説明

青色蛍光ガラス

【課題】エキシマレーザーなどの強い紫外光の照射によって、蛍光色が変化せず、またガラスが破損せず、さらに紫外光から青色光への変換効率が高く、蛍光強度が大きい青色蛍光ガラスを提供すること。
【解決手段】モル%表示で、AlFが15〜55、MgFが0〜20、CaFが0〜25、SrFが0〜20、BaFが0〜35、RXが0〜15(ただし、Rは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる一種以上の元素で、Xは、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)、LnFが0〜25(ただしLnは、Y、La、Gd、Yb、Lu、Dyから選ばれる一種以上の元素)、EuX´が0.01〜5(ただしX´は、F、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)である、青色蛍光ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイや照明器具用の蛍光体や光センサーなどとして利用される、紫外光を高効率で可視光に変換する材料に関し、特に青色光を発光する青色蛍光ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用やランプ用として実用化されている蛍光体は一般的に、主に硫化物や酸硫化物あるいはハロ燐酸塩を母体材料とし、希土類元素を発光中心とするものである。青色光を発光する蛍光体としては、ディスプレイ用にZnS:Agが実用化され、またランプ用にはBaMgAl1627:Eu2+などが実用化されている。しかし、これらの蛍光体は不透明な粉体であり、その粉体を基板の上に塗布して利用されているため、用途が蛍光体の表面から発光する蛍光を利用する場合だけに限られている。(非特許文献1)
この問題を解決する手段として、特公昭57−27047号公報、特公昭57−27048号公報、特開平9−202642号公報、および特開平10−167755号公報には、表面のみならず内部からも発光する透明な蛍光ガラスが開示されている。
特公昭57−27047号公報、特公昭57−27048号公報、および特開10−167755号公報に開示された蛍光ガラスは、酸化物ガラスに希土類イオンを添加した透明な蛍光ガラスであり、美術工芸品、エキシマレーザー等の紫外線レーザー光軸調整用光学部品、などに利用することができる。
【0003】
特開平9−202642号公報に開示された蛍光体は、フツ燐酸塩ガラスに希土類イオンを添加した透明な青色蛍光ガラスであり、エキシマレーザー等の紫外線レーザー光軸調整用光学部品などに利用することができる。
【非特許文献1】蛍光体ハンドブック、オーム社、1987年、3編:実用蛍光体、165
【特許文献1】特公昭57−27047号公報
【特許文献2】特公昭57−27048号公報
【特許文献3】特開平9−202642号公報
【特許文献4】特開平10−167755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーロピウム(以下適宜、Euと略す)イオンは通常3価の状態であり、3価のEuイオンは紫外線による励起によって赤色の蛍光を示す。Euイオンを発光中心とする蛍光体が青色光を発光するためには、Euイオンを2価の状態にする必要がある。
Euイオンを添加した酸化物ガラスは、大気中で溶融すると3価のEuイオンが最も安定である。溶融時の雰囲気を還元性にするか、または原料に還元剤を添加しても、2価と3価のEuイオンが混在する。酸化物ガラスでは、Euイオンの大部分を2価にすることは困難である。
フツ燐酸塩ガラスは、価電子帯と伝導帯間のバンドギャップエネルギーがリンと酸素の電子軌道の作用によってフッ化物ガラスよりも小さくなるため、吸収端波長が長波長側にシフトして200nm以下の紫外領域の透過率が低下する。紫外領域における母体ガラスの透過率が小さいと、母体ガラスは、励起紫外光を吸収し、格子振動を励起して紫外光を熱に変換して発熱する。紫外光を長時間照射すると、ガラスが著しく発熱し、割れてしまうという問題があった。
また、フツ燐酸塩系の青色蛍光ガラスは、発振波長が193nmや248nmのエキシマレーザーなどの青色光への変換効率が小さく、格子振動を励起して紫外光を熱に変換して発熱する。紫外光を長時間照射すると、ガラスが著しく発熱し、割れてしまうという問題があった。
さらに、フツ燐酸塩系の青色蛍光ガラスは、エキシマレーザーのような強い紫外光の照射によって発光中心である2価のEuイオンが3価に酸化され、蛍光色が青色から赤色へ変化する問題があった。
さらに、フツ燐酸塩系の青色蛍光ガラスは蛍光強度が小さく、蛍光表示板や紫外線パワーモニター用センサーなどへ応用するためには、紫外光の青色光への変換効率と発光強度の改善が必要であった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、エキシマレーザーなどの強い紫外光の照射によって蛍光色が変化せず、またガラスが破損せず、さらに蛍光強度が大きい青色蛍光ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モル%表示で、AlFが15〜55、MgFが0〜20、CaFが0〜25、SrFが0〜20、BaFが0〜35、RXが0〜15(ただし、Rは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる一種以上の元素で、Xは、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)、LnFが0〜25(ただしLnは、Y、La、Gd、Yb、Lu、Dyから選ばれる一種以上の元素)、EuX´が0.01〜5(ただしX´は、F、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)であり、紫外光励起によって青色蛍光を呈することを特徴とする蛍光ガラスである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蛍光ガラスは、紫外光を高効率で青色光に変換することができ、蛍光強度が大きい。また、強い紫外光の照射によっても、蛍光色の変化やガラスの破損がなく、耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の青色蛍光ガラスは、母体材料がフッ化アルミニウムを主成分としたハロゲン化物ガラスであり、これに付活剤として2価のEuイオンを添加してなるものである。
【0008】
以下、当該青色蛍光ガラスの母体ガラスを上記に様に選択し、構成成分範囲を限定した理由について説明する。なお、構成成分範囲の表示は、特に断らない限りモル%である。
【0009】
