説明

露光装置

【課題】測定用レーザー光の遮断に影響されることなく、マスクステージと基板ステージの位置及び水平面内での姿勢を高精度で測定可能であるとともに、マスクステージと基板ステージを近接して配置して、環境温度を略同じにしてマスクと基板の熱膨張の差を抑制することができ、高精度な露光を実現する露光装置を提供する。
【解決手段】マスクステージ位置測定装置66は、基板ステージ11,12の移動方向と直交する方向に離間し、マスクステージ10の側面に配置された2箇所のマスクステージ測長ミラー71A,71Bによりマスクステージ10の位置及び水平面内での姿勢を測定する。また、基板ステージ位置測定装置63,64は、基板ステージ11,12の側面に配置される基板ステージ測長ミラー61の2つの測定点72A,72Bにより、基板ステージ11,12の位置及び水平面内での姿勢を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、より詳細には、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイを製造する場合に用いられる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ装置のカラーフィルタ等を製造するのに使用される。従来、露光装置として、マスクに対して基板を相対的にステップ移動させながら、マスクと基板を接近させた状態でマスクを介してパターン露光用の光を照射して、基板にマスクパターンを露光転写するようにした、所謂、近接露光装置が知られている。
【0003】
図6は従来の近接露光装置の要部斜視図である。露光装置101は、マスクMを保持するマスクステージ102と、基板Wを保持する基板ステージ103(図6では、理解を容易にするため基板保持部104のみ示す)とを備える。マスクステージ102の側面には、一対の基準ミラー105A, 105Bが離間して配設され、基板ステージ103のX方向側部とY方向側部には、互いに直交する一対のバーミラー106がそれぞれ配設されている。また、露光装置101の基台(図示せず)には、不図示のレーザー発振器、このレーザー発振器から発振されたレーザー光を基準ミラー105A, 105B及びバーミラー106に向けて分配して照射する偏光ビームスプリッタ107、該レーザー光を基準ミラー105A, 105B及びバーミラー106に向けて反射する反射ミラー108、及び基準ミラー105A, 105B及びバーミラー106から反射したレーザー光を検出する光検出器109などを備えるレーザー干渉計が配置されている。
【0004】
レーザー干渉計は、基準ミラー105A, 105Bからの反射レーザー光を参照光RBとして、バーミラー106からの反射レーザー光との干渉縞を光検出器109で計数することによって、マスクステージ102と基板ステージ103との相対位置を測定している。
【0005】
また、特許文献1に記載の露光装置では、ステップ移動による振動や重心の移動などによって、マスクと基板との相対位置が微小に変化するのを防止すべく、マスクと基板との相対位置を高精度で検出するため、レーザー光源、レーザー干渉計、バーミラーなどを含んで構成されるレーザー測長系を備えたものが考案されている。例えば、マスクホルダのY方向の一側面及び基板のチャックのY方向の一側面にはそれぞれバーミラーが取り付けられており、3軸干渉計の測定結果から、マスクホルダのY方向の位置と、チャックのY方向の位置及び回転と、を検出する。また、特許文献1では、基板を載置するために基板ステージが下降して測定用にレーザー光が届かなくなった場合には、別途設けた他のレーザー変位計によってレーザー測長系の基準点を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−331542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図6に示した露光装置では、レーザー干渉計は、基準ミラー105A, 105Bからの反射レーザー光を参照光RBとして基板ステージ103の位置を測定するので、何らかの理由によって参照光RBが遮断されると、基板ステージ103の位置測定が不可能となる。このため、マスクMを交換してから次のマスクに交換されるまでの、マスクMがマスクステージ102に保持されている間は、参照光RBを遮断せずに、マスクステージ102及び基板ステージ103の位置、及び水平面内での姿勢を測定し続ける必要がある。特に、マスク交換時においては、数分から数時間を要する恒温状態に達するまでの露光装置の経時熱変位を監視する必要がある。
【0008】
