非導波管線路−導波管変換器及び非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置
【課題】導波管回路側にフィルタを挿入する場合であっても、小型化及び低価格化が可能となり、不要信号の十分な抑圧ができ、また高調波においても広い周波数帯域の減衰ができるようにする。
【解決手段】短絡面Sが設けられた第2導波管10Bと、誘電体基板12上に形成されたマイクロ波ストリップ線路13の先端で、導波管10のH面から内部へ挿入されたプローブ14とを有する変換器において、上記短絡面Sから突出させてプローブ14まで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体16を設ける。上記導波管10(10A,10B)では、矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定し、プローブ14には、開放スタブを設ける。また、変換器の導波管と送信機側導波管との間に、導波管ステップインピーダンス変換器を設ける。
【解決手段】短絡面Sが設けられた第2導波管10Bと、誘電体基板12上に形成されたマイクロ波ストリップ線路13の先端で、導波管10のH面から内部へ挿入されたプローブ14とを有する変換器において、上記短絡面Sから突出させてプローブ14まで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体16を設ける。上記導波管10(10A,10B)では、矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定し、プローブ14には、開放スタブを設ける。また、変換器の導波管と送信機側導波管との間に、導波管ステップインピーダンス変換器を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導波管線路−導波管変換器及び通信用装置、特にマイクロ波回路に使用される分布定数線路又は同軸線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器で、所望の不要周波数成分を抑圧するフィルタ機能を有する非導波管線路−導波管変換器及び通信用装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロストリップ線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器では、変換部の前後で、特定の周波数を抑圧する目的でフィルタを挿入する場合、分布定数回路を用いるBRF(バンドリジェクションフィルタ)、LPF(ローパスフィルタ)、HPF(ハイパスフィルタ)、BPF(バンドパスフィルタ)が用いられる。また、導波管部分においては、複数の共振器を結合して形成するBPFやBRFが用いられ、抑圧帯域が比較的狭い場合は、導波管伝送方向と直交する向きに取り付けられた導体板の形状により所定の周波数を抑圧する単共振回路を挿入することが行われる(下記特許文献1,2)。
【0003】
図12(A),(B)には、上記非導波管線路−導波管変換器の構成が示されており、この変換器では、矩形状空洞を形成した金属製導波管1内に、誘電体基板2上に形成されたマイクロストリップ線路3の先端部をプローブ4として挿入する。即ち、導波管1のH面(上面)からプローブ4を内部に突出させる構成とされる。なお、符号5はスルーホールである。
【0004】
一方、衛星を使用した双方向通信では、通信装置内の受信機への妨害及び法令上の規定から送信機から送出される不要信号について厳しい要求仕様があり、また一般の民生用途も睨んだ製品が多くなったことから、価格及び消費電力の低減の要求も強くなっている。このため、これら不要信号の抑圧はできるだけ、コストをかけずに簡易な方法により実現する必要があり、また抑圧機構は最終増幅器以降にも必要であることから、これら回路による送信信号の損失が大きければ結果的に、消費電力の増大を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4301722号公報
【特許文献2】特開2007−180655号公報
【特許文献3】特許第4262192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の非導波管線路側にフィルタを挿入する場合は、一般に誘電体基板上に回路を形成するため、誘電体の損失に起因して高いQ値のフィルタが実現できない。即ち、例えばイメージ信号や受信周波数帯域雑音を抑圧する際で、通過帯域と抑圧周波数間の離調周波数が小さい場合には採用できず、これら周波数関係に問題がなく採用できる条件であっても、挿入損失が大きい、占有面積が大きいなどの問題がある。
【0007】
一方、導波管回路側にフィルタを挿入する場合は、高いQ値/低損失の回路を実現し易いものの、導波管で形成するフィルタ回路は例えばワッフルアイアン型フィルタ等のように一般的に立体形状であるため、占有体積が大きく、また形状や求める特性によっては精密な機械加工を必要とし、コストの上昇を伴うことが多い。
【0008】
これらの問題を解消し、不要信号であるイメージ信号、受信周波数帯域雑音の抑圧をするため、例えば特許文献1,2では、テーパー導波管と金属板フィルタを組み合わせたもの等が用いられるが、この金属板フィルタは導波管に対し電気的に安定した装着状態にすることが難しい。即ち、この金属板フィルタの安価な装着方法として機械的カシメ等を使用すると、しばしば電気的(マイクロ波的)な接触不良により、送信帯域の挿入損失の増加や、目的とした抑圧周波数帯域内での特性悪化が生じることがあり、これらの不具合をなくすためのスクリーニング試験等の生産上の管理を行う必要がある。
【0009】
また、金属板フィルタ自体は、機械的占有体積が小さくて済むが、金属板フィルタの前後に他の導波管回路(フィルタや分波器)を接続・装着する場合は、構造上、金属板フィルタと他の導波管回路との間に適当な長さが必要であり、小型化の妨げとなる。
【0010】
更に、フィルタの素材には何らかの防錆処理が必要であるため、メッキ処理等を行うと、このメッキ処理の種類によっては、表皮抵抗の増加を招き、結果として送信帯域での挿入損失増加の原因となる。
【0011】
一方、不要信号である第2高調波に関しては、導波管内に抑圧回路を設置する場合は高次モードによる悪影響があるため、上述のように、誘電体基板上に形成したマイクロストリップ回路等で信号抑圧フィルタを形成するため、送信帯域に関しても、損失が発生することになり、これらの加算効果によって、送信電力の低下が生じ、送信機電力効率の低下を招き、結果として消費電力の増加を発生させていた。
【0012】
このような第2高調波の抑圧を図るものとして、上記特許文献3があり、この特許文献1は、図12(A)に示されるように、プローブ4からλ/2(λ:抑圧周波数の波長)だけ離れた位置に金属片6を設けている。また、この金属片6は、その長手方向(プローブ4の挿入方向)の長さもλ/2とし、目的の周波数においてプローブ4の先端が疑似接地となるように構成することで、例えば2倍の高調波を抑圧することができる。
【0013】
しかし、この抑圧回路においては、回路構成上、Q値が高いため、抑圧周波数帯域が広い場合は十分な減衰を確保することが困難である。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、導波管回路側にフィルタを挿入する場合であっても、小型化及び低価格化が可能となり、不要信号の十分な抑圧ができ、また高調波においても広い周波数帯域の減衰ができ、送信電力の低下も生じることのない非導波管線路−導波管変換器及び非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、短絡面が設けられた導波管と、この導波管内部へそのH面(磁界に平行な面)から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器において、上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体を設けたことを特徴とする。
