説明

静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサ

【課題】樹脂を含有する液体を検知するために用いられる静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサであって、樹脂を洗浄する作業において不純物の付着を防止することにより、イオン交換樹脂の洗浄にかかる液体を注入する注入作業工程及び、液体を排出する排出作業工程の迅速な進行を図ることができると共に、点検コストの低減を図ることができる静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサを提供すること。
【解決手段】静電容量式センサ14のカバー27は、イオン交換樹脂を含有する液体を貯蔵するタンクの側壁内方に突出して形成され、タンク内の水位を測定する静電容量式センサのカバーであって、静電容量式センサ14から所定の間隔寸法をおいて、静電容量式センサ14を内包しうるように形成されている本体部15を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂を含有する液体を検知するために用いられる静電容量式センサのカバー及び、イオン交換樹脂を含有する液体を検知する為に用いられる静電容量式センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントや、原子力発電プラントなどにおいて用いられる復水は、これを高純度に維持する必要があるため、イオン交換樹脂を含有する復水脱塩装置に循環して復水中の不純物を除去している。また、復水脱塩装置が経年使用され、この復水脱塩装置に使用されるイオン交換樹脂の性能が不純物の付着により劣化した場合に、その不純物を除去する性能を回復させる為に、このイオン交換樹脂を樹脂再生塔のタンクに移送してイオン交換樹脂の再生が行われる。
【0003】
ここで、樹脂再生塔のタンク内に移送されたイオン交換樹脂は、タンク内に液体を注入する注入作業工程と、タンク内の液体を排出する排出作業工程とが繰り返されることにより、復水の洗浄により不純物が付着したイオン交換樹脂が液体で洗浄されて樹脂の再生が行われ、樹脂再生塔により再生されたイオン交換樹脂は、再び復水脱塩装置に移送される移送作業工程を経て、復水脱塩装置に戻される。この樹脂再生塔のタンク内に注入及び排出される液体の水位を検知するために、いわゆる静電容量式センサが用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の静電容量式センサは、筒状の主電極と、その主電極を取り巻く筒状の絶縁部材と、その絶縁部材を取り巻く筒状の接地電極と、前記主電極と接地電極との間の静電容量を検知する回路部とを有し、被測定物を収納する容器の側壁に前記主電極と絶縁部材と、接地電極の先端部を貫通して側壁に挿通して取り付けられ、前記主電極と接地電極との間の静電容量の変化を検知して、容器内の液体のレベルを検知するものである。
【特許文献1】特開2002−54978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の静電容量式センサをイオン交換樹脂を含有した液体の水位の測定に用いた場合には、特にイオン交換樹脂は粘着性があるため、排出作業工程の際に、図5に示すように、液体中に存在するイオン交換樹脂の一部が液体中に露呈している主電極及び接地電極部分の上方に付着して堆積していた。この静電容量式センサの主電極及び接地電極にイオン交換樹脂などの不純物が付着すると、静電容量式センサにより測定される静電容量の誤差が静電容量式センサの許容する誤差範囲を超える場合があると共に、その誤差がひどい場合には、容器内の液体の水位を全く測定できない場合もある。
【0006】
液体の水位が誤って計測されたり、液体の水位が全く計測されない事態が生じた場合には、その後の注入作業工程及び、移送作業工程を進行することができず、迅速な作業の効率を図ることができなかった。したがって、このような事態を防ぐ為に、静電容量式センサに付着した不純物を取り除くという点検を頻繁に行わなければならず、点検するためのコストがかかっていた。
