説明

静電容量式障害物センサ及び当該障害物センサを備えた車両の開閉システム

【課題】開閉体を有する開口部における障害物の存在及び開閉体の位置を良好に検出可能な静電容量式障害物センサを提供する。
【解決手段】異なる周波数の交流信号を出力する複数の交流信号源15,16と、開閉体端部と枠体端部との何れか一方に設けられて開閉体端部と枠体端部との間に存在する障害物9との間の静電容量Csを検出する検出電極5と、開閉体端部及び枠体端部の他方に設けられた遮蔽電極7と、検出電極5及び遮蔽電極7に印加される交流成分f1,V1に基づいて、検出電極5と障害物9との間の静電容量Csを求め、障害物9が存在するか否かを判定すると共に、遮蔽電極7に印加されず検出電極5に印加される交流成分f2,V2に基づいて、検出電極5と遮蔽電極7との間の静電容量を求め、開閉体端部と枠体端部との距離を判定する制御部20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体を有する開口部において障害物を検出する静電容量式障害物センサに関する。また、そのような静電容量式障害物センサを備えた車両の開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動開閉式の電動スライドドアなどの自動開閉システムが実用化されている。このような自動開閉システムは、ドアとドア枠との間に人体や衣服が挟み込まれて人体に衝撃が加わったり、ドアとドア枠との間にその他の物体が挟み込まれて当該自動開閉システムを損傷したりする可能性を有している。そこで、ドアに接触したり、ドアとドア枠との間に存在したりする人体等の障害物を検出するために、障害物センサを搭載した自動開閉システムが提案されている。障害物センサとしては、特開2005−106665号公報(特許文献1)や、特開2003−075481号公報(特許文献2)に記載された静電容量検出回路を用いた静電容量式障害物センサが知られている。
【0003】
しかし、静電容量式障害物センサは、閉まる間際でドアとドア枠とが近接して対向する際に、障害物が有る場合と同じ検出結果を出力する可能性がある。この可能性に鑑みて、特開2007−023585号公報(特許文献3)には、ドアの位置に応じて障害物センサの感度を変える車両用自動開閉装置が提案されている。具体的には、ドアが閉まる間際で障害物センサの感度が下げられる。
【0004】
一方、特開2005−240428号公報(特許文献4)には、閉まる間際において障害物センサの感度を下げることなく、ドアが閉まる際の全行程において良好に障害物を検出可能な障害物検出装置の技術が記載されている。具体的には、可動するドア側に静電容量センサが備えられ、固定されたドア枠のドアと対向する側に遮蔽電極が備えられる。そして、センサ電極と遮蔽電極とに略同一の電位が印加される。これにより、センサ電極と遮蔽電極との間に形成される静電容量が等価的に打ち消され、ドア枠が障害物として検出されることが抑制される。但し、センサ電極と遮蔽電極とが非常に近接すると両電極による電界が重畳される。この時、両電極が略同電位の印加を受けていると、両電極に挟まれた空間は等電位化され、この空間に障害物が存在しても静電容量に変化が生じなくなる。そこで、センサ電極近傍の電界が所定の設定レベルに保たれるように、遮蔽電極への印加電圧が可変制御される。これにより、両電極に挟まれた空間に電界強度勾配が形成されて、当該空間に存在する障害物の検知感度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−106665号公報(第32〜37段落等)
【特許文献2】特開2003−075481号公報(第15〜22段落等)
【特許文献3】特開2007−023585号公報(第25〜27段落等)
【特許文献4】特開2005−240428号公報(第9〜20、37〜40段落等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に記載された障害物検出装置は、ドアが閉まる際の全行程において良好に障害物を検出可能な優れたものである。しかし、障害物検出装置が、ドアの位置に応じて遮蔽電極の印加電圧を可変制御するには、ドアとドア枠との位置関係、即ちドアの位置を検出する必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、開閉体を有する開口部における障害物の存在及び開閉体の位置を良好に検出可能な静電容量式障害物センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る静電容量式障害物センサの特徴構成は、
異なる周波数の交流信号を出力する複数の交流信号源と、
開口部を開閉可能な開閉体の開口側の開閉体端部と、前記開閉体により前記開口部が閉じられる際に当該開閉体端部と当接する枠体端部との何れか一方に設けられ、前記複数の交流信号源から出力される異なる周波数の交流信号が合成された交流信号を、基準インピーダンスを介して印加されて、前記開閉体端部と前記枠体端部との間に存在する障害物との間の静電容量を検出する検出電極と、
前記開閉体端部及び前記枠体端部の他方に設けられ、当該他方の端部を前記検出電極から遮蔽すると共に、複数の前記交流信号源の内、1つ以上の前記交流信号源を除く1つ以上の前記交流信号源により、前記検出電極に印加される交流成分と略同一の位相を有する交流成分が印加される遮蔽電極と、
前記検出電極及び前記遮蔽電極に印加される交流成分を通過させ、前記遮蔽電極に印加されず前記検出電極に印加される交流成分の通過を阻止する第1フィルタと、
前記検出電極及び前記遮蔽電極に印加される交流成分の通過を阻止し、前記遮蔽電極に印加されず前記検出電極に印加される交流成分を通過させる第2フィルタと、
