通されており、各流体室(圧力室)22〜25は、それぞれの流体流路33〜36内に設置されたレギュレータRE3,RE4,RE5,RE6を介して、供給源としての圧縮空気源120に接続されている。なお、上記流体流路31,33〜36は、ヘッド駆動軸11の上端部に設けられたロータリジョイント(図示せず)を介して、各レギュレータRE2〜RE6に接続されている。
【0046】
上述したチャッキングプレート6の上方の流体室(圧力室)21及び上記流体室(圧力室)22〜25には、各流体室(圧力室)に連通される流体流路31、33〜36を介して流体(空気又は液体)の供給、又は大気圧や加減圧が施されるようになっている。図2に示すように、流体室(圧力室)21〜25の流体流路31、33〜36上に配置されたレギュレータRE2〜RE6によって、それぞれの流体室(圧力室)に供給される流体の圧力を調整することができる。これにより各流体室(圧力室)21〜25の内部の圧力を各々独立に制御するか、または大気圧や減圧にすることができる。
【0047】
このように、レギュレータRE2〜RE6によって各流体室(圧力室)21〜25の内部の圧力を独立に可変とすることにより、弾性パッド4を介して基板Wを研磨パッド101に押圧する押圧力を基板Wの部分(区画領域)毎に調整することができる。
また図3に示すように、チャッキングプレート6から流体室(圧力室)22,23に複数の凸部42が立設されている。凸部42の先端は、開口部41を通って弾性パッド4の表面に露出している。凸部42の先端面から流体流路43が延設され、図2に示す真空源121に接続されている。これにより、図3に示す凸部42の先端面で、基板Wを真空吸着しうるようになっている。
【0048】
(研磨テーブル、研磨パッド)
図5(a)は電解複合研磨装置の研磨テーブルを概略的に示す縦断面図である。研磨テーブル100の上面には円板状の支持部材254が固定されている。支持部材254は、導電性材料(金属、合金、導電性プラスチックなど)で構成されている。この支持部材254の上面に研磨パッド101が取り付けられており、研磨パッド101の上面が研磨面となっている。研磨テーブル100は回転機構(図示せず)に連結されており、これにより研磨テーブル100は、支持部材254および研磨パッド101と一体に回転可能となっている。
【0049】
電解液供給ノズル102は、研磨パッド101の半径方向に沿って延びている。電解液供給ノズル102の先端には、電解液の供給口102aが設けられている。この供給口102aは研磨パッド101の中央部の上方に位置しており、電解液供給源(図示せず)から電解液供給ノズル102を通じて電解液が研磨パッド101の中央部に供給される。研磨パッド101が回転すると、電解液は外側に向かって濡れ広がり、ヘッド1と研磨パッド101との間および研磨パッド101の複数の貫通孔101aに充填される。
【0050】
支持部材254は、電源252の負極に接続されており、第1電極(カソード)、つまり基板Wの対向電極として機能する。電源252から延びる配線と支持部材(カソード)254との電気接点には、コロ、ブラシなどが用いられる。例えば、図5(a)に示すように、支持部材254の側面に電気接点262を接触させることができる。電気接点262は、比抵抗が小さく軟質な金属、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどで形成することが好ましい。
【0051】
研磨パッド101の側方に位置して、電源252の正極に接続された第2電極(給電電極)264が配置されている。ヘッド1は、基板Wの一部を研磨パッド101の側方にはみ出させた状態で基板Wを研磨面に接触させるようになっており、基板Wの下面が第2電極264に接触するようになっている。これにより、第2電極264から基板Wの導電膜に電圧が印加される。そして、カソードとしての支持部材254と、アノードとしての基板W上の導電膜は、研磨パッド101の貫通孔101aに充填された電解液を通して電気的に接続される。なお、リテーナリング3の一部を導電性の物質として基板Wと電気接点をとれるようにすれば、第2電極264からリテーナリングを介して基板Wの導電膜に電圧を印加することも可能である。導電性物質は電解液に対する耐薬品性、電解複合研磨の際の電解反応による変質、研磨パッドと接触する場合には耐磨耗性等を考慮して選択しなければならない。
【0052】
図5(b)は、他の電解複合研磨装置の研磨テーブルを概略的に示す縦断面図である。この電解複合研磨装置250の支持部材254は、円板状のベース254bと、このベース254bの上面を覆う蓋254aとから基本的に構成されている。上述したように、支持部材254はカソード(第1電極)として機能するため、蓋254aおよびベース254bの少なくとも一方は導電性材料から構成される。
【0053】
支持部材254の蓋254aには、研磨パッド101の上記貫通孔101aと同一位置に複数の連通孔255が形成されている。さらに、蓋254aの下面には、これら連通孔255を互いに連通させる複数の連通溝256が形成されている。なお、ベース254bの上面に連通溝を設けてもよい。研磨パッド101の中央部には、研磨パッド101を上下に貫通する第1の電解液受け口258Aが形成されている。さらに、蓋254aには、第1の電解液受け口258Aと同一位置に第2の電解液受け口258Bが形成されている。第2の電解液受け口258Bは上記複数の連通溝256に連通している。
【0054】
このような構成により、電解液供給ノズル102の供給口102aから供給された電解液は、第1の電解液受け口258A、第2の電解液受け口258B、連通溝256、および連通孔255をこの順に流れて、貫通孔101aに到達する。そして、貫通孔101aの内部には、研磨面に向かう電解液の上向きの流れが形成され、電解液が研磨面に供給されるようになっている。
【0055】
(冷却手段)
ここで、図2,3に示すように、上述した流体室(圧力室)22〜25と、この流体室(圧力室)22〜25内に流体を供給するレギュレータRE2〜6とを接続する流体流路33〜36には、冷却手段(温度制御手段)28が設けられている。この冷却手段28は、流体流路33〜36内を流れる流体と熱交換を行うことで、流体を冷却して冷却媒体として流体室(圧力室)22〜25内に供給するものであり、後述する研磨工程において被研磨面である基板Wの表面を冷却するものである。なお、冷却手段は、流体室に供給する流体の供給源である流体貯留タンク(図示せず)に設けるような構成にしてもよい。
【0056】
そして、冷却手段28を介して流体室(圧力室)22〜25内に供給された冷却媒体は、弾性パッド4を挟んで基板Wの裏面と熱交換され、基板Wの表面を冷却(温度制御)できるようになっている。なお、流体室(圧力室)に供給される冷却媒体としての流体は、気体として空気(ドライエアー)や窒素ガス、ヘリウムガス、代替フロン、二酸化炭素等、液体として水、エチレングリコール−水混合液、アルコール−水混合液等が挙げられる。冷却媒体としてはコストや環境面を考慮すると、空気や水が好ましい。なお、図2では流体室に供給される冷却媒体を空気とした場合について示しているが、空気でない気体の場合は、圧縮空気源120を冷媒となる気体に対応する圧縮気体源に置換すればよく、液体の場合は、圧縮空気源120を液体供給に対応する液体用ポンプに置換すればよい。
【0057】
また、図2、3には各流体室(圧力室)への流体の供給(流入側)として流体流路33〜36は図示されているが、流体の排出(流出側)としての流路は図面を見やすくするために図示していない。流体の排出(流出側)の流路は、各流体室(圧力室)毎に配管を設置することが好ましく、また、ヘッドの部位毎にまとめて集合配管としてもよい。さらに、各配管には排出(流出側)の流路の背圧を調整するための背圧弁(図示せず)を設置してもよい。なお、流体室は1つの室(空間)に限定されず、複数に区画された室であってもよく、また、室として広い空間の意味に限定されず、ヘッドの冷却として好適に配置された管路でもよい。
また、基板Wの表面温度をモニタするため、赤外線放射温度計等の非接触式の温度センサを設けることが好ましい。例えば、研磨テーブル100内に埋設された放射温度計により研磨パッド101に設けた穴を介して、基板Wの表面温度を測定すればよい。温度センサによりモニタした情報をフィードバックさせることで、基板Wの温度を正確に制御することができる。
【0058】
(電解複合研磨方法)
次に、本実施形態に係る電解複合研磨方法の研磨工程について説明する。
図6は、電解複合研磨の工程図である。最初に、本実施形態の研磨対象である基板Wの膜構成について説明する。
図6(a)に示すように、シリコン等からなる基板Wの表面に、SiO2、SiOF、SiOCやLow−k材(低誘電率絶縁膜)等の絶縁材料からなる層間絶縁膜62が形成されている。層間絶縁膜62の表面には、配線形成用の凹部63が形成されている。この凹部63を含む層間絶縁膜62の表面には、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウムおよび/またはそれらの合金等からなるバリア膜64が、厚さ10nm程度に形成されている。バリア膜64は、次述する導電膜66の金属材料が基板Wに拡散するのを防止するため、また導電膜66と層間絶縁膜62との密着性を向上させるために設けられている。バリア膜64の表面には、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、タングステン、ルテニウムまたはそれらの合金等の導電性金属材料からなる導電膜66が、厚さ500〜1000nm程度に形成されている。この導電膜66を電解めっき法で形成する場合には、電解めっきの電極となるシード膜(図示せず)をバリア膜64の表面に形成しておく。なお層間絶縁膜62の凹部63に倣って、導電膜66の表面には、高さ300nm程度および幅100μm程度の凹部67が形成されている。なおここに示した、配線形成用凹部の寸法は一例として示したものである。
【0059】
層間絶縁膜62の凹部63に充填された導電膜66が金属配線として利用されるため、凹部63の外側に形成された導電膜66およびバリア膜64は不要である。なお層間絶縁膜62を介して複数の配線を積層するため、導電膜66およびバリア膜64が除去された状態で、凹部63の導電膜66の表面と層間絶縁膜62の表面とが同一平面上に配置されて基板Wの表面が平坦化されている必要がある。
そこで、余分な金属膜(導電膜66およびバリア膜64)を電解複合研磨により除去し、平坦化する。電解複合研磨では、基板Wの表面の金属膜と対向電極間に電解液50を存在させて電圧を印加し、基板Wの表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対(回転)移動させて、金属膜の表面を研磨するようにしている。
なお、本実施形態では、導電膜66として銅を用いる場合について説明するが、研磨の対象となる導電性物質としては、上述した物質、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0060】
本実施形態の電解複合研磨方法では、導電膜66の研磨を研磨の進行による膜の厚さに合わせてバルク研磨及びクリア研磨の2段階の研磨で行っている。次いでバリア研磨の工程となる。
具体的には、まず図6(b)、(c)に示すように、バルク研磨として、電解液50を研磨パッド101上に供給しながら導電膜66を所定厚さまで研磨する。
【0061】
電解複合研磨は、導電膜66へ印加される電圧により生じる電解反応を利用して研磨するものであるが、導電膜66の電解反応と同時に、電解液50に含まれる保護膜形成成分と導電膜66とが反応して、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70が形成される。導電膜66の上段部H(凹部67の外側)に形成された保護膜70は、研磨パッド101との当接により除去される。これにより、上段部Hの導電膜66が電解液50に溶解して除去される。これに対して、下段部L(凹部67の内側)の導電膜66は、保護膜70に遮蔽されて電解液50に溶解しない。以上により、導電膜66の段差が解消されて平坦化されるようになっている。
【0062】
電解液50は、金属膜と反応する保護膜形成成分として、ベンゾトリアゾール(BTA)のような腐食抑制剤を含んでいる。しかしながら、BTAのみでは保護膜70が強すぎる部分とほとんど保護膜70ができない部分ができてしまい、保護膜70の均一性や安定性を確保し難い。これを防止するため、電解液50中に保護膜形成の補助剤として、ポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性高分子化合物を含んでいる。具体的な電解液として、例えば1mol/Lマロン酸+1.4mol/Lメタンスルホン酸+0.3%ベンゾトリアゾール+0.6%ポリアクリル酸アンモニウム(平均分子量:10000)+0.7%メタノール+0.05%(界面活性剤 MX2045L 花王製)に0.05%のシリカ砥粒を加え、pH調整剤でpH4.5に調整したもの等が好適に用いられる。
【0063】
ところで、上述のように電解複合研磨では、研磨により発生する摩擦熱等によって基板Wの温度が上昇し、金属膜の表面粗さが大きくなったり、段差解消性が低下したりする。これは、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一、不安定になるからであると考えられる。その結果、基板W表面の平坦化特性が低下したり、導電膜の過剰研磨、いわゆるディッシングが生じたりするという問題がある。また、基板Wと研磨パッドの摩擦による熱によって研磨パッドが変形するという問題がある。
【0064】
ここで、本実施形態では、研磨工程に際して、基板Wの表面を冷却しながら研磨を行う。具体的には、バルク研磨開始時に上述の冷却手段28により、圧力室22〜25内に、レギュレータRE2〜6(何れも図2等参照)を介して冷却された冷却媒体を供給し、基板Wを冷却しながら研磨を行う。上述したように、電解液50に含まれる保護膜形成成分と導電膜66とが反応して保護膜70が形成され、保護膜形成の補助剤である水溶性高分子化合物により保護膜70が均一化されている。基板Wを冷却しながら研磨を行うことで、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物の溶解を防止することが可能になり、保護膜70形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。
【0065】
そして、図6(d)に示すように、クリア研磨として、凹部63の外側の導電膜66を全て研磨し、バリア膜64を露出させる。なお、クリア研磨に際しても、基板Wの冷却を継続する。
最後に、図6(e)に示すように、バリア研磨として、凹部63の外側のバリア膜64を全て研磨し、凹部63内に導電膜66からなる配線が形成されることとなる。
【0066】
本願の発明者は、基板Wの表面、つまり被研磨面の温度を変化させて研磨を行った場合の、表面粗さと研磨速度への影響について実験を行った。図7,8は、電解液の温度が20℃の場合における表面粗さ及び研磨速度を1として正規化したグラフである。なお、本実験では、都合上基板W上に供給された電解液50の温度を測定しているが、この温度は基板Wの表面における被研磨面の温度と等しくなっている。
【0067】
図7に示すように、電解液50の温度が上昇するにつれ、具体的には30℃より高くなると、表面粗さが増加することがわかる。これは、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一になるからであると考えられる。その結果、基板Wに研磨されやすい部分と、研磨されにくい部分が生じて研磨が行われることとなるため、基板Wの表面粗さが大きくなってしまう。
【0068】
また、電解液50の供給時の温度が基板Wの表面温度よりも大幅に高いと、電解液50から基板Wに熱が移動し、基板Wの表面温度が上昇する虞がある。そのため、研磨パッド101への供給時における電解液50の温度と基板W表面の温度との温度差を、5℃以内に設定することが好ましい。このように構成することで、電解液50との接触により基板Wの表面温度が上昇するのを防止することができる。
【0069】
しかしながら、電解液50の液温が低過ぎると、電解液50に含まれる水溶性高分子化合物が凝集して沈殿が起こりやすいという問題がある。この状態で研磨すると表面が荒れたり、研磨の均一性に問題が生じたりする。基板W表面の温度が高過ぎると、基板W表面で水溶性高分子化合物が溶解しやすく保護膜形成が不均一、不安定になり表面荒れが大きくなる。
表1に電解液の液温と、その温度での放置時間における沈殿物の有無を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、電解液50の液温が35℃の場合、24時間放置しても沈殿は生じなかった。しかしながら、電解液50の液温を低下させると、25℃の場合では24時間で沈殿が生じ、17℃の場合、8時間で沈殿が生じた。この結果から、電解液50の液温を長時間低温に維持することは難しいため、基板Wの表面を直接冷却して温度を設定することが好ましい。電解液50は低温になるほど凝集沈澱しやすくなるが、調製後6時間程度は凝集沈澱しない温度以上に保つことが望ましい。基板W表面温度はこの温度を目安として設定できる。
【0072】
また、水溶性高分子化合物の溶解を持続させるために電解液50の温度を上げる場合や、基板Wと研磨パッド101の直接の摩擦による摩擦熱やヘッド1の構成部材であるリテーナリング3と研磨パッド101との摩擦熱により間接的に基板Wの表面温度が上がることがある。その場合にも基板W表面においては水溶性高分子化合物が溶解せず、水溶性高分子化合物の作用が良好で表面荒れを抑制する温度に基板Wの表面温度を保つ必要がある。
【0073】
したがって、基板Wの温度設定は、基板Wの温度の影響で電解液50中の水溶性高分子化合物が凝集して沈殿する温度を超えて、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が溶解する温度未満、すなわち10℃以上30℃以下に設定することが好ましい。さらに、基板Wの表面における温度ムラ等を考慮すると、10℃以上25℃以下、より好ましくは15℃以上25℃以下に設定することが好ましい。これにより、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好な状態に維持させることができる。
【0074】
このように、本実施形態では、研磨工程時において基板Wの表面を冷却して温度を制御することで、研磨により発生する摩擦熱等で基板Wの温度が上昇することを防ぐことができるため、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことができる。そのため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜70の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑え、段差解消性に優れ、ディッシングを抑制した上で研磨を行うことができる。したがって、基板Wの平坦化特性を向上させることができ、高速で高精度な仕上げが可能となる。
また、基板Wが温度上昇することがないので、研磨パッド101の変形も防ぐことができる。
【0075】