【0007】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、樹脂を含有する液体を検知するために用いられる静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサであって、樹脂を洗浄する作業において不純物の付着を防止することにより、イオン交換樹脂の洗浄にかかる液体を注入する注入作業工程及び、液体を排出する排出作業工程の迅速な進行を図ることができると共に、点検コストの低減を図ることができる静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、静電容量式センサから所定の間隔寸法をおいて、静電容量式センサを内方しうるように形成した本体部を有するカバーを用いることで、静電容量式センサにイオン交換樹脂が付着することを防止し、迅速な作業の進行を図ると共に、点検コストの低減を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のような静電容量式センサのカバー及び、静電容量式センサを提供する。
【0009】
(1) イオン交換樹脂を含有する液体を貯蔵するタンクの側壁内方に突出して形成され、タンク内の水位を測定する静電容量式センサのカバーであって、前記静電容量式センサから所定の間隔寸法をおいて、前記静電容量式センサを内包しうるように形成されている本体部を有することを特徴とする静電容量式センサのカバー。
【0010】
(1)記載の発明によれば、静電容量式センサを内方しうるように形成した本体部を有するカバーを用いることで、静電容量式センサにイオン交換樹脂を付着することを防止することができる。静電容量式センサに設けられている電極にイオン交換樹脂などの不純物が付着した場合には、この電極における静電容量の変化を正確に測定することができず、誤動作を生じることなる。したがって、例えば、イオン交換樹脂を洗浄するためにイオン交換樹脂が入っているタンク内に一定水位まで液体を注入する注入作業工程と、排出作業工程とを繰り返すことによりイオン交換樹脂の洗浄を行う場合に、この静電容量式センサにイオン交換樹脂が付着することにより生じる静電容量式センサの誤作動を防止することができ、注入作業工程と排出作業工程との繰り返し工程が途中で停止することなく迅速な作業の進行を図ることができる。また、このような事態を防ぐ為に、イオン交換樹脂などの不純物が静電容量式センサに付着しているか否かを予め点検したり、付着した不純物を取り除いたりする点検コストの低減を図ることができる。
【0011】
(2) 前記本体部は、前記静電容量式センサの長さ寸法よりも長い寸法に形成され、前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された透過部が形成されていることを特徴とする(1)記載の静電容量式センサのカバー。
【0012】
(2)記載の発明によれば、本体部は、静電容量式センサの長さ寸法よりも長い寸法に形成されていることから、この本体部により静電容量式センサの長さ方向全域に亘って静電容量式センサを内包することができ、静電容量式センサの全体をこの本体部により保護することにより、該静電容量式センサに対するイオン交換樹脂などの不純物の付着を防止することができる。また、本体部に設けられた透過部により、タンク内の液体のみを通過させて、静電容量式センサに液体を直接接触させることにより、静電容量式センサにより静電容量を計測できる。また、透過部はタンク内のイオン交換樹脂の通過を防止できることから、静電容量式センサにイオン交換樹脂などの不純物の付着を防止することができる。また、透過部は本体部の一部に設けられていることから、本体部全体が透過部である場合と比較して、本体部の強度を保持することができる。
【0013】
(3) 前記本体部は、軸方向一端が閉塞された円筒状に形成され、前記本体部の軸方向他端には、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部が設けられ、前記本体部の内方には、液体のみを保持しうるように形成されていることを特徴とする(2)記載の静電容量式センサのカバー。
【0014】
(3)記載の発明によれば、円筒状に形成された本体部の軸方向一端が閉塞され、本体部の内方には液体のみを保持しうるように形成されていることから、本体部の内方にイオン交換樹脂が流入することを防止し、静電容量式センサにイオン交換樹脂などの不純物が付着することを防止することできる。また、本体部の軸方向他端には、フランジ部が設けられていることから、該フランジ部を介して静電容量式センサとともにタンクに固定することができ、市販の静電容量式センサに取り付けて使用することができる。
【0015】
(4) 前記透過部は網状に形成され、前記本体部の垂直方向において一対に設けられていることを特徴とする(2)記載の静電容量式センサのカバー。
【0016】
