説明

静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置

【課題】面圧の低いロール状定着手段を用いても孤立した画像の強度が高く、且つ、低温定着性及び熱保管性に優れ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像用トナーの提供。
【解決手段】着色剤と、二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂と、を含む着色粒子と、前記着色粒子の表面に付着された陽イオン交換性無機粒子と、を含有する静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は現在さまざまな分野で利用されている。従来電子写真法においては、感光体や静電記録体上に種々の手段を用いて静電荷像を形成し、この静電荷像にトナーと呼ばれる検電性粒子を付着させて静電荷像を現像してトナー像とし、このトナー像を被転写体表面に転写し、加熱等により定着する、という複数の工程を経て、可視化する方法が一般的に使用されている。
【0003】
被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着技術としては、加熱ロールおよび加圧ロールからなる一対のロール間に、トナー像が転写された被転写体を挿入し、定着する熱ロール定着法が一般的である。また、同種の技術として、ロールの一方または両方をベルトに代えた定着法も知られている。これらの技術は、他の定着法に比べ、直接画像と接触するため、高速で堅牢な画像が得られ、かつエネルギー効率が高い。
【0004】
近年画像形成に際して必要なエネルギーの省力化への要求の高まりに伴い、ある程度の使用電力を占める定着工程の省電力化を図り、また、定着条件を拡大させるためには、トナーの定着温度をより低温化させる必要がある。トナー定着温度を低温化させることにより、前記省電力化および前記定着条件の拡大に加えて、電源入力時における定着ロール等の定着部材表面の定着可能温度までの待ち時間、いわゆるウォームアップタイムの短時間化、定着部材の長寿命化が可能等、大きな利点がある。
【0005】
一方、近年の高度な情報化社会の進展において、さまざまな手法で構築された情報ドキュメントを、より高い画質の画像で提供することの要請が高まっている。カラー画像形成における、より高精細な画像を実現するため、より小粒径で粒度分布や形状分布が狭く、帯電特性に優れたトナーが求められている。同時に写真画質のような高光沢であり、また保存性の高い画像も求められている。
【0006】
低温定着性の観点では(1)結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる、(2)トナーのガラス転移温度を低くする、ことが有利であるが、トナーの熱保管性が悪化することがある。これに対して大粒径の外添剤を添加し、スペーサー的な役割を付与することで熱保管性を向上させることができる。また高画質化を達成するためには小粒径・狭粒度分布なトナーが必要であり、また白黒用画質としては低光沢な画像が要求されていることから高弾性なトナーが必要とされている。これに対して湿式製法、特に乳化凝集法によって小粒径・狭粒度分布なトナー作製が可能であり、さらに結着樹脂中のイオン架橋を制御することで高弾性なトナーを得ることができる。一方小型プリンターでは省スペース・省コスト、さらには部材寿命の観点から定着部材の面圧低下が望まれている。
【0007】
ところで、トナー容器の開封時や使用時に不快な臭気のないトナーを提供することを目的として、熱可塑性樹脂及び着色剤を含有するトナーであり、少なくとも使用開始時まで多孔質体が添加されていることを特徴とする静電潜像現像用トナーが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、低温定着性に優れ、かつ熱特性、帯電特性の制御が容易なトナーを提供することを目的として、少なくとも軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3であり、かつ軟化点が軟化点T(F1/2)が80〜130℃の結晶性ポリエステル樹脂と、塩様構造化シリケートとを溶融混練する工程を有するトナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
また、低温定着性と耐熱性とを両立し、耐オフセット性に優れ、トナー構造の制御が可能であり、現像装置等を汚染することなく帯電性及びクリーナーレス適性が良好なトナーを提供することを目的として、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、及びゼオライトを含み、O/W型湿式造粒方式により製造された平均円形度が0.970以上であることを特徴とするトナーが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
また、十分な帯電性およびその耐久性にも優れ、低温定着性と耐熱保管性を両立したトナーを提供することを目的として、芯部分と、該芯部分を覆う殻部分とからなる構造を有しているトナーであって該殻部分は少なくとも層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有していることを特徴とするトナーが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0011】
また、高画質な画像を得ることを目的として、結着樹脂および着色剤からなるトナー母粒子と、受酸効果を有する化合物微粒子がその一部を表面に露出させた状態で内包された樹脂粒子とを含有したことを特徴とする電子写真用トナーが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0012】
また、多湿環境下でのブレ−ドめくれ、これに起因するクリ−ニング不良を防止することを目的として、アルカリ土類金属、希土類金属の各々の炭酸塩および硫酸塩の無機物質を現像剤に外添する旨が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−29237号公報
【特許文献2】特開2007−241187号公報
【特許文献3】特開2008−102496号公報
【特許文献4】特開2008−65099号公報
【特許文献5】特開2006−113553号公報
【特許文献6】特開平05−188630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、低温定着性及び熱保管性に優れ、且つ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、請求項1に係る発明は、着色剤と、二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂と、を含む着色粒子と、
前記着色粒子の表面に付着された陽イオン交換性無機粒子と、
を含有する静電荷像現像用トナーである。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記陽イオン交換性無機粒子の体積平均粒子径が、100nm以上2000nm以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0017】
請求項3に係る発明は、前記イオン結合可能な基が、カルボキシル基である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0018】
請求項4に係る発明は、前記陽イオン交換性無機粒子が、ゼオライトを含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0019】
請求項5に係る発明は、着色粒子分散液中に陽イオン交換性無機粒子を添加して着色粒子表面に前記陽イオン交換性無機粒子を付着する付着工程と、前記着色粒子分散液を前記着色粒子に含有される結着樹脂のガラス転移温度以上の温度まで加熱して前記陽イオン交換性無機粒子を前記着色粒子に固着する加熱工程と、を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤である。
【0021】
請求項7に係る発明は、トナーが少なくとも収容され、前記トナーが請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーであるトナーカートリッジである。
【0022】
請求項8に係る発明は、現像剤保持体を少なくとも備え、請求項6に記載の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジである。
【0023】
請求項9に係る発明は、感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項6に記載の静電荷像現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記感光体上に形成された前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置である。
【0024】
請求項10に係る発明は、前記定着手段が、熱および圧力を前記被転写体に付与する圧接部を有するロール状定着手段であり、前記圧接部における面圧が0.2kgf/cm以上2.0kgf/cm以下である請求項9に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、2、3及び4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、低温定着性及び熱保管性に優れ、且つ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像用トナーが提供される。