フッ化物材料は、酸化物材料や硫化物材料と比較してバンドギャップエネルギーが大きいため、紫外側の吸収端の波長が短く、紫外光に対してより透明である。光吸収が小さいと、エキシマレーザーに代表される強い紫外光を照射したときに光吸収にともなう材料の発熱が小さく、母体材料が発熱によって破損する恐れも小さい。よって、本発明の青色蛍光ガラスの母体材料は、フッ化物材料を選択した。
フッ化物ガラスは、フッ素イオンの分極率が小さいため添加した希土類イオンは2価の状態が比較的安定であり、大部分のEuイオンを2価の状態で存在させることができる。また、イオン結合性と共有結合性とをあわせ持つ酸化物と比べると、フッ化物はイオン結合性が強いため、母体材料を形成する陽イオンが還元されにくい。よって、本発明の青色蛍光ガラスの母体材料は、フッ化物ガラスを選択した。
【0010】
フッ化アルミニウム(AlF)はガラス形成成分である。AlFが15モル%に達しないと結晶化しやすくなり、55モル%を超えると溶解性が悪くなる。好ましくは、30〜40モル%である。
【0011】
フッ化ハフニウム(HfF)フッ化ジルコニウム(ZrF)、フッ化インジウム(InF)、などのフッ化物もガラス形成成分であるが、AlFは、これらのフッ化物よりも紫外領域の透過率が高く、化学的耐候性が優れている。また、AlF3は、アルミニウムの電子親和力が3価のEuイオンよりも小さいため、3価のEuイオンを優先的に2価に還元する。さらに、AlF3を主成分としたガラスは、格子振動エネルギーが酸化物系のガラスに比べて小さいため、格子振動とのカップリングが関与する非輻射緩和によって、紫外光による励起電子が熱エネルギーを放出して失活することを抑制する。その結果、紫外光の励起エネルギーの多くは光子エネルギーに変換され、発光中心からの蛍光強度が大きくなる。つまりAlFは、紫外光の可視光への変換効率を高め、蛍光強度を大きくする。
【0012】
MgF、CaF、SrF、およびBaFは、ガラスの溶解性を向上させる成分である。MgF、CaF、SrF、およびBaFがそれぞれ、20モル%、25モル%、20モル%、35モル%を超えると分相化や結晶化が起こりやすくなり、ガラスの安定性が低下する。MgF、CaF、SrF、およびBaFの好ましい成分量はそれぞれ、5〜15モル%、5〜20モル%、5〜15モル%、および5〜20モル%、である。
【0013】
ハロゲン元素のCl、Br、IはFよりも、3価のEuイオンの還元を促進させる効果があり、その能力は、F<Cl<Br<Iの順で強くなる。また、Cl、Br、IはFよりも、2価のEuイオンからの青色蛍光を強める効果がある。RX(ただし、Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、などのアルカリ土類金属元素から選ばれる一種以上の原子。Xは、F、Cl、Br、I、などのハロゲン元素から選ばれる一種以上の原子)の総量が15モル%を超えると分相化や結晶化が起こりやすくなる。RXの好ましい総量は、0〜10モル%である。
【0014】
LnF(ただしLnは、Y、La、Gd、Yb、Lu、Dyから選ばれる一種以上の元素)は、ガラスの結晶化を抑制する成分である。これらの成分が25モル%を超えると結晶化しやすくなる。LnFが少量の場合も結晶化しやすくなるため、LnFの好ましい成分量は、5〜20モル%である。
【0015】
EuX´(ただしX´は、F、Cl、Br、I、などのハロゲン元素から選ばれる一種以上の原子)は、紫外光の励起によって可視光の蛍光を呈する成分である。2価のEuイオンは青色の蛍光を示し、3価のEuイオンは赤色の蛍光を示す。EuX´が0.01モル%に達しないと十分な蛍光強度が得られず、5モル%を超えると3価のEuイオンが混在して、青色と赤色の蛍光強度がともに低下する。好ましくは、0.1〜0.5モル%である。
【0016】
なお、上記の各成分は、成分量の合計が100モル%の蛍光ガラスになるように各成分の範囲で調整する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。表1は、モル%で表示した本発明の実施例の青色蛍光ガラス(試料NO.1〜14)を示す。表2は、重量%で表示した本発明の実施例の青色蛍光ガラス(試料NO.1〜14)を示す。
(実施例1)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo1の重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0018】
このガラスは、波長365nmの紫外光で励起すると、強い青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは図1に実線で示した。図1中実線の413nmのブロードなピークは、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光を示すものである。
【0019】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは図2に実線で示した。図2中実線の蛍光スペクトルはEu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(実施例2〜6)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo2〜6に示した重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0020】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、強い青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、413nmにEu2+:4f5d→4f遷移による発光を示した。その強度は、実施例1のガラスの3/4であった。
【0021】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(実施例7〜9)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo7〜9に示した重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0022】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、強い青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、413nmにEu2+:4f5d→4f遷移による発光を示した。その強度は、実施例1のガラスとほぼ同じであった。
