説明

露光装置用レーザ装置

【課題】高繰返し化(10KHz以上)、高出力化、超狭帯域化(0.1pm以下)を実現することが可能な露光装置用レーザ装置を提供すること。
【解決手段】LMN3を有する狭帯域発振段レーザ(MO)10と、光安定共振器を配置した増幅段レーザ(PO)20とからなる注入同期式レーザ装置において、発振段レーザ光を増幅段レーザ20の光安定共振器内に注入する高効率な注入装置4を設ける。発振段レーザ10には放電電極1aが配置され、放電電極1aを放電させるための12kHz電源15が接続され、また、増幅段レーザ20の光共振器内には複数組のペアの放電電極2a,2bが配置され、それぞれの電極ペア2a,2bを放電させるための6kHz電源25a,25bが接続される。そして、2組のペア電極2a,2bに、前記注入光と同期させて交互に放電電圧を印加して放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は狭帯域発振段レーザと、少なくとも1組の光安定共振器を配置した増幅段レーザとからなる露光装置用の注入同期式レーザ装置に関し、特に、高繰返し周波数で高出力が可能な露光装置用レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、露光用レーザ装置においては、露光機のスループット向上および均一な超微細加工実現のため、高繰返し化、高出力化と超狭帯域化が同時に要求されている。
超狭帯域化と高出力化の要求を同時に満足させるため、2台のレーザを用いた同期レーザ装置が、提案されている。
1台目の発振段レーザは低パルスエネルギながら超狭帯域化スペクトルをもつ。2台目の増幅段レーザにおいて、発振段レーザの超狭帯域化スペクトルを維持したままパルスエネルギのみ増幅する。この2ステージレーザ装置により所望の超狭帯域化スペクトル、高出力を得ることが可能となる。
上記した2ステージレーザ装置の形態としてはアンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amprifier )方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。
【0003】
2ステージレーザ装置の概略構成例を図20に示す。同図(a)はMOPA方式を示し、同図(b)はMOPO方式を示す。
同図(a)(b)において、発振段レーザ(MO)100から放出されるレーザビームはシードレーザビームとしての機能し、増幅器(PA)200あるいは増幅段レーザ(PO)210はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。すなわち、発振段レーザ100のスペクトル特性によりレーザ装置の全体のスペクトル特性が決定され、増幅段レーザ200あるいは210によってレーザ装置からのレーザ出力(エネルギまたはパワー)が決定される。
同図(a)のMOPA方式のレーザ装置において、発振段レーザ(MO)100、増幅器(PA)200は各々レーザチャンバ101,201を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極(図示せず)が設置され、これらの一対の電極に高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0004】
また、発振段レーザ100と増幅段レーザ200のチャンバには、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材(図示せず)がそれぞれ設置されている。また、チャンバ101 ,201内には、図示しないクロスフローファンが設置されており、レーザガスをチャンバ101,201内で循環させ、上記放電部にレーザガスを送り込んでいる。
発振段レーザ100は拡大プリズム301とグレーティング(回折格子)302によって構成された狭帯域化モジュール(LNM)300を有し、この狭帯域化モジュール300内の光学素子とフロントミラー102とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ100からのレーザビーム(シードレーザビーム)は反射ミラー等を含むビーム伝播系400を介して増幅器(PA)200へ導かれ注入され、増幅されて出力レーザ光として出力される。
図20(a)に示すMOPA方式では、増幅器(PA)200には共振器ミラーが設けられていないが、図20(b)に示すMOPO方式では、小入力でも増幅できるように増幅段レーザ210に、例えばリアミラー211、フロントミラー212からなる1組の光安定共振器が配置される。そして、注入されたシードレーザビームは同図の矢印のようにフロントミラー212、リアミラー211間で反射し、放電部を有効に通過してレーザビームのパワーが増大し、フロントミラー212からレーザ光が出力される。
【0005】
ところで、テクノロジーノードが進むにつれて、45nmから32nmノードでは、ArFレーザを光源とする露光装置において、液浸技術による高NA(1.3〜1.5)化と2重露光が主力となりつつある。
ArFレーザ露光装置用光源の要求を以下に示す。
1.高ドーズ安定性の確保と高スループット化に伴い高繰返し周波数(10kHz以上)かつ高平均出力(100W以上)が要求される。
2.高NA化にともない更なる超狭帯域化(0.1pm以下)が要求される。
3.露光装置のマスク上でスペックルの影響を低くするために出力レーザ光の空間コヒーレンスは低いことが要求される。
【0006】
最近の露光用レーザ装置においては、上述したように超狭帯域化と高出力化に加え、高繰返し化が要求されている。高繰返し化の要求に対して、例えば特許文献1に記載のレーザ装置のように、増幅段レーザに二組のペアの放電電極を配置し、ペアの放電電極を交互に放電させることで、ある程度の高繰返し化の要求に答えられるものと考えられる。
図21に特許文献1に記載のレーザ装置の概略構成を示す。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅器(PA)の上面図を示す。
図21に示すレーザ装置は、MOPA方式のレーザ装置において、1つの高繰返し発振段レーザ(MO)と、少なくも2つの増幅器(PA)で構成(同一チャンバ内に複数組の電極を配置してもよい)し、発振段レーザ(MO)1つの繰返し数が例えば4kHz以上で、前記増幅器(PA)の繰り返し周波数が例えば2kHz以上で同期運転させるようにしたものである。
【0007】
図21において、発振段レーザ100の繰り返し周波数は例えば4kHz以上であり、発振段レーザ100からのレーザビーム140Aは反射ミラー240A,240B等を介して増幅器(PA)200へ導かれ注入される。
増幅器(PA)200には、二組のペアの放電電極90A−90A,90B−90Bが配置され、例えば2kHz以上の繰り返し周波数で交互に放電し、注入されたレーザビームは同図(b)に示すように、反射ミラー240B,240C1,240C2で反射して、増幅され、増幅されたレーザ光が出力される。
なお、通常のフリーランレーザ装置において、レーザチャンバの中に複数組の電極ペアを直列に配置し、これを交互運転することにより高繰返し運転をするレーザ装置は、例えば特許文献2にも示されるように従来から知られている。
【特許文献1】米国特許第7006547号明細書
【特許文献2】特開昭63−98172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レーザの繰返し周波数10kHz以上、レーザ出力100W以上の超狭帯域化レーザ装置を、上記特許文献1に記載されるMOPA方式のレーザ装置で実現する場合、以下の問題が発生する。
1.MOPA方式の場合、発振段レーザ(MO)に対して要求されるパルスエネルギは1mJであり、発振段レーザ(MO)において、高繰返し化(10KHz以上)、パルスエネルギ1mJ以上、更なる狭帯域化(0.1pm以下)を実現するのは困難であった。
図22は、MOPA方式とMOPO方式のレーザ装置における注入パルスエネルギ(mJ)と増幅後のパルスエネルギ(mJ)の関係を示す図であり、MOPA方式はMOPO方式より増幅効率が悪く、増幅後のレーザ出力として16mJ必要とすると、注入に必要なパルスエネルギは、MOPA方式では1mJとなる。これに対し、MOPO方式では0.1mJでよい。
2.増幅器(PA)の増幅後のレーザのパルスエネルギが低いために、ある程度の長さの電極長が必要となり、例えば図21に示した直列の分割電極で動作させる場合、レーザチャンバの長さが従来のチャンバの約2倍近くとなり、大型化した。
【0009】
上述したように、MOPA方式では注入パルスエネルギを大きくしなければならない。一方、MOPO方式であれば、発振段レーザ(MO)に対して要求されるパルスエネルギは比較的少なくてよい。
しかし、上記高繰返し、高出力及び超狭帯域化レーザ装置をMOPO方式で実現するには、以下のように、解決しなければならない問題もある。
すなわち、高繰り返し(10kHz以上)、高パルスエネルギ(15mJ以上)とすると、増幅段レーザ(PO)の共振器のエネルギ負荷が増大し、共振器のダメージが大きくなる。増幅段レーザ(PO)の共振器のエネルギ負荷を小さくし、かつ高パルスエネルギ化するためには、大きな放電断面積が必要となる。
【0010】
図23に放電励起レーザ装置のレーザチャンバの断面図を示す。
レーザチャンバ100の中には電極間にレーザガスを流すためのクロスフローファン121と放電したレーザガスを冷却するための熱交換器122と放電励起させるためのアノード電極131とカソード電極132とクロスフローファン121によって流れるレーザガスを電極間に効率よく流すための風ガイド123からなっている。また、電源133と電極132の間には絶縁セラミックス124が設けられ、さらに、電極131の近くには予備電離電極125が設けられている。
電源133より、予備電離電極125に電圧を印加して、まず、放電空間を予備電離した後、電極131,132間にパルス電圧を印加して、カソード電極132とアノード電極132間に電流を流し、放電させる。
ここで、例えば、繰返し周波数を2倍にするためには、上記クロスフローファン121による必要風速が2倍必要となるが、風速を2倍にするためにはチャンバ内のFAN動力が23 =8倍となる。このため、風速を上げることで高繰返し化することは実質的に困難であった。
【0011】
以上のように、MOPO方式によれば、発振段レーザ(MO)に対して要求されるパルスエネルギは比較的少なくてすむが、上記した高繰返し、高出力及び超狭帯域化レーザ装置をMOPO方式で実現するには、増幅段レーザ(MO)への発振段レーザ出力光の注入方法や電極の配置・構成など、さらに解決しなければならない問題が多々ある。
前記、特許文献1にはMOPO方式への適用についても言及されているが、高繰返し、高出力及び超狭帯域化に対して、具体的な方策は開示されていない。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、高繰返し化(10KHz以上)、高出力化、超狭帯域化(0.1pm以下)を実現することが可能な露光装置用レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
