説明

電解質組成物、触媒インク及びこれを使用して製造された固体電解質膜

【課題】インクジェットプリント用電解質インク、これを使用して製造された固体電解質膜、及び該固体電解質膜を含む二次電池を提供する。
【解決手段】溶媒、該溶媒に溶解されたリチウム塩、及び該溶媒に溶解または分散されたシクロオレフィン系モノマーを含む電解質組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質組成物及び触媒インク、それらを使用して形成された固体電解質膜、及び該固体電解質膜を含む二次電池に係り、さらに詳細には、固体電解質膜を製造するための電解質インク及び触媒インク、それらを使用して製造された固体電解質膜、及び該固体電解質膜を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、移動電話、個人携帯用情報端末機(PDA)、携帯型マルチメディアプレーヤ(PMP)のような携帯用ポータブル機器の電源、高出力用ハイブリッド自動車、電気自動車などにおけるモータ駆動用電源、電子インク(e−ink)、電子紙(e−paper)、フレキシブル液晶表示素子(LCD)、フレキシブル有機ダイオード(OLED)のようなフレキシブルディスプレイ素子用電源として、その使用が増加している。
【0003】
二次電池に使われる固体電解質の種類としては、リチウム塩を含むポリエチレンオキシド(PEO)、イオン伝導性高分子(PPO)などから形成された全固体電解質;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、非イオン伝導性高分子(PVdF)などから形成されたゲルポリマー電解質;蒸着薄膜電池用LiPONなどがある。全固体電解質を製造するためには、一般的に、リチウム塩、イオン伝導性高分子及び溶媒を含むインクを液状で塗布またはプリントした後、溶媒を乾燥する過程が必要である。ゲルポリマー電解質を製造するためには、一般的に、リチウム塩、非イオン伝導性ホストポリマー、溶媒及び重合開始剤を含むインクにおいて、熱または紫外線(UV)硬化方式でホストポリマーを架橋させる過程が必要である。また、蒸着薄膜電池用LiPONを製造するためには、LiPOをターゲットとして使用してスパッタリングを行う過程が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一具現例によれば、固体電解質膜を製造するための電解質組成物及び触媒インクが提供される。
【0005】
本発明の他の具現例によれば、前述の電解質組成物及び触媒インクを使用した固体電解質膜の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の具現例によれば、前述の製造方法によって製造された固体電解質膜及び該電解質膜を使用した二次電池が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一具現例による電解質組成物は、溶媒、前記溶媒に溶解されたリチウム塩、及び前記溶媒に溶解または分散されたシクロオレフィン系モノマーを含む。
【0008】
前記シクロオレフィン系モノマーは、ノルボルネン系モノマー、またはジシクロペンタジエン系モノマーでありうる。
【0009】
本発明の一具現例による触媒インクは、有機溶媒、及び該有機溶媒に溶解または分散された、シクロオレフィン系モノマーの開環及び重合反応を促進できる触媒を含む。
【0010】
前記触媒は、グラブス触媒でありうる。
【0011】
本発明の他の具現例による固体電解質膜の製造方法は、電極上に前述の触媒インクをプリントする段階と、前記プリントされた触媒インクを乾燥する段階と、前記触媒インクがプリントされた位置の電極の領域上に、前述の電解質組成物を塗布する段階と、前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む。
【0012】
前記触媒インクは、活物質がコーティングされた電極上に直接プリントされうる。
【0013】
本発明の他の具現例による固体電解質膜の製造方法は、電極上に前述の電解質組成物を塗布する段階と、前記電解質組成物が塗布された位置の電極の領域上に、前述の触媒インクをプリントする段階と、前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む。
【0014】
本発明の他の具現例による固体電解質膜は、前述の製造方法によって製造される。
【0015】
本発明の他の具現例による固体電解質膜は、リチウム塩、溶媒、及びシクロオレフィン系モノマーの開環重合体を含む。
【0016】
前記シクロオレフィン系モノマーの開環重合体は、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはジシクロペンタジエン系モノマーの開環重合体でありうる。
【0017】
本発明の他の具現例による二次電池は、カソード及びアノードを含み、前記カソードとアノードとの間に前述の固体電解質膜が介在される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電解質インク及び触媒インクを使用して、所定のパターンを持って、電極との接触性が優秀な固体電解質膜を製造できて、薄型のマイクロ二次電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一具現例による二次電池の概略的な断面図である。
【図2】本発明の一具現例による固体電解質膜の製造方法を示す図面である。
【図3】本発明の他の具現例による固体電解質膜の製造方法を示す図面である。
【図4】実施例1による二次電池の充放電曲線を示したグラフである。
【図5】実施例2による二次電池の充放電曲線を示したグラフである。
【図6】比較例1による二次電池の充放電曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、固体電解質膜を製造するための電解質組成物及び触媒インクについて具体的に説明する。
【0021】
本発明の一具現例による電解質組成物は、溶媒、前記溶媒に溶解されたリチウム塩、及び前記溶媒に溶解または分散されたシクロオレフィン系モノマーを含む。
【0022】
