説明

露光装置の検査方法、及び露光装置

【課題】フォトマスクを用いて露光装置の検査を行う際に、高精度な転写パターンを形成し、回折光検出データを取得し、高精度の検査結果を得ることが可能な露光装置の検査方法、及び露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置の検査方法では、両端間に位置するパターンと異なるパターン幅を有する第1ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第1のパターン群201と、第2ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第2のパターン群202とを有するフォトマスク112に、光軸に対し傾いた方向から前記フォトマスク上に照明して、前記第1及び第2のパターン群からそれぞれ第1及び第2の回折光を発生させる。ウエハ上に、前記第1の回折光による第1の像と、前記第2の回折光による第2の像とを結像させ、第1の像と前記第2の像との間の相対距離を測定し、前記相対距離に基づいて、前記露光装置の投影光学系の状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、露光装置の検査方法、及び露光装置に関し、例えば、露光装置の焦点位置を検出及び補正して露光を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
投影露光装置で微細パターンを形成する際には、その焦点位置が正しく設定されていないといわゆるフォーカスぼけ状態になり、微細パターンを形成することができない。特に近年、転写パターンの微細化が進むにつれて、焦点位置の設定精度が非常に重要となってきている。
【0003】
例えば、デザインルールが40nm程度のデバイスを製造する際の焦点深度は、100nm程度である。焦点位置の設定精度は、焦点深度の5分の1よりも精度良く設定できることが望ましいため、上記のデバイスの製造時には、少なくとも20nmの精度で焦点位置を設定できることが望ましい。
【0004】
また、焦点位置の設定は、単に繰り返し精度が良いと言うだけでなく、真の焦点位置を精度良く測定できなければ不十分である。従って、上記のデバイスの製造時には、少なくとも20nmの精度で焦点位置を測定したりモニターできることが望まれる。そのため、本技術分野では、露光により形成された転写パターンから焦点位置をモニターできる技術が開発されてきた。
【0005】
例えば、位相シフトパターンを用いた方法が知られている。この方法では、フォトマスク上に基準パターンと位相シフトパターンを形成し、このフォトマスクを用いて露光処理を行う。そして、両パターンから生じた転写パターン同士の位置ずれ量を、合わせずれ検査装置で測定することで、焦点位置をモニターする。
【0006】
この方法には、1回の露光で、焦点位置を測定するための検査パターンを形成し、焦点位置を求めることができるという利点がある。しかしながら、この方法では、フォトマスク上に位相シフトパターンを形成する必要があるため、マスクコストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
また、合わせずれ検査装置による焦点位置のモニタリングを、通常のクロムによる遮光膜パターンで形成されたマスクパターンにより行う方法も知られている。この方法では、照明中心が光軸上に位置する状態と、照明中心が光軸上から外れた箇所に位置する状態とで、露光処理を行う。そして、これらの露光処理から生じた転写パターン同士の位置ずれ量を、合わせずれ検査装置で測定することで、焦点位置をモニターする。
【0008】
この方法には、フォトマスク上に位相シフトパターンを形成する必要がないという利点がある。しかしながら、この方法では、検査パターンを形成するのに二重露光を行う必要があり、露光時間の増加により生産性が低下するという問題がある。また、2回の露光の間、ウェハを高精度で同じ位置に維持し続けなければならず、高精度でウェハの位置を維持し続けることが難しいという問題がある。
【0009】
また、フォトマスク上に2種類のパターン群を形成し、このフォトマスクを用いて焦点位置をモニターする方法も知られている。この方法には、フォトマスク上に位相シフトパターンを形成する必要がなく、且つ、二重露光を行う必要もないという利点がある。しかしながら、この方法では、両パターン群から形成される2種類の転写パターンの転写精度が共に良好でないと、焦点位置の測定精度が十分に得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−142385号公報
【特許文献2】特開2009−26827号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proc. SPIE vol.2726 (1996) p.236