前記第1フィルタを通過した信号に基づいて、前記検出電極と前記障害物との間の静電容量を求め、当該静電容量に基づいて前記開閉体端部と前記枠体端部との間に前記障害物が存在するか否かを判定すると共に、前記第2フィルタを通過した信号に基づいて、前記検出電極と前記遮蔽電極との間の静電容量を求め、当該静電容量に基づいて前記開閉体端部と前記枠体端部との距離を判定する制御部と、
を有する点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、障害物が存在する場合には、検出電極及び遮蔽電極に印加される周波数成分に基づいて、遮蔽電極などの他の物による影響が少ない状態で、検出電極と障害物との間に形成される静電容量を求めることができる。その結果、制御部は、障害物の存在を確実に検出することができる。一方、障害物が存在しない場合には、制御部において求められる静電容量は、検出電極と遮蔽電極との間の静電容量となる。検出電極と遮蔽電極とにより形成される容量は、検出電極と遮蔽電極との電極間距離に反比例する。従って、制御部は、検出電極と遮蔽電極との電極間距離、つまり開閉体端部と前記枠体端部との距離を精度よく測定し、判定することができる。その結果、開閉体を有する開口部における障害物の存在及び開閉体の位置を良好に検出可能な静電容量式障害物センサを提供することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサは、
前記第1フィルタが、前記基準インピーダンスへの入力前の信号をフィルタリングする入力側第1フィルタと、前記基準インピーダンスを通過後の信号又はこれと等価の信号をフィルタリングする出力側第1フィルタとにより構成され、
前記第2フィルタが、前記基準インピーダンスへの入力前の信号をフィルタリングする入力側第2フィルタと、前記基準インピーダンスを通過後の信号又はこれと等価の信号をフィルタリングする出力側第2フィルタとにより構成され、
前記入力側第1フィルタと前記出力側第1フィルタとが等価なフィルタリング特性を有して構成され、
前記入力側第2フィルタと前記出力側第2フィルタとが等価なフィルタリング特性を有して構成されると好適である。
【0011】
フィルタリング特性が等価なフィルタを用いて入力側及び出力側のフィルタが構成されるので、入力側及び出力側のフィルタを有して構成される第1フィルタによる減衰及び位相変動が同等となる。第2フィルタについても同様である。従って、第1フィルタを通過後の信号又はこれと等価の信号に基づく演算結果、及び第2フィルタを通過後の信号又はこれと等価の信号に基づく演算結果において、電圧比及び位相差の変動による測定誤差が抑制される。
【0012】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサは、
前記検出電極に印加される信号が入力され、高入力インピーダンス且つ利得1のフォロワ回路を備え、
前記出力側第1フィルタは、前記フォロワ回路の出力信号をフィルタリングし、前記出力側第2フィルタは、前記フォロワ回路の出力信号をフィルタリングすると好適である。
【0013】
出力側第1フィルタ及び出力側第2フィルタへ入力される信号は、検出電極に印加される信号である。一般的にフィルタは入力インピーダンスが高くないので、検出電極に印加される信号に影響を与える可能性がある。フォロワ回路は、入力インピーダンスが非常に高いので、検出電極に印加される信号に与える影響を大きく抑制することができる。その結果、検出精度の高い静電容量式障害物センサを提供することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサの前記検出電極は、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号が演算増幅器を用いた加算器により加算されて生成される交流信号を、前記基準インピーダンスを介して印加されるものであり、
前記加算器は、前記検出電極に印加される交流信号を、フィードバック抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成されると好適である。
【0015】
この構成によれば、検出される静電容量の大きさによらず検出電極に印加される交流信号の振幅を一定に保て、かつ交流信号源が出力する交流信号に対する検出電極に印加される交流信号の位相変動を抑制できる。従って、遮蔽電極に印加される交流成分の振幅と検出電極に印加される交流成分の振幅の比及び位相差を、検出される静電容量の大きさによらず一定にすることができる。つまり、検出電極や、検出電極と基準インピーダンスとフィードバック抵抗とを接続する配線に起因する静電容量が変動した場合でも、前記遮蔽電極に印加される交流成分の振幅及び位相の調整を行う必要が無い。
【0016】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサの前記検出電極は、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号が演算増幅器を用いた加算器により加算されて生成される交流信号を、前記基準インピーダンスを介して印加されるものであり、
前記加算器は、前記フォロワ回路の出力信号を、フィードバック抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成されると好適である。
【0017】
検出電極に印加される交流信号を、フィードバック抵抗を介して演算増幅器の反転入力端子にフィードバックすることによって、フィードバック回路を構成することもできる。但し、この構成の場合には、フィードバック抵抗を流れる電流は、基準インピーダンスを流れる。その結果、静電容量式障害物センサの出力にオフセットの要因となったり、加算器として用いられる演算増幅器の出力範囲を超えたりする可能性が生じる。このため、フィードバック抵抗には、しばしば高抵抗値が要求される。しかし、上記構成のように、フォロワ回路を介して、フィードバック回路を構成することにより、フィードバック抵抗を流れる電流は基準インピーダンスを流れなくなる。従って、フィードバック抵抗の抵抗値を小さくすることができる。