基板ステージ103には、不図示の基板ローダが備えるロボットハンド110によって基板Wが搬送されて載置されるが、ロボットハンド110によって参照光RBが遮断されるのを防止するため、マスクステージ102と基板ステージ103とを、例えば、300mm程度離間して配置している。しかしながら、マスクステージ102と基板ステージ103とが大きく離間していると、それぞれの環境温度が異なり、マスクMと基板Wの熱膨張量が異なることから微妙な変化が生じて、精度のよい露光が困難となる虞がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の露光装置では、マスクステージと基板ステージとの相対位置は制御しているものの、経時熱変位による回転方向の変化は監視しておらず、改善の余地があった。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、測定用レーザー光の遮断に影響されることなく、マスクステージと基板ステージの位置及び水平面内での姿勢を高精度で測定可能であるとともに、マスクステージと基板ステージを近接して配置して、環境温度を略同じにしてマスクと基板の熱膨張の差を抑制することができ、高精度な露光を実現する露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)マスクを保持するマスクステージと、
被露光材としての基板を保持し、前記マスクに対向配置される露光位置と前記基板を載置するローディング位置との間で移動可能な基板ステージと、
前記基板に対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射装置と、
前記基板ステージの移動方向と直交する方向の前記マスクステージの側面に配置されるマスクステージ測長ミラーを備え、前記直交方向に離間した2箇所で、前記マスクステージの絶対位置を測定するマスクステージ位置測定装置と、
前記直交方向の前記基板ステージの側面に沿うように配置された基板ステージ測長ミラーを備え、前記直交方向に離間した2箇所で、前記基板ステージの絶対位置を測定する基板ステージ位置測定装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
(2) 前記マスクステージ位置測定装置及び前記基板ステージ位置測定装置はそれぞれ、前記マスクが前記マスクステージに保持されている間、前記マスクステージの絶対位置及び前記基板ステージの絶対位置を常時測定していることを特徴とする(1)に記載の露光装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の露光装置によれば、基板ステージの移動方向と直交する方向に離間した2箇所でマスクステージの絶対位置を測定するマスクステージ位置測定装置と、基板ステージの移動方向と直交する方向に離間した2箇所で基板ステージの絶対位置を測定する基板ステージ位置測定装置と、を備えるので、マスクステージ、及び基板ステージの位置と共に、水平面内での姿勢を監視することができる。また、マスクステージ位置測定装置及び基板ステージ位置測定装置は、それぞれマスクステージ及び基板ステージの絶対位置を測定するので、測定途中でレーザー光が遮られることがあっても、レーザー光が復帰したとき、これに影響されることなく、マスクステージ、及び基板ステージの位置及び水平面内での姿勢を連続して監視することができる。これにより、マスクステージと基板ステージとを接近して配置することができ、環境温度を略同じにしてマスクと基板の熱膨張の差を抑制することができ、高精度な露光を実現することができる。
【0013】
また、マスクステージ位置測定装置及び基板ステージ位置測定装置はそれぞれ、マスクがマスクステージに保持されている間、マスクステージの絶対位置及び基板ステージの絶対位置を常時測定しているので、ステップ移動の際の相対位置のずれだけでなく、マスク交換時において、数分から数時間を要する恒温状態に達するまでの露光装置の経時熱変位による相対位置のずれに対しても補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る露光装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図2】図1に示す露光装置の正面図である。
【図3】図2に示す基板ステージの側面図である。
【図4】本発明に係るマスクステージ位置測定装置及び基板ステージ位置測定装置を備える露光装置の要部斜視図である。
【図5】本発明に係るマスクステージ位置測定装置からのレーザー光が基板によって遮られた状態を示す露光装置の要部斜視図である。
【図6】従来のレーザー干渉計を備える露光装置の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る露光装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の露光装置の全体構成を示す概略平面図、図2は露光装置の要部正面図、図3は基板ステージの側面図である。
【0016】
図1〜図3に示すように、露光装置PEは、マスクステージ10、第1基板ステージ11、第2基板ステージ12、照射装置13、プリアライメントユニット14、第1基板ローダ15、第2基板ローダ16、マスクローダ17、及びマスクアライナ18を備え、それぞれ基台21上に載置されている。
【0017】
マスクステージ10は、基台21上に配置された長方形のステージベース23に設けられた複数の支柱22に支持されて、ステージベース23の上方に配設されている。複数の支柱22は、第1及び第2基板ステージ11,12がY方向(図1中左右方向)に移動してマスクステージ10の下方に進出可能なようにステージベース23の上方にスペースを形成している。