【非特許文献2】第48回応用物理学会関係連合会講演予稿集No.2 (2001/03) p.733
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys. VOL.37 (1998) p.3553
【非特許文献4】Applied Optics, VOL.38, NO.13 (1999) p.2800
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、複数種類のパターン群を有するフォトマスク又はテンプレートを用いて露光装置の検査を行う際に、各パターン群から高精度な転写パターンを形成又は高精度な回折光検出データを取得し、高精度の検査結果を得ることが可能な露光装置の検査方法、及び露光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の態様の露光装置の検査方法では、例えば、第1ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第1のパターン群と、前記第1のパターン群と平行に前記第1ピッチと異なる第2ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第2のパターン群とを有し、前記第1のパターン群の両端に位置するパターンが、前記第1のパターン群の両端間に位置するパターンと異なるパターン幅を有するフォトマスク、を前記露光装置にセットする。更に、前記方法では、前記露光装置の光源からの照明光を、前記露光装置の光軸に対し第1の角度傾いた方向から、前記露光装置の照明光学系を介して前記フォトマスク上に照射して、前記第1及び第2のパターン群からそれぞれ、第1及び第2の回折光を発生させる。更に、前記方法では、前記第1及び第2の回折光を、前記露光装置の投影光学系を介してウエハ上に投影し、前記ウエハ上に、前記第1の回折光による第1の像と、前記第2の回折光による第2の像とを結像させる。更に、前記方法では、前記第1の像と前記第2の像との間の相対距離を測定し、前記相対距離に基づいて、前記投影光学系の状態を検査する。そして、前記方法では、前記第1の角度は、前記第1の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し対称に拡散され、前記第2の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し非対称に拡散されるよう設定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における露光装置の検査方法について説明するための機器構成図である。
【図2】第1実施形態における照明コヒーレンシーと軸外れ量について説明するための平面図である。
【図3】第1実施形態で使用するフォトマスクの構成を示した平面図である。
【図4】第1及び第2のパターン群による照明光の回折について説明するための断面図である。
【図5】第1実施形態で使用するフォトマスクの第1変形例を示した平面図である。
【図6】第1実施形態で使用するフォトマスクの第2変形例を示した平面図である。
【図7】第1実施形態で使用するフォトマスクの第3変形例を示した平面図である。
【図8】第2実施形態における露光装置の検査方法について説明するための機器構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における露光装置の検査方法について説明するための機器構成図である。
【0017】
図1の露光装置は、光源101と、アパーチャステージ102と、照明レンズE1を有する照明光学系103と、マスクステージ104と、投影レンズE2を有する投影光学系105と、ウエハステージ106と、測定部107と、検査部108とを備える。
【0018】
図1には更に、アパーチャステージ102にセットされたアパーチャ111と、マスクステージ104にセットされたフォトマスク112と、ウエハステージ113にセットされたウエハ113が示されている。アパーチャ111は、照明光を遮光する遮光部A1と、照明光が透過可能な光通過孔A2により構成されている。
【0019】
図1の露光装置は、光源101の照明波長が13.5nmで、投影光学系105の開口数NAPが0.25の投影露光装置となっている。フォトマスク112及び投影光学系105は、透過型でも反射型でも構わないが、本実施形態では反射型を採用する。ただし、図1では、作図の便宜上、フォトマスク112及び投影光学系105は、透過型となっている。
【0020】
ここで、図1の露光装置の動作について説明する。
【0021】
光源101から発生した照明光は、アパーチャ111の光通過孔A2を通過し、照明光学系103を介してフォトマスク112上に照射される。図1では、露光装置の光軸が、Zで示されている。本実施形態では、光通過孔A2は、光軸Zから外れた位置に配置されている。これにより、照明光は、光軸Zに対し角度α傾いた方向から、フォトマスク112上に照射される。
