説明

青色光吸収能を有する高屈折率シリコーン含有プレポリマー

比較的高い屈折率のポリマー組成物の製造において使用するための、青色光を吸収し得る、シリコーン含有プレポリマーを製造するためのプロセスが、本明細書において記載される。このようにして製造されたポリマー組成物は、透明であり、外科的操作の間の耐久性について比較的強度が高く、比較的伸長性が高く、比較的屈折率が高く、例えば、眼内レンズコンタクトレンズ、人工角膜移植物、角膜リング、角膜インレーなどのような眼科用デバイスの製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生体適合性の医療デバイス(例えば、眼内レンズ)の製造に有用な高屈折率シリコーン含有プレポリマーに関する。より具体的には、本発明は、青色光をブロックするのを補助する官能基を有し、眼科用デバイスの製造に有用な高屈折率シリコーン含有プレポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
1940年代から、眼内レンズ(IOL)移植物の形状の眼用デバイスが、冒されたか、または損傷を受けた生来の眼のレンズのための代替物として利用されている。大抵の場合、眼内レンズは、例えば、白内障の場合に、病に冒されたか、または傷害された生来のレンズを外科的に除去するときに、眼内に移植される。ここ数十年にわたって、このような眼内レンズ移植物を製造するための好ましい材料は、剛性なガラス状のポリマーである、ポリ(メチルメタクリレート)であった。
【0003】
より近年、圧縮されるか、折り曲げられるか、巻かれるか、または他の方法で変形される能力に起因して、より軟らかく、より可撓性のIOL移植物が人気を博している。このようなより軟らかいIOL移植物は、眼の角膜の切開を通して移植する前に、変形され得る。IOLを眼内に移植した後、IOLは、軟性材料の記憶特性に起因して、その最初の予め変形された形状に戻る。たった今記載したような、より軟らかく、より可撓性のIOL移植物は、より剛性のIOLに必要とされているもの(すなわち、5.5mm〜7.0mm)よりかなり小さい(すなわち、4.0mm未満)の切開を通して、眼内に移植され得る。より大きな切開が、より剛性なIOL移植物に必要とされる。なぜならば、これらのレンズは、非可撓性のIOLの眼部分の直径よりもわずかに大きい角膜内の切開を通して挿入されなければならないからである。従って、より剛性のIOL移植物は、市場において、人気がなくなってきている。これは、より大きな切開が、誘発性乱視のような術後合併症の発生率の増加に関連することが見出されているからである。
【0004】
小切開白内障手術における近年の進歩に伴い、人工IOL移植物における使用に適切な、軟らかく、折り曲げ可能な材料の開発に対してよりいっそうの重点が置かれている。Mazzocco,特許文献1は、比較的小さい切開を通して適合するように、巻かれるか、折り曲げられるか、または伸ばされ得る、変形可能な眼内レンズを開示する。この変形可能なレンズは、その歪曲した構造を保持しながら挿入され、次いで、眼の腔の内側に解放され、その際に、レンズの弾性特性が、レンズをその成形された形状に回復させる。変形可能なレンズに適切な材料として、Mazzoccoは、ポリウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー、ヒドロゲルポリマー化合物、有機ゲル化合物または合成ゲル化合物、およびこれらの組合せを開示する。
【0005】
近年、青色光(400〜500nm)は、網膜に対して有害である可能性があるとして認識されている。従って、青色光をブロックする黄色色素が、有害な影響の可能性を回避するために、紫外光吸収剤と組合せて、折り曲げ可能な眼内レンズにおいて使用されている。Freemanら、特許文献2は、芳香族基を有する2種以上のアクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーを含有する高屈折率コポリマーを開示する。これらのコポリマーから作製された眼科用デバイスはまた、特許文献3に開示される黄色色素のような、着色色素を含み得る。このような材料は十分な強度を示し、眼内レンズのような、これらの材料から作製されたデバイスが、破損することなく、保持または操作されることを可能にする。
【特許文献1】米国特許第4,573,998号明細書
【特許文献2】米国特許第6,353,069号明細書
【特許文献3】米国特許第5,470,932号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
適切な屈折力のレンズを提供するために、レンズが比較的厚いことを必要とする、眼科用デバイスの製造において使用される、多くの軟らかく、可撓性の材料の特性における欠点(例えば、水泡の形成、または「きらめくこと(glistening)」および低い屈折率)に起因して、眼科用デバイスの製造において有用な新規材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
軟らかく、折り曲げ可能であり、高屈折率、かつ高伸長性のポリマー組成物またはシリコーンエラストマーが、青色光吸収能を有する高屈折率プレポリマーを使用する共重合プロセスによって、本発明に従って調製される。本発明のプレポリマーは、少なくとも1.42の屈折率、より好ましくは、少なくとも1.45の屈折率を有する。本発明のプレポリマーは、以下の式1または式2により一般的に表される構造を有する:
【0008】
【化2】

上記式において、V基は、同じかもしくは異なる、反応基もしくは重合可能基であり得;R基は、同じかもしくは異なるスペーサー基であり得るか、または存在せず;R基は、同じかもしくは異なるC1〜6アルキル基であり得;Rは、RもしくはRのいずれかであり;Rは、芳香族基であり;Rは、R、R、もしくはRが1種のエチレン性不飽和基を有する反応性色素に由来する場合、Rであり;Rは、青色光を吸収する官能基であり;そして、m、n、pおよびqは、同じかもしくは異なる、0より大きい正の整数を表し、p/m+n+p+qは、0.05未満であるか、またはより好ましくは、0.01未満である。
【0009】
以下により詳細に記載される本発明のプロセスを使用する、本発明のプレポリマーの調製に従って、これらのプレポリマーは、眼科用デバイスのような生体適合性医療デバイスの製造において有用な、所望のポリマー組成物を形成するために、共重合される。このような所望のポリマー組成物は、透明であり、外科的操作の間の耐久性について比較的強度が高く、比較的伸長性が高く、比較的屈折率が高く、そして、眼内レンズ(IOL)移植物、コンタクトレンズ、人工角膜移植物、角膜リング、角膜インレーなどのような眼科用デバイスの製造における使用に特に十分に適している。本発明に従って調製されたプレポリマーを使用して製造されるポリマー組成物またはシリコーンエラストマーから製造された医療デバイスはまた、青色光を吸収することができる。
【0010】
従って、所望の物理的特性および比較的高い屈折率を有する、透明な生体適合性ポリマー組成物の製造のためのプロセスを提供することが、本発明の1つの目的である。
【0011】
本発明の別の目的は、比較的高い屈折率および良好な透明度を有するポリマー組成物の製造のためのプロセスを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、眼科用デバイスの製造における使用に適切なポリマー組成物の製造のためのプロセスを提供することである。
【0013】
本発明のなお別の目的は、眼内レンズ移植物の製造における使用に適切なポリマー組成物の製造のためのプロセスを提供することである。
【0014】
本発明のこれらおよび他の目的および利点(これらのうちのいくつかは、具体的に記載されるが、その他は記載されない)は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、高屈折率プレポリマーの製造、ならびに眼科用デバイスの製造において使用するために、所望の物理的特性および比較的高い屈折率を有する生体適合性ポリマー組成物を製造するための、このようなプレポリマーの使用のための、新規プロセスに関する。本発明のプレポリマーは、以下の式1により一般に表される:
【0016】
【化3】

上記式において、V基は、同じかもしくは異なる、反応基もしくは重合可能基(例えば、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマレート、マレアートまたはスチレンであるが、これらに限定されない)であり得;R基は、存在しないか、または同じかもしくは異なるスペーサー基(例えば、C1〜12アルキレン(例えば、プロピレンまたはブチレンであるが、これらに限定されない)、または12個までの原子の有機スペーサー基(この原子は、単独、または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素から構成される)であるがこれらに限定されない)であり得;R基は、同じかもしくは異なるC1〜6アルキル基(例えば、メチル、ブチルまたはヘキシルであるがこれらに限定されない)であり得;Rは、RもしくはRのいずれかであり;Rは、C6〜30芳香族基(例えば、フェニルまたはナフチルであるがこれらに限定されない)であり;Rは、R、RもしくはRが1種のエチレン性不飽和基を有する反応性色素に由来する場合、Rであり;Rは、エチレン性不飽和基(例えば、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマレート、マレアート、イタコネート、スチレン、ニトリルまたは類似の官能基)を有する反応性黄色アゾ色素に由来する、青色光を吸収する官能基であり;Uは、存在しないか、またはポリシロキサン基の複数のブロックをプレポリマーに与える二官能結合(例えば、ウレタンであるが、これらに限定されない)であり;そして、m、n、pおよびqは、同じかもしくは異なる、0より大きい正の整数を表し、p/m+n+p+qは、0.05未満であるか、またはより好ましくは、0.01未満である。
【0017】