エキシマレーザにおける、高繰り返し化で、もっとも有効なのは、放電幅を狭くすることである。一般に、エキシマレーザにおける、動作可能な最大繰り返し周波数は、クリアランスレシオ(ClearanceRatio,CR)と関連付けて説明される。CRとは、図24に示すように電極131,132間のガス流速をv、放電幅をW、放電間隔時間をt、電極間ギャップをGとすると、ガス流速vと放電間隔時間tの積と放電幅Wとの比、すなわちCR=vt/Wである。
CRが十分大きいとき、放電は安定し、高繰り返し動作が可能となる。CRが大きければ、放電は安定に生成され、レーザのエネルギ安定性も良くなる。
【0013】
物理的な現象より、CRについて説明すれば、以下のようになる。
放電によって生成されるイオン、活性種などの放電生成物、電極からの飛散ダスト、デブリはガスの放電抵抗を著しく低下させる。また、放電によって、ガス希薄部が生じ、この部分は相対的にガス圧力が低いため、放電抵抗が小さい。よって、この部分(放電生成物)が、電極近傍に存在すると、次に生じる放電が、電極間ではなく、この部分に生じてしまう(図24に示す異常放電の発生)。
CRが大きいということは、この放電生成物を、次の放電が発生するときに、電極近傍から遠ざけるということを意味する。
必要なCRの値は、レーザの用途によって異なる。レーザのエネルギ安定性がそれほど要求されないアプリケーションでは、CRは1程度でよい。しかし、半導体露光用光源として使われる場合、高いエネルギ安定性が要求されるため、CRは2〜3が必要となる。従って、たとえば、放電幅が3mmで、6kHzで動作させようとすると、電極間ガス流速は秒速50m程度の値が必要となる。
【0014】
レーザの繰り返し周波数を増加させようとする場合、CRの観点から、2つの方策が可能であると考えられる。たとえば、6kHz動作するレーザの繰り返し周波数を12kHzに増加させ、レーザエネルギの安定性も確保しようとした場合、CRが2〜3で一定であると仮定すると、ガス流速vを二倍にするか、放電幅Wを1/2にすることで実現できる。
レーザ装置を実用可能なものとする場合、この二つの方策のうち、前者が格段に困難である。それは、ガス流速を二倍にすることで、クロスフローファンを駆動するモータに必要な電力は8倍に増加するからである。
一方、放電幅を狭くする方法としては放電部での電極幅を狭くする方法がある。しかし、種々検討した結果、電極幅を狭くするだけでは必ずしも放電幅が狭くならず、電極間距離(電極ギャップ)を狭くすることで、放電幅が狭くなることを見出した。すなわち、電極間距離を短くすれば、電極間の電気力線がどの部分においても広がらず略平行となり、放電への束縛力が強い状態となる。このため、放電幅が広がらず、放電幅が設計どおりに狭くなると推定される。
【0015】
図25に、電極に投入されるエネルギ密度を一定とし放電電極幅一定(カソード電極幅:1.5mm電極、アノード電極幅2mm)とした電極において、電極ギャップと放電幅の相対値の関係の計測結果を示す。16mmギャップから10mmギャップとすることで同じ電極幅においても16mmギャップの場合にくらべて約70%の放電幅まで狭くなることが判明した。
ここで、上記放電幅は、具体的には、以下のようにして計測することができる。
図26にマッハツェンダ法による放電幅Wを計測するシステムの構成例を示す。
コヒーレントなパルスレーザ401からの光束をミラー402を介してビームエキスパインダ403に入射させ、ビームエキスパンダ403によりレーザ400の放電領域以上にビーム拡大する。
ハーフミラー404によりレーザチャンバ405を通る光束と通らない光束とに等量に2分し、一方をレーザチャンバ405に入射し、他方を高反射ミラー410を介してハーフミラー408に入射する。
レーザチャンバ405内には放電電極406が設けられ、放電電極406に放電電圧を印加し放電させることにより、レーザチャンバ405内に入射した光は放電電極406間の放電領域を通過し出力する。
レーザ400の出力光は高反射ミラー407で反射してハーフミラー408に入射し、上記高反射ミラー410を介してハーフミラー408に入射した光と重ね合わせられ、重ね合わせられた光は、干渉フィルタ409を介してCCDカメラ411に入射する。
【0016】
これら二つの光束は、レーザチャンバ405を通る光束と通らない光束の間で両光束は干渉し干渉縞を発生する。すなわち。パルスレーザの波長をλとすれば、光路差Δが半波長λ/2の奇数倍であれば、二つの光束の山と谷が重なって互いに弱め合い暗い縞を生じ、 偶数倍であればお互いに強め合って明るい縞を生じる。光路差Δが像面全体で同じであれば、像は一様な明るさになる。
ここで、図26(b)に示すように、カソード電極406aとアノード電極406b間で放電すると電子密度が高くなり、放電部の屈折率が変化する。したがって、この干渉縞が歪む領域の幅を放電幅Wとしてこの干渉計により計測できる。
また、放電幅を計測する簡便な方法としては、図27に示すように、レーザチャンバ405のフロント側にOC412(出力結合ミラー)とリア側にリアミラー413を配置し、レーザ発振させてOC412の位置のビームプロファイルを、CCDカメラ416で撮像し計測することで、ビーム幅を計測することにより代用してもよい。
なお、転写レンズ415はOC412の位置でのビームをCCDカメラ416上に結像させて計測する。放電幅の定義としては、例えばピーク強度の1/eまたは1/e2 としてもよい。
【0017】
高繰返し化を可能とするには、前記CRの考え方による、放電抵抗を下げるということがある。
上述のとおり、放電近傍に放電生成物が存在すると、放電電極間に放電が生成されず、異常放電となり、レーザのエネルギ安定性が損なわれる。このとき、放電が電極間に設計どおり生成されるか、放電生成物が存在する領域に生成されて異常放電となるかは、両者の放電抵抗の違いに依存する。
よって、放電生成物がある領域よりも、電極間領域の放電抵抗が小さければ、CRが小さい場合、すなわち、放電生成物が電極近傍に存在する場合でも、安定な放電が生成できる。電極間距離を小さくし、電極間電界強度を高めるということは、放電抵抗を下げることに他ならず、高繰り返し化において、レーザの出力安定化に有効な手段である。
実験結果から、電極間距離としては、設計放電幅3mmに対しては16mmの電極間距離が有効であり、設計放電幅1mmに対しては8mmの電極間距離が有効である。よって、放電幅と電極間距離の、高繰り返し動作への有効なアスペクト比(放電幅と電極間距離の比)は1:8〜3:16、すなわち0.125〜1.875である。
【0018】
以上の実験結果から、たとえば高繰返し周波数12kHzの発振段レーザ(MO)は放電幅を狭くするために、電極幅を約1mmと狭くし、かつ、電極ギャップを約8mmに短くすることが必要となる。
さらに、同一の風量を維持することができるとすると、電極ギャップを短くすれば、電極ギャップ間のガス流速は電極ギャップGに反比例して速くなる。したがって、電極ギャップを狭くすることにより、ガス流速を増大させる効果も得られ、より高繰返し化が可能になるものと考えられる。
【0019】
以上のように、発振段レーザ(MO)の高繰返し化を実現するためには、狭い電極幅と電極ギャップを短くする必要がある。この場合、放電断面積が小さくなるため、発振段レーザ(MO)の出力は小出力となる。
このため、特許文献1に記載されるようなMOPA方式を採用した場合、発振段レーザ(MO)に対して要求されるパルスエネルギ1mJ以上必要を維持することができなくなる。
そこで、本発明では、PO共振器として低空間コヒーレンスを実現する安定共振器を備えた増幅段レーザ(PO)を備えたMOPO方式を採用した。MOPO方式であれば、前記図22に示したように、増幅段レーザ(PO)の必要パルスエネルギが従来のMOPA方式に比べ少なくとも1/4(=放電幅*電極ギャップ1/2)でも十分な増幅後のレーザパルスエネルギを得ることができる。
本発明において、MOPO方式の第1の例は、増幅段レーザ(PO)のPO光共振器としてファブリペロ型の安定共振器を用い、発振段レーザ(MO)光をこの共振器中に注入する。上記第2の例は、増幅段レーザ(PO)のPO光共振器として、リング型の安定共振器を採用し、前記共振器の出力結合ミラー(OC)から発振段(MO)レーザ光を注入する。
【0020】
発振段レーザ(MO)の高繰返し化のために、狭い放電幅WMOを実現するために放電の電極幅と電極ギャップGMOを狭くする必要がある。
この時のパルスエネルギは約0.25mJを維持することは可能である。さらに、放電幅が狭くなるために、放電方向に対して垂直方向に対して、波長分散素子(grating)を設置し、プリズムビームエキスパンダの拡大率を大きくすることにより、更なる狭帯域化が可能となる。
しかし、高繰返し増幅段レーザ(PO)のするために、狭い放電幅WPOを実現するために、電極幅と電極ギャップGPOを狭くすると以下の2つの問題点が発生する。
1.増幅段レーザ(PO)の共振器の光学素子の損傷
放電幅を例えば1/2とすることで、レーザのビーム面積も1/2より小さくなり、これまでと同じパルスエネルギ(約17mJ)を出力するとすると、レーザビームのエネルギ密度は2倍以上になってしまう。
これにより、増幅段レーザ(PO)のレーザチャンバから光を取り出すウインドや、レーザビームを増幅するPO共振器に含まれる光学素子の損傷が発生する。従って、POレーザの放電幅及び電極ギャップを、ある程度以上小さくすることは難しい。
2.増幅段レーザ(PO)の増幅効率の低下
増幅段レーザ(PO)の放電面積を小さくすると増幅後に必要なパルスエネルギ(例えば17mJ以上)を定格で出力することができない。
【0021】
そこで、本発明においては、高パルスエネルギ化とPO安定共振器の光学素子の負荷を低減するために、増幅段レーザ(PO)にはn組のペアの電極を配置し、おのおのの電極ペアには、それぞれ電源を接続し、発振段レーザ(MO)光をPO安定共振器に注入し、少なくとも1つのペアの電極を注入光に同期させて放電させ、増幅段レーザ(PO)からレーザ光を出力する方式とする。
なお、増幅段レーザ(PO)のPO共振器内に複数組のペアの放電電極を配置し、発振段レーザ光をPO共振器内に注入するように構成し、PO共振器から出力光を取り出すようにしたり、あるいは、それぞれがPO共振器を有する複数の増幅段レーザ(PO)を設け、発振段レーザ光を、それぞれの増幅段レーザ(PO)のPO共振器内に分岐注入し、複数の増幅段レーザ(PO)のPO共振器からの出力光を合波して出力するようにしてもよい。
【0022】
上記のように増幅段レーザ(PO)にn組のペアの電極を配置し、発振段レーザから出力される注入光に同期させて、n組のペア電極の内の少なくとも1組のペア電極を順次放電させることで、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極における放電の繰返し周波数は、発振段レーザ(MO)の繰返し周波数より低くすることができる。
これにより、発振段レーザ(MO)の電極ギャップGMOと、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極の電極ギャップGPOの関係は、GMO<GPOとなるように構成することができ、また、増幅段レーザ(PO)の放電幅WPOを、発振段レーザ(MO)の放電幅WMOより大きくすることもできる。
ここで、上記のように発振段レーザ(MO)の電極ギャップGMOと、増幅段レーザ(PO)の電極ギャップGPOが異なるため、発振段レーザ(MO)光を、ビーム形状を変えずに増幅段レーザ(PO)に注入すると、増幅段レーザ(PO)の放電空間が、発振段レーザ(MO)が出力するシード光で満たされない。