【0026】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、陽イオン交換性無機粒子が着色粒子に強固に付着する。
【0027】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、低温定着性及び熱保管性に優れ、且つ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像剤が提供される。
【0028】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、低温定着性及び熱保管性に優れ、且つ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像用トナーの供給を容易にするトナーカートリッジが提供される。
【0029】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、低温定着性及び熱保管性に優れ、且つ、低光沢画像を形成可能な静電荷像現像剤の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性が高められる。
【0030】
請求項9及び10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、低光沢画像を形成可能な画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、着色剤と、二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂と、を含む着色粒子と、前記着色粒子の表面に付着された陽イオン交換性無機粒子と、を含有する。
【0034】
明確ではないが、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは下記作用を呈すると推察される。
大径の外添剤を含む高弾性なトナーを低面圧の定着装置で定着する場合、大径の外添剤に起因して定着時のトナー界面の融合が阻害されやすく、特に細線やドットのような孤立した画像の強度が著しく低下することがある。このような問題はプロセススピードの増加で顕著になり、また、ラフ紙で光沢を均一化するために紙上のトナー載り量を多くした場合にも顕著となる。そのため、高速化や用紙汎用化の観点からもより一層トナー界面の融合を阻害しないような改善が必要となる。
【0035】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは着色粒子中に二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂とを含むため、結着樹脂がイオン架橋することで高弾性化されている。
イオン架橋を有するトナーに陽イオン交換作用を持つ大径の外添剤を付着させることで、該外添剤がトナー表面と接触・埋没した部分の架橋イオンを捕捉する効果により、接触部分の溶融時の粘度が局所的に低下する。つまり、画像の定着時に外添剤がトナーと接触する部分の粘度が低下するため、溶融時の外添剤によるスペーサー効果が低減し、トナー界面の融合が阻害されにくくなる。本効果は局所的であり、トナー全体の弾性を低下させることがないために光沢を変化させることはない。
【0036】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、着色剤と、二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂と、を含む着色粒子を含有する。以下、本実施形態に係る着色粒子を構成する成分について説明する。
【0037】
本実施形態で用いられる結着樹脂は、二価以上の金属元素とイオン結合可能な基を有するものであれば特に限定されるものではない。二価以上の金属元素とイオン結合可能な基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基が好ましい。結着樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。
【0038】
以下、本実施形態で用いられる結着樹脂の一例としてポリエステル樹脂について説明する。
本実施形態に係るポリエステル樹脂とは、例えば、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
前記多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが好ましい。また、良好なる定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
【0039】
前記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールは1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、より良好なる定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)を併用してもよい。
【0040】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下「Tg」と略記することがある)は50℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。Tgが80℃より高いと、従来に比べ十分に低温で定着することができなくなることがある。またTgが50℃より低いと、十分な熱保管性が得られず、また定着画像の保存性が十分でないことがある。
【0041】
ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上25mgKOH/g以下が好ましい。5mgKOH/g以上あれば、トナーの紙への親和性がよく、帯電性も良い。また、後述する乳化凝集法によりトナーを製造した場合に、乳化粒子を作製し易く、また乳化凝集法の凝集工程における凝集速度や融合工程における形状変化速度が著しく速くなることを抑えることができるため、粒度制御や形状制御を行い易い。また、ポリエステル樹脂の酸価が25mgKOH/g以内であれば、帯電の環境依存性に悪影響を及ぼさない。また乳化凝集法でのトナー製造における凝集工程での凝集速度や融合工程での形状変化速度が著しく遅くなることを抑えることができるため、生産性の低下を防止することができる。
ポリエステル樹脂の酸価は、6mgKOH/g以上23mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000以上1000000以下であることが好ましく、更に好ましくは7000以上500000以下であり、数平均分子量(Mn)は2000以上100000以下であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5以上100以下であることが好ましく、更に好ましくは2以上60以下である。
【0042】
本実施形態においては、着色粒子が結晶性ポリエステル樹脂を含んでもよい。結晶性ポリエステル樹脂は溶融時に非結晶性ポリエステル樹脂と相溶してトナー粘度を著しく低下させることから、より低温定着性にすぐれたトナーを得ることができる。また結晶性ポリエステル樹脂のうち、芳香族結晶性樹脂は一般に後述の融点範囲よりも高いものが多いため、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る着色粒子における結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、2質量%以上30質量%以下が好ましく、4質量%以上25質量%以下がより好ましい。2質量%以上あれば、溶融時に非結晶性ポリエステル樹脂を低粘度化することができ、低温定着性の向上が得られ易い。また30質量%以下であれば、結晶性ポリエステル樹脂の存在に起因するトナーの帯電性の悪化が防止されるので、記録媒体への定着後の画像強度が得られ易い。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50℃以上90℃以下の範囲であることが好ましく、55℃以上90℃以下の範囲であることが好ましく、60℃以上90℃以下の範囲であることがより好ましい。融点が50℃以上あれば、トナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性がよい。また、90℃以下であれば、低温定着性が向上する。
【0045】
なお、本実施形態に係る「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry;以下、「DSC」と略記することがある)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、結晶性ポリエステル樹脂は、その主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合は、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0046】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、下記において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0047】
〔酸由来構成成分〕
前記酸由来構成成分となるための酸としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが本実施形態に係る結晶性ポリエステル樹脂における酸由来構成成分としては、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が望ましい。