【0022】
図1では、フォトマスク112上に入射する照明光(入射光)が、Iで示され、照明光Iの回折により発生した回折光の0次回折光及び+1次回折光が、それぞれD0及びD+1で示されている。図1に示すように、0次回折光D0の拡散角は、αとなる。また、図1において、+1次回折光D+1の拡散角は、βで示されている。回折光は、投影光学系105を介してウエハ113上に投影される。これにより、ウエハ113上に、回折光による像(フォーカスパターン)が結像される。
【0023】
本実施形態では更に、測定部107が、当該像に関する測定を行い、検査部108が、この測定結果に基づいて、投影光学系105の状態を検査する。具体的には、検査部108は、投影光学系105の焦点位置が正しく設定されているか否かを検査する。測定部107及び検査部108による処理の詳細については、後述する。
【0024】
図2は、図1の露光装置の照明コヒーレンシーσと、光源101の軸外れ量Δについて説明するための平面図である。
【0025】
照明コヒーレンシーσは、照明光学系103の開口数をNAiとし、投影光学系105の開口数をNAPとすると、σ=NAi/NApで求めることができる。本実施形態では、図2に示すように、照明コヒーレンシーσは、最大0.85まで拡大可能となっている。本実施形態では、光軸Zから外れた位置の光通過孔A2から照明光を照射する際の照明コヒーレンシーσを、0.3に設定する。
【0026】
また、光源101の軸外れ量Δは、光源101の光軸Zからのずれ量を表す。本実施形態では、照明コヒーレンシーσの設定値と、軸外れ量Δの設定値との関係が、図2に示すように定められる。図2において、光軸Zを表す点は、照明コヒーレンシーσを表す円の外側に位置している。
【0027】
図3は、第1実施形態で使用するフォトマスク112の構成を示した平面図である。
【0028】
図3に示すように、フォトマスク112は、第1のパターン群201と、第2のパターン群202とを有している。
【0029】
第1のパターン群201は、第1ピッチP1で等間隔に平行に並んだ複数のストライプ形状のパターンL1を含んでいる。第1のパターン群201は、これらのパターンL1をラインパターンとするLS(ラインアンドスペース)パターンを構成している。
【0030】
一方、第2のパターン群202は、第1ピッチP1と異なる第2ピッチP2で等間隔に平行に並んだ複数のストライプ形状のパターンL2を含んでいる。第2のパターン群202は、これらのパターンL2をラインパターンとするLSパターンを構成しており、第1のパターン群201と平行に配置されている。本実施形態では、第2ピッチP2は、第1ピッチP1よりも長いピッチ、具体的には、第1ピッチP1の2倍に設定されている。
【0031】
また、図3では、第1のパターン群201のパターンL1のうち、両端に位置するパターンがL1Aで示され、両端間に位置するパターンがL1Bで示されている。本実施形態では、パターンL1Aの幅W1Aは、パターンL1Bの幅W1Bと異なっており、具体的には、パターンL1Bの幅W1Bよりも太く設定されている。一方、本実施形態では、第2のパターン群202のパターンL2の幅W2は、全て同じ値に設定されている。
【0032】
図3には、フォトマスク112の主面に平行で、互いに直交するX方向及びY方向が示されている。X方向は、第1及び第2のパターン群201,202のピッチ方向を示し、Y方向は、第1及び第2のパターン群201,202を構成するパターンL1,L2が延びる方向を示している。
【0033】
本実施形態では、第2のパターン群202は、モニターパターンとして使用され、第1のパターン群201は、モニター用の基準パターンとして使用される。
【0034】
図4は、第1及び第2のパターン群201,202による照明光Iの回折について説明するための断面図である。
【0035】
図4(A)には、第1のパターン群201上に照射光Iが入射することで、第1のパターン群201から回折光が発生する様子が示されている。図4(A)に示す回折光は、本開示の第1の回折光の例である。図4(A)では、当該回折光に含まれる0次回折光及び+1次回折光が、それぞれD0及びD+1で示されている。
【0036】
図4(A)に示す0次回折光D0及び+1次回折光D+1は、投影光学系105を介してウエハ113上に投影される。これにより、これらの回折光による像が、ウエハ113上に結像される。当該像は、本開示の第1の像の例である。
【0037】
一方、図4(B)には、第2のパターン群202上に照射光Iが入射することで、第2のパターン群202から回折光が発生する様子が示されている。図4(B)に示す回折光は、本開示の第2の回折光の例である。図4(B)では、当該回折光に含まれる0次回折光、+1次回折光、及び−1次回折光が、それぞれD0、D+1、及びD-1で示されている。なお、本実施形態では、第2のパターン群202から+2次回折光D+2は発生しない。