前記電解質組成物は、インクジェットプリンティングが可能な電解質インクでありうる。この場合、前記電解質インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度(shear rate)で、粘度が100mPa・sec以下でありうる。例えば、前記電解質インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、粘度が2ないし6mPa・secでありうる。
【0023】
前記電解質組成物に含まれる溶媒としては、イオン伝導度と誘電率とが高くありつつ粘度が低い溶媒であり、高誘電率溶媒及び低沸点溶媒の混合溶媒が含まれうる。前記高誘電率溶媒としては、当業界で使われるものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートのような環状カーボネート、またはガンマ−ブチロラクトンを使用できる。また、低沸点溶媒も、当業界で一般的に使われるものであり、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートのような鎖型カーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンまたは脂肪酸エステル誘導体などを使用でき、特別に制限されるものではない。前記高誘電率溶媒と低沸点溶媒との混合体積比は、放電容量及び充放電寿命の側面で、1:1ないし1:9であることが望ましい。
【0024】
前記混合溶媒に溶解されるリチウム塩は、リチウム電池で一般的に使われるものであるならば、いずれも使用可能であり、LiClO、LiCFSO、LiPF、LiN(CFSO、LiBF、LiC(CFSO、及びLiN(CSOからなる群から選択された一つ以上の化合物が望ましい。前記混合溶媒のうち、リチウム塩の濃度は、電解質膜のイオン伝導能を高く維持しつつ、電解液の粘度によるイオンの移動性低下を防止するために、0.5ないし2Mほどであることが望ましい。
【0025】
本発明の一具現例による電解質組成物は、前記リチウム塩が溶解された溶媒に開環及び重合反応が可能なシクロオレフィン系モノマーを添加して製造される。前記シクロオレフィン系モノマーは、今後説明する触媒インクに含まれている触媒によって、環の二重結合が分解され(開環反応)、その後開環されたシクロオレフィン系モノマー間の重合が開始される。重合体が形成されることによって、電解質組成物は固体化されうるので、一般的なゲル型電解質の製造過程で必要な硬化過程は不要である。また、シクロオレフィン系モノマーを含有する電解質組成物は、インク形態であって、一般的な電解質インクより粘度が低いので、固体電解質膜の製造時に取扱いが容易である。
【0026】
前記シクロオレフィン系モノマーの含有量は、電解質組成物の重量を基準に、0.5ないし10重量%でありうる。0.5重量%以上の含有量で、優秀な強度を有する固体電解質膜を得ることができ、10重量%以下の含有量は、溶媒への溶解度及び電解質の特性面で望ましい。
【0027】
開環及び重合反応が可能なシクロオレフィン系モノマーとして、ノルボルネン系モノマー、またはジシクロペンタジエン系モノマーが使われうる。
【0028】
本発明の一具現例に使われるノルボルネン系モノマーは、化学式1で表示される化合物でありうる:
【化1】

【0029】
前記式で、RないしR10はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、C−C30アリールカルボニル基、C−C20アルキルオキシカルボニル基、C−C20アルキルカルボニル基またはC2−C20アルキルカルボニルオキシ基を示し、R及びRは、共に=Oを形成でき、R及びRは、互いに連結されて5員環または6員環の環またはヘテロ環構造を形成でき、R及びR10は、共にR及びRが結合されている炭素原子間のさらなる結合を示すことができる。
【0030】
前記化学式1において、R及びRが互いに結合し、環構造を形成した例としては、下記化学式2で表示される化合物であるジシクロペンタジエン系モノマーを挙げることができる:
【化2】

【0031】
前記式で、R’ないしR12’はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、または置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基を示し、R’及びR’は、共に=Oを形成でき、R10’及びR11’は、共に=Oを形成できる。
【0032】
前記化学式1及び2で使われる置換基であるC−C20アルキル基は、直鎖型または分枝型の構造を有し、望ましくは、C−C12、さらに望ましくは、C−C、最も望ましくは、C−Cのアルキル基が好ましい。具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキル基に含まれた一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0033】
化学式1及び2で使われる置換基であるC−C20アルコキシ基は、−O−アルキルの構造を有し、前記酸素原子が主鎖と結合される。前記アルコキシ基としては、望ましくは、C−C12アルコキシ基、さらに望ましくは、C−Cアルコキシ基、最も望ましくは、C−Cアルコキシ基が好ましい。このようなアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などを挙げることができ、前記アルコキシ基に含まれた一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0034】
化学式1及び2で使われる置換基であるC−C20アルケニル基は、直鎖型または分枝型の構造を有し、前記定義されたアルキル基内に、一つ以上の不飽和二重結合が含まれたものを意味する。前記アルケニル基に含まれた一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0035】
化学式1及び2で使われる置換基であるC−C20アルキニル基は、直鎖型または分枝型の構造を有し、前記定義されたアルキル基内に、一つ以上の不飽和三重結合が含まれたものを意味する。前記アルキニル基に含まれた一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0036】