(4)記載の発明によれば、前記透過部は網状に形成されていることから、この網により形成されている複数の穴部を介して本体部の内方に液体を流入させることができ、静電容量式センサにより静電容量を測定することができる。また、透過部は本体部の垂直方向において一対に設けられていることから、例えば、排出作業工程において、タンク内の液体の水位を下げた場合に、タンク内の液体が本体部の垂直方向上方に設けられている透過部から流入して、本体部の垂直方向下方に設けられている透過部から液体を速やかに排出させることができる。このことにより、本体部の内方に液体が停滞することを防止して、本体部の内方に配置されている静電容量式センサにより逐次正確な静電容量の測定を行うことができる。
【0017】
(5) 前記網状の透過部に設けられている複数の穴の直径は、いずれも前記イオン交換樹脂の粒径以下に形成されていることを特徴とする(4)記載の静電容量式センサのカバー。
【0018】
(5)記載の発明によれば、前記網状に形成されている透過部の複数の穴の直径は、いずれもタンク内に貯蔵されているイオン交換樹脂の直径寸法よりも小さい寸法に形成されていることから、この透過部を介して、本体部の内方にイオン交換樹脂などの不純物の流入を防ぐことができる。したがって、本体部の内方に配置されている静電容量式センサにイオン交換樹脂などの不純物が付着することを防止することができる。
【0019】
(6) 原子力発電プラントの復水浄化系設備に設けられた復水脱塩装置に用いられているイオン交換樹脂を洗浄する樹脂再生塔のタンクの側壁内方に突出して形成され、前記タンク内の液体の水位を計測するために設けられている静電容量式センサのカバーであって、前記静電容量式センサの外方において円筒状に配置され、軸方向一端が閉塞されている本体部と、前記本体部の軸方向他端において、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部と、を備え、前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された網状の透過部が設けられていることを特徴とする静電容量式センサのカバー。
【0020】
(6)記載の発明によれば、イオン交換樹脂を洗浄する作業工程の迅速な進行が求められる原子力プラントの復水浄化設備において、この復水浄化設備に設けられた復水脱塩装置に用いられているイオン交換樹脂を洗浄する樹脂再生塔の液体の水位の計測に用いられている静電容量式センサを本体部により保護することにより、イオン交換樹脂などの不純物の付着を防止することができる。したがって、例えば、イオン交換樹脂を洗浄するためにイオン交換樹脂が入っている樹脂再生塔のタンク内に一定水位まで液体を注入する注入作業工程と、排出作業工程とを繰り返すことによりイオン交換樹脂の洗浄を行う場合に、この静電容量式センサにイオン交換樹脂が付着することにより生じる静電容量式センサの誤作動を防止することができ、注入作業工程と排出作業工程との繰り返し工程により行われるイオン交換樹脂を洗浄する作業工程が途中で停止することなく迅速な作業の進行を図ることができる。また、このような事態を防ぐ為に、イオン交換樹脂などの不純物が静電容量式センサに付着しているか否かを予め点検したり、付着した不純物を取り除いたりする点検コストの低減を図ることができる。
【0021】
(7) イオン交換樹脂を含有する液体を貯蔵するタンクの側壁内方に突出して形成され、タンク内の水位を測定する静電容量式センサであって、前記静電容量式センサの外方において円筒状に配置され、軸方向一端が閉塞されている本体部と、前記本体部の軸方向他端において、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部と、を備え、前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された網状の透過部が前記本体部の垂直方向において一対に設けられていることを特徴とする静電容量式センサ。
【0022】
(7)記載の発明によれば、この静電容量式センサの外方には、円筒状に形成され、軸方向一端が閉塞されている本体部が設けられていることから、この静電容量式センサに液体中のイオン交換樹脂が付着することを防止することができる。また、本体部には、タンク内に貯蔵されている液体のみを通過させ、イオン交換樹脂の通過を防止することができる網状の透過部が設けられていることから、この透過部を介して静電容量式センサに液体を接触させて、静電容量を測定することによりタンク内の液体の水位を測定することができる。また、透過部は本体部の垂直方向において一対に設けられていることから、本体部の内方に液体が停滞することを防止して、本体部の内方に配置されている静電容量式センサにより正確な静電容量の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、樹脂を洗浄する作業において、静電容量式センサに液体中のイオン交換樹脂などの不純物の付着を防止することにより、イオン交換樹脂の洗浄にかかる液体を注入する注入作業工程及び、液体を排出する排出作業工程の迅速な進行を図ることができると共に、点検コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0025】