即ち、導波管の短絡面から柱状導体を突出させ、同軸状の構造にすることで、インダクタ(L)と容量(C)からなる並列共振回路が構成され、かつ柱状導体をプローブへ近接させ容量結合させることで、インダクタと容量からなる直列共振回路が構成されるようにする。
【0016】
請求項2の発明は、上記プローブの上記導波管H面の近傍位置に、所定の周波数を接地条件とする開放スタブを設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、短絡面が設けられた矩形導波管と、この導波管内部へそのH面(磁界に平行な面)から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置において、上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を構成するための柱状導体を設けると共に、上記導波管の矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定したことを特徴とする。
【0017】
なお、送信周波数で規定された上記導波管とは異なるサイズの出力側(送信機側)導波管に対し、上記変換器を接続する場合は、これらの間に、矩形導波管の磁界方向の幅を上記変換器の磁界方向の幅と同一とし、電界方向の幅を異なる寸法とした導波管ステップインピーダンス変換器を設けることができる。
また、上記分布定数線路先端プローブ及び開放スタブは、これらプローブ及び開放スタブが形成されている部分の誘電体基板のみを残すように形成することができる。
【0018】
上記請求項1の構成によれば、柱状導体を設けることで導波管が同軸状構造となり、この柱状導体の長さに起因するインピーダンス特性と柱状導体とプローブとの適当な結合容量によって、等価的にプローブ端で短絡に見える共振回路が形成されることになり、この共振回路によって、イメージ信号や受信周波数帯域雑音における所定の周波数帯を抑圧することが可能となる。
【0019】
上記請求項2の構成によれば、開放スタブを、誘電体基板上であっても接地導体のない導波管内プローブに設けており、プローブにおける開放スタブの接続点が所定の抑圧周波数において接地と等価となることで、所定の周波数帯、例えば第2高調波が良好な減衰特性の下で抑圧される。また、プローブがH面近傍に配置されるので、所定の周波数帯の伝送波を導波管モードに切り換わる前に効率よく減衰させることができる。
【0020】
請求項3の構成によれば、送信機等に使用される通信用装置において、非導波管線路−導波管変換器の導波管と出力側導波管との間に、導波管ステップインピーダンス変換器を設けるので、受信周波数帯付近が導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定した導波管の抑圧特性を維持したまま、上記柱状導体を有する共振回路で抑圧できなかった不要周波数を抑圧することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非導波管線路−導波管変換器によれば、変換器の寸法、体積を増加させることなく、イメージ信号や受信周波数帯域雑音において所望の抑圧特性を実現することが可能となる。また、変換器内部に抑圧のための共振回路を内蔵するため、変換器に接続される他の導波管回路との干渉等を避けることかでき、更には構造的に部品の形状変更で実現できるため、金属板フィルタ等の部品の追加、即ちコストの上昇を招くことがなく、総合的に小型化、コスト低減を図ることができるという効果がある。また、生産時の特性のバラツキがなく、しかも特別な防錆処理も必要なく、この防錆処理に起因した挿入損失の増加を招くこともないという利点がある。
【0022】
請求項2の発明によれば、基板上に形成した回路でありながら導波管内のプローブ部分でフィルタ機能を実現することから、例えば第2高調波の抑圧において実質的な誘電体損失を減少させることができ、またフィルタ回路(開放スタブ)がプローブに直接接続されていることから、導波管内に形成した回路でありながら適度にQ値の低下を図ることができ、広い周波数帯域の第2高調波を十分な減衰量で抑圧することが可能となる。
更に、請求項1及び2は、共にフィルタを導波管内に形成するため、送信周波数帯域での挿入損失を最小限に抑えることができ、送信電力の低下、消費電力の増加を抑制することが可能になるという効果がある。
【0023】
請求項3の発明によれば、送信機において、例えばイメージ信号や受信周波数帯域の一部の雑音は柱状導体を用いた共振回路にて抑圧し、第2高調波は開放スタブにて抑圧すると共に、導波管のカットオフ効果により、柱状導体を用いた共振回路で抑圧できない受信帯域の雑音やイメージ信号を良好に抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例に係る非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【図2】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器の等価回路を示す回路図である。
【図3】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器において柱状導体を持たないときの特性を示すグラフ図である。
【図4】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器の特性を示すグラフ図である。
【図5】第2実施例の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は導波管の底面側からプローブ方向を見た図である。
【図6】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は図(B)のI−I線の部分の正面図である。
【図7】第3実施例の第1導波管の他の構成を示す断面図である。
【図8】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の特性を示すグラフ図である。
【図9】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の第2高調波周波数付近の特性を示すグラフ図である。
【図10】第4実施例の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【図11】第5実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は図(B)のII−II線の部分の正面図である。
【図12】従来の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1(A),(B)には、本発明の第1実施例に係る非導波管線路−導波管変換器が示されており、図1に示されるように、導波管10は第1導波管10Aとショート面Sが設けられた第2導波管10Bからなり、この第1導波管10Aと第2導波管10Bとに挟まれる形で、誘電体基板12が設けられる。この誘電体基板12には、マイクロストリップ線路(分布定数回路)13の先端を延長する形のプローブ14が導波管10の上側のH面(磁界に平行な面)から内部へ挿入されるように形成され、また第1導波管10Aと第2導波管10Bとが合せられる部分のそれぞれの壁面に接触するように、接地のためのスルーホール5が設けられる。
【0026】
そして、第1実施例では、上記第2導波管10Bのショート面Sがプローブ14から略λ0/4(λ0:通過周波数の波長)の長さの位置にあるが、このショート面Sの中央位置からプローブ14へ向けて突出させ、このプローブ14に近接させた角柱状(四角柱)の柱状導体16が形成される。この柱状導体16は、ショート面Sから抑圧周波数の波長λ1の略1/4、即ちλ1/4の長さに設定されており、この柱状導体16の先端はプローブ14に接近する関係となる。この柱状導体16を設けることで、第2導波管10Bは同軸状の構造となる。
【0027】