例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮するとアジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0048】
酸由来構成成分としては、その他として2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分を含有していてもよい。
【0049】
〔アルコール由来構成成分〕
アルコール構成成分となるためのアルコールとしては、脂肪族ジオールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量;Mw)は、樹脂の製造性、トナー製造時の微分散化や、溶融時の相溶性の観点から、8,000以上40,000以下が好ましく、10,000以上30,000以下がさらに好ましい。8,000以上あれば、結晶性ポリエステル樹脂の抵抗の低下が抑制されるので、帯電性の低下が防止される。40,000以下であれば、樹脂合成のコストが抑えられ、また、シャープメルト性の低下が防止されるために低温定着性に悪影響を与えない。
【0051】
本実施形態において、ポリエステル樹脂の分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定し、算出した。具体的には、GPCは東ソー(株)製HLC−8120を使用し、カラムは東ソー製TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、ポリエステル樹脂をTHF溶媒で測定した。次に、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリエステル樹脂の分子量を算出した。
【0052】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造されてもよい。例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、高分子量化するためには通常1/1程度が好ましい。
【0053】
ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0054】
なお、ポリエステル樹脂以外に、結着樹脂として他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のエチレン系樹脂;ポリスチレン、α−ポリメチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテル樹脂及びこれらの共重合樹脂等が挙げられる
【0055】
本実施形態に係る着色粒子は、着色剤を含む。着色剤は、染料であっても顔料であっても構わないが、耐光性や耐水性の観点から顔料であることが好ましい。
例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用される。
【0056】
本実施形態の静電荷像現像用トナーにおける、前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましい。
必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用することも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
【0057】
−離型剤−
本実施形態に係る着色粒子は、必要に応じて離型剤を含有してもよい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融点は、50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。
着色粒子中の離型剤の含有量は、0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%以上あれば、特にオイルレス定着の場合における剥離不良が防止される。離型剤の含有量が15質量%以下であれば、トナーの流動性の悪化が防止されるので、画質および画像形成の信頼性が保たれる。
【0058】
−その他の添加剤−
本実施形態に係る着色粒子には、上記したような成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
【0059】
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0060】
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
【0061】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みが調整される。無機粒子は、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよいが、発色性やOHP透過性等の透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が好ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0062】
本実施形態に係る着色粒子は、二価以上の金属元素を含む。該金属元素としては、Zn,Ca,Mg,Fe又はAlが挙げられる。これらの中でも、三価で架橋効果が大きいAlが好ましい。本実施形態に係る着色粒子にAlを含ませる方法としては、後述する乳化凝集法においてAl凝集剤を使用すればよい。これによりイオン架橋が形成され、トナー粘弾性が向上する。Al以外のその他の金属元素を本実施形態に係る着色粒子に含ませるには、Al凝集剤に代えて又はAl凝集剤と共に、二価以上の金属元素を含む金属塩を用いればよい。
着色粒子中における二価以上の金属元素の含有量は、0.002%以上1%以下が好ましく、0.003%以上0.9%以下がさらに好ましく、0.004%以上0.8%以下が特に好ましい。
【0063】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、着色粒子と共に該着色粒子の表面に付着された陽イオン交換性無機粒子を含む。
本実施形態で用いられる陽イオン交換性無機粒子としては、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト又はヘクトライトが挙げられる。
陽イオン交換性無機粒子の体積平均粒子径としては、100nm以上2000nm以下が好ましく、110nm以上1700nm以下がさらに好ましく、120nm以上1500nm以下が特に好ましい。陽イオン交換性無機粒子の体積平均粒子径が100nm未満であると、陽イオン交換性無機粒子の外添剤としてのスペーサー効果が低減してトナーの保管性が悪化することがある。また、陽イオン交換性無機粒子の体積平均粒子径が2000nmを超えると着色粒子に陽イオン交換性無機粒子を均一に付着するのが困難となることがある。
【0064】
本実施形態においては、陽イオン交換性無機粒子としてゼオライトを含むことが好ましい。ゼオライトとしては、優れたカチオン交換能の発現という観点から、その無水物の組成が、下記一般式(I)で表されることが好ましい。
O・SiO・Al・MeO 一般式(I)
(一般式(I)中、Mはアルカリ金属を、Meはアルカリ土類金属を表す。)
【0065】
一般式(I)において、アルカリ金属とは周期律表IA族に属する元素であり、単独もしくは2種以上の混合物であってもよいが、コストおよびゼオライト粉末の高いカチオン交換能の発現という観点から、ナトリウムが好ましい。また、アルカリ土類金属とは周期律表IIA族に属する元素であり、単独もしくは2種以上の混合物であってよいが、コストおよびゼオライト粉末の高いカチオン交換能の発現という観点から、カルシウムおよび/またはマグネシウムが好ましい。陽イオン交換能、すなわちCERおよびCECを低下させない範囲であれば、上記一般式に含まれる元素以外の元素も含まれていて良い。
【0066】
前記ゼオライトの結晶形態は公知の結晶系に分類されるものであり、A型、P型、X型、Y型などが例示される。かかる結晶形態は特に限定されるものではないが、優れたカチオン交換能の発現の観点から、A型が好ましい。
【0067】
陽イオン交換性無機粒子の作製方法としては、ゼオライト等を粉砕して所望の粒径まで粒子化してもよく、粉砕方法としては湿式粉砕でも乾式粉砕でも良いが、ゼオライト粉末の分散性の向上の観点から、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕に用いる分散媒としては、水以外にエタノールなどのアルコール溶媒などを単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。ゼオライト粉末の分散性向上の観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒が好ましく、エタノールがより好ましい。
【0068】
本実施形態においては、外添剤として、陽イオン交換性無機粒子以外に、表面を疎水化処理されていてもよいシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、カーボンブラック等の無機粒子や、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー粒子等、公知の粒子を含有してもよい。
【0069】
本実施形態においては、陽イオン交換性無機粒子の含有量が、着色粒子に対して0.2質量%以上12質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、0.4質量%以上9質量%以下が特に好ましい。