まず、本実施形態の静電容量式センサのカバーを説明するに先立って、当該静電容量式センサのカバーが使用される原子力発電プラントの復水浄化系設備について説明する。
【0026】
図1に、原子力発電プラント1における、復水浄化系設備の概略図を示す。本実施形態にかかる原子力発電プラント1は、核分裂反応させて発生した熱エネルギーで蒸気を発生させる原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2を格納する原子炉格納容器3と、原子炉圧力容器2により発生した蒸気の圧力を利用して回転するタービン4と、タービン4により発生したエネルギーにより電力を発生させる発電機5と、タービン4にエネルギーを与えた後の蒸気を海水等により冷却して凝縮し復水を生成するための復水器6と、復水器6により生成された復水の中の不純物をイオン交換樹脂を介して除去する復水脱塩装置7と、復水脱塩装置7で用いられるイオン交換樹脂の不純物を除去する性能が劣化した場合に、イオン交換樹脂を洗浄することによりイオン交換樹脂の不純物を除去する性能を回復する樹脂再生塔8と、を備え、復水脱塩装置7により不純物が除去された復水は、再び原子炉圧力容器2に移送される。
【0027】
復水脱塩装置7と樹脂再生塔8との間には、復水脱塩装置7で使用されたイオン交換樹脂を樹脂再生塔8に送出する送出管9と、樹脂再生塔8により洗浄されたイオン交換樹脂を復水脱塩装置7に移送して排出する排出管10と、が設けられている。
【0028】
図2を参照して、樹脂再生塔8を説明する。樹脂再生塔8は、イオン交換樹脂を含有する水12を貯蔵する為のタンク11と、タンク11の内側面の上方に設けられ高水位時のタンク11の水の量を検知する為に設けられている静電容量式センサ14aと、タンク11の内側面の下方に設けられ低水位時のタンク11の水の量を検知する為に設けられている静電容量式センサ14bと、を備えている。静電容量式センサ14a,14bの外方には夫々静電容量式センサ14a,14bを内包しうるように形成されたカバー27a,27bが設けられている。静電容量式センサ14a,14bには夫々、静電容量式センサ14a,14bにより検知された静電容量を計測するための回路部28a,26bと、各回路部28a,26bにより検知された静電容量の値を補正するための補正部29a,29bとが接続されている。
【0029】
タンク11は直径約2m、高さ寸法約5mの円筒形状に形成され、タンク11内の上方側の側面には、復水脱塩装置7のイオン交換樹脂13をタンク11内に送出するための送出管9が設けられ、タンク11内の下方側の側面には、樹脂再生塔8のタンク11内で洗浄して再生されたイオン交換樹脂13を復水脱塩装置7に移送して排出する為の排出管10が設けられている。また、タンク11の上部には、タンク11内のイオン交換樹脂13を洗浄するための水を注入する洗浄水注入管25が設けられ、タンク11の下部には、タンク11内でイオン交換樹脂13を洗浄した後の水を排出するための洗浄水排出管26が設けられている。
【0030】
図3を参照して、樹脂再生塔8で用いられる静電容量式センサ14の説明をする。静電容量式センサ14は、静電容量を測定することができる電極を備えた円筒形状のセンサ部23と、センサ部23の軸方向端部において、センサ部23の径方向外方に向けて拡開し、所定の厚さ寸法を有する平面円板状のセンサフランジ部24と、センサフランジ部24において所定の間隔寸法をおいて、センサフランジ部24の厚さ方向に向けて設けられた複数のセンサ取付孔部22が設けられている。図4に示すように、静電容量式センサ14の外方には、静電容量式センサ14を内包しうるように形成されたカバー27が設けられている。
【0031】
図3及び図4を参照して、静電容量式センサ14のカバー27の説明をする。カバー27は、軸方向一端が閉塞された円筒状の本体部15と、本体部15の軸方向他端において、本体部15の径方向外方に向けて拡開し、所定の厚さ寸法を有する平面円板状のカバーフランジ部18と、カバーフランジ部18において、所定の間隔寸法をおいて、カバーフランジ部18の厚さ方向に向けて設けられた複数のカバー取付孔部21が設けられている。