このような柱状導体16を設けた回路について電磁界解析を行うと、ある特定の周波数において柱状導体16の部分にTEMモードに近い電磁界分布が認められる。即ち、このTEMモードが発生するのは、上記柱状導体16が当該モードにおいて1/4波長相当のときであり、その他の周波数では強いTEMモードは励起されず、導波管内はほぼ通常の導波管モードとなる。
【0028】
第1実施例では、TEMモードが励起している柱状導体16の先端は、プローブ14と比較的近い距離に配置されているので、プローブ14に対して直接電気的に結合していると考えられることから、これらを踏まえて簡単な等価回路で表せば、図2のように表現することができる。
【0029】
図2において、18は導波管入力端子、19は入力導波管、20はプローブ、21は非導波管線路出力端子、22はショート面までの導波管線路、23はショート面、24は柱状導体16のTEMモードで発生する共振回路、25は柱状導体16とプローブ14間に寄生する結合容量を表す。即ち、第2導波管10Bに柱状導体16を設けた同軸状構造により、L(インダクタ)C(容量)の並列共振回路24が構成されると共に、柱状導体16をプローブ14へ近接させ容量結合することで、例えばイメージ信号や受信周波数帯域雑音の抑圧するためのLCの直列共振回路が構成される。
【0030】
第1実施例は以上の構成からなり、次にその動作を説明する。
図2に示したように、ショート面Sの中央に突出させた略λ1/4の長さの柱状導体16を含む同軸状構造により、並列共振回路24が形成されることになり、この共振回路24の共振周波数f01では回路端は開放と等価となるが、このf01より低域側では、共振回路24の実効的インピーダンスは誘導性であり、この等価インダクタと結合容量25とで形成される直列共振回路が発生し、この共振周波数f02ではプローブ14の先端は短絡と等価となる。
【0031】
これらを計算式で表せば、以下の数式1及び2となる。但し、共振回路15内の等価インダクタをL1 、等価キャパシタをC1 、結合容量25をC2 とする。
【数1】
【数2】
【0032】
即ち、上記共振周波数f02では、プローブ14端が短絡に見えるため、減衰特性を得ることができ、通過帯域では、ほぼ通常の非導波管線路−導波管変換器と同等の特性を有することとなる。
また、この共振回路は非常に低損失であり、Q値が高いため、柱状導体16のプローブ14への結合を疎に設定すれば、通過周波数と抑圧周波数間の離調周波数が小さくても通過帯域への悪影響を最小限とすることが可能である。
【0033】
なお、上記共振回路24は同軸状構造で生成されるものであり、第2導波管10Bに対する柱状導体16のサイズ(太さ等)や長さにより、その特性は変化し、また上記結合容量25は主にプローブ14との距離で決定される。従って、これらのパラメータを適当に組み合わせることで、所望の特性が得られ、実際の設計は電磁界シミュレータ等を用いて行うこととなる。
【0034】
図3及び図4には、第1実施例のシミュレーションによる特性例が示されており、図3は共振回路がないとき、図4は柱状導体16を設けたときのもので、通過帯域を13.75〜14.5GHz、抑圧周波数を12.75GHz付近に設定したときの結果である。図4に示されるように、柱状導体16を設けたときは、12.75GHz付近で大きな減衰量が得られており、このような特性によって、例えば受信周波数帯域の一部の雑音を良好に抑制することができる。
【0035】
第1実施例では、マイクロストリップ線路(分布定数線路)から導波管線路への変換について説明したが、本発明は、同軸線路から導波管線路への変換、或いはその他の多様な伝送線路との変換においても適用することができる。
【0036】
図5(A)〜(C)には、同軸線路に適用した第2実施例の構成が示されている。この第2実施例では、ショート面Sが設けられた導波管27の上面のH面(磁界に平行な面)から導波管27内に、同軸線路28の中心導体の先端がプローブ29として突出・配置される。そして、上記導波管27のショート面Sの中央位置から略λ1/4の長さで突出し、プローブ29に近接するように角柱状の柱状導体30が配置される。
【0037】
このような第2実施例の構成によっても、上記第1実施例と同等の効果を得ることができる。なお、上記第1及び第2の実施例では、柱状導体16,30を角柱状としたが、この柱状導体を円柱状等、その他の形状としてもよい。また、導波管10,27として矩形のものを用いたが、円形導波管を用いることもできる。
【0038】
図6(A)〜(C)には、第3実施例の構成が示されており、この第3実施例は、イメージ信号や受信周波数帯域雑音の抑制に加え、第2高調波の抑制を図りながら、通信用機器である送信機に適用することのできる装置である。具体的には、Ku−Band帯(送信周波数:13.75〜14.5GHz、受信周波数:10.95〜12.75GHz)の衛星通信システム等に適用される。このシステムの送信機のうち「Universal Band」と呼ばれるものは、通常、IF周波数を0.95〜1.7GHz、局部発振器周波数を12.8GHzとしているので、イメージ信号の周波数は11.10〜11.85GHzとなる。
【0039】
この第3実施例は、第1実施例で説明した柱状導体16を形成した矩形の第2導波管10Bと、詳細は後述するが、この第2導波管10Bのサイズ(磁界方向及び電界方向の長さ)と同一の矩形の導波管部32を有する第1導波管10Cを有する。また、図6(B)に示されるように、第1導波管10Cと第2導波管10Bとに挟まれる形で、誘電体基板12が設けられ、この誘電体基板12に、マイクロストリップ線路13及びプローブ14が形成されるが、このプローブ14に接続する形で、上記導波管10B内のH面の近傍位置で、このH面に略平行に、開放スタブ33a,33bが形成される。第3実施例の開放スタブ33a,33bは、第2高調波を抑圧するために設けられ、プローブ14の中心からD≒λ2/4(λ2:所定の抑圧周波数の波長)の長さを持ち、先端が開放されたものである。
【0040】
即ち、略λ2/4の長さの開放スタブ33a,33bを設けることで、所定の抑圧周波数において、この開放スタブ33a,33bが接続されるプローブ14の接続点が接地と等価となり、第3実施例では第2高調波の周波数帯域において良好な減衰特性を得ることができる。この開放スタブ33a,33bは、導波管部32又は第2導波管10B内の中心位置ではなく、H面の近傍に配置することで、目的の周波数帯の伝送波を導波管モードに切り換わる前に効率よく減衰させることができる。
【0041】
更に、第3実施例では、第1導波管10Cの導波管部32と第2導波管10Bの矩形の磁界方向の幅(長辺の幅)dを例えば11.6mmとし、この導波管(32,10B)のカットオフ周波数を、受信周波数帯域の上限である12.75GHz以上で、送信帯域下限である13.75GHz未満(12.75〜13.75GHz)に設定し、第1導波管10Cの導波管部32の伝搬方向の長さに比例した減衰量を得るようにしている。即ち、上述した柱状導体16で得られる単共振抑圧特性により、送信帯域の直ぐ下側の周波数に急峻な減衰特性(図4)を生成し、またこの抑圧周波数より下側は上記の導波管カットオフに起因した、周波数が下がるほど減衰量が大きくなる減衰特性を生成することで、これらの減衰特性を加算した特性(後述の図10)を得ることができる。
【0042】
ところで、通常、機器間の接続に使用される導波管には、使用周波数によって推奨される規格化寸法があり、実施例の周波数においては、EIA規格の例えばWR75(IECではR120)が使用されるため、上記のような変則サイズの導波管(32,10B)では不都合である。そこで、第3実施例では、第1導波管10Cの送信機側(出力側)導波管部(最終出力端子)35として、上記WR75を用い、磁界方向の寸法を絞ったマイクロストリップ線路−導波管変換器部(10B,32)と送信機側導波管部35との間に、物理的サイズの変換と共にインピーダンス整合をとるためのステップインピーダンス変換器36を設けている。
【0043】