そこで、発振段レーザ(MO)と増幅段レーザ(PO)の間の光路中に、少なくとも放電GAP方向にビームを拡大するビームエキスパンダを設置することが望ましい。これにより、増幅段レーザ(PO)の放電空間をシード光で満たすことができる。
【0023】
図28に発振段レーザ(MO)と増幅段レーザ(PO)の放電電極と放電エリアの断面図の一例を示す。
発振段レーザ(MO)は、電極幅と電極ギャップGMOを狭くすることにより、放電幅WMOが狭くなり、安定な12kHz放電が可能となる。
また、放電幅が狭くなるため、波長分散素子の分散方向を放電に対して垂直方法に配置し、ビーム拡大プリズムの拡大率を大きくすることにより、波長分散素子へ入射するビーム広がり角度が小さくなり、発振段レーザ(MO)から出力されるスペクトル幅はさらに狭くなる。
ただし、発振段レーザ(MO)のレーザ出力がビーム断面積が小さくなる分だけ小出力となる(ビーム断面積(1/2と放電ギャップ1/2)が1/4となった場合、1mJ→0.25mJとなる)。
【0024】
しかし、発振段レーザ(MO)の出力が半分以下に落ちても、MOPO方式を採用し、増幅段レーザ(PO)の安定共振器内にビームを拡大して注入することにより、十分PO共振器で増幅発振させて出力させることができる。
また、増幅段レーザ(PO)には、n組のペアの電極が配置されており、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極における放電の繰返し周波数を、発振段レーザ(MO)の繰返し周波数より低くすることができるので、その放電電極のうちの1組の放電電極による放電断面積は図28(b)に示すように、従来の比較的繰返し周波数の低い場合の断面積と同等にできる。
このため、PO共振器に使用される光学素子の負荷(エネルギ密度)を低減でき、PO共振器の光学素子の寿命が延びる。
また、注入光に対して例えば2組の電極を2つの電源により交互に同期させて放電させることにより、高繰返し(12kHz)で、かつ、高パルスエネルギ(17mJ)の出力が可能となる。
【0025】
以上に基づき、本発明においては、次のように前記課題を解決する。
(1)狭帯域発振段レーザと、少なくとも1組の光安定共振器を配置した増幅段レーザとからなる注入同期式レーザ装置において、前記発振段レーザ光を注入光として前記増幅段レーザの光安定共振器内に注入する注入装置を設けるとともに、前記増幅段レーザの光共振器内には複数組のペアの放電電極を配置し、それぞれの電極ペアに、電極ペアを放電させるための電源回路を接続する。
そして、前記複数組の電極ペアの内の、少なくとも1ペアを前記注入光と同期させて順次放電させる。
例えば、2組のペア電極が設けられている場合は、2組のペア電極に、前記注入光と同期させて交互に放電電圧を印加して放電させる。また、n組のペア電極が設けられている場合は、n組のペア電極をm(n>m)群に分け、前記注入光と同期させて、同じ群に属するペア電極単位で、m群のペア電極に順次に放電電圧を印加して放電させる。
(2)狭帯域発振段レーザと、少なくともk台の光安定共振器を配置した増幅段レーザとからなる注入同期式レーザ装置において、前記発振段レーザ光を注入光として前記k台の増幅段レーザの光安定共振器内に分岐注入する注入装置を設け、k台の増幅段レーザ装置の電極に電源回路を接続する。
そして、前記k台の増幅段レーザの少なくとも1台を前記注入光と同期させて順次放電させる。
例えば、光安定共振器を配置した2台の増幅段レーザが設けられている場合は、2台の増幅段レーザの電極に、前記注入光に同期させて、交互に放電電圧を印加して放電させる。また、k台の増幅段レーザが設けられている場合には、k台の増幅段レーザをm(k>m)群に分け、前記注入光に同期させて、同じ群に属する増幅段レーザ単位で、m群の増幅段レーザの電極に順次に放電電圧を印加して放電させる。
(3)上記(1)(2)において、発振段レーザと増幅段レーザの光路間に発振段レーザから出力されたビームを少なくとも電極ギャップ方向に拡大するビームエキスパンダを配置する。
ここで、上記発振段レーザと増幅段レーザの電極ギャップは次のように定められる。
前述したように、電極間距離(電極ギャップ)を狭くすることで、放電幅を狭くすることができ、それに応じて高繰返し化が可能となる。
したがって、高繰返し化を実現するため、発振段レーザの電極間距離(電極ギャップ)を狭くすることが必要であるが、増幅段レーザについては、上記のように、増幅段レーザ装置の光共振器内に複数組のペアの放電電極を配置しているので、各ペア電極の放電の繰返し周波数は発振段レーザの繰返し周波数より低くてよい。
このため、発振段レーザ(MO)の電極ギャップGMOと、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極の電極ギャップGPOは、GMO<GPOとなるように設定される。
なお、前記したように、発振段レーザの高繰返し化を実現するため、発振段レーザの出力は小出力となる。このため、増幅段レーザの光安定共振器内に発振段レーザ光(シード光)を注入する注入装置としては高効率の注入装置を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)安定共振器を備えた増幅段レーザ(PO)を備えたMOPO方式を採用したので、増幅段レーザ(PO)の必要パルスエネルギを従来のMOPA方式に比べて格段に少なくすることができる。
このため、発振段レーザ(MO)の高繰返し化を実現するため、電極幅を狭くし、電極ギャップを短くすることにより、発振段レーザ(MO)の出力が小出力となっても、増幅段レーザに対して必要なパルスエネルギを供給することが可能である。
(2)増幅段レーザ装置の光共振器内に複数組のペアの放電電極を配置し、それぞれの電極ペアに電源回路を接続し、前記注入光と同期させて前記複数組の電極ペアの内の、少なくとも1ペアを順次放電させるようにしたので、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極における放電の繰返し周波数を、発振段レーザ(MO)の繰返し周波数より低くすることができる。
このため、発振段レーザが高繰返し周波数で動作しても、増幅段レーザ(PO)の1組の電極ペアの放電断面積は、発振段レーザの放電断面積より大きくすることができ、従来の比較的繰返し周波数の低い場合の断面積と同等にできる。
したがって、PO共振器に使用される光学素子の負荷(エネルギ密度)を低減でき、PO共振器の光学素子の寿命を延ばすことが可能となる。
(3)発振段レーザと増幅段レーザの光路間に発振段レーザから出力されたビームを少なくとも電極ギャップ方向に拡大するビームエキスパンダを配置することにより、発振段レーザ(MO)の電極ギャップGMOと、増幅段レーザ(PO)の各ペア電極の電極ギャップGPOの関係がGMO<GPOであっても、増幅段レーザ(PO)の放電空間を発振段レーザの出力光であるシード光で満たすことができ、効率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明のレーザ装置の基本構成を示す図である。
本発明のレーザ装置は、同図に示すように、スペクトル線幅の狭いレーザ光を出力する発振段レーザ(MO)10と、出力されたMOレーザ光を少なくとも放電ギャップ方向に拡大するビームエキスパンダ4と、MOレーザ光を高効率注入装置5に導入するための2枚の高反射(HR)ミラー6a,6bと、発振段レーザ(MO)10のレーザ光を光共振器により増幅発振させるための増幅段レーザ(PO)20とを有する。MOレーザ光は、高効率注入装置5により、高効率で増幅段20に注入される。高効率注入装置の具体例については後述する。
発振段レーザ(MO)10はプリズムビームエキスパンダ3aとグレーティング(回折格子)3bを搭載した狭帯域化モジュール3(以下、LNM3ともいう)を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子と出力結合ミラー(OC:OutputCoupler)14とでレーザ共振器を構成する。
また、チャンバ11内に一対の放電電極1aを備え、電極1aには12kHzのパルス電圧を発生する電源15が接続される。
【0028】
増幅段レーザ(PO)20は、出力結合ミラー(OC)24とレーザチャンバ21とリアミラー25で構成される安定共振器を有し、チャンバ21内に一対の電極2aおよび一対の電極2bからなる2組の一対の電極を有する。2組の一対の電極2a,2bには、それぞれ6kHzのパルス電圧を発生する電源25a,25bが接続される。
ここで、発振段レーザ(MO)10の一対の電極1aのギャップ(電極間隔)GMOと、増幅段レーザ(PO)20の2組の一対の電極2a,2bのギャップGPOの関係は、GMO<GPOとなるように構成され、また、増幅段レーザ(PO)20の放電幅WPOは、発振段レーザ(MO)10の放電幅WMOより大きくなるように構成されている。
【0029】
以上のように発振段レーザ(MO)10の一対の電極1aのギャップGMOを小さくし、狭い放電幅WMOを実現することで前述したように発振段レーザ(MO)10の高繰返し化を実現することができる。
また、増幅段レーザ(PO)20に2組の一対の電極を配置し、交互にそれぞれの一対の電極ペア2a,2bで放電させることにより、増幅段レーザ(PO)20の各電極における放電の繰返し周波数を発振段レーザ(MO)10の繰返し周波数の1/2にすることができ、その放電電極のうちの1組の放電電極による放電断面積も発振段レーザ(MO)10のそれと比べ、大きくすることができる。このため、増幅段レーザ(PO)20のPO共振器に使用される光学素子のエネルギ密度を低減することが可能となる。
【0030】
発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20はともにチャンバ11,21内に設置された一対の電極1aおよび2組の一対の電極2a,2bの光軸延長上両端にウィンドウ部材12a,12bおよび22a,22bを有し、その両側には波形整形のためのスリット13,23がそれぞれ設置されている。
波長およびスペクトル波形モニタ34およびパワーモニタ8は、増幅段レーザ(PO)20から出力された光の光品位及びパルスエネルギを検出し、パワーモニタ7は、発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギを検出する。
波長及びスペクトル波形コントローラ33は、上記波長およびスペクトル波形モニタ34の出力に基づき増幅段レーザ(PO)から出射されるレーザ光の波長及びスペクトル波形を制御する。また、エネルギコントローラ30は、パワーモニタ7,8の出力に基づき、はレーザのパルスエネルギをコントロールする。
また、ガスコントローラ32は発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20のレーザガスをコントロールする。レーザコントローラ31はレーザの全体を制御する。 同期コントローラ35は、増幅段レーザ(PO)20に接続されている2台の6kHz電源25a,25bと発振段レーザ(MO)10に接続されている12kHz電源15の放電タイミングをコントロールする。
【0031】
