説明

静電容量式タッチコントロール装置及びそれに応用されるデータ伝送方法

【課題】パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置及びその方法の提供。
【解決手段】静電容量式タッチコントロール装置は複数の集積回路が走査する一つのタッチパネルを有し、各集積回路は各自が一つの走査エリアを請け負い、物品が長時間、該複数の集積回路中のある一つ或いはある一つの集積回路が請け負う走査エリアに進入しなければ、該ある一つ或いは該ある一つの集積回路がスリープモードに進入して走査の周波数を下げ、これによりパワー消耗を節約する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の静電容量式タッチコントロール装置及びそれに応用されるデータ伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な応用では、大サイズの静電容量式タッチスクリーンはいずれも表面容量式センシング技術を使用している。但し表面容量式センシング技術はスクリーンの各端点に流れる一組の電流の違いにより手指の位置を判別し、これによりタッチパネルに接触する手指の数が2本以上の時、報告される電流組数は1組であり、ゆえに一組の絶対座標位置しか識別できず、例えば二次元マトリクスにあってわずかに一組のX,Yパラメータのみ報告できるだけであるため、多指タッチコントロールの機能を達成することはできない。
【0003】
全てのタッチポイントを位置決め可能な(All Points Addressable;APA)投影型容量センシング技術は多指タッチコントロールの機能を達成できるが、それは各ポイントセンサに対して充電放電の動作を行なう必要があり、マトリクス形状のタッチパネルでは、X軸とY軸のトレースが増加する時、APA型投影型容量式の画素数は急激に増加し、このためフレームレートが下降し、ゆえに大サイズタッチパネルの応用には不適用である。
【0004】
また、一種の軸交錯(Axis Intersect;AI)型表面容量式センシング技術も同様に多指タッチコントロールの機能を達成可能である。図1には伝統的な小サイズのタッチパネルに応用されるAI型表面容量式センシング技術を示す。それは小サイズタッチパネル10及びタッチパネル10を走査するAI型表面容量式タッチコントロールIC12を有する。最大で22本のトレースを支援可能なAI型表面容量式タッチコントロールIC12を例として説明すると、X軸及びY軸にそれぞれ10本のトレースTRX1〜TRX10及びTRY1〜TRY10を有する小サイズタッチパネル10に応用する時のフレームレートは悪くないものの、AI型表面容量式タッチコントロールIC12をX軸及びY軸にそれぞれ40本のトレースTRX1〜TRX40及びTRY1〜TRY40を有する大サイズタッチパネル14に応用する場合は、図2に示されるように、AI型表面容量式タッチコントロールIC12が走査可能な総トレース数量を増加しなければならない。しかし、タッチコントロールIC12が毎回コンデンサに対して充電放電を行なうために費やす時間は、全体のタッチパネル応用におけるフレームレートと較べて非常に大きく、すなわちフレームレート問題はタッチコントロールIC12の各フレームでのコンデンサに対する充電放電により決定され、ゆえに走査可能トレース数を増加する方法を大サイズタッチパネル14に応用すると、非常に大きな欠点を有することになり得る。すなわち全体の応用上、フレームレートの下降が厳重となり、これにより応用端の性能に影響が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、一種のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置は第1集積回路が走査するタッチパネル、及び該第1集積回路からの走査データを演算する第2集積回路を有し、そのうち、該第1集積回路は、設定時間内にそれが走査を請け負う走査エリア内への物品の進入を検出しない時、スリープモードに進入してパワー消耗を節約する。該第2集積回路も該タッチパネルの走査作業に参与可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置及びその方法を提供している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図3は二つ以上の投影型容量タッチコントロールICを使用した静電容量式タッチコントロール装置20を示す。そのうち、四つのAI型の投影型容量タッチコントロールIC24、26、28及び30が副タッチコントロールICとされて大サイズのタッチパネル22を走査するのに用いられる。仮に該タッチパネル22が80本のトレースを具備するとすると、副タッチコントロールIC24、26、28及び30はそれぞれ20本のトレースを走査することでフレームレートを向上する。そのうち、各副タッチコントロールIC24、26、28及び30は一つの軸方向の走査を請け負うだけであるか、或いは一つ以上の軸方向の走査を請け負い、主タッチコントロールIC32は副タッチコントロールIC24、26、28及び30からの走査データを受け取り並びに最後の全体演算を実行し、その後、主タッチコントロールIC32が更に必要な応用に対して後続の動作を実行する。主タッチコントロールIC32は静電容量式タッチコントロール装置20の全体動作を制御し並びに外部とのコミュニケーションを請け負う。図3の点線に示されるように主タッチコントロールIC32が走査作業に参与する必要がある場合、副タッチコントロールIC24、26、28及び30も一部の演算を行うことが可能であり、これにより主タッチコントロールIC32の負荷を減らすことができる。
【0009】
手指がタッチパネル22に接触する面積は大サイズのタッチパネル22に対して非常に小さく、且つ大多数の応用では、多くの時間、あるエリアのみでタッチ操作が実行され、このため多数の副タッチコントロールIC24、26、28及び30が大部分の時間、スリープモード(suspend mode)に進入することで節電できる。例えば手指が長時間、ある副タッチコントロールIC24、26、28及び30が請け負う走査エリアに進入しない時、該副タッチコントロールIC24、26、28及び30はスリープモードに進入した後、比較的長い時間間隔を置かねば、その請け負う走査エリアの走査を行えない。例えば副タッチコントロールIC24、26、28及び30は正常モード下で約4ms間隔で走査を行うが、スリープモードに進入した後は、副タッチコントロールIC24、26、28及び30は約40ms間隔で走査を行う。