【0038】
図4(B)に示す0次回折光D0及び+1次回折光D+1は、投影光学系105を介してウエハ113上に投影される。これにより、これらの回折光による像が、ウエハ113上に結像される。当該像は、本開示の第2の像の例である。
【0039】
図4(A)及び(B)では、図1と同様に、照射光Iの入射角がαで示されている。
【0040】
本実施形態では、照射光Iの入射角αは、図4(A)に示す0次回折光D0と+1次回折光D+1が、光軸Zに対し対称に拡散され、図4(B)に示す0次回折光D0と+1次回折光D+1が、光軸Zに対し非対称に拡散されるよう設定される。よって、図4(A)では、+1次回折光D+1の拡散角はαとなり、図4(B)では、+1次回折光D+1の拡散角はα以外の値となる。
【0041】
なお、本実施形態では、図4(B)の+1次回折光D+1は、光軸Zと平行な方向に拡散される。よって、図4(B)の+1次回折光D+1の拡散角は、0度となる。
【0042】
図4(A)及び(B)に示すような回折光は、第1及び第2ピッチP1,P2や入射角αを、所定の値に設定することで発生させることが可能である。以下、再び図1を参照し、第1及び第2ピッチP1,P2や入射角αが満たすべき条件について説明する。
【0043】
なお、図1の露光装置は縮小露光装置であるため、以下に記載する種々の寸法は、第1及び第2のパターン群201,202がウエハ113上に転写された際に投影倍率で縮小された後の寸法で表記されている。
【0044】
図1には、フォトマスク112上に入射角αで入射する照射光Iと、拡散角αで拡散される0次回折光D0と、拡散角βで拡散される+1次回折光D+1が示されている。角度α及び角度βにより、+1次回折光D+1の回折角は、α+βと表される。
【0045】
図1に示す0次回折光D0及び+1次回折光D+1が、第1のパターン群201又は第2のパターン群202からの回折光である場合、これらの回折光は、共に投影レンズL2の中に入射しなければならない。しかしながら、β≠0の場合には、sinβがNApよりも大きくなると、+1次回折光D+1は投影レンズL2を通ることができない。よって、β≠0の場合には、sinαがNAiに等しく、且つsinβがNApに等しくなるとき、回折角α+βは最大角となる。
【0046】
β≠0は、第1のパターン群201からの回折光において成り立つ条件である(第2のパターン群202からの回折光では、β=0)。よって、第1のパターン群201からの回折光においては、sinαがNAiに等しく、且つsinβがNApに等しくなるとき、+1次回折光D+1の回折角α+βが最大角となる。
【0047】
よって、照射光Iの波長をλとすると、第1ピッチP1は、次の式(1)を満たすよう設定しなければならない。
【数1】

【0048】
なお、角度α及び角度βの値は、光源101に拡がりがある場合には、光軸Zに最も近い値を採用する。
【0049】
また、第1のパターン群201は、モニター用の基準パターンであるため、第1のパターン群201から得られる像は、焦点位置が振れても位置が変化しないことが望ましい。そのためには、図4(A)で説明したように、角度αと角度βがほぼ等しくなるよう、第1ピッチP1を設定すればよい。即ち、第1ピッチP1を、次の式(2)を満たすように設定すればよい。
【数2】

【0050】
この場合には、0次回折光D0と+1次回折光D+1が、光軸Zに対し対称に拡散されるため、結像位置が焦点位置からずれても、ウエハ113の面内方向における像の位置は、常に一定になる。なお、角度αの値は、光源101に拡がりがある場合には、光源101の中心における値を採用する。
【0051】
本実施形態では、λ=13.5nm、sinα=0.25×0.5=0.125であるため、第1ピッチP1は54nmに設定される。よって、第1のパターン群201は、27nmLSパターンとなる。
【0052】
一方、第2ピッチP2は、第1ピッチP1の2倍に設定されるため、108nmに設定される。よって、第2のパターン群202は、54nmLSパターンとなる。
【0053】
ここで、再び図4を参照し、露光装置の検査方法について説明する。
【0054】
本実施形態では、上記のように、第1ピッチP1が54nmに設定され、第2ピッチP2が108nmに設定される。そして、照明光Iの入射角αが、sinα=0.125となる角度に設定される。これにより、第1のパターン群201からの0次回折光D0と+1次回折光D+1が、光軸Zに対し対称に拡散され(図4(A))、第2のパターン群202からの0次回折光D0と+1次回折光D+1が、光軸Zに対し非対称に拡散される(図4(B))。
【0055】
図4(A)及び(B)では、露光装置の焦点位置のずれ量が、δfで示され、結像位置のずれ量が、δxで示されている。
【0056】
図4(A)では、D0とD+1が対称に拡散されるため、焦点位置が変化しても、ウエハ113の面内方向における像の位置は、ほとんど変化しない。これに対し、図4(B)では、D0とD+1が非対称に拡散されるため、焦点位置が変化すると、像の位置が、ウエハ113の面内方向に変化する。