発振段レーザ(MO)10は、前述したように、スペクトル線幅を狭くするために、プリズムビームエキスパンダ3aとグレーティング(回折格子)3bを搭載したLNM3とを有し、LNM3に配置されているグレーティング(回折格子)3bの分散方向(=プリズムのビーム拡大方向)は電極の放電方向に対して垂直方向に配置されている。
レーザチャンバ11内にはバッファガスとArガスとF2 ガスが満たされており、電極幅と電極ギャップを狭くすることにより、放電幅が狭く、かつ、電極間でのガス流速が速くなり、12kHz電源から電極に電圧を印加放電させることで安定な放電が形成される。
上記放電により励起されArFエキシマが形成される。このArFエキシマからArガスとFに分離する時に193nmの波長の光を発光する。
193nmの光をLNM3で波長選択することにより、スペクトル幅約400pm→0.1pmまで狭帯域化して、発振段レーザ(MO)10の出力結合ミラー(OC:OutputCoupler)14から出力される。発振段レーザ(MO)からは繰返し周波数12kHzでパルス発振する。発振段レーザ(MO)のレーザの発光パルスの時間幅は約30nsである。
【0032】
次に、発振段レーザ(MO)10の出力光は増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップと同等のビーム幅となるように、ビームエキスパンダ4に入射し拡大されて出力され、2枚の高反射(HR)ミラー6a,6bにより高効率注入装置5に入射する。ただし、上記2枚のミラー6a,6bの間には発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギをモニタするためのビームスプリッタ7aとパワーモニタ7が配置されている。
ここで検出された発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出値はエネルギコントローラ32に入力される。この発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出結果に基づいて、エネルギコントローラ32は同期コントローラ35を介して12kHz電源15に制御信号を送る。
高効率注入装置5を出力したレーザ光は増幅段レーザ(PO)20の出力結合ミラー(OC)25とレーザチャンバ21とリアミラー25で構成される安定共振器に注入される。
【0033】
レーザチャンバ21内には2組の一対(ペア)の電極2a,2b(以下電極ペア2a,2bともいう)が直列に配置され、それぞれの一対の電極ペア2a,2bに、おのおの6kHz電源25a,25bが接続されている。
発振段レーザ(MO)10から出射した注入光が12kHzで、増幅段レーザ(PO)20の光共振器内に注入されると、同期して6kHz電源25a,25bを交互に運転して、交互にそれぞれの一対の電極ペア2a,2bで放電し、注入された光が光共振器内で増幅発振され、出力結合ミラー(OC)24から増幅された光が12KHzでレーザ発光し、露光装置36に出力される。
この出力された光はビームスプリッタ8a,8bによりサンプルされ、パワーモニタ8によりパルスエネルギを検出しその結果がエネルギコントローラ30に送られる。
エネルギコントローラ30はこの検出結果に基づいて同期コントローラ35を介して、増幅段レーザ(PO)20の各6kHz電源25a,25b及び発振段レーザ(MO)10の12kHz電源15に制御信号を送る。
【0034】
増幅段レーザ(PO)20の出力光をビームスプリッタ8b,8bにより光サンプルし、波長及びスペクトル波形モニタ34により波長及びスペクトル波形を検出する。
この検出結果は波長及びスペクトル波形コントローラ33に送られLNM3内にあるグレーティング3bの入射角度を変化させる機構(図示しない)に制御信号を送ることにより波長を制御する。
また、スペクトル波形も発振段レーザ(MO)10のレーザ共振器内の光学素子の光波面を制御(図示しない)することにより、スペクトル波形を制御できる。さらに、ガスコントローラ32により発振段レーザ(MO)10のレーザチャンバ11のF2 ガス濃度を制御することによってもスペクトル波形を制御できる。
【0035】
レーザコントローラ31は、12kHz電源15の印加電圧や2台の6kHz電源25a,25bの印加電圧及び増幅段レーザ(PO)20及び発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの経時変化から、ガスコントローラ32にレーザガス(F2、Ar及びバッファガス)の補給及び排気を徐々に行う。
ところで、発振段レーザ(MO)10は電極幅及び電極ギャップが狭いので、放電による音響波による光波面のゆがみが発生して、スペクトル波形に悪影響を及ぼす。発振段レーザ(MO)10の12kHz発振で音響波の影響を著しく小さくする方法として、バッファガスとしてHeガスまたはNeとHeの混合ガスを用いる方法がある。
Heガスをバッファガスとした場合の欠点として、発振段レーザ(MO)のパルスエネルギ力が小さくなることである。しかし、この小さなパルスエネルギの欠点は、注入効率の高いMO増幅段レーザ(PO)方式を採用することにより回避可能となる。
【0036】
以上のように、本発明のレーザ装置は、安定共振器を備えた増幅段レーザ(PO)20を有するMOPO方式を採用したので、発振段レーザ(MO)10の出力が小出力となっても、増幅段レーザに対して必要なパルスエネルギを供給することが可能である。
また、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の光路間に発振段レーザから出力されたビームを少なくとも電極ギャップ方向に拡大するビームエキスパンダ4を配置することで、増幅段レーザ(PO)20の放電空間を発振段レーザ(MO)10の出力光であるシード光で満たすことができ、効率の低下を防ぐことができる。
【0037】
以下、本発明による具体的なレーザ装置の構成例について説明する。
(1)第1の実施例
図2は本発明の第1の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の安定共振器にリング共振器を設置し、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)に効率よく注入するようにした構成例を示す。
なお、同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。同図では図1に示した各種検出器、コントローラ、電源等は省略されている。
図2において、前述したように発振段レーザ(MO)10の一対の電極1aに電圧を印加し放電させることにより、193nmの波長の光を発光する。この193nmの光はLNM3で狭帯域化され、OC(出力結合ミラー)14から出力される。
発振段レーザ(MO)10の出力光はビームエキスパンダ4により、増幅段レーザ(PO)の放電ギャップまで拡大され、高反射ミラー6aを介して増幅段レーザ(PO)20のリング共振器中に注入される。すなわち、同図 (b) に示すように、高反射ミラー6aで反射させたシード光を部分反射ミラーであるOC(出力結合ミラー)62bを透過させて、リング共振器の共振器中に注入する。
【0038】
図3に上記ビームエキスパインダ4の構成例を示す。同図(a)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凹凸レンズ4a,4bを用いた例を示し、発振段レーザ(MO)10の出力光はシリンドリカル凹レンズ4aに入射した後、シリンドリカル凸レンズ4bに入射し、増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビーム径が拡大される。
同図(b)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凸レンズ4b,4cを用いた例を示し、同図 (c) は、入射面がS偏光に対してARコートされ、出射面が0度ARコートされたプリズムビームエキスパインダ4d,4eを用いた例を示し、同図(d)は両面がS偏光に対してARコートされたウエッジ基板4f,4gを用いた場合を示し、いずれの構成でも、同図(a)と同様に増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビームを拡大することができる。なお、図3(c)および図3(d)の実施例において、プリズムまたはウェッジ基板の斜面に対してS偏光のARコートが必要な理由は、MOレーザから出力される偏光状態が、紙面に対して垂直な直線偏光であるためである。
【0039】
図2に戻り、OC62bを透過したシード光は高反射ミラー62aによりレーザチャンバの放電空間に傾いて入射される。
図示しない6kHz電源からシード光に同期させて、増幅段レーザ(PO)の電極ペア2aに電圧が印加され、放電する。これにより、放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し2枚の高反射ミラー61a,61bにより折り返され、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。
増幅した光の一部はOC62bを透過してレーザとして出力され、、OC62bの反射光は再びリング共振器の中にフィードバックされ共振する。そして、レーザパルスとして出力される。
OCの反射率62bを20%〜30%とすると注入効率は80%から70%となり高い注入効率を得ることができる。
【0040】
次のシードパルス光が注入されると、このシードパルス光に同期して、増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2bに電圧が印加され、放電する。これにより、上述したのと同様に上記リング共振器により、シード光は増幅発振され、出力レーザ光のパルスとして出力される。
以上のように、1組のリング共振器の中に少なくとも2組の一対の放電電極のペア2a,2bを配置して、シード光が入力された時に同期して、増幅段レーザ(PO)20の電極ペアを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
またこの実施例では、2枚の高反射ミラー61a,61bでレーザチャンバ21にレーザ光を戻したが45度よりも多少小さな角度(数mrad)の全反射プリズムでフレネル反射(全反射)で戻しても同様の機能を果たすことができる。
【0041】
(2)第2の実施例
図4は本発明の第2の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の安定共振器に全反射直角プリズムのリング共振器を設置し、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)に効率よく注入するようにした構成例を示す。
なお、同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。同図では図1に示した各種検出器、コントローラ、電源等は省略されている。
前述したように、発振段レーザ(MO)10のOC(出力結合ミラー)14からシード光が出力される。発振段レーザ(MO)10の出力光はビームエキスパンダ4によりビームを増幅段レーザ(PO)20レーザの電極ギャップまで拡大される。そして、1枚の高反射ミラー6aにより、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC(出力結合ミラー)62cに入射させ、反射させてリング共振器の共振器中にシード光が注入される。