陽イオン交換性無機粒子の含有量が0.2質量%未満では十分なスペーサー効果が得られない。また、陽イオン交換性無機粒子の含有量が12質量%を超えると、均一に付着できない外添剤の脱離が顕著となり、現像器内での外添剤の蓄積や、感光体の傷などが発生する可能性が生じる。
【0070】
[トナーの特性]
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、形状係数SF1が115以上140以下の範囲の球状であることが好ましい。
トナーの形状は、球状トナーが現像性、転写性の点では有利であるが、クリーニング性の面では不定形に比べ劣ることがある。トナーが上記範囲の形状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像形成が行われ、また、感光体表面のクリーニング性が高まる。
上記形状係数SF1は、120以上138以下の範囲であることがより好ましい。
【0071】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0072】
SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0073】
また、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの体積平均粒子径は3μm以上9μm以下であることが望ましく、より望ましくは3.5μm以上8.5μm以下であり、さらに望ましくは4μm以上8μm以下である。体積平均粒子径が3μm以上あれば、トナーの流動性低下を抑えられるので、各粒子の帯電性を維持しやすい。また、帯電分布が広がらず、背景へのかぶりを防止し現像器からトナーがこぼれにくくなる。さらに、トナーの体積平均粒子径が3μm以上あれば、クリーニング性が良くなる。体積平均粒子径が9μm以下であれば、解像度の低下を抑えられるため、十分な画質が得られ、近年の高画質化要求が満たされる。
【0074】
なお、上記体積平均粒子径D50は、例えば、コールターマルチサイザーII(コールター社製)等の測定器で測定される。
【0075】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの110℃における複素弾性率(G*)は10000Pa以上100000Pa以下が好ましく、11000Pa以上95000Pa以下がさらに好ましく、12000Pa以上90000Pa以下が特に好ましい。複素弾性率(G*)が10000Pa未満では画像の光沢が高過ぎることがある。また、複素弾性率(G*)が100000Paを超えると低温定着が困難となることがある。
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの110℃におけるtanδ(G’’/G’)は、1.6以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましい。tanδ(G’’/G’)が1.6を超えると、画像の光沢が高すぎることがある。なお、本実施形態においてG’は貯蔵弾性率を、G’’は損失弾性率を表す。
【0076】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は特に限定されるものではないが、陽イオン交換性無機粒子を水中にて付着(以下、湿式外添という場合がある。)することが好ましい。湿式外添の場合、着色粒子の形状によらず、陽イオン交換性無機粒子の均一な付着が可能である。さらに、湿式外添後に結着樹脂のTg程度の温度を与えることで陽イオン交換性無機粒子が着色粒子表面に固着し、陽イオン交換性無機粒子が着色粒子表面から脱離しにくくなる。また、陽イオン交換性無機粒子が着色粒子に固着した部分の架橋イオンが効率的に捕捉される。そのため、陽イオン交換性無機粒子が着色粒子に固着した部分のイオン架橋の強度が弱まる。
【0077】
陽イオン交換性無機粒子を水中にて湿式外添する方法としては、例えば、着色粒子分散液中に陽イオン交換性無機粒子を添加して着色粒子表面に前記陽イオン交換性無機粒子を付着する付着工程と、前記着色粒子分散液を前記着色粒子に含有される結着樹脂のガラス転移温度以上の温度まで加熱して前記陽イオン交換性無機粒子を前記着色粒子に固着する加熱工程と、を経る方法が挙げられる。
【0078】
着色粒子分散液中に陽イオン交換性無機粒子を添加する方法としては、着色粒子分散液中に陽イオン交換性無機粒子を固体(粉末)のまま直接添加してもよいし、陽イオン交換性無機粒子を分散した分散液を着色粒子分散液中に添加してもよい。
付着工程においては、陽イオン交換性無機粒子を添加された着色粒子分散液の攪拌下、分散液のpHを酸性にすることによって、陽イオン交換性無機粒子を着色粒子に付着させてもよい。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、2.2以上6以下の範囲がより望ましい。
また、加熱工程において着色粒子分散液を加熱する際には、着色粒子分散液中に界面活性剤等を添加してもよい。
加熱工程後、洗浄工程及び乾燥工程等を経て本実施形態に係る静電荷像現像用トナーが得られる。このようにして得られた静電荷像現像用トナーには必要に応じて陽イオン交換性無機粒子以外の無機粒子を外添する外添工程を実施してもよい。陽イオン交換性無機粒子以外の無機粒子の具体例は上述のとおりである。
【0079】
次に、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法で用いられる着色粒子の製造方法について述べる。本実施形態に係る着色粒子の製造方法は特に限定されるものではなく、混練粉砕法等の乾式法や、溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の湿式法により製造される。中でも、乳化凝集法で製造することが好ましい。
【0080】
乳化凝集法とは、着色粒子に含まれる成分(結着樹脂、着色剤等)を含む分散液(乳化液、顔料分散液等)をそれぞれ調製し、これらの分散液を混合して着色粒子成分同士を凝集させて凝集粒子を作り、その後凝集粒子を結着樹脂の融点又はガラス転移温度以上に加熱して凝集粒子を熱融合させる方法である。
乳化凝集法は、乾式法である混錬粉砕法や、他の湿式法である溶融懸濁法、溶解懸濁法等に比べ、小粒径の着色粒子を作製しやすく、また粒度分布の狭い均一な着色粒子を得やすい。また、溶融懸濁法、溶解懸濁法等に比べ形状制御が容易であり、均一な不定形着色粒子が作製される。さらに、被膜形成など、着色粒子の構造制御が可能であり、離型剤や結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合は、これらの表面露出が抑制されるため、帯電性や保存性の悪化が防止される。
【0081】
次に、乳化凝集法の製造工程について詳述する。
乳化凝集法は、少なくとも、着色粒子を構成する原料を乳化して樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を融合させる融合工程とを有する。以下、乳化凝集法による着色粒子の製造工程の一例について、工程別に説明する。
【0082】
−乳化工程−
前記乳化液の作製法としては転相乳化法、溶融乳化法などが挙げられる。
転相乳化法では、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性の有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(Oil相;O)に塩基を加えて、中和する。その後、水系媒体(Water相;W)を投入することによって、Water in Oil(W/O)の系を、Oil in Water(O/W)の系にすることで、有機連続相に存在した樹脂を不連続相に転相する。これによって、樹脂を、水系媒体中に粒子状に分散安定化し、乳化液が作製される。
溶融乳化法では、水系媒体と樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより乳化液が作製される。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げることにより、粒子が形成される。また分散した樹脂粒子を安定化するため、分散剤を使用してもよい。さらに、樹脂が油性であり、水への溶解度の比較的低いものである場合には、樹脂の溶解する溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子を分散した乳化液を作製してもよい。
【0083】
前記溶融乳化法による乳化液の分散に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0084】
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水のみであることが望ましい。
【0085】
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの内、洗浄の容易性や環境適正の観点からアニオン界面活性剤が一般的である。
【0086】
前記乳化工程における乳化液に含まれる樹脂粒子の含有量は、10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが望ましく、より望ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲である。前記含有量が10質量%以上あれば、粒度分布が過度に広がることがない。また50質量%以下であれば、ばらつきのない撹拌をすることができ、粒度分布の狭い、特性の揃った着色粒子が得られる。
【0087】
樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒子径)で0.08μm以上0.8μm以下の範囲が望ましく、0.09μm以上0.6μm以下がより望ましく、0.10μm以上0.5μm以下がさらに望ましい。0.08μm以上あれば、樹脂粒子が凝集しやすい。また0.8μm以下であれば、着色粒子の粒子径分布が広がりにくく、また乳化粒子の沈殿が抑制されるため、乳化粒子分散液の保存性が向上する。
【0088】
次に説明する凝集工程に入る前に、結着樹脂以外の着色粒子成分である着色剤や離型剤等を分散させた分散液も作製しておくとよい。
また、結着樹脂、着色剤等の各成分に対応して分散液を調製する方法だけでなく、例えば、ある成分の乳化液を調製する際、溶媒に他の成分を添加して2以上の成分を同時に乳化し、分散粒子中に複数の成分が含まれるようにしてもよい。
【0089】
−凝集工程−
凝集工程においては、前記乳化工程で得た樹脂粒子の分散液、ならびに、着色剤分散液等を混合して混合液とし、結着樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによって行う。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、2.2以上6以下の範囲がより望ましく、2.4以上5以下の範囲がさらに望ましい。
【0090】
凝集粒子を形成する際に、凝集剤を使用することも有効である。凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0091】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0092】
また、前記凝集粒子が所望の粒径になったところで、樹脂乳化粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を結着樹脂で被覆した構成の着色粒子を作製してもよい。この場合、離型剤や結晶性ポリエステル樹脂が着色粒子表面に露出しにくくなるため、帯電性や保存性の観点で望ましい構成である。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0093】
−融合工程−
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを4以上8以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。pHを上昇させるために使用するアルカリ溶液としてはNaOH水溶液が好ましい。他のアルカリ溶液である例えばアンモニア溶液は揮発性や安全性の観点で好ましくない。またCa(OH)などの2価のアルカリ溶液は水に溶解しにくいため、添加量が増加したり、凝集の停止能力が十分でない場合があり好ましくない。
【0094】
前記加熱の時間としては、融合がされる程度に時間をかければよく、0.5時間以上10時間以下が好ましい。凝集粒子の融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、離型剤や結着樹脂の融点近傍(融点±10℃の範囲)で冷却速度を上げる、いわゆる急冷をすることで離型剤や結着樹脂の再結晶化を抑制して表面露出を抑制してもよい。
以上の工程を経て、融合粒子として着色粒子が得られる。
【0095】
本実施形態に用いられる着色粒子は、一般に使用されている混練粉砕法により作製されてもよい。
混練粉砕法で着色粒子を作製するには、結着樹脂、着色剤、離型剤等を、例えば、加圧ニーダ、ロールミル、エクストルーダ等により、溶融混練して分散し、冷却後に、ジェットミル等により微粉砕化し、分級機、例えば、風力分級機等により分級して所望の粒子径の着色粒子が得られる。
【0096】
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
【0097】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0098】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒子径としては、一般的には10μm以上500μm以下の範囲にあり、好ましくは30μm以上100μm以下の範囲にある。
【0101】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0102】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0103】
前記二成分現像剤における本実施形態に係る静電荷像現像用トナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100以上30:100以下程度の範囲であり、3:100以上20:100以下程度の範囲がより好ましい。
【0104】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いた本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を本実施形態に係る静電荷像現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記感光体上に形成された前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有するものである。前記定着手段は、熱および圧力を前記被転写体に付与する圧接部を有するロール状定着手段であり、前記圧接部における面圧を0.2kgf/cm以上2.0kgf/cm以下としたものであってもよい。
圧接部における面圧が0.2kgf/cm未満であると、トナー像が被転写体上に定着しないことがある。また、圧接部における面圧が2.0kgf/cmを超えると、被転写体にシワが発生したり、被転写体が延伸することがある。また、定着手段の寿命が短くなったり、定着手段のコストが上昇してしまうことがある。
【0105】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0106】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0107】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0108】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0109】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0110】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0111】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0112】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む本実施形態に係る静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0113】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0114】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0115】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0116】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
【0117】
トナー像を転写する被転写体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被転写体の表面も可能な限り平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0118】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0119】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0120】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせることが可能である。本実施形態のプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0121】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態に係る静電荷像現像用トナーであることを特徴とする。なお、本実施形態に係るトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0122】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを収めたトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーが容易に現像装置に供給される。
【0123】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0125】
[測定方法]
<体積平均粒子径の測定方法(測定する粒子直径が2μm以上の場合)>
測定する粒子の直径が2μm以上の場合は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)測定装置を用いて、粒子の体積平均粒子径を測定した。電解液としては、ISOTON−II(コールター社製)を使用した。
【0126】