【0057】
そこで、本実施形態では、測定部107(図1)が、図4(A)の像と図4(B)の像との間の相対距離を測定する。当該相対距離は例えば、ウエハ113上に予めレジスト膜を形成しておき、ウエハ113上にこれらの像を結像させることで、第1及び第2のパターン群201,202をレジスト膜上に転写し、レジスト膜上の転写パターンを測定対象とすることで測定可能である。
【0058】
次に、本実施形態では、検査部108(図1)が、上記相対距離に基づいて、投影光学系105の状態を検査する。具体的には、検査部108は、投影光学系105の焦点位置が正しく設定されているか否かを検査する。
【0059】
これにより、本実施形態では、焦点位置が正しく設定されているか否かを検査し、これに基づき、いわゆるフォーカスぼけ状態を回避することが可能となる。本実施形態には例えば、フォトマスク112上に位相シフトパターンを形成する必要がなく、且つ、二重露光を行う必要もないという利点がある。
【0060】
なお、本実施形態では、第2ピッチP2を、第1ピッチP1の2倍以外の値に設定しても構わない。ただし、第2ピッチP2を、第1ピッチP1の2倍に設定することには、第2のパターン群202からの+1次回折光D+1が、光軸Zと平行な方向に拡散され、露光装置の設計上好都合であるという利点がある。
【0061】
ここで、再び図3を参照し、第1のパターン群201の両端に位置するパターンL1Aについて説明する。
【0062】
本実施形態では、第1のパターン群201は、27nmLSパターンを構成し、第2のパターン群202は、54nmLSパターンを構成しており、第1のパターン群201の各パターンL1の幅は、第2のパターン群202の各パターンL2の幅に比べて、細く設定されている。
【0063】
そのため、第1のパターン群201のパターンL1の幅を、全て同じ値(27nm)に設定してしまうと、第1のパターン群201の両端のパターンL1Aの転写精度が、焦点位置や露光量によって大きく変動してしまい、場合によっては、これらのパターンL1Aが転写されないことがある。
【0064】
そこで、本実施形態では、第1のパターン群201の両端に位置するパターンL1Aの幅W1Aを、第1のパターン群201の両端間に位置するその他のパターンL1Bの幅W1Bよりも太く設定する。これにより、本実施形態では、第1のパターン群201の両端のパターンL1Aの転写精度を向上させることが可能となる。
【0065】
本実施形態によれば、転写精度に問題のあるパターンL1Aの転写精度を向上させることで、第1及び第2のパターン群201,202の転写精度を共に良好にすることが可能となる。これにより、本実施形態では、焦点位置の測定精度を向上させ、高精度の検査結果を得ることが可能となる。
【0066】
パターンL1Aの幅W1Aを、パターンL1Bの幅W1Bに対しどの程度太くするかは、必要とする転写精度に応じて適宜調整可能である。本実施形態では、パターンL1Aの幅W1Aを、パターンL1Bの幅W1Bよりも10%〜30%程度、例えば、20%程度太く設定する。パターンL1Bの幅W1Bが27nmの場合、これより20%太いパターンL1Aの幅W1Aは、約32nmである。本発明者らによる検討結果によれば、幅W1Aを幅W1Bよりも20%程度太めることで、良好な転写精度が得られることが判明している。
【0067】
なお、第2のパターン群202については、このような調整は実施しても実施しなくても構わないが、本実施形態では実施しない。即ち、第2のパターン群202のパターンL2の幅は、全て同じ値に設定する。理由は、パターンL2はパターンL1よりも太く、第2のパターン群202の両端のパターンは、第1のパターン群201の両端のパターンに比べて、その転写精度の悪化がさほど問題とならないからであり、更には、第2のパターン群202の両端のパターンを太らせることによる測定精度の悪化が問題となる可能性があるからである。
【0068】
以下、第1実施形態で使用するフォトマスク112の種々の変形例について説明する。
【0069】
(1)第1変形例
図5は、フォトマスク112の第1変形例を示した平面図である。
【0070】
図5のフォトマスク112は、第1及び第2のパターン群201,202に加え、第1のパターン群201をピッチ方向に挟むように配置された補助パターン211を有している。これらの補助パターン211は、ウエハ113には転写されない非解像の微細なパターンであり、SRAF(Sub-Resolution Assist Feature)パターンと呼ばれる。
【0071】
補助パターン211は例えば、パターンL1Aの幅W1Aを太らせるだけでは、十分な転写精度が得られない場合に有効である。
【0072】
(2)第2変形例
図6は、フォトマスク112の第2変形例を示した平面図である。
【0073】