ところで、研磨方法として電解複合研磨の他にCMPがある。CMPは、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用または研磨液に含まれる化学成分の作用によって、研磨剤と研磨対象物(基板)の相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る技術である。このように化学的作用を主体として研磨を行うCMPでは、温度依存性が高く、温度が変化することで、表面粗さ、研磨速度ともに影響が生じることが知られている。また研磨速度を向上させるため、基板と研磨パッドとの接触面圧を増加させると、配線表面にディッシングが発生することになる。
【0076】
これに対して本実施形態のような電解複合研磨では、図8に示すように、温度が低くても研磨速度への影響は少なく、各温度ともにほぼ変わらない値を示している。つまり、電解複合研磨では、基板表面の導電膜に電解液を接触させ、導電膜に電圧を印加することで行われる電子の授受により溶解や酸化反応等が起こり、研磨と保護膜形成を繰り返しながら進行していくため、研磨速度の温度依存性は小さく、印加電圧の影響が大きいと考えられる。したがって、電解複合研磨では、基板の表面を冷却して温度を一定に制御することで表面粗さを抑制できる一方、研磨速度を電圧で調整することで、表面粗さと研磨速度とを各々独立して調整することができる。そのため、CMPに比べ高速で、かつ高精度な研磨が可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態における冷却手段の構成について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
上述の実施形態では、図2、3に示すように、流体室(圧力室)22〜25内に流体を供給するレギュレータRE2〜6を接続する流体流路33〜36に流体の冷却手段を設ける構成としたが、例えば流体流路33〜36ではなく、流体室(圧力室)22〜25内に流体の冷却手段を設ける構成としてもよい。冷却手段には、冷却装置として例えばペルチェ素子を用いることで構成が容易になるため好ましい。
この場合、流体室(圧力室)22〜25に供給された加圧流体を流体室(圧力室)22〜25内で直接冷却することができるため、効率的に基板Wを冷却することができる。
また、流体室(圧力室)22〜25への流体の調整による基板の押圧調整機構が不要の場合には、流体流路33〜36は不要である。そして、ペルチェ素子等の冷却装置を好適に配置することによって冷媒としての流体を不要とすることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図9は、本発明に係る第3実施形態の冷却手段の説明図である。この電解複合研磨装置の冷却手段は、上述したヘッド側から基板を冷却するものとは異なり、研磨テーブル側から基板の冷却を行うものである。
【0079】
図9に示すように、研磨テーブル100には、内部に冷却媒体を流通させる冷却空間80が形成されている。この冷却空間80は、冷却媒体供給配管90を介して冷却媒体供給源(図示せず)に接続されている。そして、冷却媒体は冷却媒体供給源から冷却媒体供給配管90を通じて冷却空間80に供給される。これら、冷却空間80及び、冷却媒体供給配管90、冷却媒体供給源が冷却手段95として構成されている。この構成によれば、研磨テーブル100から電解液を介して基板Wの表面を冷却することができるため、効率的に基板Wの表面を冷却することができる。また、ヘッド側に冷却手段を設ける場合に比べ、簡単に構成することができる。
【0080】
なお、上述した冷却手段の構成の他に、以下のような態様も可能である。
例えば、研磨パッドにペルチェ素子等の冷却手段を設けたり、研磨パッド内を冷却媒体が流通するように、冷却媒体供給配管を研磨パッド内に設ける構成として、基板を冷却したりしてもよい。また、研磨パッドに直接冷却媒体を噴出するようにしてもよい。この場合、冷却媒体と電解液の供給位置が近いと、電解液が希釈されたり、電解液が飛散したりする懸念があるため、テーブルの回転方向、基板ホルダと電解液の供給位置を考慮して冷却媒体の噴出位置を決める。
【0081】
また、電解複合研磨装置全体を温度制御された空間内に収容し、その空間内を冷却することにより基板を冷却することも可能である。この場合、電解複合研磨装置全体を収容することで、電解液の冷却と基板表面の冷却とを同時に行うことができるため、電解液の供給温度と基板の表面温度との差も小さくなる。
【0082】
また、リテーナリングに接する流路を設け、この流路に冷却された流体を流して、リテーナリングが冷却されることにより基板が冷却するようにしても構わない。
また、ヘッド側に熱伝導性に優れた放熱フィンを取り付けるような構成としてもよい。
なお、上述した構成を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【0083】
(第4実施形態)
次に、図10に基づいて、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、図2のA部に相当する拡大図である。上述の実施形態においては、基板表面を冷却しながら研磨を行っていたが、本実施形態では電解液を冷却する点で第1〜3実施形態と相違している。
【0084】
図10に示すように、本実施形態の電解液供給ノズル310は、先端の供給口310a付近において、熱交換部(温度制御手段)311が形成されている。この熱交換部311は、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成して伝熱面積を増加させたものである。ノズルを螺旋状に形成した熱交換部311の周囲を覆うように、冷却手段(温度制御手段)312が設けられている。この冷却手段312は、供給口313と、排出口314とを有し、図示しない供給源から供給される冷却媒体が循環するように構成されている。これにより、熱交換部311を流通する電解液が冷却され、研磨パッド101に供給される。
【0085】
このように本実施形態によれば、電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物を腐食抑制剤とともに金属膜と反応させたときに、水溶性高分子化合物による保護膜70形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜70形成成分によって形成される保護膜70の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0086】
また、供給口310a付近に冷却手段312を設けることで、電解液を貯留するタンクや供給流路における水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぐことができるため、水溶性高分子化合物による保護膜70形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができ、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
さらに、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成して熱交換部311を構成することで、伝熱面積を確保することができる。そして、この熱交換部311に電解液を流通させることで、電解液を効率的に冷却することができる。なお、本実施形態では、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成したが、電解液供給ノズルにひだを形成したり、電解液の流路を細く分割したりする構成等、電解液供給ノズルの供給口付近における伝熱面積を向上させるような構成であれば、適宜設計変更が可能である。
【0087】
(第5実施形態)
次に、図11に基づいて、本発明の第5実施形態について説明する。図11は、図2のA部に相当する拡大図である。
図11に示すように、本実施形態の電解液供給ノズル320は、電解液の供給部320a付近に複数のペルチェ素子(温度制御手段)321が設けられている。図11ではペルチェ素子に通電するための電源等は省略している。これらペルチェ素子321は、供給部320a付近において、電解液供給ノズル320の周囲を覆うように設けられている。
【0088】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、電解液供給ノズル320の供給口320a付近にペルチェ素子321を設けることで、電解液供給ノズル320の形状を変更することなく、電解液を効率的に冷却することができる。したがって、装置コストも低減することができる。
【0089】
(第6実施形態)
次に、図12に基づいて、本発明の第6実施形態について説明する。図12は、第6実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
図12に示すように、本実施形態の電解液供給機構330は、第1溶液タンク331と、第2溶液タンク332とを備えている。
【0090】
第1溶液タンク331は、電解液に含まれる成分のうち、水溶性高分子化合物を含む第1溶液を貯留するものである。
第2溶液タンク332は、電解液に含まれる成分のうち、水溶性高分子化合物を含まない第2溶液を貯留するものである。第2溶液タンク332には、図示しない冷却手段(温度制御手段)が設けられており、第2溶液タンク332に貯留された第2溶液が冷却されるように構成されている。
【0091】
各溶液タンク331,332には、電解液供給流路333,334が接続されている。各電解液供給流路333,334は、合流し、一本の供給流路335として延出している。したがって、各溶液タンク331,332から各電解液供給流路333,334を流通して供給される溶液は、供給流路335において混合され、研磨パッド101に供給されるようになっている。合流部には効果的に混合するための混合器を用いても良い。なお、第1溶液タンク331内に貯留されている第1溶液の温度は、20℃以上、好ましくは25℃以上に設定する。一方、第2溶液タンク332内に貯留されている第2溶液の温度は、第1溶液と第2溶液との混合後の電解液の温度が10〜25℃、好ましくは15〜20℃になるように設定する。
【0092】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、第2溶液のみを予め冷却し、供給部335で第1溶液と混合することで、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を供給することができる。なお、本実施形態の供給部335に、上述した熱交換部311(図10参照)や、ペルチェ素子321(図11参照)を設ける構成としてもよい。これにより、電解液をより効果的に冷却することができる。
【0093】
(第7実施形態)
次に、図13に基づいて、本発明の第7実施形態について説明する。図13は、第7実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
図13に示すように、本実施形態の電解液供給機構340は、電解液を貯留する第1電解液タンク341と、第2電解液タンク342とを備えている。
【0094】
第1電解液タンク341は、電解液を、例えば24時間程度凝集の起こらない温度、つまり25℃より高い温度(表1参照)に保持した状態で貯留するものである。第2電解液タンク342は、第1電解液タンク341と流路343を介して接続されている。第2電解液タンク342には、図示しない予備冷却手段が設けられており、電解液を数時間凝集しない温度(例えば17℃(表1参照))に保持した状態で貯留している。そして、第2電解液タンク342には、電解液供給流路344を通じて電解液供給ノズルが接続されており、電解液供給ノズルを流通して研磨パッド101へ電解液が供給されるように構成されている。
なお、本実施形態においては、電解液供給ノズルから研磨パッド101への電解液の供給口(不図示)付近において、上述した熱交換部311(図10参照)や、ペルチェ素子321(図11参照)を設けることが好ましい。
【0095】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、第1電解液タンク341内で、電解液を25℃より高い温度に保持し、その後第2電解液タンク342内において、第1電解液タンク341内で保持された温度より低い温度に冷却することで、電解液を徐々に冷却していくことができる。そのため、電解液供給ノズルの供給口付近において、冷却を行う場合の冷却負荷を低減することができる。したがって、電解液を効率的に冷却することができる。
【0096】
なお、電解液を冷却する構成としては、上述した第4〜第7実施形態の他に、以下のように電解液を供給後に冷却する構成も可能である。
例えば、上述した第3実施形態(図9参照)の構成を用い、研磨テーブル100を予め冷却する。研磨テーブル100を冷却した後、研磨パッド101上に電解液を供給し、電解液を冷却する。そして、電解液が充分に冷却された後に、研磨を開始させるようにしてもよい。また、研磨前であれば、研磨テーブル101や、研磨パッド102に対して、冷却された水や窒素ガス等の冷媒を直接噴きつけるように構成してもよい。この場合、研磨開始時に研磨パッド102の表面に水等の冷媒が残留すると、電解液濃度が薄くなるため、冷媒を取り除くか、電解液と置換してから研磨を行う必要がある。
【0097】
また、上述したドレッサー218(図1参照)に冷却手段を設け、ドレッサー218により研磨パッド101を冷却するような構成としてもよい。この場合、研磨開始前のドレスに使用したり、研磨中にドレスを行ったりする場合(in−situドレス)には、研磨中も冷却可能である。
また、上述した基板の冷却方法と電解液の冷却方法を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0098】
また、他の電解複合研磨方法として以下のような方法を用いることも可能である。
研磨の最初から基板の冷却を行うのではなく、バルク研磨の初期は常温で研磨し、研磨途中で冷却を開始し、クリア研磨開始直前に基板が所定温度に冷却されていればよい。この場合、渦電流センサ等の膜厚センサを用いて導電膜が所定の厚さにまで研磨されたことを検出し、冷却を開始する。このように構成しても、研磨終了時点での平坦化特性を確保することができるとともに、金属膜の表面粗さを抑えることができる。また、基板の冷却時間を短縮することができるため、製造効率を向上させることができる。膜厚が所定の厚さまで研磨されたことを検知する方法は渦電流センサの他に、光学式モニタ、蛍光X線による膜厚測定、電気抵抗の変化をモニタリングする方法等がある。
【0099】
(膜厚センサ)
ここで、上述した各膜厚測定方法について説明する。
まず渦電流センサによる方法とは、各部の膜厚による合成インピーダンスの変化を利用して膜厚を検出するものであり、研磨テーブル内に埋設された渦電流センサから高周波を導電膜に印加することで膜厚を測定するものである。したがって、導電膜のような膜厚の厚いものでも高精度な膜厚測定が可能となる。
【0100】
光学式モニタによる測定とは、光干渉により反射強度が変化することを利用するものであり、残留膜厚が所定膜厚以下になると、反射光が膜厚に対して変化することを利用する。なお、使用する光の波長により変化開始点が異なるため、波長は、被研磨材料に対して適宜選択する。光学式モニタによる測定方法としては、研磨テーブル内に埋設された光源により研磨パッドの貫通孔を通して測定光を照射する方法や、基板を研磨テーブル外にオーバーハングさせた状態で測定する方法がある。
【0101】
蛍光X線による測定とは、1次X線を測定対象に照射した際に発生する蛍光X線の強度が膜厚に対して変化することを利用するものであり、研磨中において研磨テーブル内に埋設されたX線源から1次X線を導電膜に照射することで測定する。
研磨中の電圧・電流値のモニタリングによる膜厚の測定は、測定対象の導電膜の膜厚に応じて電気抵抗が変化することを利用する。この場合、電圧一定で電流の変化を測定し、電気抵抗から膜厚を算出する方法、逆に電流一定で電圧の変化を測定する方法のいずれでもよい。
【0102】
また、バリア膜上の導電膜や絶縁膜上のバリア膜を含む導電膜の研磨において、導電膜のクリア(不用部分の導電膜の完全除去)、すなわち、導電膜とは異なる金属の露出を検出する方法としては上述した方法の他に以下の方法が挙げられる。
まず、研磨パッドの表面温度や基板の表面温度の変化によって検出する方法がある。放射温度計による研磨パッドの表面温度の計測や、テーブル内に埋設された放射温度計により研磨パッドに設けた穴を介して、基板の表面温度を測定すればよい。
また、基板と研磨パッド間の摩擦力の変化によって検出する方法があり、研磨パッドが装着された研磨テーブルや、基板のキャリアの駆動電流の変化、基板のキャリアについて特定周波数の振動振幅の経時変化を測定する。
また、基板の表面画像の変化による方法として、研磨テーブル内に埋設された色度センサにより研磨パッドに設けた穴を介して基板の表面の色調の変化や、CCDやCMOS等の撮像装置による基板表面の2次元画像の変化を測定することにより検出できる。
また、電解液中の成分の変化、例えば、研磨テーブルから排出される電解液中の導電膜由来の金属イオン濃度の変化を測定することにより検出する方法がある。
なお、ここでいうバリア膜は、Ta、TaN,Ti,TiN、Ru、WN等であり、また導電膜としてはCu,W,Ni、Au,Ag,Rhやバリア膜等の導電材料をいう。
【0103】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態等に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態等で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した冷却手段は、ヘッド側と研磨パッド側の双方に設けるような構成にしても構わない。
また、本実施形態の電解複合研磨装置として、ロータリー式の電解複合研磨装置について説明したが、研磨テーブルと略同径のヘッドを備えたオービタル方式の電解複合研磨装置を用いることも可能である。オービタル方式は研磨パッドの面積が小さいため、研磨パッド側に冷却手段を設ける場合に冷却効率が高くなる。
【0104】
(電解液)
また、電解液として以下のものを採用することも可能である。
電解液は、(1)有機酸またはその塩の1種類以上、(2)スルホン酸基を有する強酸の1種類以上、(3)腐食抑制剤(窒素含有複素環化合物)、(4)水溶性高分子化合物、(5)pH調整剤、(6)砥粒、及び(7)界面活性剤を含んでいるものが好ましい。
【0105】
電解液に含まれる各成分について以下に説明する。
電解液に含まれる有機酸は、研磨の対象となる銅等の金属と可溶性錯体を形成する必要がある。つまり、配位結合して水溶液中に溶解するもので、少なくとも有機酸単独で水に溶解する必要がある。有機酸は、その分子内にカルボキシル基(−COOH)を1個以上有するもの、またカルボキシル基と共にヒドロキシ基(−OH)を1個以上有するものであることが好ましい。また、これら有機酸は、電解液のpHを安定化させるpH緩衝作用も有している。
【0106】