【0018】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサは、差動増幅器を用いて、前記基準インピーダンスへの入力前の信号と、前記基準インピーダンスを通過後の信号の差分に比例した信号を求め、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタと等価のフィルタにより周波数分離を行った後、制御部において判定を行ってもよい。尚、前記基準インピーダンスを通過後の信号は、前記基準インピーダンスを通過後、前記フォロワ回路を介して出力される信号など、前記基準インピーダンスを通過後の信号と等価な信号を含む。
【0019】
第1フィルタや第2フィルタは、受動素子を用いた帯域通過フィルタに限らず、直交同期検波回路などによって構成することも可能である。この構成によれば、静電容量検出センサの構成の簡略化や、制御部における処理の簡略化が可能となる。
【0020】
また、本発明に係る静電容量式障害物センサは、
演算増幅器を用いて構成され、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号を加算して、前記基準インピーダンスを介して前記検出電極に印加される交流信号を生成する加算器と、
前記加算器により加算されて生成される交流信号が入力され、前記基準インピーダンスをフィードバックインピーダンスとし、前記加算器を構成する演算増幅器とは別の演算増幅器を用いて構成されたフォロワ回路とを備え、
前記加算器は、前記加算器を構成する演算増幅器の出力信号を、フィードバック抵抗を介して当該演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有し、
前記検出電極は、前記フォロワ回路を構成する演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記入力側第1フィルタ及び前記入力側第2フィルタは、前記フォロワ回路を構成する演算増幅器の出力信号をフィルタリングし、
前記出力側第1フィルタ及び前記出力側第2フィルタは、前記加算器を構成する演算増幅器の出力信号をフィルタリングすると好適である。
【0021】
上述したように、加算器を構成する演算増幅器のフィードバック抵抗には、しばしば高抵抗値が要求される。しかし、本構成によれば、フィードバック抵抗を流れる電流は基準インピーダンスを流れなくなる。従って、フィードバック抵抗の抵抗値を小さくすることができる。尚、加算器を構成する演算増幅器の出力信号は、フォロワ回路を構成する演算増幅器の非反転入力端子へ入力される信号である。フォロワ回路を構成する演算増幅器の非反転入力端子と反転入力端子とはバーチュアルショートの関係により等価な信号が入力されることになる。基準インピーダンスを通過後の信号は、当該反転入力端子へ入力される信号であるから、出力側第1フィルタ及び出力側第2フィルタは、基準インピーダンスを通過後の信号と等価な信号をフィルタリングすることになる。
【0022】
また、本発明に係る車両の開閉システムは、上記何れかの構成の静電容量式障害物センサを備えて構成される。
【0023】
開閉システムは、当該静電容量式障害物センサを備えることにより、開閉体の進行状態や位置に基づいて、閉まり際の制御など実施することができる。また、開口部が閉じられる際に障害物が存在する場合には、障害物が検出され、例えば、開閉体を反転させて開口部を開状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】静電容量式障害物センサが搭載される車両の一例を模式的に示す側面図
【図2】図1の車両の開口部における障害物センサの構成例を模式的に示す説明図
【図3】第1実施形態の障害物センサの構成例を模式的に示すブロック図
【図4】検出電極に印加される信号の周波数特性及び波形の例を模式的に示す説明図
【図5】遮蔽電極に印加される信号の周波数特性及び波形の例を模式的に示す説明図
【図6】第2実施形態の障害物センサの構成例を模式的に示すブロック図
【図7】第3実施形態の障害物センサの構成例を模式的に示すブロック図
【図8】第4実施形態の障害物センサの構成例を模式的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔概要〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の障害物センサ(静電容量式障害物センサ)が搭載される車両1の一例を模式的に示す側面図である。図2は、図1に示す車両1の開口部2における障害物センサの構成例を模式的に示す説明図である。以下に示す種々の実施形態においては、開口部として、図1に示すように、車両に設けられた開口部としてのスライドドアを例として説明する。しかし、本発明における開口部は、例えば車両においては、スライドドアに限定されるものではなく、スイングタイプのドア、バックドア、窓、サンルーフ等も含むものである。
【0026】
図1に示すように、車両1は、スライドドア(開閉体)3とドア枠(枠体)4とを有している。スライドドア3は、車両の乗降口である開口部2を開閉可能な開閉体であり、スライドドア3が閉状態においてはスライドドア3のドア端部(開閉体端部)3aとドア枠4の枠体端部4aとが当接する。図2に示すように、スライドドア3のドア端部3aには、検出電極5が備えられている。検出電極5は、後述するように、開口部2に存在する人体等の導電性の障害物9との間に形成されるキャパシタ8の検出容量Csを検出する電極である。障害物9が人体のように充分に大きい物体である場合、接地されていなくても交流的にグラウンドとみなすことができる。スライドドア3と検出電極5との間には、絶縁層53を介してガードリング6が設けられている。ガードリング6は、検出電極5の寄生容量を低減するために配置される導電性の電極であり、検出電極5よりも広い電極であると好適である。