式1および2の本発明のプレポリマーは、所望される特定のプレポリマーの構造に依存して、種々の技術を使用して調製され得る。例えば、V基がビニルであり、R基が存在せず、R基がメチル基であり、かつR基がフェニル基であると仮定する場合、プレポリマーは、1種以上の環式基を1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンに挿入することによって調製され得る。適切な環式基としては例えば、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(HMTS)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(OMTS)、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン(HPTS)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルテトラシロキサン(OPTS)、および1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン(TMTPTS)が挙げられるがこれらに限定されない。少なくとも1つのR基、ならびに任意の組み合わせのメチル基およびフェニル基を含有する、混合型環状シロキサンが、青色光吸収特性を有するプレポリマーを製造するために、任意の挿入反応において存在しなくてはならない。
【0018】
式1の代表的なプレポリマーは、以下の反応スキーム1に概説される工程に従って調製され得る。
【0019】
(反応スキーム1)
(工程1.Si−Hを含有する環状物の調製)
【0020】
【化4】

(工程2.黄色色素部分を有する環状物(環状物−R)の調製)
【0021】
【化5】

(工程3.高屈折率および黄色色素部分を有するジビニル末端ポリシロキサンを製造するための、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの環状物の挿入反応)
【0022】
【化6】

ジメチルジヒドロシランが反応スキーム1の工程1において使用される場合、2つのR基が、式1のプレポリマー中のシロキサン単位にある同じケイ素に結合され得ること、すなわち、Rが、1つのみの上記のようなエチレン性不飽和基を有する反応性色素に由来するという条件で、RはRであることに、注意すべきである。あるいは、Rが、2つのエチレン性不飽和基を有する反応性色素に由来する場合、工程2は、シロキサン環状物の2つの単位に結合した色素部分を生じる。このような工程は、式2のプレポリマーの形成を生じる。
【0023】
エチレン性不飽和基を有する黄色色素含有化合物は、Si−Hに対して反応性の、エチレン性不飽和基を有する、あらゆる黄色色素であり得る。例えば、反応性色素の代表的なクラスは、以下の式3により例示される一般構造を有する。
【0024】
−N=N−R−(R−NR−(R−CR10=CH
式3
ここでは、yが1である場合、Rが水素であるか、またはyが2である場合、Rは存在せず;R基は、黄色色素に青色光吸収特性を提供する、同じかもしくは異なるC6〜30芳香族基であり得;R基は、同じかもしくは異なるスペーサー基(例えば、C1〜12アルキレンまたはカルボニル基であるがこれらに限定されない)であり得;R10は、水素またはメチルであり、xは、正の整数であり、そしてyは1または2のいずれかである。このクラスの反応性色素官能基の1つの具体的な例は、式4において以下に例示される、N−2−[3’−(2”−メチルフェニラゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドである。
【0025】
【化7】

式4の反応性色素が使用される場合、式1のプレポリマーが製造される。式2のプレポリマーが所望される場合、2つのエチレン性不飽和基を有する反応性色素が必要とされる。2つのエチレン性不飽和基を有する反応性色素の1つの例は、以下の式5で例示される、N,N−ビス−(2−ビニルアセトキシエチル)−(4’−フェニラゾ)アニリンである。
【0026】
【化8】

式1のV基の性質に依存して、本発明のプレポリマーは、ビニル重合、段階的付加、またはヒドロシラン化(hydrosilation)によって、他の重合可能なモノマー/オリゴマーと共重合されて、眼内レンズのような医療デバイスの製造に有用なポリマー組成物を生じ得る。青色光吸収官能基は、450nmにおいて約50%以下の光透過率を提供するのに十分な量で、このような医療デバイス内に存在すべきである。同じことが、以下に提供される実施例にもなおより詳細に記載される。
【実施例】
【0027】
(実施例1 Si−Hを含有する環状物、1−ヒドロ−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンの調製(工程1))
還流凝縮器および窒素ブランケットを備える、乾燥し、清潔な三ツ口丸底フラスコ(500mL)に、51.66グラム(0.232モル)の1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシロキサンおよび25.98グラム(0.232モル)のジクロロメチルヒドロシランを充填する。この内容物を60℃で加熱する。次いで、ヘキサメチルリントリアミド(52μl)を添加し、この反応混合物を一晩撹拌させる。次いで、この混合物を、32グラムの水およびジエチルエーテルの撹拌混合物に添加する。次いで、この混合物を、分液漏斗に入れる。次いで、この有機層を分離し、pHが7.0になるまで、5%重炭酸ナトリウムで2回、そして水で5回洗浄する。次いで、このエーテル溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥させる。次いで、この溶媒を、減圧下でストリップして、90%を超える純度で生成物を生じる。
【0028】