置換基であるC−C30アリール基は、一つ以上の芳香族環を含む炭素環の芳香族システムを意味し、C−C20アリール基が望ましく、C−C10アリール基がさらに望ましい。前記芳香族環は、ペンダント法で共に付着されたり、または融合(fused)されうる。前記アリール基のうち、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。このようなアリール基の具体的な例としては、フェニル基、ハロフェニル基(例えば、o−,m−及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基)、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビフェニル基、ハロビフェニル基、シアノビフェニル基、C−C10アルキルビフェニル基、C−C10アルコキシビフェニル基、o−,m−,及びp−トリル基、o−,m−及びp−クメニル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、(α,α−ジメチルベンゼン)フェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ハロナフチル基(例えば、フルオロナフチル基)、C−C10アルキルナフチル基(例えば、メチルナフチル基)、C−C10アルコキシナフチル基(例えば、メトキシナフチル基)、シアノナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ピレニル基、クリセニル基、エチル−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などを挙げることができる。
【0037】
置換基であるC−C30アルキルアリール基は、前記定義されたアリール基の水素原子のうち、一つ以上がアルキル基で置換されたものをいう。例えば、ベンジル基などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。前記アルキルアリール基のうち、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0038】
置換基であるC−C30アリールアルキル基は、前記定義されたアルキル基の水素原子のうち、一つ以上がアリール基で置換されたものをいう。例えば、4−tert−ブチルフェニル基、4−エチルフェニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。前記アリールアルキル基のうち、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0039】
置換基であるC−C20ヘテロアルキル基は、前記定義されたアルキル基の主鎖内に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子が含まれたものを意味する。前記ヘテロアルキル基のうち、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0040】
置換基であるC−C30ヘテロアリール基は、ヘテロ原子、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子のうち、選択された1個以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素原子の一つ以上の芳香族環からなるシステムを意味し、前記一つ以上の芳香族環は、互いに融合されたり、単一結合などを介して連結されうる。前記ヘテロアリール基のうち、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基などで置換されうる。
【0041】
置換基であるアリールカルボニル基は、アリール−C(=O)−の形態を有し、ここでアリール基は、前記定義した通りである。
【0042】
置換基であるアルキルオキシカルボニル基は、アルキル−O−(C=O)−の形態を有し、ここでアルキル基は、前記定義した通りである。
【0043】
置換基であるアルキルカルボニル基は、アルキル−(C=O)−の形態を有し、ここでアルキル基は、前記定義した通りである。
【0044】
置換基であるアルキルカルボニルオキシ基は、アルキル−(C=O)−O−の形態を有し、ここでアルキル基は、前記定義した通りである。
【0045】
前記化学式1で表示されるノルボルネン系モノマーの具体的な例として、それぞれ下記構造式で表示される化合物であるノルボルネン、2−ベンゾイル−5−ノルボルネン、エチル5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、2−アセチル−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−イルアセテート、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、ジメチルexo−トリシクロ(4.2.1.0(2.5)ノナ−3,7−ジエン)−3,4−ジカルボキシレートなどを挙げることができるが、それらに制限されるものではない。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
前記化学式2で表示されるジシクロペンタジエン系モノマーの具体的な例として、それぞれ下記構造式で表示されるジシクロペンタジエン、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−インデン−1,8−ジオン、メチルジシクロペンタジエンダイマーなどを挙げることができるが、それらに制限されるものではない。
【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
本発明の一具現例において、前述の電解質組成物は、必要によって、分散剤、保湿剤、緩衝剤などを適量にさらに含むことができ、このような成分及び含有量は、当業者が適切に選択できるものであるので、本明細書では詳細に記述しない。
【0058】
本発明の一具現例による触媒インクは、有機溶媒、及び該有機溶媒に溶解または分散された、前述のシクロオレフィン系モノマーの開環及び重合反応を促進できる触媒を含む。