【0027】
開口部2が閉じられる際にドア端部3aと当接するドア枠4の枠体端部4aには、絶縁層54を挟んで遮蔽電極7が設けられている。遮蔽電極7は、開閉部2が閉じられる際に検出電極5に近接する枠体端部4aを検出電極5から電気的に遮蔽することにより、枠体端部4aが障害物9として検出されることを抑制するために設けられる。尚、図2に示した例では、ドア端部3aに検出電極5が設けられ、枠体端部4aに遮蔽電極7が設けられる場合を例示したが、ドア端部3aに遮蔽電極7が設けられ、枠体端部4aに検出電極5が設けられる構成であってもよい。
【0028】
〔第1実施形態〕
図3は、第1実施形態の障害物センサ10の構成例を、検出容量Csの検出回路例を中核として模式的に示すブロック図である。図3に示すように、既知(Z0)の基準インピーダンス14は、一方の端子がオペアンプ(演算増幅器)31の出力に接続され、他方の端子が検出電極5に接続される。検出電極5は、キャパシタ8の一方の電極である。キャパシタ8の他方の電極は障害物9であり、上述したように交流的にグラウンドである。
【0029】
検出電極5には、後述するように、複数の交流信号源15、16からの複数の交流信号がオペアンプ31を用いた加算器により加算されて生成される交流信号が、基準インピーダンス14を介して印加される。加算器は、検出電極5に印加される交流信号を、フィードバック抵抗R3を介してオペアンプ31の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成される。図3に示すように、フィードバック抵抗R3の一方の端子はオペアンプ31の反転入力端子に接続され、他方の端子は検出電極5に接続されている。
【0030】
交流信号源15の出力は、直列に接続されたコンデンサC1及び抵抗R1を介してオペアンプ31の反転入力端子に接続されている。交流信号源16の出力は、直列に接続されたコンデンサC2及び抵抗R2を介してオペアンプ31の反転入力端子に接続されている。交流信号源15からは、周波数f1、振幅V1の交流信号が出力され、交流信号源16からは、周波数f2、振幅V2の交流信号が出力される。また、オペアンプ31の非反転入力端子は、基準電位Vrに接続されている。オペアンプ31は、交流信号源15、16からの複数の交流信号を加算して交流信号Vinを生成する加算器を構成する。図3に示すように、オペアンプ31の出力端子は基準インピーダンス14に接続され、オペアンプ31から出力される交流信号Vinは、基準インピーダンス14を通過した交流信号Vcが検出電極5に印加される。
【0031】
検出電極5に印加される交流信号Vcは、オペアンプ31とは別のオペアンプ32の非反転入力端子に入力される。オペアンプ32の出力は、当該オペアンプ32の反転入力端子にフィードバックされ、高入力インピーダンス且つ利得1のフォロワ回路であるボルテージフォロワが構成される。オペアンプ32の出力、つまり、検出電極5に印加される交流信号Vcがボルテージフォロワにより維持され、交流信号Vcがガードリング6に印加される。
【0032】
複数の交流信号源の内、1つの交流信号源16から出力される交流信号(f2、V2)を除く1つの交流信号源15から出力される交流信号(f1、V1)は、キャパシタC3及び抵抗R4を介して、オペアンプ33の反転入力端子に接続される。オペアンプ33の非反転入力端子は、オペアンプ31と同じ基準電位Vrに接続される。オペアンプ33の出力は、フィードバック抵抗R5を介してオペアンプの反転入力端子に接続されると共に、遮蔽電極7に接続される。つまり、検出電極5に印加される交流成分と略同一の位相を有する交流成分が遮蔽電極7に印加される。
【0033】
ここで、図4及び図5を利用して、検出電極5及び遮蔽電極7に印加される交流成分について説明する。図4は、検出電極5に印加される信号の周波数特性及び波形の例を模式的に示した説明図である。図5は、遮蔽電極7に印加される信号の周波数特性及び波形の例を模式的に示す説明図である。検出電極5には、複数の周波数f1及びf2の周波数成分を有する交流信号(周期T1及びT2の交流成分を有する交流信号)が印加されている。これに対し、遮蔽電極7には、周波数f2を除き、周波数f1のみの周波数成分を有する交流信号(周期T1の交流成分を有する交流信号)が印加されている。尚、検出電極5及び遮蔽電極7の両方に印加される交流成分の周波数は、本実施形態においては周波数f1の1つのみであるが、複数でもよい。また、検出電極5にのみ印加され、遮断電極7には印加されない交流成分の周波数も、本実施形態においては周波数f2の1つのみであるが、複数でもよい。具体的な例については、第3実施形態において後述する。
【0034】
ここで、図3に示す回路においては、以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
【0035】
【数1】

【0036】
式(1)の関係を満たすことにより、検出電極5に印加される交流信号Vcの周波数成分の内、周波数f1の交流成分の位相及び振幅と、遮蔽電極7に印加される交流成分の位相及び振幅とがほぼ等しくなる。これにより、検出電極5と遮蔽電極7との間の電荷の蓄積に関して、周波数f1の成分を有する変動が抑制される。検出電極5と人体などの導電性の障害物9との間にできる容量Csに起因して、周波数f1の周波数成分を有する電荷変動が生じるので、この電荷変動を検出することによって、障害物9が確実に検出される。
【0037】
また、式(1)に限定されることなく、下記式(2)、及び、式(3)且つ式(4)を満たすことを条件としてもよい。
【0038】
【数2】

【数3】

【数4】

【0039】