【0018】
マスクステージ10は、中央に矩形の開口25aを有して、マスクステージ10のフレームに対してX,Y,θ方向に位置調整可能に支持されたマスク保持部25を備える。マスク保持部25には、下面に複数の吸引孔25bが開設されており、露光すべきパターンを有するマスクMは、開口25aに臨むようにして、真空吸着によって吸引孔25bを介してマスク保持部25に保持される。また、マスクステージ10には、マスク保持部25に対するマスクMの位置を検出するマスク用アライメントカメラ(図示せず)と、マスクMと基板Wとの間のギャップを検出するギャップセンサ(図示せず)とが設けられている。
【0019】
図2及び図3に示すように、第1及び第2基板ステージ11,12は、被露光材としての基板Wを保持する基板保持部31a,31bを上部にそれぞれ有する。また、第1及び第2基板ステージ11,12の下方には、Y軸テーブル33、Y軸送り機構34、X軸テーブル35、X軸送り機構36、及びZ−チルト調整機構37を備える基板ステージ移動機構32,32がそれぞれ設けられる。各基板ステージ移動機構32,32は、ステージベース23に対して第1及び第2基板ステージ11,12をX方向及びY方向に送り駆動するとともに、マスクMと基板Wとの間の隙間を微調整するように、第1及び第2基板ステージ11,12をZ軸方向に微動且つチルトする。
【0020】
具体的に、Y軸送り機構34は、ステージベース23とY軸テーブル33との間に、リニアガイド38とY軸送り駆動機構39とを備える。ステージベース23上には2本の案内レール40がY軸方向に沿って平行に配置されており、Y軸テーブル33の裏面に取り付けられたスライダ41が転動体(図示せず)を介して跨架されている。これにより、2台のY軸テーブル33,33が、2本の案内レール40に沿ってY軸方向に沿って移動可能に支持される。
【0021】
また、ステージベース23上には、モータ42によって回転駆動されるボールねじ軸43が、第1及び第2基板ステージ11,12に対応してそれぞれ設けられており、ボールねじ軸43には、Y軸テーブル33の裏面に取り付けられたボールねじナット44が螺合されている。
【0022】
また、X軸送り機構36も、図3に示すように、Y軸テーブル33とX軸テーブル35間に、リニアガイド45とX軸送り駆動機構46とが設けられている。Y軸テーブル33上には2本の案内レール47がX軸方向に沿って平行に配置されており、X軸テーブル35の裏面に取り付けられたスライダ48が転動体(図示せず)を介して跨架される。さらに、Y軸テーブル33上には、モータ49によって回転駆動されるボールねじ軸50が設けられており、ボールねじ軸50には、X軸テーブル35の裏面に取り付けられたボールねじナット51が螺合されている。
【0023】
一方、Z−チルト調整機構37は、モータと、ボールねじと、くさびとを組み合わせてなる可動くさび機構を備えており、X軸テーブル35の上面に設置したモータ52によってボールねじ軸53を回転駆動するとともに、ボールねじナット54をくさび状の移動体に組み付け、このくさびの斜面を基板ステージ11,12の下面に突設したくさび55の斜面と係合させている。
【0024】
そして、このボールねじ軸53を回転駆動させると、ボールねじナット54がX軸方向に水平微動し、この水平微動運動が組みつけられたくさび状の移動体の斜面により高精度の上下微動運動に変換される。この可動くさび機構は、X軸方向の一端側に2台、他端側に1台(図示せず)合計3台設置され、それぞれが独立に駆動制御される。
【0025】
これにより、Y軸送り機構34は、各基板ステージ11,12の基板保持部31a,31bに保持された基板Wを個別にマスクステージ10の下方位置に配置された露光位置EPに配置すべく、第1基板ステージ11を第1待機位置(ローディング位置)WP1と露光位置EP間で案内レール40に沿ってY軸方向に移動させ、第2基板ステージ12を第2待機位置WP2と露光位置EP間で案内レール40に沿ってY軸方向に移動させる。また、X軸送り機構36及びY軸送り機構34は、露光位置EPにある基板保持部31a,31bをマスクMに対してX、Y方向にステップ移動させるように第1及び第2基板ステージ11,12を移動させる。
【0026】
第1及び第2基板ステージ11,12には、各基板保持部31a,31bのX方向側部とY方向側部にそれぞれ基板ステージ測長ミラー61,62が取り付けられている。ステージベース23のY軸方向の両側と、ステージベース23のX軸方向の一側には、基板ステージ11,12の位置を測定する基板ステージ位置測定装置63,64,65が設けられている。また、マスクステージ10のX方向両側部には、Y方向に離間する2ヶ所にマスクステージ測長ミラー71A,71Bが取り付けられている。ステージベース23のY軸方向の両側には、マスクステージ10の位置を測定するマスクステージ位置測定装置66が設けられている。
【0027】