【0059】
前記開環及び重合反応を促進できる触媒として、望ましくは、USP 6,111,121に開示されるようなグラブス触媒(Grubbs catalyst)が使われうるが、開示されたあらゆる類型のグラブス触媒が使われ、例えば、1世代または2世代のグラブス触媒が使われ、具体的には、下記構造式で表示される化合物を含む:
【化13】

【0060】
本発明の一具現例による触媒インクは、前記触媒を溶解または分散してインク化することによってプリントされうるように、有機溶媒を含む。触媒インクの溶媒として使われうる有機溶媒は、前記触媒を溶解または分散させることができるならば、特別に制限されるものではなく、具体的な例として、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、プロパノール(PrOH)、ブタノール(BuOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコールのようなアルコール;ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレンホスフェート、トリメチルホスフェートのような極性溶媒;ヘキサンのような飽和炭化水素類;トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;ジオキサン,ジエチルエーテルのようなエーテル類などの溶媒、またはそれらのうち、2以上を含む混合溶媒が使われうる。前記触媒の含有量は、触媒インクを基準に、0.1〜20重量%であることが望ましい。
【0061】
本発明の一具現例による触媒インクは、インクジェットプリンティングが可能である。この場合、前記触媒インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、粘度が100mPa・sec以下でありうる。例えば、前記触媒インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、粘度が2ないし6mPa・secでありうる。
【0062】
以下、前記電解質組成物及び触媒インクを使用して固体電解質膜を製造する方法について、図2及び図3を参照しつつ説明する。
【0063】
本発明の一具現例による固体電解質膜の製造方法は、図2に概略的に示した通り、電極上に、前述の触媒インクをプリントする段階と、前記プリントされた触媒インクを乾燥する段階と、前記触媒インクがプリントされた位置の電極の領域上に、前述のシクロオレフィン系モノマーを含有する電解質組成物を塗布する段階と、前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む。
【0064】
まず、触媒インクが電解質膜が形成される位置にプリントされる。望ましくは、前記触媒インクは、活物質がコーティングされた電極上に直接吐出されうる。触媒インクが電極上に吐出されれば、触媒インクに含まれた触媒が電極の活物質粒子間にしみ込む。
【0065】
前記プリントされた触媒インクは、20〜200℃の真空雰囲気で、1分ないし8時間乾燥して溶媒を除去することが望ましいが、必ずしもこのような範囲に限定されるものではない。
【0066】
前記溶媒が乾燥された触媒インク上に、電解質組成物が塗布される。電解質組成物は、インクジェットプリンティングが可能な電解質インクでありうる。電解質組成物は、インクジェットプリンティングまたは任意の他のプリンティング、またはスプレイコーティングによって塗布されうる。電解質インクがプリンティングされれば、電極上にプリントされた触媒インクに含まれていた触媒の活性によって、電解質インクに含まれていたシクロオレフィン系モノマーの開環及び重合反応が開始され、このような開環重合体からなる膜が形成されることによって、電極上には、固体電解質膜が形成される。
【0067】
本発明の他の具現例による固体電解質膜の製造方法は、図3に概略的に示した通り、電極上に、前述の電解質組成物を塗布する段階と、前記電解質組成物が塗布された位置の電極の領域上に、前述の触媒インクをプリントする段階と、前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む。
【0068】
前記方法は、前述の固体電解質膜の製造方法とは、触媒インクをプリンティングすることと、電解質組成物を塗布することとの順序が異なる。
【0069】
前記固体電解質膜の製造方法で、前記開環重合体を形成する段階は、常温で行われうる。
【0070】
本発明の一具現例によれば、固体電解質膜が既存のスラリーコーティングの代わりに、前述の触媒インク及び電解質インクを使用し、インクジェットプリンティング法で製造されうる。インクジェット方式とは、インクジェットプリンタのノズルから、電極インクが液滴でもって集電体上にプリントされる方式である。前記インクジェット方式には、熱駆動方式、圧電素子方式などがあるが、電池材料の熱安定性の観点から、圧電素子方式を使用することが望ましい。インクジェット方式でプリントする方法は、特に限定されるものではない。例えば、インクジェットヘッドを利用したインクジェットプリンタを市販されるコンピュータに連結させ、適切なソフトウェアによって、所定のパターンにプリントできる。
【0071】
一般的に、固体電解質膜の製造方法において、熱またはUV硬化のためには、開始剤を添加しなければならず、パターニングを行うためには、フォトレジスト、露光、現像のような複雑な工程を伴う。本発明の一具現例による固体電解質膜の製造方法によれば、前述の電解質インクをインクジェット方式でプリントすれば、所定のパターンを有する固体電解質膜が形成され、別途の硬化過程は不要である。
【0072】
本発明の一具現例による固体電解質膜の製造方法によれば、インクジェットプリント方式で固体電解質膜を形成できるので、電池製造のあらゆる工程をインクジェットプリント方式で行うことになる。
【0073】
本発明の他の具現例による固体電解質膜は、リチウム塩を含有する溶媒が含浸されたシクロオレフィン系モノマーの開環重合体を含む。前記シクロオレフィン系モノマーの開環重合体は、下記化学式3で表示されるノルボルネン系モノマーの開環重合体、または下記化学式4で表示されるジシクロペンタジエン系モノマーの開環重合体でありうる。
【0074】
【化14】

【0075】