【0010】
図4はスリープモードを加えることで全体パワー消耗を減らす実施例を示す。静電容量式タッチコントロール装置40中、2N 個のAI型の投影型容量タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52を副タッチコントロールICとしてタッチパネル(図示せず)を走査して走査データを生成する。手指が長時間ある副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52の請け負う走査エリアに進入しなければ、該副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52はスリープモードに進入して走査周波数を下げ、これによりパワー消耗を節約する。主タッチコントロールIC54はクロックCLKを各副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52に向けて出力し、並びに副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52内の走査データを読み取り演算を行う。この実施例中、副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52はそれぞれピンPN[M−1:0]を有して走査データを含む信号SDA[M−1:0]を主タッチコントロールIC54に送り、且つ副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52のデータが相互に影響を与えるのを防止するため、主タッチコントロールIC54はアドレス信号Addr[N−1:0]を各副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52に送り、走査データを出力する必要のある副タッチコントロールICを決定する。例えば、現在ピンAddr[N−1:0]が0であるなら、副タッチコントロールIC42が走査データを主タッチコントロールIC54に伝送し、この時、その他の副タッチコントロールIC44、46、48、50及び52のピンのPN[N−1:0]はいずれも高抵抗或いはフローティング状態にある。このほか、主タッチコントロールIC54は信号Typesel[K−1:0]を出力して副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52に送り、データ形式を選択し、プルダウン抵抗RPLは副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52の各一隻のピンPN[M−1:0]とアース端子GNDの間に接続される。
【0011】
主タッチコントロールIC54が副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52内の走査データを読み取る時は、副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52はまず数個のタイミングのパスワードを送出してパケット開始確認コードとなす。図5は伝送データが1ビットとされ、すなわちM=1の状況を例としており、正常な状況で副タッチコントロールICが主タッチコントロールICに伝送する信号SDA[M−1:0]のタイミング図であり、そのうち波形60は信号SDA[M−1:0]、波形62はクロックCLKを示す。図5の実施例中、信号SDA[M−1:0]が1ビットでパスワードが2つのタイミングとされ、副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52はアドレス信号Addr[N−1:0]が自己を指向すると検出すると、信号SDA[M−1:0]をプルアップし、主タッチコントロールIC54がクロックCLKを送るのを待ちデータを改変する。主タッチコントロールIC54はクロックが正縁の時にデータを読み取り、ゆえに正常な伝送モードでは、主タッチコントロールIC54はまず信号SDA[M−1:0]がまず「1」とされ更に「0」とされる開始確認コードを有することを検出してから、データ読み取りを開始する。手指がある副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52が請け負う走査エリアに長時間進入しない時、該副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52はスリープモードに進入し、比較的長い間隔を置かねばその請け負うエリアを走査できない。該副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52がスリープモードに進入しても、主タッチコントロールIC54はなおも各フレームごとにデータを必要とし、前述したように、ただ副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52は主タッチコントロールIC54が提供するアドレス信号Addr[N−1:0]が自己を指向すると知った時のみに、信号SDA[M−1:0]を「0」或いは「1」と設定でき、その他の時はいずれも高抵抗或いはフローティング状態となり、これにより主タッチコントロールIC54が、ある副タッチコントロールIC42、44、46、48、50及び52に対してデータを要求する時、例えば副タッチコントロールIC42に対してデータを要求する時、もし副タッチコントロールIC42がスリープモードで応答不能であれば、プルダウン抵抗RPLによりこの時のピンPL[M−1:0]上のレベルが0ひ引き上げられ、主タッチコントロールIC54が検出する信号SDA[M−1:0]上には「10」である開始確認コードがなく、これにより副タッチコントロールIC42をスキップして次の副タッチコントロールIC44にデータ応答を要求する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】伝統的な、小サイズのタッチパネルに応用されるAI型表面容量式センシング技術の表示図である。
【図2】伝統的な、大サイズのタッチパネルに応用されるAI型表面容量式センシング技術の表示図である。