(実施例2 N−2−[3’−(2”−メチルフェニラゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドの合成)
N−2−[3’−(2”−メチルフェニルアゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドは、2つの工程で作製され得る。第1工程は、4−ビニルアセトアミドエチルフェノールの形成である。第2工程は、トルイジンのアゾニウム塩とフェノールとのカップリングにより、生成物を生じることである。詳細な手順は、メタクリル酸無水物の代わりにビニル酢酸無水物を用いること以外は、米国特許第5,470,932号の実施例1に見られるものと同じであり得る。この生成物を、NMRおよび質量分析により同定する。
【0029】
(実施例3 黄色色素部分を有する環状物の調製(工程2))
還流凝縮器を備える1Lの三ツ口丸底フラスコに、28.2g(0.1モル)の1−ヒドロ−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(実施例1からのもの)、32.2g(0.1モル)のN−2−[3’−(2”−メチルフェニルアゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドおよび500mLの塩化メチレンを充填する。磁気撹拌子を用いて撹拌して、混合物を溶液にした後、キシレン中0.05gの白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(2.1〜2.4%白金濃度(Gelest,Inc.,Tullytown,Pennsylvania))を添加し、この混合物を還流まで加熱する。16時間後、この溶媒をほとんど除去して、高度に濃縮した色素溶液を得る。次いで、これを、シリカゲルに通し、塩化メチレン/アセトニトリル混合物で溶出して、精製された反応性黄色色素環状物を得る。この生成物を、NMRおよび質量分析により、さらに同定する。
【0030】
(実施例4 標的した6,000分子量のαω−ビス−ビニルポリジメチルシロキサンの合成)
還流凝縮器および窒素ブランケットを備える、乾燥し、清潔な三ツ口丸底フラスコ(500mL)に、87.46グラム(0.295モル)の1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン、2.78g(0.0149モル)の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、および133μlのトリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)(0.25重量%)を充填した。この内容物を、窒素ブランケット下で撹拌した。一晩の後、この内容物をエチルエーテル中に溶解し、この溶液がpH7.0に達するまで、水中0.05NのNaOHで洗浄した。次いで、このエーテル溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、この溶媒を、減圧下でストリップして、最終生成物を生じた。プレポリマーの分子量(ポリスチレン標準物質を用いる、サイズ排除クロマトグラフィーによる):Mn=7360、Mw=13200。25%が環状物であった。
【0031】
(実施例5 少なくとも1.45の屈折率を有し、かつ、青色ブロック能を有する、ジビニル末端ポリシロキサンの調製)
機械撹拌器、還流凝縮器および窒素ブランケットを備える、乾燥し、清潔な三ツ口丸底フラスコ(3L)に、3.02g(0.005モル)の実施例3からの反応性環状黄色色素である、フェニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、73g(0.01モル)の実施例4からのαω−ビス−ビニルポリジメチルシロキサン、473.6グラムの1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン、340グラムの1,3,−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、および0.139グラムのトリメチルシラン酸カリウムを充填する。この内容物を、150〜160℃に達するまで、機械で撹拌しながら加熱する。次いで、これを、窒素で1〜2分間パージする。次いで、この内容物を、160℃にて撹拌し続ける。粘性が、急速に増加し始める。一晩加熱した後、この反応を終了させる。このプレポリマーは、約88,600の理論上のMnを有する。屈折率は、1.46より高いはずである。このプレポリマーは、約0.16%の黄色色素含量を有するはずである。
【0032】
柔らかく、折り曲げ可能で、約1.42以上の比較的高い屈折率を有し、約100%以上の比較的高い伸長性を有するポリマー組成物を、本発明のプロセスにより製造した、1種以上のシリコーン含有プレポリマーを使用して合成する。本発明のポリマー組成物を製造するために、本発明のプロセスを用いて製造した1種以上のシリコーン含有プレポリマーを、1種以上の適切なモノマーもしくはオリゴマーと共重合させ、そして必要に応じて、ポリマー組成物の機械的特性を高めるための1種以上の強化剤を、1種以上の架橋剤および/または1種以上の触媒を加える。
【0033】