測定法としては、分散剤として界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg加え、これを前記電解液100ml中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定した。測定した粒子数は50,000である。
【0127】
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒子径と定義した。
【0128】
<体積平均粒子径の測定方法(測定する粒子直径が2μm未満の場合)
測定する粒子直径が2μm未満の場合は、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて、粒子の体積平均粒子径を測定した。
【0129】
測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待って、セル内の濃度が安定になったところで測定した。
【0130】
なお、粉体を測定する場合は、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で測定した。
【0131】
<融点およびガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度(Tg)及び融点は、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)を用い、0℃から150℃まで、昇温速度10℃/分の条件下で測定することによりDSCスペクトルを得た。DSCスペクトルに基づいてTg及び融点を求めた
【0132】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は、GPC(東ソー(株):製HLC−8120)を用いて測定した。カラムは東ソー製TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、THF溶媒によりGPCスペクトルを測定した。単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリエステル樹脂の分子量を算出した。
【0133】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K0070に従い、中和滴定法を用いて測定した。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0134】
<伝導度の測定>
伝導度は、東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、25℃にて測定した。
【0135】
<pH測定>
pH測定には、25℃において、東亜電波工業社製pHメーター(HM−26S)を使用した。
【0136】
<金属元素の種類の確認及び含有量の測定>
金属元素の種類、及び含有量は蛍光X線(XRF−1500/(株)島津製作所製)を用いて測定した。測定サンプルはトナー6gを加圧成型器で10t、1分間の加圧条件下で圧縮成型を行うことで得た。また測定条件は管電圧40kV、管電流90mAで、全元素分析により測定を行った。含有量の定量に関しては、あらかじめ所望の金属を含む検量線サンプルを測定することで定量化した。
【0137】
(非結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン90モル部と、エチレングリコール10モル部と、テレフタル酸80モル部と、イソフタル酸20モル部を原料に、触媒としてジブチル錫オキサイドを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150℃以上230℃以下で12時間共縮重合反応させ、その後、210℃以上250℃以下で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
非結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は33,200であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)の酸価は17.2KOHmg/gであった。非結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は62℃であった。
【0138】
(非結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成)
非結晶性ポリエステル樹脂(1)の反応終了時に1,2,4トリメリット酸1.2モル部を添加し、樹脂末端修飾を行い、非結晶性ポリエステル樹脂(2)を合成した。
非結晶性ポリエステル樹脂(1)と同様にして分子量を測定したところ、得られた非結晶性ポリエステル樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は34,400であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂(2)の酸価は24.4KOHmg/gであった。非結晶性ポリエステル樹脂(2)の融点測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は63℃であった。
【0139】
(非結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成)
非結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、テレフタル酸80モル部と、イソフタル酸20モル部の代わりにテレフタル酸40モル部とドデセニルコハク酸32モル部とトリメリット酸6モル部を用いて合成を行い、非結晶性ポリエステル樹脂(3)を合成した。
非結晶性ポリエステル樹脂(3)の重量平均分子量(Mw)は20,200であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂(3)の酸価は19.2KOHmg/gであった非結晶性ポリエステル樹脂(3)の融点測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度(Tg)は64℃であった。また非結晶性ポリエステル樹脂(3)はTHF不溶分が20%あった。
【0140】
(結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル43.4部と、1,10−デカンジオール32.8部と、ジメチルスルホキシド27部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で4時間攪拌を行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い1.5時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂(1)65部を合成した。
【0141】
非結晶性ポリエステル樹脂(1)と同様にして分子量を測定したところ、得られた脂肪族結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は15,400であった。
また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)と同様にして融点測定を行い、DSCスペクトルを得たところ、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂(1)は明確なピークを有し、融点は76℃であった。
【0142】
(非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1))
非結晶性ポリエステル樹脂(1)160部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株))により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を得た。
非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は200nmであり、固形分量は30%であった。
【0143】
(非結晶性ポリエステル樹脂分散液(2))
非結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて非結晶性ポリエステル樹脂(2)を用いた以外は非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にして非結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)を得た。非結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は180nmであり、固形分量は30%であった。
【0144】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(1))
非結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて結晶性ポリエステル樹脂(1)を用いた以外は非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にして結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は170nmであり、固形分量は30%であった。
【0145】
(離型剤分散液)
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP−9、融点:75℃):50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):0.5部
・イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤分散液(固形分濃度:20%)を調製した。離型剤の体積平均粒子径は0.23μmであった。
【0146】
(着色剤分散液)
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))
1000部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 15部
・イオン交換水 9000部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して、着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の体積平均粒子径は0.16μm、固形分濃度は20%であった。
【0147】
(陽イオン交換性無機粒子分散液(1))
ゼオライト(ゼオラムA−3 東ソー社製):20gをエタノール:100gに混合し、超音波で分散してスラリーを得た。このスラリーを0.3mm径ジルコニア製ビーズ500gとともに容量1Lのバッチ式サンドミル(アイメックス製)に入れ、ディスク回転数2000rpmで30分間粉砕した。次に200gのイオン交換水とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1.0gを添加し、エバポレーターで減圧にしてエタノールを除去し、固形分濃度:10%になるようにイオン交換水を添加して、陽イオン交換性無機粒子分散液(1)を得た。陽イオン交換性無機粒子分散液(1)の体積平均粒子径は200nmであった。
【0148】
(陽イオン交換性無機粒子分散液(2))
ゼオライトの代わりにベントナイト(クニピアF クニミネ工業株式会社製)を用いた以外は陽イオン交換性無機粒子分散液(1)と同様にして陽イオン交換性無機粒子分散液(2)を得た。陽イオン交換性無機粒子分散液(2)の体積平均粒子径は180nmであった。
【0149】
(陽イオン交換性無機粒子分散液(3))
ディスク回転数500rpmで5分間粉砕した以外は陽イオン交換性無機粒子分散液(1)と同様にして陽イオン交換性無機粒子分散液(3)を得た。陽イオン交換性無機粒子分散液(3)の体積平均粒子径は1800nmであった。
【0150】
(陽イオン交換性無機粒子分散液(4))
超音波(100kHz)を照射しながらディスク回転数4000rpmで60分間粉砕した以外は陽イオン交換性無機粒子分散液(1)と同様にして陽イオン交換性無機粒子分散液(4)を得た。陽イオン交換性無機粒子分散液(4)の体積平均粒子径は100nmであった。
【0151】
[実施例1]
(トナー(1)の製造)
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) 23部
・非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) 267部
・着色剤分散液 25部
・離型剤分散液 40部
・アニオン性界面活性剤(テイカパワー/テイカ社製) 2.0部
−乳化工程−
上記原料を2Lの円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラララックスT50)を用い、ホモジナイザーの回転数を4000rpmにして、せん断力を加えながら10分間分散して混合した。次いで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)の10%硝酸水溶液(硝酸の含有量は0.05N)2.0部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を5000rpmにして15分間分散して混合し、原料分散液とした。
【0152】
−凝集工程−
その後、攪拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターにて加熱し始め、42℃にて凝集粒子の成長を促進させた。この際、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて原料分散液のpHを3.2以上3.8以下の範囲に調整した。原料分散液を上記pH範囲に保持して2時間ほど放置し、凝集粒子を形成した。この凝集粒子の体積平均粒子径は5.4μmであった。
【0153】
−融合工程−
次に、原料分散液に非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)100部を追添加し、前記凝集粒子の表面に非結晶性ポリエステル樹脂(1)の樹脂粒子を付着させた。さらに、原料分散液を44℃に昇温し、光学顕微鏡及びマルチサイザーIIを用いて、粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、凝集粒子を融合させるために、原料分散液にNaOH水溶液を滴下してpHを7.5に調整した後、原料分散液を95℃まで昇温させた。その後、3時間原料分散液を放置して凝集粒子を融合させ、光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、原料分散液を1.0℃/分の降温速度で冷却した。
【0154】
−洗浄工程−
次に、着色粒子分散液をろ過し、固液分離後の着色粒子を、着色粒子固形分量に対して20倍量の30℃のイオン交換水中に分散し、20分間攪拌してろ過を行った。
この工程を5回繰り返し、ろ液の伝導度が25μSであることを確認した。
【0155】
−湿式外添工程−
洗浄した着色粒子分散液をろ過し、固形分濃度が30%になるように着色粒子にイオン交換水を添加し、30℃で均一になるように撹拌混合した。ここに着色粒子100部に対して陽イオン交換性無機粒子(ゼオライト)が3%になるように陽イオン交換性無機粒子分散液(1)を滴下して撹拌後、10%硝酸水溶液を滴下し、全体のpHが5.0になるように調整して30分間撹拌後、イオン交換水を添加して、全体の総固形分濃度を12%になるように調整した。次にノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897)を総固形分に対して1.0%添加して撹拌後に分散液の温度を55℃になるように調整して60分間撹拌した。この分散液を30℃まで冷却後にろ過し、30℃/20倍量のイオン交換水に分散し、20分間攪拌してろ過を行った。この工程を3回繰り返して洗浄を行った後に、凍結真空乾燥機で乾燥を行いトナー粒子(1)を得た。このトナー粒子(1)をSEMで観察したところ、トナー粒子表面にゼオライト粒子が1/3程度埋没した形で固着しているのが観察された。ゼオライト粒子は、着色粒子表面に均一に付着していた。
【0156】
−乾式外添工程−
このトナー粒子(1)100部に対して、外添剤として、表面疎水化処理した1次粒子径40nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製、疎水性シリカ:RY50)0.8%と、メタチタン酸100部にイソブチルトリメトキシシラン40部及びトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10部を処理した反応生成物である1次粒子径20nmのメタチタン酸化合物粒子1.0%とを添加し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。さらに超音波振動篩(ダルトン社製)にかけてトナー(1)を得た。トナー(1)の組成等を表1に示す。
【0157】
(キャリア)
・フェライト粒子(平均粒径;35μm) 100部
・トルエン 14部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力24mN/m)1.6部
・カーボンブラック(キャボット社製「VXC−72」、抵抗100Ωcm以下) 0.12部
・架橋メラミン樹脂粒子(平均粒径;0.3μm、トルエン不溶) 0.3部
フェライト粒子を除く上記成分と、ガラスビーズ(粒径:1mm、トルエンと同量)とを関西ペイント社製サンドミルに投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌して被覆樹脂層形成用溶液を調製した。次に、この被覆樹脂層形成用溶液と前記フェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、温度を60℃に保って30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去することにより被覆樹脂層を形成してキャリアを得た。
【0158】
<評価>
トナー(1)に対して下記評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
(粘弾性測定 G*/tanδ)
レオメーター(レオメトリックサイエンティフィック社製:ARESレオメータ)を使用し、パラレルプレートを用いて周波数1Hzの条件で、昇温測定を行った。120℃から140℃程度でサンプルをセットし、室温まで冷却した後、昇温速度1℃/分で加熱し、30℃から150℃の範囲で1℃毎に測定を行い、110℃における複素弾性率(G*)、及びtanδを測定した。
【0159】
(保管性評価)
トナー(1)を10cm×10cmの箱に入れ、80g/cmになるように加重をかけた状態で、50℃/50%RHの環境下で24時間放置して放置サンプルを得た。次にパウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用い、上段より目開き53μm、45μm、及び、38μmのふるいを直列的に配置し、53μmのふるい上に正確に秤量した2gの前記放置サンプルを投入し、振幅1mmで90秒間振動を与え、振動後の各ふるい上のトナー重量を測定し、それぞれに0.5、0.3、及び、0.1の重みをかけて加算し、得られた数値に100を乗じたものの値を保管性の目安とした。本実施形態において、保管性は前記振動後のトナー重量が40以下であれば、通常実用上問題無く使用される。