基板ステージ位置測定装置63,64,65及び、マスクステージ位置測定装置66は、同一構造を有するレーザー測長計であり、基板ステージ測長ミラー61,62及びマスクステージ測長ミラー71A,71Bにレーザー光を照射し、基板ステージ測長ミラー61,62及びマスクステージ測長ミラー71A,71Bからの反射光を受光して各基板ステージ11,12、及びマスクステージ10の位置を検出する。なお、マスクMを保持するマスク保持部25の微動は、マスクステージ10のフレームに保持された図示しないレーザーホロゲージによって位置を制御されている。
【0028】
図2に示すように、照射装置13はマスク保持部25の開口25a上方に配置され、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ、凹面鏡、オプチカルインテグレータ、平面ミラー、球面ミラー、及び露光制御用のシャッター等を備えて構成される。照射装置13は、露光位置に移動した第1及び第2基板ステージ11,12の基板保持部31a,31bに保持された基板Wに、パターン露光用の光をマスクMを介して照射する。これにより、基板Wには、マスクMのマスクパターンPが露光転写される。
【0029】
プリアライメントユニット14は、基台21の外側に設置された基板カセット70A,70Bから搬送された基板Wが、第1基板ステージ11または第2基板ステージ12に供給されるのに先立って、マスクMに対する基板Wの位置をプリアライメントするものであり、図中、マスクステージ10の手前側に配置されている。
【0030】
第1基板ローダ15は、図1中プリアライメントユニット14の右側方に配置され、第1基板ステージ11に供給される基板Wを保持してプリアライメントユニット14へ搬送し、またプリアライメントされた基板Wをプリアライメントユニット14から第1基板ステージ11に搬送し、さらに、第1待機位置WP1に位置する第1基板ステージ11上の露光転写後の基板Wを基板カセット70Aへ搬送する。第2基板ローダ16は、図1中プリアライメントユニット14の左側に配置され、第2基板ステージ12に対して、第1基板ローダ15と同様の操作を行う。
【0031】
また、マスクローダ17及びマスクアライナ18は、第1基板ステージ11に対して第1基板ローダ15と対向配置されている。ローダロボットであるマスクローダ17は、基台21の外側に設けられたマスクカセット91からマスクMを搬入し、マスクアライナ18でプリアライメントされたマスクMを第1基板ステージ11へ搬送し、搬送されたマスクMは、第1基板ステージ11によってマスクステージ10へ供給される。
【0032】
次に、図4を参照して、第1の基板ステージ11及びマスクステージ10の位置を検出する基板ステージ位置測定装置63、及びマスクステージ位置測定装置66について説明する。
【0033】
本実施形態の基板ステージ位置測定装置63及びマスクステージ位置測定装置66は、不図示の1台のレーザー発振器から照射されるレーザー光LBを、偏光ビームスプリッタ80によって、基板ステージ位置測定用レーザー光WLBと、マスクステージ位置測定用レーザー光MLBとに分配し、これらのレーザー光WLB及びMLBをそれぞれ基板ステージ11及びマスクステージ10に向けて照射する。
【0034】
基板ステージ位置測定用レーザー光WLBは、偏光ビームスプリッタ81で分離され、一方のレーザー光WLBが偏光ビームスプリッタ82を通過して基板ステージ測長ミラー61の第1測定点72Aに照射され、また、他方のレーザー光WLBが反射ミラー83で方向が変更され、偏光ビームスプリッタ84を通過して基板ステージ測長ミラー61の第2測定点72Bに照射される。偏光ビームスプリッタ83,84に取り付けられた光検出器73A,73Bは、レーザー発振器からの各レーザー光WLBと、基板ステージ測長ミラー61の第1、 第2測定点72A, 72Bからの各反射光との干渉を測定し、基板ステージ測長ミラー61、即ち、第1基板ステージ11の絶対位置及び水平面内での姿勢(回転)を検出する。
【0035】
また、マスクステージ位置測定用レーザー光MLBは、同様に、反射ミラー85で方向を変更した後、偏光ビームスプリッタ86で分離され、一方のレーザー光MLBが偏光ビームスプリッタ87を通過してマスクステージ測長ミラー71Aに照射され、他方のレーザー光MLBは反射ミラー88で方向が変更され、偏光ビームスプリッタ89を通過してマスクステージ測長ミラー71Bに照射される。偏光ビームスプリッタ87,89に取り付けられた光検出器74A,74Bは、レーザー発振器からの各レーザー光MLBと、マスクステージ測長ミラー71A,71Bからの各反射光との干渉を測定し、マスクステージ測長ミラー71A,71B、即ち、マスクステージ10の絶対位置及び水平面内での姿勢(回転)を検出する。
【0036】
基板ステージ位置測定装置63及びマスクステージ位置測定装置66は、マスクMを交換してから次のマスクに交換されるまでの、マスクMがマスクステージ102に保持されている間、それぞれ基板ステージ11及びマスクステージ10の絶対位置及び水平面内での姿勢を常時検出している。
【0037】
例えば、基板Wのステップ移動の際、それぞれ基板ステージ11及びマスクステージ10の絶対位置及び水平面内での姿勢を検出することで、マスクMと基板Wとの相対位置を高精度に測定する。そして、該相対位置に基づいて、図示しない制御部は、該相対位置を一定に保つように第1基板ステージ11の制御を補正する。
【0038】