重合可能なモノマーまたはオリゴマーの適切なクラスとしては、高屈折率シロキサン含有アクリレート、シロキサン含有メタクリレート、芳香族基含有アクリレート、芳香族基含有メタクリレート、高屈折率を有するビニル含有シロキサンもしくはアリル含有シロキサン、または、ビニル含有芳香族モノマーもしくはアリル含有芳香族モノマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
本発明のプロセスに従って製造したシリコーン含有プレポリマーの共重合において使用するために適切な強化剤としては、シリカフィラー、または例えば、複数のビニル基を有するQ樹脂のような有機ケイ素樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
本発明のプロセスに従って製造したシリコーン含有プレポリマーの共重合において使用するために適切な架橋剤としては、ポリジメチル−co−メチルヒドロシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0036】
本発明のプロセスに従って製造したシリコーン含有プレポリマーの共重合において使用するために適切な触媒としては、Pt−シリコーン錯体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
本発明のプロセスにより製造されたシリコーン含有プレポリマーを使用して製造されたポリマー組成物は、約1.42以上の屈折率、約30℃以下の比較的低いガラス転移温度、および約100%以上の比較的高い伸長性を有する。本明細書中に記載される所望の物理的特性を有するポリマー組成物は、青色光を吸収する能力に起因して、眼内レンズ(IOL)および角膜インレー(これらに限定されない)のような眼科用デバイスの製造に特に有用である。
【0038】
薄い光学部分を有するIOLは、外科医が外科的切開の大きさを最小にすることを可能にする際に重要である。外科的切開の大きさを最小に維持することにより、術中の外傷および術後の合併症が減少する。薄いIOL光学部分はまた、前方腔および毛様体溝のような眼内の特定の解剖学的位置に収容するために重要である。IOLは、無水晶体および有水晶体の眼の両方において視力を増加するために前方腔内に配置され得、そして、有水晶体の眼において視力を増加するために、毛様体溝内に配置され得る。
【0039】
本明細書中に記載されるように製造されたポリマー組成物は、このポリマー組成物から製造された眼科用デバイスが、可能な最小の外科的切開(すなわち、3.5mm以下の大きさ)を通して、眼内に挿入するために折り曲げられるか、または変形されることを可能にするために必要とされる可撓性を有する。本明細書中に記載される、本発明のポリマー組成物は、本明細書中に開示される理想の物理的特性を保有し得ることは、予想外のことである。本発明のポリマー組成物の理想の物理的特性は、予想外のことである。なぜならば、高屈折率のモノマーまたはコポリマーは、代表的に、結晶性が増加し、透明度が減少した(これらは、本発明のポリマー組成物の場合には、当てはまらない)ポリマーを、与える(lend to)からである。
【0040】
1種以上の適切な紫外光吸収剤が、必要に応じて、本発明のポリマー組成物の製造において使用され得る。このような紫外光吸収剤としては、例えば、2−[3’−tert−ブチル−5’−(3”−ジメチルビニルシリルプロポキシ)−2’−ヒドロキシフェニル]−5−メトキシベンゾトリアゾールまたは2−(3’−アリル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のプロセスを使用して製造されたポリマー組成物を使用して製造された医療デバイスは、製造される特定の眼科用デバイスの分野の当業者に公知の方法に従って製造され得る。例えば、眼内レンズが製造されるべき場合、眼内レンズは、眼内レンズの製造の分野の当業者に公知の方法により製造され得る。
【0042】
本発明のプロセスを使用して製造されたポリマー組成物を使用して製造された眼科用デバイス(例えば、IOLおよび角膜インレーであるが、これらに限定されない)は、比較的小さな外科的切開(すなわち、3.5mm以下の切開)を通して移植するために、巻かれるか、または折りたたまれ得る、任意のデザインであり得る。例えば、IOLのような眼内移植物は、光学部分および1種以上の接触部分を備える。光学部分は、網膜上で光を反射し、持続的に取付けられた接触部分が、移植後の眼内の適切な整列に光学部分を保持する。この接触部分は、ワンピースのデザインで光学部分と一体型に形成され得るか、またはスタッキング、接着剤、もしくは、当業者に公知の他の方法によって、マルチピースのデザインに取り付けられ得る。
【0043】
例えば、IOLのような本発明の眼科用デバイスは、同じかまたは異なる材料から作製された光学部分および接触部分を有するように製造され得る。好ましくは、本発明によれば、IOLの光学部分および接触部分の両方は、本発明のプロセスを使用して製造された同じポリマー組成物から作製される。しかし、あるいは、IOLの光学部分および接触部分は、異なる材料および/または本発明のプロセスを使用して製造されたポリマー組成物の異なる処方から製造され得る。その詳細は、例えば、米国特許第5,217,491号および同第5,326,506号(これらの各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載される。一旦材料が選択されると、この材料が、所望の形状の鋳型に鋳造され、硬化され、そして、この鋳型から取り外され得る。このような成形の後、IOLは、当業者に公知の慣習的な方法によって洗浄され、艶出しされ、パッケージングされ、そして、殺菌される。あるいは、成形ではなく、IOLは、上記ポリマー組成物を棒の形状に鋳造し;上記棒をディスクに旋盤加工(lath)するかまたは機械加工し;そして上記ディスクを眼科用デバイスに旋盤加工するかまたは機械加工し、その後、この眼科用デバイスを洗浄、艶出し、パッケージング、および殺菌することによって製造され得る。