電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を1個有するカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、ソルビン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、レブリン酸、安息香酸、m−トルイル酸、またはアセチルサリチル酸などが挙げられる。また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、α-ケトグルタル酸、アコニット酸、フタル酸、またはピロメリト酸などが挙げられる。
【0107】
また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基と共にヒドロキシ基を1個以上有するカルボン酸としては、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、オキサル酢酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、ゲンチシン酸、プロトカテク酸、没食子酸、グルクロン酸、シアル酸、またはアスコルビン酸などが挙げられる。
【0108】
これらカルボン酸の塩としては、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩またはヒドロキシルアミン塩などが挙げられる。これらの1種を電解液に加えても2種以上の混合物を加えてもよい。
以上に挙げた有機酸の群のうち、特に好ましく使用することのできるものは、マロン酸、コハク酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、または酒石酸である。これらの有機酸を添加した電解液を用いて研磨実験を行うと、比較的速い研磨速度で、かつ平滑な被研磨表面が得られることが確かめられている。
【0109】
有機酸の濃度は、研磨時の温度での飽和濃度以下である必要がある。何故ならば飽和濃度を超えると有機酸が電解液中に析出してしまい安定な研磨が行えないからである。例えば、マレイン酸の飽和濃度は、78重量%(25℃)である。一方、逆に有機酸の濃度が0.1%より低いと、溶解する金属と配位結合する有機酸の基板表面への供給量が不足し、研磨が速やかに進まず、被研磨面の表面粗さが大きくなる等の問題が生じる。また濃度が低いと十分なpH緩衝作用を持たなくなる。以上の理由から、有機酸の濃度は、0.1〜80重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることが更に好ましい。
【0110】
電解液に含まれるスルホン酸基を有する強酸は、エッチング作用を促進するとともに、電解液の導電率を上げて研磨のための電流を流しやすくするためのものである。ここで、強酸とは、酸の強弱を示す第1解離定数の逆数の対数であるpKaが3以下のものをいう。
一般に、強酸を用いると、銅の溶解が始まる電位が低い。すなわち、低い印加電圧で銅の研磨が可能となる。しかし、硫酸、硝酸または過塩素酸を用いると、銅のエッチング等により被研磨面の表面粗さが大きく、またリン酸は、表面光沢が得られる濃度域では粘度が高いために銅の研磨に必要な電圧が比較的高いなどの問題がある。これに対して、例えばメタンスルホン酸を用いた場合は、銅研磨に必要な電圧が低く、かつ研磨後の表面も比較的平滑で、良好な研磨特性が得られることが確かめられている。
【0111】
好ましく使用することができるスルホン酸基を有する強酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、タウリン、システイン酸、アルキル基の総炭素数が1〜6であるアルキルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはフルオロスルホン酸などが挙げられ、これら1種類以上を使用することができる。スルホン酸基を有する強酸の濃度は、0.1〜20重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。スルホン酸基を有する強酸の濃度が低すぎると電解液の導電率が低くなり、電流が流れにくくなる。このため、スルホン酸基を有する強酸の濃度は、5重量%以上であることが好ましい。また、スルホン酸基を有する強酸の濃度が20重量%を越えると、電解液中の有機酸やその他の成分の飽和溶解度が減じて沈殿を生じるおそれがある。
【0112】
電解液に含まれる腐食抑制剤は、窒素含有複素環化合物であることが好ましく、研磨の対象となる銅等の金属と化合物を形成し、金属表面に保護膜を形成することで、金属の腐食を抑制する化合物として知られているものでよい。このような腐食抑制剤は、過剰な研磨を抑制しディッシング等を防止するため平坦化を促進する効果がある。
【0113】
好ましく使用することのできる腐食抑制剤として、従来から一般に知られている銅の腐食抑制剤であるベンゾトリアゾール及びその誘導体が挙げられる。上記のような平坦化を促進する効果を有するものとして、他に、インドール、2−エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メチルベンゾチアゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンズオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、ピリジン、フェナジン、アクリジン、1−ヒドロキシピリジン−2−チオン、2−アミノピリジン、2−アミノピリミジン、トリチオシアヌル酸、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、6−アミノプリン、6−チオグアニン及びこれらの組合せからなる群より選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0114】
腐食抑制剤は、その濃度が低いと、保護膜形成が不十分となるため、銅等の金属に過剰なエッチングが生じて平坦な被研磨面が得られない。一方、飽和溶解度以下であっても、腐食抑制剤の濃度が高すぎると、銅等の金属表面に保護性が過剰に形成されて研磨速度が低下し、しかも均一に研磨ができないため、表面粗さやピットの原因にもなる。以上のことから、腐食抑制剤の濃度は、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.02〜2重量%であることが更に好ましい。
【0115】
電解液に含まれる水溶性高分子化合物は、腐食抑制剤と共に保護膜を形成し、過剰なエッチングを抑制して、銅等の金属表面を平坦化するのに効果がある。また、水溶性高分子化合物を含む電解液にあっては、銅等の金属表面(被研磨面)表層近傍での電解液粘度が高くなるため、金属表面に存在する微細な凹凸の凹部に粘性皮膜が形成され、微細な凹凸も研磨されて光沢面が得られる。
【0116】
好ましく使用することのできる水溶性高分子化合物のうち、上記のような効果を有するものとして、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリエチレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメトキシエチレン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンなどから選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0117】
これらの水溶性高分子化合物として、質量平均分子量が1000〜500000のものを用いることができる。質量平均分子量が500000を越える場合には、電解液中に溶解せず腐食抑制剤や砥粒と凝集を起こす原因となってしまい、質量平均分子量が1000未満では銅等の金属表面に十分な保護膜が形成できず平坦化性能が悪化する。水溶性高分子化合物の質量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましく、2000〜25000であることが更に好ましい。
【0118】
水溶性高分子化合物の濃度は、電解複合研磨の研磨速度を低下させず、かつ過剰な研磨作用を抑制するため、0.005〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%であることが更に好ましい。
【0119】
電解液のpHを調整するため、電解液にpH調整剤を添加しても良い。好ましいpH調整剤としては、主にアルカリが用いられ、アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアミン、ポリアミン、アルカリ金属化合物(例えば水酸化カリウム)、及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種類以上が選択できる。アルカリの濃度は、一般には0.1〜20重量%で、被研磨物の用途、材料、含有する有機酸または有機酸塩及び強酸の濃度と調整するpHにより適宜決めればよい。
【0120】
好ましい電解液のpHは2〜10である。電解液のpHが低い場合は、電解複合研磨装置の材料選定に耐腐食性を考慮しなければならず、また研磨速度は高くなる一方、被研磨面の粗さが増え、銅等の金属の過剰エッチングが進み平坦な被研磨面が得にくくなる。電解液のpHが高い場合は、腐食抑制剤及び/または水溶性高分子化合物と銅との間における保護膜形成が不十分となり、平坦化作用が不十分となることがある。従って、半導体基板の銅配線プロセスのように、研磨速度が高く、表面粗さに優れた光沢面で平坦化が求められる場合、電解液のpHは3〜6であることが特に好ましい。
【0121】
電解液には砥粒が含まれることが好ましい。砥粒には銅等の金属を機械的に研磨除去する作用があるが、本発明においては、腐食抑制剤及び水溶性高分子化合物により形成された保護膜を適宜機械的に研磨除去する作用もある。この砥粒の作用により、余分な保護膜が除去されて、電解複合研磨における研磨速度が十分速くなる。
【0122】
電解液として好ましく用いることのできる砥粒としては、アルミナ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、及び酸化マンガンから選ばれる1種類以上を挙げることができる。これらの中でも、アルミナ、コロイダルシリカ、またはヒュームドシリカが好ましく用いられる。
【0123】
電解複合研磨として有効に機能させる場合における電解液中の砥粒の濃度は、10重量%以下であることが好ましく、砥粒の効果を出すためには、砥粒の濃度は、0.01重量%以上であることが必要である。一方、電解液中に分散させて使用する砥粒が無くとも研磨パッドのような固定砥粒を使用し、研磨パッドを銅等の金属表面に接触させることで保護膜除去の効果は有効であるので、そのような場合には電解液中に砥粒はなくてもよく、もちろん固定砥粒砥との併用も可能である。砥粒を使用する場合、砥粒の濃度が10重量%を越えると砥粒粒子の凝集が増加し、電解液の粘性が極端に高くなる場合もあり、被研磨面への砥粒堆積による電解複合研磨の阻害やスクラッチ発生の原因となる。このため、最適な砥粒の濃度は、0.05〜2重量%である。
【0124】
電解液は界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、砥粒の分散性を向上させるものであればよく、カチオン性、アニオン性、両性、及び非イオン性のいずれも使用することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アミドスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、またはそのホルマリン縮合物が用いられる。また、カチオン性界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩や脂肪族アンモニウム塩等が用いられる。これらは、砥粒の濃度や電解液のpHにより、適宜選択し用いられる。界面活性剤は、好ましくはアニオン性界面活性剤で、特に好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物である。
【0125】
電解液の導電率は、5〜200mS/cmであることが望ましい。電解液の導電率が低いと、研磨速度を上げるために印加電圧または電流を高くしなければばらないが、その場合には、酸素発生による研磨に対する電流効率の低下、被研磨表面のピット発生、保護膜の破壊による平坦化作用への悪影響等がある。したがって、より低い電圧で電解複合研磨を行うことが望まれ、そのためには、電解液の導電率が5〜200mS/cmであることが好ましい。
【0126】
電解液の組成の例としては、(1)2〜80重量%の有機酸、(2)2〜20重量%のスルホン酸基を有する強酸、(3)0.01〜1重量%の腐食抑制剤、(4)0.01〜1重量%の水溶性高分子化合物、(5)0.01〜2重量%の砥粒、及び(6)約0.01〜1重量%の界面活性剤を備えている水溶液が挙げられる。電解液の溶媒は、脱イオン水、好ましくは超純水である。
【0127】
(研磨パッド)
また、研磨パッドとして以下のものを採用することも可能である。
研磨パッドの種類に関しては、独立発泡ポリウレタンパッドや連続発泡のスウェードパッドが挙げられる。また、砥粒を含まない電解液を使用する場合、砥粒を結合剤によリバインドした固定砥粒パッドを使用しても良い。その砥粒として、酸化セリウム(CeO2)、アルミナ(A12O3)、炭化珪素(SiC)、酸化珪素(SiO2)、ジルコニア(Zr02)、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化マンガン(Mn02、Mn2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、ダイヤモンド(C)、又はこれらの複合材料を採用することが可能である。また結合剤として、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂等を採用することが可能である。また、被研磨対象の導電膜表面へ印加される電圧を確保することを目的として、研磨表面の少なくとも一部に導電面を有する導電性パッドを使用しても良い。
【0128】
ここで、研磨パッドの連通溝形状については、1つ以上の(1)同心円溝、(2)偏心溝、(3)多角形溝(格子溝を含む)、(4)らせん溝、(5)放射溝、(6)平行溝、(7)弧状溝やこれらの組合せを形成しても良い。これらの溝形状は電解液の保持・排出に影響する。例えば、同心円溝や偏心溝については、流路が閉じているため電解液が研磨パッド上に保持される効果を有する。これに対して、多角形溝や放射溝は研磨対象への電解液の流入及び研磨パッド外への電解液の排出を促進する効果を有する。なお、ウエハ面内への電解液の流入、流出及び保持の効率を高めるために、研磨パッド面内において溝幅や溝ピッチ、溝深さを適宜調整して、研磨パッド内の溝密度分布を調整してもよい。例えば溝幅・溝深さは0.4mm以上、溝ピッチは溝幅の2倍以上が良く、電解液の流れを考慮すれば、溝幅・溝深さは0.6mm以上が好ましい。また、溝間の電解液の流れを活発にすることを目的として、溝間に補助溝(例えば、同心円溝間に形成された複数の細溝や、太い格子溝間に形成された細溝等)を設けても良い。また溝の断面形状については、四角溝や丸溝の他にV溝を採用してもよい。また溝からの電解液の排出を促進させる際は、研磨パッドが装着された研磨テーブルの回転方向を考慮して、回転方向下流に傾斜した順溝を形成してもよい。逆に溝からの電解液の排出を抑制する際は、回転方向上流側に傾斜した逆溝を形成しても良い。さらに電解液の保持を目的として、研磨パッド表面に貫通孔を1つ以上形成しても良い。
【0129】
また、研磨パッドのウエハとの接触面形状は、電解反応により生成した保護皮膜のメカニカル除去に影響する。接触面でのメカニカル作用を増加させるためには、接触面形状が鋭利なものが良く、円錐形、多角錐形、ピラミッド形、プリズム形が挙げられる。ここで、被研磨物によっては接触面形状が鋭利過ぎるとスクラッチ等の原因となるため、これを回避する策として、円錐台や角錐台のような上面を平坦化した形状が挙げられる。また、接触面でのメカニカル作用をさらに低減させる形状としては、円柱、楕円柱、半球が挙げられる。これらの形状の配置としては、格子や千鳥、三角配置のような規則性の有るものや規則性を消すためにランダム形状にしてもよい。また、これらの形状は研磨パッドの研磨面内において複数以上存在してもよく、またその密度分布を調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】基板処理装置の配置構成を示す平面図である。
【図2】電解複合研磨装置の概略構成図である。
【図3】ヘッドの断面図である。
【図4】ヘッドの底面図である。
【図5】電解複合研磨装置の要部を概略的に示す縦断面図である。
【図6】電解複合研磨の工程図である。
【図7】温度に対する表面粗さ比を示すグラフである。
【図8】温度に対する研磨速度比を示すグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態に係る冷却手段の説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る図2のA部に相当する拡大図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る図2のA部に相当する拡大図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
【図13】本発明の第7実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
【符号の説明】
【0131】
W…基板
1…ヘッド
2…ヘッド本体(押圧機構)
3…リテーナリング
21,24,25…流体室(圧力室)
28,95…冷却手段(温度制御手段)
31…流体流路
50…電解液
63…凹部
64…バリア膜(金属膜)
66…導電膜(金属膜)
67…凹部
101…研磨パッド
102…電解液供給ノズル(電解液供給機構)
114…ヘッド用モータ(相対移動機構)
252…電源
254…支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解複合研磨方法および電解複合研磨装置に関し、特に半導体ウエハ等の基板表面に形成された導電性材料(金属)を電気化学的作用と機械的作用を組合せて研磨する電解複合研磨方法および電解複合研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線材料となる金属膜をパターン加工するのでなく、絶縁膜内に設けたトレンチやビアホール等の配線用凹部内に配線金属を埋込むようにした、いわゆるダマシンプロセスが使用されつつある。
このダマシンプロセスは、図6(b)に示すように、基板上のいわゆるLow−k材等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)62内に配線用凹部(以下「凹部」という。)63を形成し、次いで凹部63を含む層間絶縁膜62の全表面に窒化チタン等からなるバリアメタル膜(以下「バリア膜」という。)64を形成し、バリア膜64の表面に銅やタングステン等からなる金属導電膜(以下「導電膜」という。)66を形成して凹部63内に金属導電材料を埋込み、その後、凹部63の外側に形成された余分な導電膜66およびバリア膜64を除去することにより一般に行われる。これにより、基板上の凹凸が平坦化されるとともに、凹部内に前記導電膜66からなる配線が形成されるものである。