図6のフォトマスク112は、第1及び第2のパターン群201,202に加え、第3及び第4のパターン群203,204を有している。第3及び第4のパターン群203,204は、第1及び第2のパターン群201,202のピッチ方向に、第1及び第2のパターン群201,202と鏡面対称となるよう配置されている。図6では、この鏡面対称性に関する対称面が、符号Mで示されている。
【0074】
図6では、パターンL1及びL2に対応する第3及び第4のパターン群203,204のパターンが、それぞれL3及びL4で示されている。更には、パターンL1A及びL1Bに対応する第3のパターン群203のパターンが、それぞれL3A及びL3Bで示されている。
【0075】
図6では、第1のパターン群201は、37本のパターンL1により構成され、第2のパターン群202は、19本のパターンL2により構成されている。同様に、第3のパターン群203は、37本のパターンL3により構成され、第4のパターン群204は、19本のパターンL4により構成されている。
【0076】
第2変形例では、図4(A)の像と図4(B)の像との間の相対位置を測定する方法として、いわゆるバーインバー方式による光学測定を採用することが可能である。バーインバー方式では、第1のパターン群201と第3のパターン群203との中間点と、第2のパターン群202と第4のパターン群204との中間点を測定し、これらの中間点間の距離を測定することで、上記相対位置を測定することができる。
【0077】
(3)第3変形例
図7は、フォトマスク112の第3変形例を示した平面図である。
【0078】
図7では、第1及び第2のパターン群201,202の各パターンL1,L2が、四角形の環状の形状を有しており、これらのパターンL1,L2が、同心円状に配置されている。図7のフォトマスク112は、バーインバー方式のパターンをX方向とY方向に配置したようなパターンを有している。
【0079】
よって、第3変形例では、バーインバー方式による光学測定を、X方向とY方向の両方に適用することが可能である。これにより、第3変形例では、X方向及びY方向の両方向において焦点位置を調整することが可能となっている。
【0080】
以上のように、本実施形態では、フォトマスク112は、第1及び第2のパターン群201,202を有しており、第1のパターン群201は、第1ピッチP1で並んだ複数のパターンL1を含み、第2のパターン群202は、第1のパターン群201と平行に第1ピッチP1と異なる第2ピッチP2で並んだ複数のパターンL2を含んでいる。更に、本実施形態では、第1のパターン群201の両端に位置するパターンL1Aが、第1のパターン群201の両端間に位置するパターンL1Bと異なるパターン幅を有している。
【0081】
本実施形態によれば、このようなフォトマスク112を用いて露光装置の検査を行うことにより、パターンL1Aの転写精度の問題を解決し、第1及び第2のパターン群201,202から高精度な転写パターンを形成することが可能となる。これにより、本実施形態では、高精度の検査結果を得ることが可能となる。
【0082】
以下、第1実施形態の変形例である第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0083】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における露光装置の検査方法について説明するための機器構成図である。
【0084】
図8の露光装置は、テンプレートステージ301と、ベース302と、アライメントセンサ303と、UV(ultraviolet)光源304と、ウエハステージ305、イメージセンサ306と、測定部307と、検査部308とを備える。図8の露光装置では更に、UV光源304とテンプレートステージ301との間に、図1の照明光学系103と同様の照明光学系(図示せず)が配置され、テンプレートステージ301とウエハステージ305との間に、図1の投影光学系105と同様の照明光学系(図示せず)が配置されている。
【0085】
図8には更に、テンプレートステージ301にセットされたテンプレート311が示されている。図8では、テンプレート311上に設けられた凹凸パターンが、Tで示されている。テンプレート311は、凹凸パターンTが設けられた主面が下面、その逆面が上面となるよう、テンプレートステージ301にセットされる。テンプレートステージ301は、その上方に位置するベース302に取り付けられている。
【0086】
ウエハステージ305は、ウエハをセットするためのステージである。また、UV光源304は、ウエハ上に形成されたレジスト膜にUV光を照射して、レジスト膜を硬化するための光源である。また、アライメントセンサ303は、テンプレート311上やウエハ上のアライメントマークを検出するためのセンサである。本実施形態では、ウエハステージ305上のウエハ位置に、イメージセンサ306が配置されている。
【0087】