前記式で、RないしR10は、化学式1で定義した通りであり、nは、1以上の整数である。nの上限と関連して、触媒の量などによって、無限な個数のノルボルネン系モノマーの開環重合がなされうる。従って、nは、触媒の量などを変えることによって、当業者によって適切に選択されうる。
【0076】
【化15】

【0077】
前記式で、R’ないしR12’は、化学式2で定義した通りであり、n及びkは、1以上の整数である。n及びkの上限と関連して、触媒の量などによって、無限な個数のジシクロペンタジエン系モノマーの開環重合がなされうる。従って、n及びkは、触媒の量などを変えることによって、当業者によって適切に選択されうる。
【0078】
固体電解質膜の製造時、触媒インクに含まれていた触媒は、電極活物質間にしみ込むために、触媒によるシクロオレフィン系モノマーの開環及び重合反応は、電極活物質間の領域でもなされうる。従って、開環及び重合反応から得られる固体電解質膜は、電極と接触する面積が増大するので、電極電気化学的界面特性、すなわち、電極との接触性にすぐれる。
【0079】
以下、前述の電解質膜を含む二次電池の構成について、一例を挙げつつ説明する。
【0080】
図1を参照すれば、本発明の一具現例による二次電池10は、カソード13、アノード15、及び前記カソード13及びアノード15間に介在された固体電解質膜14を含む。カソード13は、基板11上にパターン化されたカソード用集電体12上に形成される。一方、基板11上には、アノード用集電体16も形成されている。アノード15上には、保護膜17が塗布される。具体的であって非制限的な例としては、カソード用集電体12とアノード用集電体16は、それぞれ基板11上に置かれうる。カソード13は、カソード用集電体12上に置かれ、固体電解質膜14は、カソード13を覆い、カソード用集電体12、カソード用集電体12とアノード用集電体16との間の基板の一部、及びアノード用集電体16と接触するように置かれうる。アノード15は、カソード13と接触する電解質膜14の側面と反対側面上で固体電解質膜14と接触し、アノード用集電体16と接触するように置かれうる。二次電池のための他の配置も可能でありえる。
【0081】
このようなリチウム電池は、次のような製造方法によって形成されうる。
【0082】
まず、それぞれカソード用及びアノード用の集電体を形成するための金属インクを準備する。前記金属インクをインクジェットプリントカートリッジに込め、所望のパターン及び厚さに基板11上にプリントした後、例えば、100ないし600℃の範囲で熱処理し、集電体12,16を形成する。次に、カソード酸化物インクで所望のパターン及び厚さに電極を集電体上にプリントし、例えば、100ないし150℃の範囲で熱処理し、カソード13を形成する。次に、前述の触媒インクを、電解質が塗布される位置にプリントする。溶媒が乾燥した後、前述の電解質インクをプリントし、一定時間重合反応を行うことによって、固体電解質膜14を形成する。このとき、電解質インクと触媒インクとをプリントする順序を変えてもよい。その後、アノード酸化物インクをプリントし、溶媒を乾燥してアノード15を形成した後、その上に保護膜17を塗布し、二次電池10が完成する。このように、前記リチウム電池の製造時に、あらゆる構成は、インクジェットプリント方式で簡単に形成されうる。
【0083】
前記の金属インクに含まれる金属微粒子は、二次電池の集電体として使われる一般的な金属のうち、任意のものを使用でき、望ましくは、カソード用集電体としては、Al、Ni、Fe(SUS)、Ag、アノード用集電体としては、Cu、Fe(SUS)、Niなどが望ましい。
【0084】
前記の電極酸化物インクは、酸化物粒子、導電剤、溶媒、バインダの適正量を混合し、ボールミル、ビーズミル順に遂行し、1μm,0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルタを順次に通過させて製造できる。
【0085】
酸化物粒子は、二次電池の電極活物質として使われる一般的な酸化物粒子のうち、任意のものが使用可能である。使用可能なカソード活物質としては、LiCoOのようなLi−Co系複合酸化物、LiNiOのようなLi−Ni系複合酸化物、LiMn、LiMnOのようなLi−Mn系複合酸化物、LiCr、LiCrOのようなLi−Cr系複合酸化物、LiFeOのようなLi−Fe系複合酸化物、Li−V系複合酸化物などがある。使用可能なアノード活物質として、LiTi12のようなLi−Ti系複合酸化物、SnO、In、Sbのような遷移金属酸化物、グラファイト、ハードカーボン、アセチレンブラック、カーボンブラックのようなカーボンなどがある。適正な酸化物粒子の含有量は、全体インクの0.1〜10重量%、さらに望ましくは、3〜7重量%であることが望ましい。このような範囲でプリント効率は優秀であり、粒子間の凝集現象が防止され、インクの安定性及び吐出性にすぐれる。
【0086】
酸化物粒子の伝導性を向上させるための導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素ファイバ、カーボンナノチューブなどを使用できる。導電剤の含有量は、酸化物粒子の1〜20重量%であることが望ましい。
【0087】
前記電極酸化物インクは、前記酸化物粒子と導電剤との分散のための分散剤をさらに含むことができる。使用可能な分散剤の非制限的な例を挙げれば、脂肪酸塩、アルキルジカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、多価硫酸エステルアルコール塩、アルキルナフタレン硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルナフタレン硫酸エステル塩、アルキルスルホンコハク酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルファオレフィン硫酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル硫酸塩、二次多価アルコールエトキシ硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルアミン塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、フッ素