部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコーティングされたOC62cはシード光を一部反射させ、全反射直角プリズム64に入射させる。この全反射直角プリズム64の入射出射面には反射防止(AR)膜がコーティングされている。シード光はプリズム64の2つ面でフレネル反射により全反射し、スリット23、増幅段レーザ(PO)20のウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
【0042】
図4(b)に示すように、シード光は増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2a,2bに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム63に入射する。シード光は直角プリズム63の2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2a,2bの放電空間と光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極ペア2a,2bには、前述したようにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し、再びOC62cに入射する。増幅した光の一部はOC62cを反射してレーザとして出力し、OC62cの反射光はフィードバック光として再びリング共振器内に戻される。このようにして増幅段レーザ(PO)20は増幅発振する。
OCの反射率が70%〜80%とすると注入効率は70%から80%となり高い注入効率を得ることができる。
【0043】
次のシードパルス光が注入されると、このシードパルス光に同期して、増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2bに電圧が印加され放電する。これにより、上述したのと同様に上記リング共振器により、シード光は増幅発振され、出力レーザ光のパルスとして出力される。
以上のように、1組のリング共振器の中に少なくとも2組の一対の放電電極2a,2bを配置して、シード光が入力された時に同期して、増幅段レーザ(PO)20の電極ペアを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギが可能となる。
またこの実施例のメリットとしては、直角全反射プリズム2個でリング共振器を構成し、OC62cをリング共振器の光軸上に設置することにより、リング共振器の光軸のアライメントが容易であり、安定に動作する。
【0044】
(3)第3の実施例
図5は本発明の第3の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、リング共振器を用いた増幅段レーザ(PO)の他の例を示す。本実施例は図4の実施例において電極ペアを直列ではなく、リング共振器の光軸の上において、互い違いに設置した場合を示している。 なお、同図(a)は増幅段レーザ(PO)の側面図を示し、同図では発振段レーザ10は省略されているが、発振段レーザ10は図4(a)に示したものと同様の構成を有する。また、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。同図では図1に示した各種検出器、コントローラ、電源等は省略されている。
発振段レーザ(MO)10の出力光を前記図4に示したようにビームエキスパンダによりビームをPO共振器の電極ギャップまで拡大し、1枚の高反射ミラーにより、増幅段レーザ(PO)のリングレーザのOC(出力結合ミラー)62cに入射し、反射させて増幅段レーザ(PO)20のリング共振器中にシード光を注入する。
部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコーティングされたOC62cはシード光を一部反射させ、全反射直角プリズム64に入射する。この全反射直角プリズム64の入射出射面には反射防止(AR)膜がコーティングされている。
【0045】
シード光はプリズム64の2つ面でフレネル反射により全反射し、チャンバ21内の放電電極ペア2bの放電空間と光軸が一致するようにウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。電極ペア2a,2bの放電空間を透過し、全反射直角プリズム63に入射する。
シード光は直角プリズム63の2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極ペア2aの放電空間と光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極ペア2aはシード光に同期して、電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し、再びOC62cに入射する。増幅した光の一部はOC62cを反射してレーザとして出力し、OC62cの反射光はフィードバック光として再びリング共振器内に戻される。
このようにして増幅段レーザ(PO)20は増幅発振する。OC62cの反射率が70%〜80%とすると注入効率は70%から80%となり高い注入効率を得ることができるまた、次のシードパルス光に同期して放電電極ペア2bを放電させ、同様に上記リング共振器により、増幅発振し、出力レーザ光のパルスとして出力される。
【0046】
以上のように、1組のリング共振器の中に少なくとも2の放電電極2a,2bのペアを配置して、シード光が入力された時に同期して、増幅段レーザ(PO)20の電極ペア2a,2bを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
またこの実施例のメリットとしては、分割された電極ペアを互い違いに配置することができるためであり、交互放電する電極間の距離が取れるため以下の効果がある。
(i) 絶縁距離が取れるので異常放電が発生しない。
(ii)交互放電による音響波の影響を低減できる。
(iii) ゲイン長をできるだけ長く取れるため、増幅段レーザ(PO)20の出力効率が向上し、増幅段レーザ(PO)20をコンパクトにすることができる。
ここで、音響波カット板24を図5(b)のように配置することにより交互放電による音響波の影響を抑制することができる。音響波抑制板24の例としては、多孔質の音響波吸収材(多孔質アルミナ、繊維状のアルミナ等)を使用することができる。
【0047】
(4)第3の実施例の変形例
図6は本発明の第3の実施例の変形例を示す図であり、リング共振器を用いた増幅段レーザ(PO)の他の例を示す。本実施例は図4の実施例において電極ペアをリング共振器の光路上で互い違いに配置し、光軸に対して傾けた例を示している。
その他の構成は前記図5に示した第3の実施例と同じであり、動作も同様である。なお、同図(a)は増幅段レーザ(PO)の側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例のように構成することにより、以下の効果を得ることができる。
(i) 電極が離れているため、交互放電による音響波の影響を低減化することができる。
(ii)ビーム幅を広くできるため、光学素子の負担が軽減され、光学素子の寿命が延びる。
【0048】
(5)第4の実施例
図7は本発明の第4の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、リング共振器を用いた増幅段レーザ(PO)の他の例を示す。本実施例は図5の実施例において放電電極ペアを4分割して、リング共振器の光軸の上において互い違いに設置した場合の例を示す。
なお、同図(a)は増幅段レーザ(PO)の側面図を示し、同図では発振段レーザ10は省略されているが、発振段レーザ10は図4(a)に示したものと同様の構成を有する。また、同図(b)(c)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例では、同図に示すように、電極が放電電極ペア2a〜2dに4分割され、一対の電極2a,2cがリング共振器の一方の光路上に配置され、一対の電極2b,2dが他方の光路上に配置されている。その他の構成は前記図5に示したものと同様である。
【0049】
図7(b)の実施例においては、放電電極ペア2a,2bを6KHz電源25aに接続し、電極ペア2c,2dをもう一つの6kHz電源25bに接続している。
そして、シード光に対して6kHz電源25aと6kHz電源25bを交互に同期して放電させる。
この場合、電極ペア2a,2bは6KHz電源25aに接続されているためシード光に同期して同時に放電して、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第1のパルス光が出力され、次のパルスのシード光に同期して、電極ペア2b,2dに6kHz電源25bが電圧を印加して放電させ、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第2のパルス光が出力される。
【0050】
図7(c)は6KHz電源25aに電極ペア2b及び2cが接続され、6KHz電源25bに電極ペア2a及び2dが接続されている場合の例を示す。
これらの実施例のメリットは、増幅段レーザ(PO)20の交互放電により出力される第1と第2のパルス光の光品位(ビームプロファイル、ビームダイバージェンス等)の変化が抑制されることである。
この実施例では4つの放電電極ペアに2台の電源を接続して交互運転したが、この実施例の電極の分割数に限定されることなく、4つ以上の放電ペア電極に2台の電源を接続して交互運転することにより、さらに、第1と第2のパルスの光品位の変化が小さくなる。
【0051】
(6)第5の実施例
図8は本発明の第5の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、リング共振器を用いた増幅段レーザ(PO)の他の例を示す。本実施例は図5の実施例において増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ内に2の放電電極ペアをチャンバ断面方向に対して縦方向に設置し、それぞれの放電電極ペアに対してそれぞれ6KHz電源を接続し、リング共振器を構成した実施例である。
なお、同図(a)は増幅段レーザ(PO)の側面図を示し、同図では発振段レーザ10は省略されているが、発振段レーザ10は図4(a)に示したものと同様の構成を有する。また、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、同図(c)は2の放電電極ペアと6KHz電源との接続例を示す。
【0052】
図8(a)においては、放電電極ペア2aを6KHz電源25aに接続し、電極ペア2bをもう一つの6kHz電源25bに接続している。そして、シード光に対して6kHz電源25aと6kHz電源25bを交互に同期して放電させる。この場合、電極ペア2aは6KHz電源25aに接続されているためシード光に同期して同時に放電して、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第1のパルス光が出力され、次のパルスのシード光に同期して、電極ペア2bに6kHz電源25bが電圧を印加して放電させ、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第2のパルス光を出力する。