図1の露光装置が、フォトマスク112を用いて露光を行う装置であるのに対し、図8の露光装置は、テンプレート311を用いて露光を行う装置となっている。図8の露光装置では、テンプレート311が露光装置内に組み込まれている。
【0088】
第2実施形態では、第1実施形態で説明した方法と同様の方法により、露光装置の検査を行うことが可能である。ただし、第2実施形態では、図4(A)に示す回折光と、図4(B)に示す回折光は、イメージセンサ306上に投影される。これにより、図4(A)の回折光による像と、図4(B)の回折光による像が、イメージセンサ306上に結像される。
【0089】
そして、第2実施形態では、測定部307が、イメージセンサ306により検出されたこれらの回折光の検出データに基づいて、これらの像の間の相対距離を測定する。更に、検査部308が、測定された相対距離に基づいて、上記の投影光学系の状態を検査する。第2実施形態には、レジスト膜上に露光しなくとも、イメージセンサ306上に露光することで、焦点位置を測定できるという利点がある。
【0090】
なお、第2実施形態では、第1実施形態で説明した第1及び第2のパターン群201,202を、凹凸パターンTによりテンプレート311上に予め設けておく。
【0091】
以上のように、本実施形態では、テンプレート311は、第1及び第2のパターン群201,202を有しており、第1のパターン群201は、第1ピッチP1で並んだ複数のパターンL1を含み、第2のパターン群202は、第1のパターン群201と平行に第1ピッチP1と異なる第2ピッチP2で並んだ複数のパターンL2を含んでいる。更に、本実施形態では、第1のパターン群201の両端に位置するパターンL1Aが、第1のパターン群201の両端間に位置するパターンL1Bと異なるパターン幅を有している。
【0092】
本実施形態によれば、このようなテンプレート311を用いて露光装置の検査を行うことにより、パターンL1Aの転写精度の問題を解決し、第1及び第2のパターン群201,202から高精度な転写パターンを形成することが可能となる。これにより、本実施形態では、高精度の検査結果を得ることが可能となる。
【0093】
なお、第1及び第2実施形態で使用する照明光の波長は、13.5nmや、紫外線領域の波長に限定されない。例えば、これらの実施形態における露光装置の検査方法は、193nm、248nm、又は365nm等の任意の波長の照明光でも、第1及び第2のパターン群201,202のサイズを調整することで実行可能である。
【0094】
また、第1及び第2実施形態では、投影光学系の焦点位置の検査について説明したが、これらの実施形態は例えば、投影光学系の収差の検査にも適用可能である。
【0095】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1及び第2実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
101 光源
102 アパーチャステージ
103 照明光学系
104 マスクステージ
105 投影光学系
106 ウエハステージ
107 測定部
108 検査部
111 アパーチャ
112 フォトマスク
113 ウエハ
201 第1のパターン群
202 第2のパターン群
203 第3のパターン群
204 第4のパターン群
211 補助パターン
301 テンプレートステージ
302 ベース
303 アライメントセンサ
304 UV光源
305 ウエハステージ
306 イメージセンサ
307 測定部
308 検査部
311 テンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第1のパターン群と、前記第1のパターン群と平行に前記第1ピッチと異なる第2ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第2のパターン群とを有し、前記第1のパターン群の両端に位置するパターンが、前記第1のパターン群の両端間に位置するパターンと異なるパターン幅を有するフォトマスク、を露光装置にセットし、
前記露光装置の光源からの照明光を、前記露光装置の光軸に対し第1の角度傾いた方向から、前記露光装置の照明光学系を介して前記フォトマスク上に照射して、前記第1及び第2のパターン群からそれぞれ、第1及び第2の回折光を発生させ、
前記第1及び第2の回折光を、前記露光装置の投影光学系を介してウエハ上に投影し、前記ウエハ上に、前記第1の回折光による第1の像と、前記第2の回折光による第2の像とを結像させ、
前記第1の像と前記第2の像との間の相対距離を測定し、
前記相対距離に基づいて、前記投影光学系の状態を検査する、
露光装置の検査方法であって、
前記第1の角度は、前記第1の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し対称に拡散され、前記第2の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し非対称に拡散されるよう設定されることを特徴とする露光装置の検査方法。