このステップインピーダンス変換器36は、ステップ状に導波管部36a,36bを直線的に接続したものであるが、このステップインピーダンス変換器として、非導波管線路−導波管変換器部(32,10B)の磁界方向(H面)のみを単に絞った寸法とすると、インピーダンスが高くなり過ぎる。そこで、実施例のステップインピーダンス変換器36は、磁界方向と電界方向の両方を絞った導波管部36aと、導波管部32の磁界方向の幅が同じで電界方向の幅を小さくした導波管で36bとから構成する。即ち、導波管部36aにより、その部分のインピーダンスを送信機側導波管部35のサイズのインピーダンスに近い状態とし、導波管部36bにより、上述した導波管カットオフ周波数による受信周波数帯域の抑圧特性を効率よく得るようにしている。
【0044】
図7には、第1導波管のステップインピーダンス変換器(インピーダンス整合回路)の他の構成が示されており、この例の第1導波管10Dは、導波管を曲げるための導波管部(ベンド導波管)36dを設けると共に、これと送信機側導波管部35との間に導波管部36cを配置する。このステップインピーダンス変換器36の導波管部36cと導波管部36dは、矩形のサイズ、即ち磁界方向及び電界方向の幅が上記導波管36a,36bと同一であるが、それらの電界方向(E面)の中心をオフセット(下側へずらす)させている。このような構成のステップインピーダンス変換器36によっても、同様の特性を得ることができる。
【0045】
このような第3実施例によれば、非導波管線路−導波管変換器としての導波管部32と第2導波管10Bの構成により、図2で示した等価回路が形成され、柱状導体16を設けた同軸状構造により、LCの並列共振回路24が構成されると共に、柱状導体16をプローブ14へ近接させ容量結合することで、LCの直列共振回路が構成される。
【0046】
そして、上述のように、インピーダンス整合回路として、磁界方向の幅を一定にしたステップインピーダンス変換器36を使用することを条件として設計を行ったとき、図8のような特性を得ることが可能である。即ち、送信周波数帯の下限である13.75GHzの少し下側の周波数から約12.75GHzまで急峻に減衰し、その下側の周波数においても、大きく減衰した特性が得られており、これによって、イメージ信号や受信周波数帯域雑音等を良好に抑制することができる。
【0047】
また、第3実施例では、プローブ14に開放スタブ33a,33bを設けたので、第2高調波の抑圧を図ることも可能となる。図9には、第3実施例において、抑圧周波数を通過周波数の第2高調波帯である、27.5〜29GHzとしたときに得られた特性例が示されており、図9のように、上記27.5〜29GHzの抑圧周波数帯域で43dB程度の減衰が得られており、また30dBの抑圧を得ている帯域幅は5GHzと帯域も広いことが判る。
【0048】
図10(A),(B)には、上記実施例の導波管内の誘電体基板の領域削減を図った第4実施例の構成が示されている。この第4実施例のプローブ14、開放スタブ33a,33b等の構成は、第3実施例等と同様であるが、誘電体基板38において、プローブ14と開放スタブ33a,33bが形成されている部分とスルーホール5が形成された部分のみを残し、導波管10の内部空間に合わせて、その他の領域50の誘電体基板をカットして抜いたものである。
【0049】
このような第4実施例の構成によれば、領域50の誘電体基板が抜かれているので、誘電体基板38が存在することに起因する挿入損失を更に減少させることができるという効果がある。
【0050】
図11(A)〜(C)には、第3実施例の特徴事項を同軸線路に適用した第5実施例の通信用装置(送信機)の構成が示されている。この第5実施例では、ショート面Sが設けられた導波管40の上面のH面(磁界に平行な面)から導波管40内に、同軸線路28の中心導体の先端がプローブ29として突出・配置されており、このプローブ29に対して、導波管40内のH面の近傍位置でかつこのH面に略平行に、開放スタブ41a,41bが接続、形成される。この開放スタブ41a,41bも、第3実施例と同様に、プローブ29の中心から約λ2/4(λ2:所定の抑圧周波数の波長)の長さとされる。
【0051】
また、上記導波管40には、第3実施例と同様に、矩形の磁界方向の幅を例えば11.6mmとした導波管部42aが設けられ、この導波管部42aのカットオフ周波数を、受信周波数帯域の上限である12.75GHz以上、送信帯域下限である13.75GHz未満に設定することで、導波管部42aの長さに比例した減衰量が得られるようにしている。そして、導波管40の送信機側導波管42bと上記導波管部42aとの間に、導波管部43a,43bからなるステップインピーダンス変換器43が設けられており、このステップインピーダンス変換器は、第3実施例と同様に、磁界方向と電界方向の両方を絞った導波管部43aと、導波管部42aの磁界方向の幅と同じで電界方向の幅のみを絞った導波管で43bとから構成される。
【0052】
このような第5実施例によっても、第3実施例と同様に、イメージ信号や受信周波数帯域雑音等の不要周波数を抑圧すると共に、第2高調波を良好な減衰特性の下で抑圧することが可能となる。
【0053】
上記第3〜第5実施例では、2個の開放スタブ33a,33b,41a,41bを設けたが、この開放スタブは1個でもよいし、またこの開放スタブは全方位方向において3個以上設けることも可能である。
【0054】
更に、第3実施例において、上記開放スタブ33a,33b,41a,41bを設置することによる効果は、下記のようになる。即ち、
a.開放スタブ部分の誘電体基板(12,38)の裏面にはGNDがなく、電磁界分布が分散するため、誘電体基板の影響が減少し、分布定数線路部分より損失が少なくて済む。
b.開放スタブは、導波管H壁面近傍のプローブ(14,29)に設けられており、この部分の伝送モードは未だ導波管モードに変換されていないため、導波管内で発生する高次モードの影響を受け難く、従って導波管側負荷条件の影響による、抑圧量の大幅減少といった問題を避けることができる。
c.開放スタブは、導波管回路内に形成された回路であるが、誘電体基板上に形成されていること、プローブに直接接続されていることより、必要以上にQ値が高くなく、図12で説明した特許文献3の変換器に比して広帯域な抑圧特性を得ることができる。
d.開放スタブは、通過周波数において線路途中に容量性スタブが付加される場合と等価であるから、これを見込んだ回路設計を行えば、通過周波数での特性も所望のものを実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
マイクロストリップ線路、同軸線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器、そして非導波管線路−導波管変換器を搭載する通信用機器に適用することができる。
また、現在、運用されている衛星通信用システムは受信周波数が送信周波数より低く、また送信機のアップコンバージョンは送信周波数より低い周波数の局部発振器信号との混合により行うため、本発明は、基本的にどの周波数帯の衛星通信システムの送信機にも適用することができる。また、同様な通過帯域、抑圧周波数の関係(通過帯域に対して抑圧周波数が下側)であれば、衛星通信用送信機以外の通信用装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10,10A〜10C,27,40…導波管、
2,12,38…誘電体基板、
3,13…マイクロストリップ線路、
4,14,29 …プローブ、 16,30…柱状導体、
24…並列共振回路、 25…結合容量、
28…同軸線路、 32,36a〜36d,42a,43a,43b…導波管部、
33a,33b,41a,41b…開放スタブ、
35,42b…送信機側導波管部、
36,43…ステップインピーダンス変換器。
【技術分野】
【0001】
本発明は非導波管線路−導波管変換器及び通信用装置、特にマイクロ波回路に使用される分布定数線路又は同軸線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器で、所望の不要周波数成分を抑圧するフィルタ機能を有する非導波管線路−導波管変換器及び通信用装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロストリップ線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器では、変換部の前後で、特定の周波数を抑圧する目的でフィルタを挿入する場合、分布定数回路を用いるBRF(バンドリジェクションフィルタ)、LPF(ローパスフィルタ)、HPF(ハイパスフィルタ)、BPF(バンドパスフィルタ)が用いられる。また、導波管部分においては、複数の共振器を結合して形成するBPFやBRFが用いられ、抑圧帯域が比較的狭い場合は、導波管伝送方向と直交する向きに取り付けられた導体板の形状により所定の周波数を抑圧する単共振回路を挿入することが行われる(下記特許文献1,2)。