【0003】
余分な金属膜(導電膜66およびバリア膜64)の除去は、一般に、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、電解研磨、電解複合研磨等の平坦化法で行われる。
そのうち電解複合研磨は、図6(b)に示すように、基板W表面の導電膜66と対向電極(図示せず)との間に電解液50を供給し、導電膜66と対向電極との間に電圧を印加しつつ、基板W表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対移動させて、導電膜66の表面を研磨するものである。なお、「電解複合研磨」を「電解研磨」の派生技術として「電解研磨」に含めて用語を用いる場合があるが、本明細書では「電解複合研磨」の用語に統一して用いることにする。
【0004】
導電膜66と対向電極間に電圧を印加することにより導電膜が電気化学的に溶解し電解研磨が進む。一方、電解液50中に保護膜形成成分がある場合、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70を形成するため研磨が抑制される。なお層間絶縁膜62の表面に形成された凹部63に倣って、導電膜66の表面には凹部67が形成されているとすると、導電膜66の上段部(凹部67の外側)Hに形成された保護膜は研磨パッド101との当接により除去され、当該部分の導電膜66が電解液50中に溶解する。これに対して、下段部(凹部67の内側)Lの導電膜66は保護膜70により遮蔽されて電解液50中に溶解しない。このような工程を繰り返すことにより、導電膜66の表面が平坦化されるようになっている。
【0005】
ここで、導電膜66に保護膜70を形成する保護膜形成成分としては、ベンゾトリアゾール(BTA)のような腐食抑制剤が挙げられる。しかしながら、BTAのみでは保護膜70が強すぎる部分とほとんど保護膜70ができない部分ができてしまい、保護膜70の均一性や安定性を確保し難い。これを防止するため、電解液50中に保護膜形成の補助剤として、ポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性高分子化合物を含んでいるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−340600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、上述の半導体装置の配線形成プロセスにあっては、より高速で高精度な仕上げが要求されている。
ここで、上述の電解複合研磨は、研磨パッド101による保護膜70の除去と形成とを繰り返しながら研磨が進行するが、研磨が進むに従い、研磨により発生する摩擦熱等によって基板Wの温度が上昇するだけでなく、電解液の液温が上昇することも生じる。これにより、研磨後の金属膜の表面粗さが大きくなるという問題がある。これは、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一、不安定になるからであると考えられる。また、電解液中の水溶性高分子化合物成分は、液温の上昇により分解することもあり、均一な保護膜形成の補助剤としての機能が弱められることがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、研磨後の金属膜の表面粗さを抑え、平坦化特性にすぐれる電解複合研磨方法及び電解複合研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させて前記金属膜と前記対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記基板表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする。
この構成によれば、基板表面を冷却することで、研磨により発生する摩擦熱等で基板の温度が上昇することを防ぐことができるため、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことができる。そのため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記金属膜は、下層のバリア膜及び上層の導電膜を備え、前記導電膜の研磨中において前記バリア膜が露出する前までに、前記基板表面を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、研磨初期から基板が冷却されていなくても、バリア膜が露出する前までに基板表面が所定の温度に冷却されていれば、研磨終了時点での平坦化特性を確保することができるとともに、金属膜の表面粗さを抑えることができる。また、基板を冷却している時間を短縮することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記水溶性高分子化合物が溶解する温度未満に、前記基板表面の温度を制御することを特徴とする。
この構成によれば、基板表面の温度を水溶性高分子化合物が凝集沈澱する温度を超えて、溶解する温度未満に制御することで、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
基板表面温度が低過ぎると基板に接する電解液の温度が低くなり、その結果電解液中で水溶性高分子化合物が凝集沈澱してしまう。この状態で研磨すると表面が荒れたり、研磨の均一性に問題が生じたりする。基板表面の温度が高過ぎると、基板表面で水溶性高分子化合物が溶解しやすく保護膜形成が不均一、不安定になり表面荒れが大きくなる。
【0011】
調製した電解液は低温になるほど凝集沈澱しやすくなるが、調製後6時間程度は凝集沈澱しない温度以上に保つことが望ましい。基板表面温度はこの温度を目安として設定できる。
また、水溶性高分子化合物の溶解を持続させるために電解液の温度を上げる場合や基板と研磨パッドの直接の摩擦による摩擦熱やヘッド構成部材のリテーナリングと研磨パッドとの摩擦熱により間接的に基板表面温度が上がることがあるが、その場合にも基板表面においては水溶性高分子化合物が溶解せず、水溶性高分子化合物の作用が良好で表面荒れを抑制する温度に基板表面温度を保つ必要がある。
【0012】
さらには、基板表面又は研磨パッドへ電解液を供給する時に電解液の温度と基板表面の温度との温度差が5℃以内となるように、温度調整された電解液を供給することが好ましい。
この構成により、電解液との接触による基板の表面温度の上昇を防止することができる。
【0013】
また本発明の一態様は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記電解液を冷却して研磨を行うことを特徴とする。
この構成によれば、電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物が、保護膜を形成した際に安定化する状態となる。この状態で、電解液と金属膜とを反応させることで、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記電解液の冷却は前記研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことを特徴とする。
この構成によれば、電解液の冷却を、研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことで、電解液に含まれる水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防いだ上で、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0015】
また本発明の一態様は、研磨パッドと、前記基板と対向または近接させた対向電極と、金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と前記研磨パッドにヘッドに保持された前記基板を押圧する押圧機構と、前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、前記基板表面を冷却する温度制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、温度制御手段により基板表面を冷却することで、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことが可能になり、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。したがって、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記ヘッドは、冷却装置を備え、前記温度制御手段は、前記冷却装置によって前記ヘッドを冷却することを特徴とする。
この構成によれば、冷却装置によってヘッドを冷却することで、基板を直接冷却することができるため、効果的に基板表面を冷却することができる。冷却装置としては、例えばペルチェ素子を用い、冷却部をヘッドの基板と接触する部分の近傍に配置することが望ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記ヘッドは、流体が流通する流体室を備え、前記温度制御手段は、前記流体室への前記流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記流体を冷却することを特徴とする。この流体室は1つの室(空間)に限定されず、複数に区画された室であってもよく、また、室として広い空間の意味に限定されず、ヘッドの冷却として好適に配置された管路でもよい。
この構成によれば、流体を冷却しながら流体室内に供給することで、効果的に基板表面を冷却することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記流体室は、流体の流入により膨張し前記研磨パッドに対して前記基板を押圧する押圧調整手段を備え、前記温度制御手段は、前記流体室内において前記加圧流体を冷却するか、もしくは前記流体室への前記加圧流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記加圧流体を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、前記流体室内において加圧流体を冷却するか加圧流体を冷却しながら流体室内に供給することで、効果的に基板表面を冷却することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記温度制御手段は、前記研磨パッドを載置する研磨テーブル内を流通する熱媒体を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、研磨テーブル側から電解液を介して基板表面を冷却することができる。また、温度制御手段を簡単に構成することができる。
【0020】
また本発明の一態様は、研磨パッドと、金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、前記基板と対向または近接させた対向電極と、前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、前記電解液を冷却する温度制御手段と、 を有することを特徴とする。
この構成によれば、温度制御手段により電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物を腐食抑制剤とともに金属膜と反応させたときに、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0021】
本発明の好ましい態様は、前記温度制御手段は、前記電解液供給機構における前記電解液の供給口付近において前記電解液を冷却することを特徴とする。
電解液を貯留タンク内で冷却すると、水溶性高分子化合物がタンク内や供給流路において沈殿して供給不能になったり、研磨パッドや対向電極上に沈着したりして、基板上に到達できない可能性がある。これに対して、上記構成によれば、供給口付近において電解液を冷却することで冷却状態の時間を短縮することができ、電解液に含まれる水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぐことができる。したがって、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができるため、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、該電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近には、前記供給口付近以外の電解液供給流路より表面積の大きい流路を有する熱交換部が形成され、前記温度制御手段は、前記熱交換部において前記電解液を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、電解液供給ノズルの供給口付近に、他の部分より表面積が大きい流路により熱交換部を形成することで、伝熱面積を確保することができる。そのため、熱交換部に流通する電解液を効率的に冷却することができる。このようにすると、供給途中での水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、前記温度制御手段は、前記電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近に設けられたペルチェ素子であることを特徴とする。
この構成によれば、電解液供給ノズルの供給口付近にペルチェ素子を設けることで、供給途中での水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様は、前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、前記電解液供給機構は、前記電解液のうち前記水溶性高分子化合物を含む第1溶液と、成分中に凝集成分を含まない第2溶液と、を各々異なる流路から供給するとともに、供給口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを混合し、前記温度制御手段は、前記電解液のうち、少なくとも前記第2溶液を冷却することを特徴とする。
この構成によれば、例えば第2溶液のみを予め冷却し、供給口付近で第1溶液と混合することで、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を効率的に冷却することができ、冷却した電解液を研磨パッドや基板表面の金属膜に供給することができる。
【0025】
本発明の好ましい態様は、前記電解液供給機構は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記電解液を保持した状態で貯留する第1電解液タンクと、該第1電解液タンクと供給口との間において、前記第1電解液タンクから供給される前記電解液を貯留する第2電解液タンクとを備え、前記第2電解液タンクには、前記電解液を前記第1電解液タンクから供給される前記電解液の温度より低い温度に冷却する予備冷却手段が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、第1電解液タンクと供給口との間に第2電解液タンクを設け、この第2電解液タンク内で、第1電解液タンクから供給される電解液より低い温度に電解液を冷却することで、供給口付近での冷却時において、冷却負荷を低減することができる。したがって、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を効率的に冷却することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様は、電解液を冷却する温度制御手段に加えて、基板表面を冷却する手段を備えることを特徴とする。
この構成によれば、研磨パッドや基板表面へ供給後の電解液の温度上昇を防ぐことができる。また、基板表面の冷却は保護膜の均一性、安定性を向上させることができる。さらに、基板表面が冷却されていることにより、その分、供給口付近での冷却負荷を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、保護膜形成成分によって形成される保護膜の均一性、安定性を向上させることができるため、表面荒れを抑え、基板の平坦化特性を向上させることができるため、より高速で高精度な仕上げが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
(基板処理装置)
図1は、本発明に係る電解複合研磨装置を備えた基板処理装置の配置構成を示す平面図である。
図1に示すように、基板処理装置300は、例えば、被研磨基板である多数の基板W(図2等参照)をストックする基板カセット204を収容するロード・アンロードステージを備えている。ロード・アンロードステージ内の各基板カセット204に到達可能となるように、走行機構200の上に2つのハンドを有した搬送ロボット202が配置されている。走行機構200にはリニアモータからなる走行機構が採用されている。リニアモータからなる走行機構を採用することにより、大口径化し重量が増した基板の高速且つ安定した搬送ができる。走行機構200の延長線上には、研磨前または研磨後に基板上の膜厚測定を行うITM(In−line Thickness Monitor)224が配置されている。
【0029】
搬送ロボット202の走行機構200を挟んで、基板カセット204とは反対側に2台の乾燥ユニット212が配置されている。各乾燥ユニット212は、搬送ロボット202のハンドが到達可能な位置に配置されている。また2台の乾燥ユニット212の間で、搬送ロボット202が到達可能な位置に、4つの基板載置台を備えた基板ステーション206が配置されている。
【0030】
各乾燥ユニット212と基板ステーション206に到達可能な位置に搬送ロボット208が配置されている。乾燥ユニット212と隣接するように、搬送ロボット208のハンドが到達可能な位置に洗浄ユニット214が配置されている。搬送ロボット208のハンドの到達可能な位置にロータリトランスポータ210が配置され、このロータリトランスポータ210と基板受渡し可能な位置に、本発明の実施形態における電解複合研磨装置250が2台配置されている。
【0031】
各電解複合研磨装置250は、ヘッド1、研磨テーブル100、研磨パッド101(図2等参照)、研磨パッド101に電解液を供給する電解液供給ノズル(電解液供給部)102、研磨パッド洗浄等のための純水を供給する純水供給ノズル103、研磨パッド101のドレッシングを行うためのドレッサー218、及びドレッサー218を洗浄するための水槽222を有する、いわゆるロータリー方式の電解複合研磨装置250である。
【0032】
(電解複合研磨装置、ヘッド駆動部)
図2は、電解複合研磨装置250の概略構成図である。
図2に示すように、ヘッド1は、自在継手部10を介してヘッド駆動軸11に接続されており、ヘッド駆動軸11は、揺動アーム110に固定されたヘッド用エアシリンダ111に連結されている。ヘッド用エアシリンダ111によってヘッド駆動軸11は上下動し、ヘッド1の全体を昇降させるとともに、ヘッド本体2の下端に保持された半導体ウエハ等の基板Wを研磨テーブル100に押圧する。ヘッド用エアシリンダ111は、レギュレータRE1を介して圧縮空気源120に接続されており、レギュレータRE1によって、ヘッド用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等の流体圧力を調整することができる。これにより、基板Wが研磨パッド101を押圧する押圧力を調整することができる。