上記条件を満たすことにより検出電極5に印加される交流信号Vcの周波数成分の内、周波数f1の交流成分の位相及び振幅と、遮蔽電極7に印加される交流成分の位相及び振幅とがほぼ等しくなり、上記式(1)を満たした場合と同様の効果を得ることができる。
【0040】
ここで、遮蔽電極7を検出電極5と同電位にした場合、つまり容量Csの検出を周波数f1の交流信号で行った場合について説明する。周波数f1に基づいて検出される検出容量をCs1、オペアンプ31の出力Vinの周波数f1の成分をVin1、検出電極5に印加される交流信号Vcの周波数f1の成分をVc1、虚数単位をjとすると、Vin1とVc1との関係は、下記式(5)で表され、検出容量Cs1は、下記式(6)で表される。
【0041】
【数5】

【数6】

【0042】
遮蔽電極7をグラウンドと同電位とした場合、例えば、交流信号源15の出力を停止させてグラウンド電位に固定した場合、検出容量Csの検出を周波数f2の交流信号で行うこととなる。周波数f2に基づいて検出される検出容量をCs2、オペアンプ31の出力Vinの周波数f2の成分をVin2、検出電極5に印加される交流信号Vcの周波数f2の成分をVc2、虚数単位をjとすると、Vin2とVc2との関係は、下記式(7)で表され、検出容量Cs2は、下記式(8)で表される。
【0043】
【数7】

【数8】

【0044】
ここで、Vin1、Vin2、Vc1、Vc2は、それぞれフィルタを介して測定されると好適である。交流信号Vin及びVcの周波数f1の成分であるVin1及びVc1は、検出電極5及び遮蔽電極7に共に印加される交流成分である周波数f1を通過させ、遮蔽電極7に印加されず検出電極5にのみ印加される交流成分である周波数f2の通過を阻止する第1フィルタ11を介して測定される。交流信号Vin及びVcの周波数f2の成分であるVin2及びVc2は、検出電極5及び遮蔽電極7に共に印加される交流成分である周波数f1の通過を阻止し、遮蔽電極7に印加されず検出電極5にのみ印加される交流成分である周波数f2を通過させる第2フィルタ12を介して測定される。
【0045】
Vin1は、オペアンプ31の出力である交流信号Vin、つまり、基準インピーダンス14への入力前の信号をフィルタリングする入力側第1フィルタ11aを介して計測される。Vc1は、検出電極5に印加される交流信号Vc、つまり、基準インピーダンス14を通過した信号をフィルタリングする出力側第1フィルタ11bを介して計測される。本実施形態では、図3に示すように、基準インピーダンス14を通過した後、さらに、オペアンプ32により構成されたフォロワ回路を通過した信号が出力側第1フィルタ11bに入力される。入力側第1フィルタ11aと出力側第1フィルタ11bとは、同様のフィルタリング特性を有していると好適である。Vin1とVc1とをそれぞれ特性が等価のフィルタを介して測定することにより、フィルタによる減衰及び位相変動が同等となる。従って、フィルタ通過前後の周波数f1の成分の電圧比及び位相差の変動による測定誤差が抑制される。
【0046】
Vin2は、オペアンプ31の出力である交流信号Vin、つまり、基準インピーダンス14への入力前の信号をフィルタリングする入力側第2フィルタ12aを介して計測される。Vc2は、検出電極5に印加される交流信号Vc、つまり、基準インピーダンス14を通過した信号をフィルタリングする出力側第2フィルタ12bを介して計測される。本実施形態では、図3に示すように、基準インピーダンス14を通過した後、さらに、オペアンプ32により構成されたフォロワ回路を通過した信号が出力側第2フィルタ12bに入力される。入力側第2フィルタ12aと出力側第2フィルタ12bとは、同様のフィルタリング特性を有していると好適である。Vin2とVc2とをそれぞれ特性が等価のフィルタを介して測定することにより、フィルタによる減衰及び位相変動が同等となる。従って、フィルタ通過前後の周波数f2の成分の電圧比及び位相差の変動による測定誤差が抑制される。
【0047】
制御部20において、式(5)〜(8)に基づいて上述したように、Vin1とVc1とによりCs1が求められ、Vin2とVc2とによりCs2が求められる。検出容量Cs1は、上述したように主に検出電極5と障害物9との間に形成される容量に起因している。従って、制御部20は、遮蔽電極7などの他の物による影響が少ない状態で障害物9を確実に検出することができる。
【0048】
障害物9が無い場合、検出容量Cs2は、検出電極5と遮蔽電極7とにより形成される容量が主成分となる。また、検出電極5と遮蔽電極7とにより形成される容量は、検出電極5と遮蔽電極7との電極間距離に反比例する。従って、制御部20は、検出電極5と遮蔽電極7との電極間距離、つまりスライドドア3の位置を精度よく測定することができる。
【0049】
つまり、制御部20は、第1フィルタ11を通過した信号に基づいて開閉体端部3aと枠体端部4aとの間に障害物9が存在するか否かを判定すると共に、第2フィルタ12を通過した信号に基づいて開閉体端部3aと枠体端部4aとの間の距離を判定することができる。制御部20は、例えばマイクロコンピュータなどによって構成される。
【0050】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る障害物センサ10の構成例を、検出容量Csの検出回路例を中核として模式的に示す説明図である。図3に示す第1実施形態においては、オペアンプ31を用いて構成される加算器は、検出電極5に印加される信号(交流信号Vc)を、フィードバック抵抗R3を介してオペアンプ31の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成されていた。つまり、フィードバック抵抗R3の一方の端子は、オペアンプ31の反転入力端子に接続されていた。また、フィードバック抵抗R3の他方の端子は、オペアンプ31の出力端子に一方の端子が接続された基準インピーダンス14の他方の端子が接続された検出電極5に接続されていた。