系−またはシリコン系−アクリル酸重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンのラノリン誘導体、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセライド脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、アルカノールアミド脂肪酸、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリドン、ポリアクリルアミド、カルボン酸基含有水溶性ポリエステル、水酸基含有セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン樹脂、アクリル酸系、スチレンアクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アルキルベタミン、アルキルアミンオキサイド、ホスファチジルコリンのような一般的な分散剤のうち、任意のものを、一種または二種以上選択して使用可能である。分散剤の含有量は、酸化物粒子の1〜20%が望ましいが、電極の特性や分散性を考慮し、添加しないこともある。
【0088】
前記電極酸化物インクは、インクジェットプリント後に、インク微粒子と極板との密着力を付与するために、バインダを含むことができる。使用可能なバインダとしては、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、カルボキシメチルセルロースのうち、任意のものを一種または二種以上選択して使用可能であり、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が望ましい。
【0089】
電極酸化物インクに使用可能な溶媒として、既存のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を主成分とし、乾燥速度を調節するために、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、プロパノール(PrOH)、ブタノール(BuOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコールのようなアルコール類;パターンの精密性及び解像度を高めるために、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレンホスフェート、トリメチルホスフェートなどを用途と目的とによって、多様な割合で互いに混合して使用できる。またここに、ヘキサンなどの飽和炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;ジオキサン,ジエチルエーテルのようなエーテル類などの溶媒を一種以上さらに混合して使用することも可能である。
【0090】
本発明の一具現例による二次電池は、前述の電解質インク及び触媒インクを使用し、インクジェットプリント方式で形成された固体電解質膜を使用することによって、屈曲可能であり、かつ薄くて軽い形態に製造できるので、集積回路素子用電源として活用可能である。
【0091】
以下、実施例及び比較例を介して説明すれば、次の通りであるが、それらの実施例は例示のためのものであり、特許請求範囲が、それらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
実施例1
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)70重量%、エタノール(EtOH)20重量%、ジエチレングリコール(DEG)5重量%の混合溶媒に、LiCoO 4.65重量%、アセチレンブラック(AB)0.15重量%及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.2重量%を混合し、0.3mm粒径のジルコニアビーズを使用したペイントシェーカで2時間分散させた。その後、1μm,0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルタを順次に通過させ、電極インクを完成した。前記電極インクを、インクジェットプリンタ(Fuji Dimatix DMP−2800)を利用し、アルミニウムホイル上に出力することによって、電極を形成した。
【0093】
エタノール(EtOH)にグラブス触媒(製造社名:シグマアルドリッチ、製品名:グラブス触媒)を5重量%添加して溶かした後(剪断速度1,000s−1で、粘度:3.528mPa・sec)、前記インクジェットプリンタを利用し、前記プリントされた電極上に同じ形態でプリントした後、60℃で10分間乾燥させて溶媒を除去した。
【0094】
エチレンカーボネート及びジエチレンカーボネートを3:7の体積比で混合した溶媒に、LiPF 1.3Mを添加して電解液を製造し、ここに、ジシクロペンタジエン5重量%をさらに添加し、電解質インクを完成した(剪断速度1,000s−1での粘度:4.475mPa・sec)。電解質インクを、前記グラブス触媒インクがプリントされた上に、前記インクジェットプリンタを利用して吐出することによって、固体電解質膜を形成した。
【0095】
このようにカソード及び電解質膜を形成し、リチウム金属を相対電極であるアノードとして、2016規格のコインセル(CR2016型)を製造した。得られたコインセルに、0.1C速度(rate)の電流で、リチウム電極に対して4.3Vに達するまで定電流充電し、次に、4.3Vの電圧を維持しつつ、電流がセル容量に対して0.05C速度まで定電圧充電を実施した。その後、電圧が3.0Vに達するまで、セル容量の0.1C速度の電流で定電流放電を行い、充放電実験結果を図4に曲線で示した。
【0096】
実施例2
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)70重量%、エタノール(EtOH)20重量%、ジエチレングリコール(DEG)5重量%の混合溶媒に、LiCoO 4.65重量%、アセチレンブラック(AB)0.15重量%及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.2重量%を混合し、0.3mm粒径のジルコニアビーズを使用したペイントシェーカで2時間分散させた。その後、1μm,0.45μmポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルタを順次に通過させ、電極インクを完成した。前記電極インクを、インクジェットプリンタ(Fuji Dimatix DMP−2800)を利用し、アルミニウムホイル上に出力することによって、電極を形成した。