【0053】
図8(c)は6KHz電源25aと電極ペア2aの接続と6KHz電源25bに電極ペア2bの接続例を示している。放電部の中央部をグランドに接地し、放電電極ペア2aのアノード電極2a2と放電電極ペア2bのアノート゛ 電極2b2を背中合わせに構成することで、長い電極長とすることができる。
本実施例では増幅段レーザ(PO)20の電極を縦方向に分割しリング共振器の光路上に配置しており、本実施例のように上下方向に分割することにより以下の効果がある。
(i) 交互運転の際、異常放電が発生しない。
(ii)交互放電による音響波の影響が抑制される。
(iii) ゲイン長をチャンバ長並に長くできるため高効率であり、コンパクトにできる。
【0054】
(7)第6の実施例
図9は本発明の第6の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の共振器として、2つシリンドリカルの凹面高反射ミラーを対向させて配置したリング共振器を構成した例を示す。なお、同図(a)は本実施例の側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例は図4の実施例において、増幅段レーザ(PO)20の共振器の構成を図9(b)のように変更したものであり、その他の構成および動作は同様である。
図9(b)に示すように、光共振器はシリンドリカル状の高反射ミラー65及び66が対向して設置されている。このシリンドリカル高反射ミラー65及び66の曲率半径Rは、前記高反射ミラー65,66間の距離Lと一致し、両ミラー65,66の焦点の位置が互いに一致するように配置されている。
【0055】
まず、ビームエキスパンダ4により拡大された発振段レーザ(MO)10からのシード光は増幅段レーザ(PO)20のOC出力結合ミラー(部分反射ミラー)62cに入射する。このOC62cから45度で反射したシード光は、シリンドリカル凹面高反射ミラー65に入反射し、レーザチャンバ21のウインド22aを透過して入射し、チャンバ21内の両凹面ミラーの中心線上の焦点の位置のライン上に集光する。
この集光した光は広がりウインド22bを透過して、シリンドリカル凹面高反射ミラー66により、反射され、シード光はコリメートされる。
このコリメート光は再びレーザチャンバ21内を透過して、シリンドリカル凹面高反射ミラー65により反射されて、ウインド22aを透過して、レーザチャンバ21内のシリンドリカル両ミラーの焦点位置のライン上に集光する。この集光した光は広がりながらウインド22bを透過して再びシリンドリカル凹面高反射ミラー66により反射され、再びコリメートされる。そしてこのコリメート光は放電電極ペア2b及び2aを透過して増幅され、再びOC62cに戻る。
OC62cで部分反射した光は出力レーザ光として出力される。また、OC62cで透過した光はフィードバック光として、再び光共振器にもどされる。
【0056】
放電電極ペア2aを、前述したように6KHz電源25a(図示せず)に接続し、電極ペア2bをもう一つの6kHz電源25b(図示せず)に接続している。そして、シード光に対して6kHz電源25aと6kHz電源25bを交互に同期して放電させる。これより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
この場合、電極ペア2aは6KHz電源25aに接続されているためシード光に同期して同時に放電して、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第1のパルス光が出力され、次のパルスのシード光に同期して、電極ペア2bに6kHz電源25bが電圧を印加して放電させ、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第2のパルス光を出力する。
電極ペアの配置はコリメート光が通過する場所であればよく、例えば放電電極ペア2の位置の代わりに、図9(b)の放電電極ペア2b’の位置に配置してもよい。
この実施例では2枚の凹面ミラーの実施例を示したが、4枚の凹面ミラーで同様の構成をしてもよい。
この実施例ではシリンドリカル凹面高反射ミラーを採用することによって集光ライン上に集光させているので、光学素子(ウインド)とレーザチャンバ中央部で高密度とならず、光学素子の劣化や集光点でのブレークダウンが発生せず、安定なレーザ発振が可能となる。
【0057】
(8)第7の実施例
図10は本発明の第7の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の共振器として、リング共振器採用し、増幅段レーザ(PO)チャンバを複数台設置した場合の例を示す。なお、同図(a)は本実施例の側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例は図4の実施例において、増幅段レーザ(PO)20の共振器の構成を図10(b)のように変更したものであり、その他の構成および動作は同様である。
図10(b)において、リング共振器は4枚の高反射ミラー67a,67b,67c及び67dによって構成され、このリング共振器の光軸上に2台のPOチャンバ21a及び21bを配置し、その中にそれぞれ放電電極ペア2a,2bを配置している。
【0058】
まず、ビームエキスパンダ4により拡大された発振段レーザ(MO)10からのシード光は増幅段レーザ(PO)20の出力結合ミラー(部分反射ミラー)であるOC62cに入射する。このOC62cから45度で反射したシード光は、高反射ミラー67aにより入反射し、POチャンバ21aに入射する。POチャンバ21aの放電電極ペア2a間にシード光が透過し、シード光に同期して放電する場合には増幅されて、高反射ミラー67b及び67cにより、POチャンバ21bに光が入射する。
そして、放電電極ペア2bの電極間を光が透過して、POチャンバ21bを透過し、高反射ミラー67dにより反射し、再びOC62cに戻る。OC62cで部分反射した光は出力レーザ光として出力される。OC62cで透過した光はフィードバック光として、再びリング共振器にもどされる。
【0059】
POチャンバ21aには6KHz電源25aが搭載され、POチャンバ21bに6kHz電源25bが搭載されている。そして、シード光に対して6kHz電源25aと6kHz電源25bを交互に同期して放電させる。
この場合、電極ペア2aは6KHz電源25aに接続されているためシード光に同期して同時に放電して、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第1のパルス光が出力される。また、次のパルスのシード光に同期して、電極ペア2bに6kHz電源25bが電圧を印加して放電させ、リング共振器により増幅発振して、OC62cから第2のパルス光を出力する。これより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
この実施例のメリットは、POチャンバを2台を並列に配置できることにより、コンパクトなレーザ装置となる。また、1つのリング共振器の光軸上にPOチャンバを配置しているため、シード光の注入箇所及びOCから出力されるレーザ光はそれぞれ1箇所となり、シード光を分岐したり、各増幅段レーザ(PO)からの出力レーザ光を合成する必要がなくなる。
【0060】
(9)第8の実施例
図11は本発明の第8の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、シード光の注入に偏光素子と波長板を用いた例を示す。なお、同図(a)は本実施例の側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
図11(a)において、発振段レーザ(MO)10はLNM3のプリズムビームエキスパンダ3a及び発振段レーザ(MO)10のレーザチャンバ11のウインド12a,12bがブリュースタ角で設置されており、紙面に対して垂直な偏波面でレーザ発振する。
この発振段レーザ(MO)10から出力されたレーザ光は偏波面を維持した状態でビームエキスパンダ4によりビームが拡大され、高反射ミラー6aで入射反射し、PS分離膜をコートしたビームスプリッタ(BS)68に入射する。
【0061】
このBS68ではS偏光(紙面に対して垂直な偏波面)は全反射する。この反射光はλ/4板69を透過し円偏光に変換される。この円偏光に変換されたシード光はPO共振器のOC62から増幅段レーザ(PO)20の光共振器中に注入されPOチャンバ21の放電電極ペア2a及び2bの電極ギャップ間を透過してウインド22bを透過する。そして、高反射膜がコートされたリアミラー61で入反射して再びPOチャンバ21に入射・透過してOC62により一部が反射されて再び増幅段レーザ(PO)20の光共振器内に戻される。
円偏光でOC62から出力したレーザ光は再びλ/4板69により、紙面を含む偏波面に変換される。この偏光状態の光はBS68のP偏光成分の光なのでほとんど全てBS68を透過し出力レーザ光として取り出される。
シード光に同期して、前記したように増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2a及び2bを交互に放電させる。これより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
ここで本実施例においては、PO共振器内では円偏光で共振するのでレーザのウインド22a,22bのARコートはP及びS偏光に対する反射防止膜をコートする必要がある。
本実施例のメリットは、増幅段レーザ(PO)のOCの反射率が20%から30%で動作するので、注入効率が70%から80%の高い効率を得ることができ、PO共振器のアライメントが容易で安定していることである。なお、この実施例では1/4λ板を使用しているが、193nmで動作する波長板としては高純度のMgF結晶を2枚組合せた0次の波長板を使用するのがこのましい。この理由は、レーザの出力が高いところに波長板を配置しているため、発熱による影響を小さくするためである。また、波長板として、反射型の誘導体多層膜で同じ機能をさせてもよい。
【0062】
(10)第9の実施例
図12は本発明の第9の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、PO共振器のリアミラーのサイド位置にビームエキスパンド後のシード光の像を転写することにより、シード光の注入効率を向上させた実施例を示す。なお、同図(a)は本実施例の側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
図12(a)において、発振段レーザ(MO)10から出力された光はビームエキスパンダ4により放電方向に拡大され、高反射ミラー6aにより高効率注入装置70に入射する。
この高効率注入装置70は集光レンズ70a、空間フィルタとしてのピンホール70b及びコリメータレンズ70cにより構成されている。集光レンズ70aの焦点f1の位置にピンホール70bが配置され、ピンホール70bとコリメータレンズ70cの位置はコリメータレンズ70cの焦点距離f2に配置されている。
【0063】
集光レンズ70aの焦点の位置にピンホール70bが設置され、発振段レーザ(MO)10の光がピンホール70bを透過する。そして光は広がりコリメータレンズ70cにより平行光に変換される。この平行光は高反射ミラー6bにより反射され、図12(b)に示すようにリアミラー61のサイドの位置にビームエキスパンダ4の直後のビームを結像させる。