【0033】
ヘッド駆動軸11は、キー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。揺動アーム110には、回転駆動部としてのヘッド用モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してヘッド用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、ヘッド用モータ114を回転駆動することによって、タイミングプーリ116、タイミングベルト115及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びヘッド駆動軸11が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。揺動アーム110は、フレーム(図示せず)に固定支持されたシャフト117によって支持されている。
【0034】
(ヘッド)
図3はヘッド1を示す断面図であり、図4は図3に示すヘッド1の底面図である。図3に示すように、ヘッド1は、内部に収容空間を有する円筒容器状のヘッド本体2と、ヘッド本体2の下端に固定されたリテーナリング3を備えている。ヘッド本体2は、例えば金属やセラミックス等の強度及び剛性が高い材料から形成されている。リテーナリング3は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの剛性の高い樹脂又はセラミックス等の材料から形成されている。
【0035】
ヘッド本体2は、円筒容器状のハウジング部2aと、ハウジング部2aの円筒部の内側に嵌合される環状の加圧シート支持部2bと、ハウジング部2aの上面の周縁部に嵌合された環状のシール部2cとを備えている。ヘッド本体2のハウジング部2aの下面に固定されているリテーナリング3の下部は内方に突出している。なお、リテーナリング3をヘッド本体2と一体的に形成してもよい。
【0036】
ヘッド本体2のハウジング部2aの中央部上方には、上述したヘッド駆動軸11が配設されており、ヘッド本体2とヘッド駆動軸11とは自在継手部10により連結されている。この自在継手部10は、ヘッド本体2及びヘッド駆動軸11を互いに傾動可能とする球面軸受け機構と、ヘッド駆動軸11の回転をヘッド本体2に伝達する回転伝達機構とを備えており、ヘッド本体2のヘッド駆動軸11に対する傾動を許容しつつ、ヘッド駆動軸11の押圧力及び回転力をヘッド本体2に伝達する。
【0037】
球面軸受け機構は、ヘッド駆動軸11の下面の中央に形成された球面状凹部11aと、ハウジング部2aの上面の中央に形成された球面状凹部2dと、両凹部11a,2d間に介装された、セラミックスのような高硬度材料からなるベアリングボール12とから構成されている。回転伝達機構は、ヘッド駆動軸11に固定された駆動ピン(図示せず)とハウジング部2aに固定された被駆動ピン(図示せず)とから構成される。ヘッド本体2が傾いても被駆動ピンと駆動ピンは相対的に上下方向に移動可能であるため、これらは互いの接触点をずらして係合して、回転伝達機構がヘッド駆動軸11の回転トルクをヘッド本体2に確実に伝達する。
【0038】
ヘッド本体2及びヘッド本体2に一体に固定されたリテーナリング3の内部に画成された空間内には、研磨ヘッド1によって保持される半導体ウエハ等の基板Wに当接する弾性パッド4と、環状のホルダーリング5と、弾性パッド4を支持する概略円盤状のチャッキングプレート6とが収容されている。弾性パッド4は、その外周部がホルダーリング5と該ホルダーリング5の下端に固定されたチャッキングプレート6との間に挟み込まれており、チャッキングプレート6の下面を覆っている。これにより、弾性パッド4とチャッキングプレート6との間には空間が形成されている。
【0039】
ホルダーリング5とヘッド本体2との間には弾性膜からなる加圧シート7が張設されている。加圧シート7は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。加圧シート7は、一端をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込み、他端をホルダーリング5の上端部5aとストッパ部5bとの間に挟み込んで固定されている。ヘッド本体2、チャッキングプレート6、ホルダーリング5、及び加圧シート7によって、ヘッド本体2の内部に流体室(圧力室)21が形成されている。図4に示すように、流体室(圧力室)21には、チューブやコネクタ等からなる流体流路31が延設されており、流体室(圧力室)21は、流体流路31内に設置されたレギュレータRE2を介して圧縮空気源120に接続されている。
【0040】
なお、加圧シート7がゴムなどの弾性体からなり、加圧シート7をリテーナリング3とヘッド本体2との間に挟み込んで固定した場合には、弾性体としての加圧シート7の弾性変形によってリテーナリング3の下面において好ましい平面が得られなくなってしまう。したがって、これを防止するため、この例では、別部材として加圧シート支持部2bを設けて、加圧シート7をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込んで固定している。
【0041】
弾性パッド4とチャッキングプレート6との間に形成される空間の内部には、流体室が形成され、弾性パッド4に当接する当接部材としてのセンターバッグ(中心部当接部材)8及びリングチューブ(外側当接部材)9が設けられている。この例においては、図3及び図4に示すように、センターバッグ8は、チャッキングプレート6の下面の中心部に配置され、リングチューブ9は、このセンターバッグ8の周囲を取り囲むようにセンターバッグ8の外側に配置されている。なお、弾性パッド4、センターバッグ8及びリングチューブ9は、加圧シート7と同様に、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0042】
図3に示すように、チャッキングプレート6と弾性パッド4との間に形成される空間は、流体室として上記センターバッグ(エアバッグ)8及びリングチューブ(エアバッグ)9によって複数の空間に区画されており、センターバッグ8とリングチューブ9の間には流体室(圧力室)22が、リングチューブ9の外側には流体室(圧力室)23がそれぞれ形成されている。
【0043】
センターバッグ8は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜81と、弾性膜81を着脱可能に保持するセンターバッグホルダー(保持部)82とから構成されている。センターバッグホルダー82にはねじ穴82aが形成されており、このねじ穴82aにねじ55を螺合させることにより、センターバッグ8がチャッキングプレート6の下面の中心部に着脱可能に取り付けられている。センターバッグ8の内部には、弾性膜81とセンターバッグホルダー82とによって中心部流体室(圧力室)24が形成されている。
【0044】
同様に、リングチューブ9は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜91と、弾性膜91を着脱可能に保持するリングチューブホルダー(保持部)92とから構成されている。リングチューブホルダー92にはねじ穴92aが形成されており、このねじ穴92aにねじ56を螺合させることにより、リングチューブ9がチャッキングプレート6の下面に着脱可能に取り付けられている。リングチューブ9の内部には、弾性膜91とリングチューブホルダー92とによって中間部流体室(圧力室)25が形成されている。
【0045】
流体室(圧力室)22,23、中心部流体室(圧力室)24及び中間部流体室(圧力室)25には、チューブやコネクタ等からなる流体流路33,34,35,36がそれぞれ連通されており、各流体室(圧力室)22〜25は、それぞれの流体流路33〜36内に設置されたレギュレータRE3,RE4,RE5,RE6を介して、供給源としての圧縮空気源120に接続されている。なお、上記流体流路31,33〜36は、ヘッド駆動軸11の上端部に設けられたロータリジョイント(図示せず)を介して、各レギュレータRE2〜RE6に接続されている。
【0046】
上述したチャッキングプレート6の上方の流体室(圧力室)21及び上記流体室(圧力室)22〜25には、各流体室(圧力室)に連通される流体流路31、33〜36を介して流体(空気又は液体)の供給、又は大気圧や加減圧が施されるようになっている。図2に示すように、流体室(圧力室)21〜25の流体流路31、33〜36上に配置されたレギュレータRE2〜RE6によって、それぞれの流体室(圧力室)に供給される流体の圧力を調整することができる。これにより各流体室(圧力室)21〜25の内部の圧力を各々独立に制御するか、または大気圧や減圧にすることができる。
【0047】
このように、レギュレータRE2〜RE6によって各流体室(圧力室)21〜25の内部の圧力を独立に可変とすることにより、弾性パッド4を介して基板Wを研磨パッド101に押圧する押圧力を基板Wの部分(区画領域)毎に調整することができる。
また図3に示すように、チャッキングプレート6から流体室(圧力室)22,23に複数の凸部42が立設されている。凸部42の先端は、開口部41を通って弾性パッド4の表面に露出している。凸部42の先端面から流体流路43が延設され、図2に示す真空源121に接続されている。これにより、図3に示す凸部42の先端面で、基板Wを真空吸着しうるようになっている。
【0048】
(研磨テーブル、研磨パッド)
図5(a)は電解複合研磨装置の研磨テーブルを概略的に示す縦断面図である。研磨テーブル100の上面には円板状の支持部材254が固定されている。支持部材254は、導電性材料(金属、合金、導電性プラスチックなど)で構成されている。この支持部材254の上面に研磨パッド101が取り付けられており、研磨パッド101の上面が研磨面となっている。研磨テーブル100は回転機構(図示せず)に連結されており、これにより研磨テーブル100は、支持部材254および研磨パッド101と一体に回転可能となっている。
【0049】
電解液供給ノズル102は、研磨パッド101の半径方向に沿って延びている。電解液供給ノズル102の先端には、電解液の供給口102aが設けられている。この供給口102aは研磨パッド101の中央部の上方に位置しており、電解液供給源(図示せず)から電解液供給ノズル102を通じて電解液が研磨パッド101の中央部に供給される。研磨パッド101が回転すると、電解液は外側に向かって濡れ広がり、ヘッド1と研磨パッド101との間および研磨パッド101の複数の貫通孔101aに充填される。
【0050】
支持部材254は、電源252の負極に接続されており、第1電極(カソード)、つまり基板Wの対向電極として機能する。電源252から延びる配線と支持部材(カソード)254との電気接点には、コロ、ブラシなどが用いられる。例えば、図5(a)に示すように、支持部材254の側面に電気接点262を接触させることができる。電気接点262は、比抵抗が小さく軟質な金属、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどで形成することが好ましい。
【0051】
研磨パッド101の側方に位置して、電源252の正極に接続された第2電極(給電電極)264が配置されている。ヘッド1は、基板Wの一部を研磨パッド101の側方にはみ出させた状態で基板Wを研磨面に接触させるようになっており、基板Wの下面が第2電極264に接触するようになっている。これにより、第2電極264から基板Wの導電膜に電圧が印加される。そして、カソードとしての支持部材254と、アノードとしての基板W上の導電膜は、研磨パッド101の貫通孔101aに充填された電解液を通して電気的に接続される。なお、リテーナリング3の一部を導電性の物質として基板Wと電気接点をとれるようにすれば、第2電極264からリテーナリングを介して基板Wの導電膜に電圧を印加することも可能である。導電性物質は電解液に対する耐薬品性、電解複合研磨の際の電解反応による変質、研磨パッドと接触する場合には耐磨耗性等を考慮して選択しなければならない。
【0052】
図5(b)は、他の電解複合研磨装置の研磨テーブルを概略的に示す縦断面図である。この電解複合研磨装置250の支持部材254は、円板状のベース254bと、このベース254bの上面を覆う蓋254aとから基本的に構成されている。上述したように、支持部材254はカソード(第1電極)として機能するため、蓋254aおよびベース254bの少なくとも一方は導電性材料から構成される。
【0053】
支持部材254の蓋254aには、研磨パッド101の上記貫通孔101aと同一位置に複数の連通孔255が形成されている。さらに、蓋254aの下面には、これら連通孔255を互いに連通させる複数の連通溝256が形成されている。なお、ベース254bの上面に連通溝を設けてもよい。研磨パッド101の中央部には、研磨パッド101を上下に貫通する第1の電解液受け口258Aが形成されている。さらに、蓋254aには、第1の電解液受け口258Aと同一位置に第2の電解液受け口258Bが形成されている。第2の電解液受け口258Bは上記複数の連通溝256に連通している。
【0054】
このような構成により、電解液供給ノズル102の供給口102aから供給された電解液は、第1の電解液受け口258A、第2の電解液受け口258B、連通溝256、および連通孔255をこの順に流れて、貫通孔101aに到達する。そして、貫通孔101aの内部には、研磨面に向かう電解液の上向きの流れが形成され、電解液が研磨面に供給されるようになっている。
【0055】
(冷却手段)
ここで、図2,3に示すように、上述した流体室(圧力室)22〜25と、この流体室(圧力室)22〜25内に流体を供給するレギュレータRE2〜6とを接続する流体流路33〜36には、冷却手段(温度制御手段)28が設けられている。この冷却手段28は、流体流路33〜36内を流れる流体と熱交換を行うことで、流体を冷却して冷却媒体として流体室(圧力室)22〜25内に供給するものであり、後述する研磨工程において被研磨面である基板Wの表面を冷却するものである。なお、冷却手段は、流体室に供給する流体の供給源である流体貯留タンク(図示せず)に設けるような構成にしてもよい。
【0056】
そして、冷却手段28を介して流体室(圧力室)22〜25内に供給された冷却媒体は、弾性パッド4を挟んで基板Wの裏面と熱交換され、基板Wの表面を冷却(温度制御)できるようになっている。なお、流体室(圧力室)に供給される冷却媒体としての流体は、気体として空気(ドライエアー)や窒素ガス、ヘリウムガス、代替フロン、二酸化炭素等、液体として水、エチレングリコール−水混合液、アルコール−水混合液等が挙げられる。冷却媒体としてはコストや環境面を考慮すると、空気や水が好ましい。なお、図2では流体室に供給される冷却媒体を空気とした場合について示しているが、空気でない気体の場合は、圧縮空気源120を冷媒となる気体に対応する圧縮気体源に置換すればよく、液体の場合は、圧縮空気源120を液体供給に対応する液体用ポンプに置換すればよい。
【0057】
また、図2、3には各流体室(圧力室)への流体の供給(流入側)として流体流路33〜36は図示されているが、流体の排出(流出側)としての流路は図面を見やすくするために図示していない。流体の排出(流出側)の流路は、各流体室(圧力室)毎に配管を設置することが好ましく、また、ヘッドの部位毎にまとめて集合配管としてもよい。さらに、各配管には排出(流出側)の流路の背圧を調整するための背圧弁(図示せず)を設置してもよい。なお、流体室は1つの室(空間)に限定されず、複数に区画された室であってもよく、また、室として広い空間の意味に限定されず、ヘッドの冷却として好適に配置された管路でもよい。
また、基板Wの表面温度をモニタするため、赤外線放射温度計等の非接触式の温度センサを設けることが好ましい。例えば、研磨テーブル100内に埋設された放射温度計により研磨パッド101に設けた穴を介して、基板Wの表面温度を測定すればよい。温度センサによりモニタした情報をフィードバックさせることで、基板Wの温度を正確に制御することができる。
【0058】
(電解複合研磨方法)
次に、本実施形態に係る電解複合研磨方法の研磨工程について説明する。
図6は、電解複合研磨の工程図である。最初に、本実施形態の研磨対象である基板Wの膜構成について説明する。
図6(a)に示すように、シリコン等からなる基板Wの表面に、SiO2、SiOF、SiOCやLow−k材(低誘電率絶縁膜)等の絶縁材料からなる層間絶縁膜62が形成されている。層間絶縁膜62の表面には、配線形成用の凹部63が形成されている。この凹部63を含む層間絶縁膜62の表面には、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウムおよび/またはそれらの合金等からなるバリア膜64が、厚さ10nm程度に形成されている。バリア膜64は、次述する導電膜66の金属材料が基板Wに拡散するのを防止するため、また導電膜66と層間絶縁膜62との密着性を向上させるために設けられている。バリア膜64の表面には、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、タングステン、ルテニウムまたはそれらの合金等の導電性金属材料からなる導電膜66が、厚さ500〜1000nm程度に形成されている。この導電膜66を電解めっき法で形成する場合には、電解めっきの電極となるシード膜(図示せず)をバリア膜64の表面に形成しておく。なお層間絶縁膜62の凹部63に倣って、導電膜66の表面には、高さ300nm程度および幅100μm程度の凹部67が形成されている。なおここに示した、配線形成用凹部の寸法は一例として示したものである。
【0059】
層間絶縁膜62の凹部63に充填された導電膜66が金属配線として利用されるため、凹部63の外側に形成された導電膜66およびバリア膜64は不要である。なお層間絶縁膜62を介して複数の配線を積層するため、導電膜66およびバリア膜64が除去された状態で、凹部63の導電膜66の表面と層間絶縁膜62の表面とが同一平面上に配置されて基板Wの表面が平坦化されている必要がある。
そこで、余分な金属膜(導電膜66およびバリア膜64)を電解複合研磨により除去し、平坦化する。電解複合研磨では、基板Wの表面の金属膜と対向電極間に電解液50を存在させて電圧を印加し、基板Wの表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対(回転)移動させて、金属膜の表面を研磨するようにしている。
なお、本実施形態では、導電膜66として銅を用いる場合について説明するが、研磨の対象となる導電性物質としては、上述した物質、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0060】
本実施形態の電解複合研磨方法では、導電膜66の研磨を研磨の進行による膜の厚さに合わせてバルク研磨及びクリア研磨の2段階の研磨で行っている。次いでバリア研磨の工程となる。
具体的には、まず図6(b)、(c)に示すように、バルク研磨として、電解液50を研磨パッド101上に供給しながら導電膜66を所定厚さまで研磨する。