【0097】
エタノール(EtOH)にグラブス触媒を5重量%添加して溶かした後(剪断速度1,000s−1での粘度:3.528mPa・sec)、前記インクジェットプリンタを利用し、前記プリントされた電極上に同じ形態でプリントした後、60℃で10分間乾燥させて溶媒を除去した。
【0098】
エチレンカーボネート及びジエチレンカーボネートを3:7の体積比で混合した溶媒に、LiPF 1.3Mを添加して電解液を製造し、ここに、ノルボルネン5重量%をさらに添加し、電解質インクを完成した(剪断速度1,000s−1での粘度:3.928mPa・sec)。電解質インクを、グラブス触媒インクがプリントされた上に、前記インクジェットプリンタを利用して吐出することによって、固体電解質膜を形成した。
【0099】
このようにカソード及び電解質膜を形成し、リチウム金属を相対電極のアノードとして、2016規格のコインセル(CR2016型)を製造した。得られたコインセルに、0.1C速度の電流でLi電極に対して4.3Vに達するまで定電流充電し、次に、4.3Vの電圧を維持しつつ、電流がセル容量に対して0.05C速度まで定電圧充電を実施した。その後、電圧が3.0Vに達するまで、セル容量の0.1C速度の電流で定電流放電を行い、充放電実験結果を図5に曲線で示した。
【0100】
比較例1
グラブス触媒インクを塗布せずに、電解質インクにジシクロペンタジエンを添加しないことを除いては、前記実施例1と同じ方法でコインセルを製造した。得られたコインセルの充放電実験結果を図6に示した。
【0101】
前記の図4、5及び6を参照すれば、実施例の二次電池は、比較例の二次電池と類似したレベルの充放電容量を示していることを確認することができる。このように、本発明の一具現例による電解質インク及び触媒インクを利用すれば、一般的な電池特性を維持しつつ、固体電解質膜をインクジェット方式で製造できるのである。
【符号の説明】
【0102】
10 二次電池
11 基板
12 カソード用集電体
13 カソード
14 固体電解質膜
15 アノード
16 アノード用集電体
17 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒、前記溶媒に溶解されたリチウム塩、及び前記溶媒に溶解または分散されたシクロオレフィン系モノマーを含む電解質組成物。
【請求項2】
前記電解質組成物は、インクジェットプリンティングが可能な電解質インクであることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
前記電解質インクの粘度が、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、100mPa・sec以下であることを特徴とする請求項2に記載の電解質組成物。
【請求項4】
前記電解質インクの粘度が、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で2ないし6mPa・secであることを特徴とする請求項3に記載の電解質組成物。
【請求項5】
前記シクロオレフィン系モノマーは、0.5ないし10重量%の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項6】
前記シクロオレフィン系モノマーは、ノルボルネン系モノマー、またはジシクロペンタジエン系モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記ノルボルネン系モノマーは、下記化学式1で表示される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電解質組成物:
【化1】

前記式で、RないしR10はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、C−C30アリールカルボニル基、C−C20アルキルオキシカルボニル基、C−C20アルキルカルボニル基またはC−C20アルキルカルボニルオキシ基を示し、R及びRは、共に=Oを形成でき、R及びRは、互いに連結されて5員環または6員環の環またはヘテロ環構造を形成でき、R及びR10は、共にR及びRが結合されている炭素原子間でのさらなる結合を示すことができる。
【請求項8】
前記ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン、2−ベンゾイル−5−ノルボルネン、エチル5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、2−アセチル−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−イルアセテート、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物及びジメチルexo−トリシクロ(4.2.1.0(2.5)ノナ−3,7−ジエン)−3,4−ジカルボキシレートからなる群から一つ以上選択される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電解質組成物。
【請求項9】
前記ジシクロペンタジエン系モノマーは、下記化学式2で表示される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電解質組成物:
【化2】

前記式で、R’ないしR12’はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、または置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基を示し、R’及びR’は、共に=Oを形成でき、R10’及びR11’は、共に=Oを形成できる。
【請求項10】