【0044】
IOLに加えて、本発明のプロセスを使用して製造されたポリマー組成物はまた、コンタクトレンズ、人工角膜移植物、水晶体嚢拡張リング(capsular bag extension ring)、角膜インレー、角膜リングおよび類似のデバイスのような、他の眼科用デバイスの製造における使用に適切である。
【0045】
本発明のプロセスを使用して製造されたポリマー組成物を使用して製造される眼科用デバイスは、眼科学の分野において慣習として使用される。例えば、外科的白内障手順において、切開が、眼の角膜に配される。この角膜の切開を通して、眼の白内障に冒された生来のレンズが摘出され(無水晶体用途)、そして、IOLが、前方腔内、後方腔内、または眼のレンズカプセル内に挿入され、その後切開が閉鎖される。しかし、本発明の眼科用デバイスは、眼科学の分野の当業者に公知の他の外科的手順に従っても、同様に使用され得る。
【0046】
シリコーン含有プレポリマー、およびポリマー組成物を製造するためのプロセス、ならびに、本発明のシリコーン含有プレポリマーから作製された眼科用デバイスが、本明細書において示され、記載されてきたが、種々の改変が、根底にある発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく成され得ること、そして、添付の特許請求の範囲によって示される範囲を除いて、種々の改変が、本明細書中で示され、記載される特定のプロセスおよび構造体に制限されないことは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】

を含むプレポリマーであって、ここで、V基は、同じかもしくは異なる、反応基もしくは重合可能基であり得;R基は、存在しないか、または同じかもしくは異なるスペーサー基であり得;R基は、同じかもしくは異なるC1〜6アルキル基であり得;Rは、RもしくはRのいずれかであり;Rは、C6〜30芳香族基であり;Rは、R、RもしくはRであり;Rは、青色光を吸収する官能基であり;Uは、存在しないか、または二官能結合であり;そして、m、n、pおよびqは、同じかもしくは異なる、0より大きい正の整数であり;そして、該プレポリマーは、約1.42以上の屈折率を有する、プレポリマー。
【請求項2】
前記V基が、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマレート、マレアートおよびスチレンからなる群より選択される、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項3】
前記R基が、存在しないか、C1〜12アルキレン、および12個までの原子の有機スペーサー基からなる群より選択される、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項4】
前記有機スペーサー基は、単独、または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素から構成される、請求項3に記載のプレポリマー。
【請求項5】
前記R基は、反応性黄色色素に由来する、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項6】
前記R基は、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマレート、マレアート、イタコネート、スチレンおよびニトリルからなる群より選択されるエチレン性不飽和基を有する、反応性黄色色素に由来する、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項7】
前記U基は、存在しないか、または、前記プレポリマーにポリシロキサン基の複数のブロックを与える、二官能性結合である、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項8】
前記U基はウレタンである、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項9】
前記プレポリマーは、青色光吸収特性を有する、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項10】
1種以上の請求項1に記載のプレポリマーと、1種以上のモノマーもしくはオリゴマーとの共重合により製造される、ポリマー組成物。
【請求項11】
1種以上の請求項1に記載のプレポリマーと、1種以上のモノマーもしくはオリゴマー、1種以上の強化剤、1種以上の架橋剤および1種以上の触媒との共重合により製造される、ポリマー組成物。
【請求項12】