【0051】
図3及び図6に示すように、検出電極5に印加される加算後の交流信号Vcは、高入力インピーダンス且つ利得1のフォロワ回路であるボルテージフォロワを構成する別のオペアンプ32の非反転入力に入力されている。本第2実施形態では、図6に示すように、オペアンプ31を用いて構成される加算器は、フォロワ回路の出力信号を、フィードバック抵抗R3を介してオペアンプ31の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成される。つまり、フィードバック抵抗R3の一方の端子は、第1実施形態と同様に、オペアンプ31の反転入力端子に接続されるが、他方の端子は、第1実施形態とは異なり、フォロワ回路を構成するオペアンプ32の出力端子に接続される。
【0052】
尚、フォロワ回路は、高入力インピーダンス且つ利得1であれば、オペアンプを用いたボルテージフォロワに限定されることはない。これは、第1実施形態においても同様である。
【0053】
第2実施形態では、Cs1及びCs2を求めるため上述した式(6)及び式(8)が、以下の式(9)及び式(10)となる。
【数9】

【数10】

【0054】
式(6)及び式(8)と、式(9)及び式(10)とを比べれば明らかなように、第2実施形態では、フィードバック抵抗R3の項が消去される。第1実施形態では、検出容量Csが小さい場合の検出精度を上げるために、フィードバック抵抗R3の抵抗値に、検出容量Csと同程度以上のインピーダンスとなるような高抵抗値が要求される。しかし、本第2実施形態では、VinとVcとの関係にフィードバック抵抗R3の影響が無くなる。従って、VinとVcとから検出容量Csを求めやすくなると同時にフィードバック抵抗R3を高抵抗化する必要が無くなる。
【0055】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態に係る障害物センサ10の構成例を、検出容量Csの検出回路例を中核として模式的に示す説明図である。図3に示す第1実施形態においては、交流信号源が2つであったが、本第3実施形態では、4つの交流信号源15、16、17、18が備えられる。交流信号源15及び16は、第1実施形態と同様の周波数及び振幅を有する交流信号を出力する信号源である。交流信号源17は、周波数f3、振幅V3の交流信号を出力する信号源である。交流信号源18は、周波数f4、振幅V4の交流信号を出力する信号源である。
【0056】
第1実施形態において、検出電極5には、2つの周波数f1及びf2の周波数成分を有する交流信号が印加されていた。本第3実施形態では、4つの周波数f1、f2、f3及びf4の周波数成分を有する交流信号が印加される。つまり、複数の周波数の数は、2つに限ることなく、2つ以上であればよい。
【0057】
第1実施形態において、遮蔽電極7には、周波数f2を除き、周波数f1のみの周波数成分を有する交流信号が印加されていた。つまり、検出電極5に印加される複数の周波数成分の内、1つの周波数成分を除き、他の1つの周波数成分を有する交流信号が遮蔽電極7に印加されていた。これに対し、本第3実施形態では、検出電極5に印加される4つの周波数f1〜f4の内、1つ以上、つまり2つの周波数f2とf4との周波数成分が除かれ、1つ以上、つまり2つの周波数f1とf3との周波数成分を有する交流信号が遮蔽電極7に印加される。
【0058】
また、本実施形態において、第1フィルタ11は、検出電極5及び遮蔽電極7に共に印加される交流成分である周波数f1及びf3を通過させ、遮蔽電極7に印加されず検出電極5にのみ印加される交流成分である周波数f2及びf4の通過を阻止する。具体的には、例えば、図7に示すように、第1フィルタ11は、周波数f1を通過させ、周波数f2、f3及びf4の通過を阻止するフィルタ11a及び11bと、周波数f3を通過させ、周波数f1、f2及びf4の通過を阻止するフィルタ11c及び11dにより構成される。
【0059】
また、本実施形態において、第2フィルタ12は、検出電極5及び遮蔽電極7に共に印加される交流成分である周波数f1及びf3の通過を阻止し、遮蔽電極7に印加されず検出電極5にのみ印加される交流成分である周波数f2及びf4を通過させる。具体的には、例えば、図7に示すように、第2フィルタ12は、周波数f1、f3及びf4の通過を阻止し、周波数f2を通過させるフィルタ12a及び12bと、周波数f1、f2及びf3の通過を阻止し、周波数f4を通過させるフィルタ12c及び12dとにより構成される。
【0060】
〔第4実施形態〕
図8は、第4実施形態に係る障害物センサ10の構成例を、検出容量Csの検出回路例を中核として模式的に示す説明図である。上記第1実施形態〜第3実施形態においては、出力側第1フィルタ11b(11d)は、ボルテージフォロワを構成するオペアンプ32を介した信号も含み、基準インピーダンスを通過後の信号をフィルタリングしていた。同様に、出力側第2フィルタ12b(12d)も、ボルテージフォロワを構成するオペアンプ32を介した信号も含み、基準インピーダンスを通過後の信号をフィルタリングしていた。これに対し、本第4実施形態では、出力側第1フィルタ11bは、基準インピーダンスを通過後の信号に等価な信号をフィルタリングする。同様に、出力側第2フィルタ12bも、基準インピーダンスを通過後の信号に等価な信号をフィルタリングする。
【0061】
図8に示すように、上記第1実施形態〜第3実施形態と同様に、第4実施形態においても、複数の交流信号源15及び16からの複数の交流信号を加算して、基準インピーダンス14を介して検出電極5に印加される交流信号を生成する加算器が、オペアンプ31を用いて構成される。また、上記各実施形態と同様に、第4実施形態においても、オペアンプ32を用いてフォロワ回路が構成される。しかし、上記第1実施形態〜第3実施形態とは異なり、検出電極5に印加される信号が非反転入力端子に入力され、高入力インピーダンス且つ利得1のフォロワ回路ではない。第4実施形態においては、加算器により加算されて生成される交流信号が入力され、基準インピーダンス14をフィードバックインピーダンスとするフォロワ回路が構成される。