【0061】
電解複合研磨は、導電膜66へ印加される電圧により生じる電解反応を利用して研磨するものであるが、導電膜66の電解反応と同時に、電解液50に含まれる保護膜形成成分と導電膜66とが反応して、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70が形成される。導電膜66の上段部H(凹部67の外側)に形成された保護膜70は、研磨パッド101との当接により除去される。これにより、上段部Hの導電膜66が電解液50に溶解して除去される。これに対して、下段部L(凹部67の内側)の導電膜66は、保護膜70に遮蔽されて電解液50に溶解しない。以上により、導電膜66の段差が解消されて平坦化されるようになっている。
【0062】
電解液50は、金属膜と反応する保護膜形成成分として、ベンゾトリアゾール(BTA)のような腐食抑制剤を含んでいる。しかしながら、BTAのみでは保護膜70が強すぎる部分とほとんど保護膜70ができない部分ができてしまい、保護膜70の均一性や安定性を確保し難い。これを防止するため、電解液50中に保護膜形成の補助剤として、ポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性高分子化合物を含んでいる。具体的な電解液として、例えば1mol/Lマロン酸+1.4mol/Lメタンスルホン酸+0.3%ベンゾトリアゾール+0.6%ポリアクリル酸アンモニウム(平均分子量:10000)+0.7%メタノール+0.05%(界面活性剤 MX2045L 花王製)に0.05%のシリカ砥粒を加え、pH調整剤でpH4.5に調整したもの等が好適に用いられる。
【0063】
ところで、上述のように電解複合研磨では、研磨により発生する摩擦熱等によって基板Wの温度が上昇し、金属膜の表面粗さが大きくなったり、段差解消性が低下したりする。これは、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一、不安定になるからであると考えられる。その結果、基板W表面の平坦化特性が低下したり、導電膜の過剰研磨、いわゆるディッシングが生じたりするという問題がある。また、基板Wと研磨パッドの摩擦による熱によって研磨パッドが変形するという問題がある。
【0064】
ここで、本実施形態では、研磨工程に際して、基板Wの表面を冷却しながら研磨を行う。具体的には、バルク研磨開始時に上述の冷却手段28により、圧力室22〜25内に、レギュレータRE2〜6(何れも図2等参照)を介して冷却された冷却媒体を供給し、基板Wを冷却しながら研磨を行う。上述したように、電解液50に含まれる保護膜形成成分と導電膜66とが反応して保護膜70が形成され、保護膜形成の補助剤である水溶性高分子化合物により保護膜70が均一化されている。基板Wを冷却しながら研磨を行うことで、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物の溶解を防止することが可能になり、保護膜70形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。
【0065】
そして、図6(d)に示すように、クリア研磨として、凹部63の外側の導電膜66を全て研磨し、バリア膜64を露出させる。なお、クリア研磨に際しても、基板Wの冷却を継続する。
最後に、図6(e)に示すように、バリア研磨として、凹部63の外側のバリア膜64を全て研磨し、凹部63内に導電膜66からなる配線が形成されることとなる。
【0066】
本願の発明者は、基板Wの表面、つまり被研磨面の温度を変化させて研磨を行った場合の、表面粗さと研磨速度への影響について実験を行った。図7,8は、電解液の温度が20℃の場合における表面粗さ及び研磨速度を1として正規化したグラフである。なお、本実験では、都合上基板W上に供給された電解液50の温度を測定しているが、この温度は基板Wの表面における被研磨面の温度と等しくなっている。
【0067】
図7に示すように、電解液50の温度が上昇するにつれ、具体的には30℃より高くなると、表面粗さが増加することがわかる。これは、保護膜を形成している水溶性高分子化合物が、高温になると溶解しやすくなるため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用が阻害され、保護膜70が不均一になるからであると考えられる。その結果、基板Wに研磨されやすい部分と、研磨されにくい部分が生じて研磨が行われることとなるため、基板Wの表面粗さが大きくなってしまう。
【0068】
また、電解液50の供給時の温度が基板Wの表面温度よりも大幅に高いと、電解液50から基板Wに熱が移動し、基板Wの表面温度が上昇する虞がある。そのため、研磨パッド101への供給時における電解液50の温度と基板W表面の温度との温度差を、5℃以内に設定することが好ましい。このように構成することで、電解液50との接触により基板Wの表面温度が上昇するのを防止することができる。
【0069】
しかしながら、電解液50の液温が低過ぎると、電解液50に含まれる水溶性高分子化合物が凝集して沈殿が起こりやすいという問題がある。この状態で研磨すると表面が荒れたり、研磨の均一性に問題が生じたりする。基板W表面の温度が高過ぎると、基板W表面で水溶性高分子化合物が溶解しやすく保護膜形成が不均一、不安定になり表面荒れが大きくなる。
表1に電解液の液温と、その温度での放置時間における沈殿物の有無を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、電解液50の液温が35℃の場合、24時間放置しても沈殿は生じなかった。しかしながら、電解液50の液温を低下させると、25℃の場合では24時間で沈殿が生じ、17℃の場合、8時間で沈殿が生じた。この結果から、電解液50の液温を長時間低温に維持することは難しいため、基板Wの表面を直接冷却して温度を設定することが好ましい。電解液50は低温になるほど凝集沈澱しやすくなるが、調製後6時間程度は凝集沈澱しない温度以上に保つことが望ましい。基板W表面温度はこの温度を目安として設定できる。
【0072】
また、水溶性高分子化合物の溶解を持続させるために電解液50の温度を上げる場合や、基板Wと研磨パッド101の直接の摩擦による摩擦熱やヘッド1の構成部材であるリテーナリング3と研磨パッド101との摩擦熱により間接的に基板Wの表面温度が上がることがある。その場合にも基板W表面においては水溶性高分子化合物が溶解せず、水溶性高分子化合物の作用が良好で表面荒れを抑制する温度に基板Wの表面温度を保つ必要がある。
【0073】
したがって、基板Wの温度設定は、基板Wの温度の影響で電解液50中の水溶性高分子化合物が凝集して沈殿する温度を超えて、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が溶解する温度未満、すなわち10℃以上30℃以下に設定することが好ましい。さらに、基板Wの表面における温度ムラ等を考慮すると、10℃以上25℃以下、より好ましくは15℃以上25℃以下に設定することが好ましい。これにより、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好な状態に維持させることができる。
【0074】
このように、本実施形態では、研磨工程時において基板Wの表面を冷却して温度を制御することで、研磨により発生する摩擦熱等で基板Wの温度が上昇することを防ぐことができるため、保護膜70を形成している水溶性高分子化合物が溶解することを防ぐことができる。そのため、水溶性高分子化合物による保護膜形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜形成成分によって形成される保護膜70の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑え、段差解消性に優れ、ディッシングを抑制した上で研磨を行うことができる。したがって、基板Wの平坦化特性を向上させることができ、高速で高精度な仕上げが可能となる。
また、基板Wが温度上昇することがないので、研磨パッド101の変形も防ぐことができる。
【0075】
ところで、研磨方法として電解複合研磨の他にCMPがある。CMPは、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用または研磨液に含まれる化学成分の作用によって、研磨剤と研磨対象物(基板)の相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る技術である。このように化学的作用を主体として研磨を行うCMPでは、温度依存性が高く、温度が変化することで、表面粗さ、研磨速度ともに影響が生じることが知られている。また研磨速度を向上させるため、基板と研磨パッドとの接触面圧を増加させると、配線表面にディッシングが発生することになる。
【0076】
これに対して本実施形態のような電解複合研磨では、図8に示すように、温度が低くても研磨速度への影響は少なく、各温度ともにほぼ変わらない値を示している。つまり、電解複合研磨では、基板表面の導電膜に電解液を接触させ、導電膜に電圧を印加することで行われる電子の授受により溶解や酸化反応等が起こり、研磨と保護膜形成を繰り返しながら進行していくため、研磨速度の温度依存性は小さく、印加電圧の影響が大きいと考えられる。したがって、電解複合研磨では、基板の表面を冷却して温度を一定に制御することで表面粗さを抑制できる一方、研磨速度を電圧で調整することで、表面粗さと研磨速度とを各々独立して調整することができる。そのため、CMPに比べ高速で、かつ高精度な研磨が可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態における冷却手段の構成について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
上述の実施形態では、図2、3に示すように、流体室(圧力室)22〜25内に流体を供給するレギュレータRE2〜6を接続する流体流路33〜36に流体の冷却手段を設ける構成としたが、例えば流体流路33〜36ではなく、流体室(圧力室)22〜25内に流体の冷却手段を設ける構成としてもよい。冷却手段には、冷却装置として例えばペルチェ素子を用いることで構成が容易になるため好ましい。
この場合、流体室(圧力室)22〜25に供給された加圧流体を流体室(圧力室)22〜25内で直接冷却することができるため、効率的に基板Wを冷却することができる。
また、流体室(圧力室)22〜25への流体の調整による基板の押圧調整機構が不要の場合には、流体流路33〜36は不要である。そして、ペルチェ素子等の冷却装置を好適に配置することによって冷媒としての流体を不要とすることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図9は、本発明に係る第3実施形態の冷却手段の説明図である。この電解複合研磨装置の冷却手段は、上述したヘッド側から基板を冷却するものとは異なり、研磨テーブル側から基板の冷却を行うものである。
【0079】
図9に示すように、研磨テーブル100には、内部に冷却媒体を流通させる冷却空間80が形成されている。この冷却空間80は、冷却媒体供給配管90を介して冷却媒体供給源(図示せず)に接続されている。そして、冷却媒体は冷却媒体供給源から冷却媒体供給配管90を通じて冷却空間80に供給される。これら、冷却空間80及び、冷却媒体供給配管90、冷却媒体供給源が冷却手段95として構成されている。この構成によれば、研磨テーブル100から電解液を介して基板Wの表面を冷却することができるため、効率的に基板Wの表面を冷却することができる。また、ヘッド側に冷却手段を設ける場合に比べ、簡単に構成することができる。
【0080】
なお、上述した冷却手段の構成の他に、以下のような態様も可能である。
例えば、研磨パッドにペルチェ素子等の冷却手段を設けたり、研磨パッド内を冷却媒体が流通するように、冷却媒体供給配管を研磨パッド内に設ける構成として、基板を冷却したりしてもよい。また、研磨パッドに直接冷却媒体を噴出するようにしてもよい。この場合、冷却媒体と電解液の供給位置が近いと、電解液が希釈されたり、電解液が飛散したりする懸念があるため、テーブルの回転方向、基板ホルダと電解液の供給位置を考慮して冷却媒体の噴出位置を決める。
【0081】
また、電解複合研磨装置全体を温度制御された空間内に収容し、その空間内を冷却することにより基板を冷却することも可能である。この場合、電解複合研磨装置全体を収容することで、電解液の冷却と基板表面の冷却とを同時に行うことができるため、電解液の供給温度と基板の表面温度との差も小さくなる。
【0082】
また、リテーナリングに接する流路を設け、この流路に冷却された流体を流して、リテーナリングが冷却されることにより基板が冷却するようにしても構わない。
また、ヘッド側に熱伝導性に優れた放熱フィンを取り付けるような構成としてもよい。
なお、上述した構成を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【0083】
(第4実施形態)
次に、図10に基づいて、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、図2のA部に相当する拡大図である。上述の実施形態においては、基板表面を冷却しながら研磨を行っていたが、本実施形態では電解液を冷却する点で第1〜3実施形態と相違している。
【0084】
図10に示すように、本実施形態の電解液供給ノズル310は、先端の供給口310a付近において、熱交換部(温度制御手段)311が形成されている。この熱交換部311は、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成して伝熱面積を増加させたものである。ノズルを螺旋状に形成した熱交換部311の周囲を覆うように、冷却手段(温度制御手段)312が設けられている。この冷却手段312は、供給口313と、排出口314とを有し、図示しない供給源から供給される冷却媒体が循環するように構成されている。これにより、熱交換部311を流通する電解液が冷却され、研磨パッド101に供給される。
【0085】
このように本実施形態によれば、電解液を冷却することで、電解液中に含まれる水溶性高分子化合物を腐食抑制剤とともに金属膜と反応させたときに、水溶性高分子化合物による保護膜70形成の補助剤としての作用を良好に維持させることができる。つまり、保護膜70形成成分によって形成される保護膜70の均一性、安定性を向上させることができるため、金属膜の表面粗さを抑えることができる。
【0086】
また、供給口310a付近に冷却手段312を設けることで、電解液を貯留するタンクや供給流路における水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぐことができるため、水溶性高分子化合物による保護膜70形成の補助剤としての作用を、良好な状態に維持させることができ、金属膜の表面荒れを抑えることができる。
さらに、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成して熱交換部311を構成することで、伝熱面積を確保することができる。そして、この熱交換部311に電解液を流通させることで、電解液を効率的に冷却することができる。なお、本実施形態では、電解液供給ノズル310を螺旋状に形成したが、電解液供給ノズルにひだを形成したり、電解液の流路を細く分割したりする構成等、電解液供給ノズルの供給口付近における伝熱面積を向上させるような構成であれば、適宜設計変更が可能である。
【0087】
(第5実施形態)
次に、図11に基づいて、本発明の第5実施形態について説明する。図11は、図2のA部に相当する拡大図である。
図11に示すように、本実施形態の電解液供給ノズル320は、電解液の供給部320a付近に複数のペルチェ素子(温度制御手段)321が設けられている。図11ではペルチェ素子に通電するための電源等は省略している。これらペルチェ素子321は、供給部320a付近において、電解液供給ノズル320の周囲を覆うように設けられている。
【0088】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、電解液供給ノズル320の供給口320a付近にペルチェ素子321を設けることで、電解液供給ノズル320の形状を変更することなく、電解液を効率的に冷却することができる。したがって、装置コストも低減することができる。
【0089】
(第6実施形態)
次に、図12に基づいて、本発明の第6実施形態について説明する。図12は、第6実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
図12に示すように、本実施形態の電解液供給機構330は、第1溶液タンク331と、第2溶液タンク332とを備えている。
【0090】
第1溶液タンク331は、電解液に含まれる成分のうち、水溶性高分子化合物を含む第1溶液を貯留するものである。
第2溶液タンク332は、電解液に含まれる成分のうち、水溶性高分子化合物を含まない第2溶液を貯留するものである。第2溶液タンク332には、図示しない冷却手段(温度制御手段)が設けられており、第2溶液タンク332に貯留された第2溶液が冷却されるように構成されている。
【0091】
各溶液タンク331,332には、電解液供給流路333,334が接続されている。各電解液供給流路333,334は、合流し、一本の供給流路335として延出している。したがって、各溶液タンク331,332から各電解液供給流路333,334を流通して供給される溶液は、供給流路335において混合され、研磨パッド101に供給されるようになっている。合流部には効果的に混合するための混合器を用いても良い。なお、第1溶液タンク331内に貯留されている第1溶液の温度は、20℃以上、好ましくは25℃以上に設定する。一方、第2溶液タンク332内に貯留されている第2溶液の温度は、第1溶液と第2溶液との混合後の電解液の温度が10〜25℃、好ましくは15〜20℃になるように設定する。
【0092】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、第2溶液のみを予め冷却し、供給部335で第1溶液と混合することで、水溶性高分子化合物の凝集沈殿を防ぎ、電解液を良好な状態に維持した上で、電解液を供給することができる。なお、本実施形態の供給部335に、上述した熱交換部311(図10参照)や、ペルチェ素子321(図11参照)を設ける構成としてもよい。これにより、電解液をより効果的に冷却することができる。
【0093】
(第7実施形態)
次に、図13に基づいて、本発明の第7実施形態について説明する。図13は、第7実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
図13に示すように、本実施形態の電解液供給機構340は、電解液を貯留する第1電解液タンク341と、第2電解液タンク342とを備えている。
【0094】
第1電解液タンク341は、電解液を、例えば24時間程度凝集の起こらない温度、つまり25℃より高い温度(表1参照)に保持した状態で貯留するものである。第2電解液タンク342は、第1電解液タンク341と流路343を介して接続されている。第2電解液タンク342には、図示しない予備冷却手段が設けられており、電解液を数時間凝集しない温度(例えば17℃(表1参照))に保持した状態で貯留している。そして、第2電解液タンク342には、電解液供給流路344を通じて電解液供給ノズルが接続されており、電解液供給ノズルを流通して研磨パッド101へ電解液が供給されるように構成されている。