【0032】
この本体部15は、剛性の高いステンレス製により形成されているが、ステンレス以外にも、剛性や耐腐食性を有するものであれば、鉄、アルミ、チタンなどの金属や、エンジニアリングプラスチックにより形成してもよい。また、本体部15は円筒状に形成されていることから、図4に示すように、本体部15内にセンサ部23を挿入することにより、このセンサ部23の外周面から本体部15の内周面までの距離を略同一の所定の間隔寸法をおいてセンサ部23をカバー27で内包することができる。従って、静電容量式センサ14のセンサ部23にカバー27を取り付けた場合であっても、カバー27を取り付ける角度によってセンサ部23によって測定される静電容量に差異が生じないようにすることができる。
【0033】
カバーフランジ部18には、静電容量式センサ14に設けられているセンサフランジ部24と当接してカバーフランジ部18と、センサフランジ部24との間の空隙をなくして密着させるために設けられたパッキン19が設けられている。パッキン19は、所定の厚さ寸法を有し、カバーフランジ部18と略同じ直径寸法を有する平面リング状に形成されている。パッキン19には、所定の間隔寸法をおいて、パッキン19の厚さ方向に向けて設けられた複数の孔部(図示せず)が設けられている。パッキン19に設けられている孔部は、カバーフランジ部18に設けられているカバー取付孔部21と略同一の直径寸法により形成され、後述するネジ20により、カバー取付孔部21と共に貫通しうるように形成されている。パッキン19はゴムパッキンにより形成されているが、カバーフランジ部18と、センサフランジ部24との間の空隙をなくすことができるものであれば、ガスケット等により形成してもよい。
【0034】
図3に示すように、センサフランジ部24の直径寸法と、カバーフランジ部18の直径寸法とは、略同寸法に形成され、約250mmに形成されている。又、センサフランジ部24に設けられている複数のセンサ取付孔部22のそれぞれの取付位置と、カバーフランジ部18に設けられている複数のカバー取付孔部21のそれぞれの取付位置とは、略同位置に形成されている。すなわち、センサ部23の軸方向中心Oから複数のセンサ取付孔部22のそれぞれまでの間隔寸法と、カバー27の軸方向中心Oから複数のカバー取付孔部21のそれぞれまでの間隔寸法とは略同寸法に形成され、かつ、センサ部23の軸方向中心O位置を中心とした互いに隣接する2つのセンサ取付孔部22,22の間の角度θと、カバー27の軸方向中心O位置を中心とした互いに隣接する2つのカバー取付孔部21,21の間の角度θとは同じ角度に形成されている。例えば、センサ取付孔部22、カバー取付孔部21の数が6つとした場合には、互いに隣接する2つのセンサ取付孔部22,22の間の角度θ及び、互いに隣接する2つのカバー取付孔部21,21の間の角度θは、いずれも60度に形成されている。
【0035】
図2、図3に示すように、静電容量式センサ14と、カバー27とは、センサ取付孔部22と、カバー取付孔部21とが一致するように、タンク11内の側壁に配置され、さらに、複数のネジ20により、取り外し可能にタンク11内の側壁に固定される。また、センサ部23の軸方向の長さ寸法は約200mmに形成され、カバー27の軸方向の長さ寸法は、センサ部23の長さ寸法よりも長い長さ寸法である約300mm程度に形成されている。したがって、本体部15によってセンサ部23の長さ方向全域に亘って内包することができることから、センサ部23にイオン交換樹脂13などの不純物が付着することを防止することができる。
【0036】
図3に示すように、本体部15の側面には、タンク11内に貯蔵されている水などの液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂13の通過を防止しうるように形成された透過部16,17が設けられている。透過部16,17は、本体部15の軸中心夫々反対側に一対にして設けられ、複数の金属線が交差して網状に形成されている。網状に形成され複数の穴部が設けられている各穴の直径はいずれもタンク11内のイオン交換樹脂の粒径以下に形成され、イオン交換樹脂を含有する水12中のイオン交換樹脂13が通過しない径寸法に形成されている。したがって、イオン交換樹脂を含有する水12のうち、粒径が約1mm前後であるイオン交換樹脂13以外の水のみを静電容量式センサ14のセンサ部23に接触させることができ、センサ部23付近の静電容量を正確に測定することができ、現在のタンク11内の水の容量を計測することができる。
【0037】