【0062】
検出電極5は、このフォロワ回路を構成するオペアンプ32の反転入力端子に接続される。オペアンプ32は、基準インピーダンス14をフィードバックインピーダンスとしてフォロワ回路を構成しているので、検出電極5には、基準インピーダンス14を介して加算器により加算されて生成された交流信号が印加される。一方の側においてオペアンプ32の反転入力端子に接続される基準インピーダンス14の他方の側は、入力側第1フィルタ11a及び入力側第2フィルタ12aに接続される。フィードバックインピーダンスである基準インピーダンス14の他方の側は、オペアンプ32の出力端子に接続されるので、入力側第1フィルタ11a及び入力側第2フィルタ12aは、フォロワ回路を構成するオペアンプ32の出力信号をフィルタリングする。
【0063】
検出電極5へは、基準インピーダンス14を介して信号が印加されるので、オペアンプ32の出力信号は、基準インピーダンス14への入力となる。従って、上記第1実施形態〜第3実施形態と同様に、入力側第1フィルタ11a及び入力側第2フィルタ12aは、基準インピーダンス14への入力前の信号をフィルタリングするフィルタである。
【0064】
出力側第1フィルタ11b及び出力側第2フィルタ12bは、加算器を構成するオペアンプ31の出力信号をフィルタリングする。加算器を構成するオペアンプ31の出力信号は、フォロワ回路を構成するオペアンプ32の非反転入力端子に接続されている。オペアンプ32の非反転入力端子と反転入力端子とは、バーチュアルショートの関係を満たす。オペアンプ32の反転入力端子には、基準インピーダンス14を介して検出電極5へ印加される信号が接続されている。従って、オペアンプ32の反転入力端子へ入力される信号は、基準インピーダンス14を通過後の信号となる。
【0065】
上述したように、オペアンプ32の非反転入力端子と反転入力端子とは、バーチュアルショートの関係を満たすので、オペアンプ32の非反転入力端子には、オペアンプ32の反転入力端子へ入力される信号と等価な信号が入力される。つまり、オペアンプ32の非反転入力端子には、基準インピーダンス14を通過後の信号と等価な信号が入力される。図8に示すように、オペアンプ32の非反転入力端子と、オペアンプ31の出力端子とは、接続されている。従って、出力側第1フィルタ11b及び出力側第2フィルタ12bは、基準インピーダンス14を通過後の信号と等価な信号をフィルタリングする。
【0066】
第1実施形態と同様に、オペアンプ31を用いて構成される加算器は、オペアンプ31の出力信号を、フィードバック抵抗R3を介してオペアンプ31の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成される。上述したように、加算器を構成する演算増幅器のフィードバック抵抗には、しばしば高抵抗値が要求される。しかし、本実施形態では第2実施形態と同様に、フィードバック抵抗R3を流れる電流は基準インピーダンス14を流れない。従って、フィードバック抵抗R3の抵抗値を小さくすることができる。
【0067】
〔第5実施形態〕
図示は省略するが、図3、図6、図7、図8に示す第1実施形態〜第4実施形態の帯域通過フィルタに代えて、各交流信号源15〜18の出力をタイミング信号としてオペアンプ31及び32の出力を直交同期検波した結果を用いてCs1、Cs2を求めても良い。直交同期検波に用いられた信号の内、タイミング信号として用いられた交流信号の周波数近傍の信号のみの振幅及び位相情報を取り出すことができ、これを第1フィルタ11及び第2フィルタ12とみなすことが可能である。
【0068】
〔第6実施形態〕
また、差動増幅器を用いてVinとVcの差に比例した信号を生成し、この差動増幅器の出力を交流信号源15〜17の周波数の各周波数に対して1つの周波数帯域の信号を通過させ、他の周波数帯域の信号を阻止するフィルタを介して制御部20に入力しても良い。この構成は、図6に示す第2実施形態や、図8に示す第4実施形態のように交流信号VinとVcからCs1及びCs2の算出に際してフィードバック抵抗R3の影響が無い場合において有効である。つまり、検出精度を低下させること無く、静電容量検出センサの構成の簡略化や、制御部20における処理の簡略化が可能となる。
【0069】
〔第7実施形態〕
また、第6実施形態における差動増幅器の出力に対して、第5実施形態と同様に、第1実施形態〜第4実施形態に示したような帯域通過フィルタを用いずに直交同期検波を行ってもよい。
【0070】
以上説明したように、本発明によって、開口部における障害物及び開閉体の位置を良好に検出可能な静電容量式障害物センサを提供することができる。多くの実施形態を例示して説明したことからも明らかなように、当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能であろう。しかし、そのように改変された実施形態も当然ながら、本発明に含まれるものである。
【0071】
本発明は、車両の開口部において、障害物及び開閉体の位置を検出する静電容量式障害物センサに適用することができる。また、そのような静電容量式障害物センサを備えた車両の開閉システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:車両
2:開口部
3:スライドドア(開閉体)
3a:開閉体端部
4:ドア枠(枠体)
4a:枠体端部
5:検出電極
7:遮蔽電極
9:障害物
10:静電容量式障害物センサ
11:第1フィルタ
11a、11c:入力側第1フィルタ