【0003】
図12(A),(B)には、上記非導波管線路−導波管変換器の構成が示されており、この変換器では、矩形状空洞を形成した金属製導波管1内に、誘電体基板2上に形成されたマイクロストリップ線路3の先端部をプローブ4として挿入する。即ち、導波管1のH面(上面)からプローブ4を内部に突出させる構成とされる。なお、符号5はスルーホールである。
【0004】
一方、衛星を使用した双方向通信では、通信装置内の受信機への妨害及び法令上の規定から送信機から送出される不要信号について厳しい要求仕様があり、また一般の民生用途も睨んだ製品が多くなったことから、価格及び消費電力の低減の要求も強くなっている。このため、これら不要信号の抑圧はできるだけ、コストをかけずに簡易な方法により実現する必要があり、また抑圧機構は最終増幅器以降にも必要であることから、これら回路による送信信号の損失が大きければ結果的に、消費電力の増大を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4301722号公報
【特許文献2】特開2007−180655号公報
【特許文献3】特許第4262192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の非導波管線路側にフィルタを挿入する場合は、一般に誘電体基板上に回路を形成するため、誘電体の損失に起因して高いQ値のフィルタが実現できない。即ち、例えばイメージ信号や受信周波数帯域雑音を抑圧する際で、通過帯域と抑圧周波数間の離調周波数が小さい場合には採用できず、これら周波数関係に問題がなく採用できる条件であっても、挿入損失が大きい、占有面積が大きいなどの問題がある。
【0007】
一方、導波管回路側にフィルタを挿入する場合は、高いQ値/低損失の回路を実現し易いものの、導波管で形成するフィルタ回路は例えばワッフルアイアン型フィルタ等のように一般的に立体形状であるため、占有体積が大きく、また形状や求める特性によっては精密な機械加工を必要とし、コストの上昇を伴うことが多い。
【0008】
これらの問題を解消し、不要信号であるイメージ信号、受信周波数帯域雑音の抑圧をするため、例えば特許文献1,2では、テーパー導波管と金属板フィルタを組み合わせたもの等が用いられるが、この金属板フィルタは導波管に対し電気的に安定した装着状態にすることが難しい。即ち、この金属板フィルタの安価な装着方法として機械的カシメ等を使用すると、しばしば電気的(マイクロ波的)な接触不良により、送信帯域の挿入損失の増加や、目的とした抑圧周波数帯域内での特性悪化が生じることがあり、これらの不具合をなくすためのスクリーニング試験等の生産上の管理を行う必要がある。
【0009】
また、金属板フィルタ自体は、機械的占有体積が小さくて済むが、金属板フィルタの前後に他の導波管回路(フィルタや分波器)を接続・装着する場合は、構造上、金属板フィルタと他の導波管回路との間に適当な長さが必要であり、小型化の妨げとなる。
【0010】
更に、フィルタの素材には何らかの防錆処理が必要であるため、メッキ処理等を行うと、このメッキ処理の種類によっては、表皮抵抗の増加を招き、結果として送信帯域での挿入損失増加の原因となる。
【0011】
一方、不要信号である第2高調波に関しては、導波管内に抑圧回路を設置する場合は高次モードによる悪影響があるため、上述のように、誘電体基板上に形成したマイクロストリップ回路等で信号抑圧フィルタを形成するため、送信帯域に関しても、損失が発生することになり、これらの加算効果によって、送信電力の低下が生じ、送信機電力効率の低下を招き、結果として消費電力の増加を発生させていた。
【0012】
このような第2高調波の抑圧を図るものとして、上記特許文献3があり、この特許文献1は、図12(A)に示されるように、プローブ4からλ/2(λ:抑圧周波数の波長)だけ離れた位置に金属片6を設けている。また、この金属片6は、その長手方向(プローブ4の挿入方向)の長さもλ/2とし、目的の周波数においてプローブ4の先端が疑似接地となるように構成することで、例えば2倍の高調波を抑圧することができる。
【0013】
しかし、この抑圧回路においては、回路構成上、Q値が高いため、抑圧周波数帯域が広い場合は十分な減衰を確保することが困難である。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、導波管回路側にフィルタを挿入する場合であっても、小型化及び低価格化が可能となり、不要信号の十分な抑圧ができ、また高調波においても広い周波数帯域の減衰ができ、送信電力の低下も生じることのない非導波管線路−導波管変換器及び非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、短絡面が設けられた導波管と、この導波管内部へそのH面(磁界に平行な面)から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器において、上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体を設けたことを特徴とする。
即ち、導波管の短絡面から柱状導体を突出させ、同軸状の構造にすることで、インダクタ(L)と容量(C)からなる並列共振回路が構成され、かつ柱状導体をプローブへ近接させ容量結合させることで、インダクタと容量からなる直列共振回路が構成されるようにする。
【0016】
請求項2の発明は、上記プローブの上記導波管H面の近傍位置に、所定の周波数を接地条件とする開放スタブを設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、短絡面が設けられた矩形導波管と、この導波管内部へそのH面(磁界に平行な面)から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置において、上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を構成するための柱状導体を設けると共に、上記導波管の矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定したことを特徴とする。
【0017】
なお、送信周波数で規定された上記導波管とは異なるサイズの出力側(送信機側)導波管に対し、上記変換器を接続する場合は、これらの間に、矩形導波管の磁界方向の幅を上記変換器の磁界方向の幅と同一とし、電界方向の幅を異なる寸法とした導波管ステップインピーダンス変換器を設けることができる。
また、上記分布定数線路先端プローブ及び開放スタブは、これらプローブ及び開放スタブが形成されている部分の誘電体基板のみを残すように形成することができる。
【0018】
上記請求項1の構成によれば、柱状導体を設けることで導波管が同軸状構造となり、この柱状導体の長さに起因するインピーダンス特性と柱状導体とプローブとの適当な結合容量によって、等価的にプローブ端で短絡に見える共振回路が形成されることになり、この共振回路によって、イメージ信号や受信周波数帯域雑音における所定の周波数帯を抑圧することが可能となる。
【0019】
上記請求項2の構成によれば、開放スタブを、誘電体基板上であっても接地導体のない導波管内プローブに設けており、プローブにおける開放スタブの接続点が所定の抑圧周波数において接地と等価となることで、所定の周波数帯、例えば第2高調波が良好な減衰特性の下で抑圧される。また、プローブがH面近傍に配置されるので、所定の周波数帯の伝送波を導波管モードに切り換わる前に効率よく減衰させることができる。
【0020】