上記のように結像させるには、ビームエキスパンダ直後と集光レンズ70aの距離がf1、かつ、コリメータレンズ70cとリアミラー61のサイドの距離がf2となるように配置することで実現できる。
図12(b)に示すように、リアミラーのサイドに結像したシード光は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸に対してやや斜めに入射し、POチャンバ21に入力する。そして、ウインド22aを透過し、放電電極ペア2a及び2bの電極間を透過して増幅され、ウインド22bを透過して部分反射膜がコートされたOC62により、透過光はレーザとして出力され、一部は反射し再びPOチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅され、高反射膜がコートされたリアミラー61に入射して反射し、再びPOチャンバ21に入射する。この過程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。
シード光に同期して、前記したように増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2a及び2bを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
【0064】
本実施例の装置のメリットは以下の通りである。
(i) ビームエキスパンダ4の出口のビームをリアミラー61のサイド注入の位置に転写結像させているので、発振段レーザ(MO)10から増幅段レーザ(PO)20までの光路中にビームが広かることがなくなり、シード光の注入効率が高くなる。
(ii)高効率注入装置70の中に空間フィルタがあるので、PO共振器からの戻り光を抑制でき、発振段レーザ(MO)10のレーザ発振と増幅段レーザ(PO)20のレーザ発振が安定となる。
この例では球面レンズと空間フィルタとしてピンホールを採用してるが、これに限定されることなく、紙面に対して垂直方向においてシリンドリカル形状の集光レンズと空間フィルタはスリット形状で構成してもよい。このようにすることにより、空間フィルタの耐久性等が向上する。
【0065】
(11)第9の実施例の変形例
図13は第9の実施例の変形例であり、レーザ装置の構成例を示す図であり、増幅段レーザ(PO)の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、PO共振器のOCのサイドの高反射部の位置にビームエキスパンド後のシード光の像を転写することにより、シード光の注入効率を向上させた実施例を示す。なお、同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図のみを示すが、その他の構成は前記図12と同じである。
図12に示したように発振段レーザ(MO)10から出力された光はビームエキスパンダにより放電方向に拡大され、高反射ミラー6aを介して高効率注入装置70に入射する。この高効率注入装置70は前述したように集光レンズ70a、空間フィルタとしてのピンホール70b及びコリメータレンズ70cにより構成されている。集光レンズ70aの焦点f1の位置にピンホール70bが配置され、ピンホール70bとコリメータレンズ70cの位置はコリメータレンズ70cの焦点距離f2に配置されている。
【0066】
集光レンズ70aの焦点の位置にピンホール70bが設置され、発振段レーザ(MO)10の光がピンホール70bを透過する。そして光は広がりコリメータレンズ70cにより平行光に変換される。この平行光は高反射ミラー6bにより反射され、リアミラー61のサイドを透過し、OPチャンバ21のウインド22aから、放電電極ペア空間から外れた空間を透過する。
そしてウインド22aを透過後、図13に示すように、OC62の高反射膜部に入射結像する。この高反射膜部を反射した光は、放電電極ペアの電極2a,2b間を透過し、増幅される。そして、高反射膜をコートしたリアミラー61により再びPOチャンバ21の放電空間内に戻され増幅される。
そしてOC62の部分反射膜部で反射した光がフィードバック光としてPOチャンバ21の放電空間にもどされる。OC62の部分反射膜を透過したレーザ光は反射防止膜を透過して出力レーザ光として出力される。
シード光に同期して増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2a及び2bを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
【0067】
本実施例の装置のメリットは以下の通りである。
(i)ビームエキスパンダの出口のビームをOCの高反射膜部の位置に転写結像させているので、発振段レーザ(MO)から増幅段レーザ(PO)までの光路中にビームが広かることがなくなり、シード光の注入効率が高くなる。さらに、注入光が1往復分増幅されるので、注入効率は図12の実施例よりも高い。
(ii)高効率注入装置の中に空間フィルタがあるので、PO共振器からの戻り光を抑制でき、発振段レーザ(MO)のレーザ発振と増幅段レーザ(PO)のレーザ発振が安定となる。
また、この実施例では、OCの基板に高反射部をコートして実施したがこれに限定されることなく、ナイフエッジタイプの基板に高反射膜コートをして、OCとPOチャンバの間に配置してシード光を増幅段レーザ(PO)チャンバの放電空間に注入してもよい。
【0068】
(12)第10の実施例
図14、図15は本発明の第10の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、前記図12の実施例において、シード光をシリンドリカルレンズで、増幅段レーザ(PO)の共振器のサイドに位置に線上に集光させて増幅段レーザ(PO)の光共振器に注入することにより、シード光の注入効率を向上させた実施例を示す。図14(a)は本実施例の側面図を示し、図14(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、図15は高効率注入装置と増幅段レーザ(PO)の光学的配置を示す。
図14において、発振段レーザ(MO)10から出力された光はビームエキスパンダ4により放電方向に拡大され、高反射ミラー6aにより高効率注入装置71に入射する。
この高効率注入装置71は図14、図15に示すようにシリンドリカル状の凸レンズ71aと凹レンズ71bにより構成されている。この両レンズにより、シード光は、全反射ミラー6bを反射して、図14(b)、図15に示すように増幅段レーザ(PO)20の共振器のリアミラー61のサイドの位置に線状に集光する。
【0069】
図14(b)、図15に示すようにシード光は、やや広がりながら増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸に対してやや斜めに入射しPOチャンバ21に入力される。ウインド22aを透過したのち、放電電極ペア2a及び2bの電極間を透過することにより増幅され、ウインド22bを透過して部分反射膜がコートされたOC62により透過光は、レーザとして出力され、一部は反射し再びPOチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅され、高反射膜がコートされたリアミラー61に入射し反射して、再びPOチャンバ21に入射する。この工程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。
シード光に同期して増幅段レーザ(PO)20の放電電極ペア2a及び2bを交互に放電させることにより、高繰返し化(10kHz以上)で高パルスエネルギの出力が可能となる。
【0070】
本実施例の装置のメリットは以下の通りである。
(i) シード光をリアミラーのサイド注入の位置に線状に集光させて、注入しているので、シード光の注入効率が高くなる。
(ii)長焦点レンズのシリンドリカルレンズの製作は困難であるが、本実施例では、シリンドリカルの凹凸レンズを組み合わせて集光しているため、長焦点の集光が可能となる。また、長焦点(1mから2m程度)とすることで、集光後のシード光の広がり角度が小さくなり、注入効率が向上する。
なお、上記実施例に限定されることなく図13に示したように、OCを用い、OCの高反射膜上に線状に集光して、OC側からシード光を注入してもよい。
【0071】
(13)第11の実施例
図16は本発明の第11の実施例のレーザ装置の構成を示す図であり、発振段レーザ(MO)のOCと増幅段レーザ(PO)のリアミラーを兼用した実施例を示す。図16(a)は本実施例の側面図を示し、図16(b)は上面図を示す。
発振段レーザ(MO)10は、前述したように波長選択素子(グレーティング)とプリズムビームエキスパンダが搭載されたLNM3と、狭い電極と狭いギャップの放電電極1aが搭載されたMOチャンバ11と、発振段レーザ(MO)10の出力ビームを増幅段レーザ(PO)20の放電空間と一致させるためにビームを拡大するビームエキスパンダ4と部分反射ミラー72とから構成されている。部分反射ミラー72には、MOチャンバ11側に反射防止膜コート、POチャンバ21側には部分反射コートがされている。
発振段レーザ(MO)10はLNM3と部分反射ミラー72の部分反射面で共振し、スペクトルが狭いシード光が出力される。
【0072】
一方、増幅段レーザ(PO)20は部分反射ミラー72と、放電電極ペア2a及び2bを搭載したPOチャンバ21と部分反射ミラー73により構成されている。増幅段レーザ(PO)20の光共振器は部分反射ミラー72の部分反射面と部分反射ミラー73(反射率R=30〜20%)の部分反射面により構成されている。
したがって、発振段レーザ(MO)10から出力されたシード光の全てが増幅段レーザ(PO)20のPO共振器内に注入されることになる。
ここで部分反射ミラー72の反射率Rは80%から90%とすることができるので、発振段レーザ(MO)10は低ゲインでも安定に小出力(0.1mJ)のレーザ光を出力できる。そして、PO共振器の注入効率は100%となるため、小さなMO出力(0.1mJ)でも増幅発振させることができる。
【0073】
(14)第12の実施例
図17は本発明の第12の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。本実施例は図10の実施例の変形例であり、POチャンバの放電電極ペアを互い違いにして配置し、それぞれの放電電極ペアに対しておのおの光共振器を配置し、前記した図11と同様に、シード光の注入に偏光素子と波長板を用いた実施例を示している。図17(a)は本実施例の増幅段レーザ(PO)の側面図を示し、図17(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。
図17において、前記図11で説明したように発振段レーザ(MO)のシード光はビームエキスパインダで拡大され、図示しない分波器で2つに分岐され、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の両側に設けられたPS分離膜をコートしたビームスプリッタ(BS)68a,68bに入射する。