なお、本実施形態においては、電解液供給ノズルから研磨パッド101への電解液の供給口(不図示)付近において、上述した熱交換部311(図10参照)や、ペルチェ素子321(図11参照)を設けることが好ましい。
【0095】
このように本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、第1電解液タンク341内で、電解液を25℃より高い温度に保持し、その後第2電解液タンク342内において、第1電解液タンク341内で保持された温度より低い温度に冷却することで、電解液を徐々に冷却していくことができる。そのため、電解液供給ノズルの供給口付近において、冷却を行う場合の冷却負荷を低減することができる。したがって、電解液を効率的に冷却することができる。
【0096】
なお、電解液を冷却する構成としては、上述した第4〜第7実施形態の他に、以下のように電解液を供給後に冷却する構成も可能である。
例えば、上述した第3実施形態(図9参照)の構成を用い、研磨テーブル100を予め冷却する。研磨テーブル100を冷却した後、研磨パッド101上に電解液を供給し、電解液を冷却する。そして、電解液が充分に冷却された後に、研磨を開始させるようにしてもよい。また、研磨前であれば、研磨テーブル101や、研磨パッド102に対して、冷却された水や窒素ガス等の冷媒を直接噴きつけるように構成してもよい。この場合、研磨開始時に研磨パッド102の表面に水等の冷媒が残留すると、電解液濃度が薄くなるため、冷媒を取り除くか、電解液と置換してから研磨を行う必要がある。
【0097】
また、上述したドレッサー218(図1参照)に冷却手段を設け、ドレッサー218により研磨パッド101を冷却するような構成としてもよい。この場合、研磨開始前のドレスに使用したり、研磨中にドレスを行ったりする場合(in−situドレス)には、研磨中も冷却可能である。
また、上述した基板の冷却方法と電解液の冷却方法を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0098】
また、他の電解複合研磨方法として以下のような方法を用いることも可能である。
研磨の最初から基板の冷却を行うのではなく、バルク研磨の初期は常温で研磨し、研磨途中で冷却を開始し、クリア研磨開始直前に基板が所定温度に冷却されていればよい。この場合、渦電流センサ等の膜厚センサを用いて導電膜が所定の厚さにまで研磨されたことを検出し、冷却を開始する。このように構成しても、研磨終了時点での平坦化特性を確保することができるとともに、金属膜の表面粗さを抑えることができる。また、基板の冷却時間を短縮することができるため、製造効率を向上させることができる。膜厚が所定の厚さまで研磨されたことを検知する方法は渦電流センサの他に、光学式モニタ、蛍光X線による膜厚測定、電気抵抗の変化をモニタリングする方法等がある。
【0099】
(膜厚センサ)
ここで、上述した各膜厚測定方法について説明する。
まず渦電流センサによる方法とは、各部の膜厚による合成インピーダンスの変化を利用して膜厚を検出するものであり、研磨テーブル内に埋設された渦電流センサから高周波を導電膜に印加することで膜厚を測定するものである。したがって、導電膜のような膜厚の厚いものでも高精度な膜厚測定が可能となる。
【0100】
光学式モニタによる測定とは、光干渉により反射強度が変化することを利用するものであり、残留膜厚が所定膜厚以下になると、反射光が膜厚に対して変化することを利用する。なお、使用する光の波長により変化開始点が異なるため、波長は、被研磨材料に対して適宜選択する。光学式モニタによる測定方法としては、研磨テーブル内に埋設された光源により研磨パッドの貫通孔を通して測定光を照射する方法や、基板を研磨テーブル外にオーバーハングさせた状態で測定する方法がある。
【0101】
蛍光X線による測定とは、1次X線を測定対象に照射した際に発生する蛍光X線の強度が膜厚に対して変化することを利用するものであり、研磨中において研磨テーブル内に埋設されたX線源から1次X線を導電膜に照射することで測定する。
研磨中の電圧・電流値のモニタリングによる膜厚の測定は、測定対象の導電膜の膜厚に応じて電気抵抗が変化することを利用する。この場合、電圧一定で電流の変化を測定し、電気抵抗から膜厚を算出する方法、逆に電流一定で電圧の変化を測定する方法のいずれでもよい。
【0102】
また、バリア膜上の導電膜や絶縁膜上のバリア膜を含む導電膜の研磨において、導電膜のクリア(不用部分の導電膜の完全除去)、すなわち、導電膜とは異なる金属の露出を検出する方法としては上述した方法の他に以下の方法が挙げられる。
まず、研磨パッドの表面温度や基板の表面温度の変化によって検出する方法がある。放射温度計による研磨パッドの表面温度の計測や、テーブル内に埋設された放射温度計により研磨パッドに設けた穴を介して、基板の表面温度を測定すればよい。
また、基板と研磨パッド間の摩擦力の変化によって検出する方法があり、研磨パッドが装着された研磨テーブルや、基板のキャリアの駆動電流の変化、基板のキャリアについて特定周波数の振動振幅の経時変化を測定する。
また、基板の表面画像の変化による方法として、研磨テーブル内に埋設された色度センサにより研磨パッドに設けた穴を介して基板の表面の色調の変化や、CCDやCMOS等の撮像装置による基板表面の2次元画像の変化を測定することにより検出できる。
また、電解液中の成分の変化、例えば、研磨テーブルから排出される電解液中の導電膜由来の金属イオン濃度の変化を測定することにより検出する方法がある。
なお、ここでいうバリア膜は、Ta、TaN,Ti,TiN、Ru、WN等であり、また導電膜としてはCu,W,Ni、Au,Ag,Rhやバリア膜等の導電材料をいう。
【0103】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態等に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態等で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した冷却手段は、ヘッド側と研磨パッド側の双方に設けるような構成にしても構わない。
また、本実施形態の電解複合研磨装置として、ロータリー式の電解複合研磨装置について説明したが、研磨テーブルと略同径のヘッドを備えたオービタル方式の電解複合研磨装置を用いることも可能である。オービタル方式は研磨パッドの面積が小さいため、研磨パッド側に冷却手段を設ける場合に冷却効率が高くなる。
【0104】
(電解液)
また、電解液として以下のものを採用することも可能である。
電解液は、(1)有機酸またはその塩の1種類以上、(2)スルホン酸基を有する強酸の1種類以上、(3)腐食抑制剤(窒素含有複素環化合物)、(4)水溶性高分子化合物、(5)pH調整剤、(6)砥粒、及び(7)界面活性剤を含んでいるものが好ましい。
【0105】
電解液に含まれる各成分について以下に説明する。
電解液に含まれる有機酸は、研磨の対象となる銅等の金属と可溶性錯体を形成する必要がある。つまり、配位結合して水溶液中に溶解するもので、少なくとも有機酸単独で水に溶解する必要がある。有機酸は、その分子内にカルボキシル基(−COOH)を1個以上有するもの、またカルボキシル基と共にヒドロキシ基(−OH)を1個以上有するものであることが好ましい。また、これら有機酸は、電解液のpHを安定化させるpH緩衝作用も有している。
【0106】
電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を1個有するカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、ソルビン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、レブリン酸、安息香酸、m−トルイル酸、またはアセチルサリチル酸などが挙げられる。また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、α-ケトグルタル酸、アコニット酸、フタル酸、またはピロメリト酸などが挙げられる。
【0107】
また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基と共にヒドロキシ基を1個以上有するカルボン酸としては、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、オキサル酢酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、ゲンチシン酸、プロトカテク酸、没食子酸、グルクロン酸、シアル酸、またはアスコルビン酸などが挙げられる。
【0108】
これらカルボン酸の塩としては、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩またはヒドロキシルアミン塩などが挙げられる。これらの1種を電解液に加えても2種以上の混合物を加えてもよい。
以上に挙げた有機酸の群のうち、特に好ましく使用することのできるものは、マロン酸、コハク酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、または酒石酸である。これらの有機酸を添加した電解液を用いて研磨実験を行うと、比較的速い研磨速度で、かつ平滑な被研磨表面が得られることが確かめられている。
【0109】
有機酸の濃度は、研磨時の温度での飽和濃度以下である必要がある。何故ならば飽和濃度を超えると有機酸が電解液中に析出してしまい安定な研磨が行えないからである。例えば、マレイン酸の飽和濃度は、78重量%(25℃)である。一方、逆に有機酸の濃度が0.1%より低いと、溶解する金属と配位結合する有機酸の基板表面への供給量が不足し、研磨が速やかに進まず、被研磨面の表面粗さが大きくなる等の問題が生じる。また濃度が低いと十分なpH緩衝作用を持たなくなる。以上の理由から、有機酸の濃度は、0.1〜80重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることが更に好ましい。
【0110】
電解液に含まれるスルホン酸基を有する強酸は、エッチング作用を促進するとともに、電解液の導電率を上げて研磨のための電流を流しやすくするためのものである。ここで、強酸とは、酸の強弱を示す第1解離定数の逆数の対数であるpKaが3以下のものをいう。
一般に、強酸を用いると、銅の溶解が始まる電位が低い。すなわち、低い印加電圧で銅の研磨が可能となる。しかし、硫酸、硝酸または過塩素酸を用いると、銅のエッチング等により被研磨面の表面粗さが大きく、またリン酸は、表面光沢が得られる濃度域では粘度が高いために銅の研磨に必要な電圧が比較的高いなどの問題がある。これに対して、例えばメタンスルホン酸を用いた場合は、銅研磨に必要な電圧が低く、かつ研磨後の表面も比較的平滑で、良好な研磨特性が得られることが確かめられている。
【0111】
好ましく使用することができるスルホン酸基を有する強酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、タウリン、システイン酸、アルキル基の総炭素数が1〜6であるアルキルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはフルオロスルホン酸などが挙げられ、これら1種類以上を使用することができる。スルホン酸基を有する強酸の濃度は、0.1〜20重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。スルホン酸基を有する強酸の濃度が低すぎると電解液の導電率が低くなり、電流が流れにくくなる。このため、スルホン酸基を有する強酸の濃度は、5重量%以上であることが好ましい。また、スルホン酸基を有する強酸の濃度が20重量%を越えると、電解液中の有機酸やその他の成分の飽和溶解度が減じて沈殿を生じるおそれがある。
【0112】
電解液に含まれる腐食抑制剤は、窒素含有複素環化合物であることが好ましく、研磨の対象となる銅等の金属と化合物を形成し、金属表面に保護膜を形成することで、金属の腐食を抑制する化合物として知られているものでよい。このような腐食抑制剤は、過剰な研磨を抑制しディッシング等を防止するため平坦化を促進する効果がある。
【0113】
好ましく使用することのできる腐食抑制剤として、従来から一般に知られている銅の腐食抑制剤であるベンゾトリアゾール及びその誘導体が挙げられる。上記のような平坦化を促進する効果を有するものとして、他に、インドール、2−エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メチルベンゾチアゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンズオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、ピリジン、フェナジン、アクリジン、1−ヒドロキシピリジン−2−チオン、2−アミノピリジン、2−アミノピリミジン、トリチオシアヌル酸、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、6−アミノプリン、6−チオグアニン及びこれらの組合せからなる群より選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0114】
腐食抑制剤は、その濃度が低いと、保護膜形成が不十分となるため、銅等の金属に過剰なエッチングが生じて平坦な被研磨面が得られない。一方、飽和溶解度以下であっても、腐食抑制剤の濃度が高すぎると、銅等の金属表面に保護性が過剰に形成されて研磨速度が低下し、しかも均一に研磨ができないため、表面粗さやピットの原因にもなる。以上のことから、腐食抑制剤の濃度は、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.02〜2重量%であることが更に好ましい。
【0115】
電解液に含まれる水溶性高分子化合物は、腐食抑制剤と共に保護膜を形成し、過剰なエッチングを抑制して、銅等の金属表面を平坦化するのに効果がある。また、水溶性高分子化合物を含む電解液にあっては、銅等の金属表面(被研磨面)表層近傍での電解液粘度が高くなるため、金属表面に存在する微細な凹凸の凹部に粘性皮膜が形成され、微細な凹凸も研磨されて光沢面が得られる。
【0116】
好ましく使用することのできる水溶性高分子化合物のうち、上記のような効果を有するものとして、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリエチレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメトキシエチレン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンなどから選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0117】
これらの水溶性高分子化合物として、質量平均分子量が1000〜500000のものを用いることができる。質量平均分子量が500000を越える場合には、電解液中に溶解せず腐食抑制剤や砥粒と凝集を起こす原因となってしまい、質量平均分子量が1000未満では銅等の金属表面に十分な保護膜が形成できず平坦化性能が悪化する。水溶性高分子化合物の質量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましく、2000〜25000であることが更に好ましい。
【0118】
水溶性高分子化合物の濃度は、電解複合研磨の研磨速度を低下させず、かつ過剰な研磨作用を抑制するため、0.005〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%であることが更に好ましい。
【0119】
電解液のpHを調整するため、電解液にpH調整剤を添加しても良い。好ましいpH調整剤としては、主にアルカリが用いられ、アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアミン、ポリアミン、アルカリ金属化合物(例えば水酸化カリウム)、及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種類以上が選択できる。アルカリの濃度は、一般には0.1〜20重量%で、被研磨物の用途、材料、含有する有機酸または有機酸塩及び強酸の濃度と調整するpHにより適宜決めればよい。
【0120】
好ましい電解液のpHは2〜10である。電解液のpHが低い場合は、電解複合研磨装置の材料選定に耐腐食性を考慮しなければならず、また研磨速度は高くなる一方、被研磨面の粗さが増え、銅等の金属の過剰エッチングが進み平坦な被研磨面が得にくくなる。電解液のpHが高い場合は、腐食抑制剤及び/または水溶性高分子化合物と銅との間における保護膜形成が不十分となり、平坦化作用が不十分となることがある。従って、半導体基板の銅配線プロセスのように、研磨速度が高く、表面粗さに優れた光沢面で平坦化が求められる場合、電解液のpHは3〜6であることが特に好ましい。
【0121】
電解液には砥粒が含まれることが好ましい。砥粒には銅等の金属を機械的に研磨除去する作用があるが、本発明においては、腐食抑制剤及び水溶性高分子化合物により形成された保護膜を適宜機械的に研磨除去する作用もある。この砥粒の作用により、余分な保護膜が除去されて、電解複合研磨における研磨速度が十分速くなる。
【0122】
電解液として好ましく用いることのできる砥粒としては、アルミナ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、及び酸化マンガンから選ばれる1種類以上を挙げることができる。これらの中でも、アルミナ、コロイダルシリカ、またはヒュームドシリカが好ましく用いられる。
【0123】
電解複合研磨として有効に機能させる場合における電解液中の砥粒の濃度は、10重量%以下であることが好ましく、砥粒の効果を出すためには、砥粒の濃度は、0.01重量%以上であることが必要である。一方、電解液中に分散させて使用する砥粒が無くとも研磨パッドのような固定砥粒を使用し、研磨パッドを銅等の金属表面に接触させることで保護膜除去の効果は有効であるので、そのような場合には電解液中に砥粒はなくてもよく、もちろん固定砥粒砥との併用も可能である。砥粒を使用する場合、砥粒の濃度が10重量%を越えると砥粒粒子の凝集が増加し、電解液の粘性が極端に高くなる場合もあり、被研磨面への砥粒堆積による電解複合研磨の阻害やスクラッチ発生の原因となる。このため、最適な砥粒の濃度は、0.05〜2重量%である。
【0124】
電解液は界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、砥粒の分散性を向上させるものであればよく、カチオン性、アニオン性、両性、及び非イオン性のいずれも使用することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アミドスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、またはそのホルマリン縮合物が用いられる。また、カチオン性界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩や脂肪族アンモニウム塩等が用いられる。これらは、砥粒の濃度や電解液のpHにより、適宜選択し用いられる。界面活性剤は、好ましくはアニオン性界面活性剤で、特に好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物である。