請求項3の構成によれば、送信機等に使用される通信用装置において、非導波管線路−導波管変換器の導波管と出力側導波管との間に、導波管ステップインピーダンス変換器を設けるので、受信周波数帯付近が導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定した導波管の抑圧特性を維持したまま、上記柱状導体を有する共振回路で抑圧できなかった不要周波数を抑圧することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非導波管線路−導波管変換器によれば、変換器の寸法、体積を増加させることなく、イメージ信号や受信周波数帯域雑音において所望の抑圧特性を実現することが可能となる。また、変換器内部に抑圧のための共振回路を内蔵するため、変換器に接続される他の導波管回路との干渉等を避けることかでき、更には構造的に部品の形状変更で実現できるため、金属板フィルタ等の部品の追加、即ちコストの上昇を招くことがなく、総合的に小型化、コスト低減を図ることができるという効果がある。また、生産時の特性のバラツキがなく、しかも特別な防錆処理も必要なく、この防錆処理に起因した挿入損失の増加を招くこともないという利点がある。
【0022】
請求項2の発明によれば、基板上に形成した回路でありながら導波管内のプローブ部分でフィルタ機能を実現することから、例えば第2高調波の抑圧において実質的な誘電体損失を減少させることができ、またフィルタ回路(開放スタブ)がプローブに直接接続されていることから、導波管内に形成した回路でありながら適度にQ値の低下を図ることができ、広い周波数帯域の第2高調波を十分な減衰量で抑圧することが可能となる。
更に、請求項1及び2は、共にフィルタを導波管内に形成するため、送信周波数帯域での挿入損失を最小限に抑えることができ、送信電力の低下、消費電力の増加を抑制することが可能になるという効果がある。
【0023】
請求項3の発明によれば、送信機において、例えばイメージ信号や受信周波数帯域の一部の雑音は柱状導体を用いた共振回路にて抑圧し、第2高調波は開放スタブにて抑圧すると共に、導波管のカットオフ効果により、柱状導体を用いた共振回路で抑圧できない受信帯域の雑音やイメージ信号を良好に抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例に係る非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【図2】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器の等価回路を示す回路図である。
【図3】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器において柱状導体を持たないときの特性を示すグラフ図である。
【図4】第1実施例の非導波管線路−導波管変換器の特性を示すグラフ図である。
【図5】第2実施例の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は導波管の底面側からプローブ方向を見た図である。
【図6】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は図(B)のI−I線の部分の正面図である。
【図7】第3実施例の第1導波管の他の構成を示す断面図である。
【図8】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の特性を示すグラフ図である。
【図9】第3実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の第2高調波周波数付近の特性を示すグラフ図である。
【図10】第4実施例の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【図11】第5実施例の非導波管線路−導波管変換器を用いた送信機の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図、図(C)は図(B)のII−II線の部分の正面図である。
【図12】従来の非導波管線路−導波管変換器の構成を示し、図(A)は正面図、図(B)は図(A)の中央部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1(A),(B)には、本発明の第1実施例に係る非導波管線路−導波管変換器が示されており、図1に示されるように、導波管10は第1導波管10Aとショート面Sが設けられた第2導波管10Bからなり、この第1導波管10Aと第2導波管10Bとに挟まれる形で、誘電体基板12が設けられる。この誘電体基板12には、マイクロストリップ線路(分布定数回路)13の先端を延長する形のプローブ14が導波管10の上側のH面(磁界に平行な面)から内部へ挿入されるように形成され、また第1導波管10Aと第2導波管10Bとが合せられる部分のそれぞれの壁面に接触するように、接地のためのスルーホール5が設けられる。
【0026】
そして、第1実施例では、上記第2導波管10Bのショート面Sがプローブ14から略λ0/4(λ0:通過周波数の波長)の長さの位置にあるが、このショート面Sの中央位置からプローブ14へ向けて突出させ、このプローブ14に近接させた角柱状(四角柱)の柱状導体16が形成される。この柱状導体16は、ショート面Sから抑圧周波数の波長λ1の略1/4、即ちλ1/4の長さに設定されており、この柱状導体16の先端はプローブ14に接近する関係となる。この柱状導体16を設けることで、第2導波管10Bは同軸状の構造となる。
【0027】
このような柱状導体16を設けた回路について電磁界解析を行うと、ある特定の周波数において柱状導体16の部分にTEMモードに近い電磁界分布が認められる。即ち、このTEMモードが発生するのは、上記柱状導体16が当該モードにおいて1/4波長相当のときであり、その他の周波数では強いTEMモードは励起されず、導波管内はほぼ通常の導波管モードとなる。
【0028】
第1実施例では、TEMモードが励起している柱状導体16の先端は、プローブ14と比較的近い距離に配置されているので、プローブ14に対して直接電気的に結合していると考えられることから、これらを踏まえて簡単な等価回路で表せば、図2のように表現することができる。
【0029】
図2において、18は導波管入力端子、19は入力導波管、20はプローブ、21は非導波管線路出力端子、22はショート面までの導波管線路、23はショート面、24は柱状導体16のTEMモードで発生する共振回路、25は柱状導体16とプローブ14間に寄生する結合容量を表す。即ち、第2導波管10Bに柱状導体16を設けた同軸状構造により、L(インダクタ)C(容量)の並列共振回路24が構成されると共に、柱状導体16をプローブ14へ近接させ容量結合することで、例えばイメージ信号や受信周波数帯域雑音の抑圧するためのLCの直列共振回路が構成される。
【0030】
第1実施例は以上の構成からなり、次にその動作を説明する。
図2に示したように、ショート面Sの中央に突出させた略λ1/4の長さの柱状導体16を含む同軸状構造により、並列共振回路24が形成されることになり、この共振回路24の共振周波数f01では回路端は開放と等価となるが、このf01より低域側では、共振回路24の実効的インピーダンスは誘導性であり、この等価インダクタと結合容量25とで形成される直列共振回路が発生し、この共振周波数f02ではプローブ14の先端は短絡と等価となる。
【0031】
これらを計算式で表せば、以下の数式1及び2となる。但し、共振回路15内の等価インダクタをL1 、等価キャパシタをC1 、結合容量25をC2 とする。
【数1】
【数2】
【0032】
即ち、上記共振周波数f02では、プローブ14端が短絡に見えるため、減衰特性を得ることができ、通過帯域では、ほぼ通常の非導波管線路−導波管変換器と同等の特性を有することとなる。
また、この共振回路は非常に低損失であり、Q値が高いため、柱状導体16のプローブ14への結合を疎に設定すれば、通過周波数と抑圧周波数間の離調周波数が小さくても通過帯域への悪影響を最小限とすることが可能である。
【0033】