【0160】
(最低定着温度評価)
トナー(1)5部とキャリア95部とをVブレンダーにいれ20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、現像剤(1)を作製した。得られた現像剤(1)を定着装置を取り外したDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)の現像器に充填して、以下の未定着画像を採取した。
・試験紙:FX社製 リサイクルコピー用紙G70(古紙パルプ70%、坪量67g/m、ISO白色度72%)
・画像1:2cm×5cm、画像面積率30%のハイライト画像
・画像2:2cm×5cm、画像面積率5%の文字画像
【0161】
次に、得られた未定着画像をDC155(富士ゼロックス(株)製)のロール型定着装置を改造して定着圧力を可変とした定着装置を用いて、以下の定着条件で未定着画像の定着を行った。
・面圧;0.6kgf/cm
・プロセススピード;200mm/s
・定着温度;110℃から5℃おきに温度を上げて実施。
得られた定着画像1、2について、画像しごき試験器を用いて画像強度の評価を行った。なお画像1、2は孤立ドットや細線による画像であり、本評価は孤立画像強度の評価といえる。画像しごき試験器は、軸方向を平行にした直径10cmの一対の円筒状ゴムロールを備えている。このゴムロールの間に同じ条件で定着した定着画像を画像同士が重なるようにして挟み、ゴムロール間の加重が6kgfになるように加重を掛けて、画像をしごくようにゴムロールが同方向に40rpmの速度で回転する条件とした。得られたしごき画像を限度見本を用いてG1乃至G7まで評価して、実使用上問題ないG4以下となるときの定着温度を最低定着温度とした。
【0162】
(画像光沢評価)
・試験紙:C2紙(富士ゼロックス社製/坪量70g/m
・画像:4cm×5cm、トナー載り量;0.6mg/cm、画像面積率;100%ソリッド画像
前記最低定着温度より20℃高い温度で定着したサンプル画像の光沢評価を行った。測定はJIS Z 8741に基づき、Gloss Meter GM−26D(村上色彩技術研究所)を用い、入射角75°で測定した。
画像光沢性の数値としては、30以下であれば実用上問題ない。
【0163】
[実施例2]
湿式外添工程において陽イオン交換性無機粒子分散液(1)に代えて陽イオン交換性無機粒子分散液(2)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー(2)を得た。トナー(2)の組成等を表1に示す。また、トナー(2)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0164】
[実施例3]
非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)に代えて非結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)を用い、乳化工程において凝集剤を3.0部滴下した以外は実施例1と同様にしてトナー(3)を得た。トナー(3)の組成等を表1に示す。また、トナー(3)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0165】
[実施例4]
乳化工程において凝集剤を1.0部滴下した以外は実施例1と同様にしてトナー(4)を得た。トナー(4)の組成等を表1に示す。また、トナー(4)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0166】
[実施例5]
湿式外添工程において陽イオン交換性無機粒子分散液(1)に代えて陽イオン交換性無機粒子分散液(3)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー(5)を得た。トナー(5)の組成等を表1に示す。また、トナー(5)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0167】
[実施例6]
湿式外添工程において陽イオン交換性無機粒子分散液(1)に代えて陽イオン交換性無機粒子分散液(4)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー(6)を得た。トナー(6)の組成等を表1に示す。また、トナー(6)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0168】
[比較例1]
実施例1において洗浄工程の〔イオン交換水で洗浄する工程〕を実施した後、湿式外添工程を実施せず凍結真空乾燥機で乾燥を行い着色粒子(7)を得た。この着色粒子(7)を用いて乾式外添工程を実施した以外は実施例1と同様にしてトナー(7)を得た。トナー(7)の組成等を表1に示す。また、トナー(7)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0169】
[比較例2]
・非結晶性ポリエステル樹脂(3) 790部
・結晶性ポリエステル樹脂(1) 80部
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP−9、融点:75℃) 80部
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)) 50部
上記原料をヘンシェルミキサーで混合後、バンバリーミキサーで溶融混練後に圧延してハンマーミルで粗破砕した。次にジェットミル粉砕機で粉砕し、エルボージェット分級機で分級を行い、着色粒子を得た。
【0170】
着色粒子に対して、陽イオン交換性無機粒子分散液(1)で用いたゼオライト粒子を3重量%を乾式外添工程で添加した以外は実施例1と同様に外添することでトナー(8)を得た。このトナー(8)をSEMで観察したところ、ゼオライト粒子は、着色粒子表面に不均一に付着していた。
トナー(8)の組成等を表1に示す。また、トナー(8)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0171】
[比較例3]
乳化工程において凝集剤として塩化ナトリウムの20%水溶液35部を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー(9)を得た。トナー(9)の組成等を表1に示す。また、トナー(9)を用いて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0172】
【表1】

【符号の説明】
【0173】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3、110 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、二価以上の金属元素と、前記金属元素とイオン結合可能な基を有する結着樹脂と、を含む着色粒子と、
前記着色粒子の表面に付着された陽イオン交換性無機粒子と、
を含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記陽イオン交換性無機粒子の体積平均粒子径が、100nm以上2000nm以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記イオン結合可能な基が、カルボキシル基である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記陽イオン交換性無機粒子が、ゼオライトを含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
着色粒子分散液中に陽イオン交換性無機粒子を添加して着色粒子表面に前記陽イオン交換性無機粒子を付着する付着工程と、前記着色粒子分散液を前記着色粒子に含有される結着樹脂のガラス転移温度以上の温度まで加熱して前記陽イオン交換性無機粒子を前記着色粒子に固着する加熱工程と、を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項7】
トナーが少なくとも収容され、前記トナーが請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーであるトナーカートリッジ。
【請求項8】
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項6に記載の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジ。
【請求項9】
感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項6に記載の静電荷像現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記感光体上に形成された前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置。
【請求項10】
前記定着手段が、熱および圧力を前記被転写体に付与する圧接部を有するロール状定着手段であり、前記圧接部における面圧が0.2kgf/cm以上2.0kgf/cm以下である請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−211096(P2010−211096A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59162(P2009−59162)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】