11b、11d:出力側第1フィルタ
12:第2フィルタ
12a、12c:入力側第2フィルタ
12b、12d:出力側第2フィルタ
14:基準インピーダンス
15、16、17、18:交流信号源
20:制御部
31:オペアンプ(加算器、演算増幅器)
32:オペアンプ(フォロワ回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数の交流信号を出力する複数の交流信号源と、
開口部を開閉可能な開閉体の開口側の開閉体端部と、前記開閉体により前記開口部が閉じられる際に当該開閉体端部と当接する枠体端部との何れか一方に設けられ、前記複数の交流信号源から出力される異なる周波数の交流信号が合成された交流信号を、基準インピーダンスを介して印加されて、前記開閉体端部と前記枠体端部との間に存在する障害物との間の静電容量を検出する検出電極と、
前記開閉体端部及び前記枠体端部の他方に設けられ、当該他方の端部を前記検出電極から遮蔽すると共に、複数の前記交流信号源の内、1つ以上の前記交流信号源を除く1つ以上の前記交流信号源により、前記検出電極に印加される交流成分と略同一の位相を有する交流成分が印加される遮蔽電極と、
前記検出電極及び前記遮蔽電極に印加される交流成分を通過させ、前記遮蔽電極に印加されず前記検出電極に印加される交流成分の通過を阻止する第1フィルタと、
前記検出電極及び前記遮蔽電極に印加される交流成分の通過を阻止し、前記遮蔽電極に印加されず前記検出電極に印加される交流成分を通過させる第2フィルタと、
前記第1フィルタを通過した信号に基づいて、前記検出電極と前記障害物との間の静電容量を求め、当該静電容量に基づいて前記開閉体端部と前記枠体端部との間に前記障害物が存在するか否かを判定すると共に、前記第2フィルタを通過した信号に基づいて、前記検出電極と前記遮蔽電極との間の静電容量を求め、当該静電容量に基づいて前記開閉体端部と前記枠体端部との距離を判定する制御部と、
を有する静電容量式障害物センサ。
【請求項2】
前記第1フィルタは、前記基準インピーダンスへの入力前の信号をフィルタリングする入力側第1フィルタと、前記基準インピーダンスを通過後の信号又はこれと等価の信号をフィルタリングする出力側第1フィルタとにより構成され、
前記第2フィルタは、前記基準インピーダンスへの入力前の信号をフィルタリングする入力側第2フィルタと、前記基準インピーダンスを通過後の信号又はこれと等価の信号をフィルタリングする出力側第2フィルタとにより構成され、
前記入力側第1フィルタと前記出力側第1フィルタとは等価なフィルタリング特性を有して構成され、
前記入力側第2フィルタと前記出力側第2フィルタとは等価なフィルタリング特性を有して構成される請求項1に記載の静電容量式障害物センサ。
【請求項3】
前記検出電極に印加される信号が入力され、高入力インピーダンス且つ利得1のフォロワ回路を備え、
前記出力側第1フィルタは、前記フォロワ回路の出力信号をフィルタリングし、前記出力側第2フィルタは、前記フォロワ回路の出力信号をフィルタリングする請求項2に記載の静電容量式障害物センサ。
【請求項4】
前記検出電極は、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号が演算増幅器を用いた加算器により加算されて生成される交流信号を、前記基準インピーダンスを介して印加されるものであり、
前記加算器は、前記検出電極に印加される交流信号を、フィードバック抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成される請求項1〜3の何れか一項に記載の静電容量式障害物センサ。
【請求項5】
前記検出電極は、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号が演算増幅器を用いた加算器により加算されて生成される交流信号を、前記基準インピーダンスを介して印加されるものであり、
前記加算器は、前記フォロワ回路の出力信号を、フィードバック抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有して構成される請求項3に記載の静電容量式障害物センサ。
【請求項6】
演算増幅器を用いて構成され、前記複数の交流信号源からの複数の交流信号を加算して、前記基準インピーダンスを介して前記検出電極に印加される交流信号を生成する加算器と、
前記加算器により加算されて生成される交流信号が入力され、前記基準インピーダンスをフィードバックインピーダンスとし、前記加算器を構成する演算増幅器とは別の演算増幅器を用いて構成されたフォロワ回路とを備え、
前記加算器は、前記加算器を構成する演算増幅器の出力信号を、フィードバック抵抗を介して当該演算増幅器の反転入力端子にフィードバックするフィードバック回路を有し、
前記検出電極は、前記フォロワ回路を構成する演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記入力側第1フィルタ及び前記入力側第2フィルタは、前記フォロワ回路を構成する演算増幅器の出力信号をフィルタリングし、
前記出力側第1フィルタ及び前記出力側第2フィルタは、前記加算器を構成する演算増幅器の出力信号をフィルタリングする請求項2に記載の静電容量式障害物センサ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の静電容量式障害物センサを備えた車両の開閉システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210582(P2010−210582A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59845(P2009−59845)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】