【図3】本発明が応用される、二つ以上の投影型容量タッチコントロールICを使用した静電容量式タッチコントロール装置の表示図である。
【図4】本発明の副タッチコントロールICがスリープモードに進入することで全体パワー消耗を減らす実施例表示図である。
【図5】本発明の正常状況で副タッチコントロールICが主タッチコントロールICに伝送する信号SDA[M−1:0]のタイミング図である。
【符号の説明】
【0013】
10 タッチパネル 12 タッチコントロールIC
14 タッチパネル 20 静電容量式タッチコントロール装置
22 タッチパネル
24、26、28、30 副タッチコントロールIC
32 主タッチコントロールIC
40 静電容量式タッチコントロール装置
42、44、46、48、50及び52 副タッチコントロールIC
54 主タッチコントロールIC
60 信号SDA[M−1:0]の波形
62 クロックCLKの波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、
タッチパネルと、
該タッチパネルを走査する第1集積回路と、
該第1集積回路からの走査データを受けて演算する第2集積回路と、
を有し、そのうち、該第1集積回路は設定時間内に物品のその負担する走査エリアへの進入を検出しない時、スリープモードに進入して走査の周波数を下げることを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項2】
請求項1記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第1集積回路は該走査データを出力するための少なくとも一つのピンを有することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項3】
請求項2記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第2集積回路は該少なくとも一つのピンのレベルを検出し該走査データを読み取るか否かを判断することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項4】
請求項3記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該ピン及び参考電圧の間に接続された抵抗を有し、この抵抗は該第1集積回路が第2モードにある時、該ピンのレベルを該参考電圧まで引き上げることを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項5】
請求項1記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第1集積回路がAI型の投影型容量タッチコントロールICを有することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項6】
請求項1記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第2集積回路が選択信号を出力して該第1集積回路の該走査データのデータ形式を選択することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項7】
請求項1記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第2集積回路がクロックを該第1集積回路に向けて出力することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項8】
請求項1記載のパワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置において、該第2集積回路が該タッチパネルを走査することを特徴とする、パワー消耗を節約できる静電容量式タッチコントロール装置。
【請求項9】
静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法において、該静電容量式タッチコントロール装置はタッチパネルと、該タッチパネルの割り当てられた走査エリアを走査する第1集積回路と、該第1集積回路からの走査データに対して演算を行う第2集積回路とを有し、この方法は、
物品の該走査エリアへの進入を検出した時、高周波で該走査エリアを走査するステップ、
設定時間内に、物品の該走査エリアへの進入を未検出の時、低周波数で該走査エリアを走査するステップ、
を有することを特徴とする、静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法。
【請求項10】
請求項9記載の静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法において、該第1集積回路が確認コードを提供することで該第2集積回路が該走査データを読み取るか否かを判断するステップを更に有することを特徴とする、静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法。
【請求項11】
請求項9記載の静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法において、該走査データのデータ形式を決定するステップを更に有することを特徴とする、静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法。
【請求項12】
請求項9記載の静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法において、該第2集積回路がクロックを該第1集積回路に提供するステップを更に有することを特徴とする、静電容量式タッチコントロール装置のパワー消耗を節約する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−252235(P2009−252235A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152752(P2008−152752)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(503031488)義隆電子股▲ふん▼有限公司 (42)
【Fターム(参考)】