図11で説明したように、このBS68a,68bではS偏光(紙面に対して垂直な偏波面)を全反射し、この反射光はλ/4板69a,69bを透過し、チャンバ21の両側に設けられたOC74a,74bを介して増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21に注入される。
OC74a,74bには、その一部に部分反射(PR)膜がコートされ、他の一部に高反射(HR)膜がコートされており、BS68a側から注入されたシード光は、OC74aのPRコート部分を介して、チャンバ21に注入され、BS68b側から注入されたシード光は、OC74bのPRコート部分を介してチャンバ21に注入される。
【0074】
BS68a側から注入されたシード光は、POチャンバ21の放電電極ペア2aの電極ギャップ間を透過して、OC74bのHRコート部分で反射され、POチャンバ21に戻される。そして、放電電極ペア2aの電極ギャップ間を透過して、OC74aで一部が反射され、他の一部がOC74aから出力される。出力された光は、λ/4板69aによりP偏光成分の光に変換され、ほとんど全てBS68aを透過し出力レーザ光として取り出され、高反射ミラー75a,75bを介してビーム合波装置76に入射する。
同様に、BS68b側から注入されたシード光は、POチャンバ21の放電電極ペア2bの電極ギャップ間を透過して、OC74aのHRコート部分で反射され、POチャンバ21に戻される。そして、放電電極ペア2bの電極ギャップ間を透過して、OC74bで一部が反射され、他の一部がOC74bから出力される。出力された光は、λ/4板69bによりP偏光成分の光に変換され、BS68bを透過し出力レーザ光として取り出され、高反射ミラー75c,75dを介してビーム合波装置76に入射する。
これらの光は、ビーム合波装置76により合わせられ、出力レーザ光として取り出される。
【0075】
図18に上記ビーム合波装置76の構成例を示す。
同図(a)は回転ミラー方式を示し、高反射ミラー(HRミラー)76aを放電電極2a,2bの放電に同期させて回転させ、2つの出力を合波する。
同図(b)は、ビームスプリッタ(BS)による合波方式を示し、高反射ミラー76b,76cと反射率が50%のBS76dを用い、2つの出力光の一方をBS76dに入射させるとともに、2つの出力光の他方を高反射ミラー76bで反射させて、BS76dに入射し、BS76dの透過光と反射光を高反射ミラー76cで反射させることにより、2つの出力光を合波する。
同図(c)はプリズムによる合波方式を示し、両方の入射面に高反射(HR)コートされたプリズム76eを用い、2つの出力光を合波する。
【0076】
図17に示す実施例のメリットは、放電電極ペアを互い違いにして配置し、それぞれの放電電極ペアに対して、各々の光共振器を配置しているため、各々のPO共振器から出力されるレーザビームの変化が少ないことである。
また、この実施例に限定されることなく、発振段レーザ(MO)から出力した光をビームエキスパンダにより拡大して、ビームスプリッタによりビームを分岐し、2台のPOに対して、並列にそれぞれのPOの光共振器に注入する。そして、この分岐光に同期してそれぞれのPOを交互に増幅発振させ、ビーム合波装置により合わせて出力してもよい。
【0077】
(15)第13の実施例
図19は本発明の第13の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。本実施例は図17の実施例の変形例であり、2台のPOチャンバを配置し、それぞれのPOチャンバに対して、それぞれ光共振器を配置し、前記した図11と同様に、シード光の注入に偏光素子と波長板を用いた実施例を示している。図19(a)は本実施例の側面図を示し、図19(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。
図19において、発振段レーザ(MO)10からのシード光はビームエキスパンダ4により拡大され、高反射ミラー6aで全反射され、50%反射の部分反射ミラー77aに入射する。この部分反射ミラー77aにより、シード光は透過光と反射光の2つに分岐され、図19(b)に示すように、一方の光は部分反射ミラー77aを透過してPS分離膜がコートされた一方のPO共振器のビームスプリッタ(BS)68aに入射する。他方の光は部分反射ミラー77aで反射し、高反射ミラー77bを介して、PS分離膜がコートされた一方のPO共振器のビームスプリッタ(BS)68bに入射する。
図11で説明したように、このBS68a,68bではS偏光(図19(a)の紙面に対して垂直な偏波面)は全反射し、この反射光はλ/4板69a,69bを透過し、OC78a,78bを介して増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21a,21bに注入される。
【0078】
BS68a側から注入されたシード光は、POチャンバ21aの放電電極ペア2aの電極ギャップ間を透過して、リアミラー79aで反射され、POチャンバ21aに戻される。そして、放電電極ペア2aの電極ギャップ間を透過して、OC78aで一部が反射され、他の一部がOC78aから出力される。出力された光は、λ/4板69aによりP偏光成分の光に変換され、ほとんど全てBS68aを透過し出力レーザ光として取り出され、高反射ミラー75aを介してビーム合波装置76に入射する。
【0079】
BS68b側から注入されたシード光は、POチャンバ21bの放電電極ペア2bの電極ギャップ間を透過して、リアミラー79bで反射され、POチャンバ21bに戻される。そして、放電電極ペア2bの電極ギャップ間を透過して、OC78bで一部が反射され、他の一部がOC78bから出力される。出力された光は、λ/4板69bによりP偏光成分の光に変換され、BS68bを透過し出力レーザ光として取り出され、高反射ミラー75bを介してビーム合波装置76に入射する。
これらの光は、ビーム合波装置76により合わせられ、出力レーザ光として取り出される。合波装置の例としては、図18に示したものを使用することができる。
本実施例においては、2台のPOチャンバを配置し、それぞれのPOチャンバに対してそれぞれの光共振器を配置しているが、この例に限定されることなく、図12、図13、図14のような共振器をそれぞれ配置して、シード光を2つに分岐してそれぞれ注入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のレーザ装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図3】ビームエキスパンダの構成例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の第6の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の第7の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の第8の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の第9の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の第9の実施例の変形例を示す図である。
【図14】本発明の第10の実施例のレーザ装置の構成を示す図(1)である。
【図15】本発明の第10の実施例のレーザ装置の構成を示す図(2)である。
【図16】本発明の第11の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の第12の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図18】ビーム合波装置の構成例を示す図である。
【図19】本発明の第12の実施例のレーザ装置の構成を示す図である。
【図20】2ステージレーザ装置の概略構成例を示す図である。
【図21】特許文献1に記載のレーザ装置の概略構成を示す図である。
【図22】MOPAおよびMOPO方式のレーザ装置における注入パルスエネルギと増幅後のパルスエネルギの関係を示す図である。
【図23】放電励起レーザ装置のレーザチャンバの断面図である。
【図24】放電の原理を説明する図である。
【図25】電極ギャップと放電幅の相対値の関係の計測結果を示す図である。
【図26】マッハツェンダ法による放電幅Wを計測するシステムの構成例を示す図である。
【図27】放電幅Wの簡便な計測方法を示す図である。
【図28】発振段レーザ(MO)と増幅段レーザ(PO)の放電電極と放電エリアの断面図の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1a 放電電極
2a〜2d 放電電極
3 狭帯域化モジュール(LNM)
3a プリズムビームエキスパンダ
3b グレーティング(回折格子)
4 ビームエキスパンダ
5 高効率注入装置
6a,6b 高反射(HR)ミラー
7,8 パワーモニタ
10 発振段レーザ(MO)
11 MOチャンバ
12a,12b ウィンドウ部材
13,23 スリット
15 12kHz電源
14,24 OC(出力結合ミラー)
20 増幅段レーザ(PO)
21 POチャンバ
22a,22b ウィンドウ部材
25 リアミラー
25a,25b 6kHz電源
30 エネルギコントローラ
31 レーザコントローラ
32 ガスコントローラ
33 波長およびスペクトル波形コントローラ
34 波長およびスペクトル波形モニタ
35 同期コントローラ
36 露光装置
62,62b OC(出力結合ミラー)
62c OC(出力結合ミラー)
65,66 シリンドリカル状高反射ミラー
68 ビームスプリッタ(PS分離膜コート)
69 λ/4板
70,71 高効率注入装置
76 ビーム合波装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭帯域発振段レーザと、少なくとも1組の光安定共振器を配置した増幅段レーザとからなる注入同期式レーザ装置において、
前記発振段レーザ光を前記光安定共振器内に注入する注入装置と、
前記増幅段レーザ装置の光共振器内には複数組のペアの放電電極が配置され、前記それぞれの電極ペアを放電させるための電源回路が接続され、
前記電極ペアの少なくとも1ペアは前記注入光と同期させて放電させる
ことを特徴とする露光装置用レーザ装置。
【請求項2】
狭帯域発振段レーザと、少なくともk台の光安定共振器を配置した増幅段レーザからなる注入同期式レーザ装置において、
前記発振段レーザ光をそれぞれの増幅段レーザの前記光安定共振器内に分岐注入する注入装置と、
前記複数の増幅段レーザの少なくとも1台を注入光と同期させて放電させる
ことを特徴とする露光装置用レーザ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のレーザ装置において、発振段レーザと増幅段レーザの光路間に発振段レーザから出力されたビームを少なくとも電極ギャップ方向に拡大するビームエキスパンダを配置した
ことを特徴とする露光装置用レーザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2008−78372(P2008−78372A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255619(P2006−255619)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】