【0023】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(実施例10)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo10に示した重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0024】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、強い青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、413nmにEu2+:4f5d→4f遷移による発光を示した。その強度は、実施例1のガラスの3/4であった。
【0025】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(実施例11〜12)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo11〜12に示した重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0026】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、413nmにEu2+:4f5d→4f遷移による発光を示した。その強度は、実施例1のガラスの1/4であった。
【0027】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(実施例13〜14)表2に示した化合物を原料とし、表2のNo13〜14に示した重量割合になるように原料を調合した。原料中の酸素や水分などの不純物をフッ素化して除去するために、フッ素化剤として酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)0.15gを調合したバッチ30gに添加した。このバッチをグラッシーカーボン製の坩堝に入れ、水素の濃度が3%の水素と窒素のガス雰囲気中で、1000℃で30分間、加熱溶融した後、窒素雰囲気中で急冷することによって、Eu2+を含有したガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0028】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、青色光を発光することを目視によって確認した。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、413nmにEu2+:4f5d→4f遷移による発光を示した。その強度は、実施例1のガラスの2/4であった。
【0029】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射中ガラスからは強い青色の蛍光が確認できた。その蛍光スペクトルは、実施例1と同様、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけを示し、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光は確認できなかった。3分間照射を続けても、蛍光スペクトルに変化はなく、ガラスに損傷もなかった。
(比較例1)従来公知のガラス組成、すなわちモル%でAl(PO:1.12%、Ba(PO:1.00%、AlF:32.23%、MgF:6.51%、CaF:24.84%,SrF:22.24%、BaCl:12.00%、Eu:0.06%に従って調合した原料を、900〜1300℃で溶融し、黒鉛型に流し出すことによってガラスを得た。ガラスはその後、20mm×20mm×3mmのサイズに切断加工し、両面を光学研磨した。
【0030】
このガラスは、実施例1と同じ条件で波長365nmの紫外光を照射すると、青色光を発光した。その蛍光スペクトルは図1に破線で示した。図1中破線の413nmのブロードなピークは、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光を示すものであるが、その強度は、実施例1のガラスの1/4程度であった。
【0031】
次に、作製したガラスに波長248nmのKrFエキシマレーザーを照射して、耐紫外光特性を調査した。照射条件は、照射エネルギー250mJ/cm、繰り返し周波数10Hzであった。照射開始直後、ガラスからは強い青色の蛍光が確認できたが、発光色は時間経過とともに青色からピンク色へ変化した。その蛍光スペクトルは図2に破線で示した。図2中破線の蛍光スペクトルは、Eu2+:4f5d→4f遷移による発光だけでなく、Eu3+(J=0,1,2,3,4)遷移による発光も示した。照射を続けると30秒後、照射領域にクラックが入り、ガラスは破損した。
【0032】
本実施例では、発光中心となるEu以外の希土類元素は、LaまたはGdを用いたが、これ以外にも同一族のDy、Yb、Lu、などの希土類元素から選ばれる一種以上の希土類元素を使うこともできる。
【0033】
本実施例では、希土類元素のハロゲン化物はフッ化物のLnF(ただしLnは、Y、La、Gd、Yb、Lu、Dyから選ばれる一種以上の元素)を用いたが、これ以外にもFと同一族のCl、Br、Iなどのハロゲン元素との化合物を使うこともできる。
【0034】
また、前記フッ素化剤との反応に起因する揮発性生成物、還元雰囲気での溶融によっても避けられない微量の酸素原子の混入、およびFe、MnO、その他の不純物の混入は、本発明を妨げるものではない。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】青色蛍光ガラスを波長365nmの紫外光で励起したときの蛍光スペクトル。(図中の実線は実施例1、図中の破線は比較例1)
【図2】青色蛍光ガラスを波長248nmのKrFエキシマレーザーで励起したときの蛍光スペクトル。(図中の実線は実施例1、図中の破線は比較例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%表示で、AlFが15〜55、MgFが0〜20、CaFが0〜25、SrFが0〜20、BaFが0〜35、RXが0〜15(ただし、Rは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる一種以上の元素で、Xは、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)、LnFが0〜25(ただしLnは、Y、La、Gd、Yb、Lu、Dyから選ばれる一種以上の元素)、EuX´が0.01〜5(ただしX´は、F、Cl、Br、Iから選ばれる一種以上の元素)であり、紫外光励起によって青色蛍光を呈することを特徴とする蛍光ガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−248800(P2006−248800A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63955(P2005−63955)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】