各透過部16,17は、本体部15の外周面に沿って略長方形状に形成され、長さ方向が水平に配置されている本体部15の垂直方向において、一対に設けられている。透過部16,17の長さ寸法は、50〜150mm程度に形成され、本体部15の長さ寸法よりも短い寸法に形成されていることから、本体部15によりカバー27全体の強度を保持しつつ、透過部16,17により、液体を通過させて本体部15に内包されて保持されているセンサ部23に水を接触させることができるとともに、イオン交換樹脂13の通過を防止して、センサ部23にイオン交換樹脂13が接触することを防止することができる。
【0038】
また、各透過部16,17は、垂直方向において一対に設けられていることから、タンク11内の液体を排出させる排出作業工程において、タンク11内の水の水位を下げたときには、タンク11内の水は、本体部15の垂直方向上方に設けられている透過部16から流入して、本体部15の垂直方向下方に設けられている透過部17から排出される。したがって、本体部15の内方に水を停滞させることなく、タンク11内の液体の水位を正確に測定することができる。
【0039】
この網状の透過部16,17は耐腐食性の高いステンレスにより形成されているが、ステンレス以外にも、錆やある程度の強度を有するものであれば、鉄やアルミ、チタンなどの金属や、エンジニアリングプラスチックなどの樹脂により形成してもよい。
【0040】
次に、図2を参照して本実施形態における樹脂再生塔8で行われるイオン交換樹脂13を洗浄する作業工程で使用される静電容量式センサ14のカバー27の作用について説明する。
【0041】
初めに、送出作業工程により、復水脱塩装置7から、不純物を含有したイオン交換樹脂13が送出管9を介して、樹脂再生塔8のタンク11内に送出される。次に、注入作業工程により、タンク11内に送出されたイオン交換樹脂13を洗浄するための水が洗浄水注入管25を介してタンク11内に注入される。このとき、タンク11の内側面の上方に設けられた静電容量式センサ14aのセンサ部23aが水に浸ることにより、回路部28aにより、センサ部23aで検知される静電容量が増加したことを検知して、タンク11内の水が所定の満水状態となったことを検知することができる。
【0042】
注入作業工程においてタンク11内に注入された水により、イオン交換樹脂13が洗浄された後には、排出作業工程により、洗浄水排出管26を介して、タンク11内の水がタンク11外へと排出される。このとき、タンク11の内側面の下方に設けられた静電容量式センサ14bのセンサ部23bが水中から露呈することにより、回路部28bにより、センサ部23bで検知される静電容量が減少したことを検知して、タンク11内の水が所定の空状態となったことを検知することができる。そして、再び注入作業工程により、イオン交換樹脂13を洗浄するための水が洗浄水注入管25を介してタンク11内に注入され、同様に排出作業工程により、タンク11内の水が排出される作業工程が繰り返される。
【0043】
ここで、水の中に含有するイオン交換樹脂13は、粘着性を有するとともに、水よりも若干大きい比重(1.05程度)を有し、水よりも重いことから、この注入作業工程及び、排出作業工程によるイオン交換樹脂13の洗浄工程を繰り返すことにより、イオン交換樹脂13がタンク11内に設けられている静電容量式センサ14等に付着するおそれがあるが、本実施例にあっては、図4に示すように、静電容量式センサ14を内包しうるように形成された本体部15を有するカバー27を設けたので、上述のイオン交換樹脂13を洗浄する作業工程を繰り返した場合であっても、樹脂再生塔8のタンク11内のイオン交換樹脂13は、カバー27の本体部15及び透過部16,17に付着するに留まり、直接静電容量式センサ14のセンサ部23に付着することを防止することができることから、タンク11内の静電容量を正確に測定することができ、タンク11内の水の水位を正確に検知することができる。このことから、イオン交換樹脂を洗浄する注入作業工程及び、排出作業工程を迅速に行うことができ、イオン交換樹脂が静電容量式センサ14のセンサ部23に付着することにより生じる不具合を点検する為のコストを低減することができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、原子力発電プラントを例にとって静電容量式センサ14のカバーの説明をしたが、本実施形態にかかる静電容量式センサのカバーは、火力発電プラントの復水浄化系設備においても実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例に係る原子力発電プラントの復水浄化系設備を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る樹脂再生塔を示す図である。