なお、上記共振回路24は同軸状構造で生成されるものであり、第2導波管10Bに対する柱状導体16のサイズ(太さ等)や長さにより、その特性は変化し、また上記結合容量25は主にプローブ14との距離で決定される。従って、これらのパラメータを適当に組み合わせることで、所望の特性が得られ、実際の設計は電磁界シミュレータ等を用いて行うこととなる。
【0034】
図3及び図4には、第1実施例のシミュレーションによる特性例が示されており、図3は共振回路がないとき、図4は柱状導体16を設けたときのもので、通過帯域を13.75〜14.5GHz、抑圧周波数を12.75GHz付近に設定したときの結果である。図4に示されるように、柱状導体16を設けたときは、12.75GHz付近で大きな減衰量が得られており、このような特性によって、例えば受信周波数帯域の一部の雑音を良好に抑制することができる。
【0035】
第1実施例では、マイクロストリップ線路(分布定数線路)から導波管線路への変換について説明したが、本発明は、同軸線路から導波管線路への変換、或いはその他の多様な伝送線路との変換においても適用することができる。
【0036】
図5(A)〜(C)には、同軸線路に適用した第2実施例の構成が示されている。この第2実施例では、ショート面Sが設けられた導波管27の上面のH面(磁界に平行な面)から導波管27内に、同軸線路28の中心導体の先端がプローブ29として突出・配置される。そして、上記導波管27のショート面Sの中央位置から略λ1/4の長さで突出し、プローブ29に近接するように角柱状の柱状導体30が配置される。
【0037】
このような第2実施例の構成によっても、上記第1実施例と同等の効果を得ることができる。なお、上記第1及び第2の実施例では、柱状導体16,30を角柱状としたが、この柱状導体を円柱状等、その他の形状としてもよい。また、導波管10,27として矩形のものを用いたが、円形導波管を用いることもできる。
【0038】
図6(A)〜(C)には、第3実施例の構成が示されており、この第3実施例は、イメージ信号や受信周波数帯域雑音の抑制に加え、第2高調波の抑制を図りながら、通信用機器である送信機に適用することのできる装置である。具体的には、Ku−Band帯(送信周波数:13.75〜14.5GHz、受信周波数:10.95〜12.75GHz)の衛星通信システム等に適用される。このシステムの送信機のうち「Universal Band」と呼ばれるものは、通常、IF周波数を0.95〜1.7GHz、局部発振器周波数を12.8GHzとしているので、イメージ信号の周波数は11.10〜11.85GHzとなる。
【0039】
この第3実施例は、第1実施例で説明した柱状導体16を形成した矩形の第2導波管10Bと、詳細は後述するが、この第2導波管10Bのサイズ(磁界方向及び電界方向の長さ)と同一の矩形の導波管部32を有する第1導波管10Cを有する。また、図6(B)に示されるように、第1導波管10Cと第2導波管10Bとに挟まれる形で、誘電体基板12が設けられ、この誘電体基板12に、マイクロストリップ線路13及びプローブ14が形成されるが、このプローブ14に接続する形で、上記導波管10B内のH面の近傍位置で、このH面に略平行に、開放スタブ33a,33bが形成される。第3実施例の開放スタブ33a,33bは、第2高調波を抑圧するために設けられ、プローブ14の中心からD≒λ2/4(λ2:所定の抑圧周波数の波長)の長さを持ち、先端が開放されたものである。
【0040】
即ち、略λ2/4の長さの開放スタブ33a,33bを設けることで、所定の抑圧周波数において、この開放スタブ33a,33bが接続されるプローブ14の接続点が接地と等価となり、第3実施例では第2高調波の周波数帯域において良好な減衰特性を得ることができる。この開放スタブ33a,33bは、導波管部32又は第2導波管10B内の中心位置ではなく、H面の近傍に配置することで、目的の周波数帯の伝送波を導波管モードに切り換わる前に効率よく減衰させることができる。
【0041】
更に、第3実施例では、第1導波管10Cの導波管部32と第2導波管10Bの矩形の磁界方向の幅(長辺の幅)dを例えば11.6mmとし、この導波管(32,10B)のカットオフ周波数を、受信周波数帯域の上限である12.75GHz以上で、送信帯域下限である13.75GHz未満(12.75〜13.75GHz)に設定し、第1導波管10Cの導波管部32の伝搬方向の長さに比例した減衰量を得るようにしている。即ち、上述した柱状導体16で得られる単共振抑圧特性により、送信帯域の直ぐ下側の周波数に急峻な減衰特性(図4)を生成し、またこの抑圧周波数より下側は上記の導波管カットオフに起因した、周波数が下がるほど減衰量が大きくなる減衰特性を生成することで、これらの減衰特性を加算した特性(後述の図10)を得ることができる。
【0042】
ところで、通常、機器間の接続に使用される導波管には、使用周波数によって推奨される規格化寸法があり、実施例の周波数においては、EIA規格の例えばWR75(IECではR120)が使用されるため、上記のような変則サイズの導波管(32,10B)では不都合である。そこで、第3実施例では、第1導波管10Cの送信機側(出力側)導波管部(最終出力端子)35として、上記WR75を用い、磁界方向の寸法を絞ったマイクロストリップ線路−導波管変換器部(10B,32)と送信機側導波管部35との間に、物理的サイズの変換と共にインピーダンス整合をとるためのステップインピーダンス変換器36を設けている。
【0043】
このステップインピーダンス変換器36は、ステップ状に導波管部36a,36bを直線的に接続したものであるが、このステップインピーダンス変換器として、非導波管線路−導波管変換器部(32,10B)の磁界方向(H面)のみを単に絞った寸法とすると、インピーダンスが高くなり過ぎる。そこで、実施例のステップインピーダンス変換器36は、磁界方向と電界方向の両方を絞った導波管部36aと、導波管部32の磁界方向の幅が同じで電界方向の幅を小さくした導波管で36bとから構成する。即ち、導波管部36aにより、その部分のインピーダンスを送信機側導波管部35のサイズのインピーダンスに近い状態とし、導波管部36bにより、上述した導波管カットオフ周波数による受信周波数帯域の抑圧特性を効率よく得るようにしている。
【0044】
図7には、第1導波管のステップインピーダンス変換器(インピーダンス整合回路)の他の構成が示されており、この例の第1導波管10Dは、導波管を曲げるための導波管部(ベンド導波管)36dを設けると共に、これと送信機側導波管部35との間に導波管部36cを配置する。このステップインピーダンス変換器36の導波管部36cと導波管部36dは、矩形のサイズ、即ち磁界方向及び電界方向の幅が上記導波管36a,36bと同一であるが、それらの電界方向(E面)の中心をオフセット(下側へずらす)させている。このような構成のステップインピーダンス変換器36によっても、同様の特性を得ることができる。
【0045】
このような第3実施例によれば、非導波管線路−導波管変換器としての導波管部32と第2導波管10Bの構成により、図2で示した等価回路が形成され、柱状導体16を設けた同軸状構造により、LCの並列共振回路24が構成されると共に、柱状導体16をプローブ14へ近接させ容量結合することで、LCの直列共振回路が構成される。
【0046】
そして、上述のように、インピーダンス整合回路として、磁界方向の幅を一定にしたステップインピーダンス変換器36を使用することを条件として設計を行ったとき、図8のような特性を得ることが可能である。即ち、送信周波数帯の下限である13.75GHzの少し下側の周波数から約12.75GHzまで急峻に減衰し、その下側の周波数においても、大きく減衰した特性が得られており、これによって、イメージ信号や受信周波数帯域雑音等を良好に抑制することができる。
【0047】
また、第3実施例では、プローブ14に開放スタブ33a,33bを設けたので、第2高調波の抑圧を図ることも可能となる。図9には、第3実施例において、抑圧周波数を通過周波数の第2高調波帯である、27.5〜29GHzとしたときに得られた特性例が示されており、図9のように、上記27.5〜29GHzの抑圧周波数帯域で43dB程度の減衰が得られており、また30dBの抑圧を得ている帯域幅は5GHzと帯域も広いことが判る。