前記1種以上のモノマーもしくはオリゴマーが、高屈折率シロキサン含有アクリレート、高屈折率シロキサン含有メタクリレート、芳香族基含有アクリレート、芳香族基含有メタクリレート、高屈折率を有するビニルもしくはアリル含有シロキサンモノマー、およびビニルもしくはアリル含有芳香族モノマーからなる群より選択される、請求項10または11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記強化剤が、シリカフィラー、および少なくとも1つのビニル基を有するシロキサンベースの樹脂からなる群より選択される、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記強化剤がシリカフィラーである、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記強化剤が、少なくとも1つのビニル基を有するシロキサンベースの樹脂である、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記架橋剤が、ポリジメチル−co−メチルヒドロシロキサンである、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記触媒が、Pt−シリコーン錯体、カリウムシラノエート、およびアミノシラノエートからなる群より選択される、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記触媒が、Pt−シリコーン錯体である、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1に記載のプレポリマーを製造するためのプロセスであって、以下:
シリコーン含有環状化合物を製造する工程;
該環状化合物に反応性色素部分を付加する工程;および
該環状化合物をジビニルシロキサンと反応させる工程
を包含する、プロセス。
【請求項20】
ポリマー組成物を製造するためのプロセスであって、1種以上の請求項1に記載のプレポリマーを、1種以上のモノマーもしくはオリゴマーと重合させる工程
を包含する、プロセス。
【請求項21】
ポリマー組成物を製造するためのプロセスであって、1種以上の請求項1に記載のプレポリマーを、1種以上のモノマーもしくはオリゴマー、1種以上の強化剤、1種以上の架橋剤、および1種以上の触媒と重合させる工程
を包含する、プロセス。
【請求項22】
前記1種以上のモノマーもしくはオリゴマーが、高屈折率シロキサン含有アクリレート、高屈折率シロキサン含有メタクリレート、芳香族基含有アクリレート、芳香族基含有メタクリレート、高屈折率を有するビニルもしくはアリル含有シロキサンモノマー、およびビニルもしくはアリル含有芳香族モノマーからなる群より選択される、請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記強化剤が、シリカフィラー、または少なくとも1つのビニル基を有するシロキサンベースの樹脂からなる群より選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記強化剤が、シリカフィラーである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記強化剤が、少なくとも1つのビニル基を有するシロキサンベースの樹脂である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
請求項20または21に記載のプロセスによって製造されたポリマー組成物を使用して、眼科用デバイスを製造する方法であって、該ポリマー組成物を成形体に注型する工程を包含する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法によって製造された眼科用デバイスを使用する方法であって、眼内に該眼科用デバイスを移植する工程を包含する、方法。
【請求項28】
1種以上の請求項1に記載のプレポリマーから製造されたポリマー組成物を使用して、眼科用デバイスを製造する方法であって、該ポリマー組成物を成形体に注型する工程を包含する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって製造された眼科用デバイスを使用する方法であって、眼内に該眼科用デバイスを移植する工程を包含する、方法。
【請求項30】
1種以上の請求項1に記載のプレポリマーを含有する、医療デバイス。
【請求項31】
1種以上の請求項1に記載のプレポリマーを含有する、眼内レンズ。

【公表番号】特表2007−505187(P2007−505187A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526104(P2006−526104)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027065
【国際公開番号】WO2005/026788
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(391008847)ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド (137)
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
【Fターム(参考)】