【図3】本発明の静電容量式センサとカバーを示す図である。
【図4】本発明のカバーを静電容量式センサに取り付けた状態を示す図である。
【図5】従来例の静電容量式センサを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 原子力発電プラント
2 原子炉圧力容器
3 原子炉格納容器
4 タービン
5 発電機
6 復水器
7 復水脱塩装置
8 樹脂再生塔
9 送出管
10 排出管
11 タンク
12 イオン交換樹脂を含有する水
13 イオン交換樹脂
14 静電容量式センサ
14a 静電容量式センサ(高水位時)
14b 静電容量式センサ(低水位時)
15 本体部
15a 本体部
15b 本体部
16 透過部
17 透過部
18 カバーフランジ部
19 パッキン
20 ネジ
21 カバー取付孔部
22 センサ取付孔部
23 センサ部
23a センサ部
23b センサ部
24 センサフランジ部
25 洗浄水注入管
26 洗浄水排出管
27 カバー
27a カバー
27b カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を含有する液体を貯蔵するタンクの側壁内方に突出して形成され、タンク内の水位を測定する静電容量式センサのカバーであって、
前記静電容量式センサから所定の間隔寸法をおいて、前記静電容量式センサを内包しうるように形成されている本体部を有することを特徴とする静電容量式センサのカバー。
【請求項2】
前記本体部は、前記静電容量式センサの長さ寸法よりも長い寸法に形成され、
前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された透過部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の静電容量式センサのカバー。
【請求項3】
前記本体部は、軸方向一端が閉塞された円筒状に形成され、
前記本体部の軸方向他端には、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部が設けられ、
前記本体部の内方には、液体のみを保持しうるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の静電容量式センサのカバー。
【請求項4】
前記透過部は網状に形成され、前記本体部の垂直方向において一対に設けられていることを特徴とする請求項2記載の静電容量式センサのカバー。
【請求項5】
前記網状の透過部に設けられている複数の穴の直径は、いずれも前記イオン交換樹脂の粒径以下に形成されていることを特徴とする請求項4記載の静電容量式センサのカバー。
【請求項6】
原子力発電プラントの復水浄化系設備に設けられた復水脱塩装置に用いられているイオン交換樹脂を洗浄する樹脂再生塔のタンクの側壁内方に突出して形成され、前記タンク内の液体の水位を計測するために設けられている静電容量式センサのカバーであって、
前記静電容量式センサの外方において円筒状に配置され、軸方向一端が閉塞されている本体部と、
前記本体部の軸方向他端において、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部と、を備え、
前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された網状の透過部が設けられていることを特徴とする静電容量式センサのカバー。
【請求項7】
イオン交換樹脂を含有する液体を貯蔵するタンクの側壁内方に突出して形成され、タンク内の水位を測定する静電容量式センサであって、
前記静電容量式センサの外方において円筒状に配置され、軸方向一端が閉塞されている本体部と、
前記本体部の軸方向他端において、前記静電容量式センサとともに、前記タンク内に固定するように形成されたフランジ部と、を備え、
前記本体部には、前記タンク内に貯蔵されている液体を通過させるとともに、イオン交換樹脂の通過を防止しうるように形成された網状の透過部が前記本体部の垂直方向において一対に設けられていることを特徴とする静電容量式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−236671(P2009−236671A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82934(P2008−82934)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】