【0048】
図10(A),(B)には、上記実施例の導波管内の誘電体基板の領域削減を図った第4実施例の構成が示されている。この第4実施例のプローブ14、開放スタブ33a,33b等の構成は、第3実施例等と同様であるが、誘電体基板38において、プローブ14と開放スタブ33a,33bが形成されている部分とスルーホール5が形成された部分のみを残し、導波管10の内部空間に合わせて、その他の領域50の誘電体基板をカットして抜いたものである。
【0049】
このような第4実施例の構成によれば、領域50の誘電体基板が抜かれているので、誘電体基板38が存在することに起因する挿入損失を更に減少させることができるという効果がある。
【0050】
図11(A)〜(C)には、第3実施例の特徴事項を同軸線路に適用した第5実施例の通信用装置(送信機)の構成が示されている。この第5実施例では、ショート面Sが設けられた導波管40の上面のH面(磁界に平行な面)から導波管40内に、同軸線路28の中心導体の先端がプローブ29として突出・配置されており、このプローブ29に対して、導波管40内のH面の近傍位置でかつこのH面に略平行に、開放スタブ41a,41bが接続、形成される。この開放スタブ41a,41bも、第3実施例と同様に、プローブ29の中心から約λ2/4(λ2:所定の抑圧周波数の波長)の長さとされる。
【0051】
また、上記導波管40には、第3実施例と同様に、矩形の磁界方向の幅を例えば11.6mmとした導波管部42aが設けられ、この導波管部42aのカットオフ周波数を、受信周波数帯域の上限である12.75GHz以上、送信帯域下限である13.75GHz未満に設定することで、導波管部42aの長さに比例した減衰量が得られるようにしている。そして、導波管40の送信機側導波管42bと上記導波管部42aとの間に、導波管部43a,43bからなるステップインピーダンス変換器43が設けられており、このステップインピーダンス変換器は、第3実施例と同様に、磁界方向と電界方向の両方を絞った導波管部43aと、導波管部42aの磁界方向の幅と同じで電界方向の幅のみを絞った導波管で43bとから構成される。
【0052】
このような第5実施例によっても、第3実施例と同様に、イメージ信号や受信周波数帯域雑音等の不要周波数を抑圧すると共に、第2高調波を良好な減衰特性の下で抑圧することが可能となる。
【0053】
上記第3〜第5実施例では、2個の開放スタブ33a,33b,41a,41bを設けたが、この開放スタブは1個でもよいし、またこの開放スタブは全方位方向において3個以上設けることも可能である。
【0054】
更に、第3実施例において、上記開放スタブ33a,33b,41a,41bを設置することによる効果は、下記のようになる。即ち、
a.開放スタブ部分の誘電体基板(12,38)の裏面にはGNDがなく、電磁界分布が分散するため、誘電体基板の影響が減少し、分布定数線路部分より損失が少なくて済む。
b.開放スタブは、導波管H壁面近傍のプローブ(14,29)に設けられており、この部分の伝送モードは未だ導波管モードに変換されていないため、導波管内で発生する高次モードの影響を受け難く、従って導波管側負荷条件の影響による、抑圧量の大幅減少といった問題を避けることができる。
c.開放スタブは、導波管回路内に形成された回路であるが、誘電体基板上に形成されていること、プローブに直接接続されていることより、必要以上にQ値が高くなく、図12で説明した特許文献3の変換器に比して広帯域な抑圧特性を得ることができる。
d.開放スタブは、通過周波数において線路途中に容量性スタブが付加される場合と等価であるから、これを見込んだ回路設計を行えば、通過周波数での特性も所望のものを実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
マイクロストリップ線路、同軸線路等の非導波管線路と導波管との間の変換器、そして非導波管線路−導波管変換器を搭載する通信用機器に適用することができる。
また、現在、運用されている衛星通信用システムは受信周波数が送信周波数より低く、また送信機のアップコンバージョンは送信周波数より低い周波数の局部発振器信号との混合により行うため、本発明は、基本的にどの周波数帯の衛星通信システムの送信機にも適用することができる。また、同様な通過帯域、抑圧周波数の関係(通過帯域に対して抑圧周波数が下側)であれば、衛星通信用送信機以外の通信用装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10,10A〜10C,27,40…導波管、
2,12,38…誘電体基板、
3,13…マイクロストリップ線路、
4,14,29 …プローブ、 16,30…柱状導体、
24…並列共振回路、 25…結合容量、
28…同軸線路、 32,36a〜36d,42a,43a,43b…導波管部、
33a,33b,41a,41b…開放スタブ、
35,42b…送信機側導波管部、
36,43…ステップインピーダンス変換器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短絡面が設けられた導波管と、
この導波管内部へそのH面から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器において、
上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体を設けたことを特徴とする非導波管線路−導波管変換器。
【請求項2】
上記プローブの上記導波管H面の近傍位置に、所定の周波数を接地条件とする開放スタブを設けたことを特徴とする請求項1記載の非導波管線路−導波管変換器。
【請求項3】
短絡面が設けられた矩形導波管と、
この導波管内部へそのH面から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置において、
上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を構成するための柱状導体を設けると共に、
上記導波管の矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定したことを特徴とする非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置。
【請求項1】
短絡面が設けられた導波管と、
この導波管内部へそのH面から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器において、
上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を形成するための柱状導体を設けたことを特徴とする非導波管線路−導波管変換器。
【請求項2】
上記プローブの上記導波管H面の近傍位置に、所定の周波数を接地条件とする開放スタブを設けたことを特徴とする請求項1記載の非導波管線路−導波管変換器。
【請求項3】
短絡面が設けられた矩形導波管と、
この導波管内部へそのH面から挿入され、非導波管線路の先端に形成されたプローブと、を備える非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置において、
上記導波管の短絡面から突出させて上記プローブまで近接配置し、所定の周波数で共振する共振回路を構成するための柱状導体を設けると共に、
上記導波管の矩形の磁界方向の幅を、受信周波数帯付近が当該導波管のカットオフ周波数以下となる値に設定したことを特徴とする非導波管線路−導波管変換器を用いた通信用装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−234089(P2011−234089A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102104(P2010−102104)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
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