【0125】
電解液の導電率は、5〜200mS/cmであることが望ましい。電解液の導電率が低いと、研磨速度を上げるために印加電圧または電流を高くしなければばらないが、その場合には、酸素発生による研磨に対する電流効率の低下、被研磨表面のピット発生、保護膜の破壊による平坦化作用への悪影響等がある。したがって、より低い電圧で電解複合研磨を行うことが望まれ、そのためには、電解液の導電率が5〜200mS/cmであることが好ましい。
【0126】
電解液の組成の例としては、(1)2〜80重量%の有機酸、(2)2〜20重量%のスルホン酸基を有する強酸、(3)0.01〜1重量%の腐食抑制剤、(4)0.01〜1重量%の水溶性高分子化合物、(5)0.01〜2重量%の砥粒、及び(6)約0.01〜1重量%の界面活性剤を備えている水溶液が挙げられる。電解液の溶媒は、脱イオン水、好ましくは超純水である。
【0127】
(研磨パッド)
また、研磨パッドとして以下のものを採用することも可能である。
研磨パッドの種類に関しては、独立発泡ポリウレタンパッドや連続発泡のスウェードパッドが挙げられる。また、砥粒を含まない電解液を使用する場合、砥粒を結合剤によリバインドした固定砥粒パッドを使用しても良い。その砥粒として、酸化セリウム(CeO2)、アルミナ(A12O3)、炭化珪素(SiC)、酸化珪素(SiO2)、ジルコニア(Zr02)、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化マンガン(Mn02、Mn2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、ダイヤモンド(C)、又はこれらの複合材料を採用することが可能である。また結合剤として、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂等を採用することが可能である。また、被研磨対象の導電膜表面へ印加される電圧を確保することを目的として、研磨表面の少なくとも一部に導電面を有する導電性パッドを使用しても良い。
【0128】
ここで、研磨パッドの連通溝形状については、1つ以上の(1)同心円溝、(2)偏心溝、(3)多角形溝(格子溝を含む)、(4)らせん溝、(5)放射溝、(6)平行溝、(7)弧状溝やこれらの組合せを形成しても良い。これらの溝形状は電解液の保持・排出に影響する。例えば、同心円溝や偏心溝については、流路が閉じているため電解液が研磨パッド上に保持される効果を有する。これに対して、多角形溝や放射溝は研磨対象への電解液の流入及び研磨パッド外への電解液の排出を促進する効果を有する。なお、ウエハ面内への電解液の流入、流出及び保持の効率を高めるために、研磨パッド面内において溝幅や溝ピッチ、溝深さを適宜調整して、研磨パッド内の溝密度分布を調整してもよい。例えば溝幅・溝深さは0.4mm以上、溝ピッチは溝幅の2倍以上が良く、電解液の流れを考慮すれば、溝幅・溝深さは0.6mm以上が好ましい。また、溝間の電解液の流れを活発にすることを目的として、溝間に補助溝(例えば、同心円溝間に形成された複数の細溝や、太い格子溝間に形成された細溝等)を設けても良い。また溝の断面形状については、四角溝や丸溝の他にV溝を採用してもよい。また溝からの電解液の排出を促進させる際は、研磨パッドが装着された研磨テーブルの回転方向を考慮して、回転方向下流に傾斜した順溝を形成してもよい。逆に溝からの電解液の排出を抑制する際は、回転方向上流側に傾斜した逆溝を形成しても良い。さらに電解液の保持を目的として、研磨パッド表面に貫通孔を1つ以上形成しても良い。
【0129】
また、研磨パッドのウエハとの接触面形状は、電解反応により生成した保護皮膜のメカニカル除去に影響する。接触面でのメカニカル作用を増加させるためには、接触面形状が鋭利なものが良く、円錐形、多角錐形、ピラミッド形、プリズム形が挙げられる。ここで、被研磨物によっては接触面形状が鋭利過ぎるとスクラッチ等の原因となるため、これを回避する策として、円錐台や角錐台のような上面を平坦化した形状が挙げられる。また、接触面でのメカニカル作用をさらに低減させる形状としては、円柱、楕円柱、半球が挙げられる。これらの形状の配置としては、格子や千鳥、三角配置のような規則性の有るものや規則性を消すためにランダム形状にしてもよい。また、これらの形状は研磨パッドの研磨面内において複数以上存在してもよく、またその密度分布を調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】基板処理装置の配置構成を示す平面図である。
【図2】電解複合研磨装置の概略構成図である。
【図3】ヘッドの断面図である。
【図4】ヘッドの底面図である。
【図5】電解複合研磨装置の要部を概略的に示す縦断面図である。
【図6】電解複合研磨の工程図である。
【図7】温度に対する表面粗さ比を示すグラフである。
【図8】温度に対する研磨速度比を示すグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態に係る冷却手段の説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る図2のA部に相当する拡大図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る図2のA部に相当する拡大図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
【図13】本発明の第7実施形態に係る電解液供給機構の概略構成図である。
【符号の説明】
【0131】
W…基板
1…ヘッド
2…ヘッド本体(押圧機構)
3…リテーナリング
21,24,25…流体室(圧力室)
28,95…冷却手段(温度制御手段)
31…流体流路
50…電解液
63…凹部
64…バリア膜(金属膜)
66…導電膜(金属膜)
67…凹部
101…研磨パッド
102…電解液供給ノズル(電解液供給機構)
114…ヘッド用モータ(相対移動機構)
252…電源
254…支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記基板表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする電解複合研磨方法。
【請求項2】
前記金属膜は、下層のバリア膜及び上層の導電膜を備え、
前記導電膜の研磨中において前記バリア膜が露出する前までに、前記基板表面を冷却することを特徴とする請求項1記載の電解複合研磨方法。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記水溶性高分子化合物が溶解する温度未満に、前記基板表面の温度を制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電解複合研磨方法。
【請求項4】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記電解液を冷却して研磨を行うことを特徴とする電解複合研磨方法。
【請求項5】
前記電解液の冷却は前記研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことを特徴とする請求項4に記載の電解複合研磨方法。
【請求項6】
研磨パッドと、
金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、
前記基板と対向または近接させた対向電極と、
前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、
前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、
前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、
前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、
前記基板表面を冷却する温度制御手段と、
を有することを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、冷却装置を備え、
前記温度制御手段は、前記冷却装置によって前記ヘッドを冷却することを特徴とする請求項6記載の電解複合研磨装置。
【請求項8】
前記ヘッドは、流体が流通する流体室を備え、
前記温度制御手段は、前記流体室への前記流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記流体を冷却することを特徴とする請求項6記載の電解複合研磨装置。
【請求項9】
前記流体室は、前記流体の流入により膨張し前記研磨パッドに対して前記基板を押圧する押圧調整手段を備えることを特徴とする請求項7または8記載の電解複合研磨装置。
【請求項10】
前記温度制御手段は、前記研磨パッドを載置する研磨テーブル内を流通する熱媒体を冷却することを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項11】
研磨パッドと、
金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、
前記基板と対向または近接させた対向電極と、
前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、
前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、
前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、
前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電解液を冷却する温度制御手段と、
を有することを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項12】
前記温度制御手段は、前記電解液供給機構における前記電解液の供給口付近において前記電解液を冷却することを特徴とする請求項11記載の電解複合研磨装置。
【請求項13】
前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、
該電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近には、前記供給口付近以外の電解液供給流路より表面積の大きい流路を有する熱交換部が形成され、
前記温度制御手段は、前記熱交換部において前記電解液を冷却することを特徴とする請求項11または請求項12記載の電解複合研磨装置。
【請求項14】
前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、
前記温度制御手段は、前記電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近に設けられたペルチェ素子であることを特徴とする請求項11または請求項12記載の電解複合研磨装置。
【請求項15】
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記電解液供給機構は、前記電解液のうち前記水溶性高分子化合物を含む第1溶液と、成分中に凝集成分を含まない第2溶液と、を各々異なる流路から供給するとともに、供給口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを混合し、
前記温度制御手段は、前記電解液のうち、少なくとも前記第2溶液を冷却することを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項16】
前記電解液供給機構は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記電解液を保持した状態で貯留する第1電解液タンクと、該第1電解液タンクと供給口との間において、前記第1電解液タンクから供給される前記電解液を貯留する第2電解液タンクとを備え、
前記第2電解液タンクには、前記電解液を前記第1電解液タンクから供給される前記電解液の温度より低い温度に冷却する予備冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項17】
前記基板表面を冷却する温度制御手段を備えることを特徴とする請求項11ないし請求項16のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項1】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記基板表面を冷却しながら研磨を行うことを特徴とする電解複合研磨方法。
【請求項2】
前記金属膜は、下層のバリア膜及び上層の導電膜を備え、
前記導電膜の研磨中において前記バリア膜が露出する前までに、前記基板表面を冷却することを特徴とする請求項1記載の電解複合研磨方法。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記水溶性高分子化合物が溶解する温度未満に、前記基板表面の温度を制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電解複合研磨方法。
【請求項4】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法であって、
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記電解液を冷却して研磨を行うことを特徴とする電解複合研磨方法。
【請求項5】
前記電解液の冷却は前記研磨パッドまたは基板表面への供給直前で行うことを特徴とする請求項4に記載の電解複合研磨方法。
【請求項6】
研磨パッドと、
金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、
前記基板と対向または近接させた対向電極と、
前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、
前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、
前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、
前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、
前記基板表面を冷却する温度制御手段と、
を有することを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、冷却装置を備え、
前記温度制御手段は、前記冷却装置によって前記ヘッドを冷却することを特徴とする請求項6記載の電解複合研磨装置。
【請求項8】
前記ヘッドは、流体が流通する流体室を備え、
前記温度制御手段は、前記流体室への前記流体の供給流路または流体貯留タンクにおいて前記流体を冷却することを特徴とする請求項6記載の電解複合研磨装置。
【請求項9】
前記流体室は、前記流体の流入により膨張し前記研磨パッドに対して前記基板を押圧する押圧調整手段を備えることを特徴とする請求項7または8記載の電解複合研磨装置。
【請求項10】
前記温度制御手段は、前記研磨パッドを載置する研磨テーブル内を流通する熱媒体を冷却することを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項11】
研磨パッドと、
金属膜が成膜された基板を保持するヘッドと、
前記基板と対向または近接させた対向電極と、
前記研磨パッドに前記ヘッドに保持された基板を押圧する押圧機構と、
前記研磨パッドおよび前記ヘッドを相対移動させる相対移動機構と、
前記基板表面の金属膜に電解液を供給する電解液供給機構と、
前記基板表面の金属膜と対向電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電解液を冷却する温度制御手段と、
を有することを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項12】
前記温度制御手段は、前記電解液供給機構における前記電解液の供給口付近において前記電解液を冷却することを特徴とする請求項11記載の電解複合研磨装置。
【請求項13】
前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、
該電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近には、前記供給口付近以外の電解液供給流路より表面積の大きい流路を有する熱交換部が形成され、
前記温度制御手段は、前記熱交換部において前記電解液を冷却することを特徴とする請求項11または請求項12記載の電解複合研磨装置。
【請求項14】
前記電解液供給機構は、前記電解液を前記基板表面の金属膜に供給する電解液供給ノズルを備え、
前記温度制御手段は、前記電解液供給ノズルにおける前記電解液の供給口付近に設けられたペルチェ素子であることを特徴とする請求項11または請求項12記載の電解複合研磨装置。
【請求項15】
前記電解液は、その成分中に少なくとも水溶性高分子化合物を含み、
前記電解液供給機構は、前記電解液のうち前記水溶性高分子化合物を含む第1溶液と、成分中に凝集成分を含まない第2溶液と、を各々異なる流路から供給するとともに、供給口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを混合し、
前記温度制御手段は、前記電解液のうち、少なくとも前記第2溶液を冷却することを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項16】
前記電解液供給機構は、前記水溶性高分子化合物が凝集する温度を超えて、前記電解液を保持した状態で貯留する第1電解液タンクと、該第1電解液タンクと供給口との間において、前記第1電解液タンクから供給される前記電解液を貯留する第2電解液タンクとを備え、
前記第2電解液タンクには、前記電解液を前記第1電解液タンクから供給される前記電解液の温度より低い温度に冷却する予備冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項17】
前記基板表面を冷却する温度制御手段を備えることを特徴とする請求項11ないし請求項16のいずれか1項に記載の電解複合研磨装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−125825(P2009−125825A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300252(P2007−300252)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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