前記ジシクロペンタジエン系モノマーは、ジシクロペンタジエン、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−インデン−1,8−ジオン及びメチルシクロペンタジエンダイマーからなる群から選択される一つ以上の化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電解質組成物。
【請求項11】
有機溶媒と、前記有機溶媒に溶解または分散された、シクロオレフィン系モノマーの開環及び重合反応を促進する触媒とを含む触媒インク。
【請求項12】
前記触媒インクは、インクジェットプリンティングが可能であることを特徴とする請求項11に記載の触媒インク。
【請求項13】
前記触媒インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、粘度が100mPa・sec以下であることを特徴とする請求項12に記載の触媒インク。
【請求項14】
前記触媒インクは、25℃の温度及び1,000sec−1の剪断速度で、粘度が2ないし6mPa・secであることを特徴とする請求項13に記載の触媒インク。
【請求項15】
前記触媒は、0.1ないし20重量%の量で含まれることを特徴とする請求項11に記載の触媒インク。
【請求項16】
前記触媒は、グラブス触媒であることを特徴とする請求項11に記載の触媒インク。
【請求項17】
前記有機溶媒は、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、プロパノール(PrOH)、ブタノール(BuOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレンホスフェート、トリメチルホスフェート、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン,酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン及びジエチルエーテルからなる群から一つ以上選択されることを特徴とする請求項11に記載の触媒インク。
【請求項18】
電極上に、請求項11ないし請求項17のうち、いずれか1項に記載の触媒インクをプリントする段階と、
前記プリントされた触媒インクを乾燥する段階と、
前記触媒インクがプリントされた位置の電極の領域上に、溶媒、前記溶媒に分散されたリチウム塩及び前記溶媒に分散または溶解されたシクロオレフィン系モノマーを含む電解質組成物を塗布する段階と、
前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む固体電解質膜の製造方法。
【請求項19】
電極上に、溶媒、前記溶媒に分散されたリチウム塩及び前記溶媒に分散または溶解されたシクロオレフィン系モノマーを含む電解質組成物を塗布する段階と、
前記電解質組成物が塗布された位置の電極の領域上に、請求項11ないし請求項17のうち、いずれか1項に記載の触媒インクをプリントする段階と、
前記電解質組成物中のシクロオレフィンモノマーの開環重合体を形成する段階とを含む固体電解質膜の製造方法。
【請求項20】
重合体を形成する段階は、常温で行われることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項21】
前記電解質組成物は、インクジェットプリンティングが可能な電解質インクであることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項22】
前記触媒インクは、活物質がコーティングされた電極上に、直接プリントされることを特徴とする請求項18に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項23】
請求項18または請求項19に記載の方法によって製造された固体電解質膜。
【請求項24】
カソードと、
アノードと、
前記カソードとアノードとの間に介在され、リチウム塩、溶媒及びシクロオレフィン系モノマーの開環重合体を含む高電解質膜とを含む二次電池。
【請求項25】
リチウム塩、溶媒、及びシクロオレフィンモノマーの開環重合体を含む固体電解質膜。
【請求項26】
前記シクロオレフィン系モノマーの開環重合体は、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはジシクロペンタジエン系モノマーの開環重合体であることを特徴とする請求項25に記載の固体電解質膜。
【請求項27】
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体は、下記化学式3で表示されたものであることを特徴とする請求項26に記載の固体電解質膜:
【化3】

前記式で、RないしR10はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、C−C30アリールカルボニル基、C−C20アルキルオキシカルボニル基、C−C20アルキルカルボニル基またはC−C20アルキルカルボニルオキシ基を示し、R及びRは、共に=Oを形成でき、R及びRは、互いに連結されて5員環または6員環の環またはヘテロ環構造を形成でき、R及びR10は、共にR及びRが結合されている炭素原子間にさらなる結合を示すことができ、nは、1以上の整数である。
【請求項28】
前記ジシクロペンタジエン系モノマーの開環重合体は、下記化学式4で表示されることを特徴とする請求項26に記載の固体電解質膜:
【化4】

前記式で、R’ないしR12’はそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、または置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基を示し、R’及びR’は、共に=Oを形成でき、R10’及びR11’は、共に=Oを形成でき、n及びkは、1以上の整数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106276(P2010−106276A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249333(P2009−249333)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】