また、マスク交換時においては、数分から数時間を要する恒温状態に達するまでに、露光装置に経時熱変位が生じる場合があるため、マスクステージ10及び基板ステージ11の位置、及び水平面内での姿勢を測定して、制御部は、相対位置を補正する必要がある。なお、マスク交換が行われた際には、基板ステージ11及びマスクステージ10の位置がリセットされる。
【0039】
本実施形態では、基板ステージ位置測定装置63及びマスクステージ位置測定装置66が独立して、それぞれ基板ステージ11及びマスクステージ10の位置及び水平面内での姿勢を検出しているので、図5に示すように、第1基板ローダ15のロボットハンド91によって測定途中にマスクステージ位置測定用レーザー光MLBが短時間遮断されるようなことがあっても、レーザー光MLBの回復後は、従来通り、基板ステージ11及びマスクステージ10の位置を測定することができる。これにより、レーザー光LBの遮断を考慮することなく、マスクステージ10と基板ステージ11,12とを接近して配置することができ、環境温度を略同じにしてマスクMと基板Wの熱膨張の差を抑制することができる。
なお、第2基板ステージ12側に設けられた、基板ステージ位置測定装置64及びマスクステージ位置測定装置66も、同様の構成を有する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の露光装置PEによれば、基板ステージ11,12の移動方向と直交する方向に離間した2箇所のマスクステージ測長ミラー71A,71Bでマスクステージ10の位置を測定するマスクステージ位置測定装置66と、基板ステージ11,12の移動方向と直交する方向に離間した2箇所の測定点72A,72Bで基板ステージ11,12の位置を測定する基板ステージ位置測定装置63,64と、を備えるので、マスクステージ10、及び基板ステージ11,12の位置と共に、水平面内での姿勢を監視することができる。
【0041】
また、マスクステージ位置測定装置66及び基板ステージ位置測定装置63,64は、それぞれマスクステージ10及び基板ステージ11,12の絶対位置を測定するので、測定途中でレーザー光MLBが遮られることがあっても、レーザー光MLBが復帰したとき、これに影響されることなく、マスクステージ10、及び基板ステージ11,12の位置及び水平面内での姿勢を監視することができる。さらに、マスクステージ10と基板ステージ11,12とを接近して配置することができ、環境温度を略同じにしてマスクMと基板Wの熱膨張の差を抑制し、高精度な露光を実現することができる。
【0042】
また、マスクステージ位置測定装置66及び基板ステージ位置測定装置63,64はそれぞれ、マスクMがマスクステージ10に保持されている間、マスクステージ10の絶対位置及び基板ステージ11,12の絶対位置を常時測定しているので、ステップ移動の際の相対位置のずれだけでなく、マスク交換時において、数分から数時間を要する恒温状態に達するまでの露光装置の経時熱変位による相対位置のずれに対しても補正することができる。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 マスクステージ
11,12 基板ステージ
13 照射装置
61,62 基板ステージ測長ミラー
63,64,65 基板ステージ位置測定装置
66 マスクステージ位置測定装置
71A,71B マスクステージ測長ミラー
EP 露光位置
M マスク
PE 露光装置
W 基板
WP1,WP2 待機位置(ローディング位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを保持するマスクステージと、
被露光材としての基板を保持し、前記マスクに対向配置される露光位置と前記基板を載置するローディング位置との間で移動可能な基板ステージと、
前記基板に対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射装置と、
前記基板ステージの移動方向と直交する方向の前記マスクステージの側面に配置されるマスクステージ測長ミラーを備え、前記直交方向に離間した2箇所で、前記マスクステージの絶対位置を測定するマスクステージ位置測定装置と、
前記直交方向の前記基板ステージの側面に沿うように配置された基板ステージ測長ミラーを備え、前記直交方向に離間した2箇所で、前記基板ステージの絶対位置を測定する基板ステージ位置測定装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記マスクステージ位置測定装置及び前記基板ステージ位置測定装置はそれぞれ、前記マスクが前記マスクステージに保持されている間、前記マスクステージの絶対位置及び前記基板ステージの絶対位置を常時測定していることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−180480(P2011−180480A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46227(P2010−46227)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】