【請求項2】
前記第1のパターン群の両端に位置するパターンのパターン幅は、前記第1のパターン群の両端間に位置するパターンのパターン幅よりも太いことを特徴とする請求項1に記載の露光装置の検査方法。
【請求項3】
前記フォトマスクは更に、前記第1のパターン群をピッチ方向に挟むように配置された補助パターンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置の検査方法。
【請求項4】
前記第2ピッチは、前記第1ピッチの2倍であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の露光装置の検査方法。
【請求項5】
前記第2の回折光の+1次回折光は、前記光軸に平行な方向に拡散されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の露光装置の検査方法。
【請求項6】
前記フォトマスクは更に、前記第1及び第2のパターン群のピッチ方向に、前記第1及び第2のパターン群と鏡面対称となるよう配置された第3及び第4のパターン群を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の露光装置の検査方法。
【請求項7】
第1ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第1のパターン群と、前記第1のパターン群と平行に前記第1ピッチと異なる第2ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第2のパターン群とを有し、前記第1のパターン群の両端に位置するパターンが、前記第1のパターン群の両端間に位置するパターンと異なるパターン幅を有するテンプレート、を露光装置にセットし、
前記露光装置の光源からの照明光を、前記露光装置の光軸に対し第1の角度傾いた方向から、前記露光装置の照明光学系を介して前記テンプレート上に照射して、前記第1及び第2のパターン群からそれぞれ、第1及び第2の回折光を発生させ、
前記第1及び第2の回折光を、前記露光装置の投影光学系を介してセンサ上に投影し、前記センサ上に、前記第1の回折光による第1の像と、前記第2の回折光による第2の像とを結像させ、
前記センサにより検出された前記第1及び第2の回折光の検出データに基づいて、前記第1の像と前記第2の像との間の相対距離を測定し、
前記相対距離に基づいて、前記投影光学系の状態を検査する、
露光装置の検査方法であって、
前記第1の角度は、前記第1の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し対称に拡散され、前記第2の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し非対称に拡散されるよう設定されることを特徴とする露光装置の検査方法。
【請求項8】
第1ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第1のパターン群と、前記第1のパターン群と平行に前記第1ピッチと異なる第2ピッチで並んだ複数のストライプ形状のパターンを含む第2のパターン群とを有し、前記第1のパターン群の両端に位置するパターンが、前記第1のパターン群の両端間に位置するパターンと異なるパターン幅を有するテンプレートと、
照明光を発生する光源と、
前記照明光を、露光装置の光軸に対し第1の角度傾いた方向から、前記テンプレート上に照射して、前記第1及び第2のパターン群からそれぞれ第1及び第2の回折光を発生させる照明光学系と、
前記第1及び第2の回折光を投影するためのセンサと、
前記第1及び第2の回折光を前記センサ上に投影し、前記センサ上に、前記第1の回折光による第1の像と、前記第2の回折光による第2の像とを結像させる投影光学系と、
前記センサにより検出された前記第1及び第2の回折光の検出データに基づいて、前記第1の像と前記第2の像との間の相対距離を測定する測定部と、
前記相対距離に基づいて、前記投影光学系の状態を検査する検査部とを備え、
前記照明光学系は、前記第1の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し対称に拡散され、前記第2の回折光の0次回折光と+1次回折光が、前記光軸に対し非対称に拡散されるよう、前記第1の角度を設定することを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−64786(P2012−64786A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